金沢蓄音器館

館長ブログ ほっと物語

2017年2月

その235日本的歌唱法のレコード

平成29128日、「レコードディレクター半世紀」と題してコロムビアの制作者森淑(もり・きよし)氏の制作裏話とSP盤を聴く会が開かれた。
昨年から始まったこのシリーズは4回目。(第1回は館長ブログ217)今回は、女性歌手が唄った作曲者・服部良一の特集だった。

 森さんが「本日一番聴いてほしい曲」として紹介したのが、作詞:西條八十、唄:山田五十鈴の「牡丹の曲」だった。「チャイナ・ワルツの名曲」である。昭和16年戦争直前の東宝映画「上海の月」の主題歌として作られた。彼女が24歳の時だった。

水谷八重子、杉村春子と並び日本の3代女優の一人と呼ばれる山田五十鈴は役者のためか録音された盤は少ない。(当館にある盤は、ほかに長谷川一夫と共演の「婦人系図」、「カチューシャの唄」など)
父は新派の役者、母は芸者で、6歳の時より清元梅吉から直に邦楽を習っている。

西條八十が、中国風の曲調、3拍子を使って、山田五十鈴の独特の個性、世界観をだしていると森さんは語る。

多くの音楽学校出身者が歌謡曲をクラッシック声法で歌うなかで、山田五十鈴と筑前琵琶奏者の娘だった高峰三枝子の二人は、違った雰囲気を持ちあわせていた。
学校出以外のほかの邦楽の歌手や芸妓とも趣を異にしており、発声、言葉の出し方など明らかに違い、それが独特の世界をもたらしているとさらに語る。

 男性歌手で日本的声法の大御所は田端義夫ではないかと指摘する。田端義夫が年をとってからもキーが下がらなかったのは、邦楽的な発声であり裏声の使い方が上手だったからではないだろうかという。
高田浩吉は関西出身だったが、江戸言葉を習得するため邦楽、小唄、端歌などを勉強し、歯切れのよい話し方、唄い方のため大成した。男性で日本的な唱法をする歌手は、この2人が際立っているとのこと。

 服部良一作曲の珍しい美空ひばりの「銀ブラ娘」も時間を延長して聴き、“森ぶし“に来館者一同「次回はいつ?」

428日金曜日1430分からに決定)


元コロムビアディクター:森 淑氏


「牡丹の曲」唄:山田五十鈴


「カチューシャの唄」唄:山田五十鈴
その234レコード付きの童話集


寄贈されたSPレコードの中に、絵本にSP盤がセットされているものが混じっていた。

エンゼル社が発行した「かぐやひめ」だった。「おおかみと7ひきの子やぎ」、「つるのおんがえし」、「うらしまたろう」、「ヘンデルとグレーテル」、「しらゆきひめ」、「いっすんぼうし」、「マッチ売りの少女」など日本昔ばなし、世界のおとぎ話など11のシリーズの1つだった。

価格は250円と印刷されている。 “カラー印刷”ではなく“総天然色印刷”と本には書かれ、時代をほうふつさせる。

本代は100円となっているのでSPレコードは150円になる。
盤は7インチ(175㎝)の小さな可愛いもので、1950(昭和25)年に作られたことが盤面に小さく印字されていた。この時代、たばこのピース1箱が50円だったという。

 昭和12年よりレコードには物品税がかかっていたが(館長ブログ99に記載)、昭和25年に50%から30%に税率が下がった。

6インチ(15cm)の紙製のものは従来から無税だったが、この年からさらに童謡レコードも非課税となった。

 税率は下がったが、インフレのために通常盤の10インチ(25cm)の価格は135円から170円に上がった。26%も値上げしたことになる。それが盤を小さくして150円にし、本と抱き合わせて割安感を出している。

 
本とレコードを合わせることで商品の価値をアップさせた。童謡レコードが非課税になったタイミングにあわせ、メーカー・出版社もいろいろ知恵を絞った一例である。

 


うたとおはなし「レコードえほん」
かぐやひめ 価格はセットで250円


中は左が絵本、右は7インチのSPレコード


レコード制作は、ポリドール

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