寸々語

寸々語(すんすんご)とは、秋聲の随筆のタイトルで、「ちょっとした話」を意味します。
秋聲記念館でのできごとをお伝えしていきます。





犀星忌
 2017.3.27

 昨日26日、雨宝院で行われました犀星忌にお邪魔してまいりました。ご命日直近の日曜に開催することとされているため、第19回目にしてほんとうのご命日どんぴしゃに開催されたのは初めてとのこと。わかりますわかります、当館と石川近代文学館さんの共催による秋聲忌も、11月18日の秋聲命日の前倒し直近土日のどちらかに開催することとしているため、18日どんぴしゃに当たるのはたいへん珍しいのです(今年はどうも18日が土曜のよう、これは狙い目…!)

 雨宝院ご住職による読経ののち、犀星令孫・室生洲々子名誉館長、秋聲令孫・徳田章子名誉館長の対談のはじまりです。司会をつとめたのは上田正行犀星記念館館長(当館兼任)ですが「え~両館の館長が集うというのはなかなか~…」と仰ったのちハッとされたのにちょっと笑ってしまいました(すみません)。いやご自分ご自分!いつもその身ひとつで集ってる!
 両館の名誉館長が集うというのはあまりないこと、ということですね。ほんとにそうで、両家の貴重なお話をたくさんうかがうことができました。秋聲さんちの家宝は?と問われて「家宝かゴミかはわかりませんが(笑)、何せ祖父のものはとにかく何でもとってありまして、たとえばよく食べていたオートミール缶とかそんなものまで…」と控えめに仰る章子さんに「すべてが家宝ですねぇ」と応える館長。件のオートミール缶は当館にてお預かりさせていただいておりますし、今回の当館企画展の裏目玉も、ご長女・瑞子さんの小学校時代の絵画と答案用紙!算数も国語も見事で満点で、こちらはおそらくそれを誇りにされたはま夫人により保管されていたのでしょう。また、犀星さん側のエピソードで、生まれ変わったら魚になりたかったかも?と仰る洲々子さんのお言葉にはフフフとなりました。魚への愛着ぶりは、現在犀星記念館さんで開催中の企画展「犀星歳時記~春夏編~」にも駄々洩れておりましたので是非ご観覧ください。
 
 それからひとつ訂正です。先日秋聲が建てたアパートフジハウスに3人お住まい、とお伝えしましたが現在おふたりだそうです!アッ嘘ついちゃった!と焦る学芸員雨宝院に混入。申し訳ございません~!でもあれですね、すなわち入居できる確率がすこしあがりましたね!(ポジティブ)





春夫氏参戦
  2017.3.26

 連日お手紙ラッシュが止まりません。きのうK花先生とこの図録のお話をいたしましたら、本日おうふうさんより新刊『谷崎と鏡花』が届きました!編者のおひとりである大木志門先生のおはからいです。『谷崎と鏡花』?微妙に秋聲さん遠いね!と思われることなかれ、本書にはなんと「徳田秋聲」の項があり、秋聲の短編「町の踊り場」を全文掲載のうえ、大木先生によるご解説、そして当館のご紹介までもをいただいているのです…!こりゃあ「大木先生のご活躍が止まりません!」と言ったほうが正確かもしれません。いつも気にかけていただきありがとうございます。
 その他本書には、標題のおふたり以外に佐藤春夫コーナーも設けられており、その詩が数編収められているほか、生まれ故郷・和歌山県新宮市に建つ佐藤春夫記念館さんのご紹介も掲載されております。
 佐藤春夫氏と秋聲とで言いましたら、やはりこの欄2月28日付記事にご紹介した谷崎潤一郎「春琴抄」をめぐる論争ですね!佐助が顔に傷のついた春琴の心情を慮って自ら針で目を突く場面に「いや有り得ないでしょ~痛いでしょ~」と異を唱えた秋聲に対し、佐藤氏は「最近の谷崎潤一郎を論ず―「春琴抄」を中心として」(「文芸春秋」昭和9年1月)にて、いや専門家に聞いたからありえますよ!目を突く描写のとこ谷崎本人が専門家それも二人に意見を聞いて安心して書いたって言ってますよ!!とフォローにまわり、それに対してまたまた秋聲が「私は谷崎氏の『春琴抄』がそんなに結構なものだとは思へないだけで、目を針で突つく件も、べつに専門家にきいた訳でもなく、私の神経が痛いと感じるからいつたゞけで、作者が医者に確かめて書いたことなら間違ひはないに決まつてゐる。」(「文芸時評」/「東京朝日新聞」昭和9年1月)と、すこし引いた大人な姿勢を見せながらも、やっぱり痛そうなものは痛そう!無理!といった内心につきましてはしっかり主張しておいでのようなそんな論争…。
 佐藤氏とはこのほかにもちょっとヒリヒリした関係性が秋聲の文章から滲んでいたりもしておりまして、(そのくだりはありませんが)谷崎・鏡花・春夫・秋聲とちょっと面白いこの四人の取り合わせ本、ぜひご自宅各種図録のお隣へどうぞ。
 

 


川向こうからの手紙
  2017.3.25

 今日は今日とて某K記念館さんからのお手紙を頂戴しました!お手紙というには厚い、小包というには薄い封筒、そう某K記念館さんの総合図録『鏡花』改訂版です!(あと館報「鏡花 雪うさぎ」最新号も!)ご刊行おめでとうございます!当該図録には、今回大木志門先生(当館初代学芸員・現山梨大学准教授)によるご寄稿「鏡花と秋聲」が新たに掲載されまして、当館といたしましてもウッハウハです。浅野川をはさんであっちこっちのその関係性が簡潔にしてマニアックに書かれておりますので、現代における秋聲会もしくはあらくれ会のみなさまにおかれましては、55ページを狙ってガツーン!と開いてやってくださいませ。もしくは58ページを狙って開かれても秋聲先生のご尊顔にガツーン!とやられますので、ご覚悟のほど…!
 また77ページには、鈴木啓子宇都宮大学教授により、K花さん実弟・斜汀さんと秋聲との関係についてご紹介がなされています(これは旧版に引き続き)。斜汀さんが若くして病死されたのが秋聲経営のアパートフジハウスであったこと、これにより長年不仲であったK花さんと和解し、その顛末を短編小説「和解」に秋聲が書いていること…そう、その「和解」の入った文庫はどれですか?と先日受付に訊いてくださった若きひと…『短編集Ⅰ』だったですけど今もうないんですよ…!増刷未定なんですよ…!!と申し上げねばならぬ苦しさです。
 ちなみにフジハウスは徳田家裏に現存しており、現在3名さまがお住まいでいらっしゃいます。3年ほど前、30年ぶりに入居が再開されまして、もうすこしお部屋数があったと記憶しておりますので、ゴリッゴリの秋聲ファンの方、あるいは斜汀さんファンの方、あわよくばこちらに住むことができるのではないでしょうか。ここを舞台にリアル「和解」ごっこなどもしていただけます。

 当館にとってもたいへんに有難い図録のご到着です。当館図録『秋聲』とあわせてお手元に置いておかれると素敵ですね!!『犀星』も一緒だとより素敵ですね!!!
 真白く清冽な『鏡花』にくらべると当館の『秋聲』表紙、ウワーくすんでるー・・・!(手垢ではございません)
 
 
 
 


湯田からの手紙
 2017.3.24

 遠く山口県山口市湯田温泉より、お手紙というにはぶ厚い小包が届きました!中身は中原中也記念館さんの館報最新号です!!→
 実はこのたび中原中也記念館さんの館報第22号に当館学芸員が寄稿させていただき、まさかのこんなところにも秋聲のしゅの字を紛れ込ませることに成功いたしました。中也記念館さんご厚情を賜りましてまことにありがとうございました。
 ただ中也さんと秋聲といって、とくべつ接点はありません。強いて言うなら生きた時代、強いて言うなら金沢という土地、それから清家雪子先生の漫画『月に吠えらんねえ』、ひいては石川近代文学館さんです。もうおととしのことになりましょうか、同館で開催されたこの作品をメインに紹介された企画展「うたえ!□街の仲間たち!」に、当館学芸員がパネル展示用エッセイを寄稿させていただきまして、それを全文、今回中也記念館さんの館報に載せていただいたというわけです。同作では中也さんほかがご活躍で、残念ながら秋聲先生はご登場でありませんが、ひょんなご縁により石近文さんからお話を頂戴し、わりとどこへでも無理やり絡みにゆくのが当館の得意技ですから、だいじょうぶだいじょうぶ、だって金沢で繋がってますし!駅とかできっとすれちがってますし!とかなんとか言いながらのこのことお邪魔してきたそれを今度は形にしていただいたというなんとも有り難いお話…。はやもう7年前、中也さんと秋聲、とくに接点はないんですよ!というだけのことを2時間かけてご紹介する講演会を当館にて行ったことがありました。いまにして思えばそれはそれはやんちゃな話…しかしながら数年前にも、大正3年当時の秋聲先生てば、なんとなくやる気が出なくて何にもしてなかったんですよ!というこれまたひどいテーマで企画展を1本開催したことさえありましたので、最終的になんでもありです。ちなみにこの次の展示は宇野千代さんと秋聲をとりあげる予定でして、宇野千代さんといえば山口県は岩国のご出身。ほうらね!山口と繋がったよ!てな具合に、まわりまわってすべて繋がってゆくということにしてよろしいでしょうか。
 中也記念館さんの館報、当館ロビーにてテイクフリーとさせていただいております。春色中也さん、ご無理を言っていっぱい送っていただきました! 
 
 
 


子への手紙
 2017.3.23

 さて、先日寝かせました手紙の件です。今回、企画展のタイトルといたしました「父への手紙」、いろいろな方から「じゃあ一穂さんのお手紙の展示がメインなのね?」と訊かれるのですが、お手紙の展示はぶっちゃけまして2通しかなく、しかも肝心の〝父への手紙〟=一穂筆 秋聲宛書簡は1通もないのです。「父への手紙」とは、一穂さんによるお手紙風の随筆のタイトルでありまして、それをメインテーマに据えたがためにたいへんに紛らわしい事態になってしまいました。お手紙展示を期待された方には心よりお詫びを申し上げます。
 では今回展示している2通の手紙、それぞれ誰筆による誰宛かといいますと、1通は一穂さんから小説家・中河与一氏に宛てたお手紙(当館蔵)。一穂さんの作品を新聞紙上に批評し、賞賛してくれたことに対する礼状です。
 もう1通は、子への手紙。すなわち父秋聲から一穂さんに宛てて出されたお手紙にして、これが世紀の大発見のうえ今回の目玉中の目玉となる超ド級資料なのです…!!
 「妥協すれば作品は腑ぬけになる」――みなさま、このフレーズにお聞き覚えがおありでしょうか。当館にて解説をさせていただく際、必ず最後にご紹介するフレーズです。お客さまにあっては問答無用で聞かされますし、こちとらもう何度言ったかわからない、だけれども何度でも言いたい、あしたもあさっても言うであろう、もっともっとたくさんのひとに届いてほしい、そんな大切な秋聲の言葉です。

 これは昭和16年、太平洋戦争開戦間近という状況下にて情報局の圧力を受け「縮図」の連載を断念することを決めた秋聲が、一穂さんに宛てて書き残した手紙の一節。この文面自体は秋聲没後、戦後になって一穂さんが未完のまま刊行した単行本『縮図』の後書き追記に引用しているため現在も読むことができますが(各種文庫本にも採用)、まさにこの、この書き置きの原本がこのたび徳田家から発見され、今回初公開させていただいているのです。
 まさかこの手紙の現物を、秋聲のその筆跡を見ることがかなおうとは…!

 展示しながら、さすがに持つ手が震えました。一穂さんは全文を引用しておりますので、文面から内容的な新発見はありません。が、そういうことでないところの感動が、この一枚の手紙に詰まっているのです。





カウントダウンふたたび
 2017.3.18

 二度目のカウントダウンです。というより、もうカウントワンです。当館オリジナル文庫の『黴』、残り一冊となりました…!以前にお伝えしておりました『短編集Ⅰ』の在庫はとうになくなりまして、いよいよ『黴』です。やられました、新しい企画展にて冒頭からがっつり『黴』のご紹介をしておりますのに…!いや、しておりますからなのか…本日だけで『黴』8冊も売れました。ありがとうございます。『短編集Ⅰ』にも一穂さんの大学受験の顛末を描く「花が咲く」が収録されているのに…!
 売れてほしいのに売れてほしくない、いまなら売れそうなのに、売る本がない…なんというアンビバレンツ……やり方がへたくそなのでしょう、秋聲先生に申し訳ない気持ちです。秋聲記念館一味、一味にして秋聲作品のプレゼン下手という致命的なやつ…!先生、行き届かず申し訳ありません…!!
 そう、そんな衝撃の影に隠れてしまった新企画展「父への手紙―徳田一穂展」、おかげさまで本日無事オープンとなりました。記念館一味、カーリングを極めることばかりにかまけてはおりません。あのあとがんばって展示ケースを埋め、全ケースに秋聲一穂父子の資料、ぎゅうぎゅうと仲良くおさまっております。ケースが足りず、一階からも小ケースを奪ってくるほどです。その多くが徳田家からご提供いただいた初公開の品々。ここから7月2日の一穂さんご命日まで館は無休となりますので、ぜひどこぞかのタイミングでおいでください。なおおすすめは一穂さんの自筆色紙です。きのう展示替えが終わってまじまじとそれを眺めながら知らず涙が浮かびました。これははじめてのことです。また、そのお隣のケースの秋聲筆の一穂さん宛てお手紙も必見です。これについてはまた改めてご報告を申し上げます。ついでに語ってはバチがあたる一級品です。みるべきものがいっぱいです。
 本日午前午後と開催された展示解説にも自然と熱が入り、終わってからお客さまに「なんかすごい熱いですね…」と言われてしまった恥ずかしいくらいの力みっぷり。常連のお客さまには「52分…いい記録じゃない?」と言っていただきましたが、公約は40分…初回なので多めにみてやってください。だって一穂さんが…秋聲が・・・!! 
 
