金沢蓄音器館

館長ブログ ほっと物語

2016年6月

その214SONY創業者から“お宝”が! その①
 

 

平成284月末、SONY創業者の1人である盛田昭夫氏が聴いていたリードオルガンが、ご長女岡田直子さんから当館へ寄贈されてきた。母、良子さんが愛用した英国、E...社のマークXb(マーク・テン・ビー)も一緒だった。

 

リードオルガンには15枚のミュージック・シート(音が入ったオレンジ色の紙製の直径33㎝の盤)も含まれていた。ただ、盤には独、仏、伊、英で書かれた文字がいろいろありオーケストラ・アンサンブル金沢のバイオリニストである大村俊介さんにお尋ねし、解読した。
曲目は、「美しき青きドナウ」「酒・女・歌」「ジプシー男爵」「ワイシントン・ポスト」「タンホイザー行進曲」など覚えのある曲も多い。

また正確な曲名がわからないものも多くあった。例えばオペレッタ「地上の悪魔」より悪魔のマーチ?、オペレッタ「魔法の城」より何と深い海よ?、「私は小さな郵便配達員」?など。

マーチ、ワルツ、ポルカ、ギャロップ、オペレッタなどが多くあり、当時の流行が感じられる。

オルガン本体には、品名、型番などの記載がなかったため六甲山のオルゴール館学芸員、山川佳乃副館長に尋ねた。
現物を見ずに写真だけで判断すると、エーリッヒが作ったドイツ製のアリストン9型ではないかとの連絡を受けた。外寸が393923㎝でちょっと小さいが1900年頃作られたものではという。
発音体はリードオルガンで、24音。手廻しでハンドルを回すと、柔らかなオルガンの音を大きな音量で奏で、十分楽しめる。
明治の時代には何万台ものアリストンが欧米で売れたという。

 

最先端の技術を追求していたSONY創業者が原始的な音色を聴いていたとは何か嬉しい気持ちになる。
...マークXbの巨大なラッパ蓄音器とともに「盛田コレクション」として残していかねばならない音である。


2台とも13回の「聴き比べ」でお聴きいただける。

 



盛田昭夫氏が所蔵していたアリストン9型
手回し型のリードオルガン

贈られた15枚のミュージック・シート

ヨハン・シュトラウス「美しき青きドナウ」

E.M.G.マーク・テンb ラッパの口径は75cm
その213電話帳対決、ロンドン VS. 金沢

 

 イギリスのE..innE.M.ジーン)が作った蓄音器が当館に2台ある。「E.M.Ginn エキスパート・マイナー」と「E.M.G.マーク・ナイン」と言われるものだ。外観は似ているが、ラッパの口径が違う。ジュニアは46㎝の円だが、シニアは長径60、短径50㎝の楕円で大きい。1930
(昭和5)から1933(昭和8)年頃に作られたという。
 
このエキスパート社は電気録音時代の幕開けとなった1924(大正13)年にロンドンに創設されたE..G社が元になっている。ハンドメイドされた独特のデザインと立体的に聞こえる再生音の独創的な蓄音器をつくった会社だ。
音の入り口であるサウンドボックスは、真ちゅう製のボディにアルミ振動板でナイフエッジ型。微妙なものなので手作業によって作られたという。
さらにラッパは、紙を貼り重ねた「パピエ・マーシュ」と呼ばれる。その材料はロンドンの電話帳であるという説もある。
 
当館で一緒に勤務していた浅井百生(あさい・ももお)さんは低音が出て、伸びのある音色の素晴らしさに「ロンドンの電話帳で作ったのなら金沢の電話帳で作ってみたい」と思い立った。聴き比べで使っている「E.M.G.マーク・ナイン」に取り付けられるようにとラッパの取り付け口を同じ寸法にして制作に取りかかった。
彼は元繊維機械メーカーのエンジニアだった。
 
小学校の工作用厚紙でラッパのベースを作り、金沢の電話帳を集めてきて、幅25㎝の短冊状に切って貼り重ねていった。3冊の電話帳が必要だった。金沢の市外局番である076が透けて見え、正真正銘の金沢産だ。
紙を貼り合わせ、糊が乾くとラッパは固くなる。これでラッパの周波数特性は高音部が出やすくなる。ボール紙だと音色は低音部が出やすくなり音質は柔らかく感じる。
4枚目の写真がそれを表わしている。技術者だった浅井さんの真骨頂だ。
こうして七転八倒し、ラッパ誕生に10ケ月を費やした。
 
さて、聴き比べでお聴きいただいた皆様なら「ロンドン VS.金沢」どちらに軍配を上げるだろうか。
 


E.M.Ginnエキスパート・マイナー


E.M.G.マーク・ナイン
ラッパが少し下がっている
開館時より3cm位下がった


E.M.G.マーク・ナインのラッパを

金沢の電話帳で造ったものに取り替え


周波数特性比較  青線はE.M.G.マーク・ナイン、ピンク線は金沢の電話帳のラッパ
(浅井百生氏調べ)

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