金沢文芸館

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文芸館だより(ブログ)

文芸館だより H30年度

 12月9日(日) 第8回『朱鷺の墓』朗読会

 パリの生活に区切りをつけ、思いは遙か日本に飛ぶ

 朗読:髙輪 眞知子(朗読小屋・浅野川倶楽部代表)

   

 本格的な冬の寒さを迎える中、今年度の『朱鷺の墓』朗読会も最終回を迎え、「愛怨の章」の最終部分(8~12)にさしかかりました。今回も朗読小屋・浅野川倶楽部代表の 髙輪 眞知子(たかなわ  まちこ)さんによる朗読をゆっくりとお楽しみ頂きました。

 

 パリの中華料理店「東園」で働く染乃とイワーノフは、店の有能なスタッフとしてなくてはならない存在になっていました。

 ある春先の晩のこと、店主の許可を得て染乃とイワーノフは常連客である有名な画伯と、彼の知り合いの踊り子であるマグリット嬢と店内で親しく交流します。酒席の成り行きで、イワーノフとマグリット嬢、染乃と画伯が、それぞれペアで夜のパリの街に別々にデートすることになります。深夜まで画伯との時間を過ごした染乃は、画伯の誘惑を何とか振り切り、疲れ果てて、ようやく明け方近くにアパートにたどり着きます。そこで染乃の帰りを心配して待ちわびているはずだったイワーノフは、マグリット嬢の部屋で一夜を過ごし、翌日の午後になって戻って来たのです。

 後ろめたさを引きずるイワーノフは、責めることも怒ることもせず、この一夜のことを超然と受け流そうとしている染乃の鷹揚な態度を「偽善者ぶっている」、と鋭く反発します。染乃はイワーノフのこれまでの誠実な生き方・考え方や自分の理想を実現するための果敢な行動を受け入れるとともに、ここにイワーノフが帰ってきたこと、自分を忘れずにいてくれたことで充分であることを丁寧に伝えます。イワーノフはそんな染乃の思いを真摯に受け止め、自分の過ちを詫びるのでした。

 そんな矢先、イワーノフは無断で店の仕事を休んだり、外泊したりすることが度重なります。染乃はマグリットとの男女関係が続いていることを懸念し、偶然に再会した原口青年とともに、パリの街中を深夜までイワーノフの行方を探し続けます。体調を崩した染乃は原口の部屋できわどい一夜を明かしたのち、自責の念でアパートに戻ったところで、イワーノフと誰かの激しい口論に出くわします。イワーノフの唐突な外泊や失踪は、新しいロシアをつくるためにソビエト政府を暴力で倒そうとするテロリストグループとの接触から生じた行き違いであり、マグリットとは無関係であることが判明します。誤解が解けて安堵する間もなく、今度はイワーノフがそのテロリストたちの秘密を知ったことで、裏切り者として命を狙われる危険にさらされるのです。これを聞いた染乃はさっそく、イワーノフに日本行きの船便のあるマルセイユから日本に帰国することを提案して、苦境を克服しようとするのでした。

 マルセイユから日本に向かう貨客船のなかで、染乃はイワーノフとともに、しみじみと懐旧に耽ります。

 

 

  〈金沢 ―浦塩 ―それからナホトカ〉

イワーノフに再会したのは、あのシベリアの寒村だった。

〈ソールスコエの村 ―ナホトカ ―ペテルスグルグ ―ブルガリアのソフィア〉

 さまざまな土地で、さまざまな人々が二人を助け、二人をはげましてくれたものだった。そして染乃はそういった人々の渦の中を、イワーノフだけにすがって泳ぎ抜いてきたのだ。イワーノフの両親の消息もいまだにわかってはいない。彼は妹と同じく、あきらめているらしいが、やはり心残りはあるだろう。しかし、それをあえて日本に行くというのはただ染乃がそれを強く望んだからだった。

〈この人はあたしを愛してくれている〉

染乃はいま、列車に揺られてパリを離れながら、心の中ではっきりそう思った。

〈さよならパリ――〉

染乃は目を開けて外を眺めた。パリの街はすでに見えず、ただ豊かな農村の町と森と空とがどこまでも果てしなく続いていた。染乃の心はこれまでになく暖かな光に満たされ、列車よりもなお早く、はるかな日本へはばたこうとしていた。

〈金沢であたしたちをまっているものは〉

染乃は震える心でその答えを探しながら、そっと隣のイワーノフの膝の上に掌を重ねた。たとえどんな苦しみが待ち構えていようと、あたしはこの人と共に生きて行く、それだけで自分の一生は幸せなのだ――染乃はそう自分に言いきかせながら、美しく晴れた異国の空へ目をあげた。(「愛怨の章」終)

 

紆余曲折に富んだ長いながい流浪の旅路を経て、染乃とイワーノフは二人が初めて出会った街、日本の金沢に向かいます。そこでどんな生活が待ち受けているのか。

次回(2019年5月)から、物語はいよいよ最終章「流水の章」へ。髙輪さんによる、心のこもった艶のある朗読はさらに続きます。次年度も、どうぞお誘い合わせてご参集ください。




 12月8日(土)第8回 詩入門講座

 何もないところで書く

  講師:井崎 外枝子(詩誌『笛』同人)、 杉原 美那子(詩誌『笛』同人)

  

 午後から、第8回目となる詩入門講座を開講しました。受講生の創作した作品を精読し鑑賞することを通して、それぞれのテーマをさらに掘り下げるための表現の工夫、当面の課題などについて学びました。講師は、詩誌『笛』同人の井崎 外枝子(いざき としこ)先生、同じく、『笛』同人の 杉原 美那子(すぎはら みなこ)先生でした。

 

①    作品に染み出る作者の個性

 日常生活から掬い取る題材をもとに、作者の素朴さがそのままされた作品には、読み手を納得させる力がある。余分なものがないという長所と、もう少し肉付けしてほしいという課題とが同居する。

 

②     何を書くか、何を書かないか

 創作の過程ではこのことが大切。詩では「説明」は不要という考えもある一方で、読者がイメージの連鎖・展開・因果関係などを読み解くヒントになるような表現があってもよい。作品の核心に近づくきっかけとして。

 

③    「何もない」ところで書く

 何らかのドラマを作品に仕立てるのは意外に容易だが、何も特別なことがない日常をどのように表現するかは難題といえる。鬱々とした状態、退屈や倦怠感、平々凡々の日常でも、動き、変化し、成長するものがある。また、季節が巡る中で自分自身が動き出す爽快なタイミングもある。そういう「些事」を丁寧にえぐり取ることも貴重である。

 

④    仕事(キャリア)に寄せて

 自らの生業(なりわい)を表現することの微妙な壁。そんな立場だからこそ見えるもの感じるものがある。独創的な世界が浮かび上がりそうな予感と、自身の中に突き上げる鋭い抵抗感と。創作者として、どう乗り越えるか。

 

 

新聞の文芸欄などの投稿でも、短歌や俳句は応募が殺到するほど盛況ですが、詩は沈滞ムードだ、という杉原先生からのお話がありました。井崎先生からは、先日(5日)夕方に金沢駅前のアートホールで開催された『詩人の魂』と題するイベントの紹介がありました。その中で、五木寛之氏は「詩は本来耳で聴いて、音で楽しむもの」であることを再三強調されました。犀星、中也、中野重治の詩の朗読など、どれも会場一杯に素晴らしく響いて、詩の豊かさに触れたひとときでした。

この日も、それぞれご自分の詩作品の朗読からスタートしました。自分なりに朗読を工夫して詩を味わう時間、異なる朗読を聴いて印象の違いを楽しむという時間を、これからの講座の中でも積極的に取り入れるのも面白いと感じました。

 

作品の提出はもう目前です。これまでの講座でのアドバイスやヒントを活かして、記念碑となる傑作を期待しております。




 12月8日(土)第8回 小説入門講座

 臨場感のある表現を追求する

  講師:高山 敏(『北陸文学』主宰)、 小網 春美(『北陸文学』同人)

 

 今年度の最終回となる、第8回の小説入門講座を開講しました。講師は、同人誌『北陸文学』主宰の高山 敏(たかやま さとし)先生、同じく『北陸文学』同人の、小網 春美(こあみ はるみ)先生です。今年度の講座の成果として同人の皆さんから提出して頂いた作品のうち、前回に続き、今回も異なる6作品を対象とした合評会でした。それぞれの作品の特色を踏まえた両先生からのアドバイスの中から、改めて確認した今後の課題をご紹介いたします。

 

①   テーマの絞り込み

 情景描写を連ねていく中にも、登場人物の内面が描かれ、揺れ動き、進化してゆくという基本軸が必要である。並列ではなく、ここが中心であり山場であるという部分に充分にエネルギーを注いで、読者の共感を引き出したい。

 

②    時間の経過を明確に 

   現在のことなのか過去の回想なのかが不鮮明で、読み手が戸惑う文章になってはいないか。段落、一行あき、具体的な状況説明などで、過去から現在、現在から過去というような時間的な推移が具体的につかみやすい文章が望ましい。

 

③    1人称か、3人称か

   それぞれに特色があり一長一短があるとも言えるが、作品の構想や内容にどちらがふさわしいかを判断して書き進めなければならない。作品の中途で曖昧になったり、乗り換えていたり、作者自身の立ち位置がぶれていないかを検証する。

 

④     丁寧な推敲により文章や文の位置や語順を適切に 

  意味がわかりにくい文章ほど、推敲の余地がある。特にしっかりとその状況や心情、背景や経過などを詳しく性格に伝えたい部分に細心の注意が必要。語順はもちろん文や文章を入れ替えてみることですっきりするケースも少なくない。

 

文章中の臨場感を増すためには、登場人物の心情をふくらませるために、より適切な言い回しを丁寧に、厳しく追求するということもアドバイスしていただきました。豊かな想像力と表現力が問われる、作者の正念場とも言えます。

いよいよ原稿の完成に向けて、文章の推敲も最終段階にさしかかります。原稿の細かなルールを踏まえて、伝えようとすることが誤解なく確実に伝わること。また、よりデリケートな心情が表現できているか、強いインパクトある心情が吐露できているか…。粘り強く読み返し試行錯誤した上で、作者自身にとって納得のいく原稿が完成することを期待しております。 





 12月4日(火)出前授業  金沢市立緑小学校2年

 民話に託された思いが、受け継がれますように

 講師:神田 洋子(ストーリーテラー) 

  

 雨上がりの午後、今年度最後の出前授業で、金沢市の西部校外にある緑小学校をお訪ねしました。2年生の生活科「金沢の民話を知ろう」の学習です。102名の皆さんに金沢に伝わるお話を語ってくださった今回の講師は、ストーリーテラーの 神田 洋子(かんだ ひろこ)先生です。明るく素直で、元気いっぱいな子どもさんたちから、パワーを頂いたひとときでした。

 

 金沢でよく知られた〈三大昔話〉とも言われる、「いもほり藤五郎」「おぎんこぎん」「飴買いゆうれい」の3つのお話でした。

 ろうそく1本の明かりだけの中で、子どもさん達は神田さんのゆったりとしたひそやかなお話しぶりに耳を傾けてくれました。そうしていると、きっと、今から50年前も100年前でもこんな静かなふんわりとした空気の中で、子ども達が昔々の語りを聴いて心を揺さぶられたことだろう、と想像しました。

★「いもほり藤五郎」の実直さ、あきれるほどの欲のなさ、村の人たちと支え合って仲良く生きようとする姿、嫁様への思いやり。金沢の地名の由来と言われる「かなあらいさわ」の不思議な輝きは、現代のこの街の繁栄につながっているようにも感じられます。

★★「おぎんこぎん」では姉妹がそれぞれお互いを気遣い、かばい合おうとする健気さ、母親の犯した過ちの大きさとそれ以上に大きい後悔、手まり唄にもなって長く子ども達に受け継がれたということからも、このやりきれない哀しみを忘れまいとする人々の思いがこめられているようです。

★★★「飴買いゆうれい」では飴売りの男やお坊さんの心温まる配慮と仏様のご加護によって、何とか乳飲み子の命を守ろうとする母親の懸命な思いがかなえられたことの尊さが、痛いほどに伝わってきます。母親の愛情の深さはもちろんのこと、この幼い命を守り育てた人たちの心の温かさに注目したいものです。またそうした期待に応えて、この子が立派に成長し精進を重ねてこのお寺の住職となったという結びも、大変めでたく、安堵させられます。

 

 子どもさん達が、またこのお話を思い起こしたり、読み返したり、さらには成長して次の世代にも受け継がれることを期待しています。はきはきした感想と、大きな挨拶の声が印象的な、緑小学校2年生の皆さんでした。



 12月3日(月)出前講座 金沢市立四十万小学校2学年

 お坊さんの杖の先には

 講師:吉國 芳子(ひょうしぎの会) 

  

 白山市に隣接する金沢市南部校外の四十万小学校に、2学年の生活科「金沢の民話を学ぼう」の学習でお邪魔しました。講師は「ひょうしぎの会」の 吉國 芳子(よしくに よしこ)先生です。先生のはつらつとした語りや紙芝居に、84名の子どもさんたちはぐんぐん引きこまれていくようでした。

 地元である四十万地区に伝わる昔話である、「ろくざの池」のあらすじも紹介されました。

 

「ろくざの池」

 昔むかし、ある暑いあつい日のことです。弘法大師という立派なお坊さんが、旅の途中にある村を通りかかりました。あんまりのどが乾くので、すれちがった村の人に、「お水をいっぱいもらえまいか」とお願いしました。村人は、お坊さんのなりをじいっとにらみつけるようにしたあげく、「お前みたいな、クソボウズなんかに飲ませる水はない!」と言い捨てて立ち去ってしまったのです。

 お坊さんは仕方がないので、のどの乾きを我慢しながら歩き続けました。やがて、みなみじしまという村にさしかかりました。また、おんなじ様に、「水をいっぱい・・・」と通りかかった男に頼むと、「これは、これは…。いま、すぐに…」と、そのろくざという男の人はこころよく応対し、急いでおわんに水を用意して、お坊さんに丁寧に差し出しました。お坊さんは、心からありがたそうに、うまそうにその一杯の水を飲み干したのでした。器を受け取ったろくざも、うれしそうにお坊さんの様子を見守っていました。ろくざは、この村では夏はいつも水不足で、作物にも、動物にも、もちろん人にも水が行き渡らないのでなかなか大変です、とお坊さんに話しました。

 やがて、お坊さんは何を思ったのか、自分の杖であたりの地面をトントンとたたきながらしばらく歩き廻っていましたが、そのうち「ここだ、ここだ。ここを掘りなさい」とろくざに言うのです。言われた通り、さっそくろくざがそのあたりを鍬で掘り起こしてみると、なんとその地面の下から、こんこんとわき水があふれ出てきたのです。そのうち、あっという間にわき水が溜まって池ができるほどになりましたが、それでも水はなおこんこんと湧き出ているのです。

 ろくざがたいそう驚き喜んでいるうちに、近所の男たちも女たちも子どもたちも、猫や鶏までも集まってきました。ずんずんあふれでてくる水を飲んだり、あそんだりして、みんな大喜びです。

 このわき水は「ろくざの池」とよばれるようになって、日照りの夏でも村を潤しました。今でも村人たちに大切に守られています。

 

 この日は、ダラムコさんが登場する笑い話の「おだんごひょいひょい」と中央通町の宝船寺に伝わる「宝船寺のねずみたいじ」を中心にお話ししました。2年生の皆さんは、お行儀よくしっかりとした態度で、お話に耳を傾けてくれました。季節がら、風邪予防のマスクをしている子どもさんが目立ちましたが、これから始まる寒い季節を元気に過ごしてくれることでしょう。



 11月25日(日)第3回 伝承文芸講座

 能登沖で上がった「悪尉(淡吹の面)」の魔力

 講師:藤島 秀隆(金沢工業大学名誉教授)

 

  

   金沢の怪談と奇談について学ぶ「伝承文芸講座」も、今年度の最終回を迎えました。講師は、金沢工業大学名誉教授の藤島 秀隆(ふじしま ひでたか)先生です。今回は「三州奇談~巻五の祭礼猿楽をめぐって~」というテーマで、興味深いお話をお聴きしました。配付資料の一部をご紹介します。

  

 ◎『三州奇談』(さんしゅうきだん)について

正編五巻、続編八巻。堀 麦水(ほり ばくすい)編著。成立年不詳だが、18世紀後半、天明から宝暦年間とする説が有力。加賀・能登・越中3カ国に伝わる怪談・奇談、説話など149話を収録。風土や気質についても記している。堀麦水が当時世間に流布していた話を聞き集めた。金沢の俳人住吉屋楚雀の稿本をもとにしたという説もある。泉鏡花は「三州奇談」の愛読者で、本書からいくつかの小説の題材を得ている。

堀麦水(1718~1783)俳人。金沢竪町生まれ。天明中興俳壇の俳諧革新運動の先駆者である。 

 

◎悪 尉(別名「淡吹の面」)について

大正末年に16代前田利為より尾山神社に寄進された、悪尉面である。箱書きは「淡吹の面」と金泥で記され,前田家宝物の貼り札がある。

悪尉の悪は強いという意味で、この面相は鬼気迫る凄みを帯びている。面裏には「ヤマト ヒカ井モト、七郎作」と記されている。

ヒカ井モト七郎作銘を持つ面は、奈良県吉野・勝手神社に伝わる若い男面・女面があり、明応2年(1493)の年号がある。これは、重要文化財に指定されている。

作者は吉野猿楽の一つ檜垣本座に属する者といわれ、この面も室町時代の大和猿楽座のものと考えられている。

 

◎「淡吹の面」の由来

加賀藩3代藩主前田利常の時代(寛永年間)、能登沖に毎夜光るものがあるというので、ある夜網を打つと一つの面がかかった。これを漁師が持ち帰ったところ色々不思議なことが起こり、そのうち謡をうたい、口から淡(泡)を吹き出したという。これを聞いた金沢尾張町の高岡屋小西次郎兵衛が譲ってもらったところ、やはり不思議なことがやまなかった。そこで、妙音山善導寺という寺を建ててこの面を安置していたが、町人の身分でこのような霊験あらたかなものを持っていては恐れ多いと、寛永10年(1639)前田家に献上した。

前田家でも異変が起こったので、藩の能楽師である波吉家三代左平治信安に下賜したが、この面に関して異変が絶えなかったという。

元文2年(1737)4月、善導寺のご開帳の際、この面を参詣者に拝観させた。その後、明和7年(1770)波吉宮門は前田家に返還。以来、秘宝として前田家に伝わったが、前田家ではこのような神秘的な面は置くべきでないとして、大正末年に尾山神社に寄進された。

尾山神社では、この面を外に出すと一天俄にかき曇るとの言い伝えがあり、門外不出としている。

 

この日は3連休の最終日で、心地よい小春日和となりました。今回も30名近い皆さんに、熱心に受講していただきました。藤島先生による本講座も、すでに11年間継続して参りました。先生の一層のご健勝をお祈りするとともに、今後も金沢にちなんだ伝説や奇談を学習する場が広がることを願っております。



 11月23日(金)開館記念イベント「語りで楽しむ昔話」

 厨子王の親思いの心が、老母の眼を開かせる

 語り手:荒木 明日子

 

  金沢文芸館は、金沢における文芸活動の交流・創造・発信の拠点として、平成17年(2005)11月に開館して以来、14年目を迎えました。この日はその開館記念イベントとして、「語りで楽しむ昔話『安寿姫と厨子王丸』」を開催いたしました。

語り手の 荒木 明日子(あらき あすこ)さんをお招きして、荒木さんご自身の再話による『安寿姫と厨子王丸』などの民話の語りをじっくりとお楽しみいただきました。

 

【語りで楽しむ昔話『安寿姫と厨子王丸』】プログラム

1.『芋ほり藤五郎』

金沢の地名の発祥譚

2.『飴買いゆうれい』

  金石・道入寺に伝わる不思議なお話

3.ぷちっと金沢弁講座

なつかしい金沢弁を楽しみました

4.『三枚のお札』

不思議なお札のハラハラドキドキの昔話

5.『安寿姫と厨子王丸』

新潟県に伝わる、親子の苦難の昔話

 

1、2、4の3作品は、親しみ深いなめらかな金沢弁での語りでお聴き頂きました。クライマックスは、『安寿姫と厨子王丸』でした。幼くして人買いにだまされて山城国・山椒大夫のもとに売られたあげく、重労働と責め苦に耐えきれずはかなく入水してこの世を去る安寿姫。その安寿やお坊さんの恩恵を受け、生き伸びて立派な若者に成長し、幸いにも老いて目の見えない母との再会を果たす、というおなじみの物語です。30分にもおよぶ緊張と苦難続きの物語は、最後にようやく安堵する、心に沁みる内容でした。

 

今日は、今期一番の冷え込みが厳しい朝となりましたが、1階の交流サロンは満席の盛況ぶりでした。懐かしい語りを聴くうちに、会場がほのぼのとした温かい空気に充たされました。



 11月22日(木)出前講座 金沢市立伏見台小学校

 エジソンから送られた手紙が見られる!