 続報!いまこれを書いている間に『黴』完売したそうです!わあああー!!



 


きのうの功労者、コロコロ
  2017.3.16

 展示替え4日目です。3日目もちゃんとあったのですが、何かしらやっているうちに更新する余裕がなくなってしまい、その日は無きものとされてしまいました。いまのところ順調です。
 きのうしていた何かしらのうちのけっこうを占めたのが展示室の掃除です。ケースを内側から拭いたり、展示台に敷いてあった毛氈をむしったり、むしったあとの展示台にコロコロをかけたり…。このコロコロがけ作業、ハンディサイズのものが見つからず、立ったまま床などをコロコロできる長いやつでコロコロしておりまして、その姿が何かに似ている…と思い当たったのがカーリングでした。

 トロトロとコロコロしていても、毛氈のモケモケの吸着は強力でなかなかとれませんので、けっこうな勢いでもってゴロゴロゴロゴロゴロ!!と前傾姿勢で必死にコロコロをかけている様子がまるでカーリングの、なにか誘導するほうのふたりぐみの片方に重なり、心のなかで「ヤァップ!ヤァーップ!」と厳しい顔で唱えてみたことは内緒です。…フッヘヘ、とひとりニヤニヤするひとのいる展示室が事務室の監視カメラに映りこんでいたでしょうか。さいきん監視カメラが新しくなって、たいへんクリアに映ってしまうというのも良し悪しです。

 ただ6台の展示ケースにヤップしていたときにはハイになって気がつきませんでしたが、いまこれを書きながら、あぁヤップヤップ言うのはさいしょにアレを投げたほうのひとかな?ゴシゴシするほうのひとは言わないのかもな?と思いいたって急に恥ずかしくなりました。何でもうろおぼえでものを語ってはいけません。氷上をすべっていくアレはストーンと言うそうです。
 ヤップもヤップでいいのか、聞いたまま書いてしまいましたが、ウィキペディアさまによりますと「イエス (yes)、ヤー (yeah)、イェップ (yep) - スウィーピングをしろという指示。」とのこと。このほかにも「ハード (hard) - もっと一生懸命掃け、という指示。」「ハリー (hurry) - もっと速く強く掃け、という指示。」などいろいろとバリエーションがあることを発見いたしましたので、今後コロコロするときには強いてふたり動員してもっといろいろ出来そうです。





見ちゃう
   2017.3.14

 展示替え2日目、本日はいよいよ設営に入ります。新しいパネルやらキャプションやらがどんどんと搬入され、サイズ感やらお色味やらをすぐさま確認したい学芸員は、きちんときれいに包んでいただいてあるプチプチを驚くほどやんちゃにびりびりと開けはなってしまうのです。そうして、前回のパネル撤去をしてくださっている業者さんのお足元に、新しいパネルをその配置予定図のとおりガツガツと並べて明らかに作業のお邪魔をしてしまうのです。入るか入らぬか、あの日のシミュレーションに果たして間違いはなかったかと、その配置にかける眼差しに鬼気迫るものがあるためか、やさしい業者さんは文句も言わずにそっとニューパネルを避けながら粛々と目の前のお仕事を遂行してくださるのです。申し訳のないことです。
 やがて、ここでーす、この高さでーす、と指示してしまったのちにはパネルを設置してもらっている間とくにお手伝いできることもなく、展示室で資料の配置をシミュレーションしたりなど、なんとなくそのへんをウロウロとしております。しかし展示ケースのうえにキャプションを並べてみながらも、フと気がつけば設営の進む壁面を真顔の横目でじっと見ながら停止している時間がままあり、我にかえって、アラやだ、業者さんに要らぬ圧をかけてしまっていたよ…とひとりでテヘヘとして己が作業に戻るのです。が、またもやフと気がつくとその手がいつしか止まり、横目でじっと釘が打たれるさまを凝視してしまっているのです。もういっそのこと、そこに椅子をデデンと置いて「わたし、見ていますよ!」との姿勢をとってしまったほうが業者さんたちもやりやすいのではないか、というくらいの横目具合…。べつに不信感でもって見ているわけでなく、ただただ気になってしまう、これはもう性(さが)とでも言うべき動作なのですから業者さんもアレはああいう生き物、として無視してくださればよいのですが、いかんせんその顔の角度と瞬きもしない真顔の気持ちわるさとによって、たとえて言うならレジ終わりにその場でレシートをじっと見るお客さんくらいの威圧感は与えてしまっているかもしれません。 





会期終了!
   2017.3.13

 昨日をもちまして企画展「秋聲全集物語」、無事会期を終了することができました。ご観覧くださったすべてのみなさまに深く感謝を申し上げます。思えば、企画展の予定を組む際、つぎ何やろっかな~と思いながらアッ全集が完結して10年ではないか!これはご紹介すべき年…!とカッとなってほぼ勢いだけでこの開催を決めてしまったのですが、内容につきましてはノープランもノープラン…だいたい全集展って全集以外に何展示する?ケース埋まる…?と開催が射程圏内に入るにつけずいぶんと不安になったものでした。しかしながら版元である八木書店さんをはじめ、編集委員の先生方、装丁原画の展示を快くご許可くださった徳永春穂先生ご実家・徳永こいのぼりさん、石川近代文学館、そして徳田家の全面協力のおかげさまで充実した資料が揃い、開幕にこぎつけることができました。早いものでそれが閉幕というのだから諸行無常ったらないですね…沙羅双樹の花の色とのやつですね…

 今朝ほど資料撤去を行い、展示室が空っぽになりました。全集と菊池寛賞正賞の置時計も一階の定位置に戻り、今後お手にとってご覧いただくことができるようになりました(置時計に関しましては鍵つきケースなもので触れません!何卒ご容赦のほど…!)。全集に関しましてはそもそもケースに入れるべきものでなく、開いてなんぼ、読んでなんぼのものですから、お時間ございましたら閲覧コーナーにてぜひパラパラしてみてください。お探しの作品、別巻の総索引をつかうと便利ですよ!!随筆をお探しの場合は第2期の19~23巻ですよ!この5冊にはそれぞれにまた索引がついておりますので、お探しの人物名でもって引けますよ!!
 とかいって、本日より17日(金)まで展示替え休館いただいております。18日(土)よりふたたびご入館いただけますので、しばらくお待ちくださいませ。
 現在、資料撤去のいっぽう事務のほうではたいへんな勢いでチラシの発送作業にかかっております。「一穂さんが手の油ぜんぶ吸い取っていくんですけど…!!」との苦情を受けながら、すみません…でもダンディでいらっしゃるでしょ…?ビジュアル、お強いでしょ…?と世のみなさまのお目に触れる日をたいへん楽しみにしております。





這ひあがる
  2017.3.11

 先日お邪魔いたしましたラジオ放送につきまして、リスナーさんからこんな反響があったよ!とMROのご担当の方からご連絡をいただきました。ご親切にありがとうございます!(もちろん概要のみです。差出人がどなたかはわかりません。)
 当館の文庫制作についてよい取り組み、と褒めてくださったうえ、もっと秋聲に触れる機会があったらいい、とも書き添えてくださっていたそうで、そのお言葉に励まされるとともに館としての活動をもっともっとがんばらねば!とお尻をたたかれる思いがいたしました。背だ帯だ、といつまでもくよくよしてはいられません。
 そんな精神にて秋聲の作品世界に触れる機会をすこしでも多くつくるべく、本日も寸々語、地味に更新をしてまいります。

 さて、放送にてご紹介をいたしました当館オリジナル文庫『新世帯』の最後に収録されている「不安のなかに」は、大正12年9月1日に発生した関東大震災時の混乱を描いた小説です。秋聲はちょうどこのころ妻子を東京に残して、ひとり金沢に帰省しており、金魚鉢の水が揺れたことで地震の発生を知るのです。すぐにでも飛んで帰りたいところ、東京への旅行が制限されて足止めをくらい、家族の安否の知れぬまま不安な日々を過ごす様子が描かれています。結局帰京できたのは約2週間後。

〈多勢の子供たちと一緒に家を守つてゐた彼女は、十四日目にのこのこ帰つて来た私に、余り好い感じをもたなかつた。一生の大難とも言ふべき運命の苦痛を偕(とも)にしなかつたことが彼女の飽き足りなさであつた。〉と、はま夫人から無言のうちに責められたらしいことが「不安のなかに」の続編となる「余震の一夜」に記されており、そんな未曾有の大災害に遭ったことのない幸福な身でありながらも、なんとなく夫人のその心持ちはわかるような気もするのです。
 被災した当事者として、当事者の家族として、作家として――この時期いろいろな立場でもって書かれた作品群が残されており、全部文庫に収録すればよかったものを紙面に限りありにてやむを得ず…せめて「不定期連載」に時事評論「這ひあがる」、そっと置いて帰ります。





朋有り遠方より来る
 2017.3.9

 奥歯の神様にいつしか仲間が増えていたように、秋聲記念館にも強力な仲間が増えました本日です。これはもう祭、春の秋聲祭ふたたびです。

 以前より解説依頼をいただいておりましたお客さまが本日来館され、学芸員が館内案内をさせていただいたのですが、なんとその学生さん、秋聲作品でもって卒業論文を書こうと心にお決めなすったなんとも奇特な若人…!しかも県外も県外、太平洋側から卒論執筆前に記念館を詣でておこうと、わざわざご来館くださったのです。こんなありがたいことがほかにありましょうか?
 ひょんなきっかけから秋聲を知り、その作品を読み、探していたものにようやく出会えた!との運命を感じ、真夜中のテンションでもって金沢行を決めお宿の予約をされたという…。いままで恥ずかしさと厄介さを感じることはあっても有難いなどとついぞ思ったことのない〝真夜中のテンション〟にまさか感謝をする日がくるだなんて…。ありがとう、真夜中のテンション。ありがとう、その熱を冷めさせなかった翌日の太陽…!!
 朝まで持続したならそれは本物です。パン屋さんでアルバイトをしているという娘さん、秋聲はパンが好物ですのでそれもまた運命です。
 これまでいろいろなお客さまと接してまいりましたが、展示ケースのまえで涙ぐむひとを見たことがありません。秋聲の自筆原稿を間近に見ることに喜びを感じ、涙が出るほど興奮をしてくださったパン屋でアルバイトをしながら『黴』で卒論を書こうとされている娘さんが秋聲記念館一味でなくてなんでしょう?それはもう「ようこそ」というより「おかえり」、おかえりなさいパン屋でアルバイトしながら『黴』で卒論を書こうとしている(書いている/書いた)娘さん!とのご挨拶でもって次回ご来館時よりお迎えをさせていただきたく存じます。
 彼女の住まう都道府県を、秋聲記念館一味の生息するおめでたき地域として『黴』初版本のあの赤(→)で塗りつぶしたい心持ちです。若き秋聲研究者の誕生に心からの感謝と祝福を捧げます。

 秋聲先生、若い世代にも作品の魅力、着実に届いております、届いておりますよ…!(お顔も好みですって!!)
 

