寸々語

寸々語(すんすんご)とは、秋聲の随筆のタイトルで、「ちょっとした話」を意味します。
秋聲記念館でのできごとをお伝えしていきます。





この夏次の秋
  2017.8.17

 8月15日付の「北陸中日新聞」さんの夕刊コラムに秋聲さん載ってますよ! とまさにその日メールくださった方があり、急ぎ確認いたしましたら、秋聲と漱石との通称「フィロソフィー論争」についての記事。そのメールを受け取ったその時、まさに、次回の漱石展に向け「ほっほ~漱石のフィロソフィは長音込みの〝フィロソフィー〟であったか~」などとパネル用テキストをバチバチ書いていたおりのことであったためびっくりいたしました。まだなにひとつとて世には出ちゃおりませんが、学芸員パソコンというごく小さな世界の片隅における活動のうえではなんともタイムリーであったのです。ご丁寧にご連絡ありがとうございました。
 このフィロソフィー論争、ざっくり言えば漱石が秋聲作品を批判したもの。これに対する秋聲の反論もまたなんといいましょうか苛烈っちゃ苛烈…。そのあたり、10月からの企画展でご紹介いたしたく存じますのでぜひこの夏が無理なら秋の金沢旅行、さっそくご計画くださいませ。ちなみに今年の秋聲忌は11月18日、ご命日どんぴしゃり。とりいそぎまして漱石展最終日ともなる11月18日に赤丸だけお願いいたします。

 とはいえ今はまだまだ宇野千代さんにがんばってもらわねばならない8月9月。8月26日(土)18時~19時半には当館にて尾形明子先生のご講演「宇野千代と東郷青児―もうひとつの『色ざんげ』」を開催いたします(もうすこしお席に余裕ございます!) そして9月9日(土)14時~15時半には、一昨日の記事でご紹介した玉川図書館さんとの共同企画で、「見る・聞く・読む 秋聲」なるイベントを当館にて開催予定です。
 宇野千代展の解説のほか、この夏おすすめの秋聲作品について学芸員がプレゼンをさせていただきますので、ぜひぜひご参加ください。なんとこの日に限り、図書館さんが移動図書館を実施してくださいますよ! おすすめ本、その場で借りてゆけますよ!! 
 ガラス越しでない触れる書籍、文学館にはない概念とモノとを補ってくださるとても素敵な企画なのです。



 


ポスター展開幕!
  2017.8.15

 本日より、金沢市立玉川図書館さんで当館の歴代企画展ポスター展がはじまりました! 三文豪館×玉川図書館さんの連携企画の一環で、おとといまでは某K記念館さんの美麗なポスター展が、本日より当館のシンプルにシンプルを極めたポスター展のはじまりです。今回の宇野千代さんポスターから数えて過去8回分の企画展ポスターを掲示していただいております。ご企画に感謝申し上げます。

(←画像、図書館さんよりご提供いただきました!)

 わりと終わってしまえば気持ちは次へ、でなかなか過去のポスターを顧みることもありませんもので、ずらっと並べながらちょいと懐かしい気持ちにもなりつつ…自然主義文学展の際のまるで何も伝える気のないデザインの感じに改めて笑ってしまいもしつつ…フーン、こんな企画展してきたのネ、と図書館さんにて眺めてやっていただけましたら幸いです。
 お渡しする際、過去8回分を確認しながら、ん?なんかちがうの混ざってる…と鮮やかな黄緑色のポスターを発見したときにはぶわっとあの熱気が蘇りもいたしました。

 右のこちら(→)。平成27年に開催いたしました開館10周年記念朗読劇「あらくれ」ポスターです(企画展しばりだったもので今回の展示からは抜きました)。
 金沢21世紀美術館さんのシアターをお借りして開催いたしましたこの舞台。現代においてなかなか新たな映画化、舞台化の望めない秋聲作品であるならば、いっそのこと館にてやったろうやないか!! と半ば逆ギレ気味に勝手にゴリゴリ脚本を制作し、ご近所の朗読団体「浅野川倶楽部」さんにお願いして実現させていただいた舞台です。その節は無茶な注文ばかり申し訳ありませんでした。

 これがけっこう大掛かりだったものですからおいそれと再演は難しいのですが、脚本はリトゥンバイ秋聲記念館につき、どこかで舞台にかけてみたいよという現世の救世主のような方もしいらっしゃいましたら無償にてご提供させていただけますがいかがですか…! 来年の夏あたりどうですか!? 急ですか!?



 


続・お菓子続々
 2017.8.9

 きのうの越後屋感あふるる菓子箱に比し、かたやこちらのお箱はザ・正統派!(いえ決してきのうの越後屋さんをおとしめるわけではございません。同梱のしおりにこれをもらった人がすべきご挨拶は「おぬしもわるよのう」ですよ! とご親切にレクチャーまでありましたけれども決して悪いお菓子としてのご紹介でなく、悪くはありませんが、ただ一応礼儀として申し述べておきますね、おぬしもわるよのう…!)
 改めましてこちら文京区は秋聲先生のおうちそばにある和菓子やさんより、その名も「本郷銘菓集 文学散策」。中に文京区の文豪マップが入っていて、秋聲先生のおうちの記載もございます。また、ある時期には次回企画展にメインでご登壇予定の漱石先生もこの界隈に住んでいらしたので、お宅跡なんかを血眼になって探したりなどしてしまいました。わざわざ秋聲ゆかりということで選んでくださったその過程とお心馳せに深く感謝を申し上げます。
 このお菓子やさん、徳田家へお邪魔する際にまさにそのお店の前をよく通りますもので残像だけは頭にございます。加賀藩前田家ゆかりとして知られる東大赤門のお向かい? 徳田家はどちらかというと正門前。お邪魔する際にはわりと資料を手にしていることが多いものですから意外とあの界隈こそほとんど寄り道をしないので、そのうちこのマップに添って文学散歩など開催できたら素敵ですね。漱石、鴎外、一葉をはじめ、宇野千代さんと尾﨑士郎が最初に同棲したのも本郷にあった菊冨士ホテルだったといいます。
 と、調子に乗ってまたもレポートさせていただきましたが、そろそろ催促とニアイコールになりつつありますので今後は慎むことといたします。

 胃癌で入院して好物のお菓子が食べられない紅葉先生のため弟子たちが菓子の換わりに編んだというのが作品集『換菓篇』(初版展示中)。菓子の換わりに秋聲先生へのメッセージだけ懐に抱えておいでくださいませ。
 
 



お菓子続々
  2017.8.8

 
 
 先日より、お客さまからお菓子が続々届いております。ありがとうございます。いつかこの寸々語にて小判的なものは困ります、とどの面提げてかキリッとして申し上げたことがあるからでしょうか、「小判は入ってません!」と堂々宣言してくださったお客さま、お気遣いありがとうございます。しかしお熨斗は「夏の貢ぎ物」なんですね…小判的なニュアンスが満載ですね…小脇に抱えてそそくさと事務室に駆け込むさまもまたわるかったですね…。秋聲先生と職員とで有難く頂戴いたしたく存じます。
 と、さっそくにワクワク開封いたしましたならなんとこちら→

 いや小判だったーーー!
 小判的なものどころか小判ーーー!! 
 小判は困るとあれほどーーー!!! 

 この溢るる越後屋感はどうでしょう。が、秋聲先生にお金を積んだところで何を動かれるものか! 病床の紅葉先生に「先生ちょっとお金…」とせびりに行くところこそあるけれども、なんのお金でどうこうなるものか!

 そんな鬩ぎあいが一瞬にして脳内を駆け巡ったものです。小判皮の中身は意外にもダックワーズ的なそれでして、仰るとおりたしかに小判ではなかったです。とかくこの世の中にはおもしろいお菓子があるものですね…勉強になります…(つづく)

 



蠅を逐ふ
 2017.8.6

 8月になりましたので書斎のお軸をかけかえました。書斎の床の間には書幅のほかにお花(造花)を生けてあるのですが、書幅担当学芸員とお花担当職員との間でどちらが先に月替わり作業をおこなうかといったほんの小さな競争において毎月冷戦が繰り広げられております。
 閉館後、掛軸を替えにいって先にお花が替わっていると(アッ…!)となりますし、まだ替わっていなければシメシメと思ったりするのです。そうして「替えてきましたけど?」という上から目線でもう一方の職員を見下す、というなんとも趣味のわるい遊びが毎月事務室にておこなわれております。

 今月は掛軸のほうの勝利、この後お花が替えられました→

 今月は秋聲・K花さんふたりのお師匠である尾崎紅葉先生のご登場です。夏らしく蝉の句にしてみました。いつもさほど厳密ではないながら多少季節を意識したお軸を選んではおり、いくつかある書幅コレクションのなかからどれにしよっかな~と考えながら、今回コレにしよ、とわすれないようにいったん手元に控えたそのメモ(鳥頭につき…)をあとから見ると無造作に「蠅(ハエ)」と書き付けられており、数時間前のおのれの所業ながらちょっとびっくりしてしまいました。紅葉先生の蠅の句…紅葉全集を繰ればあるいは掲載があるのかもしれません。だけれども、とりいそぎお出ししているのは「蝉(セミ)」の句です。どこで手元が狂ったのやら、明らかに「蠅」のほうが書きにくいのにたいしたものです。
 「蠅」といえば作家・横光利一の代表作ですね。実は今回の宇野千代展には横光氏もちらっと出てまいります。さらっとご覧になると、エッどこに出てた?? となってしまうくらいのちらっと感。ヒントは「兼光左馬」、横光の別名でもってお探しください。





8月5日は「和解」記念日
  2017.8.5

 (清次さん…K花さん…本日は秋聲のしゅの字…たくさんたくさんお邪魔いたしまして…
 当館初代学芸員・大木志門先生による講座「一九○七年の秋聲と鏡花 〝文学〟の二筋道」のご開催、まことにありがとうございます…当館の誇る、最強の刺客です…いえ、決して当館でもって送りこんだわけではございません…明治40年のK花さんを語るうえで、秋聲のしゅの字ははずせないってなわけですね…そうでしょうそうでしょう…
 ありがとうございます…今後ともどうぞよしなに…)
 




ラジオ生放送
 2017.8.1

 本日はMROさんとエフエム石川さんのラジオ番組に学芸員が出演させていただきました。生放送なうえ、いろいろと不確定だったものですから告知が行き届かず申し訳ありません。午前中の話の肝は自分をガッツリ棚に上げ、「読書感想文への取り組みはお早めに」ということ、午後の話の肝はまちめぐりのクイズラリーと宇野千代展のPRです(このCiao!という番組内→)。
 読書感想文といえば、夏休みの嫌われ者としてお馴染みですが、いつかネットで徳田秋聲を検索していたおり「徳田秋聲の『ナントカ』(わすれました、すみません)という作品をテーマに提出せよ! 大丈夫だ、適当に書いても先生だって秋聲作品は読んでないから指摘できないぞ!!」とのなんとも大胆な教えを施してくれる虎の巻にヒットしたことがございました。そう、『ナントカ』という作品名(ほんとうは何かしらそれらしいタイトルが書いてありました)なぞこの世に存在しないのです。だけれども存在しないということさえよほどの人でなければ指摘できないほどの多作さ、そして秋聲作品の浸透率の低さ、だけれども秋聲を読んでいないとは口が裂けても言えない国語教師のプライド…といった絶妙のバランスのうえに立っているのが徳田秋聲といったところでしょうか。
 もちろんすべての先生が読んでいないわけでなく、秋聲作品がお好きな先生も少なからずいらっしゃることと存じます。が、たしかに「えっこんな作品、秋聲にないでしょ!?」とまで指摘できる人となるとかなりのハードルの高さにはなることでしょう。前々回の企画展「秋聲全集物語」でもご紹介いたしましたとおり、現段階でもっとも完備された八木書店版『徳田秋聲全集』全42巻+別巻1でさえ、すべての作品は収録されておりません。
 そういった意味で、「なにおう!失礼だぞ!!」と怒り出すまえに(なるほどいいチョイスだ…)とちょっと感心してしまったりもしたものです。国語教師のプライドに懸けて読んでない知らないとは言えない、というあたりがまたいいですね。国語界だけでなく、秋聲を知らない=かっこわるい、の等式が世に浸透するまでがんばらねばなりません。
 
  

 


文芸酒場vol.2
  2017.7.30

 昨夜、ナイトミュージアム企画「文芸酒場vol.2」無事、終了いたしました! 参加者のみなさまには厚くお礼申し上げます。

 当日は、学芸員によりさらっと館内案内をいたしました後、ご近所のひがし茶屋街へと繰り出し、今月オープンしたばかりの「日本酒 真琴」さんへとお邪魔いたしました。とてもよい雰囲気のお店です。
 今回のメインゲスト・「古典酒場」の倉嶋紀和子編集長は19歳で熊本から上京し、東京暮らしをするなかで酒場めぐりにはまりそこからどんどん交遊の場を広げていかれたとのこと。そのお酒ネットワークたるや、画家や作家、ミュージシャン、落語家さんにいたるまで著名人のお名前がざくざく出てきて驚きました。

 また、最近では熊本復興の一助にと『熊本 酒援酒場』を刊行され、その売り上げはすべて復興資金に充てられるとのこと。ご興味おありの方、ぜひご購読ください。

 こちらからは秋聲さんのお酒にまつわるエピソードもろもろをばご紹介。秋聲自身あまり強くはないのでそこまで深いお話は出来ないのですが、たとえば「新世帯」に描かれる、不器用な手容(てつき)でお酌をする妻・お作と、極まり悪そうに、しかし慣れた手容でお酌をする友人の魅力的な妻・お国の違いなど、作品に登場する小道具としてのお酒の書き方などなどについてお話しさせていただきました。アラそういえば、秋聲がちょっと好きだったと書いているお酒・モナスチンのことを話題に出すのをわすれましたよ! 事前に倉嶋さん、ナイトのディレクターでコーディネーターの経田さんにもうかがってみましたが、どんなお酒かよくわからないそう。経田さんがモヒート系のホンニャラフンニャラで近いのが…とご説明くださいましたが、まずモヒートがわからない下戸学芸員によりその右の耳から左の耳へ…(すみません)。本番お客さまも交えてもう一度訊いてみよう、と思っていてスコンと忘れてしまったのです。申し訳ありません。
 今後心の片隅に置いておくべき単語がまたひとつ増えました。モナスチン。 


  
 

『縮図』完売による狂想
  2017.7.29

 本日、当館オリジナル文庫『縮図』初版500部が完売いたしました。ご購読のみなみなさまに厚くお礼申し上げます。そして間もなく『仮装人物』も完売の文字が見えてきております。残り5冊、5冊とのこと。当館の文庫中ナンバーワンの厚さを誇る同書ゆえあんまり少ない感出ていないけれども、いざなくなったときの喪失感がすごい、とは棚卸しを担当する当館職員の言です。なるほど、ごっそりいなくなった感…。

 そんなわけですでに欠品である『黴』『短編小説傑作集Ⅰ』に加えまして『縮図』『仮装人物』といった当館の助さん格さんとも言うべき強力な両腕がもがれようとしております。すなわち『黴』『傑作集Ⅰ』はお銀と飛猿あたりですか。あと残っているのはうっかり八兵衛ですか。平成生まれの方、ついてきてくださっておりますか。水戸のご老公ご一行のお話です。
 いえ、水戸のご老公ご一行のお話ではありません。当館オリジナル文庫のお話です。まだ在庫のある『爛』やら『新世帯』やらがうっかり八兵衛かどうかは置いておいて、『黴』をお銀に当てはめたのは何ともうまいことやったものです。お銀の代名詞であるお得意の入浴シーンがあるのが『爛』ですが(『爛』のヒロインは「お増」さんですね/木村荘八画→)、それより何より『黴』のヒロインこそ「お銀」さん。『縮図』のヒロインも「銀子」さんとわりと近しいところにおりますが、何せどんぴしゃですからそこは譲れません。

 そういえば、昨年開催した「『黴』を語る」講座で、黴先生こと森川千春先生が「銀」の滅菌効果についてお話しされておりました。黴と相対する銀、ということなんでしょうか。
 康成の『みづうみ』に出てくるのは「銀平」でしたか…『縮図』に出てくるのは「均平」でしたか…そういえば「均」も「ひとしい」と読めるのでしたか…「ひとしい」といえば「等」…金沢のみなさま、明日朝7時からテレ金ちゃんご覧くださいませね! 「等」こと秋聲先生がご登場(予定)ですよ!!
  




いしかわ大百科
   2017.7.27

 7月19日付の記事中、秋聲の自伝小説『光を追うて』の主人公として〈「末雄」少年(秋聲がモデル)〉と書いてしまっておりましたことにふと気が付き、今ほどしれっと修正をいたしました。申し訳ありません、正解は〈「等(ひとし)」少年(秋聲がモデル)〉です。「末雄(すえお)」ったら秋聲先生のご本名、ご本人さまそのものにして、モデルも何もあったもんじゃございません。すなわち秋聲により、末雄時代の思い出が描かれている作品というわけです。またそこに「向山等」との名を与えたのは、少年時代「向山」(=記念館裏にそびえている卯辰山の別称)に足しげく通った秋聲の愛着の表れであるとともに、「等」=自分と等しい存在、くらいの意味がこめられているのであろう、とはよく言われるところです。

 さて向山、きのう地元のテレビ局・テレビ金沢さんからご連絡をいただきまして、来る7月30日(日)午前7時~、「いしかわ大百科」という番組で向山=卯辰山歴史散歩の特集を放送されるとのこと。そのなかで秋聲のしゅの字も出していただけるそうですので珍しく事前にご報告申し上げます。
 卯辰山にはみなさまご存じ、戦後すぐに建てられた日本初の文学碑である「秋聲文学碑」とともに、その後平成9年になって建てられた本型の「光を追うて」碑もそのすぐ近くにございます(ちょっと小汚い時期ですみません!)

 こちらの本型の碑、市内各所にあるのですが、みなさまお気づきでいらっしゃるでしょうか? 当館につづく川沿いの「秋聲のみち」にもひとつ、犀星さんのお弟子さん・水芦光子さんの小説「雪の喪章」碑、同じ川沿いの「中の橋」そばには某K花さんの小説「化鳥」碑、寺町の中原中也旧宅跡には、中也さんの随筆「金沢の思ひ出」碑、そんな調子でちょっと気をつけるといろいろなところにさりげなく建っているのでございます。地元のことながらすみません、全部でいくつあるかはわかりませんが、まちめぐりのついでにこの本型の碑めぐりもひとつ、目標にされてはいかがでしょうか。



 


題名の件で追記
    2017.7.26

 いつぞやご報告しておりました、記念館前堤防に鎮座まします「奥歯の神様」、またの名をしょくぱ○んまんさまとどき○ちゃんとその他1名、先日ふと見てみましたら奇妙なフォーメーションをとっておりました→
 奥ふたりの寄り添い方…ど○んちゃんとしょ○ぱんまんさまの決して実るはずのない恋が実った感じ…? 手前にいる丸みを帯びたほうの彼(暫定的に単体ではブーバとお呼びしています)のあぶれました感…? 3という数字はいつだって難しいものです。ブーバのほうがこの落し物であろうチラシを抱えていればまだ孤独な感じが目立たなかったのでしょうけれどもね…(このチラシだけはすみません、こちらで処分させていただきました)。 

 単純に三角関係といっていいものか、今回の企画展の題ともなりました「罌粟はなぜ紅い」、宇野千代さんの昭和初期の作品名からお借りしており、当時秋聲を囲む「二日会」のメンバーでもあった尾﨑士郎と婚姻関係にあった千代さんが、そのころ恋人と心中未遂をして世間を騒がせた画家・東郷青児に取材して書いたものと言われています。いくつかの殺人事件を描くために、ひとが死に向う様子を経験者に取材したかったのだとか。そうして出会った(厳密には再会になるのですが)ふたりは意気投合、やがて千代さんは士郎と別れ、青児とともに暮すことを決めるのです。
 『罌粟はなぜ紅い』、単行本の装丁は、ほかならぬ青児が手がけており、この前後の士郎の感情がむき出しになったような秋聲宛ての徳田家蔵書簡を今回初公開させていただきました(内容はご挨拶程度ですが筆跡その他がなかなか…)。
 ついでに言うとこの印象的な題は、千代さんと仲良しであった小説家・梶井基次郎がつけたとのこと。ここの関係もたいへん噂になったそうで、もちろん恋愛関係だけではありませんが、文士たちのつながりはとても「3」ではおさまらぬもようです。





題名の件でお詫び
   2017.7.23

 先日お客さまから教えていただいたのですが、ここ最近寸々語各日の題名部分が、携帯電話からご覧になると表示されないとのこと。まったく気付いておりませんで申し訳ございません。パソコンで見るといつも通り表示されているものですから、そこにまるで思いが至りませんでした。
 それを訊いてためしに事務室の職員のスマホでおのおの確認してみましたら、同じ機種でも表示されるのと、されないのとがございました(右はされないタイプ)。画像非表示のときにもずいぶんとうなされたものですが、これまたどうして、よくわからない現象が発生してしまったものです。結局よくわからずじまいですぐすぐ解決ならず恐縮ながら、題が出ていないというまたも一片の心の翳りを抱えながら日々生きてゆく私…(『生きて行く私』、宇野千代さんの代表的な随筆です。秋聲も出てきます。初版、展示中です)。
 こう言ってはなんですが、この欄での題はとても便宜的なものですので寸々語自体、遠目にうすらぼんやりご覧いただけましたら幸いです。
 さて、題につきましては秋聲先生がこんな題の文章を書いていらっしゃいます。ザ・「小説の題のつけ方」。これを読むと、ご自身の「題の附け方は極く下手」だそうで、師である尾崎紅葉先生から「始終叱事(こごと)を云はれた程」だそうです。そのうえで、さては題に関してお悩みでしたかな?? と思われる作品が、こちらでも何度となくご紹介しております大正12年9月、関東大震災時の混乱を描いた「不安のなかに」。日本近代文学館さんに収蔵されている本作の原稿には題がなく、「題未定」と書かれています。のち「中央公論」発表時にようやくつけられたのでしょう。これは原稿を見ないとわからない過程です。
 この超貴重原稿を所持していた人物、そして秋聲と題について話し合ったかもしれない人物、また犀星さんに題の変更をガツンと言いつける人物、それこそが今回の宇野千代展のキーパーソンでもある「中央公論」編集長・滝田樗陰そのひとです。





寸々語外伝
  2017.7.20

 いつぞや春のお弁当特集の際にたいへんお世話になりました月刊誌「金澤」さまにまたもお邪魔しております! 
8月号はカレー特集! 真似してゆきたいこの季節感!!
 さて、今回はどんなことで潜り込んでいるかといいますと、巻末のほうのPICK UPコーナーにて「第三の男、秋聲を嗜む。」なるカッコいいのかカッコわるいのか一瞬迷う、そんなタイトルのコラムを学芸員が執筆させていただいております。また、中をご覧いただきましたら、タイトル後ろにくっついている小さな「01」の文字…そう、連載…連載なのです…!!

 今のところ全6回を予定していただいておりますが、03くらいを最後にスッと消えましたならそれはそういうことだとご理解ください。アレッ今号って載ってました?? とか間違っても無邪気に訊かないようご配慮ください。
 いえ仮に全2回で終わっても、夢のような出来事なのです。地味にこうして日々寸々語をつづけて来た甲斐があったというものです。誰にも見られていない暗い路地にて妙な音楽に乗せ、ひたすらに踊りつづけてきた6年間…それが一躍、「金澤」編集部さまに手を引かれ、急に大通りの歩行者天国に連れだされてきたような心持ちです。ありがとうございますありがとうございます。明るいところで見る秋聲先生はより凛々しくかっこいいです。いつもこちらを読んでくださっている皆様にも改めまして感謝を申し上げます。
 本日より発売の「金澤」8月号、カレーのにおいをたどって是非ご講読くださいませ。強いカレーに隠れて、日向でも同じテンションで踊っていて大丈夫ですか!? と内心とてもどぎまぎしておりますので、なにとぞ石を投げないでください。らっきょうを食すくらいの気持ちでカレーとともにつるっと飲み込んでやってください。歯を磨いたのにずっとちょっとだけくさい、そんなコラムになることを目指し、来月号分も真摯に書かせていただきたいと思っております。
 
 
 
 


よそはよそ、うちはうち
  2017.7.19

 館長出演の下記イベントチラシ、あぶりだしてもどうしても秋聲のしゅの字は見えませんでした。なにせ詩人でないのですからしかたがありません。しかし「犀川ゆかりの…」までならば、混じりこむ余地がありそうです。
 川×北國新聞といえば『いしかわの清流文化』、同社出版局さんより昨月刊行されました書籍です。「北部の山から落ちて来る二つの川によって、この都市は三つに分れ」、と秋聲自身が紹介しているとおり、金沢という町は金沢城を中心に、浅野川・犀川という大きな川に挟まれる形で構成されております。そして秋聲と某K花さんが浅野川サイド、犀星さんが犀川サイドに幼少期を過ごしました。
 ゆえに秋聲=浅野川、のイメージでもって売っているところもあるのですが、こちらの書籍の編集にあたり、秋聲も! なんか! 川! とのお問い合わせを受け(ありがとうございます!)改めて著作を読み返しておりましたら、意外と犀川のほうのエピソードもございました。少年時代を過ごした旧宅(いまは駐車場です。残念)目の前にあった浅野川での水遊びは言わずもがな、前掲同様、自伝小説『光を追うて』によれば、病弱な弟のために、と、ときどき次兄の「千二」(秋聲次兄・順太郎のこと)に連れられ、犀川の上流で鮎釣りをしたり泳いだりなんかした、と書かれています。「等」少年(秋聲がモデル)はあまりやりたくなかったそうですが(そう、彼はいつだってネガティブ!)、優しい長兄と異なり、とにかく厳格でよくケンカをしたという次兄とのちょっといいお話です。
 そんなあたりを本書ではご紹介いただいております。とうぜん三文豪しばりで掲載されておりますので、犀星・K花さんの各項もございます。完成の折、お送りくださった書籍をほうほう、と犀星・K花さんのページを読み進め、秋聲にいたったときにふと思ったこと。おふたりにくらべ秋聲さんちのエピソード薄っす…! 気付いてはいけません。各ご家庭それぞれ、それぞれ、です。





「犀川ゆかりの詩人たち」
   2017.7.17

 昨日は東京からのお客さまと(解説予約ありがとうございます!)、県内からのお客さまと(宇野千代展初日にもありがとうございます!)、大阪からのお客さまとのふれあいタイムをもうけさせていただきました。あ、いえ、決まった時間になると学芸員がヤァ~ッと出てきて触ったりいっしょに写真を撮ったりできるよ! との誰ひとりとて嬉しくないコーナーをご用意しているわけではなく、呼ばれればのこのこと出てまいります。時々そのへんをウロチョロしております。
 大阪からのお客さまはなんと茨木市立川端康成文学館さんのお近くからお越しとのこと。思わぬところで久し振りの康成トークを繰り広げることができ、たいへん嬉しゅうございました。ご来館ありがとうございました。昨年の康成展から、なかなか康成離れのできなかった当館、ようやく落ち着いたかな、と思ったところでまたもや現在の宇野千代展にてポツリポツリとそのお名前使わせていただいております。宇野千代さんとも交流がおありだったものですから、どうやっても避けては通れぬ運命のようです。

 そんなこんなで昨日から文士たちの繋がりについてご紹介しているわけですが、脳内に犀星さんと秋聲さんとを同居させている当館上田正行館長による講演会が来る30日(日)にございますのでちとご案内。
 石川県文芸協会さん主催「犀川ゆかりの詩人たち」との講演+朗読イベント中、上田館長が講演部分「犀川からはじまる詩の流れ」を担当いたします。会場は北國新聞会館17階・172会議室、14時半~、入場無料(お申し込みも不要っぽいですがお問い合わせは事務局076-260-3581まで!)。

 そのタイトルのとおり、どちらかというと犀星記念館館長としてのお仕事となり、また詩人でないことは重々承知しているのですがなんとか秋聲先生のしゅの字もどこかにサブリミっていただきたく、美しい犀川の流れがプリントされたチラシを眺めてはその余地を探しております。「室生犀星・島田清次郎・中野重治・永瀬清子・井上靖・中原中也・濱口國雄・広津里香」とのお歴々…犀星さんと清次郎か、清次郎と重治の間にか、秋聲のしゅの字、うっすら見えませんでしょうか? あぶりだしてみては? どうですか??
 
  
 
 


脳内に同居
  2017.7.16

 今年もご近所の尾張町商店街「第4回 歴史と伝統文化講演会」にお招きいただきました! ありがとうございます! 今年は秋聲さんと金沢ゆかりの詩人・中原中也さんに関するお話をさせていただきました。いえ、正確には中也さんのお話のなかに秋聲さんを無理やり絡めに行くという力技…。それで苦しければ間に宇野千代さんに入っていただきますし、山口県は岩国つながりで河上徹太郎だって出してきますし、時代を同じくする文士たちですから、ちょちょいと操作してやれば全員どこかしらで何かしら繋がってくるというものです。
 何をきっかけにしてでも秋聲先生のしゅの字をみなさま方の脳に刷り込みたい、おそるべきサブリミナル効果を仕込むべく虎視眈々と狙っておりますのでお気をつけくださいませね…。
 途中、中也と秋聲がごっちゃになって「しゅ…いや、違う、ちゅ!」「ちゅ…じゃなくて、しゅ!」とひとり何度となく繰り返しました結果、最終的にこの口先に「しゅうや」なる人物が誕生いたしましたけれども、そこはもう前後の文脈で何卒ご判断ねがいます。
 と思えば、当館館長は犀星記念館さんと当館の兼任だものですから、時々どっちのお話かな? となることがございます。お話の腰を折るのもアレなので、マァどっちかのお話だろうな、ととりあえず黙って聞いておりましたらば結局某K花先生だったり漱石先生だったりのお話なことも多く、アッ!?ア、ァ~ン…! と自分のなかで繋がった瞬間へんなリアクションになってしまうので、その腰にタックルしてでも誰のお話かをきちんと確認してからうかがったほうがよいですね。冒頭を聞き漏らしても、つい聞いていればそのうちわかるだろう、と後回しにしてしまうのが悪い癖です。こちとら企画展が終わったりなどするとはいったんそのお人を「一回展示したグループ」に入れて避けてしまうものですが、常に脳内に犀星さんと秋聲さんが住んでいる状態、なかなか混乱しそうです。
 


 


まちめぐりクイズラリー2017
  2017.7.13

 毎年夏になるとやってくる「まちめぐり」、今年も15日より開催いたします! 当館をはじめ、ざっくり東山ファミリーと呼んでおります某K記念館、金沢蓄音器館、寺島蔵人邸、金沢文芸館、安江金箔工芸館の計6館のうち、4館めぐってクイズラリーに答えると、すてきな景品がもらえますよ! というこの企画。あとはざっくり広坂ファミリーと湯涌ファミリー、なんとなく片町のほうファミリーがおります(犀星記念館・前田土佐守家資料館)。アッ飛梅町ファミリーは金沢くらしの博物館それ一館のみですね…! ただあの博物館さんは、館のなかに各時代のご家庭を複数抱えていらっしゃるので一館でもって複合家族といって過言でなし。
 さて、そんなこんなでいちばん大きなファミリーが東山だものですから、東山界隈で毎年おこなっているイベントです。今年の景品は3種類のポケットポーチだそうな。うち2種類は小桜柄(残る1つは無地)とのことで、(真夏に桜柄! 攻めてる!!)とこっそり思ってはしまったものですが、そういえば宇野千代さん=「薄墨の桜」でもって桜柄のクリアファイルをいついかなるときでも持ち歩いている当館ですので言えた義理ではないのでした。かえってお揃いですね、ウフフ…! 春には春の詩しか発表しちゃだめなの!? といつか宇野千代さんと同郷の詩人・中原中也さんが至極お怒りになっていらしたことも思い出されます。当館展示にあわせてくれた(かもしれない)このポーチ、ぜひご来館の記念にゲットしてお帰りください。

 秋聲先生も桜を見に吉野なんかへ行こう行こう、というお気持ちだけはあるものの、毎度人ごみを想像してはうへえ、となって行かずじまいだそう。わかります。そんなあなたにぴったりの、マイポッケに小桜ポーチ。
 
 
 
 


ニーミ
   2017.7.10

 昨日は企画展初日ということで展示解説をおこないました。すみません、こちらも初めてになるものですから初回に駆けつけてくださったみなさまにはたいへんにお聞き苦しい解説となりましたこと、心よりお詫び申し上げます。午後の部も経て、この後8月9月と計4回ございますので、だんだん上達してすごく本展示解説のプロフェッショナルになったところで次回夏目漱石展へと展示替えです。本来、この過程はお家で済ましておくべきところ、みなさまにお付き合いいただくこととなり、ほんとうに申し訳なく思っております。そしてまた、漱石先生が列をついて待っていらっしゃるものですから、早いところ頭のなかも切り替えなくてはならぬという、これはもしや止まったら死ぬ病? 「赤の女王」的なそれ? そう、生き残るためには常に進化をし続けなければならないのです。
 とは言いながら、現在の宇野千代展でも漱石先生のお名前はちょこちょこと出てきます。宇野千代さんともゆかりの深い芥川龍之介・久米正雄・三宅やす子、この三氏のお師匠さんとしてお名前だけご登場です。できるだけ前回の展示との内容かぶりは避けたいと思ってはいるのですが、なんだかんだと繋がってゆく、どうしたって無縁ではいられないのが当時の文壇の人間関係…。

 そんな流れからはアレですが、きのう、展示解説を終えたタイミングで愛知県からお見えになったというお母様ときれいなお嬢さんのおふたりづれとお話しする機会をいただきました。愛知の生んだ童話作家・新見南吉記念館さんほど近くからお越しということで、よくそっと何でもデスクに置いていかれる当館館長をごんぎつね館長とお呼びしている馴染みの深さもあり、オオ! となってしまったのですが、実際に秋聲さんと南吉さんに接点があるかというとちょいと難しく…「赤い鳥」がかろうじて繋がるところでしょうか。
 全集の索引を繰ってみましたらばニーチェには影響を受けておりますけれどもね。ちがいましたね、ニーミですね。ちょっと見つかりませんでした。
 

 
 


宇野千代展オープン!
  2017.7.9

 本日無事、宇野千代生誕120年記念企画展「罌粟はなぜ紅い~千代と秋聲~」開幕となりました! 長い休館をいただきましてお客さまにはご迷惑をおかけいたしました。これより新しい企画展、たくさんの方に楽しんでいただけましたら幸いです。
 きのうはメールも見られない状態だったのですが、今朝パソコンを開きましたなら今回の協力者各位より、たくさんの激励メールが届いておりました。こちらがお世話になるばかりにもかかわらず、遠方より企画展の成功をご祈念くださる方々に、今後何をお返しすればよいのやら…ただただ感謝するばかりです。この場を借りて深くお礼申し上げます。
 今回のご協力者、北は郡山市こおりやま文学の森資料館さんから、南(西?)は菊池寛記念館さんまで、いつも仲良くしていただいてありがとうございます。ちなみにいちばん近くは室生犀星記念館さんです。うちの展示がはじまるまえには観覧せねばなるまいよ! と同館で開催中の通称「黄金の針」展、見に行ってまいりました。いやこれ! おもしろいですよ…!! 1時間くらいしか見積もっていかなかったのを激しく後悔させられました。ものすごいボリューム、ものすごい犀星さんの批評眼! まさか19人全員とりあげるとは思いませんでしたし、でもマァわかる、これ全部だしたいですよねー…! とのエピソードがもりだくさんです。もちろん当館的メインは宇野千代さんコーナーでして、いろいろすっとばして駆けつけてしまったわけですが(すみません)、その評もまた的確というかなんというか…そう…彼女は女優…。
 また個人的なおすすめは小山いと子氏との間に交わされたミミズに関する質問攻撃です。展示室でひとり笑ってしまいました。

 そんなわけで何せ19人がさほど大きくないお部屋に密集しております。こちとら会期中何度だって行けますのでよいですが、ご遠方より今後訪問される方のために犀星さんとこに少なくとも2時間、常設展もいれれば3時間はご用意ください。後悔しますよ…!!
 