 講師:増山 仁(かなざわ偉人館 学芸員)

 

 金沢市南部に位置する伏見台小学校をお訪ねしました。4年生の社会科で「金沢の偉人を知ろう」の学習における導入の講座を実施しました。講師は『かなざわ偉人館』学芸員の 増山 仁(ますやま ひとし)先生です。偉人について自分で調べるにあたり、「自分もやってみたい」「すごいなあ」「身近に感じる」という視点で選ぶのがよい、というヒントをもらいました。 

 偉人館で学ぶことができる14名の偉人について、先生からパワーポイントによるプレゼンで紹介していただきました。こんな人にお勧め(*)いうところにポイントをしぼって振り返ってみました。

 

①高峰 譲吉(化学者、アドレナリンを合成する)

*理科の実験が好きで、アメリカにいってみたい人。

②木村  栄(天文学者、Z項を発見)

*星を観ることが好きで、宇宙が大好きな人

③八田 與一(土木技師、台湾でダムをつくる)

  *外国で仕事がしたい人、農業が好きな人

④飯盛  里安(化学者、放射能の研究)

  *石を集めるのが好きで、宝石に関心がある人

⑤清水  誠(科学者、発明家。マッチをつくる)

  *だれも挑戦しない新しいことに取り組みたい人

⑥加藤  せむ(教育者、金城学園を創る)

  *学校の先生になりたい人

⑦三宅  雪嶺(ジャーナリスト、新聞を創る)

  *日本が大好きで、金沢が大好きな人

⑧鈴木 大拙(仏教哲学者、日本人の心を世界に広める)

  *英語を学びたい人、外国の人々と交流したい人

⑨藤岡作太郎(国文学者)

  *本を読むことが好きな人、古い本を調べたい人

⑩松田 権六(漆芸作家)

  *絵を描くことが好きな人、手先が器用な人

⑪中西  悟道(日本野鳥の会を創る)

  *鳥、生き物、自然が大好きな人

⑫徳田秋声、泉鏡花、室生犀星【三文豪】(小説家、詩人)

  *本を読むことが大好きで、自分で話を創ることが好きな人

 

 『かなざわ偉人館』には、高峰譲吉にエジソンから送られた貴重な手紙や、飯盛里安が創った美しい人工宝石のサンプルも展示されているそうです。ともかく、偉人館をゆっくりと訪ねてみて、金沢に縁のあるいろいろな偉人の業績や人柄などに触れて欲しいものです。116名の4年生の皆さんが、それぞれ調べた郷土の偉人からたくさんの刺激を受けて大きな夢を持ち、のびのびと学び続けることを願っています。



 11月18日(日)第2回「フォト&5・7・5」合評会

 かけがえのない一瞬を切り取る

 講師:中田 敏樹(俳人)

 

 紅葉の映える静かな午後、先般からミニ・ギャラリーで展示していた、今年度第2回目の「フォト&5・7・5」の合評会を開催しました。講師は写真にも造詣が深い、俳人・中田 敏樹(なかた としき)先生です。今回は中田先生を含めて、13名の皆さんから合わせて55作品の応募がありました。もう、当館ではすっかり恒例のイベントとなりましたが、遠方から初めて来館された皆さんにも、季節の風物を鮮やかに切り取った写真とさりげない5・7・5とのコラボは、ご好評を頂いております。

 

○降り立てば34度暑海道(しょっかいどう)

 女満別空港に到着。雲の中に続くような一直線の道には陽炎が。北海道もまた猛暑。

 

○花見せむと自転車揃へ朝餉かな

 白壁の塀に沿って並んだ4台の自転車。家族そろってお花見へ。と、その前に朝食を。

 

○独居や仏間に一輪百日草

 「独居」「一輪」「百日草」が共鳴する。紅い大きな花が一輪、凜と咲いて。

 

○尼御前岬(あまごみさき)これから漁の夕焼けや

 夏の鮮やかな夕焼けをいっぱいに浴びて、尼御前岬から一艘の漁船が今、船出のとき。 

 

○五重苦の朝顔ついに笑顔見せ

 舗装道路のちょっとした隙間に咲いた朝顔は、青と紫。健気な笑顔にエールを贈る。

 

○祭りの夜粋な女子(おなご)の撥さばき

 地域の秋祭りに響くざわめきの中、和太鼓を打つ女達の熱い意気に心が震える。

 

○草も木も子孫を残す小春の日

 秋深し。ムラサキシキブ、セイヨウヤマゴボウに結んだ実の確かさ、美しさ。

 

○昼寝して自ずと余生短くす

 障子に写ったカマキリの影に心惹かれる。命を燃やす静かな時間と向き合う。

 

 作品の一つ一つに込められた、その瞬間の美しさの再発見。初めて出会う光景への驚きや有り難さ、尊さ。撮影時のそれぞれの背景や状況、工夫の成果などをお聴きしていると、その瞬間のこの情景との偶然の出会いと発見が、かけがえのないものに感じられました。

 

 「フォト&5・7・5」は今回で、通算12回(6年間)を数えました。これからも、たくさんの皆さんにお楽しみいただける企画として、大切にしてゆきたいと考えております。



 11月17日(土)第7回 小説講座
 書きたい中心を絞り込んで、書き切る

 講師:剣町 柳一郎(作家)、宮嶌 公夫(『イミタチオ』同人)、寺本 親平(作家)


 

午後から第7回目となる小説講座を開催いたしました。今回は受講生の皆さんからお寄せ頂いた「創作工房」発表予定作品のうち、7作品についての合評会でした。講師は、作家の 剣町 柳一郎(つるぎまち りゅういちろう)先生、文学誌『イミタチオ』同人の 宮嶌 公夫(みやじま きみお)先生、作家の寺本 親平(てらもと しんぺい)先生、3名の皆さんです。

作品全体の印象や特長、最終稿までの推敲の課題などを中心に、作品ごとに具体的なアドバイスをいただきました。

 

①    作者のこだわり

 物語の展開、表現内容や方法、比喩の使い方など作者が細部にまでこだわり、納得のいく文章表現を追求していくことは大切である。反面、それが読み手にも確実に伝わり楽しんだり、味わったりしてもらえる文章(作品)に仕上がっているかどうかを吟味する。

 

②    書きたいことの中心を絞り込む

 主題となる展開部分では、主人公や登場人物の内面により深く追求してゆくこと。主題に直結しない周辺の題材や情景・状況などの説明は、必要最小限にとどめたい。短編小説のなかで、あれもこれも盛り込むことは困難。中心部分(主題・作品の軸)をしっかり書くこと。たとえば、意外な比喩や発想、ユーモラスな展開、ほっとするエピソード、真摯な自己省察など、中途半端にならずに覚悟を決めて書き切る、という勢いで。

 

③    最終場面のもつ意味

 ラストの場面の情景や心情の描き方に、さらなる工夫が必要。安易な「おち」を付けるのではなく、読み手にこのあとの展開を予感・予測させるような余情をたたえることがポイント。作者の思いが空回りして、独りよがりの結びにならないために、その前段階で、「伏線」となるものを準備しておくなど、ひと工夫したい。

 

④    何度でも読み返し、練り直す

 『推敲』の過程に充分に時間をかけ、いくつもの視点(できれば第三者の視点も)で読み返す。語り手と「一人称」の混同がないか、人物の描き分けを明確にする、贅肉をそぎ落とす、不自然なところを修整する、表現・表記をより的確にする、細部の矛盾や重複はないか、物語全体の構成から段落・改行を見直す、さらに句読点の置き方にも配慮する。

 

 

最終稿の直前まで到達しました。「百里を行く者は、九十里をもって道半ばとす」とも言います。ここからの念入りな推敲により、納得のいく発表作品を完成されるように期待しています。

最終回となる次回(12月15日)も、三名の講師の先生をお招きして、7作品の合評会を予定しています。ぜひ、ご参集ください。



 11月17日(土)第1回 短歌入門講座

 日々の暮らしの中の身近な実感、直感を大切に

 講師:島田 鎮子(『沃野』選者) 


 

 今年度第1回の短歌入門講座を開講しました。講師は、歌誌『沃野』選者の、島田 鎮子(しまだ しずこ)先生です。12名の受講者の皆さんとともに、短歌の制作に臨む姿勢、短歌の特徴を踏まえた様々な表現方法、作品鑑賞を通して優れた短歌の条件などを学び合い、確認しながら、創作に挑戦します。

 第1回テーマ「短歌へのご招待~新しい自分の発見を~」の話題から、一部をご紹介いたします。

 

①    短歌とは?

言葉の響きとリズムを味わう定型詩。耳で言葉の響きを味わい、眼で「かな」や「漢字」の配分を楽しむ。悲しい、嬉しいと感情を言ってしまわないで、読み手がそう感じるように表現する。

   生活の様々なシーンで、短歌に込めた「心」を届けることができる。

②    約束ごと

31音の定型詩であること。(字余り・字足らずもある)

5・7・5・7・7のリズムを守る。縦一行に書く。

③    短歌の基本

文体:「文語」と「口語」(混合文体でもよい)

かな:「歴史的仮名づかい」と「現代仮名づかい」(どちらか一方で)

④    作り方

与謝野晶子「じっと観、じっと愛し、じっと抱きしめて作る。何を、真実を」

○メモノート、鉛筆、国語辞典をお友達に。

○57577…まず、言葉を並べて、声に出して何度も読む。

○心と言葉と言葉の流れを一致させる。

○言葉をさがすことは自分と向き合うこと。

…自分の中の眠っている自分(言葉)を見いだす!

 

先生からは繰り返し「実感」「直感」の大切さと、あれこれ欲張って詰め込みすぎない、というアドバイスがありました。約束事の少ない自由さが短歌の特長です。初めのうちは5・7・5・7・7の基本のリズムを大切にして、わかりやすい(=読み手に伝わりやすい)作品を詠むことを心がけてほしいこと。気負って構えずに、素直な実感を、そのまま表現すること。作り続ける中でわいてきた疑問や課題と向き合って、この講座の中で他の受講生の皆さんとともに学びを深めていくこと、などを確認しました。

 

次回は12月15日(土)の開催です。初心者の方も、遠慮なくご参加ください。

 



 11月15日(木)出前講座  金沢市立泉野小学校2年生

 母鳩に届かない子鳩の思いは、哀しい鳴き声に

講師:吉國 芳子(元泉野図書館職員) 


 秋も深まり、北国から初雪の便りが届く頃を迎えました。晩秋の澄んだ光が射しこむ泉野小学校をお訪ねしました。2年生の皆さんとは6月末にもお会いしましたが、今回はその続編で、生活科の「金沢の民話をきこう」の授業でした。講師は「ひょうしぎの会」の、吉國 芳子(よしくに よしこ)先生です。「ヨッシーおばさん!」と声をかけてくれる子どもさんもいて、和やかなムードのお話し会となりました。

 

「デデッポッポのお話」

 あるところに、母鳥の言うことを聞かず、いつも反対のことばっかりする小鳩がいました。親鳥が「やま!」というと、小鳩は、「かわ!」。「みぎ!」というと「ひだり!」、「しろ!」というと「くろ!」、というぐあいで、言うことも、することも、ともかくいちいち反対のことばっかりで、母鳥も腹が立つというより、あきれてしまうことばかりなのです。

あるとき、「いっつもかあちゃんばっかりうまいもん食べて、子どもにはまっずいもんばっかり食わせとるやろ!」と小鳩がふてくされて言いました。母鳥はがっかりしながら、「そんなことがあるはずないやろ。ウソだと思うのなら、わたしが死んだら、腹を裂いて、腹の中を確かめてみるまっし」と言い返す始末でした。

 ある日、とうとう母鳥が死んでしまいました。小鳩はさっそくその腹を裂いてみると、イモのしっぽやら、やさいのくずやら、ドロだらけの葉っぱやら、…腹から出てきたものはびっくりするほどきたなくて、みじめなものばかりだったのです。それを見た小鳩は初めて、母鳥のありがたさを思い起こして、心をゆさぶられたのです。自分がいつも素直でなく、反対の事ばかりしてきたことを、初めて後悔したのでした。と同時に、母鳥のある言葉を思い出しました。「いつかわたしが死んだら、どうかお願いだから、川の縁にお墓をつくっておくれ」ということでした。小鳩は、「かあちゃんの最後のお願いくらいは、素直にかなえてやろう」と決心して、川のすぐ縁に母鳥のお墓をつくったのです。

 ところが、それから雨がふるたびに川の水かさが増して、お墓は崩れそうになるのです。小鳩はそれが心配で、雨がふるたびに「デデッポッポー(お墓がくずれそうだぁ。かあちゃんが恋しいよう)」と声を震わせて、泣きながら叫び、自分を悔いているのです。山鳩がいつも哀しそうに「デデッポッポー、デデッポッポー」と鳴くのは、こんな訳なのです。母鳩は小鳩がいつも反対の事ばかりするので、本当は山にお墓をつくって欲しかったのですが、わざと川につくってくれるようにと言い残したのでした。

 

 このほか、「飴買い幽霊」、「狼を退治した狛犬」の話もご紹介いただきました。102名の2年生の皆さんは、ほんとに明るく元気に参加してくれました。ほとんどの子が、熱心にメモをとりながら聴いてくれました。また、これからも図書館でたくさんのお話を読んで、様々な本に親しんでほしいと願っています。

 

 



 11月11日(日)『朱鷺の墓』朗読会

パリの屋根裏部屋で幸せをかみしめる

講師:髙輪 眞知子(朗読小屋・浅野川倶楽部代表) 


 波乱に満ちた「愛怨の章」も終盤にさしかかりました。今回も朗読小屋・浅野川倶楽部代表の高輪眞知子(たかなわ まちこ)さんの朗読をお聴きいただきました。

 染乃とイワーノフ夫妻は、ロシア革命後に行方がわからなくなったイワーノフの両親を捜し求めてブルガリアに渡り、ひっそりと生活していました。しかし再会を果たせないまま、生活を立て直すためにパリに移ります。薫り高い文化を誇る《花の都》の一隅で、二人は狭くてつつましいアパートに暮らしながら、中華料理店「東園」の店員として働き始めます。「東園」はかつてナホトカで張文国から任された店と同名の系列店でした。そんなある日、染乃はパリの街中で偶然に日本人である、原口竜介と出会います。原口は逓信省の依頼を受けてヨーロッパの電信電話事情を調査に来た技師でした。染乃は、最近の日本における慌ただしく不穏な国内事情を聴くうちに、ロシアの文学や演劇に関心を寄せる彼と意気投合します。数日後、原口は改めて二人が住む屋根裏部屋のアパートを訪ねてきます。プーシキンの詩集を朗読するイワーノフとその脇で編み物をしながら朗読を聴いている染乃の姿は、原口にとって二人の幸福感が静かに沁みてくるような心を打つ光景だったのです。

 

  その晩、原口青年が帰って行った後で,イワーノフと染乃はベッドの中に抱きあうようにして寄りそってよこたわっていた。窓の外にかすかな夜明けの気配があった。あたりは静かで、空気も冷たかった。

「若い人はうらやましい」とイワーノフが言った。「あの人を見ていると、昔の自分を思い出すようだ。何でもたちまち感激して、すぐに大人を崇拝したりする。そんな時代が男にはあるものだよ」

「女にもあるわ」染乃は、ふと機一郎の若い頃の面影を思い浮かべていた。

「でも、そんな気持ちを、やがて灰色の幻滅が待ち構えている。人間はそんな灰色の世界の方がいやおうなしに現実であることを認めさせられて、やがて諦めと共に生きるようになる。日本語でいう人生と、生活とのちがいかな」

「ジーズニ――」と染乃は呟いた。「生活、ジーズニ。いい言葉だわ。あたしはその二つが一緒になったような生き方ができたらと思うの」

「われわれの今の生活はそうじゃないか」染乃はイワーノフの体に、そっと自分の体を重ね合せた。(中略)

「染乃」「なんですか?」「きみはいま、幸福だと自分を思うか」「思います」染乃はためらわずに言った。「心から、本当に幸せだと思うわ」「ありがとう」

 イワーノフは片腕で 染乃の体を抱いた。染乃は彼の手の動きに身をまかせて、じっと目を閉じていた。やがて熱い感覚が体の奥に目覚め、やがて火のように燃えあがった。 染乃は小さな叫び声をあげてイワーノフの肩に歯を立てた。

 

 イワーノフの寝顔を見つめながら、《来年には、日本に帰るのだ…》染乃はそんな思いを何度も反芻しながら、懐かしい金沢の浅野川べりの風景や雪の日の風情を心に描き出します。二人の行く手に、どんなドラマが待ち受けているのでしょう。

 次回(12月9日)は今年度の最終回で、「愛怨の章」の結びとなります。どうぞお誘い合わせて、ご来館ください。

 



 11月10日(土)第7回詩入門講座

 自分と向き合い『船』を編む

  講師:井崎 外枝子(いざき としこ) 

 午後から、第7回目となる詩入門講座を開講しました。受講生の創作した具体的な作品を精読することを通して、それぞれの特長、テーマを掘り下げる表現の工夫、当面の課題などについて学び合いました。講師はつい先日、第46回泉鏡花記念金沢市民文学賞を受賞された、井崎 外枝子(いざき としこ)先生です。

 

①    詩の形・構成の工夫

題名に沿った詩が、内容的に2分割できる場合、「1」「2」(「3」があればバランスよいこともある)とすることができる。各連に番号と小タイトルを付す場合もある。別々に書いた2作品でも、底流するテーマがある場合は、一編の作品に仕立て直すという構成も検討できる。

 

②    内容・表現の精選と吟味

素材が羅列されてイメージがまとまらない場合には、表現する内容を言葉同士の関連・展開を吟味しながら精選してまとめ上げることが大切である。ただし、精選してすっきりしたスタイルが修正前の習作と比べて、作者の息づかいや生々しい感情が薄れて、物足りないものになる場合もある。推敲で表現内容を絞り込み吟味する、という過程の一長一短に配慮したい。

 

③    作者自身の特性・特長を見つめて活かす

さまざまに題材や表現を模索し試行錯誤しながら生まれた作品には、作者自身の個性・持ち味が反映される。身近な人たちへの温かみや丁寧さや気遣い、四季折々の草花や小動物への親しみ、さまざまな出会いや別れに揺れ動く繊細で微妙な感情、雄大な自然や特別な情景を前にたたずむ静寂と孤独、過去の事物や別離への哀惜、時間の経過とともに降り積もる思いと不思議に変容する自分自身の再発見、心の余裕やユーモラスな場面を見逃さずに切り取る感性など……異なる題材を取り込んだ詩作を通して、自分の潜在的な特長を最大限に発揮する表現を追求してほしい。

 

「その言葉の『手ざわり』に好感が持てる」という先生のコメントに共感しました。受講生それぞれの思いはもちろん、表現したい動機も、内容も、表現方法も異なりますが、おひとりお独りの個性がにじみ出た言葉を見いだし、紡ぎ続けることの大切さを改めて確認しました。

 

次回(12月8日)は、発表作品を想定した今年度最後の講座です。皆さんが思いをこめて編み上げた『船』の来港をお待ちしています。

 



 11月10日(土)第7回 小説入門講座

 うまさと深さとの両方にこだわって

 講師:高山 敏(『北陸文学』主宰)

   :小網 春美(『北陸文学』同人)

 

 

 今年度第7回の小説入門講座を開講しました。講師は、同人誌『北陸文学』主宰の高山 敏(たかやま さとし)先生、同じく『北陸文学』同人の、小網 春美(こあみ はるみ)先生です。今年度の講座の成果として同人の皆さんから提出して頂いた作品の内、6作品を対象とした合評会でした。両先生からのアドバイスの中から、話題となった今後の課題をご紹介いたします。

 

①    漢語を多用した文章表現

日常的に使わないような漢語や漢字熟語を用いることで、引き締まった格調の高さを創出できる。反面、物語の展開にも人物の心情にも作者自身の気負いが感得されて、読者にとって親しみにくいものになる懸念がある。初めのうちは、平明で丁寧な文章表現を心がけたい。

 

②    巧みにストーリーを展開する力

幅広い読書経験や文章力の鍛錬を経て、ストーリーを巧みに展開できている作品にありがちな弱点は、じっくりと主題を追求する深み・厚みに欠けること。豊かな展開力と深みのある人物の創造を両立させたい。

 

③    丁寧な説明と大胆な省略

人物の背景、心情描写、物語の経緯など、つい丁寧になりすぎることが多い。丁寧さを必要とする場合と、省略による精選・吟味された表現がふさわしい場合とを見極めなければならない。省略により、読者の想像力が膨らむことも小説の醍醐味である。

 

④    創造力・想像力に満ちた意外な展開があるか

読者の意表を突く思いがけない展開や結末の工夫を。ありきたりの展開から、想定される結びにつなげるだけでは、読者の共感、読み味わう楽しさ、想像力を駆り立てられる歓び、といった読後の充実感は得られない。

 

⑤    推敲を何度でも繰り返して、文章を練る

矛盾、行き違い、わかりにくさ、視点の混乱、紛らわしさ、時間の経過、不要な重複、段落や改行、用字・用語の使い分けなど、あらゆる観点から文章内容を精査して、完成度を高める努力に期待する。細部にまで拘り、句読点ひとつにも、神経の行き届いた表現を目指して欲しい。

 

 

次回(最終回)では、7作品の合評を予定しています。講師の先生のアドバイスを充分に踏まえた、最終原稿の完成を心待ちしています。

 



 11月3日(土)朗読『徒然草』と横笛の調べ

 つれづれなるままに

 朗読:神田 洋子(ストーリーテラー)

 横笛:藤舎 眞衣(横笛奏者)

 

 古典の日に協賛して、「朗読『徒然草』と横笛の調べ」を開催いたしました。秋晴れに恵まれた文化の日を、豊かに彩るイベントとなりました。朗読はストーリーテラーとしておなじみの、神田 洋子(かんだ ひろこ)さん、横笛演奏は北國文化センター等でご活躍中の、藤舎 眞衣(とうしゃ まい)さんです。

 『徒然草』は鎌倉時代末期(1330年頃)に成立した吉田兼好による随筆集として知られています。清少納言『枕草子』、鴨長明『方丈記』と並んで古典文学の三大随筆の一つとも称されます。自然や季節についての感想、身近な人々のエピソード、自分自身の思い出や折々の感懐などを、時には鋭い観察力で、時にはユーモアを交えてつづっています。

 

 【序 段】

  つれづれなるままに、日くらし、硯(すずり)にむかひて、こころにうつりゆくよしなし事を、そこはかとなく書きつくれば、あやしうこそものぐるほしけれ。

 

 【第百十七段】 ~いい友 わるい友~

  友とするにわろき者、七つあり。一つには、高くやんごとなき人。二つには、若き人。三つには、病なく身強き人、四つには、酒を好む人。五つには猛く勇める人。六つには、虚言(そらごと)する人。七つには、欲深き人。よき友三つあり。一つにはものくるる人。二つには、医師(くすし)。三つには、知恵ある友。

 

今回の第1部では、全二四四段の中から選択した十四段分を、横笛とのコラボを交えて、神田さんに朗読していただきました。ご来場のお客様に聞き覚えのある、懐かしい一節も含まれていたことでしょう。

 第2部では、藤舎さんの横笛によるミニコンサートで、「鶴」「月」「秋メドレー(もみじ、里の秋、旅愁)」「三日月」の4曲をお楽しみいただきました。

会場の1階のサロンは満席の盛況ぶりでした。秋たけなわというこの時節にふさわしい、心にしみてくるような言葉と澄んだ空気を震わせる音色に満たされた、文化の香り高いひとときでした。

 

ご出演頂いた、神田さん、藤舎さんの今後一層のご活躍をお祈りいたします。



 10月28日(日) 第2回 金沢の怪談と奇談をたずねて

 伝燈寺の身代わり地蔵

 講師:藤島 秀隆(金沢工業大学名誉教授)

 曇天の下で金沢マラソン大会が開催された午後、第2回となる「金沢の怪談と奇談をたずねて」が開講されました。今回も金沢工業大学名誉教授の 藤島 秀隆(ふじしま ひでたか)先生をお招きして、金沢の謎めいた民間伝承の一つであり、寺院縁起でもある「伝燈寺の身代わり地蔵」についてのお話を伺いました。

 

【伝説の概略】

昔、伝燈寺の辺りに山賊とその女房が住んでおった。ある日にここを通りかかったご坊さまが「道に迷うてしもた。どこへ行けばいいやら。ここに明かりがあったので来たがや。今晩一夜どこでもかまわんから、雨しのぎに泊めて欲しい」と言うた。「わたしは泊めてあげたいけど、泊められん。家のおやじが泥棒やさかい、坊さまが泊まったら斬られて命もなくなるから、行ってくたんせ。すぐあっちに行ったら地蔵堂があるさかい、そこにでも泊まってくれえ。わたしがあとに食事を隠れてさしあげるわ」と女房が言ったと。

伝燈寺のお寺は高いところにあって、その下に小さい地蔵堂があったのや。そこに坊さまは泊まったと。そのうち山賊が帰ってきて「わしゃぁ、道で会うたがや。坊さんがたしかここに入ったのを見とったぞ。どこに逃がしたぁ」と女房に言う。「実は坊さまがここに泊まったら命がねぇさかいに、地蔵堂に行って泊まれと教えたがや。おそろしいもんじゃさかいに、そう言うたんや」「よし、わかった」と、昔の泥棒やさかい、地蔵堂へ行って刀で斬りつけたがやってね。斬る手応えがあったんやて。コチンと、これは殺られたと。