  


帯でなく背表紙
 2017.3.8

 きのうはエフエム石川さんのラジオ番組収録(3月19日放送予定)、本日はMROラジオさんの生放送に学芸員が出演させていただきました!お声がけありがとうございます!!
 MROさんでは角野アナ、パーソナリティの上坂さんと当館オリジナル文庫についてのお話をさせていただいたのですが、新作『新世帯』の表紙デザインをご紹介するくだりで「新婚夫婦の…一応ふたりの食卓なんですけど…帯によって分断されるふたりの視線が…ええ、帯によって…」ともちゃもちゃお話ししながら、ハッと気がつきました。(お、帯じゃない…!背だ……!!!)しかし時すでに遅し、というか訂正するタイミングをつかめぬまま放送終了…
 ド緊張のあまり、ふつうに間違えてお伝えしてしまいました。スタジオには実物があったもので、その場の雰囲気でなんとなく伝わったのですが、音声だけ聞かれてちょっと想像などされてみた方には意味不明なことになってしまいました。申し訳ありません、なんせ生放送、不慣れなもので…ド緊張をしてしまったのです…。せっかく機会をいただいたのに、と雪のなかトボトボ館へと帰ってまいりました。
 改めまして、帯でなく、背表紙です。オビ=デナク・セビョーシ…(すみません、ちょっとオ○=ワン・ケノービ的にいけるかと思ってしまいました。深く反省はしています。アッ、スターウ○ーズです)。お手持ちの方、ぜひ背表紙を中心に、表紙・裏表紙を開いて一枚絵として見てみてください。
 
 そうして雪を踏みしめながらしょんぼりと帰館直前、せめて放送冒頭にてしどろもどろとお伝えしていた当館自慢の梅ノ橋の雪景色をでもお届けしようとカメラを構えましたが、ご覧のとおり橋自体には雪もあんまり積もってなかったです。あの、とても、きれいなんですよ…!と、これまた小嘘をついてしまったことになりました。

←川沿いの堤防にはすこし雪。と、埋ずもれる神々。
  
 




本屋の心意気
 2017.3.7

 当館オリジナル文庫の在庫僅少のお話をいたしましたが(『縮図』もそろそろ!)、そんな話で思い出されるのは現在展示中の乾元社版『徳田秋聲選集』のこと…昭和27~28年、広津和郎・宇野浩二・川端康成を編者に全10巻予定と謳いながら未完に終わってしまったシリーズです。
 その巻末には出版社による熱い思いが語られており、「よき本を出したい慾望と、経理的な採算と両立しない場合が多い。」との書き出しからすでにぐっとくるものが…。(わかる…!)とその拳でおのが両膝を強く打ちつけてしまうのです。
 とはいえ当館、出版社ではございませんし、どちらかというと売り上げでなく秋聲文学を世に広く知らしめるため、との点にこそ文庫本制作の主眼を置いておりますので出版社さんと同じ立場で語っては申し訳ない部分もあるのですが、「ギリギリのところで良心的な出版が出来れば以て瞑すべし」、「手軽に読み捨てられる物でなく後に残る本という建前で、作家と作品を選ぶだらう。類書を避け無意味な競争を避け、独特の編集と装幀造本にも意を用ひるつもりである」などと語られるその姿勢に、当館の造本へのこだわりが追いついているとは言えないながら気持ちのうえでは(めっちゃわかる…!)と目頭をぐっと押さえてしまうのです。

 ただ、というわりに装丁地味…?と片や冷静に見もしていたところ、なんとなくこの黄土色のカバーをペロリとめくってみましたらそこにあったのは見覚えのある青い装丁…

 こ、これは…!天下のユメジデザイン…!!

 常設展をじっくりご覧になった方にはおわかりかと存じます。大正9年、日本評論社から刊行された秋聲の短編集『或売笑婦の話』と同じ、竹久夢二さんの装丁を本体に用いているのです(当HPの「企画展」ページの左側にあしらわれている本ですね!)。オリジナルでこそないけれど、めくった人にだけちょっと嬉しい仕掛け=本づくりにおける遊び心がここに隠されているのです。
 地味とか言ってすいやっせん…!と乾元社さんのお心意気に頭をさげつつ、ヨシできるとこまでがんばってこう、との思いを新たにもするのです。  



 


カウントダウン
 2017.3.5

 ラスト、ラスト、先日よりこれがほんとうの今年度ラストの催事、のような盛り上げかたをしてしまっておりました昨日の全集展展示解説ですが、よく考えればもう一週間もすればさくっと展示替えを行いまして、初日の3月18日にまた展示解説をするのでした。何度となくラストラスト詐欺を働いてしまい恐縮です。当館の終わりなき旅、みなさま方と永く歩んでいけましたら幸いです。

 改めまして全集展展示解説にご参集のみなさま、ありがとうございました。ブログ読んでます!と温かいお言葉をかけてくださったお客さまにも心よりお礼申し上げます。そうしてよき疲労感に満たされた閉館後、受付さんからもうひとつ嬉しい申し送りがございました。「今日『短編小説傑作集Ⅰ』が4冊も売れましたよ!」とのこと、館のオリジナル文庫の第2弾です(アッやっぱり武士の血流れてんのかも!と秋聲をモデルとする主人公が思ったりする短編「風呂桶」収録。本作は秋聲にしては珍しく原稿も残っています。常設展にてレプリカ展示中!→)。

 へへえ!そりゃありがたい!と喜び勇んだいっぽう「いやちょっと待て!すなわち在庫何冊だ!?」とすぐさま不安がよぎったのです。

「残り…5冊です…!!」

 傑作集Ⅰ、残り5冊だそうでーす!!昨日そんなにそればっかりプレゼンしたつもりはなく、どちらかといえば『新世帯』によく言及したほうだと思ったのですが、何故か少ないものから減っていくこの法則…実は『黴』も在庫僅少で、だけどもそれは講談社さんにカバーしてもらえばいいや!と勝手に算段をしていた矢先の残り5冊。こればっかりは当館で刷り増しするほかありません。あと一ヶ月も今年度を残して、来年度どのタイミングで増刷が出来るのやらまだなんとも言われませんが、とりいそぎカウントダウンが始まったよ~ということだけお伝えしておきます。ご注文はお早めに…!
 ちなみにラストマグネットも昨日お買い上げいただき、晴れて在庫ゼロとなりました。なくなることは寂しいけれど、それだけみなさまのお手元に渡ったのだと思えば嬉しいことです。



  


ラストサムライ
  2017.3.4

 よくわからない何かといえば、先日ほっこりポストでお見かけしたこちらこそそんな何かでございました。

 これは…両耳?両角?に、なにか…紅白のリボン…??
 体が無数に…地中から生え…??
 勉強不足で恐縮ながら、これが何という生き物であるのかまるで見当がつきません。あるいは何かのキャラクター?もしお分かりの方いらっしゃいましたらご教示ください。素材につきましては大根です。その点については大丈夫です。お久し振りではありますが、この展示ブースにおいて大根アートは決して珍しくないのです。
 ただ、どこまでが体なのか…体でもないのか…このモチーフについての謎は深まるばかり…。

 そんな謎をもやもやと抱えながらきのう収蔵庫にたてこもって次回企画展のキャプションを書いておりましたら、発見しました!先日こちらでふがふがと申し述べていた〝秋聲のダンスがまるでお能〟のくだり。ご子息一穂さんの随筆「父の思い出」(「小説新潮」昭和32年2月号)のなかにそんな記述がございまして、ひとつすっきりいたしました。「年齢でもあり、体にしない(撓い)がないので、踊りはまるで能のように固苦しかつた。(中略)その時分、巴里(パリ)から日本に来た武林無想庵氏のお嬢さんのイヴォンヌさんが、ダンス場で父に逢い、はじめて『サムライ』を見たと云つたくらいだから、父のダンスは社交ダンスなどと云うよりも、確かに能に近いようなものであつた。」
 
 ……さ、サムライ…!秋聲がサムライ…!!
 
 いったん「イヴォンヌさん」にとっつかまって、その先を聞き漏らしそうになりましたが、さらなる衝撃によりイヴォンヌさんの一件をわすれました(奥さまも日本の方ですが、パリ生まれのパリっ子につき…。日本名は「百合子さん」と仰るそうです)。
 
 とはいえ徳田家は元武家ですから無理からぬところでしょうか。秋聲の生まれる2年前に版籍奉還が実施され、正確には秋聲の父・兄までが武士、秋聲自身は武士ではありませんが、年をとるにつけ自分のなかに武家の血筋を感じたりなどしています。
 当館、まさかのラストサムライを顕彰する館でありました。


 


『縮図』に住まう何か
 2017.3.3

 これはピンクか紫かでいつか事務室に深刻な対立を生じさせました小鳥のマグネット、最後の一個だそうです!
 秋聲最後の長編小説『縮図』初出紙のタイトルカットが子犬やら招き猫やらとくに意味もなくやたらに可愛かったもので作ってみましたマグネット、4種のうち3種はすでに売り切れまして、この小鳥でほんとうに最後の一個となりました。当HPのグッズページからは色の欠品が出た時点でそっと削除しておりますので、あとは店頭販売のみ(間に合えば通販もできなくはないですが、「あのピンクのマグネット」とか「紫のマグネット」と言われてしまうと受けた職員により混乱が生じ、いちど鎮静化した論争が再発しかねませんので「小鳥のマグネット」とご注文ください。いやもはやマグネットとしては唯一ですから、「最後のマグネット」あるいは「ラストマグネット」などとかっこよくご注文いただいても間違いなくご用意できるかと存じます。)これが売れてしまえばおそらく再販はしない品物につき、ラストマグネット、その販売の瞬間に受付さんが心なしか涙ぐんでおりましたら「うちの冷蔵庫で責任をもって育てます」とキリッとして伝えてやってください。

 もう終わりがけでご紹介するのもアレですが、マグネットとしては子犬、招き猫、木馬、小鳥の4種のデザインを採用したこの『縮図』のカット、ほんとうはもうすこし種類がございました。
               
             これ…なんでしょうね…?→

 ご覧のとおり初回からちょっとよくわからない土偶のような何かもいたのですけれども、ちょっとよくわからないがために商品化は見送られました。ただここ最近はちょっとよくわからない何かが妙に人気者になってしまったりするご時勢ですので、思い切ってこの何かを全面に押し出してもよかったのかもしれません。

 当館にはいまのところ特別なロゴはございませんので、そのうちこの何かがホームページのトップなどに現れ、さも最初からいましたみたいな顔でもって何かしらご案内しだしましたらそういうこととご理解ください。某K記念館さんのとこはうさぎとご本人のコラボされたロゴでしたね…?この土偶のような何かと秋聲先生を…?


 
 


27日に召集
 2017.3.2

 先日「中央公論」つながりで何気なく「二七会」のことを話題にのせましたが、そういえば偽「二日会」が開催されたと空目をしたあの日は27日…その日まさに「読売新聞」の「編集手帳」にて「二七会」に言及があったことをふと思い出し、そうか27日だからか…!と今さらながらに合点がゆくなどモノゴトのうまく繋がらないこの脳を呪わしくも思っている本日こそ2日です。
 そう、あの日「二七会」の話題をだせば、かつて秋聲も在籍した「読売新聞」さんとお揃いになれたところ…。「二日会」にはしゃぐべきは今日でした。

 改めまして「二七会」、「二日会」同様、月の27日に集まる会だそうで、そのあたりいつかの正宗白鳥展ですこしだけご紹介をした記憶がございます。徳田家に昭和4年の白鳥筆秋聲宛書簡が残されており、「嶋中社長が集まりたいって言ってるから上京するわー」(意訳)といった内容。当時、白鳥さんは神奈川の大磯に住んでおりました。
 
 文士たちとはとかく何かにつけ集まりたがるもののようで、二日会とか二七会とか雨声会とか龍土会とか玉真会とか、とにかく会合がお好きでいらっしゃいます。ちなみに「玉真会」とは、昭和5年、秋聲のダンスの先生であった玉置真吉を囲む会で、秋聲はなんとその会長さん!ダンスに本気!!秋聲がダンスを始めたのはこの年のうちですから、齢六十にしてだだはまりをしてしまったようです。そんな秋聲とダンスを踊ったという歌人の高松光代さん(故人)のインタビュー映像を当館2階サロンにて放映しているほか、総合図録『秋聲』にもすこしだけ聞き書きを掲載させていただいております。
 また体が硬いから秋聲のダンスはお能みたいだったと書いていたのは誰であったか、ご子息一穂さんであったか…。姿勢についてはアレですが、なにせご本人は先生が驚くほど勉強熱心で、たいへんに端正なステップを踏まれたそう。





目にまつわる話
 2017.2.28

 きのうの記事中、「二日灸」を「二日会」と見間違えて「二度見」をしました、と書きたかったところ「二度目」をした、と書いてしまっていたことに気が付き、ア~ア~もうとにかく目の周辺地域全域にわたりおつかれ~!となりました残念な今朝です。
 さて、目の周辺といって思い出されるのは、秋聲の評論「文壇の反動色 附『春琴抄』」(昭和8年8月)。みなさまご存じ谷崎潤一郎の代表作「春琴抄」がこの2ヶ月前、かの「中央公論」に発表され、それについての感想を述べたもの。同作は、盲目の三味線奏者・春琴を献身的にお世話する弟子の佐助が、ある時春琴が顔に怪我を負ったことからその顔を見られまいと彼を遠ざけようとするのに対し、自ら針で目を突きその側に生涯仕えつづけるという物語…。なかなかのショッキングな、しかし耽美なその世界観に、秋聲は「あれが何うしてそんなに芸術的にすぐれたものであるか、幾度繰返して読んでみても首肯することができない」として下記のように述べています。

「作中の佐助が針で両眼を突つく場面があるが、谷崎氏は事実の聴き書きのやうに、あの作品を総べて説明的描写で作りあげてゐるけれど、この異常なる事件などは恐らく実際には有り得ないことではあるまいか。」

