金沢蓄音器館

館長ブログ ほっと物語

2017年3月

その237そっくりさんのミステリー

 
薄茶の色合いのオーク材(樫の木)の蓄音器が1台贈られてきた。ゼンマイは切れず、外見上傷もあまりなかった。本体のふたを上げると「エクセル」と書かれたプレートがあった。初めて見る蓄音器だった。

ラッパ部のネットを外してみると横に長い楕円形だった。サウンドボックスはマイカ(雲母板)であり、程度はよかった。

「これはどこの国、メーカーだろうか?」。蓋の内側、ゼンマイ部分など懸命に探したがどこにも記載がない。

 

ただ、全体の大きさやデザインは、米国ブランズウィック社のアルトーナ105型にそっくりでよく似ていた。(アルトーナ105型は館長ブログ212に詳しい)
「エクセル」は横4cm、奥行35㎝、高さ1㎝アルトーナ105型よりちょっと小さい。ターンテーブルは12インチ、トーンアームの付け根はビクターに瓜二つだ。

 

オーク材で高級感を出し、ターンテーブルの大型化で回転の安定を求め、振動盤もひびわれもなくすこぶる程度はいい。ビクターのアームデザインも取り入れ、各社のいいとこどりだ。

 しかし、ラッパ部の取り付けには釘の頭の部分が出ていた。

極めつけは、ガバナー(一定の速度でレコード盤を回転させる装置)の金属板の亜鉛ダイキャストの材質が悪いせいかひびが入っており、歪んだ回転で、音も当然ムラがあった。
折角いい商品をまねしようと頑張っている様子はわかるが、やはり二流品では?と思った。おそらくこの蓄音器は昭和初期に国内で作られたものだろう。

 

サイズの合うガバナーに取り替えることが出来れば、90年近く前の昭和のはじめの音に出会えるかも知れない。
一緒に修理した浅井百生氏のスゴ技がその音を再現した。浅井さんは繊維機械メーカーのエンジニアだった。

 


「エクセル」蓄音器

サウンドボックスはマイカ(雲母板)

二重ゼンマイ。ガバナーにはひびが入る

ラッパは本体に釘で取付
その236グラミー賞?の蓄音器

2月のある日、テレビでアメリカの音楽産業において優れた作品に贈られるグラミー賞の授賞式の模様が放映された。受賞トロフィーは蓄音器の形をしている。ベルリナーが作った円盤式蓄音器がその原形で金メッキだ。エジソン式蓄音器でないところが面白い。

金沢蓄音器館には、このトロフィーによく似たラッパの蓄音器が1台ある。初代館長が作ったラッパに金沢の金箔を貼った蓄音器だ。

 30年も前のことだ。初代は壊れた蓄音器23台からゼンマイ、サウンドボックスなど様々な部品取りをして”新品”をつくり、音を出せるように作り直していた。

こうして新しく完成した蓄音器に盤を載せて、そっと針を落とし綺麗な音色を奏でた時の初代館長の顔は、まるで少年のように輝いてみえた。

 表面が鉄製の生地のラッパばかりでは代り映えがしないので「金箔を貼れば、光り輝き、音まで変わるのでは?全国1位の金箔生産量を誇る金沢にふさわしい新しい品になるのではないか」と館長との何気ない会話から「それは面白い!」ということになり早速1台試してみることになった。

これが、当館にある金箔ラッパ蓄音器誕生のいきさつだった。

 収蔵倉庫に長年置いてあった金箔ラッパ蓄音器は湿気、温度、日光の状態が悪かったせいか又、経年劣化も手伝って、ラッパの金箔はひび割れや剥離があり悲惨な状態になっていた。

「これはマズイ!」と再生修理の相談を金沢箔工業組合と始めた。蚊谷理事長は下地に柔らかいウレタンを塗り、金箔180枚を使えばどうだろうかと提案してくれた。

こうしてこの蓄音器は、30年前に生まれたばかりの黄金の輝きを取り戻した。ゼンマイや部品などにも油をさしスムースな回転で綺麗な音を奏でた。

金沢箔で出来たグラミー賞?の蓄音器が誕生した。


作り直しが完成し「グッドな音になった!」と、初代館長

新しい金箔がはられた蓄音器

グラミー賞?の蓄音器

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