金箔の性質

金箔について

金箔(きんぱく)

英語:gold leaf
ドイツ語:das Blattgold

金箔の二つの製法

縁付(えんづけ)箔と断切(たちきり)箔

現在、金箔には打ち紙の違いによって二つの種類がある。一つは縁付箔と呼ばれるものである。これは、特殊な粘土を混入した手漉(てす)きの雁皮(がんぴ)紙を灰汁(あく)処理した箔打紙によって金箔を打ち延ばす方法である。正方形に仕上げた完成箔を、合紙(あいし)と称する三椏(みつまた)紙の台紙の上に一枚一枚重ねる時、台紙の寸法が金箔を縁どるように一回り大きいことからくる呼称である。
一方、断切箔は、打ち紙としてグラシン紙を用いる製法一般を指している。打ち上がった不定形の箔を大きな合紙と交互に重ねた状態で定寸の正方形に一気に裁断するので、先の縁付箔に対し断切箔と称する。

金箔の色

市販の金箔は、不純物元素をほとんど含まない純金(99.99%以上)ではない。通常、銀や銅を添加した合金でできている。合金にする理由は、打ち延ばしやすくするために、適度の硬さと変形抵抗を与えるためで、純金ではかえって延びにくいことと、銀や銅を適量加えることによって、色調を変化させることができるからである。金の純度が高いと、赤みを帯びた黄金色になり、銀の量が多いと赤みは消失する。一方、銅を添加すると赤みを帯びる。金箔の種類と組成は以下の通りである。

金箔の種類と合金の組成

純金5毛色 純金1号色 純金2号色 純金3号色 純金4号色 三歩色 定色
98.912% 97.666% 96.721% 95.795% 94.438% 75.534% 58.824%
0.495% 1.357% 2.602% 3.535% 4.901% 24.466% 41.176%
0.593% 0.977% 0.677% 0.670% 0.661%    

※上記の合金表は、石川県箔商工業協同組合で規定した合金の割合である。なお、上記以外の箔も作られている。

金箔の厚さ

縁付箔の場合、平均厚さは0.1μm(ミクロンメータ)程度である。打ち紙に手漉き和紙を用いているので格子状の紗(しゃ)の目が金箔に現れている。格子状の目が残るということは、厚さが周期的に変化していることを意味している。一方、断切箔の場合、透かしてみると放射状の模様が見える。これは箔の延び方向と関係していると考えられ、縁付箔と同様に厚さの不均一があることを意味している。平均厚さでみると、断切箔は縁付箔よりわずかに厚いと言われている。

金箔の加工組織

金属を塑性加工すると、金属の種類と加工法によって異なる固有の加工組織が形成される。加工には、圧延加工、引抜き加工、押出し加工、鍛造加工などがあり、それぞれ変形のメカニズムは異なる。金箔製造は、鍛造加工に近いが、詳細な展延のメカニズムは不明である。しかし、概要について以下のような説明は可能である。ハンマーによって、打ち紙に挟まれた金シート(または金箔)は、紙という粘弾性的性質を持つ物質を介して、衝撃圧縮力をうける。金シート(金箔)は圧縮力によりつぶされて面内に延びる(拡がる)。打ち紙も同時に弾性変形によって面内に拡がる。ハンマーによる圧縮力が無くなると、金シートは塑性変形により延びたままになる。一方、紙は弾性回復によって元の大きさにもどる。この時、金シート(金箔)と打ち紙との摩擦の有無が重要な意味を持っている。鍛造加工の常識から考えれば、摩擦は少ないほど効果的と推察される。ハンマーで打たれた瞬間の箔の応力状態を理論的に推定することは困難であるが、金属学的には、塑性変形の基本原理である、「すべり変形」が主体であると推察される。しかし、加工による発熱が生じているので、その場回復や再結晶が起きて結晶粒は微細化し、粒界すべりによる超塑性現象が生じている可能性は否定できない。
こうして、すべり変形を繰り返すことにより、箔の面方位はすべり変形の対称性から、結晶学的に安定な(001)方位をとろうとする。金属の物性値(積層欠陥エネルギー)により多少の差はあるが、金と同じ結晶構造をもつアルミニウム箔も、洋箔(真ちゅう箔:銅-亜鉛合金)も基本的には同様の面方位を示す。以上が、金箔の結晶学的に見た加工組織である。詳細については文献を参考にされたい。

【参考文献】

  • 金沢金箔伝統技術保存会:金沢金箔伝統技術調査報告,(2010).
  • K. Kitagawa:J. Materials Science, 23(1988), 2810.
  • K. Kitagawa:Z. Metallkunde, 80(1989), 649.
  • 北川和夫:まてりあ、33(1994), 1299.
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