金沢文芸館

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文芸館だより(ブログ)

文芸館だより R5年度

〇1月20日(土) 第3回川柳入門講座「川柳で人・社会とつながる」~ミニ句会から柳社句会、そして大会へ~

短歌・俳句との共通点・相違点に触れて

講師: 浜木 文代(はまき ふみよ)(石川県川柳協会 副会長)


 川柳入門講座も最終回。講師は石川県川柳協会副会長 浜木 文代(はまき ふみよ)先生で、テーマは「川柳で人・社会とつながる」です。
 浜木先生は、明るく元気な笑い声いっぱいの講座で、受講生に今後の川柳への道を示していただきました。また本日は、実際にお題「雪」にて全員が川柳を作りました。意欲溢れる受講生の作品一つ一つに、先生が「これはいいですねえ」「これは、初めてとは思えないですよ」と感嘆される場面も多々ありました。それでは講座の内容から一部、紹介します。

1 ミニ句会の紹介
 やすはら川柳教室・・・安原公民館で月1回
 ・浜木先生がみんなからの投句をまとめて句会当日に渡します。
  明るい賑やかなサロンのようであり、新聞の川柳欄に句を載せる
  などして楽しんでいますとの紹介がありました。

2 柳社句会の紹介
 ・石川県に18柳社があります。句会は道場。自分の句が適用
  するかどうか、作句のレベルがどの程度のものか、その力を試す
  ことのできる場(道場)です。

  「もう少し上手になってから」いえいえ「もう少し上手になるために
  句会はある」のですよ。

               (魔法の文芸)江畑 哲男 著から
  この後、➀実際の句会の具体的なやり方 ➁句会の効果 を
 学んでいきました。本日の学びをさっそく生かして、一人一人が
 創った川柳の作句をもとにしての句会を実施しました。

3 大会に向けて
  今年度実施された「国民文化祭」を例に、大会の意義等に
 ついての話がありました。
実際の大会の模様が先生の口から
 話されて、受講生はまるで大会に参加しているよう
な気持ちで
 話を伺いました。

4 実作するにあたって
  ➀心構え ➁作句を終えてから の話がありました。
 「➀心構え」では「体験を生かすこと」「新しいことに目を注ぐこと」
 「他人の句をよく読み名句を吟味すること」「句のベースに愛情が
 流れている句にしたいこと」「日頃から多読多作を心がける」など
 9項目をあげられて、その大切さを語られました。

  また「➁作句をおえてから」では、「一晩、句を寝かせること」
 「表現は適切か、リズムは適切か、独りよがりな句になっていないか」
 などを考えていくことの大切さを語られました。

5 実作
  最後には、「課題『雪』」での実作がありました。受講生の皆さんの
 実作から一部を紹介します。添削前(◇)と添削後(〇)の句を紹介
 します。

 ◇雪道に足をとられて老いを知る  → 〇雪道に足を取られてオットット
 ◇駐車場除雪で知る隣人を     → 〇隣人を除雪で知った駐車場
 ◇雪山にかんじき持ちて遊びゆく  → 〇雪山にかんじき持ってソリすべり
 ◇                → 〇雪溶けを早く早くと願う能登
 ◇ポストみて雪景色にはマッチする → 〇雪景色ポツンとポスト朱が映える

 令和6年1月1日、能登半島地震により、甚大な被害が出た中での講座となりました。ライフラインが滞っている方、実家で被害がありながらも何とか参加してくださった方、復興支援を行いながらも一時抜けて参加いただいた方など、一人一人が複雑な思いを抱えての講座となりました。浜木先生は「それでもみなさん。今日はポジティブに学んでまいりましょう」と復興に向けての願いを込めての元気なかけ声でのスタートとなりました。
 1月18日付の北國新聞に、次の川柳が秀作として掲載されていました。(選者は浜木文代先生です)

受験生そっと見守る冬銀河

 甚大な被害があった珠洲市の方の川柳です。本地震では、受験生も貴い命を落とされています。他、勉強も十分できない避難所で頑張っている受験生もいます。白山市や金沢市などに家族と離れて集団避難をして学び続けている子らもいます。
 新聞掲載された川柳は、震災前に書かれたものだと思います。でも、それは、とてつもない優しさにあふれた、しかも力強いもので、受験生のみならず私たちの心に響くものです。
 本講座は、令和5年度の全講座最終回です。最後に浜木先生の選評と、「川柳とは?」との問いに答えられた言葉をあげます。

『元旦を襲った能登半島地震で、目を覆いたくなるような光景が広がった。「十分に勉強が出来なかったが、この環境を言い訳にしたくない」と話す受験生。星たちは優しくエールを送る。「最後まで諦めないで。この経験は無駄ではない」と。』(選評)
 「川柳とは、悲しみに終わらずに、力強く立ち上がるもの。それこそが川柳だ」

 全ての先生方、受講生、ブログをご覧いただいている皆さま方、ありがとうございました。今年度、来年度は、震災復興に向けて、私たちができることを考え、出来る限りのことを実行していく一日一日にと思います。「悲しみに終わらずに、力強く立ち上がっていく」ことの大切さを想い、歩んでいきたいと思います。
 文芸活動面で、できることを金沢文芸館も模索しながらの歩みにと思います。

      




〇12月23日(土) 第8回小説講座② 作品批評と推敲(第1グループ)

実作小説の批評と推敲

講師: 皆川 有子(「櫻坂」同人)


 第8回小説講座➁は、実作小説第1グループの批評会です。講師は、『櫻坂』同人の皆川 有子先生です。本日は大雪となり、交通機関もマヒして、お2人の受講となりました。一部とはなりますが、合評会での内容を紹介します。

実作小説の題名、内容(一部)、批評内容(一部)から
 
➀原田さん
  ○作品から
   
「施設の看取り部屋でひとり丸まって眠る軸子。時は最後に向って
    ひっそりと刻まれていく。/部屋には軸子のベッドが一つあるだけで、
    生きるために必要なものはなにもない。/窓の外では朝からしんしん
    と雪が降る。65年の軸子の人生が天空で追想の本となり、その本
    の文字は端から次々と剥がれ、文字は雪に姿をかえ、幾億の条と
    なり、慈愛の被膜で軸子を包み込むように降る。軸子の脳はまだ
    動いている。生とも死ともつかない不分明な状態で軸子はまだ在る。
    うつらうつらしては時々薄眼を開けて、もうすぐきっと原田さんに会える
    と信じている。」

  ○内容から
   ・軸子は原田さんと50年前の夏に出会った。その時、軸子の家庭では、
    罵り合い、無視し合っている父と母がいた。そして毎日、自分のベッド
    に飛び込んで偽装自殺している軸子。そんな軸子が原田さんと出会
    い、話をしていく中で、軸子が最後にいたった心境とは?

  ○批評から
   ・旋回して最初の文章に帰るような書き方です。複雑な家庭の問題を
    抱える中学三年生の内面を書こうとトライした作品です。

   ・場面の描写はとても難しいものです。尻もちをつく場面の描写は素晴ら
    しいです。
何もかも書く必要はなくてその場の情景が読み手にありあり
    とわかる様に書くのがベストです。過不足のない優れた描写です。

   ・不仲な両親。自律して生きようとする軸子の行動と内面の変化が、
    原田さんとの束の間の交流によって浮かび上がります。ただ軸子の
    一人称単数の書き方でもよかったかと思います。と言いますのは、
    原田さんの存在が現実的ではなく軸子の内面を照射しているような
    幻想的な人物に思えるからです。

   ・子どもが親と家庭に依存しながらも愛情を持っている。それが本人を
    苦悩させる。そこから解き放たれるには依存と愛情共に断ち切る必要
    がある。という自律の普遍的な痛みを描いているところにテーマの深さ
    を感じます。

   ・親子の問題は永遠の課題と言われるほどで「カラマーゾフの兄弟」の
    ような深刻な文学から「若草物語」のような作品まで様々なバリエー
    ションがあります。

   ・「原田さん」という何気ない題名にもセンスの良さを感じました。

 
②鋳型(かた)破り
  ○作品から
   「ヒヤリハット報告は、匿名が原則のはずだ。ところがこの施設では、
    職員全員の前で実名公開され、対策を討議するという体裁で、
    吊し上げが行われる。この日も、この春入った新人の介護士が、
    「あのう」と、勇気をもって名乗り出た。名乗り出ざるを得ないのだ。」

  ○内容から
   ・芹沢実香、38歳独身は、高齢者介護施設で働いている。職場は、
    同僚同士の監視、
密告、ハラスメントが横行する恐ろしい組織で
    あった。何度もこれの犠牲になり、人格を踏みつぶされる危機感に
    苛まれた実香は、仕事を辞めることを決心する。

    美香のとった行動とは?
  ○批評から
   ・ヒヤリハット報告が実名公開されて吊し上げにあってしまうという
    理不尽なシステム。職員をひたすら見張り、拘束することに使われて
    しまう職場の現状が描かれ、
それに憤慨する主人公の描き方に
    リアリティがあります。どこの職場にもありそうな構図です。

   ・ハラスメント報告する自分が、同じ監視をし、密告する側のメンタリティ
    を持ってしまったことへの自己嫌悪、そこから逃れられない絶望感が
    あります。作者が社会的な視点を持っているからですね。
    (理知的で冷静な判断力のある主人公の感覚です。これが凡庸な
    主人公なら復讐してやったと喜ぶだけでしょう。)

   ・ラストの場面で水色に髪を染めるというオチが今風です。こんなにも
    管理化が進んでしまった今の社会に主人公が飛び出していける
    場所があるのか?と読み手の気持ちを引き摺り込むような読後感
    があります。

   ・身近なところから大きく社会問題まで捉える射程距離のある作品で
    そこに可能性を感じます。

   ・桐野夏生の小説「落日」は言論統制のある管理社会で小説家が
    精神病院に送られていくという近未来小説があります。芥川賞も
    やはり今を書く方が受賞される新人賞なので、このテーマについて
    「書きごたえ」があると思います。大切に育てていかれたらよいと思い
    ます。


 本日は2人の受講となりました。1人当たり40分を越える受講となりました。1人1人の小説の良さと改善点等、詳細に学ぶ機会となりました。また時には皆川先生自身が、本講座で受講生として学ばれた時のエピソードもいろいろと伺う機会となりました。
 少人数制ならではの充実した講座となりました。本日いただいた皆川先生のご指導を大切にして今後も精進を積み重ねていかれることを願っています。

 今回で小説講座は終了となります。受講生は、最終推敲・原稿提出をお願いします。ぜひ各先生方のご指導を参考にして、ご自身で納得できる原稿提出をと思います。
 最後に、本講座を終えるにあたって、今年ご逝去された剣町柳一郎先生の7月15日最終講座での言葉をあげます。
・「ふつうのことが大切+ちょっとしたスパイス 材料を料理に変えるのが
 作家の仕事だ」

・「面白くなければ読んでくれない。読む時間をいただくのだから、常に
 第三者を意識すること-校正も読むことも−なぜ書くのかの問題も
 大切だ」

・「読書して得られるものが多い。読書しないで書くなんて実におこがましい」
・「月に3冊は読んで欲しい。年に40冊、50冊は読んでほしい」
 剣町先生の小説作りへの志を私たちは大切にして、これからも歩んでいかねばならないと思います。小説講座5人の先生方、受講生のみなさん、一年間ありがとうございました。

      




〇12月23日(土) 第2回川柳入門講座 「川柳の奥深さを味わうために!」

~作句のポイント・鑑賞のポイント~

講師: 外浦 恵真子(そとうら えみこ)(石川県川柳協会)


 川柳入門講座第2回です。本講座講師は石川県川柳協会 外浦 恵真子先生です。テーマは「『川柳の奥深さを味わうために!』作句のポイント・鑑賞のポイント」です。講座から一部を紹介します。

◆自己紹介
 ・現在、松任川柳会に所属。石川県川柳協会会計、番傘加越能
  川柳社編集長、
北陸中日新聞柳壇選者を務める。
 ・ゼロからの再起器が試される 外浦 恵真子
  ※平成20年に課題(ゼロ)で大賞を受ける。

◆鑑賞のポイント
 ・令和5年10月22日 七尾市にて国民文化祭川柳の祭典から
  ※一部抜粋

  ➀文部科学大臣賞 題「祭り」
   いのちみな生きて一つになる祭り
   〇青森県の方の作品と聞き、みんな納得でした。ねぶた祭りに
    行かれた方もおられて
まさに「みなが生きて一つになる」青森の
    祭りの話が紹介されました。

  ➁石川県知事賞 題「スイーツ」
   傷ついておいでアップルパイ焼けた
   〇作句された方が大会で語られた思い
    …「どんなに傷ついてもいつでも私はアップルパイを焼いて
      待っているからね」

   〇受講生からこんな解釈も出ました
    …「傷ついたリンゴ。心配しないで私のところにおいで。パイに
      してあげるからね」

   ※外浦先生から「ステキな解釈。川柳はいろいろな解釈がなされて
    いく。そんな懐の深さが川柳の良さでもあります」との言葉がありました。

  ➂七尾市長賞 題「祭り」
   緞帳が下りる瞬間まで祭り
   ※生きることに対し真摯に向き合う思いの凄さに感動する受講生の
    姿がありました。

  ④一般社団法人全日本川柳協会理事長賞 題「祭り」
   
祭りです白で生まれて白で死に
   ※「何と深く、そして生き方に対する真面目さがあるのか」との
    言葉がもれました。

  ⑤石川県川柳協会会長賞 題「プラス」
   泥水も火の粉も今のありがとう
   ※「そのとおりだ。凄い生き様を感じる句だね」という思いが出てきました。
  ➅石川県川柳協会会長賞 題「地味」
   モナリザはきっとモンペが似合うはず
   ※「やっとほっとした感じがするよ」「発想が面白い」穏やかな空気に
    包まれました。
受講生から自然に「モナリザはきっとモンペははきません」
    とのお返しの句が出ました。
先生からはそれなら「モナリザはきっと
    モンペはきらうはず」はいかが?との会話があり、みんな笑顔になる時と
    なりました。


◆虫くい川柳  ※一部抜粋
 ➀□信号一途な恋が突っ走る   …… ※外浦先生の作品
 ➁俺に似よ俺に似るなと□を思い ……子 ※岸本水府氏の作品
 ※虫くい川柳は一人一人が思う言葉を入れていきました。的確に答えていく
  その姿に、「みなさんすごいですよ。初めてと思えません」との声がありました。

 
本日は大雪に見舞われて、鉄道、バス、タクシーも使えずに、講座に出席できない方もおられて、それでも5人の方々に参加いただいての講座となりました。やむなく欠席された方々にも本日の資料をお送りいたします。楽しみにお待ちになって下さい。
 先生からは、突然でしたが「本日、川柳はお題なし、雑詠というのですが、一句作ってみましょう。さあ、どうぞ」と言われ、戸惑いながらも受講生は一句ずつ作句しました。
 紹介していきます。
・甲子園白球おって我が身かな
・一時間雪かきのあとブルがくる
・窓越しに笑顔が並ぶバスの旅
・大雪でことわる理由見つけられ
・名月は暗くなるのを待ちきれず
 今回は、1テーブルで外浦先生を囲んだ形での講座となりました。受講生同士、受講生と講師との和気藹々としたやり取りがありました。受講生の中には、「サラリーマン川柳本」「シルバー川柳本」「本道の川柳本」と、借りてこられた川柳本を手にして、「その違い」についてみんなと共に学ぶ時間ともなりました。
 「川柳は面白みを目指したものではありません。定型詩の文学なんです。言葉の使い方を大切にして真剣な生き様を描いたものであるのが川柳なんです。川柳は、ユーモアを入れようとして無理に入れる必要はないのです。無理をして作ろうとすると無理が出ます」との言葉が先生からありました。
 最終回は、1月20日(土)10時30分より、浜木文代先生(石川県川柳協会副会長)の講義があります。テーマは「川柳で人・社会とつながる!」です。天候に恵まれてたくさんの方々に参加いただけることを願っています。来館されますことを心からお待ちしています。

      




〇12月16日(土) 第8回小説講座① 作品批評と推敲(第2グループ)

実作小説の批評と推敲

講師: 宮嶌 公夫(「イミタチオ」同人)


第8回小説講座①は、実作小説第2グループの批評会です。講師は、『イミタチオ』同人の宮嶌 公夫先生です。一部とはなりますが、合評会での、受講生からの意見、宮嶌 公夫先生からの批評内容を紹介します。

実作小説の題名、内容(一部)、批評内容(一部)から
 
➀笑っていない顔
  ○作品から
   「9月になった。莉子は中国語講座を8月の終わりにやめていた。
    理由は正夫への気持ちが真剣になっていくのを自分でどうする
    ことができなくなっていたからだ。今の莉子は、また講座に行けば
    正夫に会えるのだからと自分に言い聞かせて、悲しみの渦の中に
    放り込まれることから自分自身を救っている。」