 ざっくり言ってしまうと、「えっそんなことってある…?」との超真顔のツッコミ
!怖!
 いやその軸でもって語られちゃあどんな作品だってなかなかつらいでしょうよ…!と思わなくもないですが、このあと本作が何せ「幼稚」であると繰り返し、「誰にきいてみても皆んな無条件で感服してゐるのは、私には迚も不思議」とも書かれています。
 そんな内容の興味深さもさることながら、いちおう律儀に何度も読んでみる秋聲先生、みんなに感想を聞いてまわる秋聲先生のお姿を想像するとちょっとニヤニヤしてしまう悪い記念館一味です。 

←昭和4年から始まった「中央公論」執筆者有志の会合「二七会」の様子。前列左端が嶋中雄作社長、右隣の黒ジャケット白パンツが秋聲。
 これは昭和6年のお写真ですが、継続的に開催され、秋聲はわりと晩年まで参加しています。
 こういうところでもってみんなに聞いてまわったのかもしれませんね…





2日に招集
  2017.2.27

 本日、デスクに設置されている日めくりカレンダーをふと見ましたら、「主な行事」のところに「二日会」と書いてあって二度見をしました。えっ二日会…?秋聲を囲むあの…!?と驚いてもういちどよく見ると「二日灸」でした。ふつかきゅう…「陰暦2月2日にすえる灸。この日に灸をすえると年中息災であるという。」だそうです。旧暦でいうと本日が2月2日になるのでしょうか。「二日会」、日めくりカレンダー様に掲載されるほど一般的ではなかったもよう。そりゃあそうです。ちょっと目が疲れているのか、いやだけど薄目にして見るとほぼ同じですね!フォルムがとてもよく似ています。
 さて、先日から何度か話題にあげておりますこの「二日会」、1月2日の秋聲の奥さんの命日にちなんで毎月2日に仲良しの文学者たちで集まってはお食事などをする会です。のちに「秋聲会」となって「あらくれ会」と名前を変え、「あらくれ」という機関誌など出したりなんかもしております(当初、その発行所は徳田家、編集発行人はご子息・一穂さん)。いい大人たちで遠足にも出かけたりする楽しい会です。

 また「二日会」の特徴は、毎月会を催す際に幹事を決め、幹事さんがその当日の様子を冊子に記録していくというお当番制…石川県出身の後輩・加能作次郎のはっちゃけぶりが記されたり、さいきんみんなちょっと遅刻多いんですけどー!との幹事さんの不満が洩らされていたりとたいへん面白いお帳面が残されております。2冊ございまして、1冊は当館蔵、もう1冊は徳田家で保管されています。

←(レプリカですが)常設展にて中ご覧いただけます。

 さらに面白いのは、この幹事さんを秋聲自身もつとめているという平等さ!奥さんを亡くして落ち込む秋聲先生を励ます会なのにもかかわらず、自ら幹事をつとめ、ハガキでメンバーに会のお知らせをしたり、記録をしたりするのです。なんとフラットな…みんながみんな、どんなに大家と呼ばれようとも決して偉そうな素振りを見せないのが秋聲先生、と秋聲を評しているのが実感として伝わるようなエピソードです。



 


ついにこの日が
  2017.2.26

 まこといい波が来ております…!この流れを受けて、最大のビッグウェーブがやってまいりました、すなわち『21世紀日本文学ガイドブック6 徳田秋聲』(ひつじ書房)がこのたびついに発刊となりました!先生方おめでとうございます!館といたしましては心からありがとうございます!!
 きのうまさにご執筆者の先生より同書をご恵贈賜り、ついにこちらにてご紹介することがかないました。重ねてお礼を申し上げます。
 八木書店版『徳田秋聲全集』の編集委員のおひとりである紅野謙介先生(日本大学教授)、そして当館前学芸員の大木志門先生(現山梨大学准教授)の共編著により、その他小林修先生(実践女子大学短期大学部教授)、大杉重男先生(首都大学東京教授)、西田谷洋先生(富山大学教授)、梅澤亜由美先生(大正大学准教授)と、これまで当館でもご登壇いただいたりとたいへんお世話になっている諸先生方が集結され、秋聲の作家論、作品論、そして研究史と、これ一冊で秋聲のことがだいたいわかるうえ、さらに最新の研究まで盛り込まれた今後の秋聲研究の入門書にして必携の書が出たといって過言でなし…!これはもう祭りです。春の秋聲祭の開催です!!(すみません、気持ちのうえの問題です。もう年度末で予算もないのでとくにイベントの予定はございません…)みなさま、おのおのの方法にて春の秋聲祭、開催していただけましたら幸いです。場所は異なれ、その瞬間、館と心はひとつです。
 そんなわけで、手続き整い次第、館のショップでも販売をさせていただきたく存じておりますが、館のオリジナル文庫とちがってこれは各書店さんなどでご購入いただけるものですから、待ちきれない方はどうぞ書店さんにてお求めください。どこにでも混じりこむことを得意とする薄笑いサンタのお面(当館蔵のほう)が目印です。
 そうしてハフハフしておりましたら、さらなる喜びの報が届きまして、この春、講談社文芸文庫にて『黴 爛』との代表作2編を収めた新刊本が発売されるとか…!?ここ数年、秋聲唯一の首の皮であった『あらくれ』を出してくださっている出版社さんです。これで秋聲の本が2冊に…!!繋がりました、秋聲文学の首の皮がブワッと厚くなりました。4月11日発売だそう、春の黴爛祭の開催です…!!講談社さんありがとうございます!!!



 

悲喜こもごも
  2017.2.24

 うれしい出来事とはつづくものですね!「金澤」への掲載につづき、月刊誌「中央公論」3月号にも秋聲のしゅの字が載っています!ひとえに川端康成記念会理事・水原園博氏、康成御大に感謝です!!
 先般川端康成邸から見つかった文士たちの書幅等の新資料につきまして、発見者である水原氏が「文豪たちの書でたどる近代文学史」として寄稿をされているのです。しかも秋聲でいえば、2点ある書幅のうち、あまり紹介されていないのほうの書「古き伝統と新しき生命」にまつわるエピソードに言及があり、もう全部ここに引用してご紹介したい勢いですがそれはできない…もどかしい…!!またありがたいことにその筆跡までも巻頭グラビアに掲載がございますのでぜひご購入のうえ、ご自身の目でご確認くださいませ。表紙にある「ふるさと納税の本末転倒」との大きな見出しが目印です。
 
 雑誌にテレビにもりだくさんで、昨日自宅で録画したテレビ番組を見ておりましたら、大正期に鈴木三重吉が主宰した児童雑誌「赤い鳥」特集にぶつかりまして、意外にも秋聲は同誌に創刊号から参加しており、そのあたりを4年前の「徳田秋聲らしからぬ!」との変てこな名前の企画展にてご紹介をいたしました。

 番組内でMCの女優さんが創刊号の目次を見ながらこんなに有名な文士たちが寄稿してるんですねぇ~とひとりひとり名前を挙げていくなか「北原白秋、島崎藤村、芥川龍之介、鈴木三重吉、泉鏡花。」と、秋聲の直前でストップしてしまったことにアアアアア~…!!とこの世の終わりかと思うような悲痛な声を上げてしまったのです。
     (徳田家蔵「赤い鳥」創刊号目次)→

 もうすこし、もうすこしだったのです。女優さんの口から秋聲の名が呼ばれるまであとすこし…!たいへんに残念な思いをいたしましたが、その名がテレビに映ったことだけでもよしといたしましょう。あまり多くを望んではバチがあたります。いやでもまさかアレでしょうか、秋聲の作品とは名ばかり、秋聲が締め切りを守らず困った小島政二郎(作家・「赤い鳥」編集者)が秋聲の名で代わりに書いたという裏事情を踏まえたうえで敢えて触れずに置かれたのでしょうか?目次中、秋聲の後ろにいたため一緒になってすっ飛ばされてしまった当の小島さんにも申し訳ない気持ちになりました。



 


待ってました「金澤」3月号
  2017.2.21

 前回記事で「じれじれ」という言葉を使おうとして、あれっじれじれってみんな言うかな?もしや方言?と不安になりチャカッとネットで検索してみましたら、ネット辞書に「じれじれ(副)…いらだたしいさま。じりじり。」とあって、用例になんと秋聲の代表作『爛』の一場面が挙がっておりドキーン!といたしました。あっこんにちは、こんなところで…!とさっきそのお宅を辞してきたのに最初の曲がり角でまた会ってしまったみたいな変な感じにちょっとどぎまぎしてしまったわけですが、調べたところで要は「うちでは言う」ということのみの証明および強調、すなわち何ら説得力のない結果になりましたことをここにご報告申し上げます(広辞苑さまには掲載なし)。

 さて、まだかなまだかなと先月よりじれじれしておりました月刊誌「金澤」、きのうついに発行となりました~!と言いますのも、当館オリジナル文庫『新世帯』のカバーデザイン一件をコーディネートしてくださった彫金師・竹俣勇壱氏のご紹介により、本誌に『新世帯』についての記事を掲載していただいたため!先月下旬にご取材いただき、3月号の発行をいまかいまかと心待ちにしておりました。実は編集部さんのお心遣いにより館にはおととい届いておりましたが、きのうより書店さんにも豪華に陳列されたことでしょう春色のきれいな表紙が目印です!

 竹俣さま、「金澤」編集部のみなさま、ありがとうございました。こんな素敵雑誌に載せていただけるなど夢のようです。『新世帯』、あかるく春らしいお話などひとつとて載せちゃおりませんが、人生の一スパイスとして誌面にも本棚にもそっと混じりこむことを許してやっていただけましたら幸いです。
 そういえば『新世帯』が出来たとき、ウェーイ納品されたぞ~い!!とテンションのあがる学芸員のいっぽう、販売担当職員がちょっと浮かない顔をしていたので何事か尋ねると「これ…ショップ棚と保護色じゃない…!?」と劇画タッチで言うものですからハッとして置いてみたら見事に同化しました。ここにこそ真の焦げ茶色が…!
 そんなこともあったもので、同誌撮影の際、カメラマンさんに「(撮影場所となった書斎の机とも)すごく保護色ですけど大丈夫ですか・・・!!」とブルブルしながらおたずねしたら「あ、それは大丈夫ですよ!」と何ともこともなげにお返事いただき、結果できあがったお写真の美しいこと…!ぜひ誌面でご確認ください。どんな分野においてもプロってのは頼もしくってかっこいいですね…!





7年周期
  2017.2.19

 さて本日19(トーク)の日ということで、トークイベントのお知らせです!当館催事じゃございませんが、三文豪仲間の室生犀星記念館さんのイベントにて当館名誉館長がトークに立たれます!これはレア!

 来たる3月26日(日)、犀星記念館さんのほうで毎年犀星さんのご命日に執り行っておられる「犀星忌」中、今年は犀星さんゆかりのお寺・雨宝院にて法要ののち、徳田章子当館名誉館長(秋聲令孫)と室生洲々子犀星記念館名誉館長(犀星令孫)による対談「孫達が語る作家の素顔」が行われることになりました!
 お孫さん対談といえば思い起こされるのは石川近代文学館さんで行われました公開対談「作家の家」。当館館報「夢香山」の第3号にちらとだけそのご報告記事を載せましたように、平成22年にいちどおふたりの対談がありましたね、ってもう7年前…!?月日の流れの怖ろしさ…!そんなわけでオリンピックよりも長い周期で時々やってくるこのレア企画、当館といたしましてもたいへん楽しみにしております。
 
 犀星さんと秋聲とは何せ良いお付き合いをされていたようで、この欄ではガーデニング仲間とばかりご紹介してしまっておりますが、犀星さんは奥さんを亡くした秋聲を励ます会=「二日会」にもばっちり参加してくださっておりますし、秋聲も犀星さんのいる軽井沢に遊びに行ったり、一緒に鎌倉に出かけたりなんかもしております。書簡の往来も多く、そのあたりを平成19年の企画展「秋聲と犀星」でご紹介しましたねって、もうきれいに10年前…!?月日の流れの(以下同文)…!基本仲良しなのでその間ちょこちょこと色んな企画展にお顔を出してくださっているとはいえ、一個の企画展としてそろそろもう一周してもよいのかもしれません。
 書簡といえば、いつか当館開催の鏡花展で展示した手紙(石川近代文学館蔵)、秋聲から犀星さんに宛てて何かしらの会合の日程調整に応えるもので「こちらはいつでもOK。泉の方には君から連絡したほうがいいね」(意訳)と書いておられて、またも~そんなこと言わずに~~!!とじれじれしたのも、はや4年前です。

 
  