 


電話不通のお知らせ
 2017.7.7

 おかげさまで記念すべき第40回企画展「罌粟(けし)はなぜ紅い~千代と秋聲~」設営がなんとかほぼほぼ終了いたしました! ありがとうございます!

 展示室が前回の一穂展の海の青(誰にも申し上げておりませんでしたけれども展示台に敷いた布がひそかに青かったんですよ…「父への手紙―海岸の町から」って一穂さんの作品がメインだったものですから…)から罌粟の赤にガラッと替わりまして、新たにお客さまをお迎えするのを期待と不安の入り混じった微妙な表情でもってお待ちしている状態です。何か大きな間違いがないことを祈りながら、まぁすでにいくつかいろいろな種類の問題が発生しながら修正しながら、なんとか一応形にいたしました次第です。

 きのう展示替えの傍ら、別な調べもののため秋聲先生の俳句を眺めておりましたらば(全集27巻です)、「垣小し尼か手植の罌粟はたけ」との句に目が留まりまして、オオ秋聲先生が罌粟の句を書いておられる…! と新鮮に感動をいたしました。残念ながらこの句を揮毫した色紙やら短冊やらを当館収蔵しておりません。今回の展示の罌粟は宇野千代さんの罌粟であって、秋聲とは何ら関係のないところながら、なんとなく秋聲先生自筆の「罌粟」の字があったならちょっといいなァと思ったりなどしております。 
 
 さて、そんなわけで明日オープンです! と言いたいところですが明日よりまだまだ大きな作業、すなわち燻蒸作業がございまして、もう一日半ほど休館をいただきます。
 つきましては本日午後より館の電話も不通となりますので何卒お含みおきください。中に人はいるのですが、外界との接触を一切断つ感じになりますのでいろいろとレスポンスが遅れてしまい恐縮ですがどうかご容赦願います。
 では9日、また元気にお会いいたしましょう! 本日七夕ですってね!





バトンタッチ
   2017.7.6

 展示替え4日目です。雨を避けて表のタペストリー(大)がまだ替えられずにいた今朝。玄関先のかろうじて屋根下のタペストリー(小)はすでに宇野千代展に差し替わっておりますので、まだ徳田一穂展のままのタペ(大)と混在しているという状況…悪くいえば混在、良くいえばバトンタッチの瞬間ですね。

 秋聲と宇野千代さんでは秋聲が26歳上、一穂さんと千代さんでは一穂さんが6歳下。一穂さんと千代さんの関係といってざくざくは出てきませんが、今回初公開する千代さん筆秋聲宛書簡(徳田家蔵)のなかに、また一穂さんもご一緒に遊びにいきましょうよ! 的な文言もございますので、親子揃ってよく遊んでいたのでしょう。

 展示室もなんとなく形になってまいりました。収蔵庫前には狭いながらに展示準備室があり、展示台やら過去のパネルやらをギュウギュウに詰めて一時保管しております。そのときどきで台を使ったり使わなかったり、展示資料の形状によって判断するのですが、前回の一穂展では使わなかった展示台をごっそり出しましたら、軽いものは上への法則でその展示台のうえに神様のごとく鎮座されていた秋聲先生(等身大みたいなサイズ感のパネル)を床にじか置きすることとなり、手前の作業台でパネルをちまちま作っているときにのぞくお顔の圧がすごいです。

 あっちを向いて煙草をふかしておられるので、直接睨んでくるわけではないのですが、いちいち(アッ床に座っておいでですね…!)という気持ちにはなってしまうため、どこか別のお座席を早急に用意せねばなりません。
 こちらのパネル、年に一度だけ記念撮影用にお出ししたりしなかったりいたします。今後来館されて、秋聲先生が書斎で無造作に煙草をふかしていらっしゃったなら、それはとても運のいい日…(とうとう邪魔になって準備室を追い出されたとかではありません)。
 


 


 ご近所情報
  2017.7.5

 展示替え3日目です。展示室はがらんどうで特にお伝えすべき何事もございませんので、さいきん収集いたしました近隣の情報をお届けいたします。
 まずは御馴染みほっこりポスト。もうわりと梅雨時期のレギュラー・かえるくんたちのご登場ですが、今年は真ん中の子がひとり増えました! まさか! てっきりコンビだと思っておりましたらまだ控えの選手を隠していたとは…! 陽気にウェルカムボードを抱えておられますので、観音通りを通られた際にはぜひ歓迎されにいってみてください。

 末雄少年(秋聲の本名)の遊び場、毘沙門さんこと宇多須神社には茅の輪ができておりましたよ。これを左から8の字にくぐると縁起がいいとのこと。いつか同じ記事を書いたな…とおもえばすでに3年前のユメジ展のときでした。今回はただただ無事に新しい企画展が開幕の日を迎える事を祈願するばかり…

(午後、チラシ配りにいった職員によるとすでに撤去されていたそう! そんなわけで写真は3年前の使いまわしです!!)

 そして、きのうからの大雨でずいぶんと増水した浅野川。きのうはちょっと心配になるほどの水位がありましたが今日はすこし落ち着いたようです。とはいえ、いつもの浅野川なら、少なくとも当館前梅ノ橋~浅野川大橋までは某K花先生のとこの廉くんが溺れるほどの水位があってはならないというのがお約束。いっぽう浅野川大橋~中の橋まで行くと急に水深が深くなり、幼い廉くんが溺れて羽のはえた美しい姉さんがご登場…という物語が生れるのが同じ川の不思議です。そう、K花先生作「化鳥」です。

 
←「化鳥」舞台の中の橋。
 お天気がいいと逆さ中の橋が見られます
 
 






 
 

一穂追憶
 2017.7.4

  企画展「父への手紙―徳田一穂展」無事会期を終了いたしました! ご観覧くださったみなみなさま、ならびに展示協力くださった徳田家に心より感謝申し上げます(いつもですけど!!)

 一昨日はそんな最終日かつ一穂さんのご命日ということで、演奏会「一穂追憶」を開催いたしました。前日には大雨警報が出るほどの荒れ模様だった金沢、北陸新幹線も止まるレベルだったのですが当日はみるみるお天気が回復いたしまして、名誉館長を乗せた新幹線も止まることなく無事金沢へとお連れくださいました。一穂さんのご加護でしょうか、いつもお見守りくださいましてありがとうございます。

 最後の展示解説ののち、演奏会「一穂追憶」始まりました。演奏者はユニット「夢絃」の山田寒山先生(尺八)、中橋雅竜声先生(17絃)、須田雅楽静先生(箏)のお三方。追悼会ということでいずれも故人を偲ぶ菊重精峰作曲「月の灯りの下で」、佐々木愛美作曲「追憶」の2曲をご演奏ののち、最後に「御陵の森」に乗せて一穂さんご息女・徳田章子名誉館長により「父への想い」が朗読されました。
 演奏しながら名誉館長の呼吸をうかがう須田先生の表情のお優しいこと…! 出演者、名誉館長、そして温かく迎えてくださるお客さまのおかげさまで一穂さんを囲み、たいへんアットホームな良い会となりました。みなさまほんとうにありがとうございました。

 ただ無情なことにそれはそれ、昨日より館の中ではもうすでに展示替え作業をガツガツとおこなっております。ここからはうねうねの冥土の径を昇りゆき…9日、今度は宇野千代さんをお連れして戻ってまいりますので、しばらくの間みなさまさようならお元気で…!

追伸、台風の影響でしょうか、本日ふたたび警報レベルの大雨です。
   みなさまくれぐれもお気をつけください。





7月の名句
  2017.7.2

 月が替わりましたので、書斎のお軸をかけかえました。7月になるとぜったいにお出しする秋聲自筆俳句軸「生きのびて又夏草の目にしみる」です。
 昭和11年4月、66歳の秋聲が持病の肺気腫と糖尿病にくわえ頚動脈中層炎を患い倒れ一時危ぶまれたという(全集年譜より)そんな状態から7月、奇跡的に回復を遂げその感慨を詠んだものと言われています。
 秋聲のこの病状を受け、5月、盟友・島崎藤村が『文壇出世作全集』の収益を秋聲さんに贈りましょうよ! と発声してくれたり、藤村ほか中村武羅夫、菊池寛、岡田三郎、広津和郎、里見弴、久米正雄らが『秋聲全集』編みましょうよ! と動いてくれたりいたしました(のちに犀星さん合流)。そのあたりを前回の全集展にてご紹介いたしました次第です。
 が、前述のとおり、秋聲が奇跡的に元気になったものですから、自分も一緒にやりたいやりたい! と全集編集に参加し、その手伝いにご子息・一穂さん(当時33歳、小説家デビュー後)を動員した結果(秋聲先生は自作の読み直しが大嫌い)、一穂さんにとっては父親の作品をまとめて読む機会となり、えっこんなに自分のこと書かれてんの!!? と認識を新たにすることにもなり、結果「かかれる小説家」との自虐的なミドルネームが誕生する…という今回の一穂展につらなるエピソードが盛りだくさん。

 そんな大事な俳句なのにもかかわらず商売ッ気を出しまして恐縮ながら、この句の複製色紙をショップにて販売しております(500円ポッキリ)。が、あまりに深い物語がつまり過ぎているものか、正直なところ売れ行きはよくありません。たしかに自宅に飾るのにも、ひとにあげるのにもちょっと憚られる感じ…? もうすこし当たり障りのない季節の句とかにしたほうがよかったかな! との気もしながら、いやいや秋聲先生が生きのびんさったんじゃ! 祭りじゃ祭りじゃ!! との秋聲村の住人たちによる呑めや歌えやといった他村の住人には理解しがたいかもしれないテンションによる産物です。お察しください。
 
 

 


文芸酒場 vol.2
    2017.6.30

 きのうより、当館で受け持っておりますナイトミュージアムイベント「文芸酒場」の受付がスタートいたしました! 夏秋編ナイト全体のパンフレットも納品されまして、各館ロビーなどで配布しております。
 
 このイベント、昨年は某K記念館さんと前田土佐守家資料館さんでおこなわれたものの第二弾。7月28日(金)に当館ご近所の寺島蔵人邸(こちらは「歴史酒場」との名)、翌29日(土)に当館にて開催されます。が、タイトルにもございますように「酒場」…えっ記念館でお酒!? と期待された方には申し訳ございません。館内でお酒はお出しいたしませんで、館ご観覧ののちお隣のひがし茶屋街のお店に場を移して、そちらにて秋聲と酒あるいは食談義をおこなう予定です。先日、ナイトのディレクターさんと打ち合わせをしながら、「ごはんはどの程度でますか?」と無邪気に訊いてしまったのですが、基本ツードリンク+おつまみ、とのことで、しっかり食事は出ませんのでご参加を検討されているみなみなさまご注意ください。行くお店は「日本酒 真琴」さん。もう間もなくオープン? もうした?? くらいのほんとうに新しいお店だそうです。
 食談に出演するのは当館学芸員と、昨年にひきつづきお酒の専門誌「古典酒場」の倉嶋紀和子編集長。この倉嶋さん人気だけで定員がさっくり埋まるそうですからお申し込みはお早めに…。ただややこしいことに主催が当館でなく金沢芸術創造財団というところですのでこちらへのお申し込みでお願いしたく存じます(076-223-9898/平日のみ)。その他今年からWEB申込みもできるようになりました。詳しくはナイトHPをご参照ください。
 
 秋聲と酒といって、秋聲先生はさほどお酒が強くありません。ただそういう賑やかしい場はお嫌いではなかったようで、どうも楽しくなってオオ珍しく秋聲先生のお酒が進んでいらっしゃるなァと「二日会」会員・榊山潤が書いている箇所を宇野千代展パネルにちらっとだけ引用するなどしております。



 


画像非表示の件につきましてのお詫び
   2017.6.28

 きのうおとといの寸々語、画像が出ていないことには気がついているのですがなんとも対処の仕様がなく、とりいそぎほったらかしております。申し訳ありません。
 内部の事情にて恐縮ですが、さいきん館のネット環境が変わり、ホームページの更新方法も変わり、アナログ脳の職員たちはついてゆくのにやっとやっと…アレ? 画像が出ないぞ?? と、そこから何度となくいろいろと試してみたのですが改善の一途が見つからず、かといってHP一件の入っているパソコンは1台、しかも更新担当のでないデスクのパソコンだものですからその職員(サビをカビと言ってしまうその人)の離席のタイミングを狙ってはコソコソッと更新して帰り、さも何事もなかったかのような顔で自分の仕事に戻るというミッションインポッシブル並みに腰をワイヤーで吊るされた状況でやっておりますもので、1時間も2時間も居座るわけにもいかず(言えば快く貸してくれますがご自分のお仕事もおありですから…!)、最後の手段「いっかい寝かせる」を採択してしまった次第です。
 一夜明ければなんとなくプイッと画像が浮かんでくるだろう、と根拠のない期待を乗せて一晩二晩経過させてしまいましたが状況といって変わらず…当然の結果といえばそうなのですが、ああチラシの写真とおまんじゅうの写真が…と見るたび切なくなりながらまたも放置してしまうのです。というわけで、今回画像なしの更新となり心よりお詫び申し上げます。いつも特段愉快な写真でもなし、アナログなうえに写真も極めてへたくそなのでなきゃないで、という気もするのですが、文字だけだとやはり黒々しいですものね…。

 間もなく新しい企画展の情報をアップせねばなりませんので、まぁいいや、で済まされないことは重々心得ております。詳しいひとに訊くなりなんなり、あと数日でなんとかしたいという気持ちだけは抱えて生きておりますのでしばらくのうちはご容赦ください。なにか楽しいことに出くわし大きな声で笑いながら、その同じ心の片隅でもって(でもおまんじゅうの写真…)と思いながら生きる、なかなかつらいものです。
 
 と、今ほどあちゃこちゃいじり倒しましたら解決なりました! 原理はよくわかりません、結果オーライ!!
 


 


饅頭ふたつ
  2017.6.27

 今朝ほどMROラジオさんにお邪魔してまいりました。事前にいただいておりましたフリースペース、一晩考えましたがろくなパフォーマンスの引き出しもございませんで、けっきょく半分以上秋聲先生に繋いでいただくこととなりました。残る半分は宇野千代さんです。
 所詮、一味は一味。秋聲先生を離れては何ひとつとて語ることなどない残念な生き物です。開き直ってがっつり企画展の宣伝をさせていただきました。恐縮です。しかも帰りにディレクターさんからおまんじゅうをいただいてしまいました。「氷室開き、近いですからね!」との粋なおはからいにて、秋聲先生、おまんじゅうをふたっつもいただいてきましたよ…! 

 このおまんじゅうは「氷室饅頭」と呼ばれております。全国的なものかと思いきや、石川県だけなのですね。加賀藩前田家が徳川家に献上するため冬の間にストックしておいた氷の保管庫=氷室を7月1日に開く、これが氷室開き。氷をお江戸まで運ぶその道中の無事を祈願して神社におまんじゅうをお供えする、これが氷室饅頭だそう。現代の石川県民においては、ただただ6月下旬から7月頭にかけて無意識におまんじゅうを買ってきてはしこたま食べる、そんな氷室饅頭になってしまった感もありながら、ユメジ館さんや江戸村さんなど湯涌方面の施設ではこの時期になるときちんと氷室開きのレポートが上がります。MROさんありがとうございました。おまんじゅう、右が千代、左が秋聲、とこのおふたりの奥深い引き出しに感謝しながらいただくことといたします。
 そんなおまんじゅうから思い出されましたご近所の和菓子屋「たなべ」さん! いつか「ひがし茶屋街と秋聲」展の際に展示室でもご紹介させていただいた由緒あるこの菓子舗、惜しいことに5月末で閉店をされてしまいました。ご報告が遅れまして申し訳ございません。氷室饅頭まではしないことにしたよ~と、先日最後の菓子折りを持ってご挨拶にも来てくださいました。何の由緒かと申し上げれば、この家屋こそ、秋聲の姉・太田きんさんが住まれたお家なり…! たなべさんはご親戚ではありませんが、秋聲も滞在したお家ということで日頃より仲良くさせていただいておりました。この家屋、今後活用されるのかどうなるものか、動向を見守りたいところです。
 


 


植物シリーズ
   2017.6.26

  本日、次回宇野千代展チラシが無事納品となりました! 最初から企図したわけではないのですが、今回のチラシ、きのうもそのお名前を挙げました林芙美子展のときと同じデザイナーさんにお願いしております。芙美子さんのときには芙美子の芙の字からの連想で芙蓉の花を(あと鯵〈アジ〉です。芙美子さんが秋聲に何故か「鯵」とのあだ名をつけたため)、今回は企画展タイトルにどどんと鎮座まします罌粟の花を描いていただきました。罌粟=ケシです。宇野千代さんの著作名からお借りしているこのタイトル、これは空では書けませんし読めません。
 文学館ぽくてカッコイイかな!? とそれだけのテンションでもってタイトルに持ってきたはいいものの、今後どこへ出すにもルビ必須…ちょっと面倒くさい感じにもなってしまったことを若干後悔しつつ、いやいやこの毒々しく居ながらにしてどこか無垢な少女感も漂わせつつ、なおかつただ美しいだけでない奥行きのある艶やかさこそまさに作家・宇野千代そのものではござんせんか…! との勝手な解釈にて、「宇野千代=薄墨の桜」との一般的なコンビ感に斜めから迫ってみたのです。最初はもっといろいろなモチーフ溢れるチラシ案だったところ、どんどん引いてこうなりました。芙美子展との姉妹感かつ全集展のねぎぼうずとの親戚感を纏いながら間もなく世に進撃いたします。どうぞよろしくお願いいたします。
 
 さて、そんなチラシを引っさげて、明日10時10分から生放送の地元MROラジオ番組さんにお邪魔してまいります。ただ前にいちど呼んでいただいたこともあり「今回は秋聲さん離れてもらっても大丈夫でーす」との突然のフリースペースをもいただいております。秋聲を…? 離れる…? さてそんなことが可能でしょうか、どんな話題からでも最終的に秋聲先生に着地するという荒技にこそ日々挑み続けている当館、かえって難題かもしれません。





ヌルッとしたのとガツンとしたのがある
  2017.6.25

 そういえば宇野千代さん関係のものはとにかく7月9日から~と、べつに閉まってもいないドアの境界をこれまでの習慣でもってどうにも越えられない犬のように内側でジタジタ足踏みをしておりましたが、これはべつにご宣伝申し上げて差し支えないのでした。
 いつもお世話になっております尾形明子先生より『KAWADE夢ムック文藝別冊 宇野千代』生誕120年記念総特集号、(ずいぶん前に)お送りいただきました! ありがとうございます!
 いつかの当館主催林芙美子展、そして某K記念館さん主催企画展に絡んだ長谷川時雨女史をテーマとする講演会(なにかがどうとかなって当館で開催)にご登壇いただいたあの尾形先生、今年は宇野千代展の企画協力者として8月の講座にご登壇決定です! なんだか毎年来ていただいてしまってすみません!!
 そんな尾形先生もご寄稿の本誌、じっくりとっくり読んでいただくと、なかに秋聲のしゅの字、ちらっと出てまいります。曰く、秋聲は「小説の鬼」。また新しい肩書きが生まれました。ほんとうは鬼のくせにふつうのお顔をされているから恐ろしいのです。
 本誌は次回企画展開催期間中、当館でも販売いたしますが、一般の書店さんでお買い求めいただけますのでどうぞお気遣いなくご手配ください。執筆陣がたいへんに豪華なうえに、談話記録がまたスゴイ。川端康成×丸谷才一×宇野千代、黒柳徹子×宇野千代…おもしろくないはずがありません。
 大事な部分は本誌にまかなっていただくこととして、当館で開催されるのは重箱の隅を突きに突いた展示です。小さく小さく、こだわりながら制作をおこなっております。制作物担当のデザイナーさんに「ヌルッとした明朝体で」と発注したときのあの困惑ぶりったら…後日おそるおそる提出されたキャプションを見て「あっヌルッとしてますね! こんな感じでーす!」とお答えしたときのホッとされた様子ったら…
 デザイナー、偉大な職業です。 



 

『命みじかし恋せよ乙女 大正恋愛事件簿』発刊!
   2017.6.23

 きのうからの良い乙女な流れでもってご紹介をさせていただきます。本日、弥生美術館さんのおはからいにて、標題の書籍、出版元・河出書房新社さまよりお送りいただきました! ご恵贈ありがとうございます!
 この欄の5月28日付記事でご紹介いたしました同館開催・同題の企画展に付随する書籍です。弥生美術館学芸員さんが編集執筆されたこちら、竹久夢二×山田順子×徳田秋聲の関係性がそれぞれの貴重資料写真(ユメジさんの順子さんと結婚したいと思ってます!書簡とか)とともにわかりやすく解説されております。

 なかでご紹介いただいております秋聲の代表作『仮装人物』は、次回宇野千代展にてその自筆原稿をずいぶんとお久し振りに展示させていただきますし、また順子ものの一作「春来る」の初出雑誌なんかもお出しする予定です。こちらは東京と金沢で物理的にかなり距離があり、気安く両館めぐってください! とは言いにくいのですが、両館でもってリンクする内容となっておりますので、夏休みなど機会あらばぜひぜひお立ち寄りくださいませ。
 何かとスキャンダラスに採り上げられることの多いこのあたりのエピソードですが、その実それぞれの人生を懸けておられる物語ですから(とくに順子さん)、ニヤニヤを一回取り除いてじっくりひもといてゆきますと、あら昼ドラ! だけでは済まない空気感がつたわってまいります。本書もそこに重々留意してくださっておりますし、当館ではさらにここに宇野千代さんも絡めて、千代×順子×(秋聲)= くらいの構図をお見せしたく現在準備を進めておりますので、ともに7月1日開催の弥生美術館さん、犀星館さんから一週遅れの7月9日までもうしばらくお待ちねがいます。
 本書には、秋聲のみならず北原白秋、平塚らいてう、与謝野晶子、島崎藤村、佐藤春夫などなど、当館でもいつもお世話になっております御馴染みのメンバーがご登場です。マツオヒロミ氏によるなんとも艶やかな表紙、ぜひお手にとってご熟読ください。





女流評伝
  2017.6.22

 きのうは城南公民館さんのレディースセミナーへお邪魔してまいりました。女性を書かせては神様、とも称される秋聲文学の魅力について、城南地区の女性たちを前に熱く語らせていただきました。城南公民館さんありがとうございました。
 女性といえば、室生犀星記念館さんの次回企画展「女流評伝―おうごんのはりをもて文をつくる人々の傳記」では、当館の次回企画展ヒロイン宇野千代さんを含む19名の女性作家がご登場のようです。犀星さんの著作『黄金の針』中に評される19名の女性作家たち。うちもっとも秋聲と関係が深かったであろう林芙美子さんにつきましては何年か前、当館にて企画展を開催いたしました。その際の資料が、先日すこしだけ犀星記念館さんへ旅立ってゆきましたので、7月1日、ぜひ犀星記念館さんにてご覧ください。

 とくに示し合わせたわけでもないのですが、この夏は犀星・秋聲両館にて女性作家が熱い、そんな企画展の開催予定となりました。(アッK記念館さんはゴーイングマイウェイでよろしいかと思います!)

←女性作家に囲まれる秋聲先生(還暦) 

 宇野千代さんと犀星さんの間では、萩原朔太郎を挟んで揉め事があったもよう。当館の展示では出せませんでしたが(現在パネル制作中です)、犀星記念館さんでは仲良しの朔太郎さんのことですからそのあたりのご紹介もあるかもしれません(もしなければどちらかのギャラリートークにぶっこまれることでしょう。)朔太郎さんは出てきませんが、犀星さんにつきましては別の文脈にて当館企画展にご登場いただく予定ですので、両館ともに巡っていただけましたら幸いです(アッ2つではやはり気持ちがわるいですからこの夏もどの夏もいつだってマイペースなK記念館さんまで寄られて三文豪館コンプリートがよろしいかと…! 7月24日からは当館蔵「雨声会」出席者寄書き掛軸も展示していただく予定です!K記念館さんブログ・5月26日記事参照のこと)  
 また、おととい太宰治の話題を出しましたが、犀星館では8月6日、太宰ご息女・太田治子氏による講演会も開催されるそう。さりげなく申し上げましたがこれは必聴です。





さくらみ
   2017.6.20

 きのう当館職員(どうしてもサビをカビを言ってしまうその人)が、お休みの日に山形へ行ってきたよ~と山形名物「佐藤錦」を使ったお菓子をもってきてくれました。ちょうどお菓子箱の底が見えてきていたおりだったものですから職員は大喜びです(午後にはわらび餅の差し入れが届きました。不思議なことにお菓子のバトン、決して途切れることはないのです…)
 山形ったらやっぱりさくらんぼですか~とかなんとか言いながら、次回企画展でご紹介する秋聲の長編小説「何処(いずこ)まで」をパラパラ見返しておりましたらば、ヒロイン蔦代(つたよ)がさくらんぼを食べる場面が出てきてオッとなりました。
 「蔦代は蒲団のうへに腹這(はらばい)になつて、先刻帰りがけに買つて来た桜実を摘みながら、連(しきり)に貪つてゐたが、そんな果実を食べるときには、きつと田舎のことを想ひ出してゐた。」…このあと蔦代は「桜の実の種が、直(じき)に茶呑み茶碗に一杯になつたところで」、ふと現実の生活へと意識が引き戻されるのですが(そして盲腸のことを考える)、なんだかまァうまいな~~とこんなところで秋聲先生の作品の旨味を噛み締めてしまうのです。種がねぇ、茶呑み茶碗にいっぱいになってねぇ…とこの何とも言われぬ生活感を噛み締めながら、しかし桜実(さくらみ)って言い方かわいいな! とこれもまたよくわからない甘味をも噛み締めてしまうそんな一場面。

 浅野川沿いの桜にもさくらんぼが生っているのを発見いたしました。食用でないのは「さくらんぼ」と言わないのでしょうか。今後は「あ、桜実(さくらみ)…」と意味ありげに呟くことといたします。ちょっとレトロな自分を演出してゆきたい所存です。
 そんなきのうが「桜桃忌」、太宰治のご命日(かつお誕生日)だったことに気がついたときには、まるで絵に描いたようにハッといたしました。さくらんぼの話題を出させる何か大きな力が働いたようです。





その手
   2017.6.19

 こちらもそろそろ見納めですね。現在の一穂展展示資料のひとつ「THE MUSIC」。一穂さんのエッセイ「父秋聲と音楽」面を開いて展示しております。なかには、一穂さんが秋聲を誘ってよくレコード鑑賞会へ出かけたことなどが記されており、呼ばれもしない鑑賞会へ出かけてゆくのを照れ臭そうに、しかし「音楽が好きな上に、そうした人達の集りの好きな父は、洋服に着換えて薄暗い書斎からのこのこと出かけて行った」とのこと…。改めまして、音楽ほんとにお好きだったんですね…。

 また、そのお隣にお出ししております雑誌「文学散歩」の1ページ、謎の仏像写真がございます。実はこちら、一穂さんが撮影されたもの。写真家としても活動された一穂さんのお仕事の一端です(アッなるほど、その才が名誉館長に受け継がれてあのチラシの肖像写真…!/昨日記事参照)
 とくに仏像の「手」にフィーチャーされたもので、隣に「手」との一穂さんのお言葉が添えられており、「(自分の)煙草を持った手の表情が死んだ父親の手の表情にそっくりな事が時折りあって、はッとすることがある」と記されています。この雑誌は当館で独自に収集したものですが、なるほど企画展の準備段階で、名誉館長が「おじいちゃまと父は手がよく似てるのよ~」と仰ってたワ! と脳内でカチーンと繋がった、そんな資料でもございます。
 とかいって、手の比較写真をでもお出しすればよかったのですが、ちょっと並べてはおりませんので、常設展示室で秋聲の手を目に焼きつけて企画展示室までダッシュ願います。なお、この親子チキチキ「手」比べゲーム、ルールが厳しめで恐縮ですが、控えのための展示パネルの撮影などは何卒ご遠慮ください。手ががっつり写っているほうの一穂さんご肖像はとくに、写真家・飯島幸永氏のご許可を得て展示させていただいているものですので本来ホンニャラ権とかフンニャラ権とかいろいろ発生いたします。(飯島先生、その節はありがとうございました! おかげさまでお写真、大好評です!)
 お顔もかなり似ておいでですが、この親子、どうぞその手にもご注目。



  


これもある意味「二日会」
  2017.6.18

 来月2日、一穂さんご命日に開催予定の演奏会「一穂追憶」の打ち合わせをじりじりとおこなっております。このイベント、春のお茶会の席で急遽決まったもの。いつもお世話になっている記念館の前職員さんが今回の出演者となるご友人を連れてご参加くださり、その方とキャッキャお話しするなかで、演奏会やっちゃう? そうするー? との勢いでもって開催の運びとなりました。出演者「夢弦」のみなさま、そんなノリの館ですみません。みなさまによいものをお届けしたい、という気持ちだけはいつもございますので何卒ご容赦くださいませ。当館の企画の数々、おおよそノリとご縁とで出来ております。
 そんなわけで、一穂展最終日ともなるこの日、みなさまお誘いあわせのうえ、お越しいただけましたら幸いです。一穂さんご息女・徳田章子名誉館長版〝父への手紙〟があるかも!? ないかも!? 鋭意、準備を進めております。

 なお、みなさまお気づきでしょうか、今回のチラシに用いました一穂さんのお写真、左下にちっちゃくクレジットしておりますが、撮影者は一穂さんのご息女である名誉館長です。しかも、雑誌の撮影などでなく、家族旅行のうちの1枚だという…プ、プロ並み…!    (このへん→)
 2日はもともと展示解説を予定しておりました。基本、月の第1土曜に開催しているものですが、この月に関しては機械的に1日(土)より、ご命日の2日(日)がいいかしら、とふわっとずらしての日程です。かといって何ら特別なことはご用意しておりませんでしたので、おかげさまで特別な最終日となりそうでよかったです。

 秋聲の音楽の好みに、音楽評論も手がけた一穂さんからの影響は大きいもよう。今回はご縁ありきの和楽器の演奏会にて、そこに大きくコンセプトこそないものの、曲目に関しましては「夢弦」のみなさまのお心遣いに満ち溢れております。おふたり揃ってどんなお顔で聴いてくださるやら、秋聲がべちゃくちゃしゃべりだしたら成功です(良い音楽を聴いたらしゃべりだしたくなるタイプ)。



 


Pen4月号
 
 2017.6.17

 先日、当館オリジナル文庫第10弾『新世帯』装丁のコーディネーター、ご近所の彫金師・竹俣勇壱氏が、この本のこと紹介してもらったよ~と「Pen(ペン)」4月号をお届けくださいました! 4月号とか遅くなってごめーん、とも言いながら持ってきてくだすったこの雑誌、〝結婚特集〟とのことで、東京は森岡書店さんご主人・森岡督行氏が結婚にまつわる3冊のうちに『新世帯』を選んでくださっているという…! しかもなんと写真入り! しかもなんとがっつり本文にあらすじからそのご感想にいたるまでのご紹介入り!! これはたいへんなことです…4月号!? よっしゃバックナンバーもっと取り寄せちゃろ!! そんな勢いでもって収蔵させていただきたい奇跡の1冊です。 
 掲載ページこそお見せできませんが、なんとまぁ他の2冊と比べても見劣りのしない堂々たる写りっぷりではございませんか…うちの子、なんて誇らしい…。もちろん中身だけでもスンバラシイ秋聲先生渾身の「新世帯」ですが、加えてこんな中央の雑誌で堂々と勝負ができる佇まいに仕上げてくださったこと、改めまして感謝感謝です。採り上げてくださった森岡氏にもこの場を借りてお礼申し上げます。

 そんなご機嫌でフッフ~ンとページを繰っておりましたらば、同誌の真ん中あたりにわれらが「ごミュ印帖」紹介記事の掲載もございました。あまりの人気に増刷が決まったという加賀友禅作家・吉本大輔氏によるスタイリッシュデザイン3種です。見つけた瞬間、ヘイ!ブラザー! との気持ちでもって誌面上に急に石川県人会をつくりだしてしまったわけですが、同じ石川県内で会ってもただの他人が、東京で出会えばもう同郷の仲間になるというこの不思議。いや、ごミュ印帖はまったくの他人でもないですけれどもね、兄弟でもとくにないですね。生まれ時期から言ってもイトコかハトコくらいが適当でしょうか?
 