  ○内容から
   ・中国語講師の正夫を好きになった莉子がいる。正夫への思いは
    様々な場を通して深くなっていくのだった。そんな思いを断ち切る
    ために、講座をやめて、小説作りにチャレンジしていく莉子の姿が
    あった。

  ○批評から
   ・結末に劇的な展開があることを期待している自分がいた。作品に
    作者の推進力等が
もっと感じられると良いと思った。
   ・話の核心部分が抜けていると感じた。最初の莉子と最後の莉子
    の心情の転換点になった事は何なのかを書いてもらいたい。肝心要
    が欠けている。

   ・句読点の打ち方については改善の余地がある。再考してほしい。

 ➁あしたの朝
  ○作品から
   「ちひろと幼稚園が一緒だったサキちゃんのママから「オズスクール」と
    いうフリースクールのことを教えてもらったのは、夏休み中だった。
    小学校の校区は隣だが、優子たちの家とサキちゃんの家は、
    子ども達の足でも歩いて遊びに行けるくらいの距離だ。」

  ○内容から
   ・不登校になったちひろ。母親、優子は夏休みに娘の宿題にも
    共に取り組んで、全部終わらせることができた。新学期になったら
    きっと行ってくれるはずと思っていた優子。しかし、ちひろは、夏休み
    最終日の夜「お母さん、私もう、学校には行きたくない」と言うの
    だった。

   ・友人からフリースクールの紹介を優子は受ける。不登校の娘を
    心から愛し、苦悩する優子が娘の成長を見守り、支えていく
    小説となっている。

  ○批評から
   ・登場人物の全てが善人である。善人でない人を登場させていく
    ことも大切。また、母である優子さんの心の葛藤がもっと描かれて
    いくと良いし、父親の存在もあってもよいのではないか。

   ・同じ助詞が繰り返し使われていく癖がある。改善していくことが大切。
   ・不登校であるちひろの意思表示をしている場面がない。また物語が
    転じている場面はしっかりと書き込むことが大切である。


 KOTOMI
  ○作品から
   「いても立ってもいられなくなった俺は、車に彼女のベッドやシーツ・
    タオルやごはんであるドッグフードの袋・薬・サプリなどを詰めて、
    慌てて家を出たのだった。誰にも告げず、一枚の書き置きを残し
    て…『コトミと温泉に行ってきます』」

  ○内容から
   ・コトミは夫婦にとって大切な犬である。かつて夫婦が仲良かった頃、
    妻と犬を連れて草津温泉に行ったことがある。今でもホテル前で
    の記念写真を、玄関に飾り我が家の幸せな時間を証明している。
    そんな彼女(犬)ももう15歳の老犬である。
   
・家を出た妻。「彼女(犬)はもう長くない」と感じた夫は無性に
    彼女との残り少ない生活を大切にしたいと草津温泉に出かける。
    とその時、スマホの着信音がすさまじい音を立てて鳴り響いた。

  ○批評から
   
・後半部が前半部に比べてリアルティが欠けていく。妻がガラスを
    ぶち破って侵入している場面などが例として挙げられる。
   
・後半部、上山田温泉に行った主人公を書いているが、物語と
    して出来事の整合性がきちんと描かれていない。
   
・コメディタッチでスピード感がある。まるでアニメを見ているようだった。
   
・妻がどうして夫をそれほどまでに嫌いになるかが知りたい。

 ④夏の果て
  ○作品から
   「佐和子はいつからか患者の死に、ほんの数分でも気持ちをもって
    いかれることがなくなっていた。ナースコールは三回に二回は聞き
    流す。高齢者のつらいは、ほぼ愚痴とみなして真に受けない。
    これならまだ介護ロボットの方が温かい血が流れていると佐和子
    は思った。心を無くせばあんなに優しく対応できるのかと、介護
    ロボットに敗北を感じたある初夏の夜勤明けだった。」

  ○内容から
   ・患者の死に思いを寄せることがなくなった佐和子。そんな佐和子
    は看護師を辞めて沖縄に行き「居酒屋やんばる」で働くこととなる。
    自分自身を取り戻して、仕事の楽しさを覚える佐和子だった。
    そして、居酒屋の健太の祖母の死に際して、幸せな死に方とは
    いったい何かを思う佐和子がいた。

  ○批評から
   ・小説の構成がしっかりしている。読後感が良い。癒されたり、
    考えさせられる話だった。

   ・出来事はわかる。でも過程が見えてこない。気持ちの変わり目
    の説明が必要なのではないか。そこが大切だ。

   ・気持ちの変わり目、場面の転換を説明しすぎてはならない。
    人との会話文を入れて
いくと説明しなくても理解していける
    場合がある。

    芥川龍之介「羅生門」で「老婆との会話」で主人公の心情
    が変化をしていく様が書かれている。参考にされると良いかも
    しれない。

   ・対比される人物が登場していくことが大切。介護士として
    「出来ている人」「出来ていない人」などを登場させていくこと
    も考慮したい。


 小説講座第2グループの合評会がありました。4作品について、宮嶌先生のきめ細かな指導と、受講生からの質疑応答、意見交換がありました。
 「みなさんからアドバイスがあり参考になりました。良かったです。」等のご意見をいただいた有意義な講座となりました。
 今回は12月16日(土)第2グループが合評会で最後の講座でした。次回は12月23日(土)第1グループの最終講座です。受講生のみなさん、原稿〆切に向けて、最終推敲と提出をよろしくお願いします。

      




〇12月11日(月)出前講座 富樫小学校2年

お話の読み聞かせ(紙芝居、プレゼン、歌)

講師:吉國 芳子(ひょうし木の会


 金沢市立富樫小学校に訪問しました。2年生3クラス74名を、クラスごとで、金沢民話、読み語りに親しむ学習活動をしました。紙芝居、昔遊び歌、読み語り、マジック、パワーポイントを取り入れた読み聞かせで充実した45分間でした。

1 本日のプログラム
 (1)   昔遊び歌「あんたがたどこさ」
 (2)   金沢民話「芋掘り藤五郎」(ペープサート)
 (3)   金沢民話「子育てゆうれい」(紙芝居)
 (4)   マジック「新聞紙から水がこぼれちゃうよ」(手品)
 (5)   金沢民話「オオカミとたたかった犬」(パワーポイント)

2 富樫っ子の様子から
  「山科で山芋をほると今も金があるのかな?」
  「今度、掘ってみたいな」

   …お話を聞きながらの優しい声での独り言です。
  「お金は空飛ぶ雁にあげちゃうぞ。それー。もっていけー。
   そりゃー」

   …「えっー。お金を雁にあげちゃうなんて…。そんなのもった
    いないよ」とお嫁さんの心を気にかける優しき子ども達です。

  「えっー。今日は眠れなくなっちゃうよ」
   …「子育てゆうれい」って題名を聞いての正直な想いを語る
    子ども達です。

  「藤五郎神社には生活科で行って来たよ。この話は知らない
   けれど…」

   …正直に屈託なく、反応の良い笑顔の子ども達です。
  「〇〇さんは山科だよね。私は窪2丁目なんだ」
   …山科のお話というのを聞いての反応です。
    友達同士の仲の良さが伝わります。

  「不思議な話ってあるんだなあ」
   …子育て幽霊、おおかみと戦った犬、芋掘り藤五郎の
    話を聞いてみての独り言です。

    何気ない一言ですが素敵です。
  「あらまあ、手品失敗しちゃったね」(吉國さんの声)
   …失敗しても最後に大きな拍手をする温かい子ども達です。

 
富樫小学校の子ども達は、自分の心の扉を開放して、素直に自分の想いを表現していくふんわり柔らかな心を持っている子ども達でした。吉國さんが手品を失敗しても、触れずに温かい言葉と行動で返していく自然な笑顔の子ども達がいました。

 今回は、今年度最後の出前講座となりました。コロナ禍を乗り越えて、最大講座数となりました。全ての幼稚園、小学校で予定通り、講座が実施されました。
 来年度も、
・語りの講座(ろうそくを灯しての語りの学習)
・読み聞かせ(唱歌、紙芝居、ペープサート、手遊び唄等)
・俳句講座(小学校1年生から中学校まで対応可)
・短歌講座(小学校、中学校で対応可)
・三文豪講座(徳田秋聲、泉鏡花、室生犀星)
などを開設していく予定です。みなさんの希望がたくさん届くことを願っています。
 各講座で力をいただいた先生方、そして受講生のみなさん、ありがとうございました。来年度、みんなの申し込みを楽しみにしています。
 それではよいお年をお迎えください。

      




〇12月10日(日)第8回 朗読会『青春の門 自立編』

朗読: 髙輪 眞知子(朗読小屋・浅野川倶楽部代表)


 12月10日(日)第8回朗読会が、朗読小屋・浅野川倶楽部の代表 髙輪眞知子(たかなわまちこ)さんにより行われました。今年度の最終回で「燃える季節」「雨のなかの男たち」です。

 信介は久しぶりに英語の授業に出席します。授業に遅刻した信介は下駄ばきで入ったことを英語講師にとがめられます。「今度からはだしできます」と言ってみんなの失笑を買う信介でした。授業後、長塚慎一から声を掛けられます。彼はキチケン、基地問題研究所に所属する学生で、信介は仲間入りを勧められるのでした。
 石井講師の家に帰った信介は、彼から早瀬理子が妊娠したことを知らされます。彼の悩みを聞く信介がそこにはいたのでした。
               (「燃える季節」「雨のなかの男たち」)

 令和5年度最後の髙輪眞知子さんの朗読会でした。多くの方々にお越しいただき、ありがとうございました。今年度は、「青春の門 自立篇」の前半の朗読でした。上京した信介がいろいろな女性との出会いの中で戸惑いながら生活していく様が、髙輪さんにより生き生きと表現されました。髙輪さん、ありがとうございました。
 本日は、五木寛之氏、玲子氏から金沢文芸館にいただいた立派なポインセチアの花鉢を朗読会場に飾らせていただきました。平成17年11月23日に金沢文芸館誕生の日に公演されたのが髙輪眞知子さん朗読による五木寛之氏「浅野川暮色」です。
 あれから18年たった今、髙輪さんにより、五木寛之氏「青春の門 自立篇」前半部分の朗読をいただけたこと、うれしく思います。

 さて、先月、11月24日(金)片山津「成善寺」で朗読小屋 浅野川倶楽部第35回朗読公演『朗読で彩る郷土文学の世界』に参加させていただきました。石川県内各地で6公演あるうちの一つとなります。前面ガラス張りの窓から目の前一面に柴山潟が眺望できる素晴らしき景観の会場でした。公演者6名の方が柴山潟を背にして並んでの朗読会でした。
 次は当日のブログラムです。
 ➀室生犀星「動物詩集」
   小中学生のみなさん
 ➁昔語り「鹿島の綱引き」
   朗読:浅井悦子
 ➂木下順二作「夕鶴」
   朗読:「つう」西坂けい子、「与ひょう」岡本正樹、
      「惣ど」本田茂代、「運ず」村井智子、
      「語り」浅井悦子、「子供」髙輪眞知子
 5人のお弟子さん達は迫真の朗読でした。岡本正樹さんは「与ひょう」の微妙に揺れ動く心の変容を見事なまでに表現されていましたし、西坂けい子さんは、変わりゆく「与ひょう」に対する「つう」の悲痛な哀しみを演じられていました。
 自らの羽根を抜き、身を削りながら最後の1枚を織りあげた「つう」の「与ひょう」に対する一途な思い。「機を織っている姿を見ないでほしい」という「つう」との約束を破り、金儲けこそが夢と思うようになった「与ひょう」に対する「つう」の深い哀しみ。聞き手の私は「つう」と「与ひょう」の目の前で行われている緊迫のやりとりに、手に汗を握るばかりでした。私の目の前に「つう」と「与ひょう」が確かにいる感覚になったのです。
 そして最終場面にさしかかりました。
 髙輪さんの明るく純朴な子どもの声が、会場いっぱいに響き渡りました。
「つるだ。つるが飛んでいる」
 その瞬間、私の心に、哀しみを称えた真紅の夕焼けの中、空を飛んでいく身も心も傷ついた一羽の鶴(つう)の哀しくも美しいばかりの姿が映り出しました。
 「つう」と「与ひょう」が相対する緊迫の場面から、飛びゆく「夕鶴」の姿を遠くから見上げている情景へと、一瞬にして私の視点が変わったのでした。
 やがて、作品「夕鶴」に対し、言葉で簡単に語ることのできない複雑な思いが絡まり合い、あふれ出てきました。「与ひょうの優しさ」「愛情」「欲」「哀しみ」「虚しさ」…。いろいろな色合いの思いが複雑に絡まりながら、深く感じ入る時が訪れました。
 その余韻は、朗読が終わってからも私の心の中で膨らみ続けました。拍手することすら忘れている自分がいました。

 懸命に修行されてきたからこそ生まれたお弟子さん達の迫真の朗読。表川さんの見事な演出。そして髙輪さんの「純粋無垢な心」で演じられた子供役の朗読とその意味。髙輪さんが演じる子どもの言葉は、私の視点を一気に変えて、作品「夕鶴」そのものと対峙する空間へと私たちを誘って下さったのです。
 本作品の真髄に至るための短き子どもの言葉。「一言で作品の真髄へと誘う」まさにこれこそが髙輪さんの芸術なのだと思いました。そこには主役、脇役という隔てで価値づけされるものではなく、お一人お一人が「ジョイント(歯車の連携)」のように大切な存在なのだと感じる朗読公演でした。

 本日は平日のため、小中学生の出演は叶いませんでしたが、プログラムのように小中学生の子ども達が素晴らしき朗読芸術に触れて向き合って、自己研鑚していく機会を設けておられます。浅野川倶楽部の皆様方の志はあまりにも貴いものだと本日も感じました。

 髙輪さんに金沢文芸館で年間8回も五木寛之氏の作品朗読を実施いただいているというのは大変貴重な機会ですし、多数の方々が参加いただいて下さるからこそ継続できている事業です。
 来年度も、髙輪さんの朗読会が継続・発展できるよう、金沢文芸館でも、共にその貴き志を大切に守り育てていかねばと思っています。
 髙輪眞知子さん、そして参加いただいた皆様、1年間本当にありがとうございました。来年度もお誘いあわせの上、多くの方々にお越しいただけることを心から楽しみにしています。

      



〇12月9日(土) 第8回小説入門講座 作品批評と推敲(第2グループ)

実作小説の批評と推敲

講師: 高山 敏(『北陸文学』同人)
    小西 護(『イミタチオ』同人)


 第8回小説講座は、実作小説第2グループの批評会です。講師は文学誌『北陸文学』同人の高山 敏先生、文学誌『イミタチオ』同人の小西 護先生です。今回が今年度最後の講座です。お2人の先生には充実した批評と推敲をいただきました。一部とはなりますが、合評会での内容を紹介します。

実作小説の題名、内容(一部)、批評内容(一部)から
 
➀人生は有無同然 
  〇作品から
   「京子の母親はよく言っていた。『人生は苦なり。有無同然である』
    お釈迦さまの言葉である。母親は信心深い人だった。有無同然とは、
    有っても苦しみ、無くっても苦しみ。どうあっても人生は苦労の連続だ
    という。…(中略)…/京子も、定年が来たら、どんなに自由な楽しい
    毎日が過ごせるだろうと思っていた。しかし、いざ定年になってみたら、
    それは京子の幻であった。」

   ・60歳を迎えて定年退職をした京子。退職後、パートでパーキングエリア
    のフードコートで働くことになる。調理場ではいろいろな人間模様があり、
    なかなか厳しい面もある。そんな中で、退職後の生活を夢見ていた京子
    にとって、幻とも言える生活が訪れていくのである。

  〇推敲から
   ・題名は核心部をポンと出さないことが大切です。気づかせる仕掛けが
    必要です。

   ・重複を省き、不要な箇所を削り、つながりよくする推敲の必要があり
    ます。読み手を意識することで、簡潔で味わいある作品になります。

   ・「小説を書く」と「体験的な作文」では大きな溝があります。体験的な
    作文を越えていくことが大切です。

   ・京子の家族の声、反応と言うのも聞いてみたいです。前半部分の
    京子は、謙虚気味であったのに、後半部分は自己中心的な人物に
    なっています。お父さん、息子などの言葉を入れたりしながら、立体的
    に人物像を浮かび上がらせる必要があります。身近な生活記録から
    一歩抜き出てみるようなジャンプを目指してください。


 ➁父と私と 
  〇作品から
   「ほんとに不思議なことに、父が亡くなってからなにも怖くなくなったのだ。
    お墓も
暗闇もぼっとん便所もお化け屋敷も怖くなくなった。ビビらなく
    なったし、手も震えなくなった。いつもそこに「父がいる」気配がする
    からだ。恐れるものは何もないと囁かれている気がするのである。」

