金沢蓄音器館

館長ブログ ほっと物語

2017年10月

その252「針音を消す!



ビクターの蓄音器には”Close lid while playing”(演奏中は蓋をしめて下さい)と蓋の内側に書かれている。
針音(スクラッチ・ノイズ)を小さくするためだ。

日本の会社でもこのスクラッチ・ノイズを嫌った蓄音器会社があった。
「パラゴン」ブランドを作った「日本パラゴン蓄音器(株)」だ。
蓋裏に同じ英文とさらに日本語でも注意書きが書いてある。


通常、ポータブル蓄音器はサウンド・ボックスが大きいため演奏中は蓋を閉めることができない。
しかし「パラゴン35号」はサウンド・ボックスを手前に倒して平たくした。これで蓋を閉めることが出来、レコード演奏を聞くことができる。
こんなポータブル蓄音器は他には見当たらない。世界的にみても独創的といってよい。


卓上型の「パラゴン50号」は、SP盤をのせる部分を深くしてサウンド・ボックスに蓋が当たらぬようになっている。
さらにその分ラッパの出口の口径を大きくして、より大きな音が出るようになっている。
蓄音器の音は、音の入り口と出口が大切な部分だが、よく考えられているのには感心する。


蓋を上げて盤を再生すると針音は大きく聞こえるが、音のメリハリが出るいい点もある。
聞く人の好みで蓋を上げ下げすればいいのだ。


サウンド・ボックスの形状はビクターのものによく似ている。
針を取り付ける「トンボ」と呼ばれる部分をチョコンとはじいてみると良質で綺麗な音を奏でた。

パラゴンが作られたのは昭和10年ごろ。戦前もっともレコード生産枚数が多かった時代(昭和11年)に合致する。

日本の“技”が光った時代だった。

 



パラゴン50号のふた裏

SP盤を載せる部分が深く、ラッパの口径を
大きくしたデザイン

パラゴン35号

サウンドボックスが手前に寝たデザイン
その251蓄音器1000台当たるレコード祭り

寄贈いただいたSPレコードの中に名刺サイズの小さな抽選券が1枚混じっていた。

その券には「ポータブル蓄音器壱千台が当たる 全国レコード祭り抽選券」と、組と数字の連番がお年玉付き年賀ハガキのように印刷されていた。
主催は全国蓄音器商組合連合会(全蓄連)、日本コロムビア、日本ビクター、協賛はキング、テイチク、ポリドールの各レコード会社だった。

裏面には昭和291020日から1210日まで、レコード買い上げ1枚毎に1枚の抽選券を渡し、1220日に当選番号を店頭表示。当選者1000名に買い求め店で蓄音器を渡すと書かれていた。

 この“祭り“は、総経費1200万円をメーカー側と全蓄連の販売店側が折半して資金を拠出することでスタートしたという。
現在の感覚では1020倍くらいの金額になるだろうか。

戦後、製販一体となった初の合同企画だった。
名称は「躍新全国レコード祭り」とし、標語募集も行い、「楽しいレコード・明るい家庭」が1等入選に決まり、予算350万円で1000台の蓄音器が用意されたと業界の「全レ連とアナログ時代」に記載されている。

 
昭和29年は、岡本敦郎「高原列車は行く」、春日八郎「お富さん」、菊池章子「岸壁の母」、アントン・カラス「第3の男」などがヒットを飾った。
また45回転のEPレコードが初めて発売された年だった。

SPレコード1250円の時代。
販売店は1枚につき1円を利益の中からこのセールのため拠出しようと検討されたが、中には少数ながら協力を拒んだ店もあったという。

 

販売店もメーカーも一緒になって事に当ろうとしたことは業界発展に大いに寄与したに違いない。

業界の力こぶが見えるような逸話である。

 



全国レコード祭りの抽選券
レコード買い上げ1枚に1枚進呈された


抽選券の裏面 セール期間と発表日が記載


ヒット曲、「お富さん」春日八郎


ヒット曲、「第3の男」ガイ・ロンバード

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