色いろいろ
  2017.2.18

 もうすっかり忘れられていた3月4日の展示解説を残して今年度の催事はすべて終了してしまった当館、あとはもう消化試合のようなゆるっとした日々を過ごしている風に見せかけて、現在鋭意次回企画展のチラシ制作、パネル原稿書き、そして「ちょっと向山。」でお馴染み館報「夢香山」第9号の編集作業などなど、パンチ力こそ弱いけれども地下でこそっとした活動をちまちまと行っております。
 さて、当館の館報「夢香山」、なんとなく毎号そのお色味を変えてお届けしております。去年の8号は訳もなく紺色、今年の9号は訳もなく焦げ茶色です。印刷屋さんに「今年は焦げ茶で!アッそんな厳密じゃなくていいです!一般的な焦げ茶でOK!」と軽快にお願いしていて、返ってきた初校をみてなんとなくもんやりしている今日このごろ…

 焦げ茶か…そうか焦げ茶…とその色の本名が実はもっと別にあるんじゃないか、ほんとうにこの子俺の子かしら?みたいな目でもって見つめていたところ、お隣の職員から「…昆布色じゃない…?」とのご意見を賜り、一気に靄が晴れました。
 そうだ…!昆布色だ…!わりと煮しめた昆布色だ…なんて的確…!!とたいそうすっきりしたのです。
   
        写真だとあまり昆布感出ないですね!→
   
 〝一般的な焦げ茶〟って思うほど共通しないのかも、とためしに別の職員に一般的な焦げ茶とは?と問いましたらば「…黒糖の…パンかな…」と言われてさらに迷子になりました。いやそれも正直どうかと思うけれども百歩譲って黒糖まではいいとしよう、パンって…!そもそも黒糖のパンって一般的な食べ物でしょうか!?と事務室に議論が巻き起こりました。そうしてこちらの発注のしかたがわるかったのだと深く反省もしたのです。だって、まさか黒糖のパンを思い浮かべるひとがいるだなんて・・・!ひとそれぞれ、いろとりどりってこういうこと・・・!!
 そもそもそんな事態を避けるために色見本だなんて便利なものがあるのですが、こうなってくると意地でもそれに頼らず、最終的に「焦げ茶ってチョコレート色のことじゃない!?」に到ったうえでの、ではカカオ何パーセントのソレか、これからじっくり時間をかけて、印刷屋さんとじりじりそのラインの探りあいをしていこうと思います(迷惑千万)。
       


 


無花果もわりと好き
  2017.2.15

 柘榴ときて、梅ときて、柿ときたらば、無花果もご紹介しないわけにはまいりません。この難読漢字、正解は「いちじく」です!
 柘榴の木と同じく、無花果の木も徳田家の庭にあったそうで、一穂さんはその木を見るにつけ秋聲俳句「無花果の秋となりけり水噂」を思い出すと語っています。

 そのエピソードを知る前に昭和22年、秋聲の没後に一穂さんの編集により刊行された『古里の雪』(秋聲の絶筆「古里の雪」をはじめ、金沢を書いたものばかりを集めた短編集)の見開きに描かれた金沢の雪景色のうえにドドンとこの句が載せられているのを見て、不思議に思っていたものでした。

季節も合わぬし、金沢らしさもとくにないのに…?と違和感しかなかったところ、後に読んだ上述の一穂さんのお言葉でもってその意味を知りました。この句はかつて同じ縁側から父と子のともに見ていた風景、というわけです。

 さて、そろそろうっすらとお気づきでしょうか、秋聲先生動物はお嫌いですが草花を愛でるのはたいそうお好きなのです。執筆の合間合間にはお庭に出て植栽をいじり、そうして庭づくりにちょっと疲れたら、犀星さんから贈られた俳句集なんかを読むんだそう。
 
秋は地上に咲く草花の数多く色彩の最も濃厚なるを愛し候、嗜好の果物は無花果と柿など、然し食物の嗜好は年により日により甚だしきは同じ日にても腹工合、舌の加減にて変動あり一概に言ひがたし。」(明治42年、「秋の感想」より)

 当時よくあった雑誌新聞による文士アンケートの回答です。単なるアンケートの結果としてはちょっとめんどくさいほうの回答かとも思われますが、その内容さすがに行き届いていらっしゃいますね!今日は無花果だけど、あしたには変わるかもよ!毎日同じと思うなよ!!…ということですから秋聲先生に差し入れの際にはその腹工合と舌の加減、事前に要調査です。



 


今日は2(フン)14(ドシ)の日だそう
 2017.2.14

 きのうこちらで紅葉先生のセリフを引き写しながら、秋聲の記録する紅葉先生のセリフ集にはなかなかいいものがあるなァと思われましたので、勝手ながら急に紅葉先生のかっこいいセリフランキングを発表いたしたく存じます。

 3位「柿も青いうちは鴉も突き不申候」(『光を追うて』より)
   
 言わずとしれた名文句、秋聲の入門志願に対しバチコーン!!と断ってくるこの感じ…!秋聲は腹が立ってこの文句の書かれた手紙を破り捨ててしまったそうですが、もし手元に残してくれていたなら間違いなく超一級資料として崇め奉られたことでしょう。この文言のあまりのかっこよさにアニメーション映画「イノセンス」の一場面にも使われているとか。
 
 2位「みんなまずい顔を持って来い。」(『黴』より)

 紅葉先生が亡くなったその日、病室につどう弟子たちに発したというお言葉。さすがは江戸っ子、悪態を交えながらもそこに垣間見える師匠としての愛情深げなこの物言いにかえって胸打たれます。

 1位「ちょっと向山。」(『光を追うて』より)

 こちらは前回記事の発句云々の近くにあるお言葉。「向山(むこうやま)」は秋聲をモデルとする主人公の名で、紅葉先生のお弟子になって初めての仕事をした数日後、こうして不意に呼び止められて、先生から初めての原稿料をもらうというくだり…
 この師匠っぽさ、師弟っぽさ!こんな感じに呼び止められてみたいものですね!
   (明治35年の紅葉先生、すごく言いそう!!)→

 ラインナップとしてはメジャーどころながら、1位に関してはちょっと個人の趣味を全面に押し出し過ぎたでしょうか?今度職員の誰かを呼ぶときに張り切って使ってみようと思います(偉そうすぎて振り向いてもらえない可能性大です)。





梅もわりと好き
  2017.2.13

 金沢湯涌夢二館さんより、先日開幕となりましたコレクション展「竹久夢二の「小美術」―絵葉書・版画・生活デザイン―」後期展(~4月9日)にて、秋聲先生揮毫の色紙が出品されている旨、ご連絡をいただきました!これはありがたいこと!
 ちょっとまだ実際に伺えてはおりませんでどんな文脈にてご登場やらわかりかねますが、内容といたしましては「青梅の肌較々(やや)白し葉がくれに」の俳句色紙だそうです。わりとお得意のやつですね!
 秋聲の俳句づくりは、尾崎紅葉門下に入ってすぐのころ「発句(ほっく)はやらんのかね。」と紅葉先生に訊かれたことがそもそものきっかけ(自伝小説『光を追うて』より)。しかも紅葉主宰の俳句会に顔を出さないと先生のご機嫌がわるくなるそうで、それからポツポツとつくりはじめて現在197句が八木書店版全集第27巻に収録されています(これもたいへんありがたいこと!)。 
 ただ、ご長男・一穂さんによれば「人から短冊や色紙を頼まれると、大概同んなじ句を書いてゐた」そうで、たしかに件の「青梅の…」もわりあいよく見る気がいたします。当館にも同句の短冊1点、色紙2点の収蔵がございますので、気に入ってよく書いていたほうの俳句なのでしょう。古書店なんかに出ている俳句を見ても、やはり秋聲のなかで常に前のほうに並んでいる選抜句ばかりといった感があります。

  これは当館一の地味さを誇るとても潔い色紙…→
 
 いつものパターンだと実際に観覧のうえその報告記事としてこちらに書くのですが、それだとたぶん会期終了の前日にすべりこみというやはりいつものパターンにて、「見てきました!でも明日で終わりだよ!ごめんね!!」と何の予告機能もない残念なことになりかねませんので、フライング気味にお知らせを申し上げます。折りよく湯涌に雪見温泉しにいくよ~という方おられましたら、是非ユメジ館さんにお立ち寄りのうえ秋聲の色紙があるんやったかな?というお気持ちにてご観覧くださいませ。ユメジ作品の素晴らしいことは言わずもがなですが、他館で出会う秋聲ったらトキメキ以外のなにものでもないのです。





へんしん
  2017.2.11

 おかげさまで最近書籍の通販ご利用も増えてまいりました。かくかくしかじかで秋聲読んでみたい!→あれっ!?書店に秋聲の本がない!→ややっ!?記念館で売ってるっぽい!→金沢か!遠くて行けない!!となっている方の多かったところ、実際に通販をご利用くださった方々があそこ通販やってるよ!!と口コミで広げてくださった結果と心得ます(ご親切なかたがた…当館の活動へのご支援、まことにありがとうございます…!)。
 そうしてご注文やら支払い完了のご連絡やらのメールを確認していた職員から「購入者の方が『新世帯』の装丁いいねって書き添えてくださってるけどどうする?へんしんする?」と訊かれ、前半でフー!と嬉しくなって後半で脳みそが活動を停止いたしました。(…へんしん?へんしんするって…?えっいくら嬉しくなったからって変身するってそれどういう…?えっ高度な謎かけ…?)とぐるぐるしていたところ、「ねぇ…返信…どうします?」と、ここでようやく繋がりました。返信ですね!なるほど、納得!
 内部事情にて恐縮ながら学芸員アドレスとご注文を受ける代表アドレスとが別になっているため、学芸員から何かしら直接お返事をしますか?という確認をしてくださっていたのでした。それもすごいお心遣い…!これぞ仕事のできる感じ…!!
 「アッ返信か!しますします!!」と、慌ててお返事をしたいっぽう(嬉しくなると何かに変身できるところまでが学芸員の能力、か…)とまだ変な沼に片足突っ込んでいるのをかわいそうな子と思われたものか、そのあとそっとチョコレートをくれました。すみません…朝一番だったものですから脳のはたらきが追いつかず…

 そうして有難くチョコレートをもそもそいただいて糖分を補給した結果、やはりご返信はしないことにいたしました。ちょっと褒めたからってなんかすごいテンションで突然これまでやりとりしてない知らないひとからお返事きたよ…!と気持ち悪く思われては困りますもので…。メールの形にこそいたしませんでしたが(担当者からはご返信差し上げております)あるいは何かに変身しないといけないのかもしれない、と惑うくらいに喜びましたこと、この場を借りてお伝え申し上げます。そのあたたかいお一言、館の全員に届いております。
 
 ↑各館で無料配布しておりますオシャレ小冊子「文化の道草」にも載ってます!
  オシャレ小冊子の誌面を邪魔しない『新世帯』のポテンシャル…!! 





そこにあるわけ
  2017.2.10

 1月27日付でご報告申し上げておりました康成邸から発見された秋聲筆書幅につきましてご紹介する記事、昨日北國新聞さんローカル面に掲載をしていただきました!ありがとうございます!
 また、記者さんのお顔が写っておりますので公開は控えますが、この欄にて記者発表の様子を撮影してくるのわすれた!と書きましたら早速ご参考まで~と当日の写真をお送りくださいました川端康成記念会理事・水原園博氏(資料発見者)にもこの場を借りて厚くお礼を申し上げます。おかげさまで館の記録が増えました…!
 
 記事では、康成が秋聲からもらった書幅の来歴についてご紹介をさせていただいているのですが、所詮記念館なりに書き直したものに過ぎず、康成の随筆「落花流水」を直にお読みいただければそれがそのまんま書いてございます。
 今回発見された書幅の一点、秋聲揮毫の「大宮の…」は日本文学報国会により制作された「愛國百人一首」に選定された第二首の和歌。太平洋戦争下、国民の愛国心を高めるために古今の和歌を集めてつくられたもので、当時その宣伝のため、著名な文士たちに各一首を書かせ、百貨店で販売したそうです。康成が個人的に揮毫を依頼したのがタイミング的にちょうどそのころで、書の内容にまで注文をつけなかったために秋聲はおそらく当時何度も書く機会のあったこの和歌を書いて康成に贈った、というわけ…(そこに気遣いがあったのか単に無頓着なのかはわかりません…)。
 随筆によればこの百貨店企画に康成も参加していたそうで、ただ康成の書いて出品したものと、仲良しの横光利一氏のものにつきましては、彼らを昔からいろいろと援助してくれている菊池寛先輩がこっそり買い上げてくれたそう。売れ残ったらみっともないから!ということだそうですが、ちょっと菊池寛先輩かっこよすぎではないですか…!とうぜん自分からはそんなことを言いません。康成もあとでそれをどなたかから伝え聞いたそうで、お礼も言えなかったと書いています。
 書ひとつとっても物語それぞれ。当館も何かにつけお世話になっている菊池寛記念館さんのほうでご所蔵かどうかはわかりませんが、もし菊池家に二幅あらばそれはそんなことだそうです。ヒー!ドラマ~!!
 