翌朝、坊さんの装束を盗もうと思って山賊が地蔵堂へ行ったら、その坊さまはどこもなんともなくてお経を詠んでおったと。坊さまのからだには何の異状もなかったけど、地蔵様の鼻の端に刀痕があったと。地蔵様がお坊さんの身代わりになりましたので、村の衆はこれを『身代わり地蔵』と呼ぶようになりましたと。それから、あの人は泥棒やったけど懺悔したと。ほんで泥棒しないようになったと。(参考『金沢の昔話と伝説』)

 

【類話1】

臨済宗妙心寺派の伝燈寺の開基、恭応運良禅師がこの地にあった地蔵堂に一泊した夜、悪四郎というものが暗中に斬りつけて手応えがあった。翌朝見たら、禅師は自若として端座し、ただ石地蔵の鼻先に刀痕を残すだけだった。悪四郎は驚き懺悔して弟子になった。これが伝燈寺二世の至庵綱存和尚だという。(『加賀能登の伝説』より)

 

【類話2】

八坂の曹洞宗永福寺八代目の和尚が若い自分、富山での葬式の帰りに倶利伽羅峠にさしかかると、二人の山賊が現れて脅した。和尚が無視して通り過ぎると山賊は追いかけてきて、左肩に斬りつけ、さらに両足を斬り払った。それでも和尚は平気で歩いて行った。驚いた山賊は悪事を詫びたという。その時分、永福寺の本堂では弟子たちが読経中だったが、観音様を納めてある庫裏の扉がひとりでに開き、また閉まった。弟子たちが観音様を見ると、真っ赤な血に染まっていた。寺に帰った和尚が見ると、観音様の左肩と両足からたらたらと血が流れていた。それから、永福寺の観音様は身代わり観音と呼ばれて、村人たちに崇められたという。(『加賀能登の民話』第二集より)

 

伝燈寺に伝わる民話として、「狛犬の狼退治」の話もお聴きすることができました。創建は14世紀まで歴史をさかのぼる夕日寺地区の古刹・伝燈寺は、石像地蔵座像、恭翁運良画像(市文化財)の他中世文書など4点を所蔵し、長年地域の方に信仰され大切に守られてきたとのことです。現在、伝燈寺町にお住まいの方は3件だけという現状だそうです。

加賀藩史料、日本伝説体系、郷土の民話・伝説集、加越能寺社由来など数々の資料をふまえた歯切れよく、丁寧なお話でした。30余名の皆さんに、熱心に受講していただきました。

次回(最終回)は「三州奇談をめぐって」のテーマで、11月25日(日)に開催予定です。どうぞ、お誘い合わせてご参集ください。

 



 10月21日(日) 第6回『朱鷺の墓』朗読会 

 本当に長い、遠い旅に

 講師:髙輪 眞知子(朗読小屋・浅野川倶楽部代表)

 

 日ごとに秋の深まりを感じる午後、五木寛之作『朱鷺の墓』の朗読会が開催されました。

今回も朗読小屋・浅野川倶楽部代表の髙輪 眞知子(たかなわ まちこ)さんによる朗読をお聴きいただきました。

 革命後の混乱の渦中にあるペテルスブルグでの生活に決別した染乃夫婦は、夫イワーノフの両親の行方を探し求めてブルガリアにたどり着きます。千数百年に及ぶ長い歴史を誇るリラの僧院の知人のもとに身を寄せていた二人ですが、両親の消息はつかめないままでした。染乃はイワーノフと伴にヨーロッパの大きな街で西洋料理の修業を積んで、祖国である日本に帰って西洋風のレストランを経営することを思い立ちます。当面の旅費や生活費を捻出するという難題がありましたが、英国人美術商であるスチーブンソンの粋な計らいで、リラ僧院の副修道院長・ヤナーシュからの贈り物である貴重なイコンを高額で換金できることになり、新たな展望が開かれます。

 遙か遠い金沢での出会いからこの日に連なる、長い変遷と流浪の歳月をしみじみと回顧する二人でした。

 

  

  「本当に長い、遠い旅をしてきたものだわ」

   染乃は頭の中で、自分がたどってきた道を世界地図に赤線を引くつもりで思い出した。

  「いろんなことがあった」イワーノフが呟いた。

「私はもう、正義が何か、人民が何か、祖国が何か、そんなことのすべてがわからなくなってしまった。革命から逃げ、祖国から逃げ、もう失うものはなにもない。いや、ソメノ、あなただけが私の友だ。私は意思が弱く、最後まで本当にプロレタリアートの仲間ではいられなかった。大事な場所でやはり貴族階級の腐った心が頭をもたげてくるんだよ。私は帝政ロシアの汚れた血を引きついだ人間なんだ。こんな男を、あなたは軽蔑するだろうな」

「いいえ」
   染乃は首を振り、イワーノフの胸に自分の頬を押しあてて泣いた。

「あたし、あなたを軽蔑したりしません。あなたはあなたであるだけで充分なんです。汚れてるのはあたしです。あたしにとって、あなたは勿体ないくらいなんです。

あたしの過去に起こった出来ごとを、あたしはまだ全部話していません。それを聞いたら、あなたはきっと……」

「そんなことは関係ない」イワーノフは少し怒った口調で言った。

「それはあなたの責任ではない。(中略)あなたはシベリアの奥地まで独りでやってきて、私を待っててくれた。それで充分だよ。それだけでも、私は幸福だ」

「ごめんなさい」染乃はふと心の中に激しく盛り上がってくるものを覚えてしゃくりあげた。

  

 

瞬く間にブルガリアの日々は過ぎ去りますが、そんな中でも染乃とイワーノフは互いをいたわり、慈しみつつ、心の絆を一層確かにして、新天地のパリに向かう準備を始めるのでした。

祖国の日本が、愛する二人にとって安住の地になるのか。まだ、長い旅路と試練とが待ち受けているような気配も漂うパリへの旅立ちです。次回(11月11日)もぜひ、ご参集ください。 

 



 10月20日(土)第6回 小説講座

 「恵まれていること」は決して恵まれていない

 講師:寺本 親平(作家)

 午後からは、第6回目となる小説講座が開講されました。講師は作家の 寺本 親平(てらもと しんぺい)先生です。今回は先生の豊かな執筆経験を踏まえて、小説を書くための心構えや実作に臨む際の基本姿勢を中心に、熱のこもったお話をいただきました。

 

①    『四住期』(インドに伝わる教え)より

・「学生期」(がくしょうき 0歳~25歳)誕生して、人間としての生きる知恵をつけるための学びの時期

・「家住期」(かじゅうき 25歳~50歳)社会人として伴侶を得て家庭をつくり、仕事に励む時期

・「林住期」(りんじゅうき 50歳~75歳)仕事や家庭から卒業して林に庵を構えて、自らの来し方行く末を深く瞑想する時期

・「遊行期」(ゆぎょうき 75歳~100歳)林の庵から出て、思うままに遊行して人に道を説き、人の悩みに耳を傾け、人生の知恵を人々に授ける時期

*このような教えを踏まえて、自らの来し方を検証しつつ深い思索を重ねる中で、理想的な生き方を追求したい。林の庵から出て自由な会話を交わし学びを広げたいが、それができないから小説を書いている。

 

②    恵まれているか、恵まれていないか

 才能豊かで、優れた遺伝子を持ち、詩歌などのジャンルにも一定のレベルを維持できて小説に向き合おうとする人。その正反対で、様々なコンプレックスを抱え込み、経済的な厳しさ、もろもろの不運・不遇に次々と直面するような逆境の中で小説を書こうとしている人。一般に前者は、「恵まれている」と思われがちだが、不運や苦境を乗り越えるために必死で苦労を耐えしのいでゆく、という経験ができない分「恵まれていない」といえる。

 自分の今のレベルを認識し、そこから上積みしていく術を模索しなければならない。自分に、社会の一員として生きる豊かな「背景」を自覚することが大切である。背景が貧しくて曖昧ならば、人の心に響く創作は覚束ない。

 

③    大切な準備を整える

 人に読んでもらう作品を書こうとする者には、自分こそが…という熱い思いを持つ一方で、人を思いやる心が不可欠である。人間とはどういうものかを追求する上でも、作品を読む人たちや作品に関わる人たちにどのように共感してもらえるかを、いつも念頭に置くこと。

 どこに向かって、誰に向かって書こうとしているのか、という目線を定めること。自分の持ち味・特性をなるべく早く自覚して目標設定することが望ましい。言い換えると、自分の立ち位置を確認し、自分の性格と向き合って、自分にふさわしい道(分野)を見極め、絞り込んでいかなければならない。

 

④    地道な作業の積み重ねを辛抱強く

 ものを書くことを第一とする者に、日常の多弁(おしゃべり)は不適切と言える。人生修行ともいえる辛いできごと、興味深いエピソードなどを踏まえたものを地道に言葉に置き換える、丁寧に言葉に紡ぐ作業を積み重ねていくことが大切である。

 書けなくなる時期や創作の壁にぶつかる時期にあっても、ともかくあきらめずに辛抱して書き続けること。その辛抱をくぐり抜けたあとにご褒美がある。

 安易に人(作家)と比較しない。自分の中にある独自性にうめきながら向き合い、突き詰める努力を続けることが修業時代の要諦である。

 

自分はどこまでも行けるという可能性を信じる一方で、自分はまだまだ最低だという出発点の自覚も必要だということ。また、熱くなったら冷やす、冷え込んだら熱くするという両極端の意識を、揺れながら繰り返し、自覚して書き続けてほしいという先生からの熱いエールをいただきました。

様々な経験を創作の糧として、想像力・創造力を磨きつつ深い思索を繰り返し、積み重ねる。それを辛抱強く言葉に移し替えてゆく先に、ようやく作品が生まれる。決して甘い道ではないが、いずれは自分自身が納得して書き上げた作品が読者に通じるものになる、という確信と希望を得られたひとときでした。

 

次回からの11月・12月は、作品の合評会です。ぜひ、ご参集ください。




 10月20日(土)第3回 川柳入門講座 
 没句を吟味して今後の一里塚とする

 講師:城山 悠歩(石川県川柳協会事務局長・北国川柳社同人)

 

 川柳入門講座は、今年度の最終回を迎えました。講師は石川県川柳協会事務局長で北国川柳社同人の、城山 悠歩(しろやま ゆうほ)先生です。今回のテーマは「川柳で人・社会につながる」でした。あらかじめ提出して頂いた受講生の作品を互いに読み味わって合評し、先生からのアドバイスをいただきました。

 

【題詠①「まじまじ」】

  初孫に命のリレーまじまじと     (佳 作)

  我顔をまじまじと見てあきれはて  「あきれはて」の理由が不明。「我が顔」とする。

  まじまじと見る孫の瞳に浄化され  「瞳」は「目」か「眼」で

  度を越してまじまじ見るとセクハラか  (佳 作)

    美少女にまじまじ見られ若返る   「若返る」は今一歩

 

【題詠②「期  待」】

  将棋界ニューヒーローで活気出る  「出た活気」と結ぶ

  筋トレで期待の重さはねかえす    (佳 作)

  末っ子の期待は軽く愛ばかり    「期待は薄く」か

  期待したいちじくがないからすめが 「カラス奴」と表記を変えて

  夫婦とは期待をしないモットーに  「~とは」と構えすぎない

 

【雑  詠】

  おてらくご法話も落語も笑い付く  「お寺」「落語」がわかりにくい

  ひとり身で寂しかないか母悲し   「ひとり身」の息子を気遣う母

  よう生きた鏡の自分を褒めてみる   (佳 作)

  足るを知る生き甲斐探す道標     (佳 作)

  瓜二つ言われてみれば複雑だ     親子か、きょうだいか 

 

 作者の説明を聞いて初めて、ああそうだったのか…と理解できる句は、伝達性と一般性に課題がありそうです。説明不足、ひとり合点、用語の不適切に陥っていないかという吟味が必要です。また、没句(選者に取り上げられなかった句)の取り扱いとして、作品を謙虚に見直す、推敲して再挑戦するといった研究と作業を経ることで、句作の深化に繋がる一里塚として活かすことが大切である、という貴重なアドバイスも頂きました。

 

 受講生の皆さんの今後の、一層のご精進をご期待しています。




 10月13日(土)第6回 詩入門講座 

 井崎外枝子先生が、第46回泉鏡花記念市民文学賞を受賞されました

 講師:内田 洋(『禱』同人)

 受賞作品は、詩集『出会わなければならなかった、ただひとりの人』(草子舎20017.12)です。おめでとうございます。授賞式は10月21日(日)午後3時から、金沢市民芸術村で開催されます。

 

 午後から、第6回目の詩入門講座が開講されました。今回の講師は詩誌『禱』同人の内田 洋(うちだ ひろし)先生です。受講生の皆さんの作品を読み合わせして感想を交流しながら、それぞれ作品の特長を感得するとともに、今後の創作上の課題についてアドバイスを頂きました。

 

①    抽象語をどう読み取るか

「時の影」日時計、長針・短針にさす光線とその影

「偶 然」思いがけないこと、「必然」との対比

「奇跡のように現れ」虹のような存在か

*経験の集積を踏まえて、抽象語の意味的連関をさぐること

*読み解くヒント:『チャンスには後ろ髪がない』一旦逃したら、それきり

②    たくさん描く中で、収斂・整理されていくもの

例:「老い」をどうとらえ、表現するか。

*怖れや不安などを日常の実感を具体的に切り取ること。さらに主題に迫る過程を

*見つめて表現を練り直す。安易なまとめ・方便で結ぶことは避けたい。

*たくさんの習作を重ねて、「本物」にたどり着く

③    特別な題材・テーマを選び取る

例:三方五湖の年縞(世界的にも希有な7万年の堆積)

*叙景と叙情のダイナミックな対峙または融合

*主観と客観の混交による別次元の特別な感動

*悠久の歴史に育まれた自然と個人的な感懐との対比

④    季節を描くために突き詰めるもの

例:深まる秋の感懐

*具体的な秋の音と声とのモザイクで情緒を喚起

*題材へのより深く厳しいアプローチを

*散在するドラマ(情景・情緒)をより印象的にする工夫と挑戦を 

⑤    感情・感性に訴える

*知識や経験の枠に収まらないイメージの追求

*漠然としたイメージに向かって書く

*何者にも拘束されない奔放な言葉の連鎖

*実験的な挑戦を重ねてたどり着く独創的な時空

 

個性的・独創的な表現の多彩さを追求することとその表現を読み解く上での飽くなき葛藤、という厚い壁に直面した時間でした。

具体的な日常を切り取った表現は、誰にも理解されやすく、親近感を持って受け入れられる反面、その題材に更に大胆に踏み込んだ表現が求められます。一方、抽象的な概念を連ねて構築されたイメージを追求した表現は、読み手に与える不思議なインパクトとともにその意味内容を理解する難しさと厳しさが待ち受けています。

講座も回を重ねるごとに、受講者の個性や特徴が明確化するとともに、どのように受容して感想や意見を交流するかという姿勢も確立されてきたように感じました。少人数のよさが活かされていることもポイントです。

 

次回(11月10日)は、井崎外枝子先生の担当で、実作品の合評4回目となります。傍聴もできますので、関心ある方のご来館をお待ちしています。




 10月13日(土)第6回 小説入門講座

 魚を描くなら、魚の棲む水を描きなさい!

 講師:小網 春美(『北陸文学』同人)

 朝晩の涼しさに、日ごと秋の深まりを感ずる頃となりました。文芸館のサネカズラはレモンイエローの可憐な花を次々と咲かせています。

 第6回小説入門講座は、「描写の力」をテーマとして開講されました。講師は、『北陸文学』同人の小網 春美(こあみ はるみ)先生です。この日が原稿提出の日でしたが、今後も小説の創作に欠かせないポイントについて、丁寧にお話しいただきました。

 

①    書き出しと結び

書き出し、結びともに心血を注ぐ。ちょっと驚かせる書き出しもあるが、初心者のうちは風景描写など無難に。結びでは敢えてオチを付けようとせず、まだ続きがあると匂わせるような余韻を持たせることを主眼とする。

②    全体の構成

「起承転結」に拘ることはない。流れをつかめば、特に意識しなくてもそれなりの構成が形づくられる。

③    描  写

小説の骨格に肉付けする役割。説明ではなく、書き手の主観を入れたものが描写である。描写の豊かさは、その文芸作品が人の心を動かす第一の条件と言える。

自然描写に心理描写が重なる場合も少なくない。心理描写では比喩表現がポイント。

実際に足を運んで丁寧に観察し、細部の描写を充実させる。

生けるまことの人間像に、その思想が吹き込まれる。(チェーホフ)

 

*優れた描写の例

【村上春樹『海辺のカフカ』より】

 線路は海沿いをしばらく走ってから、内陸に入る。高く繁ったとうもろこしの畑があり、葡萄棚があり、傾斜地を利用したみかんの畑がある。ところどころに灌漑用の池があって、朝の光を反射させている。平地を曲がりくねって流れる川の水は涼しげで、空き地は緑の夏草におおわれている。犬が線路わきに立って、通り過ぎる電車を見ている。そういう風景を眺めていると、僕の心にもう一度温かく穏やかな思いが戻ってくる。大丈夫だ。僕は大きく深呼吸をしてから自分にそう言いきかせる。

【川端康成『雪 国』より】

 ふとその指でガラスに線を引くと、そこに女の片眼がはっきり浮き出たのだった。(中略)娘はこころもち首を傾けて、前に横たわった男を一心に見下ろしていた。肩に力が入っているところから、少しいかつい眼も瞬きさえしないほどの真剣なしるしだと知れた。女の印象は不思議なくらい清潔であった。足指の裏の窪みまできれいであろうと思われた。山々の初夏を見てきた自分の眼のせいかと、島村は思ったほどだった。その伏目は濃い睫のせいか、ほうっと温かく艶めくと島村が眺めているうちに、女の顔はほんの少し左右に揺れて、また薄赤らんだ。

 

④    キャラクターの設定

魅力ある主人公を。悪人であっても人間として共感できる設定を。読み手にインパクトを与える意外性を工夫する。

家族構成、きょうだい、夫婦、親子の繋がり、生きた人間を描く

外見・性格など誰かにあてはまる想定だと効率的

二人を描く場合、意図的に両極端(二面性)の設定で描き分けする

 

このほかにも、読者自身が想像を膨らませて作品の行間を読ませるような描写を工夫することや、五感に訴える表現に果敢に挑戦することもアドバイスして頂きました。

11月・12月はいよいよ作品の合評会です。これまでの講座で学んだ創作のポイントをふまえた、特色と味わいのある作品に出会えることを期待しております。




 10月10日(水)出前授業 金沢市立四十万小学校1学年

 魔女の呪文って怖い!

 講師:吉國芳子(元泉野図書館職員)

 穏やかな薄曇りの朝、金沢市南部に位置する四十万小学校をお訪ねしました。1年生(3クラス・83名)の生活科で「昔話を聞こう」の授業でした。講師は元泉野図書館職員の吉國芳子先生です。ぜひ楽しい昔話を、という要望にお応えして、最初にご紹介したのが、カリブ海の島、ジャマイカに伝わる「アナンシと5」というお話です。

 

 アナンシはホントに悪いやつで、普段から何か自分が得をするようなチャンスはないかと伺っていました。あるとき、魔女の「5」のすみかの近くでのぞき穴から、アナンシは「5」の様子を観察していました。「5」は恐ろしい魔女でしたが、自分の「5」という名前が大、大、ダイッキライでした。この日は自分の魔法の威力を高めるために、刈り集めた草を山ほど大鍋にぶち込んでぐらぐら煮立てて、もくもくと妖しい煙をたてていました。アナンシがよく見ると、その煙に巻かれた真ん中で魔法の杖を振り上げ、やたらに振り回して、何やら怪しい呪文をとなえているのです。「ワシの名前の5といったやつ、命はないぞ。5と呼んだやつ、皆殺しだ。呪い殺してやるウ・・・」と恐るべき剣幕です。アナシンは、「しめしめ、これはご馳走にありつけるチャンスかも・・・」とつぶやいて薄気味悪く笑いながら、その場を立ち去りました。

 さて、それから数日後のことです。アナンシはサツマイモを掘り出して、動物たちがよく通る道の脇に、そのサツマイモの山を五つ作りました。さっそく、そこへアヒルの奥さんが通りかかりました。「こんにちは、アヒルの奥さん。ご機嫌いかが」「あーら、アナンシさん、こんにちは。ご機嫌ですわよ!あなたはいかが?」「それが、元気がでなくてこまっているんです」「あーら、どういうわけで?」「何しろあたまがわる過ぎて、サツマイモの山をいくつ作ったかわからなくて、どうしてもちゃんと数えられないんです。アヒルさん、大きな声で数えてくれませんか?」「わけないわ。1,2,3,4,…5!」すると、あら不思議。アヒルの奥さんは「5!」と叫んだ途端に倒れて死んでしまいました。アナンシは、にんまり笑って死んだばかりのアヒルに近づいて、アヒルをむしゃむしゃと丸ごと食べてしまいました。

 しばらくすると、ウサギの奥さんが通りかかりました。アナンシは、またおんなじ様に、サツマイモの山をウサギに数えさせ、おんなじ様に倒れて死んでしまったウサギを、またおんなじ様にむしゃむしゃと丸ごと食べてしまいました。

 すっかり満腹になったアナンシのサツマイモの山の通りに、今度はハトの奥さんが通りかかりました。ところが、ハトの奥さんは「1,2,3,4,…アタシの乗ってる分!」「1.2,3,4,アタシの乗ってる分」と数えるばかりです。いらだったアナンシは、「そうじゃないだろー!こうやって数えるんだ!いいか!1,2,3,4,…5!!」と大声で叫びました。その瞬間、アナンシの命は突然絶たれて、空しく死んでしまいました。

 

 このほか、日本の昔話「むかでのおつかい」、金沢の民話「宝泉寺のネズミ退治」が披露されました。1年生の子どもさんたちはとてもお行儀がよく、集中して参加してくれました。ひと言感想もしっかり発表できました。これからも図書館などを利用して、たくさんのお話に親しんでくれることでしょう。また、お会いしたいものです。




 9月30日(日) 第1回 伝承文芸講座

 加賀國の白拍子、仏御前にまつわる伝説

 講師:藤島 秀隆(金沢工業大学名誉教授)

 

 台風の進路やその影響が気になる午後、今年度第1回目の「伝承文芸講座が」が開講されました。講師は金沢工業大学名誉教授の 藤島 秀隆(ふじしま ひでたか)先生です。今回の題目は、「仏御前伝承の謎を探る」~『平家物語』以降の民間伝承~」です。かつて平清盛が全盛を誇った平安時代末期に、その寵愛を受けた加賀國生まれの白拍子・仏御前(ほとけごぜん)の生涯を中心とした伝承について学ぶ講座でした。

 

①    白拍子から出家まで

 都で知られた祇王は白拍子の名手で、清盛に愛されて母とぢ・妹祇女とともに幸福な生活を営み、世の羨望の的となる。三年後、加賀國生まれの白拍子で十六歳の美少女であった仏御前が現れて清盛の寵愛を得ると、たちまち祇王は追い出された。いったんは自殺まで考えた祇王だが、出家して嵯峨の奥に隠棲した。その後、栄華の頂点にあった仏御前は世の無常を悟り、出家して祇王らの庵室を訪れた。祇王らも感涙にむせび、四人で草庵に籠もって仏道を修め、往生を遂げたという。現在の奥嵯峨の祇王寺は、その住居跡に建立された寺と伝えられている。

 