クリアファイルごと
   2017.6.15

 昨日もまた、高砂大学校さんにお邪魔してまいりました。あと明日もう一度うかがって全3回の講義が終了します。外へ出たりなんだりしてバタバタするものですから先日より寸々語、飛び石にて恐縮です。
 おとといこちらで石川近代文学館さんで販売しておられるクリアファイルのご紹介をいたしましたが、こういった各館で制作されているオリジナルクリアファイル、館のお仕事のうえでもたいへん重宝いたします。よそのナントカ館へ出かけるごと、そちらのクリアファイルを購入してきては館のお仕事の内容ごとに使い分けたりしております。
 前回、神奈川近代文学館さんの宇野千代展を拝見した際には、宇野千代さんデザインの綺麗な桜のクリアファイルを入手いたしまして、次の宇野千代生誕120年記念企画展「罌粟(けし)はなぜ紅い~千代と秋聲~」に使う資料をどしどし挟んで使っております。同館では、漱石モチーフのクリアファイルも発見いたしましたので、次の次の漱石展のため、こちらも購入してまいりました。なにせ紙資料ばかりが溢れるデスク上、何が何のコピーであったか、すぐに迷子にさせてしまいますもので、これのこれ! との判別のためにたいへん便利が良いのです。
 そんなわけで、今回の三文豪講座には三文豪クリアファイルを携えて出かけますし、現在の一穂展には、当館オリジナルグッズのうち「黴」クリアファイルを使用しておりました。すみません、決して黴=一穂さんというわけではないのですが、当館オリジナル4種「黴」「爛」「仮装人物」「縮図」でいえばもっともふさわしいのはご当人をモデルとする「正一」君が登場する「黴」でなかろうかと…。

 いまパッと出してきただけでも、右上から藤村記念館さん(白地に赤/藤村の筆跡入り)、東郷青児記念損保ジャパン日本興亜美術館さん(青/東郷氏、宇野千代展でご登場)、犀星記念館さん(赤/「蜜のあはれ」の金魚入り)、中原中也記念館さん(黒/お顔の主張が強い)、左のピンクのが宇野千代さんで、前面のみかん色のは上野の国立科学博物館さん…

 こちらのハチ公はシンプルに愛おしいという理由でもって、あらゆる用途に大活躍です。





三文豪文学ネットワーク
  2017.6.13

 きのう、高砂大学校さんにお邪魔して「金沢の三文豪」についてお話をさせていただきました! 先日お邪魔してまいりましたのは高砂大学院さん、今回は大学校さん。65歳以上が入校条件で、大学校を修了された方がさらに大学院へと進み、より専門性を高めるという仕組みなのだそうです。
 今回、秋聲だけでなく三文豪についてご紹介するということで、犀星、K花の諸先生方にはさほど詳しくなくたいへん僭越ながら、しかしこのふたりを繋ぐかすがいのような秋聲先生を顕彰する当館より代表して行かせていただきました。そう、犀星さんと秋聲は仲良しで、K花さんと秋聲は仲悪しですが、犀星さんとK花さんとなると途端にそのつながりが薄く…いえ面識はもちろんありますし、何かとやりとりもあったようですが、企画展ひとつできるか、といわれるとなかなか厳しいくらいの接地面かもしれません。その点、当館では、犀星展もK花展も過去に開催履歴がございます。そういった意味で、秋聲を三文豪の真ん中に置いて語るといちばんスムーズに繋がるようです。
 また、そんな文士たちの関係性をご紹介する際に重宝するのが石川近代文学館さんで販売しておられる「三文豪文学ネットワーク」なるクリアファイルです↓
 三文豪を中心に、当時の文士たちがワァッと散らされ、おのおの線で結ばれております。たとえば芥川龍之介は犀星さんと「親友」、K花さんとは「鏡花作品を支持」との線で結ばれ(秋聲とは繋がっておりませんが、犀星さんと秋聲を繋げたのは芥川ですね、しかし芥川と秋聲とは後にモメますね、ややこしいですね)、また、秋聲は同郷のジャーナリスト・桐生悠々と「親友」という線で結ばれていて、そうなるとアレッもしやK花さんには「親友」と呼べる存在いないんじゃ…!? との余計なことに気がついてしまったりもできるとっても楽しいクリアファイル。

 その肝心の三文豪を繋ぐ線が無印なのは、おそらく石川近文さんで展示を見て受け取ってね、ということなのでしょう。ここにご自身で関係性を書き入れられるようなお話になっていればよいのですが…(秋聲―K花が「親友」でないことだけは明らか)。
 


 


カビとサビ
  2017.6.9

 これみよがしに職員が名札につけております黴バッジやらサンタバッジ、過去のイベント参加特典として制作いたしましたものの余り分です。すこしでも秋聲の宣伝になれば、話のとっかかりになれば、とお客さまや取材の方を前に「ソレなんですか?」「あっこれですかぁ~?」(しめた! かかった!!)との展開待ちのため任意でつけているものですが、テレビさまや写真撮影のある取材関係ではことごとく「名札、邪魔なのではずしてくださ~い!」とさくっと言われてしまうのです。トホホです。

 さて、そんなバッジ、経年劣化と言っていいものか、気がつけば裏側が錆びてきているものもあり。アラッ! 布製の名札ストラップに染み込んだ汗や涙がじんわりバッジまで伝ってゆくんでしょうかね!? と発言いたしましたら、そんなことあります?? と他の職員に全否定されました昨日午後です。
 しかしその職員が、バッジのサビについて伝えんとして、何度やってもどうがんばっても「カビてきてる」「裏側のカビが」と真顔で言ってくるので、いやいやそのお口、どうなっておいでか! とずいぶん笑ってしまいました。何度も言いなおそうとしながら次の瞬間また「カビが~」と言ってしまい、どうにも治らないのです。なんですか、当館に染まりすぎるとサビって言えなくなるんです…? 喉元でカビに変換されるフィルターかなんかついちゃうんです…?? なんとも怖ろしい現象です。最終的に「もういいや、カビで…」と諦めておりましたが、いや別物別物!  
 カビて…いやサビてきたからといってつけ替えるほどの余分はないものですから、おのおの磨くほかありません。サビていればいるほど汗と涙を流してきた証拠(まだ言う)。職員もすべてもっているわけではありませんが、過去制作分といたしましては黴(赤青緑の3色展開)、爛(白黒の2色展開)、蕈(きのこ/グレー1色のみ)の一文字漢字シリーズと、サンタバッジの模様違い3種類が世に存在します。この生産元がまず無頓着にサビさせておいてなんですが、みな各ご家庭の一員となって楽しく暮していてくれることを願っています。

 
 
 


生誕150年
   2017.6.8

 本日は鎌倉訪問のご報告です。鎌倉文学館さんでは入口にて漱石先生(を思わせる人物)がお出迎えくださっておりました。恐悦至極に存じます。
 今回はそのタイトルのとおり、漱石にまつわるお手紙類で構成されている展覧会。正岡子規に俳句の添削をして返送してもらった手紙や(悪い句だってあるけど、いいとこあったらちゃんと褒めてよ! と漱石先生が書き添えておられる…)、イギリス留学中、鏡子夫人と交わした書簡類(御前が恋しい、だなんてどストレートな…)などなど盛りだくさんです。またお弟子にあたる芥川龍之介、久米正雄(このおふたりは次回宇野千代展にちょこっとだけ登場します!)に宛てて漱石の死の3ヶ月半前に送られた激励のお手紙などは涙なくして読めません。ああ、こんなお言葉をいただけたなら一生わすれられないだろうな、との名文句続出。そこは日本を代表する文豪ゆえお得意分野ながら、そういった筆の力だけでない奥底の熱量を感じさせる素晴らしいお手紙なのです。時代が時代ですからスッとは読めないグナグナ文字もそら多いのですが、読めない! 嫌い! で敬遠されてはもったいない…翻刻もちゃんとつけてくださっておりますし、何より内容がとっても現代的! いまのひとの心にもきっと響くことでしょう。
 そんなわけでこの夏、トータルで神奈川県をおすすめいたします。おかげさまでうまいこと脳内にて宇野千代さんから漱石へとバトンタッチできた気がいたします(まだ何ひとつ始まっていなければ終わってもいない)。
 また、観覧を終え、鎌倉さまがご親切にも駅まで送ってくださる途中、雑談をしながらぶらぶら町を歩いていて、アッここ見覚えが!! となった場所、川端康成邸でございます。作夏たいへんお世話になりました。川端邸前を何気なく通りすがることのできる街、それが鎌倉。
  


 


生誕120年
  2017.6.7

 すっかりご報告が遅くなってしまいましたが、先日気持ち長めにこちらをお留守にしている隙に、県立神奈川近代文学館さんの宇野千代生誕120年記念企画展「宇野千代展―華麗なる女の物語」と鎌倉文学館さんの夏目漱石生誕150年記念企画展「漱石からの手紙 漱石への手紙」をハシゴしてまいりました。なぜならもうそろそろ終わりが見えてきた一穂展の後には、当館でも宇野千代展、そして秋には漱石展が控えているため、その事前調査という名の密偵です。

 神奈川さんでは、宇野千代さんのドキュメンタリー映像全4編を見てまいりました。正味1時間にはなったでしょうか。しかし肉声の残る作家にあまり慣れておりませんので、なんだかとても貴重に思え、その一挙手一投足、くいいるように目に焼きつけてまいりました。言っても明治生まれの平成8年没、映像が残っていてまったく不思議はないのですが、そのお声、仕草に触れるとなんとなく作品そのものにも血が通いだすように思われます。これから行かれるご予定の方、おすすめは米寿のお誕生会篇、クライマックスに流れる世界のマ○ケル・ジャクソンです。

 また展示室の最後で歓談されているおじさま方のお話を盗み聴いておりましたならば「人生が破天荒だからもっと乱雑な字を書かれるかと思ったらちゃんとした字なんですね」「ほんとだね、意外ときっちりしたとこあるんだね」とのこと…そう、宇野千代さんの文字、ほんとうに読みやすくかわいらしいのです。次回の目玉は徳田家蔵、千代さん筆秋聲宛書簡5通。うち4通は初公開です。その筆跡や便箋の使い方、内容の運びをみておりましても、たいへん丁寧な方だったことが伝わります。これぞ自筆の醍醐味。神奈川さまほどの規模こそございませんが、徳田秋聲記念館でしかできないニッチな内容にてお届けいたします。神奈川近文さま、こっとりとお邪魔いたしました。ありがとうございました。
 さて明日のこの時間は「いざ鎌倉! 同じ神奈川でも意外と遠い!」です。お楽しみに。


  


小説家の誕生
  2017.6.6

 本日、金沢文芸館さんのコーディネートで金沢市立大徳小学校さんにお邪魔してまいりました! 
 ご親切にもコーンに当館と文芸館さんの名前を貼って駐車場の確保をしていただいておりました。恐縮です。自分の名が貼られたコーン、人生で初めて出会いました。ついつい記念撮影…(→)
 こちらの4年生は総勢137名と比較的大所帯。お隣の大徳公民館さんにお教室を借り、「金沢の三文豪」についてお話しさせていただきました。

 最初はきちんと聴いてくれていた生徒さんも、こちらのお話にメリハリがないがためにだんだんと飽きてくる様子が壇上にも伝わってまいります。次第にザワザワしてくるその空気に焦りながらもなすすべなく…そんな折々に各組の担任の先生方がちょいちょいシメてくださる…というと言葉が悪いですが、要所要所できちんと話に集中するよう、うまいこと促してくださるのです。話している内容にとってはある程度専門家のような顔をしてお邪魔しているわけですが、教えるというスキルに関しては先生方がやはりプロ。先生方のお話しする様子を見ておりましたらこちらも自然と姿勢がピンとしたものです。久し振りの感覚でした。
 最後に先生が生徒さんに感想を募ってくださったところ、当初「鏡花さんが」「鏡花さんが」とつづいて内心(おっととバランス~!)とつっこんでおりましたところ、とある女の子が「室生さんが…、室生さんの…」とそのご感想を発言されてたいへん心ぬくまりました。室生さん呼びの新鮮さ、ご近所のおじさん感たるや! 思わず先生と顔を見合わせてニコニコしてしまいました。
 そうして鏡花さん室生さんに押され気味のわれらが秋聲先生でしたが、最後にある男の子が一発決めてくれました。「徳田秋聲さんのお話が面白かったので、僕もそんなふうに書いてみたいと思いました。」……よしキタ! 全面的にバックアップさせていただきます!!!
 読んでみたい、は出てきても、書いてみたい、はなかなか出ぬもの。本日、ちいさな小説家の誕生の瞬間に立ち会いました次第です。



 


LOVEと花冠
  2017.6.3

 本日一穂展もう何度目かもわからないギャラリートークをおこないました! かたや百万石まつりで賑わう街中には目もくれず、当館へとご参集くださったみなさまに厚くお礼申し上げます。
 今日の収穫は午前の部にご参加くださったお嬢さん方とのやりとり、「あの堤防のところのはなんですか?」「あっ、奥歯の神様ですね」「奥歯か、しょくぱん○んかと思った!」です。べつに奥歯でもないのですけれども奥歯っぽいから勝手にそう呼んでいるだけで、アッそうか、アレがしょくぱんま○さまに見える方もいらっしゃるんだな! というのが本日の大きな収穫でした。たしかにあの白さ四角さ、なるほど勝手に奥歯と名づけてみなさま方の想像力の飛び立つ範囲をせばめてしまったかもしれぬこと、館として深くお詫び申し上げます。もししょく○んまんさまだとしたら、いつまでも無くならないLOVEといつの間にか置いてあった花冠の意味がわかった気がいたします。そうか、どき○ちゃん…! 

 しょ○ぱんまんと○きんちゃんは結婚しますか? との読者からの質問に、やなせ先生はいつかこうお答えになったそうです。「しません。所詮はパンと菌です」。切ない恋の物語です。しかしながらそこは、パン(秋聲の夜食)と菌(主に黒黴)とが共存する秋聲記念館前。花冠はだいぶん朽ちてしまいましたが、あのLOVE、いつか届いてほしいものです。

←まんなかのが微妙にどき○ちゃん色だった件…



 


光を追わない
 2017.6.2

 ちょいとこちらを留守にしている間に、またも秋聲先生スルー事件が発生いたしましたね! N○Kさんの某番組にて例の児童雑誌「赤い鳥」創刊号について言及があり、目次の秋聲先生より前のK花先生までの輝かしい執筆者お歴々のお名前が特殊効果でピカーと光るなか、すぐ後ろにいる秋聲先生には光あたらず…! ってオーイ!! と心のなかでは叫びましたが大丈夫です。われわれにはとっくにそんな耐性がついてございます。一緒になって映していただけただけでも有難きこと、贅沢は敵。にしても同じ箇所にて二度までも…!!(2月24日付記事参照)
 いえ秋聲先生は強い光が苦手でいらっしゃいますので、かえってちょうどいいってもんです。「余りちかちかする光は、私の弱い目には目眩しすぎる」「強ち光なぞ追つてゐなかつた」とご自身の生い立ちを綴った他ならぬ『光を追うて』についてそう語っておいでですから、あの方はもう光らせなくても大丈夫です。あえて光らせなくとも、見えるひとにはちゃんと見えているのです。
 いっぽう今朝ほどテレビ朝日系列・朝の情報番組「グッド!モーニング」さんにて、またまた林先生が秋聲の『黴』についてお話しくださいました。もはや黴と一心同体の秋聲先生、黴雨=梅雨の季節はいただきです!(書斎のお軸も秋聲先生自筆、梅雨の句にさしかえました!)
 林先生ありがとうございました。番組制作スタッフのみなさまにも感謝申し上げます。ホラ『黴』ってね、文学史にでてくるでしょ? 秋聲って作家ってね、と仰る林先生に対して「いやいやいやいや!」との演者さんのリアクションがなかなか心に刺さりもしつつ、しかしながらこれでずいぶんと多くのご家庭のみなさま方が、梅雨の時期になるとは思い出してくださることでしょう。例によってご尊顔(→)…いつも終わってからですみません…そしてここだけ掲載おゆるしください… 
 さてそんな湿気に強く光に弱い秋聲先生にぴったりのイベントです。今朝からの大雨で開催が心配された燈ろう流し、このあと夜7時よりどうやら無事決行の見込みです。当館も8時まで夜間開館しておりますので是非2階から無数の燈ろう流るる浅野川を眺めにいらしてください。  



 


サービス精神
   2017.5.28

 きのう、東京は文京区にございます弥生美術館さんより新企画展のチラシをお送りいただきました! 題して「命短し恋せよ乙女 マツオヒロミ×大正恋愛事件簿」。チラシの左肩には、秋聲のお弟子さんであった山田順子さんのお顔があしらわれています。このタイトル×山田さんのお顔×裏面に隣接する竹久夢二美術館さんチラシとのリバーシブル仕様=『仮装人物』ですね! 
 たいへん短絡的に導き出してしまったこの解答、しかし山田さんと夢二さんと秋聲との微妙な三角関係を取り扱われるものにちがいなく、それすなわち『仮装人物』における「先生、私、山路と結婚しようと思いますのよ。可(い)けません?」の世界です。実は以前よりご丁寧にも企画趣旨等のご挨拶をいただいており、そのうえでの本チラシのご到着ですから秋聲のしゅの字、きっと登場することと存じます(HPに書いていただいておりました!) こちらの艶やかなる企画展、7月1日(土)からの開催となっておりますので、秋聲先生のお膝元、文京区へぜひ遊びにゆかれてくださいませ。

 と、よくみるとこのチラシの右下の黒い三角形、割引券になっているではありませんか…! なんと斬新な…この黒い三角形を提示されると、2名さままで100円引きになるという…! ものすごいサービス精神です。こりゃたまげました。
 そしてもっとよくみると、この黒い三角形とタイトルが入っている部分の紫色…当館オリジナル文庫『仮装人物』のカバーデザインのお色味とお揃いですね…ウフフ…!
 
←薄紫と黒の間にもうワントーン濃い紫があるのです。

 たぶんに偶然の一致かと思われますが、やはりひっぱられるところの雰囲気は似てくるものなのでしょうか。だからといって、同館に『仮装人物』をご持参のうえ受付でチラ見せされても「ん?」というお顔をされてきっと変な空気になるだけですのでご自重ください。残念ながらいかに同じ配色といえど当館の『仮装人物』に割引要素はございません。ただただちょっと、鞄が重たくなるだけ…。
 そんなことを一方的に書きながらなんだかすこし寂しくなってしまったので、当館の受付でもってご持参の『仮装人物』をチラ見せされた場合には、すこしニコッとしてさしあげるよう申し送りをしておきます。スマイル=860円(税込)です。





至福のとき
  2017.5.27

 すっかりお菓子をせびる館として認識されてしまったでしょうか、きのうも解説をさせていただいたお客さまから最中(もなか)をたっぷりちょうだいしてしまいました…しかも餅入り…。秋聲先生、しっかり人気者ですよ…好物がどっさり届きますよ…
 え~え~そんなァ~~とか言いながらちゃっかり手をだしたときのずっしり感がほんとうにすごかったのです。えっ小判はいってる??と疑うくらいの重量感。あけてみましたらばちょっと小判に似たデザインの最中がぎっしりでございました。念のため底の底までとっくり見てみました。小判は入っておりませんでした。ええ、いちおう公共の施設ですから小判的なものはちょっと…
 お気遣いありがとうございます。でも今後はほんとうに手ぶらで大丈夫です。ご挨拶にでた瞬間、そのお手元をちらっと盗み見たりなんかいたしません。おかげさまでいま焼き菓子、あんこ菓子、干菓子、芋菓子(ポテトチップですね)、チョコ菓子にいたるまで、あらゆるジャンルのお菓子が取り揃っております。ほんとうにすみません。
 ちなみに恐ろしくどうでもいい情報ですが、当館学芸員の趣味はそんなお菓子を箱詰めすること。企画展の準備に行き詰まるとは、お菓子をぜんぶ机に出してきて箱から箱へ。いただいたお菓子たちをさも最初からそんな詰め合わせであったかのように詰め替えてゆくのです。まさに至福のときです。知らぬ間に雑に入れ替えてあったりなどすると、手がつけられないほど怒り狂いますので、当館職員たちはいつもそっとしておいてくれるのです。

 至福、至福といえば、きのう最中をくださったお客さまから展示室で驚きの言葉がとびだしました。ひととおり解説を終え、あとご質問等ありますか??とお尋ねすると「いえ、なんかもう…幸せです…」とのご回答…。……もしや秋聲先生の資料に囲まれて幸せだと仰って…? たいへんな衝撃でした。当館、ひとさまを幸せにしてしまいました。いえ厳密には、秋聲先生の存在によりひとさまが幸せになっています。
 これはいいお仕事をなさいました。餅入り最中、みっつ差し上げます(越後屋感がぬぐえませんね…!)
 


 


キョーカキョーカ
  2017.5.26

 本日、川向こうの某K記念館さんの新企画展「1907―明治40年の鏡花」無事オープンです! おかえりなさい!
 もしや今朝ほど、某K記念館さん事務室の電話が一回だけ鳴って切れたかもしれません。そんなイヤガラセのような電話、すみません当館のしわざでした。無邪気にまったく企画展には関係のない事務連絡をしようとして受話器をとり、ワンコールでハッとしてガチャン! と切ってしまったのです。そうして「展示替えって終わってましたっけ!!?」と慌ててお隣の職員さんに訊ねましたなら「鏡花今日からです!」と教えてくれました。あぶないあぶない、よほどの事情がない限り、展示替え中に電話などしてはならないナントカ館の不文律…うっかり犯してしまうところでございました。わりとデリカシーに欠けるところのある秋聲記念館一味ですが、そこにばかりはたいへん気を遣います。たまに派手にやらかしては平謝りです。
 アッそうか鏡花今日からか…とほっとしてふたたび受話器をとりながら、キョーカキョーカらって…プークスクス!となってしまった心のうちはなんとか表に出さずに済みました。
 さて、当館にも届きました新企画展のチラシ…チラシ? チラシといっていいのかアレはもうポスターなのか、前代未聞のオシャンなペーパーを開いてみておりましたらうちとこの秋聲先生もお邪魔しておいででした。「雨声会」の集合写真、右端っこにぎりぎり入れていただいておりました。ずいぶんな見切れ具合ですがよくよくご覧ください、ちょっと可愛らしい顔をしておいでです…!
 当館にも同会のお写真を展示してございます。が、ここまでクリアではないので、お顔までははっきり確認できないかと存じます。
 あと手の感じにもご注目です。お隣の紅葉先生のお葬儀のお写真と比べてみてください。手を置くポジション、だいたい決まってる…! そんな超マニアックな楽しみ方をしてしまいました。相変わらず秋聲先生に目がない当館ですみません。みなさまぜひ明治40年のK花における明治40年前後の秋聲もセットでお持ち帰りいただけましたら幸いです。



 


キスの日
   2017.5.24

 ちょっと乗り遅れてしまいましたが、毎年恒例個人デスクに設置しております日めくりさまによりますと、きのうは「キスの日」だったそうですね! 昭和21年、日本ではじめてキスシーンのある邦画が封切りされた日を記念して制定されたそうです。
 「キスの日」といって思い出されるのはこちらでも何度かご紹介しております「二日会」の記録冊子のこと。秋聲を囲んで毎月2日に会合をもうけ、毎回お当番幹事がその会の様子を記録してゆくという奇跡の冊子が二冊、徳田家と当館とに収蔵されております。
 そのうち当館蔵のものの第32回の記録にこのような記述あり。「室生さん岡田さんの、このごろの若い者はあんなキッスばかり活動で見せられて吃驚するだらう、何の吃驚なぞするものですかといふ風な、ご論戦などまことに盛んでありました由、幹事はちよつとお酒を買ひに行つてゐましたので聞きはぐり、まことに残念至極でございました。」…こりゃあ全編とおして面白いですね…!
 室生さん岡田さん=室生犀星、岡田三郎でございましょう。そしてこれを記録している幹事さんこそ、次回企画展の主人公・宇野千代さんでございます。さすが、さすがの目のつけどころ。犀星さんにつきましてはもはやご紹介するまでもないですが、この岡田三郎という小説家、お時間おありの方ちょいと検索してみてください。びっくりするほどの美男子です。これまた安易にウィキペディアさまを繰りましたらば、日本人でフランス女性にもてるのは岡田三郎と東郷青児だけ、との文言がございました。洋画家・東郷青児、誰あろう宇野千代さんの三番目の夫です。  

 レプリカがあるのをいいことにあまり実物は出さないこの冊子、ましてや徳田家蔵のもの(←)はよほどそのページを見たい! 見せたい! というときにしか借り出してまいりませんので、前回展示いたしましたのはきれいに10年前です。それを次回企画展では二冊揃えてお出しする予定ですのでお見逃しなく。
 前年6月にも「一座、談論風発、接吻の話、庭をつくる話入り乱れて」云々とありますよ! 犀星さんの匂いがしますよ!
 


 


続・橋いっこぶん
 
  2017.5.23

 きのうこちらでブチブチ申し上げておりました橋いっこぶん問題、今日もまたしつこく恐縮ながら今朝ほど常設展示室にてなんとはなしに「秋聲文学地図」パネルを見ておりましたら、橋いっこぶん長い「鏡花のみち」のその長い部分にどどーんと当館の表示が乗っけてあるのに気がつき、ちょっと笑ってしまいました。乗っけてある、とまるで他人事のように言いましたけれども乗っけたのは自分です。しかし無意識です。スペース的にやや右へずらすこともできたように思われるのですがこれがほんとうにわざとではなく、ウワ潜在意識こっわ~…! となったりしております。そう、両岸の長さがまるで対等であるかのように…。
 これまでにご覧になった方には申し訳ございません。今後ご覧になる方は、秋聲記念館の館の字からチョロリと延びる青い道のしっぽ、お見逃しなきようお願いいたします。「鏡花のみち」は天神橋までつづいております。
 またなぜそうまでして天神橋まで延ばしたかったのかといえば、ここがかの有名な某K花先生代表作「義血俠血」の舞台になっているからですね! そうして「鏡花のみち」沿いにはヒロイン「滝の白糸」像も建てられているわけですが、これがまたややこしいことに梅ノ橋ほど近くにあり、かつ現在は鉄橋の二橋に比べ梅ノ橋がさもいわくありげな木造風だもんですから、地元のひとでも本作の舞台は梅ノ橋と思われている方が多いようです。が、梅ノ橋は古そうに見えてその実明治43年架橋ですから、明治27年の本作発表時にはまだ存在しないのです。 
 秋聲記念館一味といたしましてもつねづね(ねえさんそこでいんですか…??)と2階サロンからその背を見つめていたところ、ある日ご近所さんより「あの像ほんとはもっと上流にあったんじゃなかったかな~?」と聞きました。創建当時は天神橋寄りにあったのが、台風だか大水だかで被害を受けるたびどんどん下におりてきたんだそう(おそらく自力でなく、設置者のなんらかの判断により下流へおろされてきたのでしょう)。とかなんとかきちんと調べぬままお伝えしております。どなたか、この夏の自由研究にいかがでしょうか。
 




橋いっこぶん
   2017.5.22

 6月2日(金)、毎年恒例の百万石まつり協賛事業「加賀友禅燈ろう流し」に合わせ、夜間開館いたします! 19時~浅野川の天神橋のあたりから燈ろうを流し、→「梅ノ橋」→「浅野川大橋」→「中の橋」あたりで回収予定だったかと思います。当館が梅ノ橋の真ん前に建っておりますもので、2階サロンの大窓など川中を流れてゆく燈ろうを眺めるのに絶好のビューポイント。そんなわけで、夜20時まで開館延長することとなりました(入館は19時半まで)。

 それにあわせて、きのう館のまえに通行規制の看板が出ておりました。19~21時までのあいだ、川沿いの「秋聲のみち」、対岸の「鏡花のみち」ともども車両通行止めとなるようです。「秋聲のみち」根元、当館前駐車場もお使いいただけなくなりますのでご注意ください。
 ちなみにいつも「秋聲のみち」と「鏡花のみち」とをご案内する際、「秋聲のみち」は当館前「梅ノ橋」→「浅野川大橋」→「中の橋」までなのに対し、「鏡花のみち」はひとつ上流の「天神橋」→「梅ノ橋」→「浅野川大橋」→「中の橋」までと橋一個分長いことにこっそりグヌヌ…となっている秋聲記念館一味です。いやいや長けりゃいいってもんじゃない、短くったって中身がギュッとしていればそれでいい、桜並木もあるし、お隣の黒柴犬のケンちゃんだっているし、なんでも長けりゃいいってもんじゃないのさ…! とむりくり納得させようとする右脳のいっぽう、いやしかしそもそもなぜ橋一個分短くある必要があったのか…とやはり分析することをやめられない卑屈な左脳あり。と、結果思い当たるのは、対岸は梅ノ橋からひとつ上流の中の橋までふつうに道路がつづいているのに対し、こちらは梅ノ橋で道路がストップしており、中の橋まで行くには土手へ降りねばならぬというこの現実…なにおぅ!? 誰じゃあ!ゆく手を邪魔するモンはァ! →→→ いや当館だわ!! となってこの脳内の抗争は終結です。
 そう、梅ノ橋たもとに当館がドスンと腰を下ろしているため、ここから上流のほうへはお通りいただけないのです。しゅ、秋聲先生…「秋聲のみち」を短くしているのは、われわれのせいでござんした…!! と膝をついてお詫びするところまでがいつもの脳内コースです。
 




石川・富山・新潟・長野
  2017.5.21

 おかげさまで5月6月、外部団体主催の秋聲関連講座がやたらと集中しております。ありがたいことです。先日はご近所の町屋塾さんの主催で、秋聲とこの東山界隈とのかかわりをご紹介する講座を当館にて開催させていただきました。そして先週は高砂大学院さんの講座(於 中央公民館)。来月も外部の講座計5回と、黴がその力を強める季節とともに順調に勢いを増す秋聲記念館、いろいろなところに胞子を飛ばしてきている今日このごろです。
 ちなみに町屋塾さん主催の講座には、昨年当館主催のイベントにお招きした黴先生こと森川千春先生が混じっていらしたことにも驚きました。(町屋塾さんの)フェイスブックでみて~とご参加くださったとのこと。標題に「黴」は出していなかったにもかかわらず、黴関連でけっこうお話しする予定もあったため、さすが隠れた黴の匂いに敏感でいらっしゃいます。
 そして先日はまた地元のMROラジオさんが番組の収録に来てくださいました。5月24日(水)放送の「あさダッシュ!」という番組中、9時50分からの「北陸新幹線で行くいい旅ラジオ旅」とのコーナーに学芸員が出演いたします。このコーナーはタイトル4県の各放送局で放送されるそう。ご来館くださった丸一レポーター(かわいらしい女性)と会議室でインタビューの収録を~とお話ししながら、このコーナーはとにかく元気に!って言われるんですよ~とマイクを片手におもむろに立ち上がられたのにハッといたしました。思わず「アッ立ちましたね…!」と要らぬリアクションをしてしまったのですが、「アッ大丈夫です!元気なとこだけ録ったら座ります!」と、たいへん元気にコーナータイトルを発しておられました。こちらも立つ?立つのかな??とちょっとドキドキしてしまいました。
 それはさておき毎度感心することに、アナウンサーさんやレポーターさんといったお仕事をされている方は何せ発声がちがいます。撮影や録音がはじまると急にパリーン!としたお声をだされるので、講座やなんかを思い返してもこちらがいかにモチャモチャしているかを思い知ることになるのです。しかたがない黴に浸って生きているのだもの…と自分を慰めるいっぽうで、でも「あらくれ」ってわりと発声練習によさそうな語感だな、と思ったりもしています。
 