  


少なくとも歯の類ではなさそう
 2017.2.8

 きのうのオレンジ色の、生まれたのか置かれたのかも不明ながら、奥歯の神様のお仲間である以上、名前をつけてさしあげねばなりません。オレンジだから柑橘系?とも思われましたが、それにしては形がいびつ…と、ふと降りてきたのが柘榴(ざくろ)です。いま準備中の次回企画展にて、秋聲長男一穂氏が徳田家に植わっていたという柘榴の木についてしばしば述べておられることを思い出しました。当然同じ家に住んでいますので、その木については父秋聲も作品のなかに書き記しています。
 徳田家の植栽仲間といたしましては、犀星さんから贈られたという最強のエピソードでもってスターの座をほしいままにしている竹やシダなんかがありますが(ご健在)、柘榴もご一家にとっては思い出深い植物であったよう。残念ながらその木はもう枯れてしまったと一穂さんが書いていらっしゃいますが、思いついたこの機にひとつ活躍を場をつくってさしあげたいところ…。
 柘榴…柘榴ね…柘榴って…?とおぼろげには描けるソレの外観を確認せんとまず参照いたしましたのは現在展示中の秋聲全集装丁です。植物といえば画像検索より俄然徳永春穂氏!
 そしてやはりちゃんとございました、ありがとうございます。第3期第33巻の装丁に柘榴が使われておりました→

 アッほらお色味の感じも意外と遠くないっぽい…!?
 
 そんなわけで、呼び名がないと何かと不便ですので、今日から奥歯神のあいだにはさまれたあのちょっとファンキーなアイツを仮に「ざくろくん」とお呼びすることにいたします。ある日急にパカンと割れて中から赤い実がこぼれだしていたら「ほぅらやっぱり柘榴でしたよ!!」と、すぐさまこちらにてご報告をさせていただきます。
 ちなみに柘榴が使われている第33巻は長篇小説「闇の花」一編で占められているという贅沢巻。本作の超貴重な秋聲自筆原稿を石川近代文学館さんよりお借りして展示させていただいておりますので、ご観覧のおりには柘榴の33巻コーナーをめがけてどうぞ。



 


増員
 2017.2.7

 


 気付けば仲間がふえましたァ~~~!!!

 オレンジのやつ置いたのだれですか~!!!!








WAKO
   2017.2.5

 昨日は全集展第3回目となるギャラリートークを行いました。ご参加くださったみなみなさまに心より感謝申し上げます。

 午前の部終了後、わりとよく来てくださるお客さまからのお電話で「午後の解説って前回と内容同じ?」と訊かれたもので、「アッそうです。初回に聴いてくださったやつの最終回です!」と元気よくお返事をして電話を切って間もなく、なんとはなしに当HPのイベントページを見て戦きました。まだ3月4日がある…!
 思わず「アッ!!」と大きな声が出てしまい、お隣の職員をびっくりさせてしまったのです。午前の部を思いっきり「もう今日でおしまい」のテンションにて執り行い(だからといって聴かれるほうには何ら影響がないかと存じます。ひとえにこちらのモチベーションの問題です)、フゥ早いものであと1回か…とどことなくしんみりしながら階段を下りてきての最終回じゃなかった問題…。来月4日、いい加減しつこいですがまた同内容にてよろしくお願いいたします。
 なお、ギャラリートークに予約は必要ございません。同日の11時あるいは14時頃に館内のどこかにさえいていただければ、こちらからお声がけをして廻ります(映像をご覧になっている場合にはそっとしてしまうかもしれません!)。本日午前の部は47分、午後の部は48分と、初回には1時間強かかっていた解説時間もだいぶん目標の「40分程度」に近づいてまいりました。最終日は40分きっかりになるよう、がんばって無駄を省いてまいります。

 ちなみに午後の部でまくしたてすぎて脳に酸素が足りなくなった結果ド忘れをした、八木書店版『徳田秋聲全集』完結に対して贈られた第54回菊池寛賞正賞の置時計は「和光」のものですね。オメガは第1回菊池寛賞正賞の懐中時計のほうでしたね。盤面にふつうにWAKOとくっきり書いてございました(←展示ケース左端っこにある金色のもの)。

 そう迷ったら資料を見る、基本的にはそこにすべて書いてあるのでさっきの自分に言ってあげたい「慌てるなかれ」。ついでに時間も現在時刻に合わせてございますので(話長いな…今何時かな…)と気になりだしたら、さも展示品を見るような風をして置時計、ご確認ください。





節分祭
   2017.2.4

 きのうはひがし茶屋街にある宇多須神社さんの節分祭でございました!場所柄、こちらの節分祭にはひがしの芸妓さんが大集合。芸妓さんによる豆まきが恒例となっており、毎年多くの方々が詰めかけます。
 先日芸妓さんを間近に見、さらにお茶の先生宅で大豆のお菓子をいただいてぐんと高まっていた節分気分、しかし当日はなんやかんやございまして職員は誰も行かれませんで、今年の様子はみなさまにお見せできないや…館に福は来ないや…と暗い気持ちに沈んでいたところ、一通のメールが届きました。

 添付写真「今年の節分でゲットしたお豆」として、なんとご近所の写真家さんから福を分けていただいたのです!ありがたや!

    ご覧あれ!いつにない雰囲気をまとうこの一枚!→

 こちらからとくにお願いしたわけではないのに、なんたるグッドタイミング…!すぐさま、明日の寸々語に使っていいですか!?とお願いすると、こちらもご快諾をいただきました。重ねてお礼申し上げます。

 この宇多須神社、さいきんでは忍者が出没するということで話題になりました。いつかも企画展のチラシをお届けにうかがった際、ムム人影!?となって振り返りましたらそこに忍者がいたこと…ちょっとお写真がすぐに出てまいりませんが、こんな素人に姿を見られ、あまつさえ写真にまで撮られてしまうだなんてその能力のほどはいささか疑わしく…(いや11月の写真…いま確認しましたら、個人的に携帯を失くして復元できなかった期間のものでした。うっかり者だけれども、実は想像を超えるすごいスキルを持ったヤツなのかもしれません)。
 とかなんとか言いながら、宮司さんのご許可を得て地元の大学生さんらのグループで設置した忍者のようで、全部で3人いるそうです。たぶんこちらと目が合ったサイバー担当の彼はいちばん下っ端で、あとの2人はおいそれとは見つからない忍の先輩なのでしょう。芸妓と忍者の集う神社、春は桜の名所です。
  


 


寒糊炊き
  2017.2.2

 先日、石川県文化財保存修復工房さんによる「寒糊炊き」なる体験イベントにお邪魔してまいりました。工房さんといえば、昨年当館で開催いたしました黴にまつわるトークイベントで、黴の文化財修復利用についてお話しくださった当館にとって2人目3人目となる黴先生がいらっしゃるところ。うかがいましたら、工房の方々が修復作業に使用する「寒糊(かんのり)」をぐるぐるまわしておいででした。以前のお話にあった、これが今年の糊ですね…!

 工房さんでは毎年大寒のころに今年の糊を炊かれるそうです。そうしてそれを壷に寝かせておくと、次第に黴がはえてきて、真っ黒い黴が表面を覆えばそれは良い糊、黄色い黴が生えてしまうとあまり良い糊にならないという…。文化財は繊細なのであまり粘着が強すぎてもよろしくなく、お軸なんかは巻いたり解いたりしますのでそれに耐えるしなやかさが必要なんだとか。そうしてお味噌よろしく十年かけて熟成を見守り良い糊を育ててゆくというまさにその始まりを見学させていただいたわけです。

 糊づくりには、兼六園に隣接する金澤神社の金城霊沢から「寒の水」なる糊炊き用の水を拝借するそうで、イベントでは宮司さんから金城霊沢の由来などをお聞きしながら、水をくむところも見せていただきました。
 覗き込むと水底にたくさんの小銭が沈んでおりましたが、本来投げ込んではいけないそう。ここにお住まいの龍神さまが金属を嫌うため、投げ込むと祟りがあると言われているとのことですから今後拝観のおりにはお心に留め置いていただけましたら幸いです。トレビの泉的に投げ込みたくなる気持ちをぐっと押さえ、天井に描かれた龍神さまにご挨拶くださいませ(暴れださぬよう網がかかっているそうです。おとろしや…!)。
 糊をぐるぐるされている隙間に、黴先生②と黴イベント第2弾のありやなしやをこちらでもこっそりご相談…退出の際、作業中の黴先生③にお声をかけると、壷の表面から剥ぎ取った真っ黒い黴を片手にいい笑顔でお見送りくださいました。





おやつレポート その16
 2017.2.1

 今年もまたお世話になります、ご近所のお茶の先生からすてきなお菓子のお福分けをいただきました!毎度ありがとうございます!
 ただ箱を開けてからそれがお菓子であるとわかるまでに少々タイムラグがございまして、パッと見た瞬間(イ○シュウマイかな?)と思ったそのまんまが口に出てしまった美への理解と堪え性のない残念な職員ですみません…!
 「タンチョウです」と言われてはじめて、脳内で蒸されていたイカが華麗な鶴のはばたきに変換されましてございます。アッこのあたまの…!赤いの…!そんなわけで正解は丹頂鶴でございました。ちょっとだけ待てばよかったものを、脳と口とが直結しているこの回路をなんとかすることを今年の目標といたしたく存じます。

 そんなお茶の先生と、本日毎年恒例の春のお茶会の打ち合わせなんかもしてまいりまして、次回企画展チラシあたりにはきっとその情報も刷り込めることでしょう。毎回このためだけにオリジナルで提供してくださる名店「吉はし」製、今年のお茶菓子もどうぞお楽しみに。
 お菓子というと秋聲先生はなにせ餡子と餅気のものがお好きとのことで金澤文豪カフェあんず(通称「三文豪カフェ」)さんでは「秋聲セット」として餡子とお餅のお菓子を提供してくださっています(それも鶴がモチーフのようですね!)。
 秋聲先生曰く「菓子は自分の郷里の金沢が、田舎にしては不思議に発達してゐるやうで、春夏秋冬にわたつて季節々々の旨い菓子の種類が頗る多いので、東京の菓子には一向驚かない」(「大学界隈」昭和2年)そうですが、お菓子のことひとつ書かせてもどうしたってちょっぴり辛口…(先生、金沢にも東京にもちょっとずつ失礼ですよ…!)と勝手にこちらの胃がキュッとするのです。これじゃあカフェの宣伝文句にも使っていただけないや…!と渋く思ういっぽう、まァ一応褒めてるし、「自分の郷里の金沢」って言い切る感じが嬉しいし、何より秋聲らしいし、よしとしまーす!とすぐにフニャッとして甘やかしてしまう記念館一味です。
 新暦では本日がお誕生日ですね。何度でもおめでとうございます。
  
 



記録更新
  2017.1.30

 きのう展示解説をご依頼くださったお客さまと館内をまわらせていただき、前回の記録を上回るおよそ2時間半を費やさせてしまったこと、事務室に帰って椅子にすわった瞬間にどんとでた腰の疲労感によりようやく思い知り、たいへんな反省にいたりましてございます。
 
 ご遠方からというに貴重な午前中をほぼ当館にて使わせてしまい申し訳ありませんでした。しかも立ちっぱなしの2時間半…そろそろ自重をせねばなりません。40分が見えたあたりで受付からベルを鳴らしてもらわなければなりません。そんなときのための吹き抜けです。2階で悪口を言うと1階まで聞こえる場合がございますので何卒ご注意ください。

←秋聲先生ご愛用のチンベル(再現書斎にて展示中)


 おふたりさまお付き合いくださいましてありがとうございました。また、最後にショップにてどうしたって本を売りつけようとする悪徳商人ぶりもそろそろ改めなければなりません。お帰りになったあと、やっぱり買えばよかった!!となって当HPより通販を利用されますとホラ…送料がかかりますから…。
 また、お買い上げくださった本を入れるため、受付さんが秋聲記念館印入りのビニール袋を出した際にいただいた「ワーイ!」との歓声、当館一生わすれません。いまだかつて秋聲印の袋をお渡しして「ワーイ!」との歓声があがったこと、あったでしょうか?(あったかもしれません、すみません個人的に耳にしたのが初めてだったものですからずいぶんとハッとしたのです)。それもこれも今もどこかで戦っている秋声くんのおかげさまと、感謝を深めております今日このごろです。
 
 そんなわけでおかげさまでさいきん解説のご依頼がちょこちょこと増えてまいりまして、テンションがあがって無駄に長時間お話ししてしまう学芸員が悪いのですが(今後は公約の最長40分を心がけます)、嬉しい悲鳴にてちょいとブッキングに無理が生じてきておりますもので、たいへん申し訳ないのですがご依頼の際には一週間ほど前にご連絡いただけましたら幸いです(そしてご希望に添えませんでしたら重ねて重ねて申し訳ございません!)。
 

  


第4回 秋聲とお座敷あそび
  2017.1.29

 おかげさまでつつがなく終了いたしました!秋聲とお座敷あそび、新春バージョンです!(松の内にはちょっと遅し…!)

