金沢蓄音器館

館長ブログ ほっと物語

2014年8月

その169金沢の電話帳で作った紙ラッパ蓄音器

当館には英国E.M.G.社がラッパを紙で作った蓄音器、エキスパート・シニアエキスパート・ジュニアがある。E.M.G. の兄弟蓄音器と言っていい。

ともにロンドンの電話帳を溶かしてラッパになっており、紙には“パピエ・マーシュ”(Papier-Marche)という名前がちゃんとついている。一説には外部に日本の和紙を貼ったという説もある。

“ジュニア”が昭和2年、“シニア”は同10年ごろに作られたもので、3つの特長がある。
1つは、どの蓄音器もそうだが電気を使わないのにとても音が大きいことだ。
2つ目は、耳元で人の声が聞こえ、演奏はちょっと奥の方で聞こえる。ステレオ?と思われるかもしれないが、そうではない。音が立体的に聞こえるのだ。ラッパの正面で聴くと、それが良くわかる。
3つ目は、針と盤が擦れるスクラッチノイズが小さいことだ。


“シニア”はラッパが横50cm60cmの楕円形、“ジュニア”は50㎝で縦、横同じサイズの丸型だ。針がついているサウンドボックスはナイフエッジ型で11個手造りになっており、寸法が微妙に違っている。

人の声が入ったレコード盤をかけると、聞いた方々は、「戦前にこんな音があったなんてとても信じられない」と一様に驚く。

 
当館に勤務している浅井百生(あさい・ももお)さんがチョット小さな口径(横36cm44㎝)のラッパを作り、鉄製の金属ラッパ蓄音器を紙ラッパに替えてみたらと思いついた。
浅井さんは、いつも館内でE.M.G.蓄音器の音色を聴いていて、「なんでこんな優しい音が出るんだろう」と不思議に思っていたという。元繊維機械メーカーにエンジニアとして働いていた当年72歳の浅井さんの技術者魂に火がついたわけだ。

熟慮1年、今年に入って制作を始め、根元は銅板を基にして、ラッパ部の厚さは0.4mmの紙をベースにし、ロンドンならぬ金沢の電話帳を帯状に切って巻き、5mmから6mmにしたという。糊で貼り合わせたが乾燥すると縮んでしまうので、紙を縦にしたりして貼る工夫を施し収縮を防いだという。仕上げは金沢らしく二俣(ふたまた)産の和紙を表面に貼って、薄く塗装した。

針を落とすと優しい音色を奏でた。

「“兄はいるけど弟が欲しい”と蓄音器が言っているように思えたんです」浅井さんはニッコとして語った。


鉄製ラッパの蓄音器


金沢の電話帳と二俣和紙で作った
ラッパ


浅井百生さんと金沢の電話帳で作った
紙ラッパ蓄音器




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