石川・神奈川・東京
 2017.5.19

  石川近代文学館で開催中の企画展「乙女の文学展―石川ゆかりの作家の少女向け読み物―」を観覧してまいりました。川端康成×中原淳一のチラシが素敵ですね! そんなビジュアルの強さに引き寄せられていったのは間違いなく、また実際に展示されていた中原淳一の描く「伊豆の踊子」挿絵のモダンさもろもろに魅了されたのも間違いがないのですが、やはり当館的見所といたしましては秋聲先生の少女向け小説「初奉公」の初出誌…! なんと「少女の友」大正3年3月号の展示があるのでございます。
 
 当館で数年前に開催いたしました「徳田秋聲らしからぬ!~しゅうせいとこどもむけよみもの~」展の際に展示したくてできなかったこの一品。何故なら残念ながら当館にその収蔵がないため…。今回展示されていた同誌は県立神奈川近代文学館のご所蔵品で、石川近代文学館さんがはるばる神奈川より借りてこられたものだそうです。こちら前期(~6月18日)で引き揚げてしまわれるそうですから健気なお初ちゃんのドキドキ初奉公を見守りたい方はお早めにどうぞお運びください。その全文につきましては本HPの「不定期連載」にあげております。かつて展示できなかった悔しさを、せめてテキストだけでも…! とこちらにて晴らさせていただいた名残です。

 こうして石川の他館さんでも神奈川県産の秋聲に出会えるこの5月、実は東京のほうでも秋聲先生に出会うチャンスがございます。練馬区石神井公園ふるさと文化館さんにて開催中の特別展「映画に魅せられた文豪・文士たち―知られざる珠玉のシネマガイド―」中、秋聲先生がご覧になった映画とともにご本人のご紹介があるとのこと! 先日、東京在住の名誉館長がちょっとご挨拶に行って来る~と同館へとお出かけになり(ご丁寧に開催のご案内があったもよう)、その後同館より超立派な図録が当館のほうへも届けられましてございます。

 石神井公園ふるさと文化館さんのお心遣いに感謝申し上げます。また当館の名誉館長兼、最強の広報部長にも深くお礼を申し上げます。名誉館長が通られたあとにはパンのくずよろしく当館へのご招待券が落ちているという噂です。

 



川こえて黴
    2017.5.18

 某K記念館さんに黴の胞子が飛んでいるとかいないとか? 先ほど展示解説させていただいたお客さまよりうかがいました。だいたいの場合において、あの清冽な記念館さんに黴を持ち込むのは当館一味のしわざですが、今回の黴発生につきましては当館のあずかり知らぬこと…沖縄方面が梅雨入りしたと聞きますのでそろそろ湿気とともに黴の勢いが増す時節といったところでしょうか。これは十分注意されませんと5冊で済まぬやもしれません。入荷したつもりもないのに6冊7冊と展示室の隅々に発生している恐怖…! ゆけ! われらが黴!!
 さて、なんのことやら? と思われているみなさま方に朗報です。川向こうの某K記念館さんでも秋聲著『黴爛』(講談社文芸文庫)がご購入いただけるよう手配してくださったとのこと。次回企画展にあわせた特別措置でしょうか。ありがとうございます。
 とうぜん当館でも絶えず販売をさせていただいておりますが、こうした館で収蔵する資料も出所がどこかということをたいへん気にいたします。モノとしては同じでも、たとえば徳田家からご提供いただいたものと古書店で購入したものとではその価値まさに雲泥の差。今回の件につきましても、某K記念館さんでお求めになったのか、当館で入手されたのか、そこんとこしっかり記録されておかれましたなら、のちのち何かがどうとかなってうっかりソレが展示などされることになった暁に、添えられるキャプション内容が異なってまいります。どうかそのあたりもご留意のうえお求めください。

 ちなみに現在の企画展で展示している資料には、かえって古書店から徳田家に収蔵されたパターンのものもございます。すなわち秋聲作品が載った雑誌。書いてしまったものには無頓着でほとんどおうちに残されていなかったという秋聲作品掲載雑誌を、一穂さんが古書店から買い集めてきて値札もそのままに保管されており、そのほんの一部を今回展示させていただいております。

 あらかたは徳田家→記念館の直通ですが、古書店→徳田家→記念館とのルートもまたそこに物語をはらむもの…。一穂さんにならい、値札にそっと購入した場所、日付、状況など記しておいていただけると後世のひとが喜びます。





父子相伝
   2017.5.14

 榎本隆司先生をお招きしての企画展記念講演会「「一穂いるか―」―父子相伝―」、昨日無事終了いたしました。ご参加くださったみなみなさま、ありがとうございました。なんと東京からも榎本先生の追っかけ3人組さまのご参加あり!〝榎本節〟と名高いあの語り口に魅了されていらっしゃるのですね…わかりますわかります…

 先日ちらとご報告申し上げておりました演題「一穂いるか―」における棒が一本問題、きっちり触れてくださいました。この鍵カッコ付きの「一穂いるか―」は、ご想像のとおり父・秋聲の口癖のようなもの。と、ここで榎本先生からすこし注釈がつきまして、正確には「一穂は?」だったそうです。榎本先生が一穂さんの奥様・政子夫人から聞かれたお話で、秋聲先生はお家に帰ってくるとまず「一穂は?」と必ず訊かれたんだそう。それは単に所在の確認ということでなく、ご自身のまるで分身でさえあるかのようなご長男・一穂さんの存在そのものを確認する作業だったのではなかったと…(ごめんなさい、ここらたいへんニュアンスにかかってくる内容でして、お伝えするのが難しく…)。その微妙なニュアンスをわかりやすく表象すべく、すこし乱暴だけれども「一穂いるか―」との形にしてみた、とのことでした。そうしてみると、棒一本の存在にいろいろな思いや空気感が含まれてくるような気もいたします。
 その他もろもろ、ちょっとここではお伝えしきれませんので早々に諦めますが、前日、榎本先生はずいぶんと長く2階の文学サロンにお座りになって浅野川を眺めておいででした。そして、とにかくこの館の景観はいちばんだ、と何度も絶賛してくださるのです。すると同席された名誉館長(秋聲令孫・一穂さんご息女)から「おじいちゃまの作品は黴とか爛とかそんなのばかりだからね、記念館はうんと明るくしてくださいって、お願いしてみたのよ」とのこと。なるほどなるほど、それでこの開けた窓ですね。外光を嫌うナントカ館で、これだけの大窓はなかなかの挑戦です(もちろん展示室には届きません)。おかげさまで職員は気持ちよく働かせていただき、お客さまにも館全体のこの明るい雰囲気、褒めていただいております。

 秋聲先生ご本人はもちろんのこと、秋聲記念館の設立を願った一穂さんがもしこの館をご覧になったら、なんと仰ったでしょうか。





LOVEを胸に
  2017.5.13


(心を持たざる神々にはじめて人間のソレが芽生えた的な…?)

 落し物でしょうか?LOVEを落とされた持ち主さんに無事戻りますように…






企画展「中西悟堂とその仲間たち」
 2017.5.11

 先日ふるさと偉人館さんにお邪魔して、標題の企画展を観覧してまいりました。中西悟堂、みなさまご存じ「日本野鳥の会」の創始者です。
 先だって、当館のごんぎつね館長が観覧に行かれ「平塚らいてうの手紙とかスゴイのが出てた」と仰ったものですから、「へえ!交流あったんですね!アッ雷鳥だからですかね!」との反応をいたしましたら、なんだかかわいそうな子を見るようなお顔をされました。お恥ずかしいです。
 そんなわけで、それらを見にうかがったわけですが、らいてうさんのみならず「その仲間たち」とくくられた文士たちの資料のものすごいこと…!川端康成の自筆原稿、井伏鱒二とのツーショット写真、木村荘八(こちらは秋聲『爛』の挿絵を制作された画家さん)のお手紙などなど、悟堂ときいて想像されるのとはまるで違った文学館顔負けの資料が山ほど展示されておりました。また一枚の集合写真、悟堂とならんでシュッとして写る北原白秋のお姿にはちょっと笑ってしまいました。いやすみません、かっこいいのです。どこででも白秋は白秋といった独特のオーラを纏ってシュッと写っていらっしゃるようすがどうにも目をひいてちょっと面白か…いえすみません黙ります。

 悟堂と秋聲といって交流の記録はすぐに思いあたらないのですが、秋聲の好物「鶫(つぐみ)の羹(あつもの)」(=金沢の郷土料理「治部煮」のこと)から、秋聲次兄・順太郎さんをはじめ武士たちが嗜みとした鶫猟のことが思い出されます。明治以降、その乱獲を防がんとした悟堂の働きかけなどにより、昭和22年に「鳥構え」なる捕獲方法は禁止となり、鶫も禁鳥となったそう。現在の治部煮には鴨が使われることが一般的となりました。

           野田山で鳥構え中の順太郎さん→

 悟堂さんからの流れで鳥料理の話なぞして恐縮です。しかし秋聲の小説「鶫の羹」、当館のオリジナル文庫ではないながら当館のみの販売となる金沢シリーズ「感傷的の事」に収録されておりますのでこの機会にぜひご一読くださいませ。金沢から鶫をおみやげとして持って帰って自分でつくるわ食べるわ妻にやるのをもったいながるわ、ほんとに大好きらしいです。





ぼうがいっぽん
  2017.5.10

 先日とりいそぎ爪切り案件につきましては和解が成立したところですが、残念ながらその舌の根もかわかぬうちに一穂展にてまたもやケンカを売るような記述を登場させてしまっております秋聲記念館です。こうなるとなんだかもう根本的な問題です。
 2階通路に一穂さんによる秋聲作品の刊行協力一覧という大きなパネルがございまして、一穂さんが後書きや解説、年譜を担当された秋聲の著作物をざっとリストにしております。

 中の一冊、川端康成ほか編『日本の文学9 徳田秋聲』(昭和42年、中央公論社)には付録の月報に一穂さんと川端康成の対談記事がございまして、なかから一節、秋聲の出世作『黴』における「M先生」(モデルは紅葉先生。もみじのM?)の臨終のくだりにつきまして、「アレで鏡花さんが怒ったっていうからどんなひどいこと書いてあるかと思ったらべつにたいしたことないですね?」という康成に対し、一穂さんの「まぁ神様のことは書いちゃダメってことじゃないですか?」との応酬があり(ちょっと意訳)、よりにもよってその部分をだけ抽出してパネルにさっくり掲載しちゃうという要らんことしいの地雷っぷり。だってそのあとすぐに『黴』のご紹介がくるんだもの、必然的な流れなんだもの、と言い訳しながら太字にて使わせていただいております。『黴』での記述、康成先生的にはセーフだったもよう。それはもう秋聲一派ということでひとつ、よろしくお願いいたします。
 そのひとつ前の欄、『現代文学大系11 徳田秋聲集』(昭和40年、筑摩書房)に一穂さんとともに年譜を担当されたとして記載があるのが、13日にご講演をいただく榎本隆司先生です。こちらまだお席に余裕がございます。
 ちなみにチラシに載せておりますご講演タイトル「「一穂いるか」―父子相伝―」が、このあとの広報物には「「一穂いるか―」―父子相伝―」と何の注意書きもなくひそかに変えられていること、お気づきの方おいででしょうか?講師の先生によるご指示でして、ぱっと見ほとんど間違い探しレベルの変化ですが、その棒一本により醸し出されるニュアンスのちがい、当日ご解説いただけることを期待しております(そう、各種刷り物ご担当の方すみません!タイトルちょっと変わりました!!)。



 


一穂さん、いいお名前
  2017.5.7

  昨日、一穂展3回目となるギャラリートークをおこないました。ちょっと風邪をひいてしまったものですからお聞き苦しい点もあったかと思いますが何卒お許しください。風邪をひくときだってあるじゃない…人間だもの…すえを。季節の変わり目、GWの遊び疲れなど、みなさま方におかれましてもくれぐれもご自愛くださいませ。
 さて、そうしてギャラリートークを終えましたら、お客さまから「あの…コレ…」とごく遠慮がちにお渡しいただいたものがございました。「これは今しかないと思って…」と頂戴いたしましたソレ。お菓子です。中を開けるとなんとこちら↓

  「穂の一」…!!

 なんということでしょう、世の中にはこんな素敵なお菓子が存在するのですね…!店名やら商品名やらは極力出さないようにしている寸々語ですが、こればかりはご紹介しないわけにはまいりません。穂の一…これはアレですか?一穂展だからということでよろしいですか?一穂展の今こそコレを!とのコンセプトにて?わざわざご購入のうえ、ご遠方から持っていらして?ご自分のお荷物も重たかろうに??
 感激です。秋聲先生へのおみやげの次は一穂さんへのおみやげをまで頂戴してしまいました。徳田家、お家全体でみなみなさまに愛されております…!
 13日の企画展記念講演会には一穂さんご息女・徳田章子名誉館長も東京より駆けつけてくださる予定ですので、ぜひお目にかけるためこれは大事に大事にいただかなくてはなりません。でもまァ全貌の把握のためにまずはいったん開けさせていただきましょう?そうしましょう?とかなんとかこじつけながらヤーッと開封していたところにやってきたのはまさかの某K記念館さん!
 えっ新着お菓子のにおいって川向こうまで届くんです…?例の爪切りの一件、お怒りです…??
 中をとりもつお客さまからの奇跡の差し入れにて、なんとか鎮めていただきたいところです。





子どもの日
 2017.5.6

 世はGWだというのにすっかり更新を滞らせてしまいました!今年も鯉流し、元気に流れておりました。撮影に行ったカメラマン(当館職員)曰く「人ごみを撮りたかったのにうまくいかなかった」そうですが、なかなかどうして、よく撮れているではありませんか!川中を泳ぐ鯉もさることながら、土手にいる人の多さ!ふだんの東山の何十倍という人出です。

 上記は4日、さてきのう5日は子どもの日ということで、以前から告知しておりました朗読会「父への手紙、子への手紙」を開催いたしました。ご参加のみなさま、ありがとうございました。
 今回ははじめて秋聲先生の再現書斎を舞台にイベントをおこないました。ふだんは貴重な遺品類を展示させていただいておりますもので、踏み込むことまかりならぬ聖域として守り抜かれている一角ですが、うーむ今回の朗読会のコンセプトにはもってこいではあるまいか…ということで、学芸員の立ち会いのもと、こちらでほんの短い秋聲の短編「春さき」を朗読していただきました。また、身ひとつお声ひとつでたいへん有難いところ、さすがの出演者・西本浩明氏のご発案により、書斎外の障子に母と子の姿を映し出すというファンタスティックな演出も!開会前にちょっとしたハプニングもありながら、それをも忘れる(忘れてください)劇的な空間となりました。
 その後「黴」第68回、一穂さんの「父への手紙」の朗読を、それぞれに場所を変えながらお届けいたしました。当日、撮影を担当していたカメラマン(当館職員)から、(画角がうまくとれない、そっちで予備おねがい!)と耳うちを受け、ガッテンだ!と撮ってみた写真がこちら→
 向いてないにもほどがある!というわけで潔く諦めました。西本さんにも申し訳のないことです。

 また、もうひとつの反省点として、音響もすこしお手伝いさせていただいたのですが、当館のCDデッキの音量ボタンがカチカチ式だったもので、フェードインアウトの操作に難儀をいたしました。どうしたってカチカチいっちゃう…!完全犯罪を目論むスナイパーのように西本氏のお声が大きくなるタイミングを狙ってはカチッすることを試みましたがわりと徒労だったかもしれません。今度CDデッキを新調する際には、つまみをぐるっと回す式のにしたいと思います。



 


ありがとう林先生
  2017.5.2

 みなさまきのうご覧になりましたでしょうか??フジテレビ系のクイズ番組「ネプリーグ」にわれらが秋聲先生がご登場でございました…!!

 いまを時めく超有名講師・林先生による漢字クイズコーナーにて「黴」が書けるか読めるかというくだり、林先生が「徳田秋聲という作家が『黴』って作品書いてます」とご解説くださり、左下にはなんと秋聲先生のご尊顔が…!ものの数秒のことでしたが、たいへんに得がたい瞬間でした。ネプリーグさん、林先生、ご紹介ありがとうございました。

(←すみません、ここだけ掲載お許しください!)

 このお顔写真、当館から提供しておりますので、もちろんそんなご計画のあることは存じておりました。お電話があった際にも、他の職員より「ね、ネプリーグって仰ったかと…!」と互いにガタガタ震える手で受話器の受け渡しをおこない、お話をいただいたときには手汗が止まりませんでした。であるならばすぐにでもみなさまにご宣伝すべきだったのですが、ご先方より届いた申請書の一隅に「もしかして不使用の場合も…」といった内容の文言(おそらく定型句)が申し訳なさげに掲載されているのを発見して怯えに怯え、大きな声で言ってまわることができませんでした。われわれはがっかりするのに比較的慣れっこですが、世の秋聲会のみなさま方をまでテレビの前でがっかりさせては申し訳なく……アレッ来週だったかな?この番組じゃなかった??アレッ??とラテ欄を探させてしまうことになってはなんともしのびなく…(そもそもそんな特集ではない)。まぁ、予定は予定ですからね、出ないこともあるって書いてますしね、と普段より知らず染み付いてしまったそんな予防癖によりなんとなく宣伝せぬまま当日を迎えてしまったこと、今はたいへん後悔しております。
 いえ、ご担当の方はたいへん丁寧かつ迅速なご対応にて安心クオリティでしたから「で、秋聲ってば出ますか出ませんか!?」と正面きってお尋ねすればお答えいただけたかもしれません。しかし、秋聲記念館のひとなんか怖…と思われることを恐れ、「え、あ、そうですか、フ、フーン」とべつによくあることのように取り繕ってしまったのです。
 その後、『黴』でるかもです…!と職員に伝えると、「えっ『爛(ただれ)』もあるって言わなくていいですか??」と別々にふたりが同じことを言ったのに、これぞ秋聲記念館マインド…!と感動もし、いまや己の卑屈さを深く反省もした出来事でした。





実用主義
 2017.5.1

 5月になりましたので、書斎のお軸をかけかえました。今月は秋聲の師・尾崎紅葉の俳句幅「稗蒔の離々として嗚呼鶴病めり」です。書幅自体はけっこう長く、秋聲の再現書斎の床の間の上から下までめいっぱい使うサイズ感なのですが、いかんせん本紙が短冊だものですから極めて小さく、おそらくご観覧の際には中の文字まで確認していただけないことと存じます。せっかく紅葉先生の自筆なのにその実こっそり紅葉先生でなかったとしてもわからないくらいの残念感…しかしこの距離ばかりは館といたしましてもどうともいたしかね、ただただお詫びするほかございません。雰囲気だけじゃ足らないんですけど!!という方、すみませんが双眼鏡などご持参ください。あるいは、紅葉先生の字に見入る秋聲の背中を愛でるごっこに切り替えれば、床の間から秋聲愛用おざぶとんの位置くらいまで、その鑑賞の対象がすこしだけみなさま方に近づきます(豊かな想像力を要するなかなか高度な遊びです)。
 そうして秋聲の背の輪郭がなんとなく想像されましたなら、今度は書斎前のケース内にご注目ください。愛用のメガネやら万年筆などがあり、お顔の感じ、手の感じのディティールが定まってまいります。そんな脳内でもって、見るべきは「はさみ」。そこのはさみ、秋聲の随筆「はさみ」によると、紅葉先生の叔母さんが亡くなった際のお香典返しとして、先生からいただいたものだそう。新聞などの切り抜きに役立つから、とくださったにもかかわらず、秋聲はこれで爪を切っていたんだとか。
 つい肉も切ってしまいそうで爪を切るのが怖い秋聲のこと、気が向かないとなかなかヨシ!切ろ!とならず、「指の先がよく爪糞(つめくそ)のようなもので蒼くなつてゐる」けれども「安心して指を人に任すことが何うしても出来ない」結果、この質のいいはさみを使ってぽちぽちと「馬の爪ほど堅い」それを自分で切っていたそうです。
 たしかに刃物の類は切れ味がいいほど危なくないといいますし、現代でもそれぞれにいちばん具合のいい爪切りなど、みなさまお持ちかと存じます。秋聲が随筆に記す「國信」の銘も本体に見え、そうか、秋聲さんたらこれで爪を…先生からいただいたコレで、爪をねぇ…と思いながらご覧ください。さて、みなさまの脳内に、川向こうから無礼千万!と怒り心頭の兄弟子がすっとんでいらしたでしょうか? 





今年もGWNM
   2017.4.30

 とてもうっかりしておりましたが、はやゴールデンウィークに突入ですね!当館へも多くのみなさまのご来館をいただき、心よりお礼を申し上げます。
 ゴールデンウィークということは、そろそろ毎年恒例として近隣に根付いてまいりました「金沢ナイトミュージアム」がはーじまーるよー!ということ。事務室のホワイトボードにNMと書かれていて、なんですかコレ?と今年も無邪気に訊いてしまったこの謎の記号、ナイト・ミュージアムの頭文字です!GWの!

 さて、目にもナイトっぽいこのチラシ、各館ロビーなどで手に入れていただけるかと存じます。GW、そして金沢人にとってはGWなみに一大行事であります6月の百万石まつりにかかわるNM、ひいては各館の夜間イベントの情報がビラビラとどこまでもどこまでも広がってゆくこのリーフレット1枚に詰まっております。

←金沢ナイトミュージアムで検索!


 この先でしたら3日、犀星記念館さんにおける朗読会「龍笛と笙の調べにのせて」、5日、当館における朗読会「父への手紙、子への手紙」、6日、金沢蓄音器館さんにおける演奏会「モーツァルトのすべて(17)」が開催予定。それぞれ開始が18時半だったり19時だったりと、日中は学校だわお仕事だわ、という方々に向けて夜間の特別イベントとなっております。
 当館の朗読会はまだお席ございます。5日の子どもの日にちなんで、何せ子ども=秋聲長男・一穂さん推し!演芸列車「東西本線」代表でいらっしゃる西本浩明氏に企画展のタイトルともなった一穂さんの随筆「父への手紙―海岸の町から―」ほか、秋聲の短編をすこし朗読していただきます。「父への手紙」はほんの一部を展示室のパネルでご紹介しているのですが、抄じゃもったいないな…全文読んでいただきたいな…との思いから、朗読に乗せてお届けすることにいたしました。子への手紙、とは秋聲の作品名でこそありませんが、子どもさんたちの姿を描いた小説がたくさんありますもので、中からいくつかご紹介。
 子どもの日企画ながら、そこは徳田父子の作品ですからほんとの子どもさんには響かないかもしれません。ぜひ大人のみなさまのご参加をお待ちしております。
 


 


ごんぎつねのいる餅屋
   2017.4.26

 自慢はひとさまに嫌われると聞きますが、本日はちょっとだけ自慢をさせてください。(アッ昨日の「オール讀物」も自慢でしたか!?自覚がないのがいちばん厄介…!)

 先日より世間で話題の学芸員一掃宣言につきまして、当館も学芸員という身分を置いている以上やはりざわっとせざるを得なかったものですが、たしかにあれもダメこれもダメ、という場面は多いかもなァ…と思いあたるふしもあり…。それこそ海外と交渉して有名絵画やら国宝級の仏像やらをお貸しいただくようなお仕事こそしておりませんが、徳田家をはじめ関連するみなさまの唯一無二の資料をお預かりする身としてその責任は同等につき、決して無理はさせられないし、文学館としてできるとこ・すべきことって~…と日々地味にもんやりしていたところ、昨日デスクにふと新聞記事のコピーが載せられてありました。
 「朝日新聞」に掲載された金沢美術工芸大学の小松崎教授の、ご自身も美術館に在籍されたご経験でもって現場の立場から、しかし学芸員擁護だけでない中立的な目線により博物館の現状を語っておられるインタビュー記事です。いつもそっと何かしら資料を置いてゆかれることが多いもので、例によってアラ館長かしら…?と思えばやはり館長によるごんぎつね。しかも学芸員デスクだけでなく職員全員のデスクに一枚ずつ…!
 そりゃあ同じ職場に学芸員を名乗る人間がいるのですから、もんやりしているのは当の学芸員だけではありません。記念館の一味として、それぞれの立場からきっともの思うところがあり、それを汲んだうえで記念館全体として考えていこうとされるごんぎつね館長のお心栄え…!
 じんわりととても感動いたしまして、秋聲記念館はいい館長さんに恵まれましたよ!!と急に自慢したくなった次第です。

 もうひとつ、きのう寸々語を読んでくだすったという八木書店『徳田秋聲全集』編集者T氏より、本なんて作るほうより使うほうのがえらいんじゃん?といった内容のメールが届きまして(実際にはもっと格調高いうえ、あらゆる方面への配慮に満ちたお言葉でした。お察しください)、なにそれカッコイイ…!と打ち震えましたので、T氏に無断で本に親しむすべてのみなさまへとお伝えいたしたく存じます。北村先生が作中「餅は餅屋」と書いてくださっておりましたが、そう、つくほうがへっぴり腰でもその手には最強の杵と臼とが与えられているのです!さぁ信じてつけ!今日も明日もつくんだ餅を…!!
 


 

「オール讀物」5月号
   2017.4.25

 神々が戻られました~!!ふと二階展示室前通路から川のほうを見やりましたら、なにやらちんまりとした塊が水門のまえにあり、アレはもしや…!?と階段を駆け下り自動ドアさえもどかしく急ぎ走り寄りましたらば紛れもなく奥歯の神様たちでございました。おかえりなさい!!
 その一連の動き、まるで一時代前のトレンディードラマのようでした。ハッとして受付さんにすら何も告げずに急に外へと駆け出していく学芸員…しかしその先に待つのは、好き合いながら別れたかつての恋人でもなんでもなく謎の人面石3つ…。ともあれ、これにて館は安泰です。気持ちお菓子を控えつつ、横目で神々の動向をうかがいながら職務に勤しみたいと思います。

 そうして遠足に出かけてリフレッシュされた神々のもたらしたもの…「オール讀物」5月号です!!以前にもご高著『太宰治の辞書』で秋聲に触れてくださった北村薫先生が、今度は同誌にて、例の某K花先生と秋聲との火鉢案件…別名「お菓子と胃癌と殴打事件」(いつかの当館主催K花展パネルより)についてがっつりとご考察くださっているのです!
 そのタイトルがまた小説「中野のお父さん」シリーズ最新作「火鉢は飛び越えられたのか」!面白くないはずがありません。

 北村先生と㈱文藝春秋さまのご厚意により、本日館へと届きましたこの一冊。いつもありがとうございます。前回同様、興奮しすぎて一読してもまったく内容が頭に入ってきませんでした(すみません)。すこし落ち着いてから舐めるように拝読いたしたく存じます。平成の世にもなり、またこんな晴れがましい場でK花先生に殴られ倒す秋聲先生…でも大丈夫です。わりと誤解のされやすい秋聲先生のお立場もしっかりと鑑みてくださる丁寧なご高察により、あの事件の顛末がわかりやすく整理されております。比較的いらんこと言いの秋聲先生ですが、当然それなりの動機があるということを、すぐに「いらんこと言い」として片づけてしまう記念館以上に秋聲に寄り添って読み解いてくださっております。そう、秋聲先生も甘いもの好きの胃弱でしたから…
 また、今回も北村先生のお心遣いにより秋聲記念館の名を明記のうえ、まるで当館学芸員がたいへんに良いはたらきをしたかのように書き添えてくださっているのですが、良いはたらきをしたのは八木書店版『徳田秋聲全集』にほかなりません。ほとんどのことはここに記載がございます。手柄をまるっと横取りいたしまして…!
 誌面に「学芸員」とあるところ、「秋聲全集」とおのおの心のなかで読み替えてくださいませ…。北村先生、ほんとうにありがとうございました!!





潮の匂
  2017.4.23

 神々が遠足に出られてまだお帰りになりません。本日の金沢は晴天なり。テンションがあがってどこまで行ってしまわれたのやら…?

 さて遠足です。現在の一穂展でご紹介しておりますとおり、ご長女の瑞子さんを病気で亡くされたのち、秋聲は子どもたちを連れてよく遠足に出かけるようになります。おそらく家族の形を再構築しようとされたのでしょう、とくに子どもたちが海を見たかろう、との配慮により夏場は房州の海へ出かけることをルーティンといたします。そうして海であそぶ子どもたちを眺めつつ、それもまたすべて作品にしてしまう秋聲先生…。作品のほうは初出雑誌やら原稿やらを展示しておりますので、そちらをご参照いただくこととして、今回は展示室に出し切れなかった書簡をすこしご紹介いたします。

 八木書店版『徳田秋聲全集』別巻158ページ下段、大正7年7月22日付、遠縁にあたる岡栄一郎宛の秋聲筆葉書(石川近代文学館蔵)の文面が掲載されているのがご確認いただけるでしょうか?房州那古より、「小生は去る十二三日頃当地へまゐり、此処に海水浴に好きところを見つけ子供をよこすつもりで引続き滞在中です。時々海に入ります。」とあり、子どもさんたちのため秋聲がいったん下見に来ている様子がわかります(ついでに父、フライング海水浴です)。また「一穂と襄二が明日来るはずです。」とも書かれていて、そこから長男次男を呼び寄せている模様(一部抜粋)。
 続きまして次ページ、同月25日付、今度ははま夫人に宛てて出されたお葉書で(徳田家蔵)、「七月の『婦人の友』はもつてきましたが、八月のを見たいから早く送つてください。」とにべもなく用件だけ言いつけているようでいて、「子供は毎日海に入つてゐる。」(以上全文)ともそっと書き添える秋聲先生…やさしさですね…。おまけに「見」と「送」にルビが振られているのは漢字に強くないはま夫人のため…やさしさですね…!
 ちなみにこのときの下見体験を書いたのが、原稿を展示しております小説「潮の匂(におい)」、このときじゃないですけれども房州の海をエンジョイしておられる様子をパネル展示したのが、秋聲先生のレアな水着姿です。文字どおりパンツ一丁、当館の展示といたしましてはもう向こう10年ださないかもしれません。
 
         底意地悪く「潮の匂」チョイスです→
         (いやこれもレア!)



 


失踪事件
   2017.4.22

 事件です!奥歯の神様とざくろくん(仮)がいなくなりました…!
 つい3日ほどまえにはたしかに堤防のうえに存在していたのです。しかし何故だか3人して川のほうを向いており、へぇ~ざくろくん(仮)って背中側はむき出しなんだ~びんぼっ○ゃまスタイルかァ~などと世代の割れそうなしょうもないことを思っておりました。

←神々近影。水曜日は対岸を眺めておられました。


 そして今日、他の職員により「神々いなくないですか?」と訊かれ、いやみんな後ろ向いてんですよ~後ろ姿はただの石みたいに見えるから~と笑いながら確認してみましたらほんとにいない!?見渡す限りどこにもおられませんでした。なにか不吉なことの前触れなのか、お菓子ばっかり食べているからついに見限られてしまったのでしょうか(いちおう奥歯の神様なので、ええ…)。
 神々を見かけられた方は是非ご一報ください。ケンカしていなければたぶん丸っぽい奥歯と四角い奥歯(ひそかにブーバとキキという仮名があります)、そして前面だけ鮮やかなオレンジ色をしたざくろくん(仮)の3人セットでいらっしゃるはず(2月7日付記事参照)…ちょっとした遠足であることを祈るばかりです。

 さて、ざくろ・失踪といって思い出されるのは現在の一穂展にて初公開しております一穂さんの自筆原稿「柘榴の家」。おそらくは次弟の襄二さんの家出に材をとる書き出しとなっています。先日よりご紹介しております簡閲点呼から帰ると、「青二」が失踪したといって近所を探しにでかける「朱一」。そんなお話ですが、「柘榴の家」とのタイトルは一穂さんがずっと書きたいと思われていたテーマのようで、他の短編「臆病神」に「生れた時から庭の片隅に植ゑられてゐる、生き残つた一本の柘榴の老木を、部屋の窓から眺めやり、「柘榴の家」と云ふ長篇の中に、この一家の生活記録を盛り込んでみたい」との一節があります。これがこの前後もあわせてなかなかぐっとくる文章でして、今朝開館前に展示室を点検していてパネルがすこし浮いているところがありましたので急ぎ釘打ったのちなんとなくそのパネルに見入ってしまい、後ろ手にトンカチを持ちながら展示ケースの前に立つ恐ろしく危険人物が監視カメラに映っていただろうこと、発見した職員の心中を慮って今ごろぞっとしたりしています。 



 


第二の故郷
   2017.4.20

 タイムリーなことで、本日所用にて久し振りに「まちの踊り場」を訪れました。この寸々語を読んでくださっている方にはもう何度目かのご紹介となり恐縮ですが、「まちの踊り場」すなわち秋聲次兄・正田順太郎さんの旧宅です(正田家に養子に入られました)。父母ともに亡くなったのち、いわゆる実家を失った秋聲のこと、帰省のおりにはこの順太郎さん宅に泊めさせてもらったりなどしておりました。そのお宅が奇跡的に現存しているものですから、一昨年のリノベーションを経て、現在レンタルスペース「まちの踊り場」として活用されているのです。昨年ここで朗読会を開催させていただき、それから約一年ぶりにお邪魔をいたしましたら、以前よりもずっとお庭がきれいになっており、管理人ご夫妻のお心配りとご苦労のほどが偲ばれました。
 
 このお庭のことをとくに秋聲はよく作品に登場させており、秋聲の言う「柿も柘榴も」(「旅日記」より)現在でこそもうないけれど、お庭に向かうその自分の姿勢に秋聲先生を重ねるごっこは出来ますので、そんなことに興じておりましたならば小一時間などあっというま…(それをしにいったわけではないのですが)そして今年はさらに進化いたしまして、お庭を見る秋聲先生ごっこの次にはその同じお庭をたしかに見ていたご子息、一穂さんごっこまでもが出来るのです!
 きのうご紹介した一穂さんの小説「金沢紀行」によれば、点呼のため金沢へやってくるたび一穂さんもこの正田邸に泊めてもらっていたようです。原稿には「私の泊っていた岩根町の澤谷の家では、夕方になると、窓の傍に柘榴の花が咲いてゐる真珠色の空の下を、蝙蝠が一面に群れ飛んで蟲を捕つて喰つてゐるらしいのが見える」との一節があり、おお~同じ柘榴~!と父子の記述、さらには東京の秋聲宅との共通項にも何故だか心が躍ります。ちなみに旧正田邸の現住所は金沢市瓢箪町、当時の町名は岩根町といいました。邸内には、その住所の書かれた表札などもふと棚のうえに置いてあったりし、徳田家同様当時の生活の空気を感じることができます。金沢駅近くの比較的街中にして、松籟の音を聞き、管理人さんにより設置された巣箱周辺にあそぶシジュウカラの姿を見、というまさにそこだけ時間が止まったかようなこの空間こそ宝。

 それだけで十分は十分なのですが、今後もし機会あらば自分でお世話もせずしてアレながら、「そういえばあの~柘榴とかって、お世話、たいへんなんですかねぇ…?」とやんわり訊いてみようと目論んでおります。
 
  びっくりほど写真が下手なんですけど!→
  ほんとにきれいなんですよ!!


