金沢蓄音器館

館長ブログ ほっと物語

2014年12月

その176「恐るべし、コロムビアNO.108

 




SPレコードばかりでなく蓄音器も様々なものが寄贈されてくる。動くものもあるが壊れているものも多い。その中にコロムビア卓上型蓄音器NO,108があった。昭和7年に60円で発売されたものだ。
60円は当時のコロムビア卓上型蓄音器としては、下から2番目の低価格の部類に入る大衆品といえる。しかし、この年白米10Kg230銭というから蓄音機は随分と高いものだったには違いない。

ビクター卓上型蓄音器1-90型と同様深い蓋があり、アームは鉄製、中間で上に折れるストレート式。
サウンドボックスはNO,8が付いている。発売当初は10インチのターンテーブルだったが、箱の割に小さかったので後に12インチに変わったという。(「昔なつかし蓄音器」鈴木啓三著より)当館に寄贈されたものは12インチのターンテーブルがついていた。
ホーンは鋳物と鉄板をつないだ1本のストレートホーンだ。ラッパ開口部は縦15cm、横30㎝。ゼンマイは一重。
 

レコード盤をかけてみるとサウンドボックス、ホーンの状態がよく綺麗な音色を奏でた。


ただ、スピードコントロールが錆ついていた。動かなかったので、5-56というサビ取り潤滑油をつけて気長に錆を落としたが、やはり動かなかった。
一緒に修理していた天谷貞夫、浅井百生両氏に相談し、四苦八苦。
ようやく、上部のコントロールネジをチョッと廻すと、下部にある小さな細いコントロールピンが大きく動いた。カム機構が組み込まれているためだとわかった。

その精緻さに一同驚いた。低価格品とはいえ良質品であり、その工夫には脱帽しきりだった。コロムビアの面目躍如である。

 
汗をかいた分、先人たちの知恵に接する楽しみを味わった。

 





コロムビア卓上型NO.108

ターンテーブル右にある
スピードコントロールのつまみ

左のつまみを廻すと、右の突起先端が
出てくる

ラッパは鉄製
その175ライオン宰相の肉声レコード



浜口雄幸(はまぐち・おさち)は顔つきがライオンに似ており「ライオン首相」とニックネームがあったが、「人柄は温厚で信頼されていた」と東京大学の新井達夫氏は書いている。


その演説レコードが、寄贈されたSP盤の中に1枚混ざっていた。当館に収蔵されていない貴重盤だ。
「国民に愬(うった)う」と12インチ盤両面にその演説は録音されている。
録音された文章もついている。力強い、はっきりとした声である。

 
民政党総裁浜口雄幸は昭和47月に内閣を組閣した。しかし与党、民政党は少数であり、反対の党である政友会が絶対多数を占めていた。
これでは与党が円満に国務を遂行できない。そこで国民経済の立て直し策を図り、その信を問うために翌5121日に衆議院を解散し総選挙を行った。
その時の総理大臣としての考えを752秒のレコード盤(両面)に納めている。
当時新しかったメディア・ラジオを通じて政策を訴えた最初の総理でもあった。

 歴史上の人物を書物や写真でしか知らない人々もこのレコードから出てくる声を聞いたならば、その人物がどんな人であったのか、より正確な認識を得られるに違いない。

金沢蓄音器館には、政治家だけでも大隈重信、犬養毅、田中義一、井上準之助、若槻礼次郎、永井柳太郎、斉藤実など、軍人では東郷平八郎、東条英機、乃木希典など多くの声が残っている。

これら人たちの肉声を聞く機会を作り、その人となりに近づいてみたいと思っている。


演説「国民に愬う」浜口雄幸内閣総理大臣

レコードに添付の文章

永井柳太郎拓務大臣「青年に告ぐ」

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