金沢蓄音器館

館長ブログ ほっと物語

2018年4月

その265蓄音器の中の手紙



 
蓄音器の扉を開けてみると、そこには1通の手紙があった。
手紙を抱いていた蓄音器は、一昨年、寄贈いただいたブランズウイック社の「マドリッド」というコンソール型蓄音器。これには脚が取り付けられていなかった。(館長ブログその222に記載)

この度、ようやく取り付けることが出来た。
ただブランズウイック社の「バレンシア」のような優雅な脚ではなく、少し武骨に見えるかもしれないが、安定感ある太目のデザインにした。

 
このマドリッドは4枚扉になっており、両サイドはレコード収蔵スペースになっている。

 この脚を取り付ける作業中に、その左側の収蔵スペースの発見されにくい奥の方から1通の封筒を見つけた。
消印を見ると「1943,JUL 25  U.S.NAVY ,軍用のためか切手も貼らず「FREE」となっていた。太平洋戦争まっただ中の手紙ではないか。


カリフォルニア、オークランドの海軍病院スタッフの兵士からニューオーリンズ、ルイジアナの女性の友人にあてたものだった。

ルーズベルト大統領夫人に会ったこと、四半期の最優秀海軍軍人に選ばれたこと、兵役従事者が海外へ送られる前に一度故郷に帰ることが出来る法案に賛成などと戦時色にあふれている内容だ。
しかしアメリカの若者らしく、公会堂でショーやダンスに出かけること、ロールフィルム4巻買って写真撮りに出かけるとも書かれている。
余程気にかけていたのかその故郷の女の友だちの友人の様子も尋ねている。青春真っ盛りなのだ。
当時の日本では想っていても「軍用郵便」に書くことはできないことだと思う。

 この蓄音器でどんな曲を楽しんでいたのだろうか。この手紙はどうして蓄音器のなかに隠されていたのだろうか。この手紙の関係者は存命なのだろうか。

 

蓄音器の中に隠れていた手紙は、いろんな想像をかき立たせた。持ち主をどう探せばいいのか思案している。




(右下の新聞は、平成30年4月21日(土)北陸中日新聞朝刊社会面に掲載されたもの) 
  


「マドリッド」 脚は新たに取り付けた

左,レコードケースの奥に封筒らしきものが

ブランズウイック社「バレンシア」

隠されていた?封筒

その264共同作業で直した蓄音器

 
「『キャピトル』とプレートに書かれた卓上型の蓄音器を持ってるんですが動くかどうか、価値あるものかどうかわかりません。廃棄されても構いません。お送りします」とのありがたい電話が大阪の男性からあった。
2,3日後、その蓄音器は送られてきた。

 初めてみる蓄音器だった。
The Capital NO,3  シリアルNO,9364 Music is the life of the nation  Capital Talking Machine Co.」と書かれたプレートがあった。
JapanU.S.Aなどと国名はなかった。

まずはゼンマイが切れていないことを確認した。

音の入り口であるサウンドボックスの振動板がひどく傷んでいた。
これでは音は出ない。取り換えるしかない。調べると直径は53㎜だった。
これなら収蔵している新品部品のコロムビアの小型のものがぴったりだ。
早速取り換えた。これできれいな音色を奏でるのではと期待した。

サウンドボックスの裏側には「LASTING PHONIC,MADE BY PAUDAKT.COMPANY  U.S.A.」と書かれているが米国製かどうか疑わしい。
にせものが横行していた時代だからだ。
製品の各部品の出来具合、丁寧さなどで総合判断した方が間違いない。

 

金沢の電話帳用紙で紙ラッパを作った「蓄音器マエストロ」の浅井百生さん(館長ブログNO.169に詳しい)もこの蓄音器改良に加わった。

ブリキのラッパとつながっているエルボと呼ばれる鋳物製の曲がった部品がついているのだが、1㎝も寸法が合わないことを突き止めた。
そこでラッパの外部に布製のガムテープを巻いて、音漏れを止めた。

ラッパの内側も塗料を塗って音の反射をよくした。わざと凸凹をつけるとなめらかな音になった。

他にもサウンドボックスとアームの接合部を糸でしばった。
アームの作りはきれいなメッキがされているが、受けになるボールベアリングの玉の数が3個しかない。そのうちの手前2個で支えている。
前面のネットはぼろぼろで茶系の布に張り替えた。
ガバナーを芯棒に固定する12㎜のワッシャーが1個ないために回転ムラを起こしていた。新しく1個を取り付けた。

いろいろ修理や改良を試みた。
はたしてアメリカ製か否か定かではないが、ようやく音は改善された。

フー!
 

  


贈られたキャピタル蓄音器
ネットは張り替えた

キャピトル3型のプレート

壊れていたジュラルミンの振動板

はまったコロムビアの振動板、直径53mm

表面を凸凹に修理したラッパ

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