   ・父子家庭として生活し、父が亡くなって10年以上にもなった主人公。
    そんな主人公が今も毎日、「父」に話しかけている。そんな親子のやり
    とりが愛情をもって描かれていく小説である。

  〇批評から
   ・父のどんな面を掘り下げて、私のどんな面と重なり、響き合うのか、
    エピソードが単発的なので、よみづらい、感受しにくいところが気に
    なります。エッセイではなく、小説らしくするためのすじ立て、工夫が
    必要でしょう。
   
・風景がほとんどありませんが、父と共に過ごした父につながる話し言葉
    や場面も含めて、書いている世界が読者にも具体的な映像として
    イメージできると良いですね。

 
➂マリンブルーのパワーストーン 
  〇作品から
   「三人が今日、この場に出会って話し合えたことで初めて自分たちが
    大切にしているトルコ石のルーツを知ることができた。市原茂は、
    三人が持っているトルコ石の原石の元は一つだったのかもしれない
    このトルコ石の原石のもつ神秘的なパワーストーンの引力を感じた。」

   ・上野健司はA証券会社入社五年目。ある若い女性(片桐有子)
    からビルの前に落ちていたカードケースを託される。中には顔写真
    入りの身分証明書(市原茂)が入っていた。タイピンについている
    トルコ石、指輪に光るトルコ石、そして大学の博士課程で宝石学を
    研究している人物。次々と不思議な縁が明らかになっていくという
    小説。
謎解きを共に楽しんでいく小説となっている。
  〇批評から
   ・上野なのか私なのか、視点をはっきりさせる必要があります。冒頭文
    を校正して書いてみましたので後ほどみられて参考にしてください。

   ・「またお会いできますか?」などオープンエンドにしていけるとよい
    です。

   ・巧妙に仕組まれた物語で、テンポよく楽しく読める小説です。
   ・三人の登場人物とも出来過ぎで金持ちで良い人すぎます。作り
    過ぎでいる感があります。一人でも関係性が違うと良き小説となって
    いきます。もどかしさ、様々な葛藤が渦巻いている現実にもこだわって
    みてください。

   ・推敲をして重複を避けるとともに、省略・簡略できるところは、思い
    切って削っていくと、さらに流れが滑らかになります。身近な人に聴いて
    もらうと修正点が見つかります。経過の説明は端的に、と心がけて
    下さい。


 ④預かり屋 
  〇作品から
   「自分に対する期待や信頼は、自分を動かす原動力になり得るが、
    上手くいかなかった過去の自分を容赦なく責め立てる。薬にも毒
    にもなり得るこの感情を芽依は持て余していた。
「インクが違うので
    過去は変えられませんが、これは変えられるのですよ」と
言って、
    天守のおじいさんは二十二巻のブックカバーを「後悔の始まり」から
    「挑戦の始まり」に変えた。
   
・極旨カツカレーとデミグラスチーズハンバーグ。選択を誤り、激辛の
    カレーを選んでしまった芽依。芽依は、自分の人生を思い、いつも
    自分は選択を誤ってきたという自責の念にかられる。そんな時に
    「預かり屋」という店を見つけて中に入る。
そこは、皆様の人生の
    記録を預かると言う店であった。芽依は書き直したい人生の
記録を
    変えたいと申し出ていく。

  〇批評から
   ・簡潔明瞭で書きたいものがあり、読者の共感を呼び、読む楽しさが
    伝わってくる作品です。

   ・とても素敵な表現があります。
    ➀店主のおじさんは二十二巻のブックカバーを「後悔の始まり」から
     「挑戦の始まり」に変えた。

    ➁十一月の夕方の風は、ほてった頬に気持ちがいい。芽依は深く
     息を吸い込んで、背筋を伸ばして歩き始めた。

   ・短い中にも様々な生きるヒントを埋めこんだ作品で味わいがあり
    ます。よく練ら
れた文章です。ショートショートなら連作として発展
    させると豊かな創造につ
ながりそうです。
   ・「後悔の始まり」=「挑戦の始まり」と同じく「高く厚い壁」=「より
    高い目標設定」 「とんでもない失敗、失態」=欠点、弱点の克服
    への出発点など、生きる糧、ヒントになりそうな分岐点でも、冷静に
    心鎮めて前向きに、積極的な意味・意義を見出し、掘り下げて進み
    たいものです。

 
⑤秋蝉 
  〇作品から
   「詩織は、慈しみを込めて唇でそっと触れた。ひんやりとした柔らかい
    粘膜質の皮膚が神経に伝わってくる。やっと触れることができたと
    詩織は思う。/抱っこしてあげたい。あなたを抱きしめて、温めて
    あげたい。でも、あまりにも剥き出しのあなたを、どうすれば抱いて
    あげられるの。/詩織は少し考えてから、掌に口を寄せ、舌に
    乗せてみた。悪くない。口を閉じ、胎児にゆっくりと体温を移していく。」

   ・身籠った詩織。でも待望の退治は、妊娠11週の時にその命を
    潰えてしまう。打ちひしがれる詩織は、絶望の闇へと叩き落されて
    しまう。戸籍も遺骨も残らない、空白だらけの母子手帳と電子
    カルテがそこにはある。詩織の記憶だけが唯一その存在を示すだけ
    という闇の世界。愛する命を失う体験による絶望に叩き落される
    詩織。その生き様を小説として描いている。

  〇批評から
   ・命の核心を追究する圧力に圧倒されます。入門レベルをはるか
    に越えます。
信じがたい中身で、彩、重苦しい表現、貴重な作品
    です。

   ・回想の時間軸と現在をふりこのように揺り揺られながら喪失感に
    満ちた無念さや悔恨がよく伝わってきます。

   ・情景描写、心理描写ともに、卓越した安定感があり、作者の力量
    と感覚の鋭敏さを読み取ることができます。

   ・放心状態のような暗鬱でやりきれない哀しみをかかえて主人公は
    どこに行こうとしているのか。ラストの胎児を飲み込むしぐさは永遠の
    命を詩織が自分の体内で守り続けようとしたのかもしれません。

   ・迫真に満ちたシリアスな文章で優れたものですが、読者は何を
    どうできるのか、また楽しむ(?)ゆっくりその空間、時間を味わい、
    共有するために、どんな工夫があるのか…と。読み手のことを頭
    に置くとどうなるのでしょうか。

 
➅ホシガエ 
  〇作品から
   「「しまった!寝酒のワインにロンドスターが混ぜられていたのか?
    俺はこれからぺッシュへ旅立つというのか?早く体に戻らなけ
    れば!」しかしすでに手遅れだった。/二人の作業員によって、
    晋也の残体が乗せられた台車が前方に押され、焼却炉の扉
    が開いた。ドラゴンの赤い大口に呑み込まれるように、この世で
    唯一無二の肉体が炎に消えた。」

   ・乾晋也と葵は創磨パックスの上司と部下の関係である。葵は
    会社を退職後、ギャラクシーライフ研究所が勧める地球脱出者
    の受け皿となる新惑星ぺッシュへの移住計画
に心酔していく。
    ホシガエを強く勧める葵とそれを拒もうとしていく晋也とのやりとり
    が語られる小説である。

  〇批評から
   ・もったいない作品と思います。日常的なものであってほしい気が
    します。なぜ
これを書かねばならなかったのかという点で明確で
    ないように思います。

   ・別次元の世界の話として説得力があります。でもあまりにも現実
    離れをしてしまうと、求心力が弱くなるということにもなります。

   ・タイトルが地味ではないでしょうか。きらきら輝かせてみてはどう
    でしょう。

   ・問題は、ギャラクシーライフ研究所、理想郷惑星ペッシュ、
    新薬ロンドスター、ホシガエ費用二十万…などという一連の詐欺
    アイテムが、リアリティ、つまりありそうだ、あるかもしれないと読み手
    を誘い込むことができるか、という点に尽きるかと思います。晋也
    の感じるように奇想天外、奇天烈な話(仕組み)にすぎないとすれ
    ばこの物語は全体が虚しいものとなります。

   ・自分(あなた)が思うほど、この世の中悪くはない-もう少しここから
    広げるなり、
掘り下げるなどしないと、悪くはない、という消極的な
    ポーズ(スタンス)が、
生きる、生き抜くための積極果敢なベクトル
    につながらないのでは…と懸念し
ます。

 
最終小説入門講座では、高山敏先生、小西 護先生、小網春美先生(書面にて)から的確なご指導をいただきました。受講生のみなさんは、今一度作品をご自身で推敲いただき令和6年1月6日(土)までに金沢文芸館に小説原稿の最終提出をお願いします。

 最後に小西先生から「大岡信「言葉の力」」の話がありましたので、一部を紹介します。

『人はよく美しい言葉、正しい言葉について語る。しかし、私たちが用いる言葉のどれをとってみても、単独にそれだけで美しいと決まっている言葉、正しいと決まっている言葉はない。ある人があるとき発した言葉がどんなに美しかったとしても、別の人がそれを用いたとき同じように美しいとはかぎらない。それは、言葉というものの本質が、口先だけのもの、語彙だけのものではなくて、それを発している人間全体の世界をいやおうなしに背負ってしまうところにあるからである。人間全体が、ささやかな言葉の一つ一つに反映してしまうからである。
 京都の嵯峨に住む染色家志村ふくみさんの仕事場で話していたおり、志村さんがなんとも美しい桜色に染まった糸で織った着物を見せてくれた。そのピンクは、淡いようでいて、しかも燃えるような強さを内に秘め、華やかでしかも深く落ち着いている色だった。その美しさは目と心を吸い込むように感じられた。
 「この色は何から取り出したんですか?」
 「桜からです」と問うと「これは桜の皮から取り出した色です。志村さんは答えた。
              ………(略)………
 あの黒っぽいごつごつした桜の皮からこの美しいピンクの色が取れるのだ」と言う。この桜色は、一年中どの季節でもとれるわけではなく、桜の花が咲く直前のころだ、山の桜の皮をもらってきて染めると、こんな、上気したような、えもいわれぬ色が取り出せるのだ、と。
              ………(略)………
 花びらのピンクは、幹のピンクであり、樹皮のピンクであり、樹液のピンクであった。
              ………(略)………
 木全体の一刻も休むことのない活動の精髄が、春という時期に桜の花びらという一つの現象になるにすぎないのだった。
              ………(略)………
 これは言葉の世界での出来事と同じことではないかという気がする。言葉の一語一語は桜の花びら一枚一枚だと言っていい。一見したところぜんぜん別の色をしているが、しかしほんとうは全身でその花びらの色を生み出している大きな幹、それを、その一語一語の花びらが背負っているのである。そういうことを念頭におきながら、言葉というものを考える必要があるのではなかろうか。そういう態度をもって言葉の中で生きていこうとするとき、一語一語のささやかな言葉の、ささやかさそのものの大きな意味が実感されてくるのではなかろうか。美しい言葉、正しい言葉というものも、そのときはじめて私たちの身近なものになるだろう』

 
年8回の小説入門講座は大変に充実したものとなりました。これも高山先生、小網先生小西先生方のご指導はもちろん、受講生のみなさんの創作文芸に対する真摯な取り組みがあったからです。みなさん、ありがとうございました。
 来年度、継続・発展して金沢文芸館での講座を受講いただくことを心より楽しみにしています。

      




       高山 敏先生




       小西 護先生

〇12月6日(水)出前講座 小坂小学校2年

お話の読み聞かせ(紙芝居、プレゼンテーション、歌)

講師:吉國 芳子(ひょうし木の会


 金沢市立小坂小学校に訪問しました。2年生4クラス112名を2クラスごとで、金沢民話の読み聞かせに親しむ学習活動をしました。紙芝居、昔遊び歌、読み語り、マジック、プレゼンテーションなどを取り入れた充実した45分間となりました。
 プログラムの中から一部を紹介します。

1 本日のプログラム
 (1)   昔遊び歌「あんたがたどこさ」
 (2)   金沢民話「芋ほり藤五郎」(ペープサート)
 (3)   金沢民話「子そだてゆうれい」(紙芝居)
 (4)   マジック「ただの新聞紙から水がこぼれちゃうよ」(手品)
 (5)   金沢民話「おおかみを退治したこま犬」(プレゼンテーション)

2 本日のプログラムから紹介
 プレゼンテーション「おおかみを退治したこま犬」
  金沢市鳴和「伝燈寺」に伝わる金沢民話です。ある夜、
 村の孫娘「みよ」が寝ていたところ、おおかみが家の壁を食い
 破って中に入り、手に食らいついて、みよはけがをしてしまいます。
 そこで、伝燈寺の和尚さんが寺で孫をかくまってくれることとなり
 ます。その夜、おおかみは群れとなって寺を襲います。念仏を
 唱え続ける和尚さんです。

  あくる朝、見るとおおかみたちが命を落としていました。そして
 ふと見ると、二匹のこま犬が傷だらけになり、その口に血がついて
 いたのでした。孫のみよをおおかみから救ってくれたのは、まさに
 二匹のこま犬だったのでした。


  吉國さんは、読み聞かせの後、現在、金沢市牧町三河神社
 に安置されている「こま犬」の写真を見せてくれました。二匹のこま
 犬の雄々しい迫力ある姿に、子ども達はつい「本当の話なんだ」
 とつぶやく声が聞こえました。


 吉國さんの読み聞かせは、子ども達のつぶやきを大切に受け入れて登場人物になりきっての朗読であり、みんなが自然に民話の世界に引き込まれていきました。集中した姿でお話を聞いている姿、輝くような瞳が本当に印象的でした。
 「芋ほり藤五郎」では人への優しさを大事にしていくことを、「子そだてゆうれい」では母親の愛情と人を助ける村人の温かさを、そして「おおかみを退治したこま犬」では、勇気を持って人を助けることの尊さを学んでいる気がしました。
 どの民話にも、人々に伝えたいメッセージが込められており、その想いを大切にして歩んでいくよう諭されている気がしました。吉國さんには毎回見過ごしがちな、人として生きていく上で大切な想いをいただいている気がします。ありがとうございました。


      




〇12月2日(土) 第1回川柳入門講座 「基礎から学ぶ川柳!」

~100歳時代の人生を楽しみましょう~

講師: 赤池 加久(あかいけ かきゅう)(石川県川柳協会会長)


 川柳入門講座第1回です。本講座講師は石川県川柳協会会長 赤池加久氏(あかいけ かきゅう)先生です。テーマは『「基礎から学ぶ川柳!」100歳時代の人生を楽しみましょう』です。講座から一部を紹介します。

◆はじめに
 
〇「川柳の生い立ち」=ほかの文芸と共に
   川柳・俳句・短歌の流れ
  ②今から約260年前、江戸時代に前句付けが大流行
  ③柄井八衛門がその前句付けに評点して選句する
   ※川柳の前句付けとは?
    →下七七(しもしちしち)に、五七五をつけていく。

   五 □□□□□
   七 □□□□□□□
   五 □□□□□
   七 楽しかりけれ
   七 楽しかりけれ
   ※付け句をしていくのが大流行。川柳は庶民性が強い。

◆川柳を楽しむ「その一」
 〇川柳の三要素
  
ア穿ち(うがち)
   ・掘る、えぐるなど人間の機微をうまく言い表す。
  イ滑稽(こっけい)
   ・ユーモアであり、自然に湧き出る笑い。
  ウ軽み(かるみ)
   ・当たり前の平凡な中に、「いいなあ」と思わせるもの。
  ※川柳は三要素の全てが入らなくても意識してどれかが入ることが
   大切。

 〇川柳とは短詩型の文芸である。
 〇人間を詠む・社会を詠む・自分を詠むのが特徴。
 〇「ことば」の文芸である。辞典や辞書は不可欠。

◆川柳を楽しむ「その二」
 〇句作の流れと要点
  句材を見つける
  ②五・七・五の十七音字を基本に
  ③
リズム良く
  ④口語体
  ⑤誰にも解り、誰に作れない句
  ⑥多作・多読を心がける

◆終わりに
 楽しむための雑感
 〇井上ひさしの言葉。
  ・むずかしい-やさしい-ふかい-ゆかい-まじめに!
 〇俳句の作家 楠本憲吉の言葉。(『俳句上達法』講談社)
  
