金沢蓄音器館

館長ブログ ほっと物語

2014年2月

その154音のアーカイブの街

平成259月、久しぶりに鹿児島在住の学生時代の友人から「お前が地元新聞に写っていたんで、送るよ」と携帯電話がなり、南日本新聞が送られてきた。

 

そこには「旅」コーナーで金沢市が紹介されており、小生が解説している当館の「聴き比べ」の模様が大きな写真で映っていた。

加賀名物「すだれ麩」を使った治部煮も紹介され、それは薄味の中にもほんのりとした甘さが浮かび上がり演出がとても上品だとほめている。

「主役はお客様。会話に邪魔にならないようジャズをかける、お酒も同じです」とマスターが語るスタンド・バーも紹介されていた。

当館については、13回の「聴き比べ」を、「タイムマシーンに乗った気分で、楽しんでください」という小生の言葉を皮切りに、手廻しで原始的だが、柔らかで優しい音に癒されたと書かれていた。

 

オーケストラ・アンサンブル金沢の本拠地であり春には「ラ・フォル・ジュルネ」、秋には「金沢ジャズストリート」、冬の「ライブ・サーキット」など音楽祭も開かれる「音楽の街」として金沢を紹介している。

隣接する野々市の金沢工大にはLPレコード20万枚超を所蔵する「ポピュラー・ミュージック・コレクション(通称:P.M.C)もあり、当館所蔵の蓄音器、SPレコードと連携し「音のアーカイブの街」としての町おこしに期待したいと結んでいた。

石川県立歴史博物館の「鞍コレクション」にも加わってもらい、実現すれば北陸新幹線での観光促進にも役立つだろうと小生も思う。

 

「金沢、イイねー。また、お邪魔するよ」友人はそう言って電話を切った。

 

同じ記事が四国、信濃毎日、日本海、山梨日日、熊本日日、岐阜、京都、愛媛、下野新聞などに掲載されたと共同通信社から後日連絡があった。



聴き比べの模様

1日3回(11,14,16時)、エジソン、ラッパ型、卓上型、ポータブル型、大型のコンソールタイプなど10台あまりの蓄音器で、実際の音色が聴ける(所用時間30~40分位)






その153「"兄の思い出"、金沢へ

 




平成26年の正月が過ぎてから、さいたま市在住の70歳の女性の方から1台の蓄音器が寄贈されてきた。ターンテーブルの上にレコードが1枚、乗っていた。丁寧な手紙が一緒に添えられていた。

 

18年前、都内に住んでいた折、求めた蓄音器だという。

それは、銀座にある十字屋楽器店が大正初期ごろ販売した「ジュエル」という卓上型蓄音器だった。
外観は、夏目漱石が愛用したビクターのV V(ブイ・ブイ)9型に似た綺麗なもので、針の付いたサウンド・ボックスは縦・横振動兼用のものだ。
振動板はマイカ(雲母の板)でひび割れもない。
ガバナー(回転の安定器)はしっかりとしたケースに入っており、オイルが循環する工夫がされているすぐれものだ。
ラッパも、根元は鉄、出口は木製で随分と丁寧に製造されており、程度はすこぶるいいものだ。

 

手紙には「亡くなった10歳年上の兄が洋楽に親しんでいたことを思い出し、衝動買いだった」と書かれていた。
蓄音器にクロスをかけてご主人には内緒にし、ベットの脇にずっと置いたままにしていたという。
母の介護で忙しく、音楽を楽しむ余裕は皆無の生活で、近年ようやく少し出かけられるようになり、昨年9月古賀政男音楽博物館での金沢蓄音器館名誉館長でもある飯田久彦さんと小生の日本の流行歌を楽しむ会に出かけたと言う。

帰宅後、ご主人に「古い蓄音器」の存在を打ち明け、ハンドルを廻したところタンゴの名曲である「ラ・クンパルシータ」が聞こえてきたという。
決していい音とはいえないものだったが、当館できちんと再生出来れば、蓄音器も幸せになれるのではと思われたそうである。
そんなことで御主人とも話し、そのご主人と学生時代、野球部でも一緒だった飯田久彦さんとも相談の上、当館への寄贈となったと結ばれていた。


今は、少し体調を崩されているとのことだったが、1日も早い回復を願い、是非ご来館していただきたいと思っている。


カステリアンズの「ラ・クンパルシータ」

銀座、十字屋のジュエル蓄音器
W,D,H:45×45×38cm

ラッパの根元は鉄製、音の出口は木製

ふたを閉じ、オイル溜まりになっている