金沢蓄音器館

館長ブログ ほっと物語

2011年7月

その74「前畑ガンバレのそっくりさんレコード」



「ニュース 女子200米決勝実況(アサヒニュース班)」とレーベルに記載されたSPレコードが金沢蓄音器館にある。

「ピィーピィーピー」とモールス信号で始まり、ファンファーレが鳴ってアナウンサーの
「800米リレーの優勝に、いまだ興奮がさめやらぬプール。これからいよいよ我が前畑譲が出場する200米平泳ぎ決勝が開始されます」
続いて、スタートのピストルが鳴る。35米通過するとすぐに100、125、残り25米とアナウンサーは語り、
「前畑ガンバレ、前畑ガンバレ」
と絶叫し、周囲から聞かれる歓声はだんだん大きくなる。

レコードの終わりには再び「ピィーピィーピー」の信号音が入り、さながら海外から届いたかのように編集がされている。

はて、実況盤はNHKの河西三省アナで、ポリドール盤のはずだが?なぜアナウンサーの名前が書かれていないのか?

「アサヒニュース班」とはなにか?

ポリドール盤は、遠くドイツからの電波を収録したもので聞きにくいところがあるのだが、これは鮮明に聞こえるのは?

これらの疑問を解決するには機材の揃ったスタジオ収録しかないのでは?

実はこのレコード、あとで編集された「そっくり盤」である。

発売は名古屋のアサヒレコード。
戦前、中部にあった唯一のレコード会社で社長は中部ガスを設立した神野三郎氏であった。義兄金之助重行の子、金之助重孝は名鉄社長、名古屋商工会議所会頭、初代NHK名古屋放送局の理事長を兼務(のちにNHK経営委員)していたと三郎の孫にあたる名鉄百貨店神野重行社長(元金沢名鉄百貨店社長)は語る。
そんな関係でアサヒニュース班のアナウンサーは、NHK名古屋放送局員ではなかったかと推測する向きもある。

前畑盤のみならず男子100米、200米、男子平泳、800米リレー、マラソン、陸上五千米盤などの所蔵レコードもある。
わざわざ見せかけの実況盤が作られるほど日本中がオリンピック情報に飢えていたと言うことだろう。


「前畑優勝盤、アサヒニュース班」
と記載されている

男子200米決勝実況盤

陸上5000米実況盤

マラソン実況盤
その73「"前畑ガンバレ"の実況レコード」

「前畑ガンバレ、前畑ガンバレ」とアナウンサーが絶叫する水泳実況は、今も世界競泳やオリンピックが近付くとテレビ、ラジオで繰り返し放映される。

昭和11年8月、ドイツで行われた第11回ベルリンオリンピックの女子200メートル決勝は国民を歓喜の渦に巻き込んだ。

この有名な実況は、NHKが残したものではなかった。これはポリドールの前身のコロナレコードという会社が録音したものだったという。

当時は、録音などされていない時代だった。放送は流しっぱなしだった。
しかしポリドールの湯地富雄は新鋭機材のテストレコーディングをNHKに無断で行っていた。
当時は、片面3,4分しか録音できなかった。
水泳の200米なら録音可能であり、さらにその試合は優勝の期待がかかっていたので選んだ。

録音はうまくいった。NHKは
「無断録音の上、商売にするとは!しかし録音されたレコードの販売を許可する代わりに再放送したい」
と申し込んだという。
時差の関係で深夜放送しか出来なかったNHKに、全国から再放送の希望が殺到していたからだ。

このことがあってからNHKは録音放送に目覚め、音の記録の重要性を認識したという。

湯地さんの父、敬吾さんは乃木将軍の実声を録音したことでも知られ、親子2代にわたって歴史に関わったことになる。(敬吾さんは明治40年に録音に成功した最初の日本人と言われている)

金沢蓄音器館にはこの前畑盤、1500米決勝盤、マラソン優勝盤などのベルリンオリンピックのレコードを収蔵している。


「前畑ガンバレ」実況盤

孫基禎選手マラソン、優勝盤

1500米自由形決勝盤

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