・表面的にさっと見て簡単に十七字にまとめてみても、読者は誰も
   感心してくれないし、共感も覚えてないし、まして感動などして
   くれない。

 〇紙とエンピツ一本で楽しめる趣味。
  ・兎にも角にも1日一句作ってみましょう。
 〇兎にも角にも「継続は力」をモットーに、要は「感性」を磨くこと
  が大切。

 〇県内の柳社や各地大会・句会、各種情報詩、新聞などに
  投句や新聞などに投句や
参加等々行動範囲を広げることで
  人生が豊かになる。


 第1回は、赤池加久氏から貴重な話をいただきました。長年にわたり研鑚を積まれた中からお話いただく貴重な教えは、受講生の胸に深く響くものとなりました。
 今年度の川柳講座は8名の参加をいただいています。先生からいただいた川柳冊子(番傘加越能川柳社)を一人一人が手に取って、歓談し合いながら帰られる受講生の姿がありました。受講生が集まり、川柳入門講座が開講できたことを心からうれしく思います。
 次回第2回川柳入門講座は、12月23日(土)、講師は外浦恵真子(そとうらえみこ)さんで「川柳の奥深さを味わうために!」です。作句のポイント・鑑賞のポイントを、実際に少しずつ作句しながら、みんなで楽しく上達していく会にと外浦さんは言われています。みなさんのご来館を心よりお待ちしています。

      





〇11月25日(土) 第7回小説講座② 作品批評と推敲(第2グループ)

実作小説の批評と推敲

講師: 寺本 親平(小説家)
    皆川 有子(『櫻坂』同人)


 第7回小説講座②は、実作小説第1グループの批評会です。講師は、『繋ぐ』同人の小説家 寺本 親平先生、『櫻坂』同人の皆川 有子先生です。お2人の先生には充実した批評と推敲をいただきました。一部とはなりますが、合評会での内容を紹介します。

実作小説の題名、内容(一部)、批評内容(一部)から
 
➀笑っていない顔
  ○作品から
   「9月になった。莉子は中国語講座を8月の終わりにやめていた。
    理由は正夫への気持ちが真剣になっていくのを自分でもどうする
    ことができなくなっていたからだ。逃げるようにやめたのだった。今の
    莉子は、また講座に行けば正夫に会えるのだからと自分に言い
    聞かせて、悲しみの渦の中に放り込まれることから自分自身を
    救っている。」

  ○内容から
   ・中国語講師の正夫を好きになった莉子がいる。正夫への思いは
    様々な場を通して深くなっていくのだった。そんな思いを断ち切るため
    に、講座を止めて、小説作りにチャレンジしていく莉子の姿があった。

  ○批評から
   ・小説として読み易いが、サラリと流した印象がある。インパクトに欠ける
    面がある。

   ・「正夫の顔が真顔になった」という場面がある。ここで新しい正夫の
    側面が見られるのかと思い、ハッとして期待した。しかし、特別なこと
    が起きることはなかった。もう少しドラマ性が欲しい。

   ・タイトルは100点満点中15点ぐらいか。タイトルについては熟慮して
    ほしい。

 
➁あしたの朝
  ○作品から
   「ちひろと幼稚園が一緒だったサキちゃんのママから「オズスクール」と
    いうフリースクールのことを教えてもらったのは、夏休み中だった。
    小学校の校区は隣だが、優子たちの家とサキちゃんの家は、子ども
    達の足でも歩いて遊びに行けるくらいの距離だ。」

  ○内容から
   ・不登校になったちひろ。母親、優子は夏休みに娘の宿題にも共に
    取り組んで、全部終わらせることができた。新学期になったらきっと
    行ってくれるはずと思っていた優子。しかし、ちひろは、夏休み最終日
    の夜「お母さん、私もう、学校には行きたくない」と言うのだった。

   ・友人からフリースクールの紹介を優子は受ける。不登校の娘を
    心から愛し、苦悩する優子が娘の成長を見守り、支えていく小説
    となっている。

  ○批評から
   ・小説はフィクションだ。本作品では、エッセイのような印象がある。
    小説には「企て」が必要だ。良い意味で読み手を裏切っていく話で
    あってほしい。そのためには、
新しい世界観が必要となる。
   ・カタルシスが小説には欲しい。幸せ、安全のみではなく、不穏な空気
    感が欲しい。主人公のどろどろとした葛藤が小説に出てくると良い。

 
KOTOMI
  ○作品から
   「いても立ってもいられなくなった俺は、車に彼女のベッドやシーツ・
    タオルやごはんであるドッグフードの袋・薬・サプリなどを詰めて、
    慌てて家を出たのだった。誰にも告げず、一枚の書き置きを残して…
    『コトミと温泉に行ってきます』」

  ○内容から
   ・コトミは夫婦にとって大切な犬である。かつて夫婦が仲良かった頃、
    妻と犬を連れて草津温泉に行ったことがある。今でもホテル前での
    記念写真を、玄関に飾り我が家の幸せな時間を証明している。そんな
    彼女(犬)ももう15歳の老犬である。
   
・家を出た妻。「彼女(犬)はもう長くない」と感じた夫は無性に彼女との
    残り少ない生活を大切にしたいと草津温泉に出かける。とその時、
    スマホの着信音がすさまじい音を立てて鳴り響いた。

  ○批評から
   ・大変に面白く、バイオレンスタッチの小説である。アニメのようにスピード
    感があり、映像が浮かぶ。

   ・話にインパクトがあり、テーマもとても良い。
   ・自分の文体を確立していくのは、並大抵のことではない。私(講師)は、
    若い頃、
谷崎潤一郎の文章を書き写していた時期もある。文豪に
    学び、そして小説づくりに立ち返る。その繰り返しも大切だ。小説作りは
    業火の中に突っ込んでいく覚悟が必要である。

 
④夏の果て
  ○作品から
   「佐和子はいつからか患者の死に、ほんの数分でも気持ちをもって
    いかれることがなくなっていた。ナースコールは三回に二回は聞き流す。
    高齢者のつらいは、ほぼ愚痴とみなして真に受けない。これならまだ
    介護ロボットの方が温かい血が流れていると佐和子は思った。心を
    無くせばあんなに優しく対応できるのかと、介護ロボットに敗北を
    感じたある初夏の夜勤明けだった」

  ○内容から
   ・患者の死に思いを寄せることがなくなった佐和子。そんな佐和子は
    看護師を辞めて沖縄に行き「居酒屋やんばる」で働くこととなる。
    自分自身を取り戻して、仕事の楽しさを覚える佐和子だった。そして、
    居酒屋の健太の祖母の死に際して、幸せな死に方とはいったい何か
    を思う佐和子がいた。

  ○批評から
   ・ストーリーに素直に入りこめて共感できる小説であった。
   ・主人公の心の葛藤の内容が、もっと分かるように表現していけると良い。
   ・タイトル「夏の果て」が内容とのつながりが薄く、寂しい感じが出てしまって
    いる。

   ・対照的な患者の死がある。患者の死、そしておばあちゃんの死が書いて
    ある。死について読者が考えさせられる話である。
   
・沖縄が舞台と言うことで、悲惨な戦争を体験し奇跡的に繋がれていった
    命もあろう。そのあたりを意識しての小説作りが大切であろう。

 
小説講座第2グループの合評会がありました。4作品について、寺本先生、皆川先生のきめ細かなご指導と、受講生からの質疑応答、意見交換がありました。二人の先生からは、谷崎潤一郎氏、岡本太郎氏、樋口一葉氏らの話がありました。様々な作家の人生と周りの人々との関わり、作家の生き方等、広い見地からのお話がありました。また、先生方ご自身の貴重な厳しき研鑽の日々をお話いただきました。ありがとうございました。

 
次回は12月16日(土)が第2グループ、最終回が12月23日(土)第1グループ合評会となります。受講生のみなさん、最終原稿提出に向けて、いただいた推敲を活かして校正をしてまいりましょう。

      




      寺本 親平先生




      皆川 有子先生

〇11月18日(土) 第7回小説講座① 作品批評と推敲(第1グループ)

実作小説の批評と推敲

講師: 寺本 親平(小説家)
    宮嶌 公夫(『イミタチオ』同人)


 第7回小説講座①は、実作小説第1グループの批評会です。講師は、『繋ぐ』同人の小説家 寺本 親平先生、『イミタチオ』同人の宮嶌 公夫先生です。お2人の先生には充実した批評と推敲をいただきました。一部とはなりますが、合評会での内容を紹介します。

実作小説の題名、内容(一部)、批評内容(一部)から
 
➀原田さん
  ○作品から
   「施設の看取り部屋でひとり丸まって眠る軸子。時は最後に向ってひっそりと
    刻まれていく。/部屋には軸子のベッドが一つあるだけで、生きるために必要
    なものはなにもない。/窓の外では朝からしんしんと雪が降る。65年の軸子
    の人生が天空で追想の本となり、その本の文字は端から次々と剥がれ、
    文字は雪に姿をかえ、幾億の条となり、慈愛の被膜で軸子を包み込む
    ように降る。軸子の脳はまだ動いている。生とも死ともつかない不分明な
    状態で軸子はまだ在る。うつらうつらしては時々薄眼を開けて、もうすぐ
    きっと原田さんに会えると信じている」

  ○内容から
   ・軸子は原田さんと50年前の夏に出会った。その時、軸子の家庭では、
    罵り合い、無視し合っている父と母がいた。そして毎日、自分のベッドに
    飛び込んで偽装自殺している軸子。そんな軸子が原田さんと出会い、
    話をしていく中で、軸子が最後にいたった心境とは?

  ○批評から
   ・最初の出だしは最後の三行のところに持っていくのが良いのではないか。
   ・最初の情景描写(上にあげた部分)は整理して精選していくと良いの
    ではないか。

   ・発想が面白い。文章運びが初めてと思えないぐらいに上手い。ただ
    イメージが先行しすぎている感がある。地道に地の文を書いていく修錬が
    必要である。

   ・登場人物の原田さん、父母、語り手、全ての視点は上から見下ろして
    いるような感じで書かれている。興味深い。


 ➁早すぎる旅立ち
  ○作品から
   「歴史を作った名牝が静かに息を引き取った。北海道・日高町の下河辺
    牧場に繋養された2003年の三冠馬ステインラブの輝かしい蹄跡を振り
    返ってみることにする」

  ○内容から
   ・ステインイラブの生誕から亡くなるまでの生い立ちや輝かしい蹄跡を
    振り返った作品である。

  ○批評から
   ・競馬レポート、報告書の形になっている。ステインラブがいかに活躍
    したか等、物語として別の視点をもたねばならない。調べたことを書いても
    小説とはならない。

   ・ステインラブを小説として書くのであれば、具体的な話、馬の感覚など、
    読者が読めるようなものでなくてはならない。作者が馬とどのように関わって
    いったのか、
それを書いて読者に伝えていくことが必要。
   ・言語が深い言葉として意味をもたないといけない。馬が好きだけでは小説は
    書けない。


 鋳型(かた)破り
  ○作品から
   「ヒヤリハット報告は、匿名が原則のはずだ。ところがこの施設では、職員
    全員の前で実名公開され、対策を討議するという体裁で、吊し上げが
    行われる。この日も、この春入った新人の介護士が、「あのう」と、勇気を
    もって名乗り出た。名乗り出ざるを得ないのだ。」

  ○内容から
   ・芹沢実香、38歳独身は、高齢者介護施設で働いている。職場は、
    同僚同士の監視、
密告、ハラスメントが横行する恐ろしい組織であった。
    何度もこれの犠牲になり、人格を踏みつぶされる危機感に苛まれた実香は、
    仕事を辞めることを決心する。
実香のとった行動とは?
  ○批評から
   ・最後の抵抗として髪の毛の色を変えたのはわかる。でもそれにいたる心の
    動きが書かれていない。となると「水色の髪」にしたという行動に説得力
    がない。

   ・物事を善悪という単純な判断をした書き方をしないことが大切だ。主人公
    実香に意見をいろいろとしてくる佐上洋子がいるが、単純に悪役としないこと
    が必要。いろいろな面をもっているという書き方が大切である。上に立っている
    人は、それなりのきちんとした対応をしなければならないもので、そこを見ていく
    必要がある。

   ・小説を書くと言うのは、自分が今まで生きて来た自分の背中に背負っている
    亡霊のようなものを含めて、人は持っているものがある。それをぶら下げて表現
    していくものだ。それを自覚していかねばならない。

 
本講座の最初に宮嶌先生から次の指示がありました。
〇あなたは
➀何を描こうとしたか?
➁どんな工夫をしてきたか?
➂書き終えてどんな感想を持っているか?
を語ってもらいたい…と。

これを一人一人答えてから、他の受講生の感想を交えて、寺本先生、宮嶌先生のきめ細かな指導がありました。
 受講生1人30分間ずつの指導でした。たっぷりとした指導時間で講師の先生と膝を突き合わせながら、真剣な小説への向き合い方についてまで指導いただく時間となりました。
 小説家として本質に迫る指導でもありましたので、「手直しをしてもだめだ。小説全てにおいて見直していくべきだ」という指導もありました。大変に厳しく、でも温かい批評と推敲の場となりました。受講生の皆さんにおかれましては、これからも推敲の日々が続いていくかと思います。心から応援してまいります。

 
本日受講の皆さんは、次回は12月23日(土)作品批評と推敲➁(第1グループ)で講師は皆川先生です。初稿の推敲ですが、寺本先生、宮嶌先生、皆川先生の批評を受けての「最終原稿推敲・提出」となります。
 全面的な書き直しとなった方は、そこも含めて次回の講座(皆川先生)で相談いただきたいと思います。大変ですが、より良き作品提出となるよう文芸館も対応をしていきたいと思います。いつでもスタッフにもご相談いただけたらと思います。

      




      寺本 親平先生




      宮嶌 公夫先生

〇11月13日(月)出前講座 清泉幼稚園 年少・年中・年長園児

おはなしの会を楽しもう

講師:大西 晶子(おおにし あきこ)金沢おはなしの会
   中村 順子(なかむら じゅんこ)(金沢おはなしの会)


 橋場町の天神橋近くの情緒ある落ち着いた街並みにある清泉幼稚園を訪問しました。年少、年中園児に中村さん(金沢おはなしの会)、年長園児には大西さん(金沢おはなしの会)が23名の園児に読み聞かせをしていただきました。
 子ども達は始まる前から期待感いっぱいの笑顔です。そして読み聞かせの場面ではみんなワクワクし通しの楽しい時となりました。
 それではプログラムの紹介をします。

◆年少、年中園児のプログラム【中村順子さん】
 ①手遊び「どんぐりころちゃん」
 ②絵本 「どんぐり どんぐり」 降矢なな/作 福音館書店
 
③絵本 「どんぐり ころころ」 ひさかたチャイルド
 ④手遊び「ひとつどんぐり」
 ⑤お話 「ねずみのすもう」『日本の昔話5』 福音館書店
 ⑥手遊び「いっぴき ちゅー」

◆年長園児のプログラム【大西晶子さん】
 ①詩  「おちばのゆうびん」 まどみちお
 ②詩  「かき」 まどみちお 『たんぽぽのヘリコプター』 小峰書店
 ③絵本 「まゆとプカプカプン」 富安陽子/文 降谷なな/絵
                 福音館書店

 ④手遊び「どんぐりころちゃん」
 ⑤お話 「三びきのクマの話」(イギリスの昔話)
            『イギリスとアイルランドの昔話』 福音館書店
 ⑥童歌 「いろいろおせわになりました」
            わらべうた『おちゃをのみにきてください』より
            やぎゅうけんいちろう/作 福音館書店

 
隣同士のクラスでの読み聞かせでした。2クラスで23名の園児がいるのが信じられないぐらいの集中度です。自分から積極的に見たい、聴きたいという思いいっぱいの子ども達でした。園児を時間いっぱい惹きつけておられた2人の先生の卓越した話術には驚くばかりでした。
 子ども達も手遊びの時は元気モリモリで友達と楽しみ、話を聴く時には息を呑むような静けさになって集中している姿があり、驚かされるばかりでした。
 おはなしは、豊かなことばや物語にふれ、想像力を育み、読書に通ずる体験です。
金沢おはなしの会では、

 ・玉川子ども図書館
   
第1土 15時から 対象 小学生 12月休
 
・金沢海みらい図書館
   第2土 15時から 対象 小学生
となっています。
 ぜひ時間があれば、参加いただけると良いかと思います。

 金沢おはなしの会の皆様、清泉幼稚園の先生方、そして園児の皆さん、素敵な出会いをありがとうございました。今後も清泉幼稚園の子ども達の健やかな成長を心から願っています。


      




      中村 順子さん




      大西 晶子さん

〇11月12日(日)第7回 朗読会『青春の門 自立編』

朗読: 髙輪 眞知子(朗読小屋・浅野川倶楽部代表)


 11月12日(日)第7回朗読会が、朗読小屋 浅野川倶楽部の代表 髙輪 眞知子(たかなわ まちこ)さんにより行われました。今回は「女禁じられた淵に」(後半部)、「織江との再会」です。