 


カステラの陰に
  2017.4.19

 小声で、しかししっかりはっきりとねだった成果です。館にカステラが到着いたしました~!(3月31日付記事参照) あれだけわかりやすくねだられてしまってはさぞ手ぶらで来にくかったろうとお察しします。その点につきましては深く深く反省をしております。けれどもこの寸々語、届けたいひとにきちんと届いておりましたことは純粋に嬉しく有り難く思っております。

←よくばってほぼ正方形に切ったらカステラにみえなくなりましたがカステラです。

 さて、カステラ。いつぞやもご紹介した秋聲の随筆「大学界隈」のなかにお菓子の抄がございまして、ご自宅のある本郷周辺のお菓子事情について語られております。「菓子のついでに、前田邸前の羊羹で有名な藤村(ふじむら)や、少し格は下るだらうが、一般向きな岡野などのことも書きたいが、藤村のカステラが一種特別な製法であること、岡野が最中(もなか)で有名なことぐらゐにしておかう。(中略)自分は一体に牛皮のやうな餅気のものが好きなのである。藤村のカステラが好きなのもそのためである。」とのこと…「藤村」とのお菓子やさん、徳田家にうかがう際本郷界隈をうろちょろしておりましたら、その看板だけは見るような気がするのですが(とんでもなく残像で語っております)、現在も実際に営業されているかどうかはわかりません。ネットでチャカッと調べた限り、もう営業はされていないような…?本腰を入れて調べたわけではありませんのでかなり不確かな情報で恐縮ですが、かえって情報お持ちの方、お知らせいただけましたら幸いです。藤村の特別な製法…この文脈だとどっちかというとモッチリ食感ということなのでしょうか?
 ちなみにこれまで完全にスルーしておりましたが、上記引用文の中略としたところには金沢の鯨餅というお菓子についての記述があり、「田舎へ点呼に行つた子供が帰りにその鯨餅をもつて来たので、久し振りでその風味をむさぼることが出来た。」との文章が入ります。
 おお点呼…簡閲点呼と言われる制度で、徴兵検査に合格したけれども実際に入隊していない人員を対象に、今年も体調に変わりはないかなどを調べる検査だそうです。本籍の関係でしょうか、一穂さんは金沢に召集され、そのときのことを書いた「金沢紀行」という作品の原稿を今回初公開しております(徳田家蔵)。いままでお菓子の部分ばかりを気にしておりましたが、まさかこんなところで秋聲の記述と呼応しようとは…!もうひとつちなみに、そんな情報たっぷりの秋聲の「大学界隈」は、父子の書いたもの比較して読めばよりおもしろかろうとの編者の小林修先生のご判断により、先般よりご紹介しております一穂さん著『秋聲と東京回顧』におまけで収録されています!これぞ一冊で二度美味しい!





肺周辺に巣食うもの
  2017.4.17

 さて、きのうのつづきです。犀星さん曰く「鏡花さんも秋聲さんも、その平常の話しぶりや、顔つきにも、甚だ金沢人らしい特徴が感じられますが、鏡花さんの好みは東京好みのやうなところがあるに引きかへ、秋聲氏は軍人もずつと上のほうにゐる人のやうに、声も渋く、顔も若々しく、とうてい、七十の老作家とは思へないくらゐの元気さであります。」とのこと。若い犀星さんと違って残念ながら音声の残っていない秋聲先生ですが(映像はあります)、渋い声といわれるとなんだかホクホクしてしまいますね!そして七十にして若々しいお顔…失礼を承知で申し上げれば、秋聲先生はどちらかというと基本老け顔のほうなのではないかと思われます。若いころからちょっと老け顔のひとというのは、そこに徐々に年齢が追いついてくると、どこかのタイミングでそれ以上老けなくなるといった印象がございます。昭和16年といえば「縮図」連載の年、すでに「老作家」と呼ばれながら80回連載を続け、結局中絶に追いこまれはしたものの、実はさらに50回くらい続けるつもりだったといいますからこれはたいへんな活力です。この二年後、秋聲は肋膜癌により死去します。享年73歳(数え年)。
 ふと気になって他のみなさまも調べてみましたら、犀星さんは昭和37年、肺癌により逝去されておりました。数えに揃えると74歳になりましょうか。昭和56年、秋聲長男・一穂さんもまた肺癌であったと名誉館長からうかがいました。数えの78歳です。K花さんは肺腫瘍(肺癌?とも違うもの?)により昭和14年、数えの67歳。こうしてみると、どうも肺の周辺に集中しており、さてはたばこかな?と安易に考えたりもするのですが、実際に喫煙と病気との因果関係はいったん置いておくとして、秋聲先生は超のつくヘビースモーカー!
 お風呂にも持っていくし、いつだったか何かしらの手術の際にも手術台まであがって「ちょっと待って一服させて!」と言い出し、看護師さんたちのあいだでそんなひと初めてですよ!!と伝説になったとか。随筆集のタイトルも『灰皿』なら、金沢城下、白鳥路にある三文豪像も秋聲の手にはたばこが持たされています。
 紅葉先生はご存じ、胃癌ですね。そりゃああんなにお菓子ばっかり食べてちゃあ…(以下自重)。 
 


 


犬より花、花より人
  2017.4.16

 金沢の三文豪のなかで、手ばなしで動物好き!と断言できるのは犀星さんかと思われます。その猫好きはとかく有名なところですが、愛犬もいらしたような?秋聲先生も一度ならず犬、飼ってみよっかな…とお子さんたちのために考えたことがおありだったようで、ひとから子犬をもらう約束をして、ちょっと親犬の手綱を持たせてもらいながら、4月だからエイプリルって名前にする?チェリーはどう?なんてお友達とシミュレーションした結果、やっぱりこんなのにまとわりつかれちゃたまらないし庭の草花荒らされても困る…!となって、はっきりとは書かれませんが、あの感じだとおそらくはその後お断りになったのではないでしょうか。冒頭のお花見の陽気からだんだんと気色が失われていく様子が圧巻の随筆、その名も「無感動」(大正3年)です。動物より庭の草花が愛おしい、そんな秋聲先生の姿が垣間見えます。
 
 また犀星さんといえば、先日の犀星忌に徳田名誉館長が持参された一冊の本がございました。犀星さんの随筆集『花霙』(昭和16年)、おじいちゃまのこと書いてあったから…とご自宅(すなわち徳田家本)からお持ちになったものですが、実際のトークイベントでは別のお話で盛り上がった結果、惜しくも言及されませんでしたので、代わりにこちらでご紹介申し上げます。
 同書では同郷の「大先輩」方について述べられており、「泉さんの小説には医王山とか、鞍ヶ岳とか鶴来の方の自然などがよく描かれてゐて、黒百合とか片栗の花とか、さういふ山中に咲く花が書かれてゐます。いつも美しい山の精ともいはれるやうな女が、池のほとりに立つてゐるやうなきれいな文章であります。徳田秋聲氏の作品にも浅野川あたりの下町の生活をかいた小説も、三四篇ありますが、うすぐらい家の様子とか、そこにある郷土のいろいろな人の動きや生活が徳田さんの手固い、じみな筆つきでゑがかれてゐます。」……おっと「秋聲ったら草花好きなんですよね!」からのコレ…。たぶんに作為的ではありながら、ついさっきまでK花先生を取りまいていた草花の彩りが一気に失われる感じがすごいです。しかも特に批判的でなくたいへんフラットに、そう「じみ」と…。曰く、「その少しの誇張もなくありのままに描くといふ行き方は、やはり金沢人の性格にある、じつくりと落着いた気質が、徳田さんの作品をつや消しにしたやうな、文章の骨格を見せて居ります。」とのことで、色もつやもない、そこが秋聲のいいところ、ととりいそぎ今回は結ばせていただきます(つづく) 

          
           秋聲先生ご自慢のお庭→

 飛び石に苔が生えると滑るからお手入れしてね!と秋聲がお子さんたちによく言っていたというソレが見えますね(犀星忌での名誉館長談)
 





「犬を逐ふ」(ジャスト90年前発表作)
   2017.4.14

 次回企画展「秋聲と宇野千代」(仮)に向けて、4月中旬にもなってようやく宇野千代さんの著作を読み耽っております。ここ数日そんな姿勢のままで動かざること山のごとし…贅沢なことにそれが仕事といえば仕事なのですがそんな生活を続けておりましたら、今日ついに通常業務にさしさわりが生じてしまいました。昨日ある人から今日のことを連絡するお電話をいただき、それを今日お昼時間に「アレって13時でしたよね?」と別の職員さんに確認されて「アッそれ明日です!」と迷いなく答えてしまってからの「えっでもきのう今日だって聞きましたけど…?」「えっきのう?とは??」となってあとはもうパニックです。どうしたものか自分のなかでお電話は今日の午前に受けたもので、内容は明日のこと、と記憶が改変されていたようで、たぶん同じ姿勢の連続によってきのうと今日とが地続きになってしまったものと思われます。怖ろしいことです。
 まぁそりゃあ軽く100年前の物語のなかにどっぷり浸かっているのですからきのうと今日の差なんてほんの僅かといいましょうか、きのうも今日も明日もほんの一瞬みたいなもので、とぐるぐる言い訳を考えておりましたら件の職員より「言っていいかわかりませんでしたけど、きのう膝かけにくるまってずっと本を読んでる姿、ちょっと大丈夫かなって思ってました」とまさかの告白をされ、事務室の一角にそんな触れてはいけないような生き物を急に生息させてしまったことにつきましては申し訳なく思いました。 
 そして急に生息する生き物、で思い出されるのは秋聲の短編「犬を逐ふ」(昭和2年)。おそらくは秋聲先生のご自宅縁側の下に勝手に住み着いた野良犬一家を追い払うという、実話に基づいているのではないかと思われるお話です。なかの一匹の牝犬を「彼女」と呼び、その彼女の不幸な境遇に、飼い犬といったい何が違ってこうなっているのか、と同情的な視線を投げかけはするものの、最終的に「犬を逐ふ」ですからあらゆる方法でもって追い払おうとする過程が描かれており、秋聲先生の動物嫌いを差し引いてもある意味で仕方のない措置とはいえ、わりと愛犬家たちで出来ている記念館のなかではたいへんに評判のわるいこの一篇。基本的に秋聲先生のなさること描くことなら世界がなんと言おうとも全力で肯定していく一味ながら、この読後にはいつも一週間くらいちょっと嫌いになるのです。



 


菓子にあわせて
  2017.4.13

 何故だかいつだってお菓子に満ちあふれている秋聲記念館です、こんにちは!お菓子をたべるときには川のあちらもこちらもないのです。有難いことにみなみなさまのお心遣いにより集まってきたお菓子たちですからひとりじめは許されません。秋聲の名のもとに集うお客さまには平等にふるまうべし、これ「受付は館の顔」の次に教え込まれる当館の鉄則です(3つ目は茶屋街に行くならほっこりポストを確認すべし、です)。

 さて、豊富なのはお菓子だけではございませんで、当館飲料につきましてもたいへん充実しております。その多くはお客さまと徳田名誉館長によるおみやげ…今回のおみやげはなんとこちら→
 カフェーパウリスタのコーヒーです!
 東京は銀座にございますカフェで販売されているコーヒー缶(マグカップはついてきません)。極力、店名商品名などは出さないようにしている寸々語ですが、こちらは出してもよいでしょう。なぜなら往時、秋聲先生も通ってらしたため…!
 だけどまだ行けてないんですよねぇ~とそんなお話をしておりましたら名誉館長がさっそく買ってきてくださいました。ありがたやありがたや…
 館で販売しております秋聲長男・一穂さんの回顧録『秋聲と東京回顧』にもこちらのカフェ、一項もうけて登場します。曰く、「カフェ(CAFÉ)はブラジルでコーヒー、パウリスタ(PAULISTA)はサンパウロっ子という意味で、今日の珈琲館とか珈琲院という珈琲を飲ませる店、ひいては喫茶店の元祖がカフェーパウリスタである」、「ライオンやタイガーなどは珈琲を飲ませる店ではなく、女給のサービスで酒を飲ませる店である。(中略)パウリスタは珈琲の店としての元祖であって、脂粉の香りの漂う中で洋酒を飲ませるカフェーとは、全然違ったものである」とのこと。当時の銀座店の向かいには(戦争をはさんで現在の店舗はすこし場所が変わっているようです)時事新報社があったことから、記者であった菊池寛はじめ、作家たちとの待ち合わせの場としてもよく利用されたのでしょう。そのあたり、パウリスタさんのホームページにて詳しくご紹介くださっておりますので、ぜひそちらご参照ください。「そうそうたる顔ぶれ」として秋聲のしゅの字も登場します!やった!





花の野や美姫を埋めたる小き塚
 2017.4.12

 「花野」の件、いまだひっぱりまして恐縮ながら、館長チョイスの正解は標題俳句とのことでした。まァ秋聲先生らしからぬロマンティックな一句でございます。美姫だなんて…しかも埋められた美姫だなんて…!夜な夜なその亡霊が浮かびあがって何かしらの物語が始まりそうな感じも漂いながら、この俳句から、というよりこの一連の流れから思い出されるのは秋聲の子ども向け小説「花の精」です。
 意地悪な太郎さんが、心優しいお秋さん(お秋さん!)の大事にしているお花畑をめちゃめちゃにしてしまって眠り込んでいると、そこに花の精が現れて、太郎さんをちょうちょに変えてしまうというお伽話。花畑、ときいて春のお話かな?と思わせておいての登場人物「お秋さん」、それでもってそのお秋さんによく似た「花の精」は「頭から裾まで、秋の花」で飾られているとも書かれ、アッそうそう秋のお話であった!とすぐ春にもってかれようとするところ何度か脳内で軌道修正をさせられたものです。
 「花の精」なら春のお話にしたらいいじゃない…とも思いながら、どこか別に元ネタがあるのか単に秋のお花がお好みなのか…。本作、「不定期連載」バックナンバーのトップに置いてございますので、ご興味おありの方そちらから是非どうぞ…そう、トップにいるということは、秋聲先生の小説史のなかでもかなり初期の作品ということ。もしかして秋聲先生にとっては黒歴史かもしれないこんな作品ばかりを集めたのが、当館オリジナル文庫『秋聲少年少女小説集』です。秋聲が!擬人化だなんてそんな…!!と叫びたい方、ぜひこちらお買い求めいただけましたら幸いです。
 そういえばあのお茶会の席の俳句短冊談義の際、名誉館長と紅葉先生のご命日も秋であったというお話をしておりました。秋聲が11月18日、紅葉が10月30日とのこと(あの日、紅葉先生11月26日くらいじゃなかったですかね、と申し上げた記憶がございます。くらい、も何も、何故そんなピンポイントでしっかり間違えたのか、われながらちょっともう怖いです)。

 紅葉忌ってどこかで何か催されているのかな?と思って調べてみましたが、ぱっとは出てこなかった代わりに紅葉忌=秋の季語、と書いたものがございました。さすが先生、季語にまで!秋聲忌もいつか歳時記入りを果たしたいものです。
(←こちらは秋聲旧蔵「紅葉祭」の記念絵葉書。祭りのほうは紅葉先生没後、毎年お誕生日(12月16日)に開催されたもようです。)





君を訪ふて雨の花野を帰りけり
  2017.4.11

 先日、お茶会でお出ししたお菓子の名「花野」が秋聲の俳句からで、その俳句をまるで春の句かのようにご紹介いたしましたが、そんな話をたまたま句作をされる方にしていたところ「花野って秋の季語じゃない?」と言われ衝撃のあまりざっと血の気がひきました。帰って調べると「花野…秋の草花の咲き乱れる野のこと。」おおお~…ふつうに勘違いをしておりました。「花」は春だけれども「花野」となると秋。結果、秋…!やっぱり秋聲はどこまでいっても秋聲でした~!という笑い話では済まされませんで、お菓子の名うんぬんはまぁいいとして、この寸々語での記述に関し文学館としてたいへん恥ずかしい間違いをしでかしましたこと、深くお詫び申し上げます。よく見れば「花野」しばりの計15句、掲載誌は紅葉先生ほか主宰の俳句結社「秋聲会」発行による機関誌「卯杖(うづえ)」10月号!なるほどなるほど、秋でした!たいへん失礼をいたしました(謝罪文中でさらにややこしくしてあれですが「秋聲会」と「秋聲」とのペンネームは無関係のようです…)。

 そうして恥ずかしさと悲しみとを湛えていた館に嬉しい便りが届きました。

 で、でた~~講談社文芸文庫ご担当者さまより新刊『黴爛』をご恵贈たまわりました~!!!昨日発売というこちら、当館ショップでも委託販売の準備をすすめております。『黴』と『爛』の二作を収めた一冊本、読みは「カビタダレ」。ひとつだけでもけっこう強いのに、ふたつセットになるとなんだかもう春感ゼロの淀みっぷりで最強ですね!帯はこれまた天下の漱石先生ですから、数多ある本のなかでも推薦者つっよ!!となること請け合いです。ご解説は八木書店版『徳田秋聲全集』編集委員のおひとり・宗像和重先生(早稲田大学教授)。これは黄色い既刊『あらくれ』とともに是非本棚に揃えておきたい一冊です。
 講談社さんほんとうにほんとうにありがとうございます。これで企画展解説の際にも「笹村が妻の入籍を済したのは、二人のなかに産れた幼児の出産届と、漸く同時くらいであった。」との『黴』冒頭、大きな声で朗読できます。当館の『黴』はまだまだ増刷未定ですが大丈夫、世界には講談社さんの『黴爛』があるのです!!
 


 


日頃のおこない
 2017.4.9

 きのう「桜の季節のおもてなし」無事に終了いたしました!ご来館くださったお客さまには心より感謝申し上げます。
 毎年のくせにその都度まるではじめてかのようなフレッシュな態度にて(ポジティブ)毎回バタバタする当館に対し、井奈宗孝社中さんの安定感たるや…!いつもながらの見事なお手前、ありがとうございます。そんな館のドタバタ具合にもかかわらず「楽しくさせていただきました~」とのあたたかいお言葉を残して去ってゆかれるその後姿に毎年感謝しかございません。そして米沢茶店さん、最高に美味しいのをご提供すべくいま挽きたてのお茶を急いで詰めてきましたよ!とお届けくださった「秋聲の白」。慌しい日常をふっとわすれ、心からほっとするお味でございました。また、毎年美しくもかわいらしいお菓子をご制作くださる吉はしさん。今年は可憐な花びらの舞う桜色のお茶菓子にて、お客さまからあがる歓声を嬉しく聞いておりました。今年は館長により「花野(はなの)」と名づけられまして、秋聲の俳句からです~とお客さまにご紹介しながら、その実どれだろ、と思っておりました。下の句「花野哉(かな)」の俳句だけでも、ざっと数えて9句ございました(全集第27巻所収)。ろくに協議もせず恐縮ながら、どの句であったかはぜひお好みでお選びいただけましたら幸いです。
 そう春の句はありながら、野点風の大傘に添えておりました秋聲自筆短冊、どうしても春の句のものの所蔵がなく、やむなく「山の井に木の葉沈みて秋の雲」をお出ししておりました。お客さまに「すみません、秋の句しかなくて…秋聲だもんで…」と苦しい言い訳をしながら、あとでいらした秋聲令孫・名誉館長にも「すみません、秋の句しかなくて…」と申し上げたら「いいんじゃない?秋聲だもの」と言われてデスヨネー!!となりました。そう、秋聲だもんで…

 心配された雨も奇跡的に降らず、満開の桜に恵まれました。お菓子を食べに川向こうからやってきた某K記念館さんとこれも日頃のおこないですかね~!とニコニコしながら(まれにみる和解)、ふと脳内をよぎりましたのは開会1分前のこと。BGMを流すためにサロンの映像を消そうとしたところ、まさかのリモコン電池切れ…!こういうことこそ日頃のおこない…開会直前にものすごく職員が走りまわるという風情のなさにて申し訳ございません…



 


開館記念日
 2017.4.7

 さて今日は何の日?当館の開館記念日です!ありがとうございます!
 おかげさまで本日をもちまして開館から丸12年が経ち、13年目に入ります。記念館一同、今後とも気を引き締めて、秋聲文学の普及につとめてまいります。と、そんなことを言いながら、開館記念日の今日に何ら特別なご用意がなく恐縮です。秋聲先生のお誕生日は全力でお祝いにかかる記念館ですが、記念館のお誕生日は毎年スルー…10年を過ぎ、あんなところこんなところにちょっとずつガタが来つつも、強風にもびくともせず、日々がんばってくれている記念館に感謝です。そう、手ずから花飾りを作らずとも「秋聲のみち」沿いの桜の諸先輩方が全力で彩ってくださいますので無問題…!
 お茶会を明日に控え、お茶をたてにきてくださるご近所の井奈先生とお話ししておりましたら、あの桜並木は戦後すぐに植えられたものとのことですから軽く70年!一般的に寿命60年と聞く桜ですので、ずいぶんなご老体にして毎年綺麗な花を咲かせてくれているのです。「桜の季節のおもてなし」と題されたこのお茶会は、もともと平成22年の記念館開館5周年を記念して企画されました。それがあまりに好評だったために、23年こそお休みしましたが、24年から復活させ、今年で7回目になります。そんなわけで毎年恒例の~と当たり前のように言ってしまうのですが、当たり前でないことをそろそろ意識しなければなりません。悲しいことですが、いつか咲かなくなる日がくるのかも…いつもこの時期になるとは桜の咲き具合に文句を言ったりまだ早い!と呪いをかけたりしている身勝手を反省しつつ、あぁ、今年もお会いできました、との気持ちでもって有難く愛でさせていただこうと思います。

 そんな桜の諸先輩方、7日現在にて五分では少なく七分では多いくらいの咲き加減でしょうか。茶と白の割合のその感じ、たとえて言えばポップコーンです(以前にもそんなことを言っていた気がします…)
 去年は9日に開催して桜はもう終わりがけでした。じゃあ来年は1日早々に開催してやろうか!?と心のなかの閣下が唸っていたものですが、1日(土)にしなくてほんとうによかったです。明日のお茶席、まだ余裕がございます。この感じだと飛び入りでも大丈夫そうですが、念のためご予約のお電話いただけると助かります。
 
 ↑すみません、これはポップコーンがはじける前のお写真。
  咲いてなくてもきれいです。




狭いだなんて二度とは
  2017.4.2

 さて相変わらずヌルリと始まりました新年度!今日も今日とて一穂展展示解説をさせていただきました。基本的に毎月第1土曜に開催しているものですが、4月1日はさすがにみんな慌しいかな?解説とか聞いてる場合じゃないかな?と思って微妙に1日ずらしてみました。が、結局土日なので土曜も日曜もあまり変わらなかったかもしれません。こののち、5月も6月も第1土曜に開催します。7月だけはまた1日ずらして2日(日)の開催。なぜなら一穂さんのご命日だから…。といってなんら特別なことはございません。ついでにこの日が展示最終日。まだまだと思っていたら意外とあっちゅうまですので、どっかしらで寄っていただけましたら幸いです。

 本日の解説、ご覧のとおりたくさんの方においでいただきました。開始前に館内にいらっしゃる方にお声がけしてまわりながら、自分で集めておいて展示室に入りきらないというとんだ不手際!タペストリーの後ろにいながら解説を聞いてくださったお客さまには心よりお詫びを申し上げます。もともと広くないところにケースを余分にいれたり布を垂らしたりするもので…

 とくにご長女瑞子さんのコーナーは完全にひとり閲覧用のスペースしか確保されておりませんので、「これ見てください!」という人(学芸員)がひとりそこにいることによって見られないというジレンマ…(どきますんで!いまどきますんで!!)という気持ちでもってしゃべっております。狭い展示室だものですから何卒お許しください。そう、狭い展示室だものですから圧倒的に壁が足りず、展示室なかほどにタペストリーを垂らす、という方法でもって無理くり面(めん)を創出しているのです。いつか某K記念館さんにて、フゥ、ウチったらもうなんせ狭くて!とぺろりとこぼしましたら「えっソレここで言う…?」と学芸員さんよりブン!と圧が発せられましたこと、いまだ思い出すたび震えあがります。それまで和やかにお話ししていたのに、急にスーパーサ○ヤ人に変身されるかと、たいそう怯えました。あやうく宇宙の塵と化すところでした。そう、上には上がおりまして、狭さにかけて某K記念館さんの前でモノ申してはいけないのでした。
 秋聲先生、うちはわりと広いほうです。川向こうさんはもっとご苦労しておられます、と帰って訊かれてもいないご報告を申し述べて深く反省をいたしました。調子に乗って吹き抜けとかもありますし…
 
 
 
 


1万人達成
  2017.3.31

 今年度あと1日を残しまして、昨日の段階で4月からの入館者累計1万人を達成いたしました。ご来館くださったみなさまに心よりお礼申し上げます。1万人というこの数字、ナントカ館と名のつく施設とすれば決して多いほうではないかもしれません。もっともっと、入館者数を伸ばす努力をしなければ、と焦りながらも、しかし毎年1万人をキープすること、それを最低限の目標としてこの11年間を活動してきた記念館です。
 そんな11年のうちの約半分をともに走り続けてくれた職員が今日この日を最後に館を卒業します。学芸員が迷ったとき、弱気になったときに必ず振り返っていたお隣の職員さん。ほっこりポストのレアキャラをばかりいつも見つけてきてくれるそのひと。「それ、昆布色じゃない?」と絶対にまちがいのない回答をくれる、もっとも信頼すべきお隣の職員さんです。
 6年間、おつかれさまでした。別れがくることは知っていたのですが、実際にこの日がやってきて、こんな記事を書かねばならぬとはなんともつらいことです。いつも妙なハイテンションでもってガガガッと書いてしまう寸々語ながら、今日ばかりはこの指先が鈍ります。
 先日の犀星忌で、館長が秋聲の生前最後の随筆「病床より」に言及しておりました。昭和18年6月、太平洋戦争下のこと。病床についた秋聲を川端康成が見舞い、島崎藤村や佐藤春夫などがいるという大磯へ移り住むことを勧めてくれるのですが「遁げようと思へば足手纏ひになるから、私など居ないほうが周囲の人もいゝだらうが、さうかといつて家族全部引揚げるわけにもゆかない。それに家が無くなつてしまつて、自分の命だけ助かつてゐるといふのでは、結局路頭に迷ふことであり、誰が残り誰が死んでも困る。空襲があつても、子供たちと一緒の運命にゐるより他にない。」と記す秋聲…。ここに重ねてはさすがに各方面に差し障りがあるかとも存じながら、だけれどもいま、まさに、そんな心持ちです。誰が残り、誰が死んでも困る…(死にはしない)。

 この船からは誰も降ろしたくないのです。が、秋聲先生、何をどうしたってお隣の職員さんが今日をもって卒業です。でも大丈夫です。記念館一味は館を離れても秋聲の名のもとに一味ですから、きっとまた甘いもの片手にあそびに来てくれるはず。
 あの…秋聲先生てばカステラとかもお好きですから…そこんとこ…よろしくどうぞ…! 
 

 

 


おみやげ
  2017.3.30

 先日犀星忌のため来沢されたという娘さん方が、当館へも立ち寄ってくださり、なんと秋聲先生にとおみやげをくださいました!しかも秋聲先生が甘いもの、とくに餡子と餅気のもの好き、ということを寸々語でご紹介したこともあってか、餡子×お餅の最強コラボ最中(もなか)をチョイスしてきてくださるというこのお心遣い…!言ってみるもんですね!!
 …いえそうでなく、ほんとうは身ひとつで有難いのです。遠くから来てくださるうえそのようなお気を遣っていただく必要はまったくなく、秋聲を知りたい、とその一心だけ大事に抱えてきてくださればそれが何よりのおみやげです。とはいえお気持ちはやはり嬉しく有難く、閉館後、書斎の秋聲先生にこっそり差し上げてみました(すみません、個包装でなかったものでお箱ごと…)→
 また以前に食の好みは気分次第、などと若干面倒くさいアンケート回答をなさっている秋聲先生のエピソードをご紹介したこともあり、今日の舌の加減、お腹の具合はどうでしょうか?とそこまで心配してくださった娘さん方、ニコリとこそしなかったかもしれませんがたぶんお喜びであったと思います。遠方から娘さん方がこれお好きかな?と言いながらお菓子をもってやってくる、嬉しい要素しかありません。だけれども糖尿気味でいらっしゃるのでお箱だけ見せて没収です。お気持ちは届いたことと存じます。ほんとうにありがとうございました。(とレポートしたからとて催促するものでは決してございません!今後みなさま身ひとつでおいでください!!)
 一穂展をご案内させていただき、当館のほうにも用事があったものですからなんとはなし流れで石川近代文学館さんまでご一緒すると徳田章子名誉館長までもが合流となりまして、あれよあれよと犀星忌続編のようなことになりました。名誉館長が金沢にいらっしゃること自体レアですので滅多にそのようなケースはないのですが、これもご縁ですので金沢のよき思い出としていただけましたら幸いです。
 そうして町まで出たついでにせっかくですから名誉館長と皆の衆とで通称三文豪カフェへと赴きました。もうお昼だからランチにする?と気を遣ってくださる名誉館長にむかって「いえ、ぜったい秋聲セット頼みたいんで」とゴルゴのような顔で駄々をこねまして申し訳ありません。結果食事+秋聲セット=よくばりさんのわんぱくコンボで落ち着きました。勧めてくださった三文豪カフェさんにもお礼申し上げます。レジ前でとんだ駄々をこねまして…
 


 


犀星忌
 2017.3.27

 昨日26日、雨宝院で行われました犀星忌にお邪魔してまいりました。ご命日直近の日曜に開催することとされているため、第19回目にしてほんとうのご命日どんぴしゃに開催されたのは初めてとのこと。わかりますわかります、当館と石川近代文学館さんの共催による秋聲忌も、11月18日の秋聲命日の前倒し直近土日のどちらかに開催することとしているため、18日どんぴしゃに当たるのはたいへん珍しいのです(今年はどうも18日が土曜のよう、これは狙い目…!)

