金沢蓄音器館

館長ブログ ほっと物語

2012年5月

その105「CDで聴こう!蓄音器時代の名曲」



金沢蓄音器館には、蓄音器約600台、約3万枚にのぼるSPレコードがある。
その中の歴史的名演奏や貴重な名盤を出来るだけ多くの方々に聴いていただきたいと思い、開館10周年を記念してCDを制作した。
クラシック50枚、日本の曲は1枚(24曲を収録)、計51枚。

一般に、古いレコード盤を復刻したCDの多くは、音を再生するカートリッジを通して直接収録したものだ。そのためノイズは大きいし、多く入ってくる。だからといって、それをカットするといい音にならない。
そこで蓄音器で鳴らした音を直接マイクで取り、人の耳に聞こえる音に近付けてCD化した。
さらに、バイオリン曲ならラッパが木製のブランズウイック、人の声が入った曲なら紙ラッパのE.M.G.、ピアノならH.M.V.,協奏曲ならクレデンザなどと全8台の蓄音器を使い、レコード毎に蓄音器をかえた。
独断と偏見では良くないと、元ビクタースピーカー開発者の桑波田敏勝氏の意見も取り入れた。
録音は、蓄音器館を使って真夏の平成23年7月22日から1週間を要した。
専門の録音スタジオではないため閉館後の午後6時からスタート、音のするエアコンを切り、暑さ対策のためステテコ姿で朝4時までかかったことも何日かある。
外の音が入り、やり直しもたびたびだった。

クラシック曲の解説は、発売当時の解説書から現代文に書き替えた。
解説書が散逸し、なくなった35曲分はアンサンブル金沢のバイオリニストである大村俊介氏、金沢在住のピアニスト、大野由香さんにお願いした。
お二人とも忙しい中、精力的に書いてくれた。
録音エンジニアは、東京などから経験豊富なプロを招聘した。
こうしてようやく11月に発売にこぎつけた。
驚くほど大きく、艶やかな音で個性的なラッパの蓄音器の音色が、家庭で現代のデジタル技術のCDで楽しめる当館の自信作である。

(金沢蓄音器館のHPにある「ミュージアムショップ」で求められます)


クレデンザにSPレコードをかけて
2本のマイクでの録音風景

録音したSPレコード
シャリアピン「ヴォルガの舟唄」
(レコード番号RL-7)
英国、EMGエキスパート・シニアで録音

録音したSPレコード
クライスラー「タイスの瞑想曲」
(レコード番号6844)
米国、ブランズウイック・バレンシアで 録音
その104「蓄音器が本に!」



なんと、タイトルが「金沢蓄音器館のレコードコンサート」。(悠雲舎刊、¥1575)

内容をちょっと紹介すると
「ページをたぐれば時代が鳴り出すー19世紀の末にレコードが発明されて以来、21世紀現在のデジタル配信まで、音楽は手頃に聴けるよう工夫されてきた。
その弛みない娯楽性と、音楽が形を変えてきた一方で失われてしまった臨場感と緊張感をもこめて。
今まさに鳴らされる、不思議にシャレた音楽エッセイの開演!」
と、帯に書かれている。

これは金沢大学名誉教授の高山俊昭(たかやま としあき)氏が千田日記(せんだ にっき)のペンネームで上梓した随筆集<名盤・珍盤・告知盤>の第4弾である。
最後の86番目のエッセイの題がそのまま本のタイトルになったのだ。

高山先生には何度かこの館の講師としてお話を伺ったことがある。
その音楽に関して造詣の深さに感心するのだが、そればかりではない。けれんみのない先生でその人柄に触れるとたちまちファンになってしまう。
金沢大学で20年以上教職にあった方で、金沢に生まれ育った小生などより余程金沢を知り、愛してやまないことがよくわかる。

ノイズのないCDに始まり、今やデジタル音真っ盛りの時代である。
デジタルはいつでも、どこでも、簡単に、軽くて、綺麗で、ノイズなく、すばやい音だが、それを否定する気はさらさらない。
豊かな生活を無意識に、当たり前のように享受しているが、音楽を楽しむ真摯な態度を失っているのではという指摘には共感を覚える。

(書籍は、平成24年5月東京新聞、中日新聞「この人」の欄に紹介された)


「金沢蓄音器館のレコードコンサート」

針をSPレコードに載せる時は
息をころして

蓄音器館での高山金大名誉教授
その103「デジタル化の究極の目的」

それはいつもの「蓄音器の聴き比べ」が終わった時だった。金沢蓄音器館では、1日3回、10台あまりの様々な蓄音器の音色を来館者の方々に聴いてもらっている。

東京から来たという若い綺麗な女性だった。とても感動したと語った。

「音楽が好きで、携帯電話に音楽を送信する仕事をしているものです。携帯電話会社毎にちょっとづつ送信システムが違うので1曲を7~8通りの音源に変えて送るのですが、音を圧縮して送ることは同じです。でも圧縮した音は何か平べったく感じ、つまらなく思っていました。
それに比べ、蓄音器は高域が6000ヘルツしか出ないそうですが、なんてゆったりとして優しい音色なんでしょう。自然でリアルな音色を求めることが、私のこれからの仕事では?圧縮された音に、蓄音器のような微妙な<味付け>ができないものだろうか?と、思いました」

こんな感性を持った若い女性がいたとは日本人も捨てたものじゃない。嬉しいことだ。

テレビが地デジになって確かに画面はきれいになった。そのかわり余分な?顔のしわまでくっきりと映るようになったが。
でも、音は昔のアナログ放送の方がいい。音楽番組はキンキンしていて聞いていて疲れると、かつて放送局のアナウンサーだった方が語っていたことを思い出す。
ビクターの社長だった故冨塚勇さんは
「デジタルの究極の目的は、アナログだ。なぜなら人の耳は空気の振動というアナログで聴いているからだ」
と言っていた。
機器の小型化・軽量化、低価格化、利便性はデジタルが有利だが、音の入り口と出口はアナログなのである。


蓄音器の聴き比べコーナー
毎日11、14、16時の3回


元日本レコード協会長
元ビクターE社長
冨塚 勇氏
(写真提供:日本レコード協会)

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