②    仏御前の出生地など

 『平家物語』の諸本では仏御前の出生地を加賀國と記しているが、どこを指すのかは未詳である。加賀の伝承によると、仏御前は加賀國能美郡中海村大字原(小松市原町)の出身で「原」(往古、畑の原)が伝承地と伝えられている。世阿弥の作と伝えられる謡曲「仏原」によると、仏御前はのちに生国加賀國仏の原に帰って草堂に住み一生を終えたと伝えている。

 

③    藩政時代の伝承より

宝永年間に原の村民・宗左右衛門の記した『仏御前事蹟記』は、仏御前像の縁起である。ここで、清盛が別離に臨み仏御前に守り本尊の屨行(くつはき)阿弥陀如来の木造を与えたことが記されている。

また、文化十二年に金沢浄土宗大円寺の僧侶により執筆された『仏御前影像略縁起』によると、仏御前は嵯峨の庵で祇王姉妹とともに住んだ後、清盛より賜った履行阿弥陀如来を背負い、安元二年(1176)春、美濃國穴間谷を越え故郷の原村への帰路、白山麓木滑の里で清盛の子を出産したが、その子は死んだという。原村に帰り、治承四年(1180)八月に二十一歳の若さで永眠したという。

 

 

④    郷土の伝承では

 さらに郷土の伝承によると、仏御前は帰郷後には原村で草庵を結び誦経に明け暮れた。一説では、村人の厚情で小さな茶店を開いたところ大変に繁盛したという。彼女の美貌に慕い寄る村の男衆が多く、それに嫉妬した村の女達が共謀して、彼女を殺したと伝えられている。別伝では、仏御前が懐妊したとの噂が流れ、抗議して自殺したともいう。仏御前の死後、村の女が昼間に出産するときには必ず大風が吹くという。村人は祟りを怖れ、雨戸を閉じ産室を暗くして出産するのを習慣としたと伝えられている。

(藤島秀隆『仏御前』(北國出版社 昭和54)、『加賀・能登の伝承』桜楓社 昭和59)

 

講座の後半では、藩政時代の2つの伝承資料である『仏御前映像略縁起』、『大円寺の中興心岩和尚と仏御前の伝承』を中心に、仏御前が帰郷してからの生活や近隣の人々との交流について、仏御前の遺品として現代に伝わる宝物について、また、富山、福井、新潟などにも伝えられる仏御前の物語についてもご紹介頂きました。

次回は、10月28日(日)に開催を予定しています。テーマは「伝燈寺の身代わり地蔵と狛犬」です。どうぞお誘い合わせの上、ご来館ください。




 9月15日(土) 第5回 小説講座

 十分に構想を練り、工夫した表現で造形する

 講師:宮嶌 公夫(『イミタチオ』同人)

 午後からは、第5回目となる小説講座が開講されました。

講師には、文学誌『イミタチオ』同人の、宮嶌 公夫(みやじま きみお)先生をお迎えしました。今回のテーマは「小説を読む②」で、前回に津続き実作に臨むポイントを「羅生門」「図書館の海」などの小説作品をたどりながら、具体的な手法や構想、創作上の工夫などを学びとることを目的とした講座でした。

 

1.物語の構造について

芥川龍之介「羅生門」(大正4)を例に挙げて、物語構造の典型的なモデルを確認しました。従来の起承転結では集約されない近代的な複雑さも孕んでいます。そうした一定のスタイルから見える構想や展開のあり方が、書く立場においても参考になり、反映できます。

 

2.物語を成立させる基本的要素  …「主題」「構成」「語り」

「構 成」時間軸の推移と場面転換(どこでどう動く)に創意工夫を

「語 り」主人公(下人)に寄り添う語り手と作者に近い語り手が併存する

    (語り手は重層的になることも少なくない)

 

3.物語を紡ぐために  …「どのように書くか」(抜粋)

*「再現」あたかもその場を目の当たりにしたような書き方

恩田陸「国境の南」(『図書館の海』新潮文庫、平成17)より

 かつてはこういう内装ではなかった。あの頃どこにでも見かけた喫茶店だった。入り口のガラスには濃い茶色が入っていて、白い文字で店の名前が書かれている。大きなガラス窓の外には観葉植物の鉢植えが並んでいる。入ったところに白いカラーボックスが置いてあり、その上にはピンク電話と信販会社のロゴの入ったメモ用紙とボールペンが並べて置いてある。カラーボックスの中には、漫画週刊誌と新聞。すぐにごちゃごちゃになるのでウエイトレスは通りかかる度にこまめに直していた。カウンターの上にはステンレスのトレイが置いてあり、規格品のコップが伏せて重ねられていた。三角形の注ぎ口を持った銀色の水差しは、ぴかぴかに磨き上げられていた。濃いブルーのダスターが、きちんと畳んで水差しの下に置いてある。

 カウンターとテーブルは白い合板でお揃いだった。カウンターのスツールとソファは黒の合皮。テーブルの上には、丸いステンレスの灰皿が置いてあった。

 

*「造形」人物の容姿、人柄、仕事ぶりなどを浮き彫りにする(引用は前掲)

 小柄な、細い人だった。当時、年齢は三十歳半ばぐらいだったのではないだろうか。しっかり者の姉、という言葉がぴったりする女性だった。色白の肌は薄く、腕には青い静脈が透けて見えた。長い髪をいつも後ろで一つに束ねていた。白のブラウスに黒のタイトスカート、かかとの低いサンダル。化粧っけはあまりなく、いつも薄くピンクの口紅を引いていただけだが、それが似合っていた。目鼻立ちははっきりしていて、口元はいつも微笑んでいた。

 もともと接客が苦にならない性格だったのだろう。いつもてきぱきしてにこやかで、何事にも流されない強さが感じられた。カウンターに陣取る常連の客とはべたべたしない程度に親しく話をしていたが、他の客の動きにも常に気を配っていた。

 

宮嶌先生による単独の講座は今回が初めてでした。小説を読み味わう一読者としての視点と、作品構造や表現の特色などを分析的にとらえ評論する視点とを重ね合わせて、それらをどのように創作に活かすかを丁寧に解説して頂きました。

講座の結びでは、どのように組み立て、どのように効果的に表現するか、という課題の奥にはやはり、なぜ書くのか、何を一番伝えたいのかという「主題」(創作の核心)を明確に持つことが不可欠であることを再確認しました。

 

次回(10月20日)が原稿締め切り日であり、昨年度まで講師を務めて頂いた作家・寺本親平先生の講話を予定しています。ぜひ、ご参集ください。




 9月15日(土) 第2回 川柳入門講座

 川柳の奥深さを手探りして

講師:城山 悠歩(石川県川柳協会事務局長・北国川柳社同人) 

 雨の朝を迎えました。

 第2回目の川柳入門講座を開講しました。講師は県川柳協会事務局長で北国川柳社同人の、城山 悠歩(しろやま ゆうほ)先生です。今回は、受講者の皆さんの作品の特長や課題を丁寧に吟味しながら、「川柳は奥深い!~作句のポイント・鑑賞のポイント~」をテーマに学習を深めました。「虫」「結ぶ」の題詠に挑戦しました。

 

Ⅰ.作るポイント・味わうポイント

①    題詠(課題吟)の場合

題をそのまま読み込む     …初心者のうちはこちらで

題をそのまま使わずに表現する …慣れてきたらこちらに挑戦する

*題が主役…例えば「右」の場合、「右・左」を対等に表現しない

*同想句・類想句に注意  …最初の発想を避け、視点を変えて独創的な句に

②説明句・報告句を作らない

 その句を原点にして物語を発展させる

  …裏から見る、何かにたとえる、意外なものと結びつける、など

②    推敲する(芭蕉「舌頭先転」)

定型、表記、リズムを吟味し、同想句・類想句、独りよがりを避ける

③    上達の条件

多読、多作、多捨(たくさん作り、たくさん捨てることで、選句の力も向上する)

 

Ⅱ.題詠句より

  【虫】

  蝉時雨元気だったね昨日まで

  ごめんねと殺虫剤をふりまいて

  癇癪の虫を女房に八つ当たり       …「癇癪の虫」は「疳の虫」か

  様々の虫をなだめてハイチーズ

  虫かごがヨチヨチ歩く夏休み      …幼子の提げた大きな虫かご

  【結ぶ】

  あの世でも結ばれたいとウソ言うな  …結句を柔らかく「ウソばかり」

  嫁がきて息子の絆うすくなる     …「結ぶ」と「うすくなる」は逆方向

  過去と今仏壇前で手を結ぶ       (秀作)

  背を正し妻と味わう結び昆布      (秀作)

  赤い糸結んで解いてもう捨てた    …「結ぶ」と「捨てた」は逆方向

  子へ孫へ結んで続く血の不思議     (秀作)

 

 素敵な作品が集まりました。題詠の趣旨をプラスに活かすことを再確認しました。さて、次回(10月20日、最終回)は、「まじまじ」「期待」の題詠各3句と雑詠3句の9句が宿題です。限られた期間ですが、受講の皆さんの「多読・多作・多捨」の精進によるさらなる力作を心待ちしています。 




 9月14日(金) 出前講座 金沢市立兼六小学校2学年

 もう少し早く母親らしい心に目覚めていたら

講師:神田 洋子(ストーリーテラー) 

 小雨が上がって薄日の射すこの日、金沢文芸館の校区である兼六小学校にお邪魔しました。2学年生活科の「金沢の民話を知ろう」の学習で、神田 洋子(かんだ ひろこ)先生に「芋掘り藤五郎」「飴買い幽霊」「おぎん、こぎん」の3つのお話をして頂きました。神田さんも同じ兼六小学校区にお住まいで、その町名を聞くと、「わたしといっしょだ!」のいう声が上がりました。

 この夏休みは猛暑の毎日でしたが、7月半ばからエアコンが不調だったために休暇中のサマースクールや研修でご苦労されたこと、プールの水温が高すぎて利用が大変だったこと。加えて、先日の台風では避難所が開設され、地域の皆さんの受け入れにご尽力された様子などを先生方からお伺いしました。中庭にも、学校の正面にも野菜やグリーンカーテンがすばらしい勢いで、伸び伸びと育っていました。

 

 2年生(61名)の皆さんは元気いっぱいで、この日の学習でも終始集中して参加してくれました。「芋掘り藤五郎」「飴買い幽霊」が始まると、「しっとるぅ!」という声も聞こえてきました。それでも、すっかり神田さんの語りの世界に引きこまれて、とても働き者で欲がなく、すなおで素朴な芋掘り藤五郎の人柄や、貧しくて苦しい中でもなんとか赤ちゃんの命を守ろうとした飴買いの母親(幽霊)の思いをくみ取ってもらえた様子でした。

 最後の「おぎん、こぎん」は仲良い姉妹が川岸の穴にはまって、二人ともおぼれて死んでしまう、という何とも言えないほど悲しいお話ですが、その母親は娘たちが死んだ後にようやく母親らしい愛情に目覚め、深く後悔するだけでなく、改心して剃髪し、姉妹にわびながら供養し続けるというところ。さらに、この悲しい姉妹のことが「手まり唄」になって、明治時代まで金沢の子ども達のあいだに親しまれ、受け継がれてきたという経過をきくと、ほっと心が和むものです。きっと子ども達にも、そんなお話の不思議な魅力を感じてもらえたことでしょう。

 

 明るい皆さんと、またいつかお会いできる日を楽しみにしています。




 9月13日(木) 出前講座 金沢市立押野小学校2学年

 なぁんも食わん『食わず女房』の正体は・・・

 講師:神田 洋子(ストーリーテラー)

 

 秋らしい穏やかな光と風の中で、押野小学校にお伺いしました。第2学年(64名)の「金沢の民話を学ぼう」の出前授業で、お話くださったのはストーリーテラーの神田 洋子(かんだ ひろこ)先生です。

 金沢に昔から伝わる民話の中から、この日は「芋掘り藤五郎」「食わず女房」「おぎんこぎん」の3つのお話をしていただきました。子どもさん達は、入場のときから静かで、しっかりとした態度で学習に参加してくれました。「食わず女房」のあらすじをご紹介します。

 

 むかしむかしある村に、「なぁんも食わん女房はいないか。なぁんも食わん女房がいたら嫁にもらいたいが・・・」と思っている男がいました。ある日、その男の家の玄関先に美しい女が一人立っていました。「わたしは、なぁんにも食わない女です。あなたのお嫁さんにしてください」というのです。男はすぐにその美しい女が気に入って、自分のお嫁さんにしました。

 そうして、一緒に暮らし始めたのですが、一日目、二日目、三日目・・・と、確かになぁんにも食べないのです。男は不思議に思って、仕事に行くふりをして、こっそりと屋根裏に廻って息を潜めて女房の様子をさぐっていました。するとどうでしょう。女はどこからか大きな大きな鉢をを持ってきて、それにいっぱいのお米を入れて、炊き始めたのです。男はいったいどうするのかといぶかしく思って見ていると、いいにおいがあふれてきて、うまそうなご飯が炊きあがりました。女はそのご飯を次々に握り飯にしたかと思うと、何と女の頭がパックリと割れて大きな口になって、握り飯をその口の中にいれて、ぱくぱく、もぐもぐむしゃむしゃと、たくさんの握り飯を大きな口で、あっという間に食べ尽くしたのでした。驚き、あきれた男は女に近づくと、「おまえなんか、出て行けぇ!」と叫びました。「みぃたぁなあー!!」と女が不気味な声で言い返すと途端に、おそろしいヤマンバの姿に変わっていたのです。

 ヤマンバは、たらいに一杯の水をはると、その中に男を放り込み、「いものこぉ、とったぁ!」「いものこぉ、とったぁ!!…」と、大声で嬉しそうに叫んで、男と水の入ったたらいを頭の上にのせたまま、山奥の隠れ家へとずんずん進んでいきました。やがて、男は勇気を振り絞って、道ばたに垂れ下がっていたふじ蔓に勢いよく飛び移ってぶら下がり、たらいの水の中から抜け出すことができました。そうとは気づかないヤマンバは、「いものこぉ、とったぁ!」と叫びながら山奥に追えっていきました。男は何とか命が助かったのでした。

 

 明るく元気な皆さんとともに、楽しく、気持ちよい出前授業の時間を過ごすことができました。2年生の皆さんが、このほかの金沢の民話を調べたり見つけ出したりして、お友だちとお互いに楽しんでくれることを期待しています。

  




 9月9日(日) 第5回『朱鷺の墓』朗読会

 革命の渦中のペテルスグルグで時代の波に翻弄されて

 朗読:髙輪 眞知子(朗読小屋・浅野川倶楽部代表)

 秋雨前線の影響で一日中雨が降り続く日曜日の午後、『朱鷺の墓』朗読会が開催されました。「愛怨の章」冒頭部分を朗読小屋・浅野川倶楽部代表の髙輪眞知子(たかなわ まちこ)さんによる朗読をお楽しみ頂きました。

 

 旧ロシア帝国の都ペテルスブルグの裏通りに潜伏するように過ごす、染乃・イワーノフ夫妻と雁木機一郎の不安定な共同生活の中に、ある日唐突にイワーノフの妹であるナターシャが飛び込んできます。ナターシャは診療所に勤務する看護婦という表の顔と同時に、反革命分子のスパイとして国内の革命軍サイドの裏情報をかき集めて白ロシア関連の組織に提供する立場にありました。イワーノフは、機械工場で働くとともに新ソビエト政府を支持する労働組合に積極的に関わり、新国家の安定した社会体制を確立する、という年来の夢を実現したいと連日奔走します。しかし、元々貴族階級出身の彼には周囲の労働者・プロレタリアートとの軋轢は大変に厳しい壁です。染乃も機一郎もそんなイワーノフのジレンマや苦悩を案じ、いっさいの政治活動や労働運動から身を引くべきだと考えています。

 そんな矢先、妹のナターシャのスパイ行動が発覚して、新政府勢力に逮捕されるという事件が起こります。自分たちにも身の危険が及ぶことを恐れたイワーノフと染乃は、現在の父母の逃避先であるブルガリアに新天地を求めて転居し、窮地に置かれた父母を救い出すこと目論みます。健康上の不安を抱え、余命もわずかだと直感している機一郎は拘留中のナターシャとともにペテルスブルグにとどまることを主張し、染乃夫婦の逃避行を強く後押しします。

 問題はお金の工面することでした。染乃が街中でピロシキを売り歩く中で偶然に知り合った金持ちの老人の前に裸体を晒して、辱めを受ける寸前でその老人を撃退した代償として、資金を得ることができました。そんな悪戦苦闘の渦中で染乃は、自分の心の中にある機一郎の存在の大きさを痛感するのでした。別れが間近に迫ったイワーノフも、改めて機一郎と染乃との絆の深さに気づきます。

 

 

  イワーノフは機一郎の肩を片手で抱いて、彼の耳元に囁いた。

 「別れる前にこれだけを言っておきたかった。聞いてくれるか」

「なんだ」

「染乃は本当は君のことを愛していた。そうじゃないのか」

「馬鹿なことを」

「いや本当だ。彼女はもちろん今ぼくを夫として心から愛してくれている。だが、ぼくと会う前には、あんたを愛していたはずだ。そして今は、ぼくとあんたと二人の男を愛してひどく悩んでいたようだ。ぼくはそれを知っていた」

「そうかな」(中略)

「あんたが一人で後に残ろうとするのは、その三人の関係から身を引くつもりなんじゃないのか」

「おれはナターシャに惚れたのさ」

機一郎はおどけた口調で言った。そしてイワーノフの腕をつかんで、

「ブルガリアでもしも不幸な結果が出たなら、染乃と一緒に日本へ亡命しろ。そして二人でレストランでもやってみるといい。おれは後から女房を連れて客として行くよ」

「強情な人だ」

 イワーノフは首を振って機一郎をみつめた。(中略)

「やっと帰ってきた祖国から、こんなふうに逃げ出すなんて」

「染乃、元気で」

「機一郎さん」

染乃は機一郎の胸に飛びつくように顔を埋めた。

「死なないで。生きててくれれば、きっと会えます。あたしは金沢へ帰ってますから」

「よし。金沢で会おう。これで楽しみがひとつ増えたということだ」

 機一郎は元気そうに笑ってイワ-ノフに手をあげた。

 

そして、小説の舞台は未知の国ブルガリアへ。染乃はイワーノフの両親を救い出して、いずれ夫と伴に元気で日本の土を踏むことができるでしょうか。

次回(10月21日)を、どうぞお楽しみに。 

  




 9月8日(土) 第5回 詩入門講座 

 多様なイメージの広がりを整理して求心力を

 講師:杉原美那子(詩誌『笛』同人)

 

 

 午後からも小雨が降り続く中、第5回目となる詩入門講座を開講しました。講師は、詩誌『笛』同人の杉原美那子(すぎはら みなこ)先生です。前回に続き、受講生の実作品を互いに味わい、先生のアドバイスをもとに作品世界の深化を目指す時間でした。

 話題の一部をご紹介いたします。

 

① 多様なイメージ、そのままでよいか

多彩で豊かなイメージを繰り広げる一方で、それを整理・集約して詩としての統一感を持たせることを考える。それが、主題への求心力に繋がる。

 

②    通常の理解・伝達を求めない作品スタイルもある

①とは異なるタイプとして、氾濫するイメージのダイナミズムを追求する詩もある。

 

③    文語表現の適・不適

文語は簡潔で男性的な歯切れの良さの反面、大時代的で、大げさな印象が先走り、自然なやさしさが損なわれる場合もある。テーマや題材との相性を踏まえる。

 

④    たくさん書いて、たくさんそぎ落とす

その詩にとって必要不可欠な内容・題材を見極め、絞り込んだ展開を工夫する。

 

⑤    「説明」は最小限に

説明することで散文的に陥り、詩から遠くなる。イメージを厳選して丁寧に積み重ねる。

 

⑥    ものや動物に自分を重ねる。

必ずしも対峙するものではない。共通因子をえぐり出す表現を追求することもある。必ずしも人間がしゃしゃり出る必要はない。

 

⑦    言い過ぎない

含み、余韻(余情)、余白、曖昧さを残したままの表現にとどめる。答えや結論は蛇足。

 

⑧    多様な表現形式や表現技法の工夫

常体・敬体、体言止め、会話文、対句、反復、擬人法、暗喩・直喩

連の構成、改行の必然性、「キラリと光る」表現、結びの一行、題名の意図

 

⑨    身近な題材、経験を活かす

実生活を見つめて、社会的な話題・課題・事件の掘り下げ、意外な発見

「ありきたり」から、もう一歩踏み込む独自性を。

 

作品を目の前にすると、詩には実に様々なとらえ方があり、それぞれのイメージが異なること。それによって詩への親近感や評価も格段に違ってくることを再認識する時間でした。例えば、小動物に仮託して自分自身の心情を描く場合でも、生き物と私が向き合うのか、生き物の生態・動きが私自身の心情や状況と一体化したものとするのか、そのどちらでもなく両者を曖昧なままの重ね方や位置関係に置くことがよいのか…読み手が期待するものは各自、異質なものです。

詩の書き方を学ぶことは、詩の読み方を学び深める・広めることが前提と言えるのかもしれません。

 

次回(10月13日)も、受講生の皆さんの力作をお待ちしています。




 9月8日(土) 第5回 小説入門講座

 干し椎茸をつくるように表現する

 講師:高山 敏(『北陸文学』主催)

 

 様々な報道を通して、大阪府を中心とした台風被害および北海道胆振地区一円の震災被害の実態や被災地の状況がしだいに明らかになってきました。被災された皆様には改めてお見舞い申し上げます。

 

 5回目となる小説入門講座は、同人誌『北陸文学』主宰の高山 敏(たかやま さとし)先生を講師にお迎えして「創作のこだわり」をテーマとして開催されました。今回ご紹介頂いた、作家・高樹のぶ子さんのインタビュー資料(平成22)からその一部をご紹介いたします。

 

 「文章力」を磨く習慣

①    人に読んでもらってこそ書く意味がある

書くことは記録であり、自分自身が第三者の目で読むことであり、人に読んでもらうことでもある。それは日記でも同じ。人に見てもらうことで、表現が生まれる。

 

②    人を裏切り、傷つける負い目の中で作家に

20代後半からの10年間は、結婚・出産・離婚・再婚、と暗闇の中を手探りで歩くようだった。人を裏切り、周りを傷つけたことが負い目になっている。その反面、もう怖いものはないという居直りが小説を書くエネルギーになった。

 

③    表現するというのは干し椎茸を作ること

干し椎茸とは、書き手の思いとか感性の表現が凝縮されたものと言う意味。読む側はその凝縮した椎茸を水に浸して膨らんだ状態で読む。だから、書き手が込めた思いや完成よりもっと大きく、様々な要素を持った膨らみ方で受け止められる。

 

④    読者は自分の感性で膨らませて読む

書かれた文章からもっと広く大きな世界を読者が作り上げることができるのが、よい文章。凝縮しない生椎茸のままずらずら並べたものでは、結局、何も伝わらない。

 

⑤    時間を置いてから読み直す

自分の文章を第三者の目でみることが第一歩。自分自身が読者の目を持つことが必要。そうして、ひとりよがりや意味不明な部分が見えることが、文章力をつける第一歩。

⑥    「悲しい」だけでは思いは伝わらない

どんなふうに悲しいのか、別の表現をすることでより鮮明に読者に伝わる。書き手が自分を読者の立場(視線)に置き換えて読む力を養う。そのためにも、たくさん書き、よく読み直し、また書き直す。他人にも読んでもらい、また書き直すプロセスが大切。

 