 信介は、石井講師の家を訪れます。誰もいない家で暇つぶしに薪割をする信介。帰宅した石井は信介にボクシングにつながる薪割の指導をします。信介は石井と、女や酒ついて語り合いました。「女も酒もやり、それでもなお無敵な強い選手になれ」と語る石井を不思議に思う信介でした。
 石井との生活が始まり1週間が過ぎた頃、織江が信介に会いに上京してきました。筑豊からやってきた織江を思うと、はげしい感情がこみあげてくる信介がそこにはいました。
               (「女禁じられた淵に」「織江との再会」)

 寒い日にも関わらず多くの方々にお越しいただきました。ありがとうございました。
 朗読小屋 浅野川倶楽部は、11月11日から11月26日まで、第35回朗読公演「朗読で彩る郷土文学の世界」を開催しています。湯涌温泉「石倉家」、美川「浄願寺」、金沢「静明寺」、片山津「成善寺」、白山「行善寺」、輪島「正覚寺」と、長きにわたる公演です。

 その取り組みは他に例を見ないもので、小中学生の皆さんが、室生犀星作「動物詩集」、徳田秋聲作「俳句」、山吹句会「俳句」の朗読にチャレンジしています。
 浅野川倶楽部のみなさんは、木下順二作「夕鶴」、徳田秋聲作「胡蝶」、徳田一穂作「粉雪」、竹久夢二作「クリスマスの贈物」、泉鏡花作「十六夜」、森山啓作「野菊の露 能登麦屋節考」、語り 浄願寺曼「かって美川は世界に通じていた」、昔語り「鹿島の綱引き」に挑んでおられます。
 髙輪さんはこう語られています。
 「心で読む朗読ができたら。朗読で大切にしたいことは、謙虚な心で、あらゆる自意識から離れ、作家の想像した純粋世界にひたすら感じ入ること。ナンバーワンを目指すだけの朗読、技術を駆使しただけの朗読は作品を汚してしまう。人の痛みが分かる苦労人ほど心で読む朗読ができる。そんな朗読がしたくて、私たちは日々心を綺麗にしながら修行しています。」と。

 今回は、将来を背負っていく小中学生も参加しての公演です。「朗読の大切さ、文学に親しんでいく若者を育てたい」そんな朗読に対する熱き志を貫かれておられる朗読小屋 浅野川倶楽部の皆様方です。私たちは、その尊き志を大切に想い、共に歩んで行かねばと思うばかりです。
 髙輪眞知子さん、お忙しい中、お力いただいておりますこと、心より感謝いたします。

 第8回最終朗読会は12月10日(日)14時からです。「燃える季節」「雨の中の男たち」「白い額の上に」です。最終回です。ぜひ皆様ご参集ください。心よりお待ちしております。

      



〇11月11日(土) 第6回詩入門講座

詩の実作品最終合評会

講師: 井崎 外枝子(詩誌『笛』同人)
    中野 徹  (詩誌『笛』同人)
    和田 康一郎(金城大学講師)


 いよいよ最終講座で詩の実作品の最終合評会です。3人の先生方の貴重なご助言はもちろん、受講生同士の意見交換もあり充実した講座となりました。紹介していきます。

受講生の実作詩(「」は詩の一部抜粋)から
 ➀夜明けまで待てない
  「ラインの着信音でも目を覚まさない/間近にいることを許される時間だ/
   一日しなやかな二本指で触れられる/夜明けまで待てない/
   目覚まし時計の秘め事である」

  ・手が込んでいて上手くなったなあと感じる。面白みが増している。
   前回よりもよくなっていて、人にないものを書こうとしている。

  ・主語と述語の関係が明確にして理解させていくと良い。
  ※題名も良くなり、擬人法での表現が面白いという意見が出された。
   楽しく読んでいける作品で男性目線での詩の作り方で〇〇さん
   らしいと思ったとの意見もあった。作者の優れた擬人法について、
   意見交換がなされた。

 
②水脈
  「足元を流れる/美しい水/私の内側に/通い続けている」
  ・推敲により詩がレベルアップした。連わけも良い。
  ・内面に入りながら自己を出すことに成功している。内面を言葉
   として表している。

  ・今回は、自分と水道を完全に分けて、「この水道のように私は
   ならない」「美しい水は変わらず自分に通っている」という確信を
   謳いあげている。

  ※前回は、一面で「傷ついた内面を錆びた水道の様子で表して
   いる」ようにとらえられたが、今回はそうはなっていない。自己を
   実によく表現しているとの評が意見として出された。

 
③言の葉
  「学び 選び 理解し 思いを尽くせば/うつし世の夢を美しく
   照らし/当然を有難きするもの/万の言の葉/とことわに 
   生命の物語を紡ぐもの」

  ・言葉選びや構成が、前回の「手探り感」から飛躍的に良くなっている。
  ・第一連の「まばたきするが如く」の直喩や「呼吸」という比較対象が
   効果的である。

  ・第三連では「当然」→「有難さ」という流れを出して、二つ前の連との
   関連を明確にしている。

  ・客観的に綴っているようである一方、末尾を「生命の物語」で
   締めくくることで、「命を鮮やかで有意義なものにするか、くすんだ
   つまらないものにするか、それはその人次第だ」と自他に迫ってくるような
   力がある。

  ・前回の作品の方がよいのではないか。ストレートに語りたいことが表現
   されている。

  ※講師の先生でも、前回と今回の作品で、評価が真っ二つに分かれた。
   最終結論は出なかった。受講生にとってはどれを提出していくのか迷われる
   ところであろう。言えることは、表現方法は変わっても、詩の根底を流れる
   輝く才能が魅力の光を放っているということであろう。

 
④一つの命の誕生
  「私の生命体は、とある数か月前に/海水に似た二人の命の水/
   すなわち 母はハチミツ水を/父はレモン水を注いでくれた/
   それは私の知らないところで始まっていた
  ・接続詞は使わないほうがより良い。
  ・「空の雪が全部降った 三八豪雪の日」という表現が
   面白くて優れている。

  ・素材がユニークで、本質的なものをとらえている。書きづらい
   対象を実によく書いている。

  ※推敲したことで、誕生期の時期に焦点が絞られて格段に良くなって
   いるとの意見が出された。表現については述部をいれていくこと、
   冒頭部についての改善点が指摘された。

 
⑤妹の成長
  「キャラメルはほんのりと甘いミルクのように/口の中へ広がる/
   その瞬間/ぽろりととれた妹の乳歯/帰宅した母が目にしたのは/
   キャラメル付きの妹の乳歯」

  ・前回は題以上に「乳歯」が目立っていた。今回は末尾から消えている。
  ・末尾が「甘い思い出」と、今回も説明的になっている点は残念。
   今回の題なら、「乳歯がきらりと光る」という末尾でも、「成長」と
   つながるイメージになるので、用いて良いのではないか。

  ※講師の先生方から、最後の二つの連については説明的であるがため
   に削除していく方が良いとの助言があった。妹の成長が懐かしい回想の
   中から浮かび上がる作品となっていた。

 
⑥はなのいろ
  「風雨に耐えた枝と/苔むした幹があるから/あんなに優しい色の花を
   咲かせるのだ/人は花びらと花びらの間にひそむ/硬く黒ずんだものに/
   
惹かれているのかもしれない
  ・自分の感動を語るアプローチに変えて、格段に良くなっている。前回は、
   「美しいものを美しいと/どうして素直に感動できないの?」との批評的
   言動から、他者の指摘に納得する流れだった。

  ・書いていて「…。」のところで一行空けがなされている。そうすると弱さが
   感じられて主張が薄れていく嫌いがある。ブロックとしての連があることを
   意識してほしい。

  ・第四連の因果の発見も生き生きとしている。
  ・この詩に、安易に人間の生活を描いていく連を入れないほうが良い。
   削除が望ましい。

  ※井崎先生が桜を素材にして詩を書かれており、今回はその話も
   されていた。桜の花は美しいが、幹はそれに反してこぶだらけの武骨な
   格好をしており、そこに惹かれている作者の感性の鋭さに感心する
   時間となった。


 ⑦夢の中で
  「あいたいと思う人は/父・母/そうもう夢の中でしか、あえない/
   
父は46年もあっていない/どんな声だったかしらと思う/
   母は16年あっていない/時々、夢にでて、私をじっとみている
  ・起承転結からなる詩。となると、転の連では、話を変えていく必要がある。
   
四連は内容が概念的でありきたりになっている。具体的なエピソードを
   入れるとよいのではないか。

  ※ご両親がどんな方かを詩からイメージしていくことが困難であることを
   講師の先生から指摘された。父母の年齢イメージを脳裏に描く手掛かりが、
   作品内にあればとの意見が出た。


 今回は、井崎先生の出席が叶いました。井崎先生、中野先生、和田先生の3人の先生方からの推敲となりました。時には、先生方同士でも評価が正反対となり、白熱した会となりました。最終的には推敲いただいて11月25日(土)が最終提出日となります。
 さて、今回で詩の入門講座は終了となります。昨年度より1回講座を増やして6回講座といたしました。詩の入門講座は出席率が高く、意欲的に詩に取り組んでおられる姿に頭が下がる思いがしました。
 3人の先生方、そして受講生のみなさん、1年間、本当にありがとうございました。またお会いできますことを、心より楽しみにしております。

      




      井崎 外枝子先生




      中野 徹先生




      和田 康一郎先生

〇11月11日(土) 第7回小説入門講座 作品批評と推敲(第1グループ)

実作小説の批評と推敲

講師: 高山 敏 (『北陸文学』同人)
    小網 春美(『飢餓祭』同人)


 第7回小説入門講座は、実作小説第1グループの批評会です。講師は文学誌『北陸文学』同人の高山 敏先生、文学誌『飢餓祭』同人の小網 春美先生です。小網先生は、令和5年度「しずり雪」で第51回泉鏡花記念金沢市民文学賞を受賞されました。講座当日は授賞式と重なった日となりましたが、お2人の先生には充実した批評と推敲をいただきました。一部とはなりますが、合評会での内容を紹介します。

実作小説の題名、内容(一部)、批評内容(一部)から
 
➀桜の花が散る前に 
  ○内容
   「奈緒は、『20年ビデオ』を見ようと、ビデオのコードをコンセントに
    指して電源を入れ、本体に付いている小さな液晶の画像を
    覗き込んだ。最初の画面は、習字の墨で大きく『奈緒』と
    書かれた半紙が飛び込んで来た。」

   ・交通事故で意識不明となった父、行方不明となった母、家を出た
    二人の姉妹と、崩壊した家族関係。しかし、そんな家族の長い軌跡を
    ふりかえり、新たな一歩を踏み出そうとする奈緒の生き方が描かれる
    意欲作である。

  ○批評から
   ・主人公の奈緒が父親、母親の願い、思いにふれて故郷の金沢に
    戻って娘と暮らすことを決意するその心境が軸となって伝わってきます。
    父の親密な思いが立ち上がることで、叔母や娘の言葉、しぐさ、妹の
    存在感が生かせると、さらによい(伝わる、沁みる)作品になると思います。
    意外性にもチャレンジしてみてください。


 ➁大ちゃんとダイコン 
  ○内容
   「ママは、「おはようございます。先生、よろしくお願いします」と言って、
    さっさと仕事に行っちゃった。置いとけぼりにされたボクはびっくりして家で
    やっているギャン泣きで、ギャンギャン泣いちゃった。」

   ・二歳児大ちゃんの保育園での約二年間ほどの成長の様子が生き生き
    と描かれていて、園児への愛情が心から溢れ出ている小説です。
  
○批評から
   ・畑の大根がなくなったことに気づく大ちゃん。小説の最後の終わり方が
    とっても上手だなあと感じました。素材がとても素敵だと感じます。

   ・タイトルになっているダイコンと大ちゃんをもっと深くつなげてもよいのでは
    と感じました。

   ・ダイコンを「舌」で味わって、一層、大ちゃんとダイコンをつなぐとか、農家の
    おじいちゃん、おばあちゃんと園児、大ちゃんが触れ合うとか、可能性を
    追求して
みると楽しいですね。

 
➂伝える言葉 
  ○内容
   「「時おりめげそうになった時、あの時の自分の言った言葉で自分を励まし、
    元気をもらっているんだ。どの命も、今を生きている」いつしか風は止んで
    いた。二人は息づかいが聞こえてきそうな静かな夜になっていた」

   ・白山登山に行った高見沢と吉尾。登山中、吉見から高見沢は相談を
    受ける。障害を持って生まれてくるかもしれない子どもへの思いをどう受け
    止めて歩んでいくべきかについてであった。きれいごとを語るのではなく、
    真剣に受け止めながら対応していく。シリアスな問題に正面から向き合って
    いく小説となっている。

  ○批評から
   ・最後の終わり方がとても印象的である。
   ・登山で登頂を喜び合う場面がある。苦難の後の喜びを表現するのだから、
    もっと
もっと描写していくことが大切だ。
   ・障害のある人と共に生きる、寄り添い合う前向きな気持ちを忘れずに粘り強く、
    
また快活に生きることが、また、自分自身を成長させてくれる!という確信が
    湧いてくるものです。

 
④おばあちゃんの朝ご飯 
  ○内容
   「「おばあちゃん、ゆきのちゃんにお礼がしたいんや。おばあちゃんが朝ご飯を
    作るさけ、一緒に食べてたいね」「おばあちゃん、ご飯作れるの?」
    「朝ご飯食べて太らないならおばあちゃんの作るご飯食べてみたい」と
    ゆきのは返した」

   ・おばあちゃん、母親、娘のゆきのが温かい家族関係の中で、お互いが
    互いの誤解を解きながら歩んでいく様子が爽やかに描かれている。

  ○批評から
   ・祖母と母親とのぎくしゃくした関係が会話で語られているが、描写で
    語っていくようにしていきたい。さり気なく出来事で語っていくことが
    大切である。

   ・会話表現をたどっていくと、実際の場面や内容よりはずいぶん詳しく
    丁寧です。
一方で物語のテンポがゆるくて冗長になりがちです。
    削除できるところは省略し、
重複を避けるようにすると良い。父が
    登場したりして、男の視線や感じ方が加わるのも深化への道です。

 
Where do you want go.
  
内容
   「決して家族や社員や顧客の前では見せないあられもない姿で、
    ミニカー遊びに興じる
ドンの姿を想像した。彼はどんな思いで
    幼児返りしたんだろうか。日頃からお金も人も思いのまま権力を
    振るっていても、心の内なんて誰も分からない。須美さんひとりだけ
    が知っていたんだ」

   ・骨董商をしている宗介が、お茶屋の元芸子の須美さんに頼まれて、
    旦那の遺品の買取をしていく。旦那はドンと呼ばれたこの界隈では
    一目置かれた財界人であった。
最後に宗介が手にしたのは
    小引き箪笥であった。中に入っていたものは…。

  ○批評から
   ・最後の手帳について「宗介は急に手帳を放り投げた」とあるが本当に
    これでよいのか。「お金、お金」の人だったらそれでよいのだが、これだと
    いけない気がします。

   ・城下町らしいみやびな世界の表ばかりでなく、裏の陰の部分までを
    垣間見るような巧みでムダのない展開です。明治、大正、昭和の
    様々な文章や写真集などを参考にすると、往年の若旦那やドンの
    生き様が、より豊かに、深く描き出されることでしょう。細野燕台、
    小松砂丘の関連資料、五木寛之氏の「朱鷺の墓」「金沢あかり坂」
    などが役にたつことでしょう。

 
小説入門講座では、高山 敏先生、小網 春美先生から的確な指導をいただきました。そして小西 護先生からは、受講生一人一人に貴重な直筆のご助言をいただき配付いたしました。受講生のみなさんは、今一度作品をご自身で推敲いただき、令和6年1月6日(土)までに金沢文芸館に提出いただきたいと思います。
 次回講座は、第2グループ作品の推敲で、12月9日(土)で全員参加となっています。みなさんの参加をお待ちしております。

      




      高山 敏先生




      小網 春美先生

〇11月3日(金)古典の日記念事業2023 朗読『和歌への誘い~紀貫之を詠む~』

出演:朗読 神田洋子・戸丸彰子
   演奏 太田豊


今年の古典の日記念事業は「和歌への誘い~紀貫之を詠む~」です。「土佐日記」は土佐守として赴任した紀貫之が、四年間の任期を終えて帰京するまでの船旅の模様をつづった日記文学です。本文学は、前土佐守に仕える女房の旅日記という形をとり、紀貫之が女性の立場で女手と呼ばれる平仮名を用いています。五十八首(引用歌を含む)の和歌と三首の歌謡を含んだ日記もどきの散文から成り立っています。
 今回は二部構成で、一部は「戸丸彰子(とまるあきこ)」さんの語りと和歌の朗読、二部は「神田洋子(かんだひろこ)」さんの土佐日記の朗読でした。「太田豊(おおたゆたか)」さんには、一部、二部を通して、おりん、横笛、琵琶、DAWを使った演奏がありました。