 雨宝院ご住職による読経ののち、犀星令孫・室生洲々子名誉館長、秋聲令孫・徳田章子名誉館長の対談のはじまりです。司会をつとめたのは上田正行犀星記念館館長(当館兼任)ですが「え~両館の館長が集うというのはなかなか~…」と仰ったのちハッとされたのにちょっと笑ってしまいました(すみません)。いやご自分ご自分!いつもその身ひとつで集ってる!
 両館の名誉館長が集うというのはあまりないこと、ということですね。ほんとにそうで、両家の貴重なお話をたくさんうかがうことができました。秋聲さんちの家宝は?と問われて「家宝かゴミかはわかりませんが(笑)、何せ祖父のものはとにかく何でもとってありまして、たとえばよく食べていたオートミール缶とかそんなものまで…」と控えめに仰る章子さんに「すべてが家宝ですねぇ」と応える館長。件のオートミール缶は当館にてお預かりさせていただいておりますし、今回の当館企画展の裏目玉も、ご長女・瑞子さんの小学校時代の絵画と答案用紙!算数も国語も見事で満点で、こちらはおそらくそれを誇りにされたはま夫人により保管されていたのでしょう。また、犀星さん側のエピソードで、生まれ変わったら魚になりたかったかも?と仰る洲々子さんのお言葉にはフフフとなりました。魚への愛着ぶりは、現在犀星記念館さんで開催中の企画展「犀星歳時記~春夏編~」にも駄々洩れておりましたので是非ご観覧ください。
 
 それからひとつ訂正です。先日秋聲が建てたアパートフジハウスに3人お住まい、とお伝えしましたが現在おふたりだそうです!アッ嘘ついちゃった!と焦る学芸員雨宝院に混入。申し訳ございません~!でもあれですね、すなわち入居できる確率がすこしあがりましたね!(ポジティブ)





春夫氏参戦
  2017.3.26

 連日お手紙ラッシュが止まりません。きのうK花先生とこの図録のお話をいたしましたら、本日おうふうさんより新刊『谷崎と鏡花』が届きました!編者のおひとりである大木志門先生のおはからいです。『谷崎と鏡花』?微妙に秋聲さん遠いね!と思われることなかれ、本書にはなんと「徳田秋聲」の項があり、秋聲の短編「町の踊り場」を全文掲載のうえ、大木先生によるご解説、そして当館のご紹介までもをいただいているのです…!こりゃあ「大木先生のご活躍が止まりません!」と言ったほうが正確かもしれません。いつも気にかけていただきありがとうございます。
 その他本書には、標題のおふたり以外に佐藤春夫コーナーも設けられており、その詩が数編収められているほか、生まれ故郷・和歌山県新宮市に建つ佐藤春夫記念館さんのご紹介も掲載されております。
 佐藤春夫氏と秋聲とで言いましたら、やはりこの欄2月28日付記事にご紹介した谷崎潤一郎「春琴抄」をめぐる論争ですね!佐助が顔に傷のついた春琴の心情を慮って自ら針で目を突く場面に「いや有り得ないでしょ~痛いでしょ~」と異を唱えた秋聲に対し、佐藤氏は「最近の谷崎潤一郎を論ず―「春琴抄」を中心として」(「文芸春秋」昭和9年1月)にて、いや専門家に聞いたからありえますよ!目を突く描写のとこ谷崎本人が専門家それも二人に意見を聞いて安心して書いたって言ってますよ!!とフォローにまわり、それに対してまたまた秋聲が「私は谷崎氏の『春琴抄』がそんなに結構なものだとは思へないだけで、目を針で突つく件も、べつに専門家にきいた訳でもなく、私の神経が痛いと感じるからいつたゞけで、作者が医者に確かめて書いたことなら間違ひはないに決まつてゐる。」(「文芸時評」/「東京朝日新聞」昭和9年1月)と、すこし引いた大人な姿勢を見せながらも、やっぱり痛そうなものは痛そう!無理!といった内心につきましてはしっかり主張しておいでのようなそんな論争…。
 佐藤氏とはこのほかにもちょっとヒリヒリした関係性が秋聲の文章から滲んでいたりもしておりまして、(そのくだりはありませんが)谷崎・鏡花・春夫・秋聲とちょっと面白いこの四人の取り合わせ本、ぜひご自宅各種図録のお隣へどうぞ。
 

 


川向こうからの手紙
  2017.3.25

 今日は今日とて某K記念館さんからのお手紙を頂戴しました!お手紙というには厚い、小包というには薄い封筒、そう某K記念館さんの総合図録『鏡花』改訂版です!(あと館報「鏡花 雪うさぎ」最新号も!)ご刊行おめでとうございます!当該図録には、今回大木志門先生(当館初代学芸員・現山梨大学准教授)によるご寄稿「鏡花と秋聲」が新たに掲載されまして、当館といたしましてもウッハウハです。浅野川をはさんであっちこっちのその関係性が簡潔にしてマニアックに書かれておりますので、現代における秋聲会もしくはあらくれ会のみなさまにおかれましては、55ページを狙ってガツーン!と開いてやってくださいませ。もしくは58ページを狙って開かれても秋聲先生のご尊顔にガツーン!とやられますので、ご覚悟のほど…!
 また77ページには、鈴木啓子宇都宮大学教授により、K花さん実弟・斜汀さんと秋聲との関係についてご紹介がなされています(これは旧版に引き続き)。斜汀さんが若くして病死されたのが秋聲経営のアパートフジハウスであったこと、これにより長年不仲であったK花さんと和解し、その顛末を短編小説「和解」に秋聲が書いていること…そう、その「和解」の入った文庫はどれですか?と先日受付に訊いてくださった若きひと…『短編集Ⅰ』だったですけど今もうないんですよ…!増刷未定なんですよ…!!と申し上げねばならぬ苦しさです。
 ちなみにフジハウスは徳田家裏に現存しており、現在3名さまがお住まいでいらっしゃいます。3年ほど前、30年ぶりに入居が再開されまして、もうすこしお部屋数があったと記憶しておりますので、ゴリッゴリの秋聲ファンの方、あるいは斜汀さんファンの方、あわよくばこちらに住むことができるのではないでしょうか。ここを舞台にリアル「和解」ごっこなどもしていただけます。

 当館にとってもたいへんに有難い図録のご到着です。当館図録『秋聲』とあわせてお手元に置いておかれると素敵ですね!!『犀星』も一緒だとより素敵ですね!!!
 真白く清冽な『鏡花』にくらべると当館の『秋聲』表紙、ウワーくすんでるー・・・!(手垢ではございません)
 
 
 
 


湯田からの手紙
 2017.3.24

 遠く山口県山口市湯田温泉より、お手紙というにはぶ厚い小包が届きました!中身は中原中也記念館さんの館報最新号です!!→
 実はこのたび中原中也記念館さんの館報第22号に当館学芸員が寄稿させていただき、まさかのこんなところにも秋聲のしゅの字を紛れ込ませることに成功いたしました。中也記念館さんご厚情を賜りましてまことにありがとうございました。
 ただ中也さんと秋聲といって、とくべつ接点はありません。強いて言うなら生きた時代、強いて言うなら金沢という土地、それから清家雪子先生の漫画『月に吠えらんねえ』、ひいては石川近代文学館さんです。もうおととしのことになりましょうか、同館で開催されたこの作品をメインに紹介された企画展「うたえ!□街の仲間たち!」に、当館学芸員がパネル展示用エッセイを寄稿させていただきまして、それを全文、今回中也記念館さんの館報に載せていただいたというわけです。同作では中也さんほかがご活躍で、残念ながら秋聲先生はご登場でありませんが、ひょんなご縁により石近文さんからお話を頂戴し、わりとどこへでも無理やり絡みにゆくのが当館の得意技ですから、だいじょうぶだいじょうぶ、だって金沢で繋がってますし!駅とかできっとすれちがってますし!とかなんとか言いながらのこのことお邪魔してきたそれを今度は形にしていただいたというなんとも有り難いお話…。はやもう7年前、中也さんと秋聲、とくに接点はないんですよ!というだけのことを2時間かけてご紹介する講演会を当館にて行ったことがありました。いまにして思えばそれはそれはやんちゃな話…しかしながら数年前にも、大正3年当時の秋聲先生てば、なんとなくやる気が出なくて何にもしてなかったんですよ!というこれまたひどいテーマで企画展を1本開催したことさえありましたので、最終的になんでもありです。ちなみにこの次の展示は宇野千代さんと秋聲をとりあげる予定でして、宇野千代さんといえば山口県は岩国のご出身。ほうらね!山口と繋がったよ!てな具合に、まわりまわってすべて繋がってゆくということにしてよろしいでしょうか。
 中也記念館さんの館報、当館ロビーにてテイクフリーとさせていただいております。春色中也さん、ご無理を言っていっぱい送っていただきました! 
 
 
 


子への手紙
 2017.3.23

 さて、先日寝かせました手紙の件です。今回、企画展のタイトルといたしました「父への手紙」、いろいろな方から「じゃあ一穂さんのお手紙の展示がメインなのね?」と訊かれるのですが、お手紙の展示はぶっちゃけまして2通しかなく、しかも肝心の〝父への手紙〟=一穂筆 秋聲宛書簡は1通もないのです。「父への手紙」とは、一穂さんによるお手紙風の随筆のタイトルでありまして、それをメインテーマに据えたがためにたいへんに紛らわしい事態になってしまいました。お手紙展示を期待された方には心よりお詫びを申し上げます。
 では今回展示している2通の手紙、それぞれ誰筆による誰宛かといいますと、1通は一穂さんから小説家・中河与一氏に宛てたお手紙(当館蔵)。一穂さんの作品を新聞紙上に批評し、賞賛してくれたことに対する礼状です。
 もう1通は、子への手紙。すなわち父秋聲から一穂さんに宛てて出されたお手紙にして、これが世紀の大発見のうえ今回の目玉中の目玉となる超ド級資料なのです…!!
 「妥協すれば作品は腑ぬけになる」――みなさま、このフレーズにお聞き覚えがおありでしょうか。当館にて解説をさせていただく際、必ず最後にご紹介するフレーズです。お客さまにあっては問答無用で聞かされますし、こちとらもう何度言ったかわからない、だけれども何度でも言いたい、あしたもあさっても言うであろう、もっともっとたくさんのひとに届いてほしい、そんな大切な秋聲の言葉です。

 これは昭和16年、太平洋戦争開戦間近という状況下にて情報局の圧力を受け「縮図」の連載を断念することを決めた秋聲が、一穂さんに宛てて書き残した手紙の一節。この文面自体は秋聲没後、戦後になって一穂さんが未完のまま刊行した単行本『縮図』の後書き追記に引用しているため現在も読むことができますが(各種文庫本にも採用)、まさにこの、この書き置きの原本がこのたび徳田家から発見され、今回初公開させていただいているのです。
 まさかこの手紙の現物を、秋聲のその筆跡を見ることがかなおうとは…!

 展示しながら、さすがに持つ手が震えました。一穂さんは全文を引用しておりますので、文面から内容的な新発見はありません。が、そういうことでないところの感動が、この一枚の手紙に詰まっているのです。





カウントダウンふたたび
 2017.3.18

 二度目のカウントダウンです。というより、もうカウントワンです。当館オリジナル文庫の『黴』、残り一冊となりました…!以前にお伝えしておりました『短編集Ⅰ』の在庫はとうになくなりまして、いよいよ『黴』です。やられました、新しい企画展にて冒頭からがっつり『黴』のご紹介をしておりますのに…!いや、しておりますからなのか…本日だけで『黴』8冊も売れました。ありがとうございます。『短編集Ⅰ』にも一穂さんの大学受験の顛末を描く「花が咲く」が収録されているのに…!
 売れてほしいのに売れてほしくない、いまなら売れそうなのに、売る本がない…なんというアンビバレンツ……やり方がへたくそなのでしょう、秋聲先生に申し訳ない気持ちです。秋聲記念館一味、一味にして秋聲作品のプレゼン下手という致命的なやつ…!先生、行き届かず申し訳ありません…!!
 そう、そんな衝撃の影に隠れてしまった新企画展「父への手紙―徳田一穂展」、おかげさまで本日無事オープンとなりました。記念館一味、カーリングを極めることばかりにかまけてはおりません。あのあとがんばって展示ケースを埋め、全ケースに秋聲一穂父子の資料、ぎゅうぎゅうと仲良くおさまっております。ケースが足りず、一階からも小ケースを奪ってくるほどです。その多くが徳田家からご提供いただいた初公開の品々。ここから7月2日の一穂さんご命日まで館は無休となりますので、ぜひどこぞかのタイミングでおいでください。なおおすすめは一穂さんの自筆色紙です。きのう展示替えが終わってまじまじとそれを眺めながら知らず涙が浮かびました。これははじめてのことです。また、そのお隣のケースの秋聲筆の一穂さん宛てお手紙も必見です。これについてはまた改めてご報告を申し上げます。ついでに語ってはバチがあたる一級品です。みるべきものがいっぱいです。
 本日午前午後と開催された展示解説にも自然と熱が入り、終わってからお客さまに「なんかすごい熱いですね…」と言われてしまった恥ずかしいくらいの力みっぷり。常連のお客さまには「52分…いい記録じゃない?」と言っていただきましたが、公約は40分…初回なので多めにみてやってください。だって一穂さんが…秋聲が・・・!! 
 
 続報!いまこれを書いている間に『黴』完売したそうです!わあああー!!



 


きのうの功労者、コロコロ
  2017.3.16

 展示替え4日目です。3日目もちゃんとあったのですが、何かしらやっているうちに更新する余裕がなくなってしまい、その日は無きものとされてしまいました。いまのところ順調です。
 きのうしていた何かしらのうちのけっこうを占めたのが展示室の掃除です。ケースを内側から拭いたり、展示台に敷いてあった毛氈をむしったり、むしったあとの展示台にコロコロをかけたり…。このコロコロがけ作業、ハンディサイズのものが見つからず、立ったまま床などをコロコロできる長いやつでコロコロしておりまして、その姿が何かに似ている…と思い当たったのがカーリングでした。

 トロトロとコロコロしていても、毛氈のモケモケの吸着は強力でなかなかとれませんので、けっこうな勢いでもってゴロゴロゴロゴロゴロ!!と前傾姿勢で必死にコロコロをかけている様子がまるでカーリングの、なにか誘導するほうのふたりぐみの片方に重なり、心のなかで「ヤァップ!ヤァーップ!」と厳しい顔で唱えてみたことは内緒です。…フッヘヘ、とひとりニヤニヤするひとのいる展示室が事務室の監視カメラに映りこんでいたでしょうか。さいきん監視カメラが新しくなって、たいへんクリアに映ってしまうというのも良し悪しです。

 ただ6台の展示ケースにヤップしていたときにはハイになって気がつきませんでしたが、いまこれを書きながら、あぁヤップヤップ言うのはさいしょにアレを投げたほうのひとかな?ゴシゴシするほうのひとは言わないのかもな?と思いいたって急に恥ずかしくなりました。何でもうろおぼえでものを語ってはいけません。氷上をすべっていくアレはストーンと言うそうです。
 ヤップもヤップでいいのか、聞いたまま書いてしまいましたが、ウィキペディアさまによりますと「イエス (yes)、ヤー (yeah)、イェップ (yep) - スウィーピングをしろという指示。」とのこと。このほかにも「ハード (hard) - もっと一生懸命掃け、という指示。」「ハリー (hurry) - もっと速く強く掃け、という指示。」などいろいろとバリエーションがあることを発見いたしましたので、今後コロコロするときには強いてふたり動員してもっといろいろ出来そうです。





見ちゃう
   2017.3.14

 展示替え2日目、本日はいよいよ設営に入ります。新しいパネルやらキャプションやらがどんどんと搬入され、サイズ感やらお色味やらをすぐさま確認したい学芸員は、きちんときれいに包んでいただいてあるプチプチを驚くほどやんちゃにびりびりと開けはなってしまうのです。そうして、前回のパネル撤去をしてくださっている業者さんのお足元に、新しいパネルをその配置予定図のとおりガツガツと並べて明らかに作業のお邪魔をしてしまうのです。入るか入らぬか、あの日のシミュレーションに果たして間違いはなかったかと、その配置にかける眼差しに鬼気迫るものがあるためか、やさしい業者さんは文句も言わずにそっとニューパネルを避けながら粛々と目の前のお仕事を遂行してくださるのです。申し訳のないことです。
 やがて、ここでーす、この高さでーす、と指示してしまったのちにはパネルを設置してもらっている間とくにお手伝いできることもなく、展示室で資料の配置をシミュレーションしたりなど、なんとなくそのへんをウロウロとしております。しかし展示ケースのうえにキャプションを並べてみながらも、フと気がつけば設営の進む壁面を真顔の横目でじっと見ながら停止している時間がままあり、我にかえって、アラやだ、業者さんに要らぬ圧をかけてしまっていたよ…とひとりでテヘヘとして己が作業に戻るのです。が、またもやフと気がつくとその手がいつしか止まり、横目でじっと釘が打たれるさまを凝視してしまっているのです。もういっそのこと、そこに椅子をデデンと置いて「わたし、見ていますよ!」との姿勢をとってしまったほうが業者さんたちもやりやすいのではないか、というくらいの横目具合…。べつに不信感でもって見ているわけでなく、ただただ気になってしまう、これはもう性(さが)とでも言うべき動作なのですから業者さんもアレはああいう生き物、として無視してくださればよいのですが、いかんせんその顔の角度と瞬きもしない真顔の気持ちわるさとによって、たとえて言うならレジ終わりにその場でレシートをじっと見るお客さんくらいの威圧感は与えてしまっているかもしれません。 





会期終了!
   2017.3.13

 昨日をもちまして企画展「秋聲全集物語」、無事会期を終了することができました。ご観覧くださったすべてのみなさまに深く感謝を申し上げます。思えば、企画展の予定を組む際、つぎ何やろっかな~と思いながらアッ全集が完結して10年ではないか!これはご紹介すべき年…!とカッとなってほぼ勢いだけでこの開催を決めてしまったのですが、内容につきましてはノープランもノープラン…だいたい全集展って全集以外に何展示する?ケース埋まる…?と開催が射程圏内に入るにつけずいぶんと不安になったものでした。しかしながら版元である八木書店さんをはじめ、編集委員の先生方、装丁原画の展示を快くご許可くださった徳永春穂先生ご実家・徳永こいのぼりさん、石川近代文学館、そして徳田家の全面協力のおかげさまで充実した資料が揃い、開幕にこぎつけることができました。早いものでそれが閉幕というのだから諸行無常ったらないですね…沙羅双樹の花の色とのやつですね…

 今朝ほど資料撤去を行い、展示室が空っぽになりました。全集と菊池寛賞正賞の置時計も一階の定位置に戻り、今後お手にとってご覧いただくことができるようになりました(置時計に関しましては鍵つきケースなもので触れません!何卒ご容赦のほど…!)。全集に関しましてはそもそもケースに入れるべきものでなく、開いてなんぼ、読んでなんぼのものですから、お時間ございましたら閲覧コーナーにてぜひパラパラしてみてください。お探しの作品、別巻の総索引をつかうと便利ですよ!!随筆をお探しの場合は第2期の19~23巻ですよ!この5冊にはそれぞれにまた索引がついておりますので、お探しの人物名でもって引けますよ!!
 とかいって、本日より17日(金)まで展示替え休館いただいております。18日(土)よりふたたびご入館いただけますので、しばらくお待ちくださいませ。
 現在、資料撤去のいっぽう事務のほうではたいへんな勢いでチラシの発送作業にかかっております。「一穂さんが手の油ぜんぶ吸い取っていくんですけど…!!」との苦情を受けながら、すみません…でもダンディでいらっしゃるでしょ…?ビジュアル、お強いでしょ…?と世のみなさまのお目に触れる日をたいへん楽しみにしております。





這ひあがる
  2017.3.11

 先日お邪魔いたしましたラジオ放送につきまして、リスナーさんからこんな反響があったよ!とMROのご担当の方からご連絡をいただきました。ご親切にありがとうございます!(もちろん概要のみです。差出人がどなたかはわかりません。)
 当館の文庫制作についてよい取り組み、と褒めてくださったうえ、もっと秋聲に触れる機会があったらいい、とも書き添えてくださっていたそうで、そのお言葉に励まされるとともに館としての活動をもっともっとがんばらねば!とお尻をたたかれる思いがいたしました。背だ帯だ、といつまでもくよくよしてはいられません。
 そんな精神にて秋聲の作品世界に触れる機会をすこしでも多くつくるべく、本日も寸々語、地味に更新をしてまいります。

 さて、放送にてご紹介をいたしました当館オリジナル文庫『新世帯』の最後に収録されている「不安のなかに」は、大正12年9月1日に発生した関東大震災時の混乱を描いた小説です。秋聲はちょうどこのころ妻子を東京に残して、ひとり金沢に帰省しており、金魚鉢の水が揺れたことで地震の発生を知るのです。すぐにでも飛んで帰りたいところ、東京への旅行が制限されて足止めをくらい、家族の安否の知れぬまま不安な日々を過ごす様子が描かれています。結局帰京できたのは約2週間後。

〈多勢の子供たちと一緒に家を守つてゐた彼女は、十四日目にのこのこ帰つて来た私に、余り好い感じをもたなかつた。一生の大難とも言ふべき運命の苦痛を偕(とも)にしなかつたことが彼女の飽き足りなさであつた。〉と、はま夫人から無言のうちに責められたらしいことが「不安のなかに」の続編となる「余震の一夜」に記されており、そんな未曾有の大災害に遭ったことのない幸福な身でありながらも、なんとなく夫人のその心持ちはわかるような気もするのです。
 被災した当事者として、当事者の家族として、作家として――この時期いろいろな立場でもって書かれた作品群が残されており、全部文庫に収録すればよかったものを紙面に限りありにてやむを得ず…せめて「不定期連載」に時事評論「這ひあがる」、そっと置いて帰ります。





朋有り遠方より来る
 2017.3.9

 奥歯の神様にいつしか仲間が増えていたように、秋聲記念館にも強力な仲間が増えました本日です。これはもう祭、春の秋聲祭ふたたびです。

 以前より解説依頼をいただいておりましたお客さまが本日来館され、学芸員が館内案内をさせていただいたのですが、なんとその学生さん、秋聲作品でもって卒業論文を書こうと心にお決めなすったなんとも奇特な若人…!しかも県外も県外、太平洋側から卒論執筆前に記念館を詣でておこうと、わざわざご来館くださったのです。こんなありがたいことがほかにありましょうか?
 ひょんなきっかけから秋聲を知り、その作品を読み、探していたものにようやく出会えた!との運命を感じ、真夜中のテンションでもって金沢行を決めお宿の予約をされたという…。いままで恥ずかしさと厄介さを感じることはあっても有難いなどとついぞ思ったことのない〝真夜中のテンション〟にまさか感謝をする日がくるだなんて…。ありがとう、真夜中のテンション。ありがとう、その熱を冷めさせなかった翌日の太陽…!!
 朝まで持続したならそれは本物です。パン屋さんでアルバイトをしているという娘さん、秋聲はパンが好物ですのでそれもまた運命です。
 これまでいろいろなお客さまと接してまいりましたが、展示ケースのまえで涙ぐむひとを見たことがありません。秋聲の自筆原稿を間近に見ることに喜びを感じ、涙が出るほど興奮をしてくださったパン屋でアルバイトをしながら『黴』で卒論を書こうとされている娘さんが秋聲記念館一味でなくてなんでしょう?それはもう「ようこそ」というより「おかえり」、おかえりなさいパン屋でアルバイトしながら『黴』で卒論を書こうとしている(書いている/書いた)娘さん!とのご挨拶でもって次回ご来館時よりお迎えをさせていただきたく存じます。
 彼女の住まう都道府県を、秋聲記念館一味の生息するおめでたき地域として『黴』初版本のあの赤(→)で塗りつぶしたい心持ちです。若き秋聲研究者の誕生に心からの感謝と祝福を捧げます。

 秋聲先生、若い世代にも作品の魅力、着実に届いております、届いておりますよ…!(お顔も好みですって!!)
 

  


帯でなく背表紙
 2017.3.8

 きのうはエフエム石川さんのラジオ番組収録(3月19日放送予定)、本日はMROラジオさんの生放送に学芸員が出演させていただきました!お声がけありがとうございます!!
 MROさんでは角野アナ、パーソナリティの上坂さんと当館オリジナル文庫についてのお話をさせていただいたのですが、新作『新世帯』の表紙デザインをご紹介するくだりで「新婚夫婦の…一応ふたりの食卓なんですけど…帯によって分断されるふたりの視線が…ええ、帯によって…」ともちゃもちゃお話ししながら、ハッと気がつきました。(お、帯じゃない…!背だ……!!!)しかし時すでに遅し、というか訂正するタイミングをつかめぬまま放送終了…
 ド緊張のあまり、ふつうに間違えてお伝えしてしまいました。スタジオには実物があったもので、その場の雰囲気でなんとなく伝わったのですが、音声だけ聞かれてちょっと想像などされてみた方には意味不明なことになってしまいました。申し訳ありません、なんせ生放送、不慣れなもので…ド緊張をしてしまったのです…。せっかく機会をいただいたのに、と雪のなかトボトボ館へと帰ってまいりました。
 改めまして、帯でなく、背表紙です。オビ=デナク・セビョーシ…(すみません、ちょっとオ○=ワン・ケノービ的にいけるかと思ってしまいました。深く反省はしています。アッ、スターウ○ーズです)。お手持ちの方、ぜひ背表紙を中心に、表紙・裏表紙を開いて一枚絵として見てみてください。
 
 そうして雪を踏みしめながらしょんぼりと帰館直前、せめて放送冒頭にてしどろもどろとお伝えしていた当館自慢の梅ノ橋の雪景色をでもお届けしようとカメラを構えましたが、ご覧のとおり橋自体には雪もあんまり積もってなかったです。あの、とても、きれいなんですよ…!と、これまた小嘘をついてしまったことになりました。

←川沿いの堤防にはすこし雪。と、埋ずもれる神々。
  
 




本屋の心意気
 2017.3.7

 当館オリジナル文庫の在庫僅少のお話をいたしましたが(『縮図』もそろそろ!)、そんな話で思い出されるのは現在展示中の乾元社版『徳田秋聲選集』のこと…昭和27~28年、広津和郎・宇野浩二・川端康成を編者に全10巻予定と謳いながら未完に終わってしまったシリーズです。
 その巻末には出版社による熱い思いが語られており、「よき本を出したい慾望と、経理的な採算と両立しない場合が多い。」との書き出しからすでにぐっとくるものが…。(わかる…!)とその拳でおのが両膝を強く打ちつけてしまうのです。
 とはいえ当館、出版社ではございませんし、どちらかというと売り上げでなく秋聲文学を世に広く知らしめるため、との点にこそ文庫本制作の主眼を置いておりますので出版社さんと同じ立場で語っては申し訳ない部分もあるのですが、「ギリギリのところで良心的な出版が出来れば以て瞑すべし」、「手軽に読み捨てられる物でなく後に残る本という建前で、作家と作品を選ぶだらう。類書を避け無意味な競争を避け、独特の編集と装幀造本にも意を用ひるつもりである」などと語られるその姿勢に、当館の造本へのこだわりが追いついているとは言えないながら気持ちのうえでは(めっちゃわかる…!)と目頭をぐっと押さえてしまうのです。

 ただ、というわりに装丁地味…?と片や冷静に見もしていたところ、なんとなくこの黄土色のカバーをペロリとめくってみましたらそこにあったのは見覚えのある青い装丁…

 こ、これは…!天下のユメジデザイン…!!

 常設展をじっくりご覧になった方にはおわかりかと存じます。大正9年、日本評論社から刊行された秋聲の短編集『或売笑婦の話』と同じ、竹久夢二さんの装丁を本体に用いているのです(当HPの「企画展」ページの左側にあしらわれている本ですね!)。オリジナルでこそないけれど、めくった人にだけちょっと嬉しい仕掛け=本づくりにおける遊び心がここに隠されているのです。
 地味とか言ってすいやっせん…!と乾元社さんのお心意気に頭をさげつつ、ヨシできるとこまでがんばってこう、との思いを新たにもするのです。  



 


カウントダウン
 2017.3.5

 ラスト、ラスト、先日よりこれがほんとうの今年度ラストの催事、のような盛り上げかたをしてしまっておりました昨日の全集展展示解説ですが、よく考えればもう一週間もすればさくっと展示替えを行いまして、初日の3月18日にまた展示解説をするのでした。何度となくラストラスト詐欺を働いてしまい恐縮です。当館の終わりなき旅、みなさま方と永く歩んでいけましたら幸いです。

 改めまして全集展展示解説にご参集のみなさま、ありがとうございました。ブログ読んでます!と温かいお言葉をかけてくださったお客さまにも心よりお礼申し上げます。そうしてよき疲労感に満たされた閉館後、受付さんからもうひとつ嬉しい申し送りがございました。「今日『短編小説傑作集Ⅰ』が4冊も売れましたよ!」とのこと、館のオリジナル文庫の第2弾です(アッやっぱり武士の血流れてんのかも!と秋聲をモデルとする主人公が思ったりする短編「風呂桶」収録。本作は秋聲にしては珍しく原稿も残っています。常設展にてレプリカ展示中!→)。

 へへえ!そりゃありがたい!と喜び勇んだいっぽう「いやちょっと待て!すなわち在庫何冊だ!?」とすぐさま不安がよぎったのです。

「残り…5冊です…!!」

 傑作集Ⅰ、残り5冊だそうでーす!!昨日そんなにそればっかりプレゼンしたつもりはなく、どちらかといえば『新世帯』によく言及したほうだと思ったのですが、何故か少ないものから減っていくこの法則…実は『黴』も在庫僅少で、だけどもそれは講談社さんにカバーしてもらえばいいや!と勝手に算段をしていた矢先の残り5冊。こればっかりは当館で刷り増しするほかありません。あと一ヶ月も今年度を残して、来年度どのタイミングで増刷が出来るのやらまだなんとも言われませんが、とりいそぎカウントダウンが始まったよ~ということだけお伝えしておきます。ご注文はお早めに…!
 ちなみにラストマグネットも昨日お買い上げいただき、晴れて在庫ゼロとなりました。なくなることは寂しいけれど、それだけみなさまのお手元に渡ったのだと思えば嬉しいことです。



  


ラストサムライ
  2017.3.4

 よくわからない何かといえば、先日ほっこりポストでお見かけしたこちらこそそんな何かでございました。

 これは…両耳?両角?に、なにか…紅白のリボン…??
 体が無数に…地中から生え…??
 勉強不足で恐縮ながら、これが何という生き物であるのかまるで見当がつきません。あるいは何かのキャラクター?もしお分かりの方いらっしゃいましたらご教示ください。素材につきましては大根です。その点については大丈夫です。お久し振りではありますが、この展示ブースにおいて大根アートは決して珍しくないのです。
 ただ、どこまでが体なのか…体でもないのか…このモチーフについての謎は深まるばかり…。

 そんな謎をもやもやと抱えながらきのう収蔵庫にたてこもって次回企画展のキャプションを書いておりましたら、発見しました!先日こちらでふがふがと申し述べていた〝秋聲のダンスがまるでお能〟のくだり。ご子息一穂さんの随筆「父の思い出」(「小説新潮」昭和32年2月号)のなかにそんな記述がございまして、ひとつすっきりいたしました。「年齢でもあり、体にしない(撓い)がないので、踊りはまるで能のように固苦しかつた。(中略)その時分、巴里(パリ)から日本に来た武林無想庵氏のお嬢さんのイヴォンヌさんが、ダンス場で父に逢い、はじめて『サムライ』を見たと云つたくらいだから、父のダンスは社交ダンスなどと云うよりも、確かに能に近いようなものであつた。」
 
 ……さ、サムライ…!秋聲がサムライ…!!
 
 いったん「イヴォンヌさん」にとっつかまって、その先を聞き漏らしそうになりましたが、さらなる衝撃によりイヴォンヌさんの一件をわすれました(奥さまも日本の方ですが、パリ生まれのパリっ子につき…。日本名は「百合子さん」と仰るそうです)。
 
 とはいえ徳田家は元武家ですから無理からぬところでしょうか。秋聲の生まれる2年前に版籍奉還が実施され、正確には秋聲の父・兄までが武士、秋聲自身は武士ではありませんが、年をとるにつけ自分のなかに武家の血筋を感じたりなどしています。
 当館、まさかのラストサムライを顕彰する館でありました。


 


『縮図』に住まう何か
 2017.3.3

 これはピンクか紫かでいつか事務室に深刻な対立を生じさせました小鳥のマグネット、最後の一個だそうです!
 秋聲最後の長編小説『縮図』初出紙のタイトルカットが子犬やら招き猫やらとくに意味もなくやたらに可愛かったもので作ってみましたマグネット、4種のうち3種はすでに売り切れまして、この小鳥でほんとうに最後の一個となりました。当HPのグッズページからは色の欠品が出た時点でそっと削除しておりますので、あとは店頭販売のみ(間に合えば通販もできなくはないですが、「あのピンクのマグネット」とか「紫のマグネット」と言われてしまうと受けた職員により混乱が生じ、いちど鎮静化した論争が再発しかねませんので「小鳥のマグネット」とご注文ください。いやもはやマグネットとしては唯一ですから、「最後のマグネット」あるいは「ラストマグネット」などとかっこよくご注文いただいても間違いなくご用意できるかと存じます。)これが売れてしまえばおそらく再販はしない品物につき、ラストマグネット、その販売の瞬間に受付さんが心なしか涙ぐんでおりましたら「うちの冷蔵庫で責任をもって育てます」とキリッとして伝えてやってください。

 もう終わりがけでご紹介するのもアレですが、マグネットとしては子犬、招き猫、木馬、小鳥の4種のデザインを採用したこの『縮図』のカット、ほんとうはもうすこし種類がございました。
               
             これ…なんでしょうね…?→

 ご覧のとおり初回からちょっとよくわからない土偶のような何かもいたのですけれども、ちょっとよくわからないがために商品化は見送られました。ただここ最近はちょっとよくわからない何かが妙に人気者になってしまったりするご時勢ですので、思い切ってこの何かを全面に押し出してもよかったのかもしれません。

 当館にはいまのところ特別なロゴはございませんので、そのうちこの何かがホームページのトップなどに現れ、さも最初からいましたみたいな顔でもって何かしらご案内しだしましたらそういうこととご理解ください。某K記念館さんのとこはうさぎとご本人のコラボされたロゴでしたね…?この土偶のような何かと秋聲先生を…?


