金沢蓄音器館

館長ブログ ほっと物語

2016年1月

その204「アンサンブル金沢、CDデビューの裏話

オーケストラ・アンサンブル金沢(O.E.K)は石川県、金沢市が中心となって198811月に我が国初の本格的プロ室内管弦楽団として誕生した。
1991年、創立3周年を迎えるにあたり、その高い音楽性をより知ってもらおうとCDを制作する企画が持ち上がった。

 当初、ビクターレコードに制作依頼することになった。
だがメーカーにとって、クラシックの全国向けのカタログ発売で収益を挙げることは至難の業だった。あの人気を博したスタニスラフ・ブーニン(ピアニスト)がクラシックジャンルで全国販売ランキング1位を取ったが、販売枚数はわずか5千枚だったと聞いている。

そこでビクターはカタログ販売でなく3千枚の一括受注生産ならと方針転換を計った。

間に入ったO.E.K.サイドと小生は何とか販売を成功させようと知恵を絞った。

こうして199141920日両日の野々市町(現野々市市)文化会館で録音することになった。
録音専用スタジオではないため岩城宏之音楽監督・指揮者をはじめ楽団員は納得いくまで何度も録音しなおした。
深夜までの録音エンジニア・事務局員など関係者の目は血走っていたが、皆「いい音を!」の想いは一緒だった。

完成したCDは専門誌「レコード芸術」をはじめ多くの新聞・雑誌などでも高い評価をもらった。
多くの若い方々にも聞いていただけるよう県、市へ学校の数だけ寄贈した。
日本だけでなく世界へ向けて発信するため英文の解説書もジャケットにいれた。

 当初3千枚プレスしたCDは、その後も追加生産し現在は9千枚になっている。

このCDの音に驚いたポリドールレコードは「次の作品は当社が制作したい」と申し込んできた。世界一のクラシックブランドである「ドイツグラモフォン・マーク」で発売するならOKしようと販売条件を付けた。
このCDは日本レコードアカデミー賞(日本レコード大賞のクラシック版といっていい)を受賞した。
その後も、ソニー、ビクター、東芝EMI,ワーナーミュージック、コロムビア、AVEXなど各社から「次回は、是非わが社で発売を!」と、依頼が殺到した。  

今ではO.E.Kが録音したCD発売数は99種類、DVD3種類になり、全国にある室内管弦楽団では最も多い。(潮 博恵著「古都のオーケストラ、世界へ!」P.70に詳しい)

 あの最初のCDを作った熱き想いが続いていたからだろう。


モーツアルト:交響曲第40番ト短調K.550
チャイコフスキー:弦楽のためのセレナードop,48

岩城宏之指揮オーケストラ・アンサンブル金沢 
199141920野々市町文化会館フォルテ・ホールで録音



レコードアカデミー受賞盤
シュニトケ:合奏協奏曲第1番
ビゼー/シチェドリン:カルメン組曲

岩城宏之指揮オーケストラ・アンサンブル金沢 
19924192012,13野々市町文化会館フォルテ・ホールで録音



多くの発売されたCD群

金沢蓄音器館で販売されている


その203「芸妓出演CDの誕生秘話」



「金沢の音って、なんだろう?」と友人たちと一杯傾けながら、
「街中の用水の流れている音か」、
「大乗寺の杉木立を抜ける風の音か」、
「ブリ起こしの雷鳴か」、
五木寛之氏がいう「兼六園のカキツバタの咲くポッという音か」などと
話していた。

「それは芸妓の太鼓の音だろう」

「なるほど、お座敷太鼓の音をCD化すれば練習用にもなる。芸子さんにももてるかも?伝統芸能を広められる。観光にも一役買うのでは。大小2つの太鼓を使うなんて金沢ぐらいなもんだ」

 そんな他愛無い会話のなかから「金沢お座敷太鼓」のCDが生まれた。

「ひがし」「にし」両茶屋街一緒に演奏出来ればと、それぞれの組合へ相談に出かけたが、太鼓の“間“が違うので合同では出来ないといわれた。

東茶屋街だけなら録音しようというのでビクターレコードに頼んだ。
検番に東京から録音機材を持ち込み、収録した。太鼓、鳴物、三味線、唄など楽譜は全く見ない。曲は全て体にすりこまれているのだ。出だし、曲の”間“など寸部の狂いもない。

スタジオではないので予期せぬ外の車の音、急な雨音、犬の吠声などが突然入ってきて何度か取り直ししたが、ようやく16曲取り終えた。

 準備段階の際、西茶屋街の組合から「あんた、東(茶屋街)で録音するらしいけど私らもお願いしたいわ。録音はコロムビアさんがいい」と連絡が入った。
お互いの競争意識に驚きもし、曲目も異なるがコストは倍かかることになってしまった。こうして「金沢にし芸どころ」が日の目を見ることになった。

儲かることなどなかったが、結果的に見ると2つのCDが出来たことで、金沢の芸能の厚さが示されたことになる。

金沢市観光協会へも推薦をお願いし、図入りで太鼓のたたき方、英文解説も取り入れた意欲作である。

 1994(平成6)年、20年以上も前の話だ。

この各CD、金沢蓄音器館で求められる(1枚 税込み2,050円)。


ひがし「金沢お座敷太鼓」
(曲目:たけす、たけすの裏、四丁目、八丁目、せり、さわぎ、百太鼓、虫送り太鼓、金沢小唄、金沢なまり、四季の金沢、加賀ばやし、百万石音頭、稽古用たけす)


にし「金沢芸どころ」
(曲目:兼六園、加賀の千代、かいなかいな、四丁目、八丁目、百太鼓、虫送り太鼓、さわぎ、金沢なまり、百万石ぶし)

「金沢お座敷太鼓」の英文解説
(”にし”のCDにも英文解説がついている)

「金沢芸どころ」の太鼓のたたき方
(”ひがし”にも掲載されている)

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