1 出演者の紹介
 ○神田洋子/朗読
  ・古典文学、近現代文学作品をレパートリーとして朗読する。
   石川県立音楽堂、金沢市民芸術村、各文化ホール等で朗読
   ライブを企画主催している。ストーリーテラーとして小学校、保育園で
   「世界の民話・日本の昔話」を語る。

 ○戸丸彰子/朗読
  ・元・テレビ金沢アナウンサー。朗読家として東京国立博物館、
   金沢21世紀美術館、などで様々な朗読活動をしている。
   ピアノやチェロ、横笛などの洋・和楽器、コンテンポラリーダンスや
   花活けなど、常に新分野とのコラボレーションに挑戦している。

 ○太田豊/笛・琵琶・おりん
  ・横笛・琵琶・左舞を専門とし、国内外の雅楽公演に出演。
   一方で、サックス・ギター・おりん・DAWなど様々な楽器を
   用いて舞台芸術のための音楽創作活動を行う。仏具「おりん」による
   北陸新幹線新高岡駅発車メロディーの制作もされている。


2 戸丸彰子さん(語り、朗読)・太田豊さん(演奏)の「和歌」
  朗読から(一部紹介) 
 
 まず、紀貫之の紹介がありました。平安時代前期から中期の人で、
 歌詠みとしては当代一、天皇による勅撰和歌集「古今和歌集」の編纂を
 したこと。次に数々の和歌を軽妙な語りを交えての紹介がありました。

 (1)  四季の歌から
  ・雪ふれば冬ごもりせる草も木も春にしられぬ花ぞ咲きける
  ※雪が降ると冬ごもりしている草も木も、春に気づかれない花が
   咲いている
のだった。降る雪を花にたとえている美しき屏風歌。
  ・さくら花ちりぬる風のなごりには水なき空に波ぞたちける
  ※風が吹き、桜の花が散ってしまった。その風が去って行ったあと
   のなごりには、
水のない空に波が立つ。耽美を極めた一首。
   風に舞う桜の花びらを空に立つ波に見立てた歌。
 
(2)  紀貫之の心の声がだだもれている歌から
  ・霜枯れに見えこし梅は咲きにけり春には我が身あはんとはすや
  ※霜枯れていた梅もすっかり花開いたが、はたして我が身に春はくるの
   だろうか。
貴族官僚としての出世がパッとしない貫之の心が表れた歌。
 (3)  貫之の魂の叫びのような歌から
  ・世の中に思ひあれども子を恋ふる思ひに勝る思ひなきかな
  ※土佐の旅の中で亡くした子を思う親の気持ち、真心がストレートに
   感じられ
る歌。

3 神田洋子さん(朗読)・太田豊さん(演奏)の「土佐日記」朗読から
  (一部紹介)
 
 (1)  男もすなる日記といふものを…
  ・男もすなる日記といふものを、女もしてみむとてするなり。
   それの年の、十二月(しはす)の二十日あまり一日の日の、
   戌の時に門出す。
   
そのよし、いささかものに書きつく。
  ※有名な冒頭部。紀貫之が「私は女よ」と宣言しています。土佐日記は
   全篇ひらがなです。紀貫之は前土佐守に仕える侍女の一人になって
   帰京する一行になりすまします。

 (2) 難所の鳴門海峡を渡る日に…
  ・三十日(みそか)。雨風吹かず。「海賊は夜歩きせざなり」と聞きて、
   夜中ばかりに
船を出だして(いだして)、阿波(あは)を水門(みと)
   を渡る。夜中なれば、
西東も見えず。男女、からく神仏を祈りて、
   この水門を渡りぬ。

  ※船はいよいよ四国を離れ、漆黒の闇の中、鳴門海峡にさしかかる。
   現在でも海難事故の多いこの海域を無事に通過できるかは、ひとえに
   かじ取りの腕にかかっている。一行がひたすら神仏に祈る様子が書かれて
   いる。

 (3) 出立から五十五日目にしてようやく今日の家にと…
  ・思ひ出でぬことなく、思ひ恋しきがうちに、この家にて生まれし女子の、
   もろともに帰らねば、いかがは悲しき。舟人もみな、子、たかりてののしる。
   かかるうちに、なほ悲しきに堪へずして、ひそかに心知れることと
   いへりける歌、
    
生まれしもかへらぬものを我が宿に小松のあるを見るが悲しさ
   とぞいへる。なほ飽かずやあらむ、またかくなむ。
    見し人の松の千歳に見ましかば遠く悲しき別れせましや
   忘れがたく、口惜しきこと多かれど、え尽くさず。とまれかうまれ、
   とく破りてむ。

  ※思い出さないことは、あれもこれも懐かしく思い出される中で、この家に
   生まれた女の子が一緒に帰って来ないと言うのは、どれほど悲しいことなのか。
   子どもといえば、同船だった人々もみな、子どもたちが寄ってたかって大騒ぎを
   しています。こうしたありさまを見るにつけ、いっそう悲しみに堪え切れずに、
   お互い心が通じ合って人とそっと詠み交わした歌は、

    生まれしもかへらぬものを我が宿に小松のあるを見るが悲しさ
    (この地で生まれたあの子も、京へ帰ることはできなかったのに、我が家
     には、留守の間に新しく小松が生えているのを見るのは、何と悲しいことか)

   と詠みました。それだけでは言い尽くせなかったのでしょうか、また、
   このように詠みました。

    見し人の松の千歳に見ましかば遠く悲しき別れせましや
    (亡くなった娘のことを、千年の齢を保つという松のように見ていたならば、
     永遠の悲しい別れをしたことだろうか。そうはならなかっただろう)
   
忘れがたく、心残りのことはたくさんありますが、とても書き尽くすことは
   できません。何はともあれ、こんな駄文はさっさと破り捨ててしまいましょう。


4 和歌への誘い ~紀貫之を詠む~
 戸丸彰子さんには、軽妙な語りと艶やかな朗読で、紀貫之の和歌の世界を描きだしていただきました。紀貫之の和歌の巧みさ、優れた色彩感覚、豊かな歌心を堪能した時間でした。
 
また、太田豊さん奏でる「おりん」の音色、「DAW」を使った戸丸さんとのコラボレーションは夢物語のようでした。「おりん」への様々な打鍵、繊細なメロディーとリズム、多彩な音色が響き渡りました。優れた伝統工芸士が作られた見事な高岡銅器。その秘めたる個性を見事に引き出された太田さん。その「おりん」の音色と戸丸さんの「朗読」が見事に紡ぎ合う時間でした。
 神田洋子さんは、紀貫之の亡くなった娘への情愛、航海への不安な思い、京への憧れと安全への願い、航海を終えてなおも募る愛娘への愛…。様々な場面ごとの哀愁を感じる迫力ある朗読をいただきました。本場面でも、太田さんには、「横笛」、「おりん」、「DAW」、「琵琶」など、多彩な楽器を駆使して神田さんの朗読とのコラボレーションがありました。

 
まさに、一期一会。二度とない素晴らしき舞台芸術でした。神田洋子さん、戸丸彰子さん、そして太田豊さんには、紀貫之の和歌の世界を堪能させていただきました。ありがとうございました。
 また様々な古典の日の事業がある中、本館にご来館いただいた皆様方、心より感謝申し上げます。ありがとうございました。


      




       神田洋子さん



       戸丸彰子さん



       太田豊さん

〇11月1日(水)出前講座 泉小学校1年

お話の読み聞かせ(紙芝居、プレゼン、歌)

講師:吉國 芳子(ひょうし木の会


 金沢市立泉小学校に訪問しました。1年生4クラス106名を2クラスごとで、金沢民話、読み語りに親しむ学習活動をしました。紙芝居、昔遊び歌、読み語り、マジック、プレゼンテーションなどを取り入れた読み聞かせで充実した45分間でした。

1 本日のプログラム
 ① 昔遊び歌「あんたがたどこさ」
 ② 金沢民話「子そだてゆうれい」(紙芝居)
 ③ 寸劇「おばけ学校の三人の生徒」(児童文学者「松岡享子作」)
 ④ 
マジック「なぜか新聞紙から水がこぼれちゃうよ」(手品)
 ⑤ 金沢民話「天狗さんの寺」(プレゼンテーション)

2 本日のプログラムから紹介
 (1)語り「おばけ学校の三人の生徒」から
   2022年1月に亡くなられた児童文学者「松岡享子」氏の作品を、
  吉國さんが語り
と体表現で演じられました。内容を紹介します。
   おばけ学校の三人の生徒(一年生、二年生、三年生)は立派な
  おばけになるために修行
を重ねています。夏休みを迎えてブラブラしがちな
  三人の生徒たちに、先生はテストを
することとなりました。先生から与え
  られた課題は次のとおりです。

  ・おばけの「こうもりの羽ばたき」
  ・おばけの「足音の立て方」
  ・おばけの「窓の外から家への入り方」
  ・おばけの「人をびっくりさせるやり方」
   一年生、二年生、三年生と、順に吉國さんは絶妙な語りと豊かな
  体表現力で、三人の
生徒を演じ分けていきます。先生から「こんなのは
  だめだ!」「もうすこしだな!」
「とってもいいじゃないか。マル!」と、
  その度ごとに生徒に語りかけていきます。

  もう泉小の1年生は、吉國さんの語りと体表現に夢中です。
   友だち同士で顔を見合わせて笑い合う素直な子ども達がいました。
  豊かな感性を持
つ子ども達に感心するばかりでした。

 (2)金沢民話「天狗さんの寺」(プレゼンテーション)
  ○あらすじ紹介
   犀川大橋のたもとから寺町台へ向かう急な坂道を蛤坂(はまぐり坂)
  と言います。この坂の上に妙慶寺があります。妙慶寺は何回か大火事が
  あったのですが、このお寺だけは燃え残っているという不思議なお寺でした。
  このお寺に残っているお話からです。

   5代目住職こうよう上人が近江町市場に行った時、大勢の子ども達に
  捕まえられて羽をばたばたしているトンビに会いました。

  「何べんも魚を盗む悪いトンビや。こらしめてやれ。」と子ども達は棒を
  振り回しています。

   こうよう上人は
  「生き物の命はただ一つ。そまつにしてはならない」と言って、このトンビを
  助けて妙慶寺に連れて帰り、トンビを逃がしてやりました。
   
さて、真夜中のこと、天狗(トンビ)が上人にお礼に訪れました。天狗は
  お礼をさせ
てほしいと上人に言いますが、上人はお礼はいらないと言います。
   天狗は
  
「それではこの寺をずっとのちのちまで守るお守りを残していく」と言って、
  大きな
八角形の板を取り出すと、自分の手の爪を立てて板を削って
  表には「大」、裏には「小」
の字を彫り上げました。
   こうよう上人は大の月(31日ある月)には「大」、小の月には「小」を
  飾りました。
この額は今も妙慶寺にかかっています。今も火事からお寺を
  守っているとの話です。


 子ども達は自分たちの校下にある妙慶寺の金沢民話に興味津々でした。命を大切に守ったこうよう上人の生き方、天狗さんがお礼の板を彫り上げて火事からお寺を守っていることを知って、子ども達は温かな民話の世界に入り込んでいました。
 「今度、妙慶寺に行ってみよう」そんな声がした読み聞かせでした。温かさ、優しさと同時に、畏敬の心をも培っている気がしました。吉國さん、ありがとうございました。

 
今回の出前講座は、児童文学者「松岡享子」さんのお話を紹介いただきました。松岡さんはこんな言葉を残されています。
「心の中に、ひとたびサンタクロースを住まわせた子は、心の中に、サンタクロースを収容する空間をつくりあげている。サンタクロースその人は、いつかその子の心の外へ出ていってしまうだろう。だが、サンタクロースが占めていた心の空間は、その子の中に残る。この空間がある限り、人は成長に従って、サンタクロースに代わる新しい住人を、ここに迎え入れることができる。」
 泉小の1年生は、読み聞かせへの反応がとても素晴らしく、民話の世界に浸って楽しんでいる様子が見られました。集中する力も高く、誰一人しゃべることがなく、前のめりになって集中している子ども達の姿がそこにはありました。

 
今日は、子ども達は自身の心に誰かが住まいをつくった気がしてなりません。「子育てゆうれい」「道入寺の和尚さん」「妙慶寺のこうよう上人」「天狗」…それとも吉國さん。
「その人は、いつかその子の心の外へ出ていってしまうだろう。だが、サンタクロースが占めていた心の空間は、その子の中に残る。この空間がある限り、人は成長に従って、サンタクロースに代わる新しい住人を、ここに迎え入れることができる。」
松岡享子さんはなんて優しくて温かなお心の持ち主なのかと感嘆するばかりです。

 
本日、こんな素敵な出会いの場をいただいた泉小の1年生の子ども達、校長先生はじめ1年生の先生方、他、力いただいた数々の教職員の皆様、そして指導いただいた吉國さん、本当にありがとうございました。
 泉小学校の子ども達の健やかな成長を心より願っています。


      




〇10月21日(土) 第6回小説講座 ~小説の実作について②~

小説を書くとは

講師: 寺本 親平(小説家)


 第6回小説講座が開催されました。講師は小説家で、『繋ぐ』同人である寺本 親平(てらもと しんぺい)先生です。テーマは「小説の実作について②」です。
 寺本 親平先生は、今年度、作品「血の湯」で全国同人雑誌優秀賞、ならびにまほろば賞 五十嵐 勉賞を受賞されました。五十嵐 勉氏の選評を抜粋します。
「寺本 親平 氏の「血の湯」は、近年例を見ない超リアリズムの異界譚である。普通の描写を一切捨てて、超現実の世界に直接入っていく切り込みは、呪術・祈祷の領域まで踏み込む根源的な世界を浮かび上がらせている。…(中略)…こういう世界が造形できるのは、何よりも筆者が薩摩琵琶奏者であり、平家物語に息づく戦乱の血の怨みを体感しているからだろう。泉鏡花の系譜とも言えるこれは、筆者でなければ書けない世界であり、現代こういうものが忘れ去られていく時代趨勢(すうせい)の中では、特に貴重としなければならない緊要性から『五十嵐 勉賞』を贈った」
 貴重な講義の一部を紹介します。

1 よき小説を書く秘訣とは?
 ・すべてを書かないことが大事だ。例えばどういう顔かを特徴づける表現をする。
 ・「読みながら書く」ことが大切だ。優れた本を読んで書くことが大切。
 ・優れた文章を真似てみる。そしてその上で自分の文体を創ることを意識する。
 ・自分の知っている場所を書くのがよい。そして景色を書くのは大事だ。今は
  その根幹が揺らいでいる。パッと売れそうなものばかりを書く傾向がある。

 ・良き風情を描きたい。
 ・自分へのコンプレックス、マイナスを活かしていく気持ちが大切だ。
 ・小説講座に来ている目的を持つ。何をしにきているのか?何を書きたいのか?
 ・小説を書くのは孤独なもの。孤独な人間同士の意見交換の場なんだ。

2 資料から(ごく一部の抜粋)
 (1)   吉田 知子氏 「第27回中部ペンクラブ文学賞選評から」
   ・小説は、題15点、書き出し10点、終わり10点、描写10点、
    文章15点、
内容10点、形容10点、個性30点ぐらいだろうか。
   ・何か書こうというのなら、こだわるべきではないか。どこにでも転がって
    いるありふれた話を何の特色もないわかりやすいだけの文章で書いても
    しようがない

 (2)   中野 重治氏 小説「蝶つがい」から
   「この柱さまがなかってみろ、おまえは、立っていることだってできや
    しまい?」【柱】

   「扉さまのいないことにゃ、入り口が開くも開かぬもないってことが
    わからない
のか、とんま柱め!」【扉】
   争いを始める【柱】と【扉】です。
   そして、「扉」と「柱」を両方の手をつないでいるのが【蝶つがい】です。
   「いや、いや。手をはなしたが最後それっきりだ。おれが手をはなしたが
    最後、
「扉」は元の板っぺらになってしまうし、「柱」は棒になってしまう。
    おれが我慢しさえすれば、「扉」も「柱」も丈夫なのだから、まだまだ
    りっぱな入り口でいられる。ふたりがいくら喧嘩をしても、「扉」と「柱」と
    をつなぐのがおれの役目である以上、役目は死んでもはたさなくちゃ
    ならぬ」

             ……()……
   いよいよちょうつがいのからだが裂けて血が流れてきます。
             ……()……
   「今が大事だ。はなすな。「扉」はこんなにがんばってるのだから、
    今はなしたら、
「扉」は自分の力ではねかえって、大けがをして
    それっきり役にたたなくなるぞ…」

             ……()……
    ちょうつがいはもう死んでゆくところだった。やがてちょうつがいの息が
   とまった。流れた血がちょうつがいの背なかの上でかたまってさびになった。

