金沢蓄音器館

館長ブログ ほっと物語

2018年6月

その268クラシック普及に貢献したセット売りのアルバム

 


アルバムと呼ばれる様々なセット物のSP盤も多く寄贈されてくる。

時代によってジャンルの分け方も違っているのだが、管弦楽、器楽などのクラシック、ジャズ、ポピュラーなどの洋楽、長唄、小唄、謡曲、義太夫、浪曲などの純邦楽、童謡、語学などの学芸、歌謡曲などいろんなジャンルのアルバムがある。

 

クラシックのセットアルバムも多く出ていたことは先に館長ブログ162に書いた。

特にいろんな曲種を取り入れ、年間を通して毎月頒布される家庭音楽名盤集はさらに人気があった。
高名な音楽界の重鎮による選曲と解説も魅力だった。
上等日本酒1189銭の時代、毎月2円の分割払い。会員と呼ばれた各家庭に直接、届けられた。これが当たった。

ビクターは昭和113月から10インチ(25)12枚を1年間配布した(レコード番号:HL112)が、好評だったためこのシリーズを継続した(当館にはHL69まである)。
さらに12インチ(30)盤のレコード番号RLシリーズも解説者にクラシックに詳しい「あらえびす」(野村胡堂、銭形平次の原作者)を加え、「ビクター洋楽愛好者協会」刊として発売している。ずいぶん売れたという。
他のレコード会社もいろんなアルバムを発売した。


西洋の音楽文化が日本に入って30年あまり。文明開化という異文化を吸収する国民性は、音楽までも自分たちのスタイルで取り込んでいた。


 
当時出されたビクターの会員募集パンフレットには次のような謳い文句が書かれている。

 [宣言]世は益々殺伐となり、生活は日々に窮迫を告げ、人心は荒廃し煩悶は鬱結する。果は厭世となり自暴自棄となる。これ日常見聞せらるる現時の世相、憂慮に堪えない次第である。(中略)
堅実な状態を現出するにはわれらの家庭の慰安と明朗を図るにある。この道は健全なる音楽を家庭に導入するほかはない。
睡眠、入浴は相当疲れた身体を回復しうるが懊悩する精神的労苦は善良なる音楽によるの外はない。(中略)
どれも天下の名曲で、健全なる家庭生活上無くてはならぬ逸品のみ。
家庭に喜びと明朗を与え、感情を純化して趣味を向上せしむるならば、元気湧き創造は生まれ、一家団欒のうちに堅実、有意な国民を作りうるのである。(後略)


セット物のSPアルバム

レコード番号HL1~12、管弦楽・声楽・ピアノ等いろんな曲種が収録されている

家庭音楽名盤集のパンフレット

パンフの裏面、曲目などが記載されている

パンフの「宣言」文
その267福島を元気に

平成30513日、福島県南相馬市博物館より依頼があり、体験学習「蓄音器コンサート」に出かけた。
午前、午後計2回のSP鑑賞会を開いた。

南相馬市博物館が所有する6台の蓄音器を会場の前方に並べ、ニッポノホン50号ラッパ蓄音器、ビクター1-90型卓上蓄音器、コロムビアのG-241型ポータブル蓄音器 を主に用いてクラシック、ポピュラーの盤を中心にかけた。
前日に各蓄音器毎にオイル差し、ゼンマイの具合などを確認して整備した。

 満席ではなかったものの地元ばかりでなく常磐線で76分かかる仙台から来館された方、自宅に蓄音器の王様「クレデンザ」を所有しているという方、自宅にあったSP盤をわざわざ持参され寄贈された方など熱い想いの来館者が多くいらっしゃったのには驚いた。

 福島県は山脈や河川で仕切られた浜通り、中通り、会津と3つの地域に分かれている。
「相馬流れ山」「麦搗唄」「相馬二遍返し」「相馬盆唄」「相馬節」「会津磐梯山」などなど民謡の宝庫と言われているが、南相馬市、相馬市には特に有名な曲が多い。

その一番に挙げられるのが「流れ山」だろう。
馬にまたがる昔ながらの「野馬追い祭り」の陣中行事の唄だ。相馬家の祖が始めたという野馬追いは明治維新まで千有余年続いたという。
格調高く流麗な旋律で勇壮さにあふれている。三味線に乗らず、古風さを伝え「相馬の国歌」と言われていると長田暁二(おさだ・ぎょうじ、音楽文化研究家)さんは指摘している。


このような数多い民謡にスポットをあてることで、町おこしの新しい企画につながらないものだろうか。汚染された福島県が元気になる宿題をあたえられた思いだった。

[当館所有の福島県関連歌の一部(曲名、歌手、レーベルの順)]
相馬節 南地 金龍(オリエント)、鈴木正男(リーガル)、音丸(コロムビア)、金沢まん(リーガル)、三島一声(ツル)
新相馬節 鈴木正夫(ビクター)
相馬盆唄 鈴木正夫(ビクター)、三橋美智也(キング)
会津磐梯山 鈴木正夫(ビクター)、照菊(キング)、〆香(ポリドール)、菊池章子(ニッチク)、三橋美智也(キング)、小唄勝太郎(ビクター)、幾松(サロン、アサヒ)、井田一郎とジャズバンド(ビクター)、横山郁子(キング)、コロムビアダンスオケ(コロムビア)、伊藤久男・菊池章子(コロムビア)、葭町菊丸(エトワール)南地 小金(テイチク)
相馬二遍返し 荒フョ(リーガル)、金沢まん(リーガル)、東延江(ニッチク)
相馬流れ山 立谷専太郎(リーガル)、八巻幸治郎(ニッポン)、鈴木秀桃(ビクター)、松田タケ(ビクター)、荒フョ(コロムビア)
豊年まつり(相馬盆唄) 鈴木正夫(ビクター)
相馬音頭 村田文蔵(コロムビア)
相馬盆踊り 我妻(コロムビア)、久保田いし子(ヒコーキ)
軍国磐梯山 小原清子(ショーチク)
会津の小鉄(浪花節) 京山幸枝(スタンダード)、京山幸枝(コッカ)
会津小鉄 吉原遊び 京山幸枝(アサヒ)
会津万歳(俚謡) 山口強風(リーガル)
会津おはら  美ち奴(ニットー)
会津大津絵  鈴木正夫(タイヘイ)、武藤東水・山内盤水(ニッポノホン)
会津玄如節  鈴木正夫(タイヘイ)
福島音頭  二三吉(コロムビア)、赤坂小梅・筑波一郎(コロムビア)
7回国体讃歌 伊藤久雄(コロムビア)福島、宮城、山形県制定
福島県スポーツの歌 藤山一郎(コロムビア)
福島県県民体操 コロムビアオケ


ホテルから見たJR原ノ町駅


南相馬市博物館での講演会


相馬野馬追い 毎年7月に開催される


相馬流れ山  八巻幸治郎、尺八:菊池淡水


相馬二遍がえし 唄:東延江

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