 お座席は完全なる予約制でしたけれども、知らずにたまたま来館された方々も多く、思いもかけずザ・金沢を満喫していただけたかと存じます。毎年恒例の行事にて、はや4回目だというのに会場設営から進行から毎度ワッチャワチャで恐縮です。開会前には特別ゲストとして急遽来館された山野金沢市長までもが一緒になって床に這いつくばり畳の位置を調整するという、決してあってはならぬ光景が繰り広げられておりましたこと…県外の方にはもしやお分かりにならなかったかもしれませんが、そんなわれらが市長さんでございました。いつだってワッチャワチャな館ですみません、ほんとうにありがとうございました…!
 そんな不安な感じで始まった会ではございましたが、ひとたび場を芸妓さんたちにお渡しするとそっからがすごいのです。一気に空気ががらりと変わり、いつもの展示室がお座敷空間になるのです。かといってツンとされているわけでなく、舞が終わればたいそうフランクにお太鼓あそびにお誘いくださるうえ、お客さまが体験されている様子を、お客さまカメラで記念撮影までしてくださるのです。芸妓さんとスマホ、夢の共演!! 
 今回は江利加さん、美月さん、涼香さん、かつ代さん、佳丸さんのご出演で「宝船」(←このあたりに新春感)「さわぎ」二曲の演奏・踊りとお座敷太鼓のご披露がありました。お太鼓あそびには三組のお客さまが誘い出されて、芸妓さんとともに太鼓を打ち鳴らしておいででした。なにせ本当のお座敷とちがってお酒のふるまいがございませんもので最初は恥じらっていたお客さまがたも、きっと忘れがたい良い思い出としてお家にもって帰っていただけたことでしょう。
 ありがとうございました~といって芸妓さんがふつうに歩いて帰って行かれる感じもひがし茶屋街と隣接する当館だからこそ見られる光景…東料亭組合さん今年もありがとうございました!





新発見資料
 2017.1.27

 ご無沙汰しております。みなさまお変わりございませんか?寸々語、沈黙の間、東京方面へと出張に行ってまいりました。今回は、次回企画展のための資料借用と、先日メディアを賑わせました、鎌倉の川端康成記念館から発見された新資料の共同記者発表に紛れこむというお仕事です。
 企画展が終わったといえ、やはり今年度中はどうにも康成から離れられないようで、今回見つかった文士たち揮毫の書幅約60点のうち2点が秋聲先生によるもの。いずれもその来歴は康成自身が随筆に記してくれており、康成展開催のおりにも、おそらく2点はおありとのことですからもしお心あたりございましたらご一報ください~と遠慮がちにご依頼申し上げておりましたなんとその2点の新発見!先週康成記念会さまからお電話いただき「2点でてきまして~」と言われた際には「あの2点ですか!?」と食い気味に反応をしてしまったのです。その2点です。たしかにあった、あったのです…!
 そんなわけで、記者発表の席では記念会さまのお気遣いにより秋聲筆の書幅についてすこしお話もさせていただき、そのような晴れがましい場を初めて体験させていただきました。記念会さまありがとうございました。

 金沢関係では、秋聲のほか犀星さんの色紙も発見されまして、地元新聞にも大きく取り上げられました。秋聲のほうのものは、その文面自体はさして珍しいものではありません。
 「大宮の内まで聞ゆ網引すと網子ととのふる海人の呼声」「古き伝統と新しき生命」と、当館にも収蔵があるものですが、前者は康成本人が秋聲に依頼して書いてもらったもの、後者は康成本人が鎌倉の古書市で購入したもの、という収集の過程に大きな価値がございます。そのあたりまた場を改めましてご報告をさせていただきますが、秋聲サイドといたしましてもたいへんな新発見にて興奮しすぎた結果、記者発表にまつわる写真を何ら撮ってきませんでしたので、翌日うかがった徳田家にある康成揮毫の記念碑近影でご容赦ください(平成29年1月25日現在)→

 帰りの新幹線でも、ふと顔を上げましたら車両前方にある電光掲示板でこの発見の報が流れており、慌ててカメラを構えましたが間に合いませんでした。こんなこともうないかもしれないのに…!とひとり身悶えました。  





卯辰山碑に聴け秋の声(Ⓒ佐藤春夫)
  2017.1.22

 先日よりちょこっとだけメディアづいておりまして、文庫本の記事を新聞に載せていただいたり雑誌社さんが取材に来てくださったり、地元のケーブルテレビさんが撮影に来てくれたりしております。ありがたやありがたや…。
 と言いながらケーブルテレビさんは当館だけのことでなく、金沢の三文豪を順繰りに取り上げてくださる企画の一環にて、1月は犀星月間(ただいま放送中!)、2月は秋聲月間、3月は鏡花月間と、月のうち繰り返し館とその人とを紹介するミニ番組が放送される予定です。
 そんなわけでその撮影のためご来館くださったのですが、その前に朝一番で秋聲文学碑を撮りに卯辰山へ登ってこられたそうで、撮影隊のみなさまのまぁお体の冷え切っていること…!なんだかそんな山頂にちかいところに建っちゃっててごめんなさいね…!という気持ちになりました。お寒いなかわざわざありがとうございました。
 碑の除幕式も昭和22年11月18日(秋聲五回忌)の寒い日でした。たいへんな雨風だったそうで、式に出席してくれた林芙美子さんが「つむじ曲がりの秋聲が余計なことをするなと思ったのよ~」と笑ったというエピソードが伝えられています。いまこれだけ聞けば、ちょっとほっこりするいいお話なのですが、この話を伝える建てちゃったほうの実働部隊・加藤勝代氏(当時北國新聞記者)はその言葉に内心ドキリとしたそうです。自分たちは秋聲の望まぬことを、要らぬことをしてしまったのだろうかと…。

 そんな葛藤は何をするにつけ正直館といたしても常に胸の奥底に抱えていたりもするのですが、今や秋聲先生のお声をきけないことをいいことに、いつもいまそこにあるテンションでもってとりあえずやらかしてしまって後でそのご遺影に陳謝することになるのです。
 今日も今日とて、秋聲先生テレビですよ!テレビ!!とはしゃぎまわってすみません。ご本人のお気持ちはどうあれ、とにかくたくさんの方に見て知って触れていただきたいものですから…!






「ごミュ印帖」新発売!
  2017.1.21

 金沢には大小さまざまな美術館文学館が雑に数えて20館強、それもさほど遠くない位置関係で林立しています。当館といちばんのご近所はなんといっても川をはさんであっちとこっちの某K記念館さんですし、同じく三文豪のひとり・室生犀星記念館さんへもさくさく頑張って歩けば一時間ほどで行けなくもありません(お天気がよければですね!バスをお使いくださいね!)。その間にも文芸館やら蓄音器館やら寺島蔵人邸やら中村記念美術館やら鈴木大拙館やらふるさと偉人館やら老舗記念館やら前田土佐守家資料館やら、とにかく似たような規模の施設がたくさんありますもので、脇目もふらずガムシャラに犀星館まで歩いてゆけば一時間で済みますが、アラアラこんなのもあるよ…とちょっとでも脇目をふろうものならそれこそ数珠繋ぎにあれよあれよとどこぞかへ連れてゆかれ、何の星座を描いているのか、犀星記念館までの道のりが結果4泊5日くらいになってしまう恐れもございます。おまけに湯涌方面まで視野に入れれば軽く一週間くらいは必要になるのではないでしょうか。一度では決して済ませられませんので、二度三度、季節を変えて金沢旅行、計画していただけましたら幸いです。
 
 そうしていろいろな館を訪問される際には、是非本日新発売の「ごミュ印帖」(3種・各1620円税込)を携え、各館にあるスタンプを集めて金沢の思い出となさってください。神社仏閣で御馴染み「ご朱印帳」のミュージアムバージョンです。画期的です。「歌ひとつ覚えるたびに星ひとつ熟れて灯れるわが空をもつ」(Ⓒ寺山修司)の精神にて、ご利益はひとつひとつと星が繋がり徐々に明るく賑やかになってゆく皆様方各人の星座もつ空ということで何卒…。
 そんなステキなお品ですが、何せ言いにくいのが難点で「今日からごむいんちょう発売ですね!」「ぎょみゅいんちょう、ここでいいですか?」などと朝から職員誰ひとりとして正解をたたき出せずにおります。今のところ強引に押し切る方向で暗黙の了解としておりますが、あるいはページが全部埋まったら、徳が積まれてスラッと言えるようになるのかもしれません。
 


 


「新世帯」新発売!
 2017.1.20

 フリなのかそうじゃないのか、微妙にその制作の感じを匂わせながらその実、作っている記念館事務室周辺にしか匂ってこない程度の地味な宣伝をしておりましたオリジナル文庫の新作がようやく本日発売となります!お待たせをいたしました!

 記念すべき第10弾は『新世帯』と題しまして表題作およびその他4編を収める中短編集です。既刊分のつづきとして短編傑作集3とするには「新世帯」などちょっと長めかな?これは中編の域かな?と迷った末に、5編を含む謎の『新世帯』となりました。これも先日すこし話題にのせておりました「犠牲者」、関東大震災時にたまたま金沢に帰っていた秋聲の心情を描く「不安のなかに」などもようやく文庫化が果たされ、これを機にすこしでも多くの方のお目に触れることをただただ願うばかりです。
 今回もうひとつ特別なことといたしまして、カバーに超一流のデザイナーチームをお迎えすることが出来ました!ひがし茶屋街でお店を構えていらっしゃる彫金師・竹俣勇壱氏がヨッシャ秋聲で天下とろうや!!くらいの勢いで一肌も二肌も脱いでくださりコーディネイトを担当(表紙スプーンが竹俣氏作です!)、その名のもとに料理家・渡辺有子氏、写真家・雨宮秀也氏、デザイナー・山口美登利氏、そして帯には塗師・赤木明登氏と、それぞれが超一流の〝チーム竹俣〟が集結のうえ、期間限定の〝チーム秋聲〟として素晴らしい才能をこの本にぶつけてくださいました。

 いちおう二人分用意された食事…だけれどもその食卓はどこか寒々しく、背表紙によって分断された二人の視線…現代版「新世帯」です。モダン、モダンです…!秋聲文学の現代性を見事を表現してくださったといって過言でありません。
 これまで館のなかだけでコチョコチョと狭く小さく行っていた仕事にたくさんの方がかかわってくださるようになったことも大きな喜びの一つです。この仕事がより多くの方に届きますよう!本日より通販も開始です!

                販売準備感すごい→






和傘をめぐるOTOKOTACHI Part2
  2017.1.19

 先日、標題の展示会を観覧してまいりました!以前の話題にもあげておりました企画展「ひがし茶屋街と秋聲」で、展示室のディスプレーにご協力をいただいた和傘作家の山田ひろみ先生と職人仲間五人衆による展示会です。
 そのおひとりとして以前の「黴を語る」イベントに講師としてお越しくださいました森川千春先生も生きた黴を出品されており、おかげさまで大好評をいただきました黴イベント第2弾のありやなしやを出先でこっそりとご相談…あ、ええ、生きた黴です。

 なら死んだ黴というのを見たことがあるかと言われるとちょっとモゴモゴしてしまいますが、森川先生の出品されている黴たるや、センチュウなる細長い生き物を捕食のためつかまえているまさにその場面を顕微鏡でお客さんに見せるといったこれぞまさに生きた展示…!旭○動物園的な・・・!!(ちなみに平成18年、八木書店『徳田秋聲全集』の完結に対し授与された第54回菊池寛賞の同時受賞は旭山動物園とご存じ「徹子の部屋」です。徹子さんは秋聲原作『縮図』の舞台にもご出演歴あり・・・)とにかく黴のもつそんなアグレッシブな一面を見せつけられてはあえて〝生きた黴〟と表現したくなるというものです(ビューンとは動きません。黴の仕掛けた罠にセンチュウがひっかかってウゴウゴしているさまが見えます)。
 アアアアつかまえていますね…!と思いがけず大きな声が出てしまい、優美な和傘に酔いしれている他の皆様方には申し訳のないことをいたしました。しかも森川先生はそんな黴ブースのいっぽう、手作り万華鏡コーナーをも左手に抱えていらっしゃるのだからちょっともう頭の整理がつきません。と言いながら黴と万華鏡だなんてまるで秋聲と某K花先生のようですね…実にうまいこと出来た世の中ですね…

 同展は22日(日)まで。10:00~18:00(最終日は16:00まで)、石川近代文学館さんお隣しいのき迎賓館にて入場無料です!