 
受講生全員が事前に本小説を読んで臨んだ講座でした。寺本先生から紹介いただいた本作品は、蝶つがいがもめる「扉」と「柱」の両者を取り持ちその命を守り抜こうと自分の命を投げ出していく、そんな生き様を示したものでした。中野 重治氏の作品が表現する「剛直な真の優しさある人としての生き方」が、私らの心に深く刻まれる時となりました。
 小説に込める魂のすさまじさを体感する講座となりました。

 
今回、寺本先生からは膨大な資料を提示いただいての講座となりました。
「自分が学んできた教えを、今こそ受講生の皆さんに全て託して学んでいただきたい」そんな思いいっぱいの講座となりました。
 受講生からも質問をしたり自分の想いを正直に語っていく時間となりました。
「私は先生のお話を伺って『自分は何のためにここにきているのか?』と問い直した。自分は目的が曖昧になっていないかと…」
「私はフィクションだとわかりながらも自分の経験から小説を作っていきます。そうすると『これ以上書いていくと誰かを傷つけることにならないか』と思って深く踏み込めない自分がいます」
「先生は、今も執筆されていますが、いつ小説を作られているのですか?」
「先生は、ご自身の経験から小説を作られることはないのですか?」
 様々な質問があり、正直な思いが語られていきました。時には受講生同士が意見を交わし合う場面も見られました。
 真剣勝負で語られる先生のお姿と、全力で先生の教えと思いを受け止めて学ぼうとしている受講生の熱き姿がありました。
 まほろば賞 五十嵐 勉賞を受賞された寺本先生の作品「血の湯」が掲載された本も文芸館に届きました。ぜひとも受講生のみなさんはじめ、たくさんの方々に読んでいただきたいと思っています。
 
寺本先生、そして受講生のみなさんのおかげで充実した会となりました。本当にありがとうございました。

 次回は、
・11月18日(土)作品と批評➀(第1グループ)

・11月25日(土)作品と批評①(第2グループ)
です。どちらのグループかはグループ表にてお伝えしていきます。所属されたグループの会にご参加下さい。心よりお待ちしております。


      



〇10月14日(土) 第5回詩入門講座

詩の実作品合評会2

講師: 中野 徹(詩誌『笛』同人)
    和田 康一郎(金城大学講師)


 今回の講座は、詩の実作品の合評会です。7人全員参加での合評会でした。今回は3作品の意見交換をしました。2人の先生方の貴重なご助言はもちろん、受講生同士の実りある意見交換もあり大変に充実した講座となりました。紹介していきます。

受講生の実作詩(「」は詩の一部抜粋)から
 ➀夜明けまで待てない秘め事
  「昼間はいろんな人に声をかけられ/左へ右へと笑顔を向けて/
   紅の唇が輝きを増す/心地よく鼓膜を刺激する声色が/
   聞く者たちを説く師と呼ばれる」

  ・擬人法で視点が面白い。目覚まし時計のことを表現しているが
   良い視点ではないか。
  
・最後に種明かしがされていて、擬人法での書き方について
   正体を書くべきなのかどうかとか、いつ正体を明かしていくのか等、
   私にはよくわからないところがあるので、ぜひ教えてもらいたい。

  ・「秘め事」という表現はしないほうが良いのではないかと思う。
   ちょっとエロチックなものともとられかねない。

  ※擬人法での表現がとても面白いという意見が出されました。
   楽しく読んでいける作品だ。男性目線での詩の作り方で〇〇さん
   らしいと思った等、擬人法についての意見交換がなされた貴重な
   機会となりました。


 ②自己
  「足元には水脈がある/とうとうと水が涌きつづけている/
   清らかな水面に光が躍っていた/側には水道がある/
   頑固な青さびが覆っていた」

  ・深い意味のある表現に感心しました。とても面白い視点で
   書かれた詩だと思います。

  ・昔の自分(水脈)と今の自分(水道)と考えて劣等感を覚えている詩
   ともとれるし、
反対に自分で水道をひねって錆をおとしていく勇気を
   表現しているようにも思える。
取り方がいろいろとできる詩ではないか。
   ちなみに私はこの詩から勇気をもらいました。

  ・「自己」という題名は是非がわかれるという意見が出ました。「自己」
   としてしまうと最初から「自己」に焦点が当たりすぎてしまう可能性がある。
   「水脈」辺りが良いのではと思った。

  ※「今は水が出ない」という自己への劣等感が書かれていたとしても、
   劣等感があるというのは良い方向への導きにつながるということでもある。
   これからも「自分自身が持つ磁石に頼って生きていく」という思いを大事に
   していってほしい。


 ③よろづのことの葉
  「本来の価値を忘れがちなもの/  言葉  /学べば己が変わり/
   選べば明日が変わり/気づけば世界が変わる/
   真の力を使いきれていないもの」

  ・短い文字の中に深さが滲み出ている作品だ。作者の感性の
   素晴らしさを感じる。

  ・真ん中に「言葉」という配置。前半が「言葉の説明」で、後半が
   「言葉ってこうなるのだね」との表現がある。「言葉」がクローズアップ
   されていてよく考えられている詩だと思う。

  ・「いつわれるもの」は漢字にして「偽れるもの」としていくと、誤解が
   生まれないでさらに良き表現となろう。

  ※高村光太郎の「ぼろぼろの駝鳥」での「瑠璃色の風」を思わせるような
   詩である。本詩は上手に「韻文」としての力がある。言葉について、
   本来の価値を考えながらどのような言葉を選んでいくのかを考えていく
   ことが大切だと思わされる詩である。


 今回は、3人の作品を対象にした合評会でした。自作品が対象になっていない方もいたのですが、全員が参加してみんなで高め合っていく全受講生の積極的な姿勢に頭が下がる思いがしました。
 いよいよ次回は最終講座日です。11月11日(土)午後3時からです。最終講座はこれから最終校正を経ての提出原稿をもとにして、井崎 外枝子先生、中野 徹先生、和田 康一郎先生、そして受講生の皆さんによる合評会となります。
 創作工房に掲載していく最終段階ですね。みなさんの受講を心よりお待ちしております。

※「石川現代詩人集」(能登印刷出版部)が令和5年8月31日に
 発刊されましたが、ご覧いただけましたか。戦後78年、当地の文学土壌を
 広く、深く育んできた詩人48人の軌跡が書いてある435ページにわたる
 本です。一度手にとってお読みいただけたら幸いです。金沢文芸館にも
 一冊展示しますので、ぜひご覧ください。


      



〇10月14日(土) 第6回小説入門講座

推敲について

講師: 高山 敏(『北陸文学』主宰)


 10月中旬、小説入門講座も第6回を迎えました。今回は「推敲について」です。講師の先生は、北陸文学主宰の高山 敏(たかやま さとし)先生です。内容を紹介します。

○推敲とは?
 ➀常套語、決まり文句の使用は避ける。
  ▲ぬけるような空  ▲カモシカのような脚  ▲一面の銀世界 など
 ➁力み過ぎる表現になっていないか。
 ➂飾ったり、気どったり、格好つけたり、やたらそうなっていないか。
  ▲美辞麗句     ▲頻繁に修飾語使用
 ④句読点に気を配る。
 ⑤漢字を使い過ぎていないか。かなを使い過ぎていないか。
 ⑥擬音や符号はむやみに使わない。
  〇見た目で、漢字7、漢字3の割合が理想
 ⑦作者の癖が目立っていないか。
  ▲ように ような みたいな すごく
 ⑧接続語を多用していないか?
 ⑨リズムがあるか。流れがいいか。
 ⑩同じ言葉 同じ言いは多くないか。
  ▲文末…「〇〇していた」を繰り返す→〇「〇〇だった」「〇〇した」
   「である」等
 ⑪不要な箇所はなはいか。
  ▲テーマに結びつかない箇所→〇削ぎ落とす
 ⑫曖昧な言い方、反対に断定形を取り過ぎていないか。
  ▲かもしれない。あるまいか。だろう。だろうか。と思う。等
  〇である。 が多い。 ならない。 ている。
 ⑬言葉の順序はおかしくないか。
 ⑭ねじれ文に気をつける。
  ▲主語と述語が呼応していない
 ⑮書いた文書を声に出して読む。
  ▲言いよどむ箇所→〇訂正
 ⑯文章の贅肉を削ぎ落とす。
 ⑰「こと」「である」を多用しない。
 ⑱誤字、脱字はしない。

〇著名な作家の言葉から(推敲について)
 
◇加賀乙彦
  ・推敲するたびに考えが変わっていく。時には10稿ぐらいまで書き
   直す。私の文章修業とは、推敲を何度でもする行為に尽きる。
 ◇高樹のぶ子
  ・どうしたら、今思っていること、感じていることが、より鮮明に正しく
   相手に受け取られるか、ひとりよがりになっていないかということを、
   いつも考えながら書いている。
 ◇阿刀田 高
  ・とにかく最後まで書き上げる。それから推敲する。書き直す。全体の
   輪郭が定まって初めて細部が決まる。また、結末が決まって、逆に
   書き出しが変わる。短編小説は、特にこういうケースが多い。
 ◇宮本 輝
  ・『泥の河』は、文章の欠点や構成上の欠点を指摘され、「いい作品だ」
   と言われるまで7回書き直した。
 ◇太宰 治
  ・文章の中の、ここの箇所は切り捨てたらよいものか、それともこのままの
   方がよいものか、途方にくれた場合には、必ずその箇所を切り捨てなけ
   ればいけない。いわんやその箇所に何か書き加えるなど、もってのほか
   というべきであろう。
 ◇ドストエフスキー
  ・書き上げるために、隣に住むばあさんに見せて、ここがよくわからないと
   言われると書き直した。

 この後、小説家を目指している方の作品を、各自で読んで推敲箇所について意見交換していきました。自分の原稿を今一度推敲していく気持ちを培う講座となりました。
 本日が小説入門講座での原稿〆切日でしたが、講座を生かした推敲がこれからも続いていきます。創作工房掲載に向けて、今後の健闘を願っております。高山先生、貴重な講義をありがとうございました。
 次回は第7回講座で11月11日(土)最終作品批評と推敲です。半数の受講生の作品を対象に合評会を行います。グループ分け等については後日、ご連絡いたします。全員参加の合評会です。皆さん方のご参加をお待ちしております。

      



〇10月13日(金)出前講座 押野小学校1年

はじめての俳句をつくろう

講師:竪畑 政行(石川県児童文化協会 理事長)


金沢市立押野小学校に訪問しました。1年生2クラス63名で1クラスずつの出前講座を実施しました。学習内容は「はじめての俳句をつくろう」。講師は石川県児童文化協会理事長の竪畑 政行(たてはた まさゆき)先生です。それでは学習内容の一部を紹介します。

1 俳句の学習から
(1)俳句ってなに?
 
押野小学校には上級生の書いた季節の俳句が掲示されています。学校みんなで俳句に親しむ子ども達です。まだ俳句を作ったことがない1年生の子ども達に次の2つの句を竪畑先生は提示しました。「これらは何かな?」

・せのたかいあのひまわりはおとなかな
・ひまわりがおはなしかいをひらいてる

 
子ども達は「はいくかな?」そんなささやき声が聞こえてきました。さすが俳句を普段から見聞きしている押野っ子。素晴らしいです。これから先生と子ども達のいろいろなやり取りがありました。竪畑先生の問いかけを紹介します。
「俳句って思ったんだ。どうしてそう思ったの?」2つの俳句、同じところありますか?
 →2つとも文字の数が同じだ。五 七 五だったかな。
「文字の数が俳句の決め手になるんだ。漢字で文字の数を書いてみるよ」
 →えー。漢字わかるかな?
「五 七 五」(ゆっくり板書)
 →それならわかる!五 七 五だ!

(2)俳句の決め手は「音の数」だ。
「クイズだよ。言葉が書いてある。でもちょっとしか見せないよ。わかるかな?」
(文字カードを裏返しにし、さっと表を見せて言葉を当てさせる)
(「うめ」「パンジー」二枚のカードをみんなで読む)
「二音と四音。これを『音』(おん)の数と言うよ。板書の五七五の後に「音」の漢字を付け加える」
「では、次は6年生のお兄さんお姉さんでも間違えちゃう問題だよ。できるかな?」
 →「えーできるかな」「できるよ。早く、早く」
「何音かな?」(チューリップという文字を提示)
 →三音、四音、五音、六音…(いろいろな考えが出る)
「いろいろ出て来たぞ。一緒に指を折りながら数えてみよう。いくよ。準備はいいかな」

 こんなふうに子ども達は自然に楽しみながら指を折って音の数を数えていきました。そして「五音だ!」と発見していきました。

(3)「よし。俳句を創ろう!」
 指を折りながら音の数を数える成長した子ども達に問いかけたのは次の言葉でした。
「よし。俳句を作ろう!」
 もちろん、この言葉かけには子ども達は「エッ!」となりました。すかさず先生は
「…と言っても急には無理だよね」「これならできそう?」「言葉を入れてみようか」

・(     )ちるひらりひらりとみぎまわり
・みあげたらひまわりにせを(      )

 そうすると子ども達は、次々と意欲的に五音になる言葉を見つけていきました。この後、竪畑先生は、押野小学校の子ども達が作った朝顔の観察日記を提示して、
「『音の数』と『意味』も考えて俳句を作ろう!」
と言われて学習を展開していきました。「音の数」と「意味」も伝わるような言葉を見つけていく子ども達がそこにはいました。
 
担任の先生方、支援される先生方の愛情いっぱいのきめ細かな支えもあり、子ども達は上級生にもけっして負けない意欲で学習を進めていきました。

2 学習を終えて
 学習内容の全てを紹介したいと思うほどの充実した時間を子ども達と先生方は創りだしていきました。一人一人きらりと輝く感性の子ども達。そんな個性豊かな子ども達を、きめ細かくも、体当たりで支えておられる押野小学校の先生方。子ども一人一人の想いを温かく受け止めて学習を展開される竪畑先生のお姿。感動ある学習でした
 この後、押野小学校の1年生は、配られた竪畑先生お手製の俳句カードにいくつもの俳句を綴っていくのでしょう。1年生のみなさんが、押野小学校が長年にわたり俳句学習を受け継ぐ上級生の仲間入りを、近い将来果たしていくのかと思うとワクワクするばかりです。
 これからも子ども達の健やかな成長と先生方がご健康に留意されて歩まれることを心から願っております。押野小学校の子ども達と先生方、そして石川県児童文化協会の竪畑先生、ありがとうございました。


      




〇10月8日(日)第6回 朗読会『青春の門 自立編』

朗読: 髙輪 眞知子(朗読小屋・浅野川倶楽部代表)


 10月8日(日)第6回朗読会が、朗読小屋・浅野川倶楽部の代表 髙輪 眞知子(たかなわ まちこ)さんにより行われました。今回は「女に賭ける」「禁じられた淵に」です。

 信介は居酒屋で緒方と酒を酌み交わした時、石井の家で生活してボクシングをしていくことを打ち明けていきます。
 そして互いに酒を酌み交わすうちに「英子が信介のことを好きかどうか」を試す賭けをすることとなってしまいます。英子が信介を好きならば緒方の勝ち、そうでなければ信介の勝ちという賭けでした。二人はこの賭けを実行に移しました。なんと、英子は信介を自分の部屋の中に受け入れていくのでした。緒方は信介との賭けに勝ちました。
 しかし次の朝、駅の改札口で、信介は外泊をし朝帰りをする英子に会います。「いったいあの時の女性は誰だったのか?」と謎を深める信介がそこにいたのでした。
                 (女に賭ける)(禁じられた淵に)

 今回は、純朴な信介が英子と思われる女性に翻弄される場面でした。髙輪さんが読み終えた後、髙輪さんと観客が、戸惑いながら大人の階段を登っていく信介の心の内を思いながら、お互い笑顔となる時となりました。作家 五木寛之氏の文学作品を大切に想う髙輪さんと、髙輪さんを大切に想うみなさんとのやりとりが大変に新鮮でした。

 最後、髙輪さんには朗読小屋・浅野川倶楽部の今後の活動もお知らせいただきました。
〇朗読で彩る郷土文学の世界(令和5年11月11日から26日まで)
〇朗読者募集 (小中学生出演者募集)※常時募集
 ※詳しくは朗読小屋・浅野川倶楽部のHPをご覧ください。
★パンフレットの一部抜粋から
 『心で読む朗読ができたら。朗読で大切にしたいことは、謙虚な心で、
  あらゆる自意識から離れ、作家の想像した純粋世界にひたすら感じ
  入ること。ナンバーワンを目指すだけの朗読、技術を駆使しただけの
  朗読は作品を汚してしまう。人の痛みが分かる苦労人ほど心で読む
  朗読ができる。そんな朗読がしたくて、私たちは日々心を綺麗に
  しながら修行しています。読む人も募集しています』
 小中学生にとって「文学作品を見て、声に出して読み、その声を自分の耳で聴いて、自分の頭で考え、文学作品を理解し、文学に親しんでいく」ことは大切なことです。
 もしも公演を見たり、朗読に参加される小中学生がいれば、これほどうれしいことはありません。