⑦    私小説では、自分をかばわない

わが身かわいさに自分をかばってしまうのが人間だが、作品世界は平板になる。自分自身に厳しい視線を向けて描くことがポイント。厳しい視線に耐えて思索を深めることが重要。人間とは何か、という自問を重ねて、自分なりの答えを導き出すのが小説である。

 

作品原稿の締め切りが、もう1ヶ月後に迫りました。まだまだこれから…とう受講生も多いように感じましたが、創作の正念場を迎えていることは間違いありません。今日示されたたくさんの資料の中から、作者として特にこだわりたい部分やピンときた大切な部分を反芻しながら、作品の完成を目指して精進してくださることを期待しています




 9月6日(木) 出前授業 金沢市立押野小学校1学年

 初めての俳句づくりに挑戦しました

 講師:福島 茂(元中学校長)

 

 記録的な強風と高潮により大阪府を中心に大きな被害をもたらした台風が去ってほっとする間もなく、この日の夜明け前には北海道の南部を震源とする地震が発生して、自然災害が更に追い討ちをかけるという大変に厳しい9月のスタートとなりました。

 台風一過の真夏日となった午前中、野々市市に隣接する押野小学校に「俳句を作ろう」の出前授業でお邪魔しました。講師は、元中学校長の福島 茂(ふくしま しげる)先生です。2学期開始からまだ4日目でしたが、2クラス、71名の1年生の皆さんは元気いっぱいに学習に参加していました。

 

 初めての俳句づくりに際して、先生から「俳句の約束事」の説明がありました。

①    「は」:はっとしたこと、気づいたこと

「感動」「発見」などを、よく見て書く

②    「い」:いつのことかわかるように

   「季語」(季節を表すことば)を入れる

③    「く」:組み立てを考える

    五・七・五 の句切りを意識して

 

子ども達は思い思いに学校園や校庭を散策したり、先生から提示された写真や作品例を参考にしたり、夏休みの思い出を改めて掘り起こしたりしていました。「五・七・五」の組み立てやつながりを考えながら、何度も何度も指を折っている姿がいじらしく、輝いていました。作品の完成までは、もう少し時間を要する様子でしたが、もうすぐできそうだ、いつのまにかできちゃった!・・・という感触で、俳句への抵抗は時間と共に薄れていくようでした。

押野小学校では全学年で俳句作りを推奨し、継続的に学習を重ねているそうです。昨年、やはりこの時期に「初めての俳句づくり」の学習をした2年生の教室の廊下には、たくさんの夏の俳句が展示されており、とても嬉しく、ほんとうにたのもしく感じました。1年生の皆さんのこれからの成長とがんばりを、心から応援しています。




 8月25日(土) ナイトミュージアム朗読会「こわーい?お咄し」

 能登の素朴な風土や人々の気質をえぐり出す怪談とは

 講師:髙輪 眞知子、中島 佳代、藤塚 曼(朗読小屋 浅野川倶楽部)

 

 朗読小屋・浅野川倶楽部の皆さんをお招きして、ナイトミュージアム朗読会「こわーい?お咄し」を開催しました。出演は代表の髙輪眞知子(たかなわ まちこ)さん、中島佳代(なかしま かよ)さん、藤塚 曼(ふじつか まん)さんの3名で、朗読した作品は、第1回泉鏡花文学賞作家である半村 良(はんむら りょう)の作品集『能登怪異譚』に収録された「箪笥(たんす)」「「終の岩屋(ついのいわや)」「蛞蝓(なめくじ)」の3作品でした。

 作家・半村 良は昭和8年に東京に生まれ、平成14年に他界しました。母の生まれ故郷である石川県旧能都町三波に、昭和18年から20年まで疎開生活を送っています。今回の『能登怪異譚』(9編の短編小説を収録、集英社文庫)はいずれもその能登の方言で語られており、能登の素朴な風土や人々の気質が反映された貴重な作品と言えます。

 

  祖父(じいじ)の代から我家の土蔵の中だけは、人が感心するくらいきちんと片付いとったもんや。そいで、その土蔵をあけてびっくりしたもうた。

はじめは何やら気味悪いだけでよう判らなんだのやけれど、何とあんたさん、土蔵の中が蛞蝓(なめくじ)だらけなんや。恐ろしい数やったわいね。何千、何万という蛞蝓が、床と言わず壁と言わず、びっしり貼りついとった。蛞蝓の上に蛞蝓が乗って、その上にまだ這いまわっとるんやさかいもう……気味が悪いて何て、足を踏み込むこともできんがや。

  腹立ってなあ。間男して家をかまいつけんさかい此様になってしもたんや思うたら、

女房が憎らしゅうて憎らしゅうて。それというのも我家の自慢の土蔵やったさかいや。……ちょうど女房は使いに出て不在や。仕方ないさかい、リヤカーを引っぱって浜の店へ走ったわいね。塩を下し、言うて、店の者も驚いとったわ。そらそやろ、一升や二升の塩やない。俵で買わにゃ足りんのなさかいになあ。

  とにかく俺(おら)、店中の塩をかき集めて売ってもらい、リヤカーに乗せて土蔵へ戻ると、スコップであたりかまわず撒き散らしてやったんや。両手で団子に丸めて壁にも叩きつけてまわった。まるで子供の雪合戦や。おかげで土蔵の中は真っ白けになってしもうた。                          (「蛞蝓」より)

 

 浅野川倶楽部の皆さんの熱の籠もった朗読(語り)は、作品に織り込まれた独特の土の臭いや風の気配を漂わせる、奇想天外で不気味であり、不可解で波乱含みの展開でした。その一方で、お聴き頂いた皆さんには、どこか不思議な懐かしさ、もの悲しいおかしみやぬくもりが漂う、独特の物語世界を感じ取っていただけたのではないでしょうか。




 8月23日(木) のまりんの紙芝居劇場

 小さくても勇気を出して、力を合わせて

 出演:野間 成之(のまひょうしぎの会 代表)

 台風20号が四国に接近する影響を受けて、金沢は猛暑日となりました。熱さ厳しい午後、「のまりん」こと野間成之(のま しげゆき)さんによる紙芝居劇場が開催されました。野間さんは金沢市内にお住まいで、県内の各地を始めシンガポール、上海、北京などでも精力的に紙芝居公演を重ねてこられました。当館の「紙芝居劇場」も、すっかり夏休みの恒例イベントとなりました。この日も一般公募の皆さん、まこと保育園の皆さんの二部構成でお楽しみいただきました。

 「おもしろいのがいい!」「こわいはなしがいい!」という子ども達はのまりんの紙芝居が始まると、ぐんぐんひきこまれて、笑いあり、ドキドキあり、元気いっぱいの歓声あり、というなごやかなひとときでした。

出し物はどれも好評でしたが、のまりんご自身も最後はこれと決めている、という十八番が「まんまるまんま」です。修行中のちびっこ忍者がおじいちゃんに手紙を届ける途中に、大きな蛇ににらまれて動けなくなってしまいます。それでも逃げ出さずに、勇気と知恵をふりしぼって、覚えたばかりの「分身の術」を使い、たくさんの忍者の分身たちと力を合わせておそろしい大蛇を退治するというお話です。「分身の術」のおまじないでは、観客の皆さんの応援を受けるという場面もありました。いつの間にか、見る人と演じる人との一体感が生まれ、和やかなムードで幕を閉じました。

 のまりんの一層のご活躍お祈りするとともに、またいつかお会いしたいものです。




 8月18日(土)第4回 小説講座
 大小の門を自分で開けて、創作の奥に踏み込む

 講師:剣町 隆一郎(小説家)

 午後からは、第4回目となる小説講座を開講しました。今回の担当は、小説家の剣町柳一郎先生です。剣町先生は今月、長編小説『八月九日の暗号 幻花(げんか)』(一起社・刊)を上梓されました。今回のテーマは「小説を読む」の1回目で、角田光代作『さがしもの』(新潮文庫 平成20年11月)をテキストとして、豊かな創作を目指す上で、とにかく「読む」ことが基本である、ということを力説されました。

 
*創作につなげるために「読む」視点


①ストーリーの作り方   …最初の一行と最後の一行の工夫 起承転結に拘らない
              読者を引き込むためにイメージを広げる文章表現を
②創作の糸口       …書きたいことを堅持する テーマがぶれないこと
③好奇心を深める     …取材によるリアリティ、具体性の創出
④ストーリーの面白さ   …状況づくり、個性的なキャラクターづくり
⑤人物の描き分け     …人物の立体感(言葉遣い、しぐさ、服装)を追求する
⑥プロットの作り方    …場面ごとの情景、メモの積み重ねでディテールを
⑦五感を大切に      …観察力、比喩の工夫、情景が生きる描写力・語彙力
⑧会話の作り方      …心に響くセリフ、普段からメモする習慣を
⑨わかりやすさが共感を生む…テーマの切実さを大切に、深いものを簡明に伝える


*角田光代「さがしもの」を読む ~具体的な視点~

○どこに伏線があるか? 作者の言いたいことは何か? 文体の特徴は?

○展開(場面作り)の妙味、モチーフの存在意義、人物の位置やセリフは? 

…という問題意識を持って読み解いてゆく

○注目したい文章表現

 「その日のことはよく覚えている。私は中学二年生だった。学校から帰ると、ダイニングテーブルについた母が泣いていた。ひ、と思った。」

  (単刀直入な作品の冒頭部。重いテーマを軽くさせる。)

 

「けど気にくわないのは、みんな…人がかわったように。あたしにやさしくするってこと。ねえ、いがみあってたら最後の日まで人はいがみあってたほうがいいんだ。…」

(死を目前にした祖母の潔い本音)

 

「死ぬのなんかこわくない。死ぬのを想像するのがこわいんだ。いつだってそうさ、できごとより、考えの方が何倍もこわいんだ。…」

(下線部の祖母の言葉に作者の強いが込められている。その導き方が巧み。)

 

「画家の文章は、読んでいる私にくっきりとした光景を見せる。そうとは気づかず自らの若さをはじけるくらい表出している娘、若さが見せる不思議な美しさと安心感。飾り気のない定食屋の娘の、独特の温度。薄暗く静かな、これから起こるだろういっさいの悲惨も暗澹も、やんわりと、しかし頑として受けつけないような店の内部。何も損なうことなく永遠にあり続けるような、一瞬の光景。そんなものが、見るものを釘付けにする絵画のように私のなかに浮かび上がった。…」

(この定食屋の娘は祖母だ、と主人公が確信する根拠となる秀逸な情景描写。)

 

「あいかわらず、いろんなことがある。かなしいこともうれしいことも。もうだめだ、と思うようなつらいことも。そんなとききまって私はおばあちゃんの言葉を思い出す。できごとより考えのほうがこわい。それで、できるだけ考えないようにする。目先のことをひとつずつ片づけていくようにする。そうすると、いつのまにかできごとは終わり、去って、記憶の底に沈殿している。」

(作品の結びの主人公の感懐。祖母の言葉を回想しながら省察する。)

 

 

小説ではともかく一番書きたいことを導き出すために、人間(登場人物)を描くことが最終的な目的であることを念頭に置くこと。そのための構成・展開・連続性が求められる。色々な作品を読んで試行錯誤することが創作の力になる。読者は心地よい読後感に満足するもの。したがって、読み終えて温かい気持ちになる、さわやかな思いに浸ることができるという共感にたどり着くことが大切である。また、非現実や虚構が作品独自の世界を創出する上で不可欠な場合もあるので、創意工夫に期待したいものです。

先生からは「書けるまでには大小の門がある。その門の一つ一つを自分の手で開けて、奥に入っていかなければならない。」とのアドバイスを頂きました。

 

次回(9月15日)は「小説を読む②」のテーマで、宮嶌公夫先生が担当します。ご参加をお待ちしています。




 8月18日(土)第1回 川柳入門講座

 川柳で「自分史」を刻みませんか

 朗読:城山 悠歩(石川県川柳協会事務局長、『きたぐに』編集担当)
 

 お盆休みを過ぎたとたんに、不思議と秋の気配が漂ってきました。

 午前中には、第1回目の川柳入門講座を開講しました。講師は石川県川柳協会事務局長で、川柳同人誌「きたぐに」の編集者でもある、城山 悠歩(しろやま ゆうほ)先生です。今年度の受講生はいずれも初心者の皆さんが多いということで、川柳とは何か、俳句とはどう違うか、どのように詠むかという解説が中心でした。冒頭には、やはり「それぞれの豊かな人生経験を踏まえて詠む!」ことの大切さを確認しました。

 

①    川柳とは・・・

俳諧の流行に付随して盛んとなった文芸的な遊び「前句付」の付句が独立したもの。この前句付の点者(判定者)として江戸時代に活躍したのが、柄井川柳(からい せんりゅう)。その判定が見事なので、付句を川柳と称するようになった。

川柳には世相や人情の機微(微妙な事情や趣)をうがった作品が多い。

②    俳句との違い

○俳句は季語を入れ、5・7・5の17音とする「有季定型」。川柳は特になし。

○俳句は切れ字「や・かな・けり」を多く使う。川柳はほとんど使わない。

○俳句は主に文語体、旧仮名遣い。川柳は口語体、現代仮名遣いが原則。

○俳句は主に花鳥風月など自然と人事の関わりを扱う。川柳は主に人間生活を扱う。

③ 川柳の三要素
  ○穿(うが)ち・・・深く掘って物事の本質を取り出して提示して、ハッとさせる。
            風刺、皮肉、人情の機微。
  ○滑稽(こっけい)・・心の底から自然に湧き出るような笑い、ユーモア、味わい。
  ○軽   み・・・・軽妙洒脱、爽快でキレのよいこと。枯淡味、洗練。
  ☆ドラマ性 ・・・・短編小説を思わせるようなドラマチックな内容を盛り込む。
④ 作句上の留意点
  ○説明句、報告句をつくらない・・・「そうですか」で終わってしまう。
  ○同想句、類想句を避ける  ・・・他の人が詠まない、オリジナルな川柳を。
  ○禁じ手(タブー)     ・・・駄洒落、語呂合わせ、言葉遊びで終わらない。


 川柳は紙と鉛筆さえあれば取り組める、最も手軽な文芸です。日常生活の中で起こる出来事に対する様々な感情や思いを表現するものです。川柳という文芸で表現することできちんと記憶され、「自分史」の一端として、永遠に輝いて残るのです。
 次回(9月15日)の題詠(課題吟)は「虫」「結ぶ」です。皆さんの積極的なご参加をお待ちしています。新たな受講もできますので、ぜひご来館ください。




 8月11日(土)第4回 詩入門講座
 言葉で織り上げる楽しさと奥深さと

 朗読:井崎 外枝子(『笛』同人)
 

午後からは、第4回目となる詩入門講座を開講しました。今回から4回連続で、受講生の皆さんによる具体的な作品を通して、詩の表現について実践的に学びます。担当は詩誌『笛』同人の井崎外枝子(いざき としこ)先生です。杉原美那子、内田洋両先生も同席されました。

 

①    書くことで解放される作者

作品を完成させることが目的であるが、書くという行為は、書こうとする自分や書き進めている自分自身が解放される過程でもある。その過程をふまえて、書き終えた段階で一番書きたかったことは何かが収斂されていく。

②    表現内容の精選と吟味

何度も推敲を重ねる過程で、一番大切にしたい内容を絞り込むこと。同時に説明的な言葉やなくても支障のない言葉を省き、簡潔にする。長い詩では、作品の焦点がぼやけることが少なくない。生(なま)のまま散らかした言葉はお互いに足を引っ張り合うので、表現効果は相殺される。

③    観念的・概念的な表現をさらに突き詰める

抽象的・一般的な言葉の奥にある具体的な姿を、自分の言葉でえぐり出せないか。作者の無造作な表現・閉じた表現を突き詰めて整理し、工夫した先に、読者に通じる、響く、届く表現が生まれ出る。

④    自分らしい、独自の視点

月並みな内容・テーマを脱して、新鮮で個性的な題材の選択や視点を持ちたい。それが読者にとっても詩にふれる喜びや共感につながる。暗喩、象徴などの強く、熱く、印象的な言葉やメッセージをしかける。不気味さ、妖しさ、不穏な気配や余韻なども詩の通奏低音として面白い。

 

それぞれの詩作品の持ち味にふれながら、改めて言葉を丹念に織り上げる「詩」の魅力やその奥深さを再確認するひとときでした。題材の切り取り方、秘められたテーマ、作者自身と題材との相似型など、詩の新たな展開や様々な可能性に気づくことでなおさら、現時点からのシンカ(進化・深化)が期待できそうです。

 

次回(9月8日)でも、皆さんからの力作と向き合えることを楽しみにしています。初めての方の参観・傍聴もできます。お気軽にご来館ください。




 8月11日(土) 第4回小説入門講座  

 言葉に対する感覚の鋭さを

 講師:小網 春美(『北陸文学』同人)

 朝方のまとまった雨の影響で、蒸し暑い「山の日」となりました。お盆休みでふるさとへの里帰りはピークを迎えているようです。

 午前中、第4回目の小説入門講座を開講しました。「小説の文章」をテーマとして、『北陸文学』同人の、小網 春美(こあみ はるみ)先生に担当していただきました。いよいよ本格的に創作に取りかかる上で、心がけたいいくつかのポイントについて確認しました。

 

①    敬愛する作家の名作・名文を読む

丸谷才一は小説家を志す上で、これが最も大切なことだと述べている。好きな作家の名文を書き写すことや、意味はわからなくとも繰り返し音読することも効果的である。

②    一語一語を大切にする

詩人、歌人、俳人など詩歌を創作する人は、言葉を大切にするばかりでなく、比喩表現が多彩である。また、こまめに辞書を引くことで、最も的確な言葉を見いだすこともある。正しい言葉、美しい言葉、豊かな言葉の使い手を目指したい。

③    文体の統一感や文末の変化に気配りする

「です・ます調」(丁寧体)と「だ・である調(常体)」を混用しない。

時制では過去形に固執せず、現在形を織り交ぜることで臨場感を醸成する。

④    独創的なオノマトペ(擬音語)の創造と工夫を

*(資料1)吉村 昭による林芙美子「骨」の批評から

道子は自分の体を売って、初めて四百円という金を得た。そして「ふっと舌をべろりと出した」。この舌をべろりと出したというところが肝心なのです。(中略)そして、べろりと舌を出したけれども、さめざめと泣くのです。この描写に、道子の心理というものが、もうこれ以上の表現はないというふうに書かれています。

ただ、ここで注目しておきたいのは、「べろり」「さめざめ」という表現です。こういう擬音を使うと、普通は文章が実に軽薄なものになってしまいます。(中略)それだからこそ作家はそれに変わる表現をいろいろ苦労して創りだすのです。

しかし、この『骨』における「べろり」と「さめざめ」は、これ以上の表現はないという表現になっている。それは、林芙美子が詩人だからこそできたことなのです。この「べろり」と「さめざめ」は林芙美子の言葉に対する感覚の鋭さによって初めて可能な表現となっているのです

⑤    比喩表現について

*(資料2)芳川泰久「村上春樹の比喩を考える」より

『1973年のピンボール』より

ロンドンの免税店に積み上げられたカシミアのセーターのような…

バルザックの小説に出てくるカワウソのように…

ピックルスの空瓶につめこまれた蟻の巣ほどの…

(個々の語のイメージは鮮明なのに、全体としては意味は不鮮明で、そのことが村上春樹の想像世界の不思議さを助長している)

『海辺のカフカ』より

◎女にペニスを握られた「僕」は「まるで医者が脈を取るときのように」と言ったあとで、「僕は彼女の柔らかい手のひらの感触を何かの思想みたいに感じる」。思想とペニス。この格差が独自のユーモアを生むのだ。

◎「私」がビールを冷蔵庫から出し、フランクフルト・ソーセージを炒めると、女は「重機関銃で納屋をなぎ倒すような、すさまじい勢いの食欲」を示す。

◎月曜日の朝の日比谷公園の芝生に寝転んで「私」がビールを飲むと、「飛行機が出払ってしまったあとの航空母艦の甲板みたいにがらんとして静かだった」と形容される。

食べることも戦うことも、人間の基本的な欲求ということか。

 

受講生の皆さんからは、独自のオノマトペを試みる不安、会話文の表記の仕方、基本的な原稿用紙の使い方などについて質問がありました。初稿の締め切りまであと2ヶ月となりました。不明な点は、できるだけ具体的な文章をもとにして、遠慮なくお問い合わせください。自分が書くことを想定して、作品を丁寧に読む(読み直す)ことで、新たな発見に出会い、言葉の感覚も磨かれてゆくのではないでしょうか。

次回(9月8日)も、皆さんの積極的なご参加をお待ちしています。



 8月5日(日) 第4回『朱鷺の墓』朗読会

 ペテルスブルグでの新しい共同生活へ

 朗読:髙輪 眞知子(朗読小屋 浅野川倶楽部代表)

 8月に入っても相変わらず厳しい暑さが続いています。午後から、今年度4回目となる『朱鷺の墓』朗読会が開催されました。今回は、朗読小屋・浅野川倶楽部代表の髙輪眞知子(たかなわ まちこ)さんによる朗読で、「風花の章」の末尾から「愛怨の章」の冒頭部にさしかかりました。

 

 ロシア革命により政情不安な状況の中、染乃と夫のイワーノフ、旧知の友人である機一郎の3人は、中華料理店を営みようやく落ち着いた矢先のナホトカの街を離れて、ノルウェイ経由の貨物船に乗り込んでロシアの都・ペテルスブルグに向かいます。イワーノフは新しいロシアをつくるための政治活動に参画したいという希望を実現させようとしますが、機一郎はそんなイワーノフの言動には否定的です。染乃はともかく三人で家族のように仲良く暮らしていけないものかと願いながら、金沢で初めてイワーノフと出会った13年前のことを改めて回想するのでした。

 ペテルスベルグのイワーノフの両親や妹たちの邸宅は革命政府に接収され、家族の行方も知れない状況でした。街の裏通りの壊れかけた建物の3階の貸部屋で、3人の新たな共同生活が始まります。イワーノフは機械工場の技師として勤めると共に、工場内での政治活動に積極的に関わり、民衆の結束による新しい国づくりを目指していました。一方、様々な無理を重ねてきた機一郎は心身共に衰弱傾向にあり、健康状態は日ごとに悪化してゆくばかりです。ある晩染乃は、裸で自分を抱いてほしいという機一郎の願いを受け入れます。

  

  機一郎は目を閉じたまま、染乃のなすがままにされていた。二人がすっかり生まれたままの姿になると、染乃は両腕で優しく機一郎の信じられないほど痩せほそった体を抱きしめた。染乃はその晩、イワーノフに悪いとか、恥ずかしいとかいう気持ちは少しも感じなかった。むしろイワーノフの分も一緒に、機一郎のそんなすさみ切った心を暖めてやりたいと願う気持ちでいっぱいだったのである。……染乃は機一郎の体を胸の中に抱きしめたまま動かなかった。自分がやましい気持ちでそうしているのではなく、一人の人間として痛み疲れた機一郎に生命のぬくもりを伝えようとしているのだということを、彼(イワーノフ)はきっと理解してくれるはずだと信じていた。

 

イワーノフは機一郎をいたわる染乃の思いに共感して、「革命とは人間の内面をも含めてのものでなくてはならない。愛情や、男女間の関係にも新しい革命的な考えが必要なのだ」という理念に立ち、三人が肉親や兄弟のように愛し合い、他の二人に対して変わらぬ尊敬と友情を抱いて生活するという、新しい共同生活を始めるのでした。