 
 


27日に召集
 2017.3.2

 先日「中央公論」つながりで何気なく「二七会」のことを話題にのせましたが、そういえば偽「二日会」が開催されたと空目をしたあの日は27日…その日まさに「読売新聞」の「編集手帳」にて「二七会」に言及があったことをふと思い出し、そうか27日だからか…!と今さらながらに合点がゆくなどモノゴトのうまく繋がらないこの脳を呪わしくも思っている本日こそ2日です。
 そう、あの日「二七会」の話題をだせば、かつて秋聲も在籍した「読売新聞」さんとお揃いになれたところ…。「二日会」にはしゃぐべきは今日でした。

 改めまして「二七会」、「二日会」同様、月の27日に集まる会だそうで、そのあたりいつかの正宗白鳥展ですこしだけご紹介をした記憶がございます。徳田家に昭和4年の白鳥筆秋聲宛書簡が残されており、「嶋中社長が集まりたいって言ってるから上京するわー」(意訳)といった内容。当時、白鳥さんは神奈川の大磯に住んでおりました。
 
 文士たちとはとかく何かにつけ集まりたがるもののようで、二日会とか二七会とか雨声会とか龍土会とか玉真会とか、とにかく会合がお好きでいらっしゃいます。ちなみに「玉真会」とは、昭和5年、秋聲のダンスの先生であった玉置真吉を囲む会で、秋聲はなんとその会長さん!ダンスに本気!!秋聲がダンスを始めたのはこの年のうちですから、齢六十にしてだだはまりをしてしまったようです。そんな秋聲とダンスを踊ったという歌人の高松光代さん(故人)のインタビュー映像を当館2階サロンにて放映しているほか、総合図録『秋聲』にもすこしだけ聞き書きを掲載させていただいております。
 また体が硬いから秋聲のダンスはお能みたいだったと書いていたのは誰であったか、ご子息一穂さんであったか…。姿勢についてはアレですが、なにせご本人は先生が驚くほど勉強熱心で、たいへんに端正なステップを踏まれたそう。





目にまつわる話
 2017.2.28

 きのうの記事中、「二日灸」を「二日会」と見間違えて「二度見」をしました、と書きたかったところ「二度目」をした、と書いてしまっていたことに気が付き、ア~ア~もうとにかく目の周辺地域全域にわたりおつかれ~!となりました残念な今朝です。
 さて、目の周辺といって思い出されるのは、秋聲の評論「文壇の反動色 附『春琴抄』」(昭和8年8月)。みなさまご存じ谷崎潤一郎の代表作「春琴抄」がこの2ヶ月前、かの「中央公論」に発表され、それについての感想を述べたもの。同作は、盲目の三味線奏者・春琴を献身的にお世話する弟子の佐助が、ある時春琴が顔に怪我を負ったことからその顔を見られまいと彼を遠ざけようとするのに対し、自ら針で目を突きその側に生涯仕えつづけるという物語…。なかなかのショッキングな、しかし耽美なその世界観に、秋聲は「あれが何うしてそんなに芸術的にすぐれたものであるか、幾度繰返して読んでみても首肯することができない」として下記のように述べています。

「作中の佐助が針で両眼を突つく場面があるが、谷崎氏は事実の聴き書きのやうに、あの作品を総べて説明的描写で作りあげてゐるけれど、この異常なる事件などは恐らく実際には有り得ないことではあるまいか。」

 ざっくり言ってしまうと、「えっそんなことってある…?」との超真顔のツッコミ
!怖!
 いやその軸でもって語られちゃあどんな作品だってなかなかつらいでしょうよ…!と思わなくもないですが、このあと本作が何せ「幼稚」であると繰り返し、「誰にきいてみても皆んな無条件で感服してゐるのは、私には迚も不思議」とも書かれています。
 そんな内容の興味深さもさることながら、いちおう律儀に何度も読んでみる秋聲先生、みんなに感想を聞いてまわる秋聲先生のお姿を想像するとちょっとニヤニヤしてしまう悪い記念館一味です。 

←昭和4年から始まった「中央公論」執筆者有志の会合「二七会」の様子。前列左端が嶋中雄作社長、右隣の黒ジャケット白パンツが秋聲。
 これは昭和6年のお写真ですが、継続的に開催され、秋聲はわりと晩年まで参加しています。
 こういうところでもってみんなに聞いてまわったのかもしれませんね…





2日に招集
  2017.2.27

 本日、デスクに設置されている日めくりカレンダーをふと見ましたら、「主な行事」のところに「二日会」と書いてあって二度見をしました。えっ二日会…?秋聲を囲むあの…!?と驚いてもういちどよく見ると「二日灸」でした。ふつかきゅう…「陰暦2月2日にすえる灸。この日に灸をすえると年中息災であるという。」だそうです。旧暦でいうと本日が2月2日になるのでしょうか。「二日会」、日めくりカレンダー様に掲載されるほど一般的ではなかったもよう。そりゃあそうです。ちょっと目が疲れているのか、いやだけど薄目にして見るとほぼ同じですね!フォルムがとてもよく似ています。
 さて、先日から何度か話題にあげておりますこの「二日会」、1月2日の秋聲の奥さんの命日にちなんで毎月2日に仲良しの文学者たちで集まってはお食事などをする会です。のちに「秋聲会」となって「あらくれ会」と名前を変え、「あらくれ」という機関誌など出したりなんかもしております(当初、その発行所は徳田家、編集発行人はご子息・一穂さん)。いい大人たちで遠足にも出かけたりする楽しい会です。

 また「二日会」の特徴は、毎月会を催す際に幹事を決め、幹事さんがその当日の様子を冊子に記録していくというお当番制…石川県出身の後輩・加能作次郎のはっちゃけぶりが記されたり、さいきんみんなちょっと遅刻多いんですけどー!との幹事さんの不満が洩らされていたりとたいへん面白いお帳面が残されております。2冊ございまして、1冊は当館蔵、もう1冊は徳田家で保管されています。

←(レプリカですが)常設展にて中ご覧いただけます。

 さらに面白いのは、この幹事さんを秋聲自身もつとめているという平等さ!奥さんを亡くして落ち込む秋聲先生を励ます会なのにもかかわらず、自ら幹事をつとめ、ハガキでメンバーに会のお知らせをしたり、記録をしたりするのです。なんとフラットな…みんながみんな、どんなに大家と呼ばれようとも決して偉そうな素振りを見せないのが秋聲先生、と秋聲を評しているのが実感として伝わるようなエピソードです。



 


ついにこの日が
  2017.2.26

 まこといい波が来ております…!この流れを受けて、最大のビッグウェーブがやってまいりました、すなわち『21世紀日本文学ガイドブック6 徳田秋聲』(ひつじ書房)がこのたびついに発刊となりました!先生方おめでとうございます!館といたしましては心からありがとうございます!!
 きのうまさにご執筆者の先生より同書をご恵贈賜り、ついにこちらにてご紹介することがかないました。重ねてお礼を申し上げます。
 八木書店版『徳田秋聲全集』の編集委員のおひとりである紅野謙介先生(日本大学教授)、そして当館前学芸員の大木志門先生(現山梨大学准教授)の共編著により、その他小林修先生(実践女子大学短期大学部教授)、大杉重男先生(首都大学東京教授)、西田谷洋先生(富山大学教授)、梅澤亜由美先生(大正大学准教授)と、これまで当館でもご登壇いただいたりとたいへんお世話になっている諸先生方が集結され、秋聲の作家論、作品論、そして研究史と、これ一冊で秋聲のことがだいたいわかるうえ、さらに最新の研究まで盛り込まれた今後の秋聲研究の入門書にして必携の書が出たといって過言でなし…!これはもう祭りです。春の秋聲祭の開催です!!(すみません、気持ちのうえの問題です。もう年度末で予算もないのでとくにイベントの予定はございません…)みなさま、おのおのの方法にて春の秋聲祭、開催していただけましたら幸いです。場所は異なれ、その瞬間、館と心はひとつです。
 そんなわけで、手続き整い次第、館のショップでも販売をさせていただきたく存じておりますが、館のオリジナル文庫とちがってこれは各書店さんなどでご購入いただけるものですから、待ちきれない方はどうぞ書店さんにてお求めください。どこにでも混じりこむことを得意とする薄笑いサンタのお面(当館蔵のほう)が目印です。
 そうしてハフハフしておりましたら、さらなる喜びの報が届きまして、この春、講談社文芸文庫にて『黴 爛』との代表作2編を収めた新刊本が発売されるとか…!?ここ数年、秋聲唯一の首の皮であった『あらくれ』を出してくださっている出版社さんです。これで秋聲の本が2冊に…!!繋がりました、秋聲文学の首の皮がブワッと厚くなりました。4月11日発売だそう、春の黴爛祭の開催です…!!講談社さんありがとうございます!!!



 

悲喜こもごも
  2017.2.24

 うれしい出来事とはつづくものですね!「金澤」への掲載につづき、月刊誌「中央公論」3月号にも秋聲のしゅの字が載っています!ひとえに川端康成記念会理事・水原園博氏、康成御大に感謝です!!
 先般川端康成邸から見つかった文士たちの書幅等の新資料につきまして、発見者である水原氏が「文豪たちの書でたどる近代文学史」として寄稿をされているのです。しかも秋聲でいえば、2点ある書幅のうち、あまり紹介されていないのほうの書「古き伝統と新しき生命」にまつわるエピソードに言及があり、もう全部ここに引用してご紹介したい勢いですがそれはできない…もどかしい…!!またありがたいことにその筆跡までも巻頭グラビアに掲載がございますのでぜひご購入のうえ、ご自身の目でご確認くださいませ。表紙にある「ふるさと納税の本末転倒」との大きな見出しが目印です。
 
 雑誌にテレビにもりだくさんで、昨日自宅で録画したテレビ番組を見ておりましたら、大正期に鈴木三重吉が主宰した児童雑誌「赤い鳥」特集にぶつかりまして、意外にも秋聲は同誌に創刊号から参加しており、そのあたりを4年前の「徳田秋聲らしからぬ!」との変てこな名前の企画展にてご紹介をいたしました。

 番組内でMCの女優さんが創刊号の目次を見ながらこんなに有名な文士たちが寄稿してるんですねぇ~とひとりひとり名前を挙げていくなか「北原白秋、島崎藤村、芥川龍之介、鈴木三重吉、泉鏡花。」と、秋聲の直前でストップしてしまったことにアアアアア~…!!とこの世の終わりかと思うような悲痛な声を上げてしまったのです。
     (徳田家蔵「赤い鳥」創刊号目次)→

 もうすこし、もうすこしだったのです。女優さんの口から秋聲の名が呼ばれるまであとすこし…!たいへんに残念な思いをいたしましたが、その名がテレビに映ったことだけでもよしといたしましょう。あまり多くを望んではバチがあたります。いやでもまさかアレでしょうか、秋聲の作品とは名ばかり、秋聲が締め切りを守らず困った小島政二郎(作家・「赤い鳥」編集者)が秋聲の名で代わりに書いたという裏事情を踏まえたうえで敢えて触れずに置かれたのでしょうか?目次中、秋聲の後ろにいたため一緒になってすっ飛ばされてしまった当の小島さんにも申し訳ない気持ちになりました。



 


待ってました「金澤」3月号
  2017.2.21

 前回記事で「じれじれ」という言葉を使おうとして、あれっじれじれってみんな言うかな?もしや方言?と不安になりチャカッとネットで検索してみましたら、ネット辞書に「じれじれ(副)…いらだたしいさま。じりじり。」とあって、用例になんと秋聲の代表作『爛』の一場面が挙がっておりドキーン!といたしました。あっこんにちは、こんなところで…!とさっきそのお宅を辞してきたのに最初の曲がり角でまた会ってしまったみたいな変な感じにちょっとどぎまぎしてしまったわけですが、調べたところで要は「うちでは言う」ということのみの証明および強調、すなわち何ら説得力のない結果になりましたことをここにご報告申し上げます(広辞苑さまには掲載なし)。

 さて、まだかなまだかなと先月よりじれじれしておりました月刊誌「金澤」、きのうついに発行となりました~!と言いますのも、当館オリジナル文庫『新世帯』のカバーデザイン一件をコーディネートしてくださった彫金師・竹俣勇壱氏のご紹介により、本誌に『新世帯』についての記事を掲載していただいたため!先月下旬にご取材いただき、3月号の発行をいまかいまかと心待ちにしておりました。実は編集部さんのお心遣いにより館にはおととい届いておりましたが、きのうより書店さんにも豪華に陳列されたことでしょう春色のきれいな表紙が目印です!

 竹俣さま、「金澤」編集部のみなさま、ありがとうございました。こんな素敵雑誌に載せていただけるなど夢のようです。『新世帯』、あかるく春らしいお話などひとつとて載せちゃおりませんが、人生の一スパイスとして誌面にも本棚にもそっと混じりこむことを許してやっていただけましたら幸いです。
 そういえば『新世帯』が出来たとき、ウェーイ納品されたぞ~い!!とテンションのあがる学芸員のいっぽう、販売担当職員がちょっと浮かない顔をしていたので何事か尋ねると「これ…ショップ棚と保護色じゃない…!?」と劇画タッチで言うものですからハッとして置いてみたら見事に同化しました。ここにこそ真の焦げ茶色が…!
 そんなこともあったもので、同誌撮影の際、カメラマンさんに「(撮影場所となった書斎の机とも)すごく保護色ですけど大丈夫ですか・・・!!」とブルブルしながらおたずねしたら「あ、それは大丈夫ですよ!」と何ともこともなげにお返事いただき、結果できあがったお写真の美しいこと…!ぜひ誌面でご確認ください。どんな分野においてもプロってのは頼もしくってかっこいいですね…!





7年周期
  2017.2.19

 さて本日19(トーク)の日ということで、トークイベントのお知らせです!当館催事じゃございませんが、三文豪仲間の室生犀星記念館さんのイベントにて当館名誉館長がトークに立たれます!これはレア!

 来たる3月26日(日)、犀星記念館さんのほうで毎年犀星さんのご命日に執り行っておられる「犀星忌」中、今年は犀星さんゆかりのお寺・雨宝院にて法要ののち、徳田章子当館名誉館長(秋聲令孫)と室生洲々子犀星記念館名誉館長(犀星令孫)による対談「孫達が語る作家の素顔」が行われることになりました!
 お孫さん対談といえば思い起こされるのは石川近代文学館さんで行われました公開対談「作家の家」。当館館報「夢香山」の第3号にちらとだけそのご報告記事を載せましたように、平成22年にいちどおふたりの対談がありましたね、ってもう7年前…!?月日の流れの怖ろしさ…!そんなわけでオリンピックよりも長い周期で時々やってくるこのレア企画、当館といたしましてもたいへん楽しみにしております。
 
 犀星さんと秋聲とは何せ良いお付き合いをされていたようで、この欄ではガーデニング仲間とばかりご紹介してしまっておりますが、犀星さんは奥さんを亡くした秋聲を励ます会=「二日会」にもばっちり参加してくださっておりますし、秋聲も犀星さんのいる軽井沢に遊びに行ったり、一緒に鎌倉に出かけたりなんかもしております。書簡の往来も多く、そのあたりを平成19年の企画展「秋聲と犀星」でご紹介しましたねって、もうきれいに10年前…!?月日の流れの(以下同文)…!基本仲良しなのでその間ちょこちょこと色んな企画展にお顔を出してくださっているとはいえ、一個の企画展としてそろそろもう一周してもよいのかもしれません。
 書簡といえば、いつか当館開催の鏡花展で展示した手紙(石川近代文学館蔵)、秋聲から犀星さんに宛てて何かしらの会合の日程調整に応えるもので「こちらはいつでもOK。泉の方には君から連絡したほうがいいね」(意訳)と書いておられて、またも~そんなこと言わずに~~!!とじれじれしたのも、はや4年前です。

 
  


色いろいろ
  2017.2.18

 もうすっかり忘れられていた3月4日の展示解説を残して今年度の催事はすべて終了してしまった当館、あとはもう消化試合のようなゆるっとした日々を過ごしている風に見せかけて、現在鋭意次回企画展のチラシ制作、パネル原稿書き、そして「ちょっと向山。」でお馴染み館報「夢香山」第9号の編集作業などなど、パンチ力こそ弱いけれども地下でこそっとした活動をちまちまと行っております。
 さて、当館の館報「夢香山」、なんとなく毎号そのお色味を変えてお届けしております。去年の8号は訳もなく紺色、今年の9号は訳もなく焦げ茶色です。印刷屋さんに「今年は焦げ茶で!アッそんな厳密じゃなくていいです!一般的な焦げ茶でOK!」と軽快にお願いしていて、返ってきた初校をみてなんとなくもんやりしている今日このごろ…

 焦げ茶か…そうか焦げ茶…とその色の本名が実はもっと別にあるんじゃないか、ほんとうにこの子俺の子かしら?みたいな目でもって見つめていたところ、お隣の職員から「…昆布色じゃない…?」とのご意見を賜り、一気に靄が晴れました。
 そうだ…!昆布色だ…!わりと煮しめた昆布色だ…なんて的確…!!とたいそうすっきりしたのです。
   
        写真だとあまり昆布感出ないですね!→
   
 〝一般的な焦げ茶〟って思うほど共通しないのかも、とためしに別の職員に一般的な焦げ茶とは?と問いましたらば「…黒糖の…パンかな…」と言われてさらに迷子になりました。いやそれも正直どうかと思うけれども百歩譲って黒糖まではいいとしよう、パンって…!そもそも黒糖のパンって一般的な食べ物でしょうか!?と事務室に議論が巻き起こりました。そうしてこちらの発注のしかたがわるかったのだと深く反省もしたのです。だって、まさか黒糖のパンを思い浮かべるひとがいるだなんて・・・!ひとそれぞれ、いろとりどりってこういうこと・・・!!
 そもそもそんな事態を避けるために色見本だなんて便利なものがあるのですが、こうなってくると意地でもそれに頼らず、最終的に「焦げ茶ってチョコレート色のことじゃない!?」に到ったうえでの、ではカカオ何パーセントのソレか、これからじっくり時間をかけて、印刷屋さんとじりじりそのラインの探りあいをしていこうと思います(迷惑千万)。
       


 


無花果もわりと好き
  2017.2.15

 柘榴ときて、梅ときて、柿ときたらば、無花果もご紹介しないわけにはまいりません。この難読漢字、正解は「いちじく」です!
 柘榴の木と同じく、無花果の木も徳田家の庭にあったそうで、一穂さんはその木を見るにつけ秋聲俳句「無花果の秋となりけり水噂」を思い出すと語っています。

 そのエピソードを知る前に昭和22年、秋聲の没後に一穂さんの編集により刊行された『古里の雪』(秋聲の絶筆「古里の雪」をはじめ、金沢を書いたものばかりを集めた短編集)の見開きに描かれた金沢の雪景色のうえにドドンとこの句が載せられているのを見て、不思議に思っていたものでした。

季節も合わぬし、金沢らしさもとくにないのに…?と違和感しかなかったところ、後に読んだ上述の一穂さんのお言葉でもってその意味を知りました。この句はかつて同じ縁側から父と子のともに見ていた風景、というわけです。

 さて、そろそろうっすらとお気づきでしょうか、秋聲先生動物はお嫌いですが草花を愛でるのはたいそうお好きなのです。執筆の合間合間にはお庭に出て植栽をいじり、そうして庭づくりにちょっと疲れたら、犀星さんから贈られた俳句集なんかを読むんだそう。
 
秋は地上に咲く草花の数多く色彩の最も濃厚なるを愛し候、嗜好の果物は無花果と柿など、然し食物の嗜好は年により日により甚だしきは同じ日にても腹工合、舌の加減にて変動あり一概に言ひがたし。」(明治42年、「秋の感想」より)

 当時よくあった雑誌新聞による文士アンケートの回答です。単なるアンケートの結果としてはちょっとめんどくさいほうの回答かとも思われますが、その内容さすがに行き届いていらっしゃいますね!今日は無花果だけど、あしたには変わるかもよ!毎日同じと思うなよ!!…ということですから秋聲先生に差し入れの際にはその腹工合と舌の加減、事前に要調査です。



 


今日は2(フン)14(ドシ)の日だそう
 2017.2.14

 きのうこちらで紅葉先生のセリフを引き写しながら、秋聲の記録する紅葉先生のセリフ集にはなかなかいいものがあるなァと思われましたので、勝手ながら急に紅葉先生のかっこいいセリフランキングを発表いたしたく存じます。

 3位「柿も青いうちは鴉も突き不申候」(『光を追うて』より)
   
 言わずとしれた名文句、秋聲の入門志願に対しバチコーン!!と断ってくるこの感じ…!秋聲は腹が立ってこの文句の書かれた手紙を破り捨ててしまったそうですが、もし手元に残してくれていたなら間違いなく超一級資料として崇め奉られたことでしょう。この文言のあまりのかっこよさにアニメーション映画「イノセンス」の一場面にも使われているとか。
 
 2位「みんなまずい顔を持って来い。」(『黴』より)

 紅葉先生が亡くなったその日、病室につどう弟子たちに発したというお言葉。さすがは江戸っ子、悪態を交えながらもそこに垣間見える師匠としての愛情深げなこの物言いにかえって胸打たれます。

 1位「ちょっと向山。」(『光を追うて』より)

 こちらは前回記事の発句云々の近くにあるお言葉。「向山(むこうやま)」は秋聲をモデルとする主人公の名で、紅葉先生のお弟子になって初めての仕事をした数日後、こうして不意に呼び止められて、先生から初めての原稿料をもらうというくだり…
 この師匠っぽさ、師弟っぽさ!こんな感じに呼び止められてみたいものですね!
   (明治35年の紅葉先生、すごく言いそう!!)→

 ラインナップとしてはメジャーどころながら、1位に関してはちょっと個人の趣味を全面に押し出し過ぎたでしょうか?今度職員の誰かを呼ぶときに張り切って使ってみようと思います(偉そうすぎて振り向いてもらえない可能性大です)。





梅もわりと好き
  2017.2.13

 金沢湯涌夢二館さんより、先日開幕となりましたコレクション展「竹久夢二の「小美術」―絵葉書・版画・生活デザイン―」後期展(~4月9日)にて、秋聲先生揮毫の色紙が出品されている旨、ご連絡をいただきました!これはありがたいこと!
 ちょっとまだ実際に伺えてはおりませんでどんな文脈にてご登場やらわかりかねますが、内容といたしましては「青梅の肌較々(やや)白し葉がくれに」の俳句色紙だそうです。わりとお得意のやつですね!
 秋聲の俳句づくりは、尾崎紅葉門下に入ってすぐのころ「発句(ほっく)はやらんのかね。」と紅葉先生に訊かれたことがそもそものきっかけ(自伝小説『光を追うて』より)。しかも紅葉主宰の俳句会に顔を出さないと先生のご機嫌がわるくなるそうで、それからポツポツとつくりはじめて現在197句が八木書店版全集第27巻に収録されています(これもたいへんありがたいこと!)。 
 ただ、ご長男・一穂さんによれば「人から短冊や色紙を頼まれると、大概同んなじ句を書いてゐた」そうで、たしかに件の「青梅の…」もわりあいよく見る気がいたします。当館にも同句の短冊1点、色紙2点の収蔵がございますので、気に入ってよく書いていたほうの俳句なのでしょう。古書店なんかに出ている俳句を見ても、やはり秋聲のなかで常に前のほうに並んでいる選抜句ばかりといった感があります。

  これは当館一の地味さを誇るとても潔い色紙…→
 
 いつものパターンだと実際に観覧のうえその報告記事としてこちらに書くのですが、それだとたぶん会期終了の前日にすべりこみというやはりいつものパターンにて、「見てきました!でも明日で終わりだよ!ごめんね!!」と何の予告機能もない残念なことになりかねませんので、フライング気味にお知らせを申し上げます。折りよく湯涌に雪見温泉しにいくよ~という方おられましたら、是非ユメジ館さんにお立ち寄りのうえ秋聲の色紙があるんやったかな?というお気持ちにてご観覧くださいませ。ユメジ作品の素晴らしいことは言わずもがなですが、他館で出会う秋聲ったらトキメキ以外のなにものでもないのです。





へんしん
  2017.2.11

 おかげさまで最近書籍の通販ご利用も増えてまいりました。かくかくしかじかで秋聲読んでみたい!→あれっ!?書店に秋聲の本がない!→ややっ!?記念館で売ってるっぽい!→金沢か!遠くて行けない!!となっている方の多かったところ、実際に通販をご利用くださった方々があそこ通販やってるよ!!と口コミで広げてくださった結果と心得ます(ご親切なかたがた…当館の活動へのご支援、まことにありがとうございます…!)。
 そうしてご注文やら支払い完了のご連絡やらのメールを確認していた職員から「購入者の方が『新世帯』の装丁いいねって書き添えてくださってるけどどうする?へんしんする?」と訊かれ、前半でフー!と嬉しくなって後半で脳みそが活動を停止いたしました。(…へんしん?へんしんするって…?えっいくら嬉しくなったからって変身するってそれどういう…?えっ高度な謎かけ…?)とぐるぐるしていたところ、「ねぇ…返信…どうします?」と、ここでようやく繋がりました。返信ですね!なるほど、納得!
 内部事情にて恐縮ながら学芸員アドレスとご注文を受ける代表アドレスとが別になっているため、学芸員から何かしら直接お返事をしますか?という確認をしてくださっていたのでした。それもすごいお心遣い…!これぞ仕事のできる感じ…!!
 「アッ返信か!しますします!!」と、慌ててお返事をしたいっぽう(嬉しくなると何かに変身できるところまでが学芸員の能力、か…)とまだ変な沼に片足突っ込んでいるのをかわいそうな子と思われたものか、そのあとそっとチョコレートをくれました。すみません…朝一番だったものですから脳のはたらきが追いつかず…

 そうして有難くチョコレートをもそもそいただいて糖分を補給した結果、やはりご返信はしないことにいたしました。ちょっと褒めたからってなんかすごいテンションで突然これまでやりとりしてない知らないひとからお返事きたよ…!と気持ち悪く思われては困りますもので…。メールの形にこそいたしませんでしたが(担当者からはご返信差し上げております)あるいは何かに変身しないといけないのかもしれない、と惑うくらいに喜びましたこと、この場を借りてお伝え申し上げます。そのあたたかいお一言、館の全員に届いております。
 
 ↑各館で無料配布しておりますオシャレ小冊子「文化の道草」にも載ってます!
  オシャレ小冊子の誌面を邪魔しない『新世帯』のポテンシャル…!! 





そこにあるわけ
  2017.2.10

 1月27日付でご報告申し上げておりました康成邸から発見された秋聲筆書幅につきましてご紹介する記事、昨日北國新聞さんローカル面に掲載をしていただきました!ありがとうございます!
 また、記者さんのお顔が写っておりますので公開は控えますが、この欄にて記者発表の様子を撮影してくるのわすれた!と書きましたら早速ご参考まで~と当日の写真をお送りくださいました川端康成記念会理事・水原園博氏(資料発見者)にもこの場を借りて厚くお礼を申し上げます。おかげさまで館の記録が増えました…!
 
 記事では、康成が秋聲からもらった書幅の来歴についてご紹介をさせていただいているのですが、所詮記念館なりに書き直したものに過ぎず、康成の随筆「落花流水」を直にお読みいただければそれがそのまんま書いてございます。
 今回発見された書幅の一点、秋聲揮毫の「大宮の…」は日本文学報国会により制作された「愛國百人一首」に選定された第二首の和歌。太平洋戦争下、国民の愛国心を高めるために古今の和歌を集めてつくられたもので、当時その宣伝のため、著名な文士たちに各一首を書かせ、百貨店で販売したそうです。康成が個人的に揮毫を依頼したのがタイミング的にちょうどそのころで、書の内容にまで注文をつけなかったために秋聲はおそらく当時何度も書く機会のあったこの和歌を書いて康成に贈った、というわけ…(そこに気遣いがあったのか単に無頓着なのかはわかりません…)。
 随筆によればこの百貨店企画に康成も参加していたそうで、ただ康成の書いて出品したものと、仲良しの横光利一氏のものにつきましては、彼らを昔からいろいろと援助してくれている菊池寛先輩がこっそり買い上げてくれたそう。売れ残ったらみっともないから!ということだそうですが、ちょっと菊池寛先輩かっこよすぎではないですか…!とうぜん自分からはそんなことを言いません。康成もあとでそれをどなたかから伝え聞いたそうで、お礼も言えなかったと書いています。
 書ひとつとっても物語それぞれ。当館も何かにつけお世話になっている菊池寛記念館さんのほうでご所蔵かどうかはわかりませんが、もし菊池家に二幅あらばそれはそんなことだそうです。ヒー!ドラマ~!!
 


  


少なくとも歯の類ではなさそう
 2017.2.8

 きのうのオレンジ色の、生まれたのか置かれたのかも不明ながら、奥歯の神様のお仲間である以上、名前をつけてさしあげねばなりません。オレンジだから柑橘系?とも思われましたが、それにしては形がいびつ…と、ふと降りてきたのが柘榴(ざくろ)です。いま準備中の次回企画展にて、秋聲長男一穂氏が徳田家に植わっていたという柘榴の木についてしばしば述べておられることを思い出しました。当然同じ家に住んでいますので、その木については父秋聲も作品のなかに書き記しています。
 徳田家の植栽仲間といたしましては、犀星さんから贈られたという最強のエピソードでもってスターの座をほしいままにしている竹やシダなんかがありますが(ご健在)、柘榴もご一家にとっては思い出深い植物であったよう。残念ながらその木はもう枯れてしまったと一穂さんが書いていらっしゃいますが、思いついたこの機にひとつ活躍を場をつくってさしあげたいところ…。
 柘榴…柘榴ね…柘榴って…?とおぼろげには描けるソレの外観を確認せんとまず参照いたしましたのは現在展示中の秋聲全集装丁です。植物といえば画像検索より俄然徳永春穂氏!
 そしてやはりちゃんとございました、ありがとうございます。第3期第33巻の装丁に柘榴が使われておりました→

 アッほらお色味の感じも意外と遠くないっぽい…!?
 
 そんなわけで、呼び名がないと何かと不便ですので、今日から奥歯神のあいだにはさまれたあのちょっとファンキーなアイツを仮に「ざくろくん」とお呼びすることにいたします。ある日急にパカンと割れて中から赤い実がこぼれだしていたら「ほぅらやっぱり柘榴でしたよ!!」と、すぐさまこちらにてご報告をさせていただきます。
 ちなみに柘榴が使われている第33巻は長篇小説「闇の花」一編で占められているという贅沢巻。本作の超貴重な秋聲自筆原稿を石川近代文学館さんよりお借りして展示させていただいておりますので、ご観覧のおりには柘榴の33巻コーナーをめがけてどうぞ。



 


増員
 2017.2.7

 


 気付けば仲間がふえましたァ~~~!!!

 オレンジのやつ置いたのだれですか~!!!!








WAKO
   2017.2.5

 昨日は全集展第3回目となるギャラリートークを行いました。ご参加くださったみなみなさまに心より感謝申し上げます。

 午前の部終了後、わりとよく来てくださるお客さまからのお電話で「午後の解説って前回と内容同じ?」と訊かれたもので、「アッそうです。初回に聴いてくださったやつの最終回です!」と元気よくお返事をして電話を切って間もなく、なんとはなしに当HPのイベントページを見て戦きました。まだ3月4日がある…!
 思わず「アッ!!」と大きな声が出てしまい、お隣の職員をびっくりさせてしまったのです。午前の部を思いっきり「もう今日でおしまい」のテンションにて執り行い(だからといって聴かれるほうには何ら影響がないかと存じます。ひとえにこちらのモチベーションの問題です)、フゥ早いものであと1回か…とどことなくしんみりしながら階段を下りてきての最終回じゃなかった問題…。来月4日、いい加減しつこいですがまた同内容にてよろしくお願いいたします。
 なお、ギャラリートークに予約は必要ございません。同日の11時あるいは14時頃に館内のどこかにさえいていただければ、こちらからお声がけをして廻ります(映像をご覧になっている場合にはそっとしてしまうかもしれません!)。本日午前の部は47分、午後の部は48分と、初回には1時間強かかっていた解説時間もだいぶん目標の「40分程度」に近づいてまいりました。最終日は40分きっかりになるよう、がんばって無駄を省いてまいります。

 ちなみに午後の部でまくしたてすぎて脳に酸素が足りなくなった結果ド忘れをした、八木書店版『徳田秋聲全集』完結に対して贈られた第54回菊池寛賞正賞の置時計は「和光」のものですね。オメガは第1回菊池寛賞正賞の懐中時計のほうでしたね。盤面にふつうにWAKOとくっきり書いてございました(←展示ケース左端っこにある金色のもの)。

 そう迷ったら資料を見る、基本的にはそこにすべて書いてあるのでさっきの自分に言ってあげたい「慌てるなかれ」。ついでに時間も現在時刻に合わせてございますので(話長いな…今何時かな…)と気になりだしたら、さも展示品を見るような風をして置時計、ご確認ください。





節分祭
   2017.2.4

 きのうはひがし茶屋街にある宇多須神社さんの節分祭でございました!場所柄、こちらの節分祭にはひがしの芸妓さんが大集合。芸妓さんによる豆まきが恒例となっており、毎年多くの方々が詰めかけます。
 先日芸妓さんを間近に見、さらにお茶の先生宅で大豆のお菓子をいただいてぐんと高まっていた節分気分、しかし当日はなんやかんやございまして職員は誰も行かれませんで、今年の様子はみなさまにお見せできないや…館に福は来ないや…と暗い気持ちに沈んでいたところ、一通のメールが届きました。

 添付写真「今年の節分でゲットしたお豆」として、なんとご近所の写真家さんから福を分けていただいたのです!ありがたや!

