金沢蓄音器館

館長ブログ ほっと物語

2017年6月

その243ユニーク?な電気吹き込み

 大正時代末期、アメリカでマイクロフォンを使った電気吹き込みのレコードが発売された。

このレコードは、従来の電気を使わず、ラッパの前で大きく歌ったり演奏したりしたラッパ吹込み方式の録音盤とは比較にならない鮮明な音だった。

電気録音の登場で、従来のものはアコースティック録音方式と呼ばれるようになり「吹込み」から「録音」という言葉に変わっていった。
今までは2502500Hzの周波数特性だったが、いっきに506000Hzに拡大された。従来は大きな声でないと綺麗に録音されなかったが、マイクロフォンの登場で小音量の音でもクリアに録音できるようになった。

針音も少ないこの新方式はSPが作られた約60年間のなかで最大の技術革新といっていい。

 ビクターが1925(大正14)年4月、コロムビアは翌5月、英国ではグラモフォン社、コロムビア社ともに同年6月から新方式を採用した。ただ、従来の盤の返品や買い控えを恐れた各社は当初熱心にPRしなかったという。

 
日本では、国内の各レコード会社はこの電気吹き込みを競って取り入れた。
名古屋のツルレコード(アサヒ蓄音器商会)も国産初の電気録音はわが社であるとレコード袋(スリーブ)に大きく宣伝している。

また、「国歌レコード製作所」はスリーブに「ユニック式電気吹き込み機械室」で録音している様子の写真を入れ、さらにマイクに向かって歌っている「演奏室」なる写真まで掲載している。
録音エンジニアと思われるヘッドホンをした紳士が大きなラッパの下にあるダイヤルを廻している。
「ユニック式」とはどんな録音方法なのだろうか。もっとも“ユニーク“(unique)な方法を”ユニック“と呼んでいるのか?
「演奏室」では、グランドピアノが置かれている横でマイクスタンドに向かって録音している様子がわかる。
レコード袋(スリーブ)に写真まで入れ、自社技術が進んでいることを大いにPRしている。



ツル印レコード  マイクの絵があり、
日本初の電気吹込と右下に印刷がある


国歌レコード製作所も電気録音とスリーブに


「ユニック式電気吹込機械室」での録音風景


グランドピアノの横でマイクに向かって録音
「録音室」の模様
その242偽りのインデアン蓄音器

 

平成295月ゴールデンウィークの最中、白髪の男性が「父親が大切にしていた蓄音器だが」と当館へ寄贈したいと1台持参された。

見れば卓上型蓄音器で蓋の内側には「インデアン蓄音器」と書かれてあった。ゼンマイは巻いてみると抵抗感があるので、切れてはいないようだった。初めてみた蓄音器名だった。

御礼を申し上げ、ありがたく受け取った。

 
早速、整備に取りかかった。
まず外見のほこりを取り払い、機械部分にはミシン油をさし、ていねいにゼンマイを廻した。
ゆっくりと回転しだした。一部錆びてはいたが、グリース、ミシン油をさすことでスムースな動きだった。

上蓋の内側には「メイド・イン・ロンドン、インデアン・ホーン・コーポレイテッド」と英語名のシールが貼られていた。
「これはロンドンで作られたのか」と思ったが「何故イングランドとかU.K.と書かれていないのだろうか?」とも思った。
よく見ると英文の綴りで“A”と”D”が歪んで記載されている。
上蓋も真ん中あたりで大きく裂け目があった。作りとしては雑だった。

ただ、内部のゼンマイ、ガバナーなどの部品は綺麗な状態だった。
音を取り入れるサウンドボックスも「ウイック・トーキング・マシン・コーポレイテッド、アメリカ・ニューヨーク」製とある。
が、その上には「ウイック・オルソフォニック、パテント:ジャパン」と書かれていた。これは舶来の製品に似せた日本製だ。
今でこそ日本製は高品質、高性能の誉れ高いが、当時は贋物が多かった一例である。

しかし実際にレコードをかけてみると、サウンドボックスとラッパの作りが良いためか綺麗ないい音を奏でた。


このくらいの音が鳴るなら、この蓄音器を愛好された方もきっと満足されて音楽を楽しんでいたに違いない。

 



ターンテーブルを外し、斜め上から
上蓋がまん中で割れている

上蓋についているマーク
”A"と”D"が、ずれている

”ウイック・オルソフォニック”の下に
”パテント・ジャパン”の文字

ネジははずれていたが、音色はいい音だ

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