イワーノフに政治活動から手を引いてほしいと願う染乃ですが、言い出せないままでした。そこにイワーノフの妹であるナターシャが現れて、染乃たちの平穏な生活はまた新たな火種を抱えることになります。波乱含みに急展開する物語の中で、経済的な困窮、政治的な不安や混乱、元貴族階級という基盤の崩壊を余儀なくされる染乃とイワーノフ。そんな苦境を乗り越えて、二人が夫婦・家族として希望を持って生きる日々は訪れるのでしょうか。
 次回(9月9日)にご期待ください。



 7月28日(土) ソプラノとオルガンの夕べ~こころのふるさとを唱うV~

 懐かしい音色に浸る

 出演:直江 学美(ソプラノ歌手)
   :黒瀬 恵(オルガン奏者)

7月28日(土)、夏のナイトミュージアム2018「ソプラノとオルガンの夕べ」~こころのふるさとを唱うV~が開催されました。

 ソプラノ歌手の直江 学美(なおえ まなみ)さん、オルガン奏者の黒瀬 恵(くろせ めぐみ)さんのお二人による金沢文芸館でのコンサートは、2013年(平成25年)に行われた金沢文芸館8周年記念の、プレミアムコンサート「こころのふるさとを唱う」以降今年で5回目となります。幸いにも台風の進路からそれたため、多くのお客様にご来館いただきました。

オルガン独奏、L.モーツァルト「7月」より開幕しました。この曲は、モーツァルトのお父さんの作品で、タイトルにもあるように今の季節にぴったりな曲ですと、黒瀬さんの説明がありました。足踏みオルガンの音色はどこか懐かしく、会場は和やかな雰囲気に包まれました。目を閉じて聴いているお客様が多くみられました。

日本の歌では、よく耳にする大中 恩の「いぬのおまわりさん」や「おなかのへるうた」などが披露され、直江さんののびやかな歌声が会場に響きわたりました。

曲紹介の合間には、お二人のエピソードや、「オルガンは足踏みで空気をいれて音を出していて、今の時代スイッチがないなんて不思議ですね」などと楽しいトークで、会場を沸かせてくださいました。

ラストは、毎年恒例の「ふるさと」を会場の皆さん全員で合唱し、盛大な拍手に包まれながら閉幕しました。

また、このような素敵なイベントで皆さんとお逢いできる日を楽しみにしています。


プログラム
◆オルガン独奏

♪ L.モーツァルト:7月

◆日本の歌

♪ 大中 恩 :さっちゃん

        いぬのおまわりさん

        おなかのへるうた

        ドロップスの歌

♪ 大中 寅二:ちいさいおてて

        ヤシの実

◆オルガン独奏

♪ 大中 寅二:前奏曲

◆クラシック音楽 

♪ カッチーニ  :アヴェ・マリア

♪ バッハ=グノー:アヴェ・マリア

♪ ピアソラ   :アヴェ・マリア

   



 7月21日(土) 第3回小説講座

 短編(掌編)は長編小説の一部ではありません

 講師:剣町 柳一郎(小説家)
    宮嶌 公夫(『イミタチオ』同人)

 午後から第3回小説講座が開講されました。受講者の皆さんからお寄せいただいた15編の掌編小説の合評会でした。

前回担当の正見巌(しょうけん いわお)先生は、残念ながら体調不良により欠席でした。病床で書いてくださったコメントを当館館長の小西が順次ご紹介するとともに、小説家・剣町柳一郎(つるぎまち りゅういちろう)先生、文学誌『イミタチオ』同人である宮嶌公夫(みやじま きみお)先生がそれぞれの作品についての長所や今後の課題をアドバイスするという内容でした。話題の一部をご紹介いたします。

 

①    推敲を念入りに

限られた時間の中で作品を仕上げることの難しさ。

何度も声に出して読み返し、また、目でも見直して、完成度を高めたい。

家族、友人など身近な人に読んでもらうことが最も効果的。

作者の「くせ」が目立ちすぎないように。同語の反復は避ける。

て・に・を・は、などの助詞、句読点の細部にも留意して最適な選択を。

②    削除、省略のポイント

作品テーマに繋がりのない、あってもなくてもよい説明や描写はないか。

説明は極力簡潔に。できるだけ、展開する物語の描写の中に盛り込む。

会話でも部分的に省略した方が、テンポよく、読者の想像を引き出し、余情を生む。

実際にこんな会話があり得るか、よく吟味する。

③    描き手の視点がぶれないこと

3人称小説のはずが、登場人物の視点になったり、またもどったりしない。

短編では、書き手の視点は一貫させるのが基本。

書き手と主人公の間隔が保たれているか。

④    全体の構成・展開を明確に持つ

掌編(短編)は、長編の一部ではない。

作品全体の容量に配慮した展開(起承転結)を工夫する。

時間・場面の移動を必要最小限にする。

⑤    ユーモアある軽妙な作品

軽快に、メリハリを、ユーモラスなエピソードにも現実味(真実味)を。

何かが始まる予感を匂わせる。その伏線を丁寧に、しっかりと。

「落ち」をつけると、先に伸びない。

⑥    現実と非現実の境目

現実そのものよりは、現実にありそうな真実(虚構)を追求する。

どこで、どんな虚構を盛り込むか。不自然さ、違和感を最小限に。

読者の共感や安堵感を誘う魅力ある主人公であること。

⑦    一文の長さ・語順

短い文を丁寧に重ねるのが効果的。欲張って詰め込まない。

一文の中でも更に「贅肉」をそぎ落とす。

修飾句の位置、入れ替え、置き換えを。強調したい文に、段落を。

⑧    確かな、豊かな比喩表現を

工夫やイメージが空回りしていないか、不自然・極端でないかを吟味する。

読み手を意識して、より伝わりやすく、正確な言い回しを。

似たような他の表現と比較して、より適切なものを絞り込む。

 

 短い文章においても起承転結がなければ、断章か部分のスケッチに終わってしまいます。改めてテーマを十分に絞り込み、何をどのように描くか、(描かないで済むものは、描かない)を、優れた作品の長所を吸い取りながら、根気強く学び続けたいものです。

 

 次回担当は、剣町柳一郎先生です。角田光代『さがしもの』(新潮文庫)を再読してご参加ください。   



 7月21日(土) 第3回 俳句入門講座 

 季語が生きた句を求めて

 講師:野村 玲子(「あらうみ」同人)

 

 猛暑日のこの日、午前中に第3回目の俳句入門講座が開講されました。講師は俳誌「あらうみ」同人、野村 玲子(のむら れいこ)先生です。最終回の今回は、12名の受講者の皆さんから兼六園に取材した作品を中心に、五句ずつご準備いただきました。講座では句会の形式を模して秀作・佳作を互選し、最後に先生の指導と助言を頂くという流れでした。

 佳作として挙げられた作品の一部を、ご紹介いたします(順不同)。

 

 風薫るレモン色したインコ二羽

 

 静かなる梅雨の参道建長寺

 

 夏きざす曲水の風まっすぐに

 

 メロン切る何とはなしに華やぎて

 

 氷室の日ちくわの穴から夏のぞく

 

ふるさとの能登富士や揚羽舞う

 

 酷暑にも守る庭師の心意気

 

 母の手にならふことあり梅しごと

 

 曲水を駆け抜ける風夏来る

 

 旅の宿花一輪と梅雨ごもり

 

 ひとくちずつラムネ飲み合う若さかな

 

 下闇に根上松の小宇宙

 

 梅の実が落ちて色立つこけの上

 

曇天に梅雨をいだきて古木立

  

 晴れ間見て七夕の笹急ぎ切る

 

 ふわふわと緑のまにまに合歓の花

  

 灯籠のたもとを飾るキンシバイ

 

 ピクルスの色とりどりに夏野菜

 

 たくさんの作品が、それぞれの特色ある情景と作者の心情を描写しているように感じました。先生からも、受講者の全体的なレベルが向上してきたことを評価していただきました。最後には、季語が生きている句であるかどうか、ということを改めて吟味してほしいという念押しがありました。この講座を端緒として、受講生の皆さんが、四季の生活の中で見つけたものや心動かされたことを核として、今後も末永く俳句の創作にたずさわり、自分にも、家族や仲間へも、心に響く俳句を生み出されることを期待しております。

 

 次年度の俳句入門講座は、8月・9月・10月に開講する予定です。



 7月19日(木)出前講座 星稜中学校2学年・3学年

 つかんだイメージと選んだ言葉を吟味する

 講師:島田 鎮子(『沃野』同人)
    福島 茂(元中学校長 国語科担当)

 
 連日の危険なまでの猛暑の中、昨日に続き星稜中学校にお伺いしました。この日は、2学年(59名)が『短歌を作ろう』で、歌誌『沃野』選者の島田 鎮子(しまだ しずこ)先生、3学年(64名)は『俳句を作ろう』のテーマで、元中学校長で国語科担当の福島 茂(ふくしま しげる)先生でした。

 

 青春真っ只中、と思わせる、ロマンに満ちた2年生の作品をご紹介いたします。

 

 猛暑日に海でみんなとはしゃいだら布団の上でも波に揺られる

 

 青春の思い出初恋いい匂いそろえていったシーブリーズ

 

 何もせずふと観る青空快晴で心がからっぽ空もからっぽ

 

 よい天気玄関飛び出し外見れば想像以上にカゲロウ見えた

 

 風鈴の鳴り響く音涼しげに夏にとどろけウルトラソング

 

 夏祭り打ち上げられる花火見て夏を感じる昔も今も

 

 ふと見上げ打ち上げられる空雲ひとつ月にかかりて星は輝く

 

3年生の講座では、まず、作者自身が気づいたこと・見つけたこと・感動したことを題材としてしっかりと選び取ることが俳句の力そのものになることを確認しました。俳句の約束の基本である『有季定型』ですが、改めて季節・季語を探し出すというよりは、もともと私たちの日常生活は、衣・食・住のどれをとっても季節感・季語にあふれているので、自然に言葉を選べば、そこに季節が潜んでいるとも言えます。感動したことや内容を、じっくりと吟味することで、より豊かで、確かな言葉の表現につながることが多いものです。

 『歳時記』に収められたたくさんの例句触れることで、季語の理解を深め俳句を作る上での視野を広げることができるのです。ただし、模倣ではなく、あくまで自分らしさ、自分なりのこだわりを生かした俳句となるように工夫したいものです。

 

 2年生、3年生とも落ち着いた学習ぶりで、仲間と声を掛け合いながら意欲的に参加して頂きました。やはり、限られた時間の中で作品を仕上げることは難しいものです。改めて時間を確保した上で、十分に言葉や表現を吟味することに挑戦してください。

もう、夏休みが直前です。生徒の皆さんが楽しく充実した毎日を過ごされるように、ご活躍を願っております。



 7月18日(水)出前講座 星稜中学校1学年

 先生方の積極果敢な姿勢が生徒に伝わって

 講師:島田 鎮子(『沃野』同人)
 

 十日ほど前に、五木寛之先生ご夫妻からお中元に頂いたカサブランカが次々と開花しました。1階の交流サロンはその芳香に満ちて、暑い中に来館してくださった皆さんを楽しませてくれます。

 さらに真夏日が続くこの日、星稜中学校にお伺いしました。76名の1年生の皆さんを対象とした「短歌を作ろう」の学習です。講師は短歌誌『沃野』同人の、島田 鎮子(しまだ しずこ)先生でした。3連休に石川県中学校総合体育大会を終えたばかりですが、星稜中学校は、サッカー部が優勝、野球部が準優勝という立派な成績を納めました。短歌の題材として、部活動を選んだ作品が目を引きました。生徒さん達は全般に、とても明るく素直で積極的で、終始、和やかなムードの講座となりました。先生方の作品*に触発されるように生徒さんの作品が次々と誕生しました。一部をご紹介いたします。

 

夏の日に相手にわたる優勝旗涙こらえて強く握る手*

 

人いきれ夜空に咲いた二尺玉はかない夏と共にとけてく

 

夏休みあっというまに過ぎちゃって宿題たくさんもう午後十時

 

暑い日に汗水たらす部活動帰ってみると白紙の課題

 

夏の日は暑さこらえてクーラーがまんがまんできずにやっぱりクーラー

 

監督にお水渡そう急ぎ足急がば回れ階段にこける

 

夏祭りゲームにやきそばかき氷でも一日で終わっちゃう

 

やわらかい光差し込むバスの窓夢がさめたらなぜか終点

 

先生は歴史得意で祭り好きいつもイケメン僕のあこがれ

 

七夕のササに願いを天の川空見あげれば光の道が

 

朝顔の背が伸びるのを見るたびにいつか天までとどくと思う

 

 短歌をどう描くか、という出発点では「いいかっこうしよう」とか「うまくかこう」と気負わずに普段通りの言葉遣い、いつものおしゃべりの延長のように。ポイントは見たこと、聴いたこと、感じたことをそのまま言葉に並べること。びっくりしたこと、気づいたこと、大切にしたいこと、時にはちょっと恥ずかしいことも。自分の心をしっかり観察して、自分の言葉で描くこと。…というアドバイスを頂きました。

楽しみながら短歌に挑戦する、という姿勢や習慣をこれからも末永く大切にしてほしいものです。



 7月14日(土)第3回 詩入門講座 
 無意識の自分と向き合う

 講師:内田 洋(『禱』同人)
 

真夏の陽光照りつける午後、第3回詩入門講座が開講されました。講師は、詩誌『禱』の同人、内田 洋(うちだ ひろし)先生です。まず、自分の詩を書きたいという受講者の希望を実現するために、その過程にある悩みや自問を語り合いながら講座を展開したいという基本姿勢を確認しました。

いきなり、とにかく、詩人であろうとなかろうと書き出してみよう。詩の言葉が降りてくるのを待つのではなく、悩みながら言葉になる前の泥の塊みたいなものをいじっていると、詩の輪郭が見えてくる(平田俊子・編『詩、ってなに?』小学館2016)という積極果敢に、真摯な追求を始める端緒として…
 ①    まず、自分の好き嫌いを書く
 ②    自分って、何者?意外に難しい自己紹介を書く
 ③    暮らしている町のことを書く        

                   ・・・という提案がありました。


 また、谷川俊太郎『谷川俊太郎の33の質問』(出版新社1980)から、
 ①    白という言葉からの連想を話す
 ②    自分にとって理想的な朝の様子を描写する
 ③    自分の人生における最初の記憶について述べる 
                          ・・・という糸口も提案されました。

                   

 

 鍬   前田 良雄

 

春出し鍬は楔を締め

湿りを与える

 

父の手鍬は父の仕事の角度

 

柄は握り手次第だ

握り窪みは父の百姓量

 

いつか一本の言葉となって

 

働き詰めのなかの歳かさね

百姓鍬を残して父は去った

 

野鴉は羽ばたき低く

おらの頬をかすめた

                   『いしかわ詩人』十一集より(2018.6)

 

人が生涯に亘って使いこなさなければならない道具との密接な関係を、端的に描いた作品です。自分がどんな仕事を経験したか、そこで得たものは何か。仕事や労働に関わってきた自分自身や仲間との出会い、人間関係の構築、個性や個別性の自覚などなど、仕事を題材とした詩の切り口に挑戦するのはどうでしょうか。

自分の知らない、無意識の自分が、自分の中に潜んでいる、としたら…そのもう一人の自分に向き合い追求することも、「何を描くか」の手がかりかもしれません。

次回(8月11日)から、受講者の皆さんによる詩作品の合評を柱とした講座です。担当は、井崎外枝子(いざき としこ)先生です。

新たな受講もまだ間に合いますので、ご遠慮なく当館までお問い合わせください。

(金沢文芸館 ℡076-263-2444)



 7月14日(土) 第3回小説入門講座

自分が自分の厳しい読者であること

 講師:高山 敏(『北陸文学』主宰)
 

 夏空が広がったお盆のこの日、午前中に第3回目となる小説入門講座が開講されました。講師は同人誌『北陸文学』主宰の、高山 敏(たかやま さとし)先生です。小説の推敲について、具体的な例を踏まえながら丁寧に解説していただきました。

 「推敲」とは、より正確で適切な文章表現となるように、点検や手直しをすることですが、最終的に作品の良し悪しは推敲で決まると、言っても過言ではないほどに大切な作業です。作者自身が、自分の作品に厳しい読者となって、納得のいくまで手直しする、という姿勢が不可欠です。

 

「推敲」の要点

①    常套句、決まり文句の使用を控える

「抜けるような青い空」「うららかな春」「一面の銀世界」など、使い古された決まり文句ではなく、自分が感じたことを踏まえて自分の言葉で工夫して表現する。

②    力みすぎない

うまい文、かっこいい文を書こうとする余り、大げさで独りよがりな表現に陥りやすい。

「不幸な人物に読者の同情(共感)を引くためには、できるだけそっけなく、冷酷に突き放して書くのがいい」(チェーホフ)

③    句読点に気を配る

打つべき箇所に打つ。作者の息づかい、心のリズムを伝える。

読点の打ち方で、意味が変わったり、あいまいになったりするので、要注意。

④    漢字と仮名のバランスを適切に

漢字:仮名=3:7 が理想という説もある。

まで、ごと、くらい、こと、なかなか、また、ため、はず、ほど、できる…仮名表記で

⑤    擬音や符号はむやみに使わない

オノマトペや()、“”、!、?などが多すぎると、文章の品格が落ちる。

⑥    言葉の癖が目立っていないか

ように、ような、みたいな、すごく、すごい、とても、なにか、かしら…

作者の日常言葉の癖が露見しないように

⑦    文章のリズム、流れに配慮する

改行ですっきり整理する。短文を重ねる。接続語を多用しない。文末の変化を。

⑧    曖昧な表現と断定的な表現

説得力のある文章を追求するなら、文末は断定的に。(だ、である)

含みのある心情を追求するなら、文末はやわらかく。(だろう、かもしれない)

⑨    書いた文章を繰り返し音読する

読みにくいところ、リズム、流れ、句読点、語尾表現…

さまざまな視点から、より性格で、適切な、豊かな表現を追求する

⑩    文の「ねじれ」に気をつける

主語・述語の適切な対応、修飾・被修飾はなるべく近い位置に置く

 

プロの作家さんにとっても推敲・校正作業は創作の完成度を高める上の重要な過程といえるようです。講座の中でも、作家さんが少なくとも5回程度、多い方では10回以上も書き直して漸く出版にこぎつけたというエピソードが紹介されました。

書きながら、気づいたところを順次手直しするという方法と、一応最後まで到達したところで、全体を見渡しながら矛盾の内容に修正・加筆するという方法とが紹介されました。入門段階では、この二つを併用するのが確実では、と感じました。

 

次回は8月11日(土)で、担当は小網春美(こあみ はるみ)先生です。お誘い合わせてご参加ください。



 7月8日(日) 第3回『朱鷺の墓』朗読会

 こんな笑い方をする人ではなかった

 朗読:髙輪 眞知子(朗読小屋 浅野川倶楽部代表)
 

 広島・岡山を中心とした広範囲に亘る豪雨による洪水・浸水と地盤崩落、土砂災害等で多数の犠牲者と甚大な被害が発生してしまいました。被災地の皆様に、心からお見舞い申し上げます。

 金沢では久しぶりの青空がのぞいた午後、第3回目(通算11回目)の『朱鷺の墓』朗読会が開催されました。今回も、朗読小屋・浅野川倶楽部代表の髙輪 眞知子(たかなわ まちこ)さんによる熱の籠もった朗読でした。

 

 ロシア革命後の政情不安定な状況が続く中、染乃とイワーノフ夫婦がナホトカで経営する中華料理店も閉店を余儀なくされます。そんな折り、染乃は日本軍のシベリア進出に伴い現地で実権を持っていた源田少佐から、自分の情婦になるか大金を支払って営業継続するかを迫られます。染乃が源田少将に金を支払う条件として、金沢時代からの馴染み客である北野洋三こと雁木機一郎を呼び寄せます。機一郎は染乃との短いやりとりから、窮地に立たされた染乃の状況を推察した上で、源田をその場で殺害します。殺させたのは自分だ、殺したのは自分だ、という深い自責の念にさいなまれる染乃ですが、源田の殺害が公表されないうちに、イワーノフ、機一郎とともにペテルスブルグに旅立つことを画策します。幸いにも料理店オーナーである張分国が十分な資金を調達してくれて、貨物船で出発するめどがつきます。(「風花の章15~17」)

 

  「あの源田の死体を、おれはあのままそこの空地に放り出しておいたのだ。だが、どうやらその張氏とやらが自分のグループの手下に片づけさせたらしい」

「そうかもしれません」

「それではおれも彼には世話になったことになる」

機一郎は唇を曲げて小さく笑った。

〈この人は―〉染乃はそんな機一郎の笑い方に心を衝かれるような気がした。

〈こんな笑い方をする人ではなかったのに〉機一郎は変わった、と、染乃は思った。彼女の知っている機一郎は、大きな声で、上を向いて笑う男だった。〈それが―〉それもこれも、みんな自分のせいではないか、と考えると、染乃は心がしめつけられるような自責の念に駆られた。

 

染乃がもう金沢時代の染乃ではないように、機一郎もこの10年の辛酸に満ちた生活を経て変貌していたようです。この後、舞台はイワーノフの故郷であるロシア・ペテルスベルグヘ・・・。波乱含みの展開はまだまだ続きそうです。どうぞ、ご期待ください。



6月28日(木)出前講座 金沢市立泉野小学校
ダンゴほどの、大きいたんこぶができたよ

 講師:吉國 芳子(「ひょうしぎの会」会員)

 朝方の強い雨で、金沢に大雨警報が出されたこの日は、泉野小学校にお伺いしました。昨年に続き、2年生(102名)の生活科で「金沢の民話を知ろう」の学習でした。講師は「ひょうしぎの会」会員の、吉國 芳子(よしくに よしこ)先生です。

 はじめに、金沢に伝わる3つの代表的な民話として、先生から「芋掘り藤五郎」「飴買い幽霊」「お銀・小銀」の概略が紹介されました。この日は、「芋掘り藤五郎」「だらむこさん」「宝船寺のネズミ退治」の3作品をお話いただきました。

 

「だらむこさん」(おだんごひょいひょい)

 むかしむかし、金沢のあるところに、ひどく物忘れのひどいおむこさんがいました。おむこさんは結婚してから初めて、お嫁さんの親の家に一人で遊びに行きました。挨拶もしっかりできたので、お嫁さんの父母もひと安心。おいしい団子をつくって、おむこさんを歓迎したのです。おむこさんは団子を食べるのが初めてです。うまい、うまいとたぁくさんの団子を食べて、もうすっかり満腹です。こんなにもおいしい団子という名前をわすれてはいけないとおもって、帰り道もずぅっと「だんご、だんご、だんご、だんご・・・」と唱え続けました。川を渡るときは、たくさんの飛び石を「ひょい、ひょい、ひょい、ひょい・・・」とかけ声をかけながら進むうちに、ようやく自分の家にたどり着きました。おむこさんは、さっそく「おぉーい、ひょいがうまかった。おまえもわしにひょいをつくって食べさしてくれ。」とお嫁さんにたのみますが、「ひょい、ってなんのこと。そんなもん、知らん。」と、そっけないので、夫婦げんかになってしまいます。もみ合ううちに、おむこさんがポカリとお嫁さんの頭をたたくと、大きなこぶができてしまいました。「なにするんじゃ。あんたのせいで、こんな団子ほどもあるたんこぶができたじゃないか!」とお嫁さんもかんかんです。「お、おお。そうや。団子じゃ。ひょいじゃなくて、団子。その団子を作ってほしかったんじゃ!」とおむこさんが、正しい名前を思い出したので、二人はようやく仲直りしました、とさ。

 

 子ども達は、メモをとりながら熱心に耳を傾けて、楽しんでくれました。今日のお話に出てきた中央通町の宝船寺や兼六園の金城麗澤なども、機会があればご家族とともにぜひ訪ねてみてください。

お話会の終わり頃には、雨もやんでいました。また、秋にお伺いする予定です。



6月24日(日) 第1回『フォト&五・七・五』合評会
思い出の一瞬に言葉を添えて

 講師:中田 俊樹(俳人)

 『フォト&五・七・五』は今年で6年目(今回で通算11回目)を迎えました。すっかり常連としてご応募くださる方にはもちろん、新鮮な挑戦に踏み出した方、この展示を楽しみにしてくださる心強いファンの皆さんに支えられてきたことに、感謝いたします。講師である俳人の中田敏樹先生にも力作をお寄せいただきました。15名のご応募の中から、この日参加された8名の皆さんの40作品について、それぞれ簡単な解説をいただきながら作品を鑑賞しました。

  

  力車と舟まよう間にも日盛り     力車か舟かまよう間にも日の盛ん

  *マレーシアのペナンにて、色鮮やかな旅より。「力車」は人力車。

 

  散ってなお庭を賑わす菊桜

  *尾山神社の境内にて。枝ではこれから散る桜、地面には散った桜。

  薫風やさんざめきたりギンリョウソウ

  *卯辰山にて。花の楽しげなさざめきが心地よい。

 

  大雪に耐えて輝く細い綱

  *兼六園の雪吊りを明確にしてもよい。

  加賀鳶や粉雪散らし空に舞い     加賀鳶や粉雪熱し空に舞う

  *新春、金沢城内の出初め式。熱さ、心意気を強調する。

 

  北国の足が気になるモデル達

  *北国フォトクィーンの撮影会。伸びやかな足(脚)の美しさにフォーカス。

  

  万緑や鳥居くぐりてこうべたれ    

*「万緑」は画像から伝わるので、「日用のこけ」に。

傘寿の日ガーベラ添える夕餉卓

*卓に置かれたガーベラの色鮮やかな競演。

 

美女ランク上がる吹雪の赤い傘

*白の世界に映える赤の鮮烈さ。雪国のロマンが漂う。

蹲踞(つくばい)の紅葉に混じる一ユーロ

*1ユーロ銅貨を意外な場所で見つけた驚きと喜び。

 

色仲間春呼び寄せる福寿草

*蒲公英、山茱萸、万作など、春先に多いそれぞれの黄の花に魅せられて。

 

シャガの花倶利伽羅谷の深緑

下がり藤平家の奢り戒めて

花屑の乾ききったる古戦場

*講師・中田先生の作品より。古戦場に巡ってきた春から夏の華やぎと厳粛と。

 

時節柄、展示コーナーは『百花繚乱』の賑わいで、たくさんの方に楽しんでいただきました。した。次回(第2回)は、10月の募集を予定しています。写真と言葉はお二人の合作でも結構です。思い出の写真に、5・7・5を気軽に添えていただくことにして、・・・。    
 秋にも、皆さんからのご応募をお待ちしております。



6月20日(水)出前授業 金沢市立米泉小学校

「金沢の偉人」って、こんなにもたくさんいる!

