金沢蓄音器館

館長ブログ ほっと物語

2015年5月

その186音のアーカイブのまち・金沢(下)

飯田久彦さん、竺覚暁さん、奥村さやかさんの興味深い話を続けたい。

 
飯田久彦(エイベックス顧問)さんは、曲のつくり手側から「若い人たちに申し送りしたいこと」の一つとして阿久悠さんとの関わりを話した。
「最近若い人たちにイヤホーン利用者が多い。周囲の様子がわからぬ位の大音量だ。これは体に音を注射しているのと同じ。注射液は体から出ていかない。10万枚売れてもそれまで。昔、まちに音楽が空気のように流れていた時には10万枚売れても100万人が知っていたと言われた。だから『文化』なのだ。
音楽はメロディ、サウンド、ハーモニー、さらに音の強弱が大切だ。電子楽器が駆使され、パソコン1台あれば曲は作れるという若者もいる。テレビで歌っているのは、ほとんどが口パク。生ではない。口パクでは心は伝わらない。
『熱き心と想い』が必要ではないか。
いい歌詞が出来たと言って、阿久悠さんとは、FAXもコピーもあったが必ず会って受け取った。直接手渡しすることで作家の温度の高さが伝わる。その熱さが録音エンジニア、宣伝マン、営業に伝わって、それで多くの人たちに伝わる。最近は、曲が詞より先に出来る『曲先(きょくせん)』が多いが、もっと詞を大切にすることだ。言葉をなおざりにしてはだめ。
秋元康さんも、実は詞のテーマ、タイトルのおもしろさ、時代を裏切る詞をポケットにいくつも持っている。今の時代は、そのことが希薄になっているのでは」


 
竺覚暁(金工大ライブラリーセンター長)さんは、P.M.C.(ポピュラー・ミュージック・コレクション)では「LPの音源だけでなく時代を表わすジャケットデザインにも関心が高いこと、学生だけでなく無料で自由に聞けるため社会人の利用もある」ことが語られた。また、自らが主宰している建築図面のアーカイブス研究所長の立場から原図収集の必要性を語り、「レコードも同じでは」と指摘した。「施設の利用者から使用料をいただくこともこれからの検討課題だろう」とも指摘した。


 
奥村さやか(国立国会図書館員)さんは、国立国会図書館でのSPレコード約5万音源のデジタル収集の過程、現状説明をされた。「著作権、著作隣接権の保護満了を確認できた約1千音源はだれでもネット上で聞け、全音源は公立図書館、調査研究機関など全国の歴史的音源配信提供参加館で聴ける」ことも紹介した。「米国議会図書館(LC)のNational Jukebox、フランス、スペイン、スイス、ラトビアなどでアナログ盤の公開が相次ぎ、紙の資料だけでなく録音資料を保存していこうという機運が高まっている」ことも合わせて話した。

 
アーカイブというとすぐにデジタル化という言葉が出てくる。原盤をテープに残した時代もあった。その時代は最良の方法だっただろう。今はデジタル化が最善という。金をかけて残すというより図面と同様、レコードの周辺にあるものも含めて原盤を残すことがまず大切ではないか。蓄音器を使ってその時代の音で聞くことが人々の生きた姿を残し、未来へこんな時代があったことを伝えていくことが、アーカイブの本質ではないだろうかと小生は思う。 (了)

(このシンポジウムは、当日テレビ金沢で報道された)




飯田久彦さん、大いに語る





金工大PMC(ポピュラー・ミューッジク・コレクション)の
パンフレット





竺覚暁さん、奥村さやかさん、飯田久彦さん、穴澤健明さん(前列左より)

ロイ・キヨタさん(PMC),大西秀紀さん(立命館大講師)、校壌亮治さん、小生(後列左より)




その185音のアーカイブのまち・金沢(上)

金沢には、金沢工業大学がLPレコード20万枚以上、当館が3万枚を超すSPレコードと600台以上の蓄音器がある。また、石川県立歴史博物館には蓄音器とSPの「鞍コレクション」もある。
明治末期からの「近過去(きんかこ)」の音楽とそのハード、ソフトが集まっている、全国的に見ても稀有な街と言っていい。

音ばかりでなくその周辺の解説書、カタログ、デザインなど時代を語る資料もある。いわば日本の音・音楽が集積されており、金沢は「音のアーカイブのまち」になり得る要素があると言えるのではないだろうか。
328日(土)、その要素をどのように活用すればよいかを討議しようと当館でシンポジウムを開いた。

集まったメンバーは、日本オーディオ協会・校條亮治(めんじょう・りょうじ)会長、穴澤健明(あなざわ・たけあき)同諮問委員、金工大の竺覚暁(ちく・かくぎょう)教授兼ライブラリーセンター長、国立国会図書館電子図書館課の奥村
さやか氏、AVEX㈱顧問の飯田久彦当館名誉館長。司会は小生がつとめた。
以下、その要旨。

校條亮治(日本オーディオ協会長)さんからは、今、話題に上っているCDをしのぐ音質と言われる「ハイレゾ」について、音が良いというより音を良くするための環境整備一つと指摘。
又、「先人の残した足跡なしでは『新しいモノ・こと』は生まれないわけで、語れる人も少なく、誰もが見て、聞いて、触れられる場所も少ない。そんな中で金沢は足跡をたどることができる街になりうるのでは」と指摘した。

 穴澤健明(日本オーディオ協会諮問委員)さんは、「未来に役立つ貴重遺産」の例として、幻の昭和15年の東京オリンピックの録音技術で玉音放送が出来たこと、昭和12年の日本人の発明で34分もの長時間録音を世界で初めて可能にしたフィルモン蓄音器のこと、大正期に日本に蔓延した複写盤とそれを止めた著作権立法化の件など具体的な出来事を紹介した。
最近健康被害が言われているヘッドホーン,イヤホンの上手な使い方も披露した。

                             (上)おわり

1960年代にヒットした「ルイジアナ・ママ」で有名な歌手飯田久彦さん、竺覚暁さん、奥村さやかさんの方のコメントは次回に。



校穣さん、穴澤さん、竺さん、奥村さん、
飯田さんと小生(左から)










歴史的音源の解説をする奥村さん







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