親心子心
 2017.1.15

 前回の記事中、「心馳せ」という言葉を変換しようとして「子転ばせ」と出てきたときには愕然といたしました。よりによっていたいけな子どもを…!非道というほかありません。
 当館で子どもといえばまずは秋聲ご長男・一穂さん。先日からこちらに何度もご登場いただいておりますこの方の生涯と業績を、次回3月からの企画展でご紹介する予定です。
 秋聲の出世作「黴」にその誕生前後の様子が描かれていることはよく知られたところですが、それがなかなかな書きざまでありますもので、大人になってご自身で読まれた際にはかなり複雑な思いを抱かれたようです。くわえて一穂さんも父と同じ小説家の道を志し、そうすると出てくるのはやはり二世問題…偉大なる父・秋聲の影があまりにも大きいことは想像に難くありません。
 秋聲没後はその家と作品と遺品を守り、そのご尽力のおかげさまで当記念館が建ちました。いかに偉大な人物でも、いかに顕彰したくっとも、なにせ資料がないことには記念館は建ちません。その点、秋聲本人が約40年を暮らした家自体がそのまま残されているだなんて、数多いる文豪のなかでも超のつくレアケース!そんな一穂さんの思いを継承し、今もその家屋にお住まいでいらっしゃる秋聲の子・一穂さんの子であるところの名誉館長に、いろいろと資料のご相談をさせていただきながら毎度の企画展が開催されているわけです。
 秋聲先生はああ見えて子煩悩でいらっしゃるので、出来るだけ子の転ぶことのないようアレやコレやと思いをめぐらせている様子が作品に溢れんばかりに描かれています。いや愛されていることはわかるけれども、そうして何でもかんでも書かれることで子としては一回転ばせられている部分もあるんじゃないかなどうかな!と外野はそう勝手なことを思ったりなんだりもいたしますが、結局のところ親子の愛は各ご家庭それぞれ。次回展示でその形、感じてみてください。



 


待ち合わせ好き
  2017.1.14

 きのう受付まわりで業者さんとお話ししておりましたら、受付さんからちらちらとものすごく視線を感じ、あらうるさかったかな…とちょっとシュンとしたりもしていたところ、業者さんがお帰りになったのち受付さんからチョチョイと呼ばれ、叱られることを覚悟しながら寄っていって「さっきね、若い女性おふたり連れが来てね、先に入ってらしてね、そのあと男性がおふたり来てね、待ち合わせだったんですよ。ここで、待ち合わせ」との報告を受けたときのこちらの心持ち、おわかりいただけるでしょうか?

 「ま、待ち合わせ…!!」
 
 この心を一言で表すならば「ズキューン!!」です。なんと素敵な響きでしょうか、待ち合わせ…!あとからいらした男性がお連れさまを探しているふうで、受付さんは我慢しきれず「待ち合わせですか!?」とやや興奮気味に訊いてしまったというから、当該のお客さまにはちょっと不審に思われたかもしれません。が、そのときの受付さんの目はきっとどこの受付さんよりキラキラしていたはず。
 待ち合わせ場所になれる喜び×文学館で待ち合わせる素敵さ=ズキューン!!です。それも、つねづね待ち合わせに使っていただけるような館でありたい、と周囲に洩らしていたところのそれをきちんと拾って懐に入れていてくれた受付さんの心馳せ×決して叱ろうと思って視線を送ってきていたわけでなく「すぐ言いたかったけどお話し中だったから…」との二段構えのお心馳せ…!
 
 もしかしてものすごく伝わりにくいお話をしているかもしれません。単純に当館職員が勝手にうれしいだけの出来事なのですが、騙されたと思ってぜひ今度記念館で待ち合わせをしてみてください。わくわくした目で受付さんがこっちを見てきます。
 
←待ち合わせに最適なロビーもありますゆえ!!





たぶんあと2回は行く
   2017.1.11

 年末にこの欄でご紹介した石川近代文学館さんの企画展「作家と石川近代文学館―文学館を支えた人たち―」を観覧してまいりました。
 いやいや圧巻!こちらが勝手な康成脳でうかがったせいもありますが、しょっぱなから秋聲生誕百年記念展を訪れている康成先生のお写真だなんて、そんな…!もうちょっと助走を!助走をください…!!
 この時点で早くも武者震いが止まりません。その後も惜しげもなく展示されている、秋聲のお軸に見入る康成、秋聲ご長男・一穂さんと談笑する康成、一穂さんご次女・章子さんといままさにテープカットをせんとする康成、とそれを後ろから見守る一穂さん…などなどめくるめく超貴重アルバムコーナーに、当方まったく川端家あるいは徳田家のお身内ではないながら目頭も胸もギュッと熱くなる思いがいたしました。防犯カメラに終始ブルブルぶれて映っている不審人物がおりましたならそれが秋聲記念館です。サーモグラフィでやけにカッと赤く映っている人物がおりましたならそれも秋聲記念館です。
 あまつさえ伊藤整日本近代文学館理事長とともに文学館設立について県知事に陳情中のお写真まであり、さすが日本で二番目に古い文学館の記録&保存魂はぬかりありません。当館などいつも終わってからアッ写真撮ればよかったぁ~となってばかりのうっかり魂で出来ておりますのでこれは見習わなければなりません。その一瞬は二度と帰ってこないのです。
 その他当館館長の若かりし頃のお写真にワッとなるなど、ちょっとローカルな楽しみ方をしてしまいましたがそうでなくともさすがの所蔵品、しかも初公開となる品々が多数お目見えしておりますので是非是非ご観覧くださいませ。新保千代子初代館長の熱意に突き動かされ、協力を惜しまなかった文学者たちの錚々たる顔ぶれ(自筆資料)がそこにあります。



 


受付終了
  2017.1.10

 本日朝9時、お座敷あそびの参加申込み受付を開始いたしました!と同時に終了いたしました!まさに怒涛の、といった表現が適当でしょうか、9時と同時にプルルルルの嵐…!!受話器を置いたら取る置いたら取るの繰り返しで息つく間もなく定員に達し「受付終了ですッ!!」との怒号が事務室内に響き渡りました。お申し込みくださった方、ありがとうございました。朝イチだったものですから発声の準備が間に合わず、カッスカスの声でご対応申し上げましたこと、何卒ご許しください。
 また先着に間に合わなかったみなさま、申込み不要で当日立ち見可です。ただ何せ狭い館内ですので万一混乱が予想される場合には、入館制限をかける可能性がございます。何卒ご了承ねがいます。
 そんなわけで午前中しばらくは先着15名様で締め切ったあとのコール音にたいそう怯えて暮らしていたわけですが、16名様目になろうかというお電話がかかってきた際、お断りせねばならないという申し訳なさにビクビクしながら出て相手が当館館長だったからといって「なんだ館長かぁ~~!」だなんて部下としてあまりに非礼なふるまい、電話も落ち着いた午後になってようやく反省しております。
 なに?なんかあった!?と、いつも優しい館長は今日も許してくれました(たぶん)。

 いつかの茶屋街展の際にもご紹介したような気がいたしますが、秋聲先生のひがし茶屋街での目撃談が井上雪さん『廓のおんな』なる書籍に書かれています。秋聲先生のお好みは、牡丹の花のような華やかな芸妓さんでなく、襖の陰に隠れているような幽霊みたいな芸妓さんであったそう。そんな女性の背後にあるストーリーに何より関心が向いたのかもしれません。
 現在のひがし茶屋街には14名の芸妓さんがいらっしゃいます。どなたがご出演になるかは当日のお楽しみ。

 お座敷にあってさえ基本ポーカーフェイスの秋聲先生はいっつもつまらなそうなお顔をしてらしたとのこと、記念館一味といたしましてはそんなシュウセイズムも継承したいところですがやはりそこばかりはとても真似できそうにありません!





左義長2017
  2017.1.9

 本日、ご近所の宇多須神社さんで左義長が行われました。地域により「どんど焼き」などとも呼ばれるそれ、金沢では「左義長(さぎちょう)」と呼ばれております。

 年末年始にかけ玄関先にかけておりました注連飾り(当館は亀/くらしの博物館2016年12月26日ブログ参照)をいちばんの新人職員に燃やしてきてもらいました。ただの使いっぱしりではありません。なかなか自分の住まう地域以外の左義長なんて見る機会もないでしょうから、との先輩職員による気遣いです。寒いからとかでは決してありません。

 さて、寒いといって、今年の金沢もスキーヤー達のために雪山の状況を心配する秋聲先生のお心持ちが意外すぎるでお馴染みの「雪のない春」(秋聲随筆題・昭和7年1月)でございます。毎年そんなことを言っているような気もしながら、いつかは雪のなかをさくさく宇多須神社まで歩いた記憶もございますので、そんな年ばかりではなかったのでしょう。毎年のことながら毎年わすれて2月に入ってドカンと大雪、毎年あたふたするのです。
 毎年のことといえば、ちまちまとお座敷あそびの準備を進めるなかで、アレ?畳は?何枚いるのだったかな?と過去の記録写真を見返したりなんかしております。毎年のことなのに覚えられない鳥あたま…酉年だけにね…フフ…(明日より受付開始です!)。ちなみに当館のお座敷こと秋聲先生の再現書斎は六畳間。芸妓さんをお招きするにはちと狭いがために簡易畳をサロンかどこかに設置予定です。それはそれとして新年を迎えましたので、この書斎のお軸をかけかえました。「元朝の心寂(すさ)びぬ午(ひる)さがり」、せっかくの秋聲自筆ですが極めて字が小さく肉眼での判読はまず不可能かと存じます。だったら見えるようにすべきところ、そのあたりが書斎床の間を縁側から覗き込むといういかんともその距離の埋めがたい展示構造の問題にして、結果狭いっちゃ狭い、広いっちゃ広い、伸縮自在の宇宙をはらむ六畳間です。





例年のくせに飛び込み
  2017.1.6

 各館のHPに生息する「展示日程の一覧(PDF)」ボタンの存在をお知らせしたそばからさっそくお詫びを申し上げねばなりません。当HPイベントページにいつのまにやら素知らぬ顔でアップされております「秋聲とお座敷あそび」、上記一覧に掲載されておらぬのでございます…!最終的にと言いながらぜんぜん最終的な情報でなかったこと、心よりお詫び申し上げます。

 何故載っていないか、単純に掲載締め切りまでに開催日の調整が間に合わなかったため…。いまスカッときれいに空欄になっているところへ「秋聲とお座敷あそび」飛び込んでまいりました。ただ、毎年のことながら座席は先着15名様限定という超狭き門となっておりますので、そもそもの情報の出し方が卑怯だったくせにその同じ口からまったく言えた義理ではないのですが「10日9時より電話受付開始」と、おのおの方お心に留め置いていただけましたら幸いです。またご遠方の方には重ねてお詫びを申し上げます。

 さて、お座敷あそび、ひがし茶屋街の芸妓さんをお招きして、ちょっと敷居の高く見えるそのあそびを気軽に体験してみよう!という催しです。ただの「お座敷あそび」ではお茶屋さんへ赴くのと変わりませんので「秋聲と」と無理くりタイトルにくっつけておりますが、とくに秋聲役の人とかはご用意しておりません。内容はいたってふつうのお座敷あそびながら、会場がお茶屋さんでなくまさかの秋聲記念館というところで、ひとえに秋聲先生と東の廓との海よりも深いご縁でもって実現している企画ですよ!秋聲先生の存在なくしてはいかにご近所だからとてお招きする義理のない、そうか!秋聲先生もかつて体験したところのそれであるか…!!とのアピールのための「秋聲と」です。もともと狭いサロンに畳をひいたりなんだりするせいで厳しい入場制限をかけておいてそのうえほんとうに申し訳ないのですが、もし当日16個目の座席あらばそんな気持ちでなにとぞ空けておいてくださいませ…。
 




あけまして
  2017.1.4

 おめでとうございます!

 長らくお休みいただいておりましたが、本日1月4日より秋聲記念館通常通り開館いたします。ちなみに定休日はございません。ふつう美術館博物館のたぐいは月曜休館がほとんどのところ、当館を含む金沢文化振興財団所属施設の多くは展示替えと年末年始のみのお休みとなっております(例外ございます、ご注意ください!)。
 そんなサイクルで生きていると、調べもののため元気に図書館いってきまーす!と出かけていって、まさかの玄関先で月曜休館の張り紙を喰らうといった悲しい現実に出会すことも多々ございます。ええ、つい先日の出来事です。そんなときには月曜休館かーい!!と思わず玄関先で叫びたくなってしまうのですが、自館の常識が世間のソレと思ってはいけませんね…他館さまのお休みを把握しておかなければなりません。

 とはいえご近所の文芸館さんですら張り切って電話をかけて、アレ?通じない…アッ火曜休館かーい!といまだに電話口で叫んだりなんかもしております。文芸館さんと江戸村さまは火曜が休館(村?)、大拙館は月曜休館、夢二と土佐と老舗と江戸村は年末年始もやっている…ここにプラス展示替え休館があったりなんだりしてもう最終的に各館HPのだいたい下のほうにひっそりとある「展示日程の一覧(PDF)」とのボタンを試しに押してやってくださいませ!月ごとの全館の休館ならびにイベント情報がざっとご覧いただけます。
        ↑コレ!!

 そんな便利なものもありながら、この欄では初めてご紹介申し上げた気がします。ただ各館のHPの雰囲気を壊さぬようにとほんとうに慎ましやかに生息しておりますので、薄グレーのボタン、大声をたてずにそっとさがしてみてください。

 と、そんなテンションで今年も活動してまいります。また一年、何卒よろしくお願い申し上げます。 




 

 

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