 講師:竪畑 政行(石川県児童文化協会理事長)

 朝まで降り続いた雨がようやく上がったころ、金沢市南部の伏見川沿いに位置する米泉小学校をお訪ねしました。4年生の総合的な学習の時間で「金沢の偉人を知ろう」をテーマとする出前授業を実施しました。講師は『かなざわ偉人物語』執筆者の、竪畑 政行(たてはた まさゆき)先生です。

 竪畑先生が30年以上前の、この学校が創立して間もない頃にお勤めだったというお話を聞くと、65名の皆さんの集まった部屋全体が柔らかなムードに変わったような気がしました。

 

 まず、「マッチ箱」「書道の筆」「牛乳パック」の3つが先生から示され、「金沢の偉人と関係あるかな」「関係があるとしたら、どんな関係だろう」をいう課題が提示されました。「マッチ一本火事のもと、という言葉をつくった人」「初めて牛乳を飲んだ人」など、子どもたちは、それぞれ考えを出し合い予想を立てていきます。それを確かめる資料が配られ、先生から解説されました。「マッチ箱」は日本で初めてマッチ工場を起こした、清水誠。「筆」は仏教を広めるとともに書道家として知られた、北方心泉、「牛乳」は金沢で初めて牛乳を広めた、水登勇太郎でした。

 次は、15人の偉人とその業績をさぐる「わたしは誰でしょう」クイズでした。子どもたちは40名の偉人について紹介したプリントの難しい漢字や言葉に苦戦しながらも、友達と協力してどんどん問題を解いてゆきました。10分ほどで、全問正解に到達した子もたくさんいました。

 最後のゴールでは、これから調べたいと思う人をそれぞれ選んで発表しました。これから7月にかけて、調べ学習を進めていくそうです。図書館の『かなざわ偉人ものがたり』を活用して、金沢の偉人についての理解を深めて、まとめの段階では本多町の「かなざわ偉人館」を学年全員で見学する予定だそうです。

 

皆さんが立派な成果にたどり着いて、たくさんの金沢の偉人を身近に感じてくださることを願っています。



6月16日(土)第2回 小説講座

仲間の意欲や情熱を自分に取り込む

 講師:正見 巖(『北陸文学』同人)


 午後から、第2回目の小説講座を開講しました。講師は、『北陸文学』同人の正見 巖(しょうけん いわお)先生です。「小説の実作について①」と題して、具体的な創作のポイントを軸に、先生が経験された興味深いエピソードもお聴きしました。

 まず、作家が実際にどういうきっかけで小説を書き出すかというと・・・

*新しい原稿用紙に自分の名前を書き込むこと

*自分が言いたい一つの言葉(テーマ)があり、その場面を決めて前後を組み立てる

*一枚の写真を見つめ、そこから沸き上がる情景・イメージを描く

*友達と何気ない会話をしている最中に、話題とは全く別な何かが湧いてくる

――など、様々なケースがあるそうです。それぞれの作家がそれぞれに決まったスタイルにこだわり、大切にしていることがわかります。

 

*実作のためのポイント

1.主人公を早い段階で登場させる。

作品の冒頭がよいが、なるべく味わいのある文章、簡潔な中にもその人柄や背景が伝わるように工夫する。

2.時間・場所を示す。

設定した場面に主人公を放り込む。また、プロット(筋書き・構想)を練り上げる。

3.作品のテーマ

最初から出さない。途中で一般論を入れない。

4.情景描写・風景描写

無駄な情景は不要。説明ではなく、描写で読者に必要な状況を伝える。

登場人物の心理・心情を反映させる。 物語の「伏線」を敷く。

5.主人公に対置する人物設定を

反目、衝突するライバルとの葛藤により、主人公を際立たせる。

ストーリーに深みが出るための人物や環境を設定する。

6.異性を登場させる

男女の関わりによって作品に彩りを加える。

7.主人公の職業に精通する

自分の体験を活かす、取材・調査・研究することで現実味ある世界を描く

 

「作家は欺瞞を商う者である」と言われるほど、欺瞞(虚構)は小説にとって不可欠です。ただし、いくら欺瞞・虚構と言っても本当らしい嘘である必要があります。作品の中核が「体験に基づく真実」であり、その外側を厚く包み込むものが本当らしい、真実みのある「虚構」と言えます。この虚構が大きく、豊かであるほど味わいのある面白い作品につながるのではないでしょうか。

正見先生が『北陸文学』の同人に誘われて参加したのは、定期的な会合を通して伝わってくる会員(同人)の創作意欲や情熱を自分自身の執筆の刺激にしたい、との思いからだったそうです。

この講座でも同じような仲間の情熱や先生からの助言や激励が、受講生の皆さんにとって前向きな刺激となることを願っています。

 

 次回は、3名の講師の皆さんとともに「掌編作品」の合評を予定しています。多数の皆さんのご参加・見学をお待ちしています。



6月16日(土) 第2回 俳句入門講座

「期間」や「経過」ではなく、『その瞬間』を捕らえる

 講師:野村 玲子(『あらうみ』同人・石川県俳文学協会常任理事)

 

 穏やかに薄陽の射すこの日、第2回目の俳句入門講座を開講しました。講師は前回に続き、俳誌『あらうみ』同人の野村 玲子(のむら れいこ)先生です。11名の受講生の皆さんからお寄せ頂いた作品を読み合わせして、それぞれの作品の長所や特色に注目したり、先生からの添削やアドバイスを頂いたりするという内容でした。

 

 更衣三日ばかりを若やいで     更衣袖を通せば若やぎて

 *俳句では「瞬間」を詠むのが基本。

 

 風薫るブナ林巣穴に赤翡翠(あかしょうびん)  風薫る巣穴いくつもブナの幹

 *題材を詰め込みすぎない。

 

 朝靄の七つの尾根七尾城      夏霞七尾城址の尾根七つ

 *「朝靄」は季語にならない。語順にも工夫して。

 

 梅雨寒の着る服迷う散歩かな    梅雨寒の散歩の服を着迷うて

 *類語を工夫してすっきりと

 

 青い空赤いトマトを3箇採る    空青し真っ赤なトマト三つ採る

 *トマトの赤を強調する。

 

 黒南風や白い露草凛と咲く     黒南風や白露草の凜々と

 *助詞の工夫で表現を引き締める。

 

 夕暮れて紺青光る梅雨の間     夕暮れの気配紺青梅雨晴れ間

 *何が紺青なのかを、読み手にわかりやすく。

 

 梅雨晴れの学童の傘チャンバラに  学童の傘でちゃんばら梅雨晴るる

 *情景がわかりやすい佳作。ちゃんばらは平仮名で。

 

 雨粒に見え隠れして水馬      橋の上にアングル定め杜若

 *どちらも情景が生き生きと浮かぶ佳作。

 

 坊守りの植えし額花石段に       石段に坊守植えし額の花

 *「坊守」「額の花」の表記を適切に

 

 友が逝く幼な児案じ梅雨の朝      五月雨や友の遺せし児を案ず

 *「逝く」は過去形に。「遺児」を表記に含ませる。

 

 謳歌する書斎の内を一匹の蚊      一匹の蚊に領されし書斎かな

 *「謳歌」は大げさ。類似表現を工夫して。

 

 水面をステージの如輪舞する      水面をステージの如水馬

 *季語を交え、輪舞する主体を明確に。

 

 藩侯の雄々しき入場梅雨間近

 *無駄がなく、力強い漢語を駆使した佳作。

 

 床に映え心にしみる青もみじ      実相院広縁に映え若楓

 *実名を入れて具体的に。「青もみじ」は季語になし。

 

 全般に作品のレベルが上がったと、先生からも褒めて頂きました。今回は、仮名遣いや表記、読み仮名などについての質問も次々に飛びだし、受講生の皆さんの意気込みが伝わってきました。俳人・稲垣汀子さんの「俳句の作り方~⑩のないづくし~」を意識して、次回も果敢に挑戦して頂きたいものです。

 

①    上手に作ろうとしない     ~飾る言葉に惑わさずに

②    難しい表現をしない      ~平明さを追求する

③    言いたいことを全部言わない  ~省略で余韻をのこす

④    季題を重ねない        ~一つの季語を活かす

⑤    言葉に酔わない        ~独りよがりを避ける

⑥    人真似をしない        ~自然にうかんだ言葉を大切に

⑦    切れ字を重ねない       ~「や・かな・けり」句に一つ

⑧    作り放しにしない       ~作品を何度も見直す

⑨    頭の中で作り上げない     ~実際に五感で触れたものを

⑩    一面から物をみない      ~角度を変えて広がりを求める

 

次回(第3回・最終回)は「句会」の要領で、受講生の皆さんが兼六園で取材した吟行句を紹介し合う予定です。定時より早めの、午前10時15分から開講します。力作を期待しております。

 



6月9日(土)第2回 詩入門講座

この長い沈黙は何だろう

 講師:杉原 美那子(『笛』同人)

 午後からは、詩誌『笛』同人の杉原美那子(すぎはら みなこ)先生を講師にお招きして、第2回目の詩入門講座が開講されました。「何を どう描き どこまで描くか」をテーマとした作品鑑賞でした。

 

1.北川冬彦の作品における比喩表現

 

  馬

軍港を内蔵している

 

  戦 争

義眼の中にダイヤモンドを入れて貰ったとて、何になろう。

苔の生えた肋骨に勲章を懸けたとて、それが何になろう。

 

腸詰めをぶら下げた巨大な頭を粉砕しなければならぬ。

腸詰めをぶら下げた巨大な頭は粉砕しなければならぬ。

 

その骨灰を掌の上でタンポポのやうに吹き飛ばすのは

いつの日であらう。

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

西洋剃刀の刃は透明な飴棒である。舐めてみると、瞬間、唇は

稲妻のやうに切り落とされた。これは素敵な清涼剤だ

 

*大胆で繊細で意外性のある比喩によるイメージの広がりに注目)

*修辞法の中では、「比喩表現」が決め手になる!

 

2.言語・漢字からの発想 

 

――― 海よ、僕らの使ふ文字では、お前の中に母がゐる。

そして母よ、仏蘭西人の言葉では、あなたの中に海がある。

               (三好達治「郷愁」より)

 

母は

舟の一族だろうか。

こころもち傾いているのは

どんな荷物を

積み過ぎているせいか。

 

幸いの中の人知れぬ辛さ

そして時に

辛さを忘れている幸い。

何が満たされて幸いになり

何が足らなくて辛いのか。

               (吉野 弘「漢字喜遊曲」より)

*注意深く見つめて気づき、見つけ出すこと、

*個性的・独創的な発見を核にして発想を膨らませる大切さ

 

3.どこまで描くか、どんなかたまりを描くか

 

私たちの鏡は破壊され

限りない悲嘆にくれた

われわれは声のかけらを集めたが

祖国の挽歌しか歌えなかった

(マフムード・ダルウィーシュ 池田修訳)

*ダルウィーシュはパレスチナの国民的詩人。

 祖国を一つの「かたまり」として現状や悲哀を詩に詠み込んでいる。

 

しずかに

語りはじめた人

かける三歳半字は書けない

語ることができる

 むかし こわい

そういうお話は嫌い

楽しいお話をして

 はちさん ねねのぴあの おともだち

 はっぴょうかい おはな はくしゅ

 

怖いお話もちょっとして

 あらし かぜさん はっぱ

きのうの春の嵐のこと?

 みんなこわれてしゅうりができないではっぱがしんで

 きょうりゅうのほねがみんなをたべて

ほおー恐竜の骨がですか

 そうだよきょうりゅうのほねにじじがたべられて

 ねねがたべられて

ママは?

 ままはたべられないでばばはたべられて

パパは?

 ……

 ……

この長い沈黙はなんだろうか

こわいおはなしもうしない

 

三歳半わらしの顔が曇った

夕立つ前 冷たい風が吹いて

座敷に立ちつくす子は

ちいさくふるえて語った

終章を捕まえて

ぴーたーらびっとしあわせはなかった

           (細野傳造「ぴーたーらびっと」より)

*どこまで描くか(描かないか)?

 パパへの沈黙が意味するもの。

 ピーターラビットが持つ、静かさ・憂い・深い森…。

 子どもが持つ、無邪気さ・残酷さ・不思議さ、直感…。

 

現代詩に限らず、詩作品の言葉やテーマを「解釈・鑑賞」する可能性や意味について、改めて考えさせられる講座でした。豊かなイメージの帆を張る、魅力を秘めた優れた作品がある一方で、解読・解釈することが困難な作品もあります。作者の感じ方を追求するとともに、読者自身も感性を磨き、受講を通して互いに謙虚に、また貪欲に学び合う姿勢を大切にして、自らの詩作につなげたいものです。

 

第3回(7月14日)の担当は、詩誌「禱」同人の、内田 洋(うちだ ひろし)先生です。お誘い合わせてご来館ください。講座の見学もお待ちしております。



6月9日(土) 第2回 小説入門講座  

身近なところから『心を打つもの』を集める

講師:小網 春美(『北陸文学』同人)

 「ストーリーをつくる」をテーマとして、第2回小説入門講座が開講されました。講師の小網春美(こあみ はるみ)先生は、同人誌『北陸文学』の最新号(4月刊、82号)に、「しずり雪」と題する百余枚の力作を発表されました。

 受講者は20名の定員に到達する盛況ぶりで、皆さんの創作に対する静かな情熱が伝わってくるような時間でした。

 

 1.小説とは「人間」を描き出すもの

【資料】小川洋子「人間の哀しさ」(随筆)より
(「私」は片足の不自由な野菜売りのおじいさんが、うまく自転車に乗れずに雨の中で自分をあざけるように弱々しく笑う場面に遭遇する)

私は夜、その光景を繰り返し思い浮かべて泣いた。泣くことが一番ふさわしいわけではないと分かっていたが、他に気持ちを表現する方法を知らなかった。単純にかわいそうに思ったからではない。手助けすべきだったのにと後悔したわけでもない。もっと根源的な感情を揺さぶられた気がした。(中略)彼の片足を覗き穴にして、私は人間の存在そのものの哀しさに触れた。そしてつまりは、自分が抱えているみすぼらしい部分に気づいてしまったのだ。おじいさんはどうにか自転車にまたがり、よろよろしながら遠ざかっていった。私はいつまでも窓の外から視線を動かせなかった。(中略)

自分が今目にしたものは何だったのか。当時は見当もつかなかった。やがて私は小説を書くようになった。涙の代わりをしてくれる表現の方法を、ようやく見つけた。書くことに迷いを感じるとき、野菜売りのおじいさんを思い浮かべる。自分にとっての小説の意味が、あの日に隠されているような気がするからだ。

 

2.失敗を怖れないこと

【資料】村上春樹「僕にとっての短編小説」より

 ○短編小説を書くことは、純粋な個人的楽しみに近い

 ○頭の中にある一つの断片からどんな物語が立ち上がるか、その成り行きを眺め、それをそのまま文章に移し変える。

 ○鋭い集中力と豊かなイマジネーションが要求される!

 ○短編小説を書くときは失敗を怖れない。前向きの失敗ならば、先につながる。 

 

3.ストーリーをつくるポイント

 ①過去の屈折した体験(病気、死別、挫折、家族関係、不条理)にアクセスする。

 ②積極的に人や情報とふれ合い、題材やテーマを探す。

 ③自分の内にあるイマジネーション(想像力)を掘り出す。

  …経験・知識(現実)と想像力(フィクション)を絡み合わせる

 ④『山場』をつくることは大切だが、「起承転結」に縛られないこと

…深いところに潜む不条理、ハプニング、意外性のある展開を。

 ⑤誰の視点で書くか、ぶれないこと。

 ⑥斬新さよりも、自分の個性を前面に出す。

 

 このほかにも、書けないときは「人間観察」をして、創作に活かす。日頃から,身の回りの様々な事象、人、物、映像、言葉に気を配り、『心を打つもの』を自分に取り込んでいく。また、つらくても、うまくいかなくても、一旦書き出すと、書く状態に入り込むことができて習慣化されることもある。そういうよい流れ(状況)を作る。・・・小網先生の実作者としての豊かな経験をもとにした貴重なアドバイスを頂きました。

  

  第3回は7月14日(土)、「推敲について」。高山 敏(たかやま さとし)先生が担当されます。



 6月5日(火)出前講座 金沢市立大徳小学校

 秋声・鏡花・犀星は、三人とも金沢の川とつながっていた

 講師:藪田 由梨(徳田秋声記念館 学芸員)
 

 30度近い暑い日になったこの日の午後、出前講座で大徳小学校に訪問いたしました。4年生の162名の皆さんを対象に、「金沢の三文豪を知ろう」をテーマとした講座でした。講師は徳田秋声記念館の藪田由梨(やぶた ゆり)学芸員さんです。

 校長先生のお話では、大徳小学校は明治6年に創立した学校で140年を越える歴史を積み重ねてきたそうです。明治6年と言えば、三文豪の一人である泉鏡花が生まれた年に一致します。校長室には、明治初期からの校長先生の写真が整然と飾られていました。

 

 体育館を会場にした講座では、「金沢の三文豪」=「金沢で生まれ育った、三人の、とても偉くて立派な、小説や詩を書いた文学者」という確認から始まりました。徳田秋声(とくだ しゅうせい)、泉鏡花(いずみ きょうか)、室生犀星(むろう さいせい)のそれぞれの作家が生まれた場所、作品の特徴や人柄などが、具体的にわかりやすく説明されました。子どもたちは、それぞれのワークシートに名前や、浅野川・犀川を書き込んだりして、熱心に学習していました。

 徳田秋声は、身近なふだんの生活をそのまま書く作家で、ダンスが好きなおしゃれな人だったこと。泉鏡花はその正反対で、心の中の想像や幻想などのファンタジーを書いた作家であり、ウサギが大好きでウサギの置物や小物を沢山集めていたこと。秋声と鏡花は浅野川の畔に生まれましたが、室生犀星は犀川のすぐそばに生まれました。詩人であり、小説家でもあり、自然や世の中の様々を美しい言葉で描くところが特色です。また、犀星は庭づくりをはじめ草花や小さな虫などを育てることにも関心が強かったそうです。

 お話の最後に、三文豪の作品が紹介されました。幅広く人々に親しまれている、室生犀星の詩です。

 

    犀  川

うつくしき川は流れたり

そのほとりに我は住みぬ

春は春、なつはなつの

花つける堤に坐りて

こまやけき本のなさけと愛とを知りぬ

いまもその川のながれ

美しき微風ととも

蒼き波たたへたり

 

これから、4年生の「総合的な学習の時間」では、三文豪を含めた金沢の偉人についての調べ学習が始まるそうです。この日の講座のように、瞳をキラキラ輝かせて友達と力を合わせて取り組んでくださることを期待しています。



6月3日(日)第2回『朱鷺の墓』朗読会

強く、勇気ある女として、どんな選択をすべきか

 朗読:髙輪 眞知子(朗読小屋 浅野川倶楽部代表)
 

 恒例の「百万石まつり」の最終日を迎えたこの日も、前日に続き素晴らしい好天に恵まれました。午後から、五木寛之原作『朱鷺の墓』の朗読会が開催されました。朗読は、朗読小屋・浅野川倶楽部代表の 髙輪眞知子(たかなわ まちこ)先生です。

 

 1917年ロシア2月革命の後、レーニンが共産党ボルシェヴィーキを指揮して武装蜂起して、ソヴィエト政権の樹立を宣言しました。翌年1月、日本政府は居留民保護の目的でヴラジヴォストークに二隻の軍艦を派遣するなど、源田少佐の予言した日本軍のシベリア進出が具体化しつつありました。これに伴い、英国、仏国、米国、中国なども戦艦を送り込んで、ヴラジヴォストークは騒然たる状況で緊迫していました。ナホトカの中華料理店の共同経営を任されて順風満帆に見えた染乃とイワーノフの生活は一転して、危険にさられてしまいます。シベリアに上陸した日本軍は、赤軍、革命派への猛烈な攻撃でシベリアを制圧してしまいます。