    ご覧あれ!いつにない雰囲気をまとうこの一枚!→

 こちらからとくにお願いしたわけではないのに、なんたるグッドタイミング…!すぐさま、明日の寸々語に使っていいですか!?とお願いすると、こちらもご快諾をいただきました。重ねてお礼申し上げます。

 この宇多須神社、さいきんでは忍者が出没するということで話題になりました。いつかも企画展のチラシをお届けにうかがった際、ムム人影!?となって振り返りましたらそこに忍者がいたこと…ちょっとお写真がすぐに出てまいりませんが、こんな素人に姿を見られ、あまつさえ写真にまで撮られてしまうだなんてその能力のほどはいささか疑わしく…(いや11月の写真…いま確認しましたら、個人的に携帯を失くして復元できなかった期間のものでした。うっかり者だけれども、実は想像を超えるすごいスキルを持ったヤツなのかもしれません)。
 とかなんとか言いながら、宮司さんのご許可を得て地元の大学生さんらのグループで設置した忍者のようで、全部で3人いるそうです。たぶんこちらと目が合ったサイバー担当の彼はいちばん下っ端で、あとの2人はおいそれとは見つからない忍の先輩なのでしょう。芸妓と忍者の集う神社、春は桜の名所です。
  


 


寒糊炊き
  2017.2.2

 先日、石川県文化財保存修復工房さんによる「寒糊炊き」なる体験イベントにお邪魔してまいりました。工房さんといえば、昨年当館で開催いたしました黴にまつわるトークイベントで、黴の文化財修復利用についてお話しくださった当館にとって2人目3人目となる黴先生がいらっしゃるところ。うかがいましたら、工房の方々が修復作業に使用する「寒糊(かんのり)」をぐるぐるまわしておいででした。以前のお話にあった、これが今年の糊ですね…!

 工房さんでは毎年大寒のころに今年の糊を炊かれるそうです。そうしてそれを壷に寝かせておくと、次第に黴がはえてきて、真っ黒い黴が表面を覆えばそれは良い糊、黄色い黴が生えてしまうとあまり良い糊にならないという…。文化財は繊細なのであまり粘着が強すぎてもよろしくなく、お軸なんかは巻いたり解いたりしますのでそれに耐えるしなやかさが必要なんだとか。そうしてお味噌よろしく十年かけて熟成を見守り良い糊を育ててゆくというまさにその始まりを見学させていただいたわけです。

 糊づくりには、兼六園に隣接する金澤神社の金城霊沢から「寒の水」なる糊炊き用の水を拝借するそうで、イベントでは宮司さんから金城霊沢の由来などをお聞きしながら、水をくむところも見せていただきました。
 覗き込むと水底にたくさんの小銭が沈んでおりましたが、本来投げ込んではいけないそう。ここにお住まいの龍神さまが金属を嫌うため、投げ込むと祟りがあると言われているとのことですから今後拝観のおりにはお心に留め置いていただけましたら幸いです。トレビの泉的に投げ込みたくなる気持ちをぐっと押さえ、天井に描かれた龍神さまにご挨拶くださいませ(暴れださぬよう網がかかっているそうです。おとろしや…!)。
 糊をぐるぐるされている隙間に、黴先生②と黴イベント第2弾のありやなしやをこちらでもこっそりご相談…退出の際、作業中の黴先生③にお声をかけると、壷の表面から剥ぎ取った真っ黒い黴を片手にいい笑顔でお見送りくださいました。





おやつレポート その16
 2017.2.1

 今年もまたお世話になります、ご近所のお茶の先生からすてきなお菓子のお福分けをいただきました!毎度ありがとうございます!
 ただ箱を開けてからそれがお菓子であるとわかるまでに少々タイムラグがございまして、パッと見た瞬間(イ○シュウマイかな?)と思ったそのまんまが口に出てしまった美への理解と堪え性のない残念な職員ですみません…!
 「タンチョウです」と言われてはじめて、脳内で蒸されていたイカが華麗な鶴のはばたきに変換されましてございます。アッこのあたまの…!赤いの…!そんなわけで正解は丹頂鶴でございました。ちょっとだけ待てばよかったものを、脳と口とが直結しているこの回路をなんとかすることを今年の目標といたしたく存じます。

 そんなお茶の先生と、本日毎年恒例の春のお茶会の打ち合わせなんかもしてまいりまして、次回企画展チラシあたりにはきっとその情報も刷り込めることでしょう。毎回このためだけにオリジナルで提供してくださる名店「吉はし」製、今年のお茶菓子もどうぞお楽しみに。
 お菓子というと秋聲先生はなにせ餡子と餅気のものがお好きとのことで金澤文豪カフェあんず(通称「三文豪カフェ」)さんでは「秋聲セット」として餡子とお餅のお菓子を提供してくださっています(それも鶴がモチーフのようですね!)。
 秋聲先生曰く「菓子は自分の郷里の金沢が、田舎にしては不思議に発達してゐるやうで、春夏秋冬にわたつて季節々々の旨い菓子の種類が頗る多いので、東京の菓子には一向驚かない」(「大学界隈」昭和2年)そうですが、お菓子のことひとつ書かせてもどうしたってちょっぴり辛口…(先生、金沢にも東京にもちょっとずつ失礼ですよ…!)と勝手にこちらの胃がキュッとするのです。これじゃあカフェの宣伝文句にも使っていただけないや…!と渋く思ういっぽう、まァ一応褒めてるし、「自分の郷里の金沢」って言い切る感じが嬉しいし、何より秋聲らしいし、よしとしまーす!とすぐにフニャッとして甘やかしてしまう記念館一味です。
 新暦では本日がお誕生日ですね。何度でもおめでとうございます。
  
 



記録更新
  2017.1.30

 きのう展示解説をご依頼くださったお客さまと館内をまわらせていただき、前回の記録を上回るおよそ2時間半を費やさせてしまったこと、事務室に帰って椅子にすわった瞬間にどんとでた腰の疲労感によりようやく思い知り、たいへんな反省にいたりましてございます。
 
 ご遠方からというに貴重な午前中をほぼ当館にて使わせてしまい申し訳ありませんでした。しかも立ちっぱなしの2時間半…そろそろ自重をせねばなりません。40分が見えたあたりで受付からベルを鳴らしてもらわなければなりません。そんなときのための吹き抜けです。2階で悪口を言うと1階まで聞こえる場合がございますので何卒ご注意ください。

←秋聲先生ご愛用のチンベル(再現書斎にて展示中)


 おふたりさまお付き合いくださいましてありがとうございました。また、最後にショップにてどうしたって本を売りつけようとする悪徳商人ぶりもそろそろ改めなければなりません。お帰りになったあと、やっぱり買えばよかった!!となって当HPより通販を利用されますとホラ…送料がかかりますから…。
 また、お買い上げくださった本を入れるため、受付さんが秋聲記念館印入りのビニール袋を出した際にいただいた「ワーイ!」との歓声、当館一生わすれません。いまだかつて秋聲印の袋をお渡しして「ワーイ!」との歓声があがったこと、あったでしょうか?(あったかもしれません、すみません個人的に耳にしたのが初めてだったものですからずいぶんとハッとしたのです)。それもこれも今もどこかで戦っている秋声くんのおかげさまと、感謝を深めております今日このごろです。
 
 そんなわけでおかげさまでさいきん解説のご依頼がちょこちょこと増えてまいりまして、テンションがあがって無駄に長時間お話ししてしまう学芸員が悪いのですが(今後は公約の最長40分を心がけます)、嬉しい悲鳴にてちょいとブッキングに無理が生じてきておりますもので、たいへん申し訳ないのですがご依頼の際には一週間ほど前にご連絡いただけましたら幸いです(そしてご希望に添えませんでしたら重ねて重ねて申し訳ございません!)。
 

  


第4回 秋聲とお座敷あそび
  2017.1.29

 おかげさまでつつがなく終了いたしました!秋聲とお座敷あそび、新春バージョンです!(松の内にはちょっと遅し…!)

 お座席は完全なる予約制でしたけれども、知らずにたまたま来館された方々も多く、思いもかけずザ・金沢を満喫していただけたかと存じます。毎年恒例の行事にて、はや4回目だというのに会場設営から進行から毎度ワッチャワチャで恐縮です。開会前には特別ゲストとして急遽来館された山野金沢市長までもが一緒になって床に這いつくばり畳の位置を調整するという、決してあってはならぬ光景が繰り広げられておりましたこと…県外の方にはもしやお分かりにならなかったかもしれませんが、そんなわれらが市長さんでございました。いつだってワッチャワチャな館ですみません、ほんとうにありがとうございました…!
 そんな不安な感じで始まった会ではございましたが、ひとたび場を芸妓さんたちにお渡しするとそっからがすごいのです。一気に空気ががらりと変わり、いつもの展示室がお座敷空間になるのです。かといってツンとされているわけでなく、舞が終わればたいそうフランクにお太鼓あそびにお誘いくださるうえ、お客さまが体験されている様子を、お客さまカメラで記念撮影までしてくださるのです。芸妓さんとスマホ、夢の共演!! 
 今回は江利加さん、美月さん、涼香さん、かつ代さん、佳丸さんのご出演で「宝船」(←このあたりに新春感)「さわぎ」二曲の演奏・踊りとお座敷太鼓のご披露がありました。お太鼓あそびには三組のお客さまが誘い出されて、芸妓さんとともに太鼓を打ち鳴らしておいででした。なにせ本当のお座敷とちがってお酒のふるまいがございませんもので最初は恥じらっていたお客さまがたも、きっと忘れがたい良い思い出としてお家にもって帰っていただけたことでしょう。
 ありがとうございました~といって芸妓さんがふつうに歩いて帰って行かれる感じもひがし茶屋街と隣接する当館だからこそ見られる光景…東料亭組合さん今年もありがとうございました!





新発見資料
 2017.1.27

 ご無沙汰しております。みなさまお変わりございませんか?寸々語、沈黙の間、東京方面へと出張に行ってまいりました。今回は、次回企画展のための資料借用と、先日メディアを賑わせました、鎌倉の川端康成記念館から発見された新資料の共同記者発表に紛れこむというお仕事です。
 企画展が終わったといえ、やはり今年度中はどうにも康成から離れられないようで、今回見つかった文士たち揮毫の書幅約60点のうち2点が秋聲先生によるもの。いずれもその来歴は康成自身が随筆に記してくれており、康成展開催のおりにも、おそらく2点はおありとのことですからもしお心あたりございましたらご一報ください~と遠慮がちにご依頼申し上げておりましたなんとその2点の新発見!先週康成記念会さまからお電話いただき「2点でてきまして~」と言われた際には「あの2点ですか!?」と食い気味に反応をしてしまったのです。その2点です。たしかにあった、あったのです…!
 そんなわけで、記者発表の席では記念会さまのお気遣いにより秋聲筆の書幅についてすこしお話もさせていただき、そのような晴れがましい場を初めて体験させていただきました。記念会さまありがとうございました。

 金沢関係では、秋聲のほか犀星さんの色紙も発見されまして、地元新聞にも大きく取り上げられました。秋聲のほうのものは、その文面自体はさして珍しいものではありません。
 「大宮の内まで聞ゆ網引すと網子ととのふる海人の呼声」「古き伝統と新しき生命」と、当館にも収蔵があるものですが、前者は康成本人が秋聲に依頼して書いてもらったもの、後者は康成本人が鎌倉の古書市で購入したもの、という収集の過程に大きな価値がございます。そのあたりまた場を改めましてご報告をさせていただきますが、秋聲サイドといたしましてもたいへんな新発見にて興奮しすぎた結果、記者発表にまつわる写真を何ら撮ってきませんでしたので、翌日うかがった徳田家にある康成揮毫の記念碑近影でご容赦ください(平成29年1月25日現在)→

 帰りの新幹線でも、ふと顔を上げましたら車両前方にある電光掲示板でこの発見の報が流れており、慌ててカメラを構えましたが間に合いませんでした。こんなこともうないかもしれないのに…!とひとり身悶えました。  





卯辰山碑に聴け秋の声(Ⓒ佐藤春夫)
  2017.1.22

 先日よりちょこっとだけメディアづいておりまして、文庫本の記事を新聞に載せていただいたり雑誌社さんが取材に来てくださったり、地元のケーブルテレビさんが撮影に来てくれたりしております。ありがたやありがたや…。
 と言いながらケーブルテレビさんは当館だけのことでなく、金沢の三文豪を順繰りに取り上げてくださる企画の一環にて、1月は犀星月間(ただいま放送中!)、2月は秋聲月間、3月は鏡花月間と、月のうち繰り返し館とその人とを紹介するミニ番組が放送される予定です。
 そんなわけでその撮影のためご来館くださったのですが、その前に朝一番で秋聲文学碑を撮りに卯辰山へ登ってこられたそうで、撮影隊のみなさまのまぁお体の冷え切っていること…!なんだかそんな山頂にちかいところに建っちゃっててごめんなさいね…!という気持ちになりました。お寒いなかわざわざありがとうございました。
 碑の除幕式も昭和22年11月18日(秋聲五回忌)の寒い日でした。たいへんな雨風だったそうで、式に出席してくれた林芙美子さんが「つむじ曲がりの秋聲が余計なことをするなと思ったのよ~」と笑ったというエピソードが伝えられています。いまこれだけ聞けば、ちょっとほっこりするいいお話なのですが、この話を伝える建てちゃったほうの実働部隊・加藤勝代氏(当時北國新聞記者)はその言葉に内心ドキリとしたそうです。自分たちは秋聲の望まぬことを、要らぬことをしてしまったのだろうかと…。

 そんな葛藤は何をするにつけ正直館といたしても常に胸の奥底に抱えていたりもするのですが、今や秋聲先生のお声をきけないことをいいことに、いつもいまそこにあるテンションでもってとりあえずやらかしてしまって後でそのご遺影に陳謝することになるのです。
 今日も今日とて、秋聲先生テレビですよ!テレビ!!とはしゃぎまわってすみません。ご本人のお気持ちはどうあれ、とにかくたくさんの方に見て知って触れていただきたいものですから…!






「ごミュ印帖」新発売!
  2017.1.21

 金沢には大小さまざまな美術館文学館が雑に数えて20館強、それもさほど遠くない位置関係で林立しています。当館といちばんのご近所はなんといっても川をはさんであっちとこっちの某K記念館さんですし、同じく三文豪のひとり・室生犀星記念館さんへもさくさく頑張って歩けば一時間ほどで行けなくもありません(お天気がよければですね!バスをお使いくださいね!)。その間にも文芸館やら蓄音器館やら寺島蔵人邸やら中村記念美術館やら鈴木大拙館やらふるさと偉人館やら老舗記念館やら前田土佐守家資料館やら、とにかく似たような規模の施設がたくさんありますもので、脇目もふらずガムシャラに犀星館まで歩いてゆけば一時間で済みますが、アラアラこんなのもあるよ…とちょっとでも脇目をふろうものならそれこそ数珠繋ぎにあれよあれよとどこぞかへ連れてゆかれ、何の星座を描いているのか、犀星記念館までの道のりが結果4泊5日くらいになってしまう恐れもございます。おまけに湯涌方面まで視野に入れれば軽く一週間くらいは必要になるのではないでしょうか。一度では決して済ませられませんので、二度三度、季節を変えて金沢旅行、計画していただけましたら幸いです。
 
 そうしていろいろな館を訪問される際には、是非本日新発売の「ごミュ印帖」(3種・各1620円税込)を携え、各館にあるスタンプを集めて金沢の思い出となさってください。神社仏閣で御馴染み「ご朱印帳」のミュージアムバージョンです。画期的です。「歌ひとつ覚えるたびに星ひとつ熟れて灯れるわが空をもつ」(Ⓒ寺山修司)の精神にて、ご利益はひとつひとつと星が繋がり徐々に明るく賑やかになってゆく皆様方各人の星座もつ空ということで何卒…。
 そんなステキなお品ですが、何せ言いにくいのが難点で「今日からごむいんちょう発売ですね!」「ぎょみゅいんちょう、ここでいいですか?」などと朝から職員誰ひとりとして正解をたたき出せずにおります。今のところ強引に押し切る方向で暗黙の了解としておりますが、あるいはページが全部埋まったら、徳が積まれてスラッと言えるようになるのかもしれません。
 


 


「新世帯」新発売!
 2017.1.20

 フリなのかそうじゃないのか、微妙にその制作の感じを匂わせながらその実、作っている記念館事務室周辺にしか匂ってこない程度の地味な宣伝をしておりましたオリジナル文庫の新作がようやく本日発売となります!お待たせをいたしました!

 記念すべき第10弾は『新世帯』と題しまして表題作およびその他4編を収める中短編集です。既刊分のつづきとして短編傑作集3とするには「新世帯」などちょっと長めかな?これは中編の域かな?と迷った末に、5編を含む謎の『新世帯』となりました。これも先日すこし話題にのせておりました「犠牲者」、関東大震災時にたまたま金沢に帰っていた秋聲の心情を描く「不安のなかに」などもようやく文庫化が果たされ、これを機にすこしでも多くの方のお目に触れることをただただ願うばかりです。
 今回もうひとつ特別なことといたしまして、カバーに超一流のデザイナーチームをお迎えすることが出来ました!ひがし茶屋街でお店を構えていらっしゃる彫金師・竹俣勇壱氏がヨッシャ秋聲で天下とろうや!!くらいの勢いで一肌も二肌も脱いでくださりコーディネイトを担当(表紙スプーンが竹俣氏作です!)、その名のもとに料理家・渡辺有子氏、写真家・雨宮秀也氏、デザイナー・山口美登利氏、そして帯には塗師・赤木明登氏と、それぞれが超一流の〝チーム竹俣〟が集結のうえ、期間限定の〝チーム秋聲〟として素晴らしい才能をこの本にぶつけてくださいました。

 いちおう二人分用意された食事…だけれどもその食卓はどこか寒々しく、背表紙によって分断された二人の視線…現代版「新世帯」です。モダン、モダンです…!秋聲文学の現代性を見事を表現してくださったといって過言でありません。
 これまで館のなかだけでコチョコチョと狭く小さく行っていた仕事にたくさんの方がかかわってくださるようになったことも大きな喜びの一つです。この仕事がより多くの方に届きますよう!本日より通販も開始です!

                販売準備感すごい→






和傘をめぐるOTOKOTACHI Part2
  2017.1.19

 先日、標題の展示会を観覧してまいりました!以前の話題にもあげておりました企画展「ひがし茶屋街と秋聲」で、展示室のディスプレーにご協力をいただいた和傘作家の山田ひろみ先生と職人仲間五人衆による展示会です。
 そのおひとりとして以前の「黴を語る」イベントに講師としてお越しくださいました森川千春先生も生きた黴を出品されており、おかげさまで大好評をいただきました黴イベント第2弾のありやなしやを出先でこっそりとご相談…あ、ええ、生きた黴です。

 なら死んだ黴というのを見たことがあるかと言われるとちょっとモゴモゴしてしまいますが、森川先生の出品されている黴たるや、センチュウなる細長い生き物を捕食のためつかまえているまさにその場面を顕微鏡でお客さんに見せるといったこれぞまさに生きた展示…!旭○動物園的な・・・!!(ちなみに平成18年、八木書店『徳田秋聲全集』の完結に対し授与された第54回菊池寛賞の同時受賞は旭山動物園とご存じ「徹子の部屋」です。徹子さんは秋聲原作『縮図』の舞台にもご出演歴あり・・・)とにかく黴のもつそんなアグレッシブな一面を見せつけられてはあえて〝生きた黴〟と表現したくなるというものです(ビューンとは動きません。黴の仕掛けた罠にセンチュウがひっかかってウゴウゴしているさまが見えます)。
 アアアアつかまえていますね…!と思いがけず大きな声が出てしまい、優美な和傘に酔いしれている他の皆様方には申し訳のないことをいたしました。しかも森川先生はそんな黴ブースのいっぽう、手作り万華鏡コーナーをも左手に抱えていらっしゃるのだからちょっともう頭の整理がつきません。と言いながら黴と万華鏡だなんてまるで秋聲と某K花先生のようですね…実にうまいこと出来た世の中ですね…

 同展は22日(日)まで。10:00~18:00(最終日は16:00まで)、石川近代文学館さんお隣しいのき迎賓館にて入場無料です!





親心子心
 2017.1.15

 前回の記事中、「心馳せ」という言葉を変換しようとして「子転ばせ」と出てきたときには愕然といたしました。よりによっていたいけな子どもを…!非道というほかありません。
 当館で子どもといえばまずは秋聲ご長男・一穂さん。先日からこちらに何度もご登場いただいておりますこの方の生涯と業績を、次回3月からの企画展でご紹介する予定です。
 秋聲の出世作「黴」にその誕生前後の様子が描かれていることはよく知られたところですが、それがなかなかな書きざまでありますもので、大人になってご自身で読まれた際にはかなり複雑な思いを抱かれたようです。くわえて一穂さんも父と同じ小説家の道を志し、そうすると出てくるのはやはり二世問題…偉大なる父・秋聲の影があまりにも大きいことは想像に難くありません。
 秋聲没後はその家と作品と遺品を守り、そのご尽力のおかげさまで当記念館が建ちました。いかに偉大な人物でも、いかに顕彰したくっとも、なにせ資料がないことには記念館は建ちません。その点、秋聲本人が約40年を暮らした家自体がそのまま残されているだなんて、数多いる文豪のなかでも超のつくレアケース!そんな一穂さんの思いを継承し、今もその家屋にお住まいでいらっしゃる秋聲の子・一穂さんの子であるところの名誉館長に、いろいろと資料のご相談をさせていただきながら毎度の企画展が開催されているわけです。
 秋聲先生はああ見えて子煩悩でいらっしゃるので、出来るだけ子の転ぶことのないようアレやコレやと思いをめぐらせている様子が作品に溢れんばかりに描かれています。いや愛されていることはわかるけれども、そうして何でもかんでも書かれることで子としては一回転ばせられている部分もあるんじゃないかなどうかな!と外野はそう勝手なことを思ったりなんだりもいたしますが、結局のところ親子の愛は各ご家庭それぞれ。次回展示でその形、感じてみてください。



 


待ち合わせ好き
  2017.1.14

 きのう受付まわりで業者さんとお話ししておりましたら、受付さんからちらちらとものすごく視線を感じ、あらうるさかったかな…とちょっとシュンとしたりもしていたところ、業者さんがお帰りになったのち受付さんからチョチョイと呼ばれ、叱られることを覚悟しながら寄っていって「さっきね、若い女性おふたり連れが来てね、先に入ってらしてね、そのあと男性がおふたり来てね、待ち合わせだったんですよ。ここで、待ち合わせ」との報告を受けたときのこちらの心持ち、おわかりいただけるでしょうか?

 「ま、待ち合わせ…!!」
 
 この心を一言で表すならば「ズキューン!!」です。なんと素敵な響きでしょうか、待ち合わせ…!あとからいらした男性がお連れさまを探しているふうで、受付さんは我慢しきれず「待ち合わせですか!?」とやや興奮気味に訊いてしまったというから、当該のお客さまにはちょっと不審に思われたかもしれません。が、そのときの受付さんの目はきっとどこの受付さんよりキラキラしていたはず。
 待ち合わせ場所になれる喜び×文学館で待ち合わせる素敵さ=ズキューン!!です。それも、つねづね待ち合わせに使っていただけるような館でありたい、と周囲に洩らしていたところのそれをきちんと拾って懐に入れていてくれた受付さんの心馳せ×決して叱ろうと思って視線を送ってきていたわけでなく「すぐ言いたかったけどお話し中だったから…」との二段構えのお心馳せ…!
 
 もしかしてものすごく伝わりにくいお話をしているかもしれません。単純に当館職員が勝手にうれしいだけの出来事なのですが、騙されたと思ってぜひ今度記念館で待ち合わせをしてみてください。わくわくした目で受付さんがこっちを見てきます。
 
←待ち合わせに最適なロビーもありますゆえ!!





たぶんあと2回は行く
   2017.1.11

 年末にこの欄でご紹介した石川近代文学館さんの企画展「作家と石川近代文学館―文学館を支えた人たち―」を観覧してまいりました。
 いやいや圧巻!こちらが勝手な康成脳でうかがったせいもありますが、しょっぱなから秋聲生誕百年記念展を訪れている康成先生のお写真だなんて、そんな…!もうちょっと助走を!助走をください…!!
 この時点で早くも武者震いが止まりません。その後も惜しげもなく展示されている、秋聲のお軸に見入る康成、秋聲ご長男・一穂さんと談笑する康成、一穂さんご次女・章子さんといままさにテープカットをせんとする康成、とそれを後ろから見守る一穂さん…などなどめくるめく超貴重アルバムコーナーに、当方まったく川端家あるいは徳田家のお身内ではないながら目頭も胸もギュッと熱くなる思いがいたしました。防犯カメラに終始ブルブルぶれて映っている不審人物がおりましたならそれが秋聲記念館です。サーモグラフィでやけにカッと赤く映っている人物がおりましたならそれも秋聲記念館です。
 あまつさえ伊藤整日本近代文学館理事長とともに文学館設立について県知事に陳情中のお写真まであり、さすが日本で二番目に古い文学館の記録&保存魂はぬかりありません。当館などいつも終わってからアッ写真撮ればよかったぁ~となってばかりのうっかり魂で出来ておりますのでこれは見習わなければなりません。その一瞬は二度と帰ってこないのです。
 その他当館館長の若かりし頃のお写真にワッとなるなど、ちょっとローカルな楽しみ方をしてしまいましたがそうでなくともさすがの所蔵品、しかも初公開となる品々が多数お目見えしておりますので是非是非ご観覧くださいませ。新保千代子初代館長の熱意に突き動かされ、協力を惜しまなかった文学者たちの錚々たる顔ぶれ(自筆資料)がそこにあります。



 


受付終了
  2017.1.10

 本日朝9時、お座敷あそびの参加申込み受付を開始いたしました!と同時に終了いたしました!まさに怒涛の、といった表現が適当でしょうか、9時と同時にプルルルルの嵐…!!受話器を置いたら取る置いたら取るの繰り返しで息つく間もなく定員に達し「受付終了ですッ!!」との怒号が事務室内に響き渡りました。お申し込みくださった方、ありがとうございました。朝イチだったものですから発声の準備が間に合わず、カッスカスの声でご対応申し上げましたこと、何卒ご許しください。
 また先着に間に合わなかったみなさま、申込み不要で当日立ち見可です。ただ何せ狭い館内ですので万一混乱が予想される場合には、入館制限をかける可能性がございます。何卒ご了承ねがいます。
 そんなわけで午前中しばらくは先着15名様で締め切ったあとのコール音にたいそう怯えて暮らしていたわけですが、16名様目になろうかというお電話がかかってきた際、お断りせねばならないという申し訳なさにビクビクしながら出て相手が当館館長だったからといって「なんだ館長かぁ~~!」だなんて部下としてあまりに非礼なふるまい、電話も落ち着いた午後になってようやく反省しております。
 なに?なんかあった!?と、いつも優しい館長は今日も許してくれました(たぶん)。

 いつかの茶屋街展の際にもご紹介したような気がいたしますが、秋聲先生のひがし茶屋街での目撃談が井上雪さん『廓のおんな』なる書籍に書かれています。秋聲先生のお好みは、牡丹の花のような華やかな芸妓さんでなく、襖の陰に隠れているような幽霊みたいな芸妓さんであったそう。そんな女性の背後にあるストーリーに何より関心が向いたのかもしれません。
 現在のひがし茶屋街には14名の芸妓さんがいらっしゃいます。どなたがご出演になるかは当日のお楽しみ。

 お座敷にあってさえ基本ポーカーフェイスの秋聲先生はいっつもつまらなそうなお顔をしてらしたとのこと、記念館一味といたしましてはそんなシュウセイズムも継承したいところですがやはりそこばかりはとても真似できそうにありません!





左義長2017
  2017.1.9

 本日、ご近所の宇多須神社さんで左義長が行われました。地域により「どんど焼き」などとも呼ばれるそれ、金沢では「左義長(さぎちょう)」と呼ばれております。

 年末年始にかけ玄関先にかけておりました注連飾り(当館は亀/くらしの博物館2016年12月26日ブログ参照)をいちばんの新人職員に燃やしてきてもらいました。ただの使いっぱしりではありません。なかなか自分の住まう地域以外の左義長なんて見る機会もないでしょうから、との先輩職員による気遣いです。寒いからとかでは決してありません。

 さて、寒いといって、今年の金沢もスキーヤー達のために雪山の状況を心配する秋聲先生のお心持ちが意外すぎるでお馴染みの「雪のない春」(秋聲随筆題・昭和7年1月)でございます。毎年そんなことを言っているような気もしながら、いつかは雪のなかをさくさく宇多須神社まで歩いた記憶もございますので、そんな年ばかりではなかったのでしょう。毎年のことながら毎年わすれて2月に入ってドカンと大雪、毎年あたふたするのです。
 毎年のことといえば、ちまちまとお座敷あそびの準備を進めるなかで、アレ?畳は?何枚いるのだったかな?と過去の記録写真を見返したりなんかしております。毎年のことなのに覚えられない鳥あたま…酉年だけにね…フフ…(明日より受付開始です!)。ちなみに当館のお座敷こと秋聲先生の再現書斎は六畳間。芸妓さんをお招きするにはちと狭いがために簡易畳をサロンかどこかに設置予定です。それはそれとして新年を迎えましたので、この書斎のお軸をかけかえました。「元朝の心寂(すさ)びぬ午(ひる)さがり」、せっかくの秋聲自筆ですが極めて字が小さく肉眼での判読はまず不可能かと存じます。だったら見えるようにすべきところ、そのあたりが書斎床の間を縁側から覗き込むといういかんともその距離の埋めがたい展示構造の問題にして、結果狭いっちゃ狭い、広いっちゃ広い、伸縮自在の宇宙をはらむ六畳間です。





例年のくせに飛び込み
  2017.1.6

 各館のHPに生息する「展示日程の一覧(PDF)」ボタンの存在をお知らせしたそばからさっそくお詫びを申し上げねばなりません。当HPイベントページにいつのまにやら素知らぬ顔でアップされております「秋聲とお座敷あそび」、上記一覧に掲載されておらぬのでございます…!最終的にと言いながらぜんぜん最終的な情報でなかったこと、心よりお詫び申し上げます。

 何故載っていないか、単純に掲載締め切りまでに開催日の調整が間に合わなかったため…。いまスカッときれいに空欄になっているところへ「秋聲とお座敷あそび」飛び込んでまいりました。ただ、毎年のことながら座席は先着15名様限定という超狭き門となっておりますので、そもそもの情報の出し方が卑怯だったくせにその同じ口からまったく言えた義理ではないのですが「10日9時より電話受付開始」と、おのおの方お心に留め置いていただけましたら幸いです。またご遠方の方には重ねてお詫びを申し上げます。

 さて、お座敷あそび、ひがし茶屋街の芸妓さんをお招きして、ちょっと敷居の高く見えるそのあそびを気軽に体験してみよう!という催しです。ただの「お座敷あそび」ではお茶屋さんへ赴くのと変わりませんので「秋聲と」と無理くりタイトルにくっつけておりますが、とくに秋聲役の人とかはご用意しておりません。内容はいたってふつうのお座敷あそびながら、会場がお茶屋さんでなくまさかの秋聲記念館というところで、ひとえに秋聲先生と東の廓との海よりも深いご縁でもって実現している企画ですよ!秋聲先生の存在なくしてはいかにご近所だからとてお招きする義理のない、そうか!秋聲先生もかつて体験したところのそれであるか…!!とのアピールのための「秋聲と」です。もともと狭いサロンに畳をひいたりなんだりするせいで厳しい入場制限をかけておいてそのうえほんとうに申し訳ないのですが、もし当日16個目の座席あらばそんな気持ちでなにとぞ空けておいてくださいませ…。
 




あけまして
  2017.1.4

 おめでとうございます!

 長らくお休みいただいておりましたが、本日1月4日より秋聲記念館通常通り開館いたします。ちなみに定休日はございません。ふつう美術館博物館のたぐいは月曜休館がほとんどのところ、当館を含む金沢文化振興財団所属施設の多くは展示替えと年末年始のみのお休みとなっております(例外ございます、ご注意ください!)。
 そんなサイクルで生きていると、調べもののため元気に図書館いってきまーす!と出かけていって、まさかの玄関先で月曜休館の張り紙を喰らうといった悲しい現実に出会すことも多々ございます。ええ、つい先日の出来事です。そんなときには月曜休館かーい!!と思わず玄関先で叫びたくなってしまうのですが、自館の常識が世間のソレと思ってはいけませんね…他館さまのお休みを把握しておかなければなりません。

 とはいえご近所の文芸館さんですら張り切って電話をかけて、アレ?通じない…アッ火曜休館かーい!といまだに電話口で叫んだりなんかもしております。文芸館さんと江戸村さまは火曜が休館(村?)、大拙館は月曜休館、夢二と土佐と老舗と江戸村は年末年始もやっている…ここにプラス展示替え休館があったりなんだりしてもう最終的に各館HPのだいたい下のほうにひっそりとある「展示日程の一覧(PDF)」とのボタンを試しに押してやってくださいませ!月ごとの全館の休館ならびにイベント情報がざっとご覧いただけます。
        ↑コレ!!

 そんな便利なものもありながら、この欄では初めてご紹介申し上げた気がします。ただ各館のHPの雰囲気を壊さぬようにとほんとうに慎ましやかに生息しておりますので、薄グレーのボタン、大声をたてずにそっとさがしてみてください。

 と、そんなテンションで今年も活動してまいります。また一年、何卒よろしくお願い申し上げます。 




 

 

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金沢文化振興財団