 源田少佐は東園の染乃に、店を日本軍の将校用のクラブにするという便宜を図る一方で、雁木機一郎に反体制的な思想からの転向を促す手紙を書くように命じます。染乃はイワーノフと相談の上、偽りの改心を迫るように見せかける手紙で、機一郎を獄中から救い出す計画を実行します。機一郎はその手紙の真意を汲み取る一方で、検事の意向を呑み、雁木機一郎は死んだものとして、「北野洋三」という別人として生き延びて、ようやく染乃との再会を果たします。そんな染乃は源田少佐から自分の情婦になるように誘惑されます。そうすれば、イワーノフも、店も、染乃自身も安全は保障されるという駆け引きでした。染乃は深い煩悶に落ちます。

 

 〈戦うしかない〉朝方、染乃はそう考えた。もう戦うしかないのだ。ここで相手の言うなりに体をまかせて軍人の情婦になる位なら、死んだほうがいい。〈だが死ぬほどの覚悟があれば、どんなことだってできる〉染乃はそう考えた。昔の自分だったら、運命の手に逆らわずに押し流されることを選んだかもしれない。だが、今はちがった。染乃はこの年月の間に、もっと強い、勇気のある女になっていた。(…中略)

〈自分が手を汚せばいいのだ。地獄におちても、それでいい〉染乃はそう考えて、心を決めた。道はひとつしかないようだった。源田少佐の脅迫に屈服して、彼の前に自分の体を差出すか、それともそれと戦うか。もしそうでなければ、イワーノフを失うことになる。そして、今の染乃にはイワーノフとの生活を抜きにして、生きている意味はなかった。…〈あたしはこの人と一緒に生き、一緒に死ぬ〉染乃はそう心の中で誓い、思わず涙を流した。その涙は人間が生きて行くために、さけることができない暗い道を歩む決心をした染乃の、魂の底からにじんだ苦い涙だった。

 

革命の勃発により各国の利権がせめぎ合う厳しい渦中で、窮地に立たされる染乃はここでどんな生き方を選択するのでしょうか。穏やかな日々はもう戻って来ないのか…。

次回(7月8日)も、ぜひご参集ください。



5月19日(土)第1回 小説講座

「突き抜けた」表現を目指して

 講師:剣町 柳一郞(小説家)
 
 午後から、第1回小説講座を開講しました。この小説講座は、過去に何らかの創作を体験した方を受講対象として、さらに表現力を磨き、創作実践の力量を高めることを目指しています。月例で開講する8回の連続講座のうち、第3回(7月)、第7・8回(11月・12月)は受講者作品の合評会です。

「短編小説の魅力」をテーマとした今回の担当は、作家の剣町柳一郞(つるぎまち りゅういちろう)先生です。先生のこれまでの創作活動を通した実感とご準備頂いた資料をもとに盛りだくさんの展開でした。資料や話題の一部をご紹介します。

 

1.短編小説を書くにあたって

①    短編小説の魅力・特徴

テンポと展開の速さが心地よい 無駄なセリフ・説明がない

とりわけ結末が大事 物語が繊細すぎると縛られる

水彩画をスケッチを描くように 盛り込む内容を欲張りすぎない

②    創作上のポイント

登場人物の面白さ・興味を創出する 人間描写を的確に

  アイデアは平凡な日常にある

  アイデアから作品へ:創作ノートを活用 全体の見直しと肉付け

  取材がベース:現地・現場の匂い、声、環境・背景、小道具など

  説明よりは丁寧な描写を優先 観念性(抽象)を避けて具体的に

  登場人物:背後に作家の人間観・生命感 リアルな言動を

  比喩表現:文章に溶け込み共感できるように 「厚み」を加える

  悪役の存在:主人公に対峙、脇役に伏線を張ると効果的

③    創作の姿勢

書き続けること 楽しみながら、のびのびと書くこと

客観性を保つために、第三者に読んでもらい手直しする

感情の起伏を丁寧に 五感を通した言葉で伝える

推敲で作品全体を見直す 「ねかせて」後に、削る

到達点は『突き抜けたもの』!…「上手」「行儀よい」を越える

 

2.作家たちからのヒント

①    村上春樹:一人で食べるカキフライはおいしいけど、寂しい。寂しいけどおいしい。孤独と自由の関係のように永遠に循環する。…自分が小説を書いていると思うと頭が重くなるけど、カキフライを揚げているんだと思うと、楽になる。

②    角田光代:私が書きたかった闇は、絶望ではなく寛容な世界に繋がっている。…日常生活の中に、まだ誰も書いていないものが絶対にある。

③    馳 星周:ストーリーの引き出しはいっぱいあったほうがいい。引き出しを増やすのは読書量である。

④    中島京子:小説にどれだけの奥行きを持たせられるか。…『過去』(経験した奥行きの中)に小説のおもしろさを探ることができる。

⑤    川本三郎:普通の言葉で書かれたもの…自分にしか書けない世界を平易な言葉で。

 

講座の終盤には、角田光代さんの短編集『さがしもの』(新潮文庫)に収録された「不幸の種」について感想を交流し、その無理のない筋書きや受け入れやすい登場人物、多彩な文末表現、不幸の種の位置づけの巧みさ、読者を飽きさせない展開など、人気作家による小説の豊かさ、確かさについて共有することができました。よい作品に触れてしっかりと感じ取り、創作に活かす姿勢をこれからも大切な習慣にしたいものです。

 

次回は、6月16日(土)午後3時開講予定です。見学や傍聴もできますので、お気軽にご来館ください。



5月19日(土)第1回 俳句入門講座

自分が感じたことを最優先に!

 講師:野村 玲子(石川県俳文学協会常任理事)

 俳句入門講座では今年度から新たな講師として、野村玲子(のむら れいこ)先生をお迎えしました。野村先生は金沢市内に在住で、俳誌『あらうみ』『ホトトギス』等の同人であり、県俳文学協会常任理事としてもご活躍中です。昨年度11月には、句集『雪月夜』を刊行されました。

 今回の初回講座では、前もって12名の受講生の皆さん全員からの作品をお送り頂き、その作品を順次読み合わせ、鑑賞しながら俳句づくりのポイントを探るという内容でした。話題になったアドバイスや添削例などをご紹介します。

 

  和漢薬商う老舗軒つばめ

  *実際の情景が見えてくるような佳作。

 

雪解けのツツドリ来る医王山    ツツドリや雪の消えたる医王山

  *「雪解け」と「ツツドリ」で季節が分かれることに注意

 

  それぞれにどこに泳ぐか五月空   それぞれにどこに泳ぐか五月鯉

  *「鯉のぼり」を明確にする。

 

  寒夜からプッチーニに入り浸る   寒夜からプッチーニを聴き浸る

  *「に」は説明的に陥る。用語を適切に。

 

  雪割草に風に薫るや帰り道     海風を頬に雪割草の道

  *「風薫る」は季語。語順に工夫を。

   

  春の暮子羊見送る二人かな     育てたる子山羊見送る春の暮れ

  *子山羊への思いが際立つ語順で。

 

  若葉摘み松の形に我が思い     枝振りに我が思いありみどり摘む

  *我が思いを込めた剪定作業であることを強調する。

 

  耳よせてゆかしき姿杜若      耳寄せて開く音聴く杜若

  *「耳」で「聴く」の流れを軸にする。

 

  色違う蝌蚪さがせば春来たり

  *「蝌蚪」(オタマジャクシ)と「春」の重なりを避けたい。

 

  倒木に新芽顔出し力湧く      倒木の芽吹いておりし力かな

  *「力」を倒木にも作者にも共有する表現で。

 

  茶筒にはまだ古茶の残りおり     茶筒にはまだ古茶のあり新茶来る

  *中句「まだ古茶の」字足らずを解消する。

 

  お日様を浴びてアスパラ顔を出し

  *「アスパラ」でなければならない特色を見いだす。言い過ぎない。

 

  百年の孤独噴き出す寒椿       魂は切り刻まれて大晦日 

  *積み重ねた思いの表現。どちらも個性的・独創的で興味深い。

 

 先生からは俳句の入門期の皆さんへ、次のような全般的なアドバイスを頂きました。

①    「歳時記」に親しむ

どんな季語(季題)があるか、どんな作例があるか。その解説を丁寧に読んで少しでも理解することが上達につながる。

②    雑記張を持ち歩く

外出先、旅先などで思いついた言葉をメモしておく習慣をつける。メモをもとにして俳句を完成させることができる。日記の延長のような感覚で、気軽に。

③    まず、自分が感じたことを中心にする

季語はあとからでもよい。はっとしたこと、驚き・発見などが俳句の核になる。

見たり、触れたりした実感を柱にする。便利な言葉、月並みな言葉は避ける。

④    語彙力を広げる

「歳時記」に限らず、違う表現・別の表現に挑戦する。「多作多捨」(たくさん作り、たくさん捨てること)を心がける。

⑤    読み返して手直しする

独りよがりで自分だけがわかる表現は避ける。時間をおいて何度でも手直しする。

 

次回・6月16日(土)は「梅雨」「アメンボウ」の題詠を中心とした講座です。積極的なご参加をお待ちしております。

 



5月13日(日)第1回 『朱鷺の墓』風花の章~愛怨の章朗読会

料理店主となった染乃に、ようやく平穏な日々が

 朗読:髙輪 眞知子(朗読小屋・浅野川倶楽部 代表)

 
 昨年度に続き、五木寛之原作『朱鷺の墓』朗読会を開催します。今年度は「風花の章」11から「愛怨の章」の終末までの8回分(5月~12月)を読み進める予定です。朗読は、朗読小屋・浅野川倶楽部代表の髙輪眞知子(たかなわ まちこ)先生です。

 昭和43年春から『婦人画報』に連載された長編小説『朱鷺の墓』は、金沢を舞台とした五木さんの代表的な作品として知られています。

 金沢・東の廓で若手の人気芸妓だった染乃がロシア人将校のイワーノフと恋に落ち、ロシアやヨーロッパの街を流転する歳月を送ります。不思議な出会いや数奇な運命に翻弄されながらも、様々な苦難を乗り越えてたくましく、美しく生き抜く壮大な物語です。

 
* * *

【これまでのあらすじ】

主な登場人物

染乃:金沢、東郭の芸妓。暴動の最中、イワーノフに助けられたのをきっかけに結婚。

イワーノフ:ロシア人将校。日露戦争の捕虜として金沢に迎えられる。

雁木機一郎:染乃の幼なじみ。織物工場の跡継ぎながら、政治活動のため出奔する。

石河原大尉:金沢のロシア人捕虜収容所の所長。

花田屋:染乃に惚れていた金沢の旦那。

笵少年:ウラジオでの染乃の客、周からの手紙を届けた中国人の少年。以後、染乃と行動を共にする。

 

<空笛の章>

明治38年。芸妓である染乃は、日露戦争の捕虜将校一団をもてなす慰安会で笛を披露することとなる。しかし会に反感を持った市民たちは暴徒化した挙げ句に公爵カンタクージン大佐へ投石し、染乃も襲われそうになったところをイワーノフに助けられる。この一件に立腹した大佐に「ロシア人に襲われた」という嘘の証言をするよう石河原大尉は染乃と養母ハツに迫るが、二人は拒否し、ハツは自害する。

責任を感じた大尉はカンタクージン大佐へ全てを正直に打ち明け、許しを得る。染乃はイワーノフと再会して愛をあたため、夫婦となることを誓う。日露戦争終結後、必ず迎えに来ると誓い、イワーノフは一時帰国する。石河原大尉や機一郎と共にイワーノフの船を見送る染乃だったが、花田屋の旦那がけしかけた男達に突然連れ去られ、遊郭へと売られてしまう。

 石河原大尉、機一郎は手を尽くして染乃を探し出すが、染乃はすでに異郷の花町で「春太郎」として生きていた。助けを拒絶する染乃を振り切り、機一郎は染乃を連れ出す。

 平穏な日常へと戻り、事情を知らぬイワーノフとも再会できた染乃だったが、脳裏に浮かぶ辱めの記憶に苛まれる。染乃は川へ身投げしようとするが、不思議な男に引き止められて家路につく。しかし待っていたのは染乃を遊郭へ売った北前の徹だった。機一郎を人質に取られた染乃は再び娼妓として売られ、ウラジヴォストークへ向かうこととなる。

<風花の章(10まで)>

 ウラジヴォストークで娼婦として働き始めてから、三年が経っていた。染乃は自らの死を覚悟した諜報員で、客の一人であった周より日本円と手紙を受け取る。手紙には、イワーノフがイルクーツクの政治犯収容所にいることが記されていた。染乃は前借金を精算し、手紙を運んできた笵少年と共に旅立つ。

 収容所ではイワーノフが重労働に従事させらていた。染乃と笵は、収容者の家族の小屋が建ち並ぶソールスコエの村で、息子の帰りを待つ老女の家に同居することとなる。凍てついたロシアの大地で生活する中で、染乃にとって笛はなくてはならないものになった。

 五度目の秋、ついにイワーノフが収容所から解放される。抱き合う二人だが、笵少年は姿を消していた。

翌年に移ったウラジヴォストークで、染乃は馴染み客の貿易商人と偶然再会する。彼の紹介でナホトカの中国料理店・東園に夫婦で住み込みで働くことになる。その働きぶりを評価された二人は、ようやく穏やかな生活得るのであった。安らぎの中、イワーノフは仲間を裏切って出獄した自分が幸せに浸る苦しみを吐露する。染乃もまた遊郭での暗い記憶に苦悩していたが、過去を切り離し「今その瞬間」だけを信じるよう努める。

 そんな最中、東園の主人は染乃に新店舗の経営を持ちかける。東園で働く染乃の評判を聞いた笵少年は、若者らしく成長して染乃の元に戻ってきた。静まり返った夜の店内で、イワーノフ、笵少年、染乃の三人は自由な新しい生活への希望を語り合い、染乃は久しぶりに笛を持つ。その笛の音は、三人それぞれの感慨を呼び起こしていった。


* * *

 染乃とイワーノフは知人である張文国の紹介と好意的な処遇を得た上、適切な接客態度や誠実な人柄が評判となり、ナホトカの中華料理店主としてようやく落ち着いた生活を送ります。かつて染乃とともにイルクーツクの寒村で苦楽をともにした中国人・笵少年もコックとして加わり、三人が共に働くことになります。

 染乃の新しい店が予想以上に繁盛すると、今度は張から共同経営者になることを提案されて承諾します。近い将来、国際的な緊張関係が絡み合って紛争に巻き込まれることを想定し、それに対応できる経営体制を確立するためでした。そんな矢先に来店した日本軍人である源田少佐から、染乃は機関の情報収集者となることと、日本国のために在露邦人からの献金集めをすることを依頼されます。情報収集は固辞する一方、献金活動に協力することの見返りに、源田に機一郎の動静について調査することを依頼した染乃は、しばし回想に耽ります。

  

 染乃は時どき店の姿見に自分の姿をうつして見て、深い感慨にひたることがあった。三十歳の境界をこえてから、彼女はふっくらと肥りはじめているようだった。以前は頼りないほどかぼそかった腰にも、胸にも、少しずつ豊かさを加えて来、顎もやや丸味をおびて、健康な明るい感じに変わってこようとしていた。

 経済的にも、精神的にも、落ち着きと張りが出てきたせいか、染乃はかつてのあの影の薄い、淋しげな表情のかわりに、内側からふくらもうとするあたたかいものが匂うようになっていた。

 「あんたはこのごろすっかり落ちつきがでてきた」

と、イワーノフは染乃をからかうのだった。
  「ロシアの少女たちも年を取ると肥って恐ろしいマダムになる。日本人もそうだとは知らな  
  かったよ」

「意地悪ね」

染乃は苦笑しながら、姿見の中の自分の様子に眺め入った。

〈機一郎さんに会ったら、あの人はこんな私を見て何と言うだろう〉

染乃はそんなふうに、時たま機一郎のことを思い出すのだった。(中略)

〈あんなにシベリアを憧れていた人だったのに――〉

逆に女の自分がその新天地の一角に着実な地盤を固めつつある運命の皮肉さを、染乃はひどく不思議なものに思わずにはいられなかった。 

 

 第一次世界対戦が勃発した夏のある日、イワーノフは収容所時代の仲間であったザミャーチンの訪問を受けます。その友人から、ペトログラードで起きた革命によってロシア政府が崩壊し、新たにソビエト組織が誕生したことを知らされます。ザミャーチンは、この新しい政治革命の大きな渦に共に行動するように嘗ての同志であるイワーノフを誘いに来たのでした。

 

 戦争、そして革命。ようやくたどり着いた染乃夫婦の落ち着いた生活を脅かすような、不穏な気配が濃くなり、暗雲が迫ってくるようです。染乃は機一郎の消息を知ることが出来るのか。順調な料理店の経営はこれから先も続いてゆくのか…。

次回【6月3日(日)】の新たな展開にご期待ください。



5月12日(土)第1回詩入門講座

どんな現実からも目を反らさずに

 講師:井崎 外枝子(『笛』同人)

 

 午後から第1回詩入門講座が開講されました。「詩を読み、学び、書こう」をスローガンとした、8回シリーズの構成です。3回目までは詩の鑑賞中心に、4回目以降は受講者の作品をもとにした合評会を中心に展開します。

初回の担当は、詩誌『笛』同人の井崎外枝子(いざき としこ)先生でした。

 前半は詩の特色について確認し、後半は詩作品を鑑賞し解説して頂きました。

①詩の三大部門

◇叙情詩:「叙」は述べるという意味。自分の感情を述べ表すこと。抒情詩も同じ。
     純粋詩、恋愛詩、生活詩など多様。通常、詩の大半が叙情詩と言える。

◇叙事詩:歴史的な事件や英雄の事跡を述べた韻文の作品。英雄詩とも言う。

◇劇 詩:韻文体の戯曲、詩劇。

② 用 語

 POESIE(フランス)=POETRY(英語 集合体としての詩)
 POEM(一篇の詩)  POET(詩人)

③詩の三つの要素
 「リズム」「意味」「イメージ」(=「イマージュ」、言葉の絵)

 

くらし     

           石垣 りん

食わずには生きてゆけない。

メシを

野菜を

肉を

空気を

光を

水を

親を

きょうだいを

師を

金もこころも

食わずには生きてこれなかった。

ふくれた腹をかかえ

口をぬぐえば

台所に散らばっている

にんじんのしっぽ

鳥の骨

父のはらわた

四十の日暮れ

私の目にはじめてあふれる獣の涙。

 

*石垣りん(1920~2004)「石垣りん詩集」(ハルキ文庫1998)

戦後の不安定な時代状況を反映して、強い圧力のある言葉が並ぶ。厳しい現実の生活から目を反らさず生きていこうとする逞しさ、父親への疑念や反発、女性という性を越え、自らの後悔、自虐、醜さや諦念までもとことん描き切ろうとする詩人の意志が感得される。戦後を代表する女流詩人による生活詩の傑作である。

 

終電車の風景

               鈴木志郎康

千葉行の終電車に乗った

踏み汚れた新聞紙が床一面に散っている

座席に坐ると

隣の勤め帰りの婆さんが足元の汚れ新聞紙を私の足元にけった

新聞紙の山が私の足元に来たので私もけった

前の座席の人も足を動かして新聞紙を押しやった

みんなで汚れ新聞紙の山をけったり押したり

きたないから誰も手で拾わない

それを立って見ている人もいる

車内の床一面汚れた新聞紙だ

こんな眺めはいいなと思った

これは素直な光景だ

そんなことを思っているうちに

電車は動き出して私は眠ってしまった

亀戸駅に着いた

目を開けた私はあわてて汚れ新聞を踏んで降りた

 

*鈴木志郎康(1935~)「現代詩文庫・続 鈴木志郎康詩集」(思潮社1994)

あるサラリーマンの日常的な光景を、主観を抜いて淡々と描いている。ジャーナリスト(カメラマン)であった作者にとって、新聞は日々の労働の成果であり生活の糧とも言えるが、あえて汚れて踏みつけられ、けられる社会の不要物として自嘲的に描く意図は何か。しらけた時代の風潮の一端を示唆するのか。

 

この他にも、草野心平「婆さん蛙ミミミの挨拶」、若松英輔「風の電話」を紹介して頂きました。先生とも交流のあった石垣りんさんですが、生前に金沢に来られた折りは、尾山神社の正門のステンドグラスがとてもお気に入りの様子で、ゆったりと可愛らしく優しい口調でお話しされたそうです。

ともかく書くこと。多種多様の内容・題材を書き続ける中から、自分にふさわしい表現の形を絞っていくことが当面の課題です、と激励して頂きました。

 

今回の受講生は7名でしたが、質問や意見も出しやすいムードでした。次回は6月9日(土)の開催予定です。詩に関心があり、作品づくりに挑戦したい方、第2回からのご参加や見学も歓迎いたしますので、ぜひお越しください。

 



5月12日(土)第1回小説入門講座

起承転結の「転」で想定外の展開を

 講師:高山 敏(『北陸文学』主宰)

 

 風薫る5月。満開のツツジに心地よいそよ風が渡るこの日、「小説を書く力」というテーマで、今年度第1回目の小説入門講座が開かれました。担当は同人誌『北陸文学』主宰の高山 敏(たかやま さとし)先生です。

 昨年度から引き続き受講する3名を含めた13名の方が参加されました。それぞれ、どんな小説を書きたいかとお伺いしたところ、歴史小説、ミステリー、こどもたちに読んで欲しい童話といった分野から、自分の体験に沿った物語、純文学、現代人の意識の深層にせまる社会派小説など、様々な希望があり、心強く感じました。この講座を刺激にしながら書き続け、書き上げたいという声も聞かれました。性別、世代・年齢、職種や経験の差を越えて、この講座で親交を深めながら、それぞれの最高傑作となる小説を書くという価値ある挑戦に期待しています。先生からも、受講生のみなさんの思いを受けて温かい激励をいただきました。

①小説を書く基本的な手順

◇まず、経過順に書く→→→ 並べ替える →→→ 無駄な場面をカットする

◇注意点

 *場面の一つ一つが物語になっていること

 *登場人物を一人にしない

 *リアリティは日常生活の細部から

 *無鉄砲という武器を持つ(ちゅうちょなくチャレンジする!)

②書き出しから結末まで・・・

 ◇書き出しにエネルギーを注ぐ:非凡なことが起こるということを暗示する

 ◇書く内容:実際の経験や見聞やその変型、虚構も交えて

 ◇登場人物:自分の身近な人・身近なところから始める 個性を持たせて描き分ける

 ◇主題(言いたいこと)は一つに絞る

 ◇あからさまに書かない…匂わせる、ぼかすなどの工夫

 ◇主人公が抱えている「事情」(過去・現在・未来)を重視

 ◇心の中を描く…納得できない,裏切られるなどの苦渋や葛藤を

 ◇起承転結…「転」で読者の予想を越えた展開に導く

  ◇ネガティブな結末にしない…希望を含ませた余韻、想像させる余韻

 

 先生から紹介して頂いた「終着駅」「星は何でも知っている」「サトウキビ畑」といった懐かしい歌詞の例を通して、巧みな心理描写や詩的で余韻を生む表現を感得しました。

 受講生の皆さんが書きたいこと、小説として書こうとしているテーマや内容を具体的に掘り下げていくプロセスが始まりました。限られた時間ですが、積極的に意見を交わしたり、質問したりしてそれぞれの「果敢なチャレンジ」、「真の創造」につなげてほしいと願っています。

 



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