 髙輪さん、そして朗読会に参加いただいたみなさん、本当にありがとうございました。いよいよ今年度の朗読会もあと2回を残すのみとなりました。
 次回は、第7回朗読会11月12日(日)14時からです。「禁じられた淵に」(後半)「織江との再会」です。ぜひご参集ください。心よりお待ちしております。

      



〇10月7日(土)金沢ナイトミュージアム『ソプラノとオルガンの夕べ』

こころのふるさとを唄うⅨ

出演:直江 学美(ソプラノ歌手)、黒瀬 恵(オルガン奏者)


 朝晩の冷え込みが厳しくなった神無月の夕べ、金沢文芸館では『ソプラノとオルガンの夕べ』を開催しました。出演は、ソプラノ歌手の直江 学美(なおえ まなみ)さん、オルガン奏者の黒瀬 恵(くろせ めぐみ)さんです。
 2014年以降、今回が9回目の出演です。今年も「こころのふるさとを唄う」として日本の唱歌を中心に披露いただきました。素晴らしき直江さんの歌声と心に染み入る黒瀬さんのオルガン演奏はもちろん、今年はみんなで輪唱や合唱をしたりと、大変に楽しいひとときとなりました。
 それでは、プログラムの紹介、そして演目から一部紹介いたします。

1 プログラム紹介♪
 ☆もみじ         作詞:高野辰之   作曲:岡野貞一
 ★前奏曲         作曲:大中寅二 ※オルガン独奏
 ☆月の砂漠        作詞:加藤まさを  作曲:佐々木すぐる
 ☆月(出た出た月が)   作詞作曲 文部省唱歌
 ☆宵待草         作詞:竹久夢二   作曲:多忠亮
 ★「主よみもとに」による即興曲 作曲:カルク=エラート ※オルガン独奏
 ☆夕焼け小焼け      作詞:中村雨紅   作曲:草川信
 ☆夕日          作詞:葛原信    作曲:室崎琴月
 ☆ふるさと(アンコール) 作詞:高野辰之   作曲:岡野貞一
   ※☆は歌とオルガン  ★はオルガン独奏

2 みんなで輪唱!楽しい時間から
 昭和4年に建てられた石作りの文芸館(国登録有形文化財)でのコンサートです。直江さんの歌声は、私たちの頭上からまさに豊かな響きとなって降り注いでくるものでした。その共鳴した響きは豊かな残響を伴って体全体を包み込んでいきました。一曲終わるごとに消え入る響きまで楽しみ、静寂なる余韻を味わっての拍手となりました。金沢文芸館は音響面でどんなホールにも負けないのでは?そんな思いを強くした演奏会となりました。
 それでは直江さんが唄われた数ある中から二曲紹介します。

 ♪「いもむし ごろごろ」(わらべ歌・遊び歌)♪
  いもむし ごろごろ/ひょうたん ぽっくりこ
 江戸時代から唄われている古いわらべ歌・遊び歌です。今でも幼稚園や保育園で唄われている所もあるようです。一列になってしゃがみ前の人の肩や腰をつかんだ状態で唄いながらしゃがんだまま前へ進んで行きます。みんなで仲良く一つになって遊ぶ微笑ましいわらべ歌です。
 直江さんは、「プログラムにはないけれど、みんなで今日は唄いませんか?「『いもむしごろごろ…』知っておられる方は手をあげて下さい。知らない人も短いので覚えちゃいましょう」と言われ、何度もみんなで唄っていきました。大きい声になったところで最後は輪唱にチャレンジです。愛らしいわらべ歌にみんな自然と笑顔になっていきます。
 コロナ禍で催しが中止になっていた時期を乗り越えてのナイトミュージアムです。みんなで喜びいっぱいの幸せな時となりました。

 
♩月「出た出た月が」(文部省唱歌)♩
  出た出た月が/まるいまるい/まんまるい/盆のような月が
 明治43年(1910年)尋常小学読本唱歌に発表された歌です。直江さんはユーモアたっぷりに「短いですよ」と言われて唄い始めました。唄い終わり一呼吸おいてにっこりと「終わりです」との声。自然と会場のみんなからも笑い声が起こりました。
 「たった27文字です。短いですから今日はみんなで一緒に歌いましょう!」「次は掛け合ってみます。こちらから半分は先に唄い、こちら半分は後から唄います。いきますよ。サン ハイ!」「上手ですね。でもつられちゃいましたよ。自分のペースで唄い切ります。サンハイ!」「……(唄い終わり静かな時)…いやあ、美しい。素晴らしいです」
 会場のみんなの元気な唄声が文芸館に響きました。みんなで唄うのは本当に久しぶりでした。幸せいっぱいの笑顔満開となりました。

3 オルガン独奏から カルク=エラートの知られざる名曲を知る!
 カルク=エラートの作品を紹介いただきました。その人と曲についての貴重なお話が黒瀬さんからありました。
 「彼は、作曲と演奏の両面で努力した人です。ただ、カルク=エラートは演奏家としてはなかなか評価されなかったようです。当時、作曲家・演奏家としても人気があったグリーグ(ピアノ協奏曲やペールギュントなど有名ですね)からは「君は作曲で活躍せよ」との助言をもらったとのことです。カルク=エラートの作曲は素晴らしく、美しく優れた作品がたくさんあります。1970年代後半からカルク=エラートの再評価が高まってきています」

 ♫カルク=エラート:「主よみもとに」による即興曲♫
 なんと、この曲はたくさんの映画で使われていると黒瀬さんから紹介いただきました。
 ・「私は貝になりたい」 ・「赤毛のアン」 ・「フランダースの犬」 
 ・「男はつらいよ」

 ・「タイタニック」(海に沈みゆく船上で弦楽団が最後まで弾いていた曲)
 私も映画「タイタニック」の場面が目の前に出てきました。たくさんの映画・ドラマで本曲が使われているとのことでした。
 そんな解説の後、黒瀬さんの演奏が始まりました。
「あっ、この曲だ。あの映画のあの場面で聴いたかも…」みなさんの顔にも、そんな懐かしき笑顔がこぼれ出しました。哀愁漂う静かで美しいオルガンのメロディに会場の誰もが心温かになりました。音楽の力ってすごいと思うばかりでした。
 なお、カルク=エラートは、足踏みオルガンを発明した人とのことです。年配の方々にとっては、学校で誰もが使ったことがある楽器です。黒瀬さんの演奏を聴きながら、みんなで子ども時代を思い出すばかりでした。カルク=エラートさんを知ることができたことは大きな喜びとなりました。

 直江さん、黒瀬さんのお力で、来館いただいたみなさんが満面の笑顔で帰路につかれていきました。日本人が大切にしてきた美しき日本の音楽、これからも私たちが大切にしていかねばならない大切な日本の文化がそこにありました。
「私たちは大切な日本の歌を唄いつないでいかなければならないのです」と、直江さんは語られていました。
 大変に充実した時を創っていただいた直江 学美さん、黒瀬 恵さん、そして長年にわたって参加いただいている皆様方、本当にありがとうございました。ぜひこの素晴らしき催しを大切に守っていかねばならないと思いました。


      




〇9月25日(月)出前講座 四十万小学校2年

金沢の民話を学ぼう

講師:神田 洋子(ひろこ)(ストーリーテラー)


 金沢市立四十万小学校に訪問しました。講師はストーリーテラーの神田 洋子さんで、金沢市の民話の語りをしていただきました。四十万小学校2年生は全員で77名です。3クラスに分けての学習となりました。
 金沢民話「飴買い幽霊」「なら梨とり」の語りを合間に手遊びを入れながらして下さいました。子ども達はテレビや紙芝居の世界と異なる「ろうそくに火を灯した民話の語りの世界」に夢中で引き込まれていました。
 語りには、子ども達が興味を惹きやすい画像はありません。語りの言葉を聴いて、頭の中で情景を映し出して理解していく世界です。そのためには、言葉を理解しようと積極的に聴いて想像を膨らませて言葉を自分の頭の中で映像化していく必要があります。
 語りは昔から大切にされてきたもので、日々、祖父母、親から耳で学んできた大切な文化です。そんな日本人の大切な文化を学んでいこうとチャレンジされている金沢市立四十万小の先生方、子ども達の姿がありました。本当に嬉しく思いました。
 それでは今回は「なら梨とり」のお話について紹介します。

・「なら梨とり」
  むかしむかし、あるところに、お母さんと3人の兄弟が暮らしていました。
 ある日、お母さんは重い病にかかってしまいました。
  「山梨が食べたい」
 とお母さんがつぶやきました。お母さん想いの3人の兄弟は何とか山梨を
 お母さんに食べさせたいと考えたのでした。


  一番上の太郎が最初に山梨採りに山へと向かいました。太郎が入って
 いくと、大きな岩があり、その岩の上にはお婆さまが座っていました。お婆さまが

  「この先の三本の枝道になっているところに笹の葉が三本生えておる。
  その葉が風に吹かれて『いけっちゃ ガサガサ』と言う方へいけ」と教えて
 くれました。

  兄の太郎は三本道で「いくなっちゃ ガサガサ」という道へ進んでしまいました。
 そして太郎は、沼の主にゲロリと飲み込まれてしまいました。


  今度は次郎が山梨を採りに山へと向かいました。次郎もお婆さまの言うことを
 聞かずに沼の主にゲロリと飲み込まれてしまいました。

  二人の兄はいくら待っても帰ってこないので、三郎も山へ向かう決心をしました。
 三郎は二人の兄とは違い、岩の上にいたお婆さまの話をよく聞きました。
 しっかり者の三郎に感心したお婆さまは、ひと振りの刀を渡しました。

  三郎は、「いけっちゃ ガサガサ」と笹の葉が葉を揺らす左の道を進みました。
 どんどん進んで沼につくと、三郎はどっさり身をつけた山梨の木を見つけました。
  「東の側はおっがねぞぉ ザラン」
  「西の側はあぶねぇぞぉ ザラン」
  「北の側は影がぁうつる ザラン」
  
「南の側から登らんさい ザラン」
 と山梨の実は唄いました。
  言われた通り、三郎は山梨の木に南側から登り、実をいっぱいもぎ採りました。
 ところがあまりに喜んだ三郎は登った反対側の北側に下りてしまいました。そして
 沼の水面に自分の姿が映ってしまいました。

  すると、沼の主が現れて、三郎をひと飲みにしてしまいました。三郎はお婆さま
 からもらった刀で沼の主を刺しました。沼の主は完全にのびてしまい、お腹の中
 からは三郎と共に太郎と次郎も出てきました。


  こうして三人はお母さんの待つ家に帰りました。兄弟が持って来た山梨を
 食べるとお母さんの病は治ってしまいました。

  そして、お母さんと兄弟三人は互いに助け合っていつまでも幸せに暮らしました
 とさ。



 子ども達にとって七尾市の伝統的な和ろうそくに火を灯してお話を聞く体験は初めてでした。伝統的な和ろうそくは、最初小さい炎であったのが、途中から炎が高く上がって揺らめき始めました。その幻想的な光景の中での「語り」となりました。神妙に神田さんの語りを聴く子ども達の姿は大変素敵でした。
 最後に、誕生月の友達が和ろうそくの火を消すこととなりました。消す前に一人一人が静かに真剣に願いごとをしています。とても静かで優しい空気が流れていました。
 普段、テレビでの華やかな映像を伴っての話を聞いている子ども達にとって、語りで昔話を聴いていくというのは難しいことであり貴重な体験かと思います。四十万小学校の2年生の皆さん、そして先生方。一生懸命に聞いてくれてありがとうございました。
 これからもみなさんが健康で心健やかに成長されますことを心から願っています。また、お会いできるのを楽しみにしています。素敵な出会いをありがとうございました。

      




〇9月16日(土) 第5回小説講座 ~小説を読む②~

短編小説の魅力について

講師: 宮嶌 公夫(『イミタチオ』同人)

 

  第5回小説講座が開催されました。講師は『イミタチオ』同人、宮嶌 公夫(みやじま きみお)先生です。テーマは「小説を読む②」についてです。
 本日は、芥川龍之介「蜜柑」と堀江敏幸・著(新潮文庫)「雪沼とその周辺」の文庫本をテキストにした講座が行われました。講座の一部を紹介します。

1 物語構造の典型的モデルについて ※大西忠治氏の理論から

 ①プロローグ   → 物語の導入部分
 ②事件の始まり  → 何かが起こり始める(X)
 ③山場の始まり  → 核心的な事柄が始まる
 ④クライマックス → 何かが変わる転換点
 ⑤山場の終わり  → 核心的な事柄が終わる
 ⑥事件の終わり  → 起こっていた何かが解決している(Y)
 ⑦エピローグ   → 物語の結末部分
 ※(X)時の状態と(Y)時の状態は異なる
   ⇒焦点化された人物の何かが変わっている


2 芥川龍之介「蜜柑」(典型的なモデルとして)
  この典型的なモデルとして芥川龍之介「蜜柑」全文を読みながら
 物語構造を学んでいきました。

 ➀プロローグ
  ・物語冒頭の主人公の心情が描かれている
   「私の頭の中には云ひやうのない疲労と倦怠とがまるで
    雪曇りの空のやうにどんよりとした影を落としてゐた」
 
➁事件の始まり
  ・何かが起こり始める
   「私の乗ってゐる二等室の戸ががらりと開いて、十三四の
    小娘が一人、あわただしくはいつて来た」

 ➂山場の始まり
  ・革新的な事柄が始まる
   「いつの間にか例の小娘が、向こう側から席を私の隣に
    移して、しきりに窓を開けようとしてゐる」

 ④クライマックス
  ・何かが変わる転換点
   「窓から半身を乗り出してゐた例の娘があの霜焼けの
    手をつとのばして、勢いよく左右に振つたと思ふと、
    たちまち心を躍らすばかり暖かな日の色に染まつてゐる
    蜜柑がおよそ五つ六つ、汽車を見送つた子供たちの上へ
    ばらばらと空から降つて来た」

 ⑤山場の終わり
  ・革新的な事柄が終わる
   「小娘は、恐らくはこれから奉公先へ赴かうとしてゐる小娘は、
    その懐に蔵してゐた幾かの蜜柑を窓から投げて、わざわざ
    踏切まで見送りに来た弟たちの労に報いたのである」

 ⑥事件の終わり
  ・起こっていた何かが解決している(Y
   「さうしてそこから、ある得体の知れない朗らかな心もちが
    湧き上がつて来るのを意識した。私は忽然と頭を挙げて、
    まるで別人を見るやうにあの小娘を注視した」
 
⑦エピローグ
  ・物語の終末部分
   「私はこの時始めて、云ひやうのない疲労と倦怠とを、
    さうしてまた不可解な、下等な、退屈な人生をわずかに
    忘れる事が出来たのである」


 宮嶌先生は、このように「起承転結」とは異なった物語構造もあることを実際の小説を使って説明して下さいました。構造に対してしっかりとした計算を持って小説作りに臨んでいくことも大切であるとの考えを示して下さいました。

 この後、堀江敏幸の「送り火」はバリエーションモデルとしての在り方をa「登場人物」、b「物語の流れ」(現在、過去1、大過去、過去Ⅱと割り振って)、c「物語の構造」と進めてどのような構造になっているかを説明していただきました。c「物語の構造」では、➁「事件の始まり」はどこにあるか? ➂「山場の始まり」はどこにあるのか? Xの状態、Yの状態とは何か?などを読み解いていきました。
 物語の構造面から小説を読み解いていくことで、小説を分析していくことの大切さ、そして自分の小説作りの際に構造を意識して臨むことの大切さを教えていただきました。
 最後に宮嶌先生から「物語を紡ぐために」と次の話がありました。
〇物語を紡ぐために
 a語り手は誰のことを語るのか?
  ⇒ 視点人物を語るのか、視点人物に語らせるのか 

 b物語を無理に進めない
  ⇒無理な展開、無理な状況は不自然さを招く

 c作品世界の奥行きは内部の有機的な関係性の中で生まれる
  ⇒必然性があるからこそ資材が織り込まれる

 d伝わる言葉を
  ⇒細部まで吟味された描写

 
本講座は、物語の構造面を読み解く力をつけることで、自分の小説作りの時、推敲の時にその力を活用していけると思いました。芥川龍之介氏は、小説「蜜柑」を書いた時、強固な構造面を考え、内容を吟味してから小説作りに臨んだのかもしれません。それは厳しい道であるかもしれません。実際、受講生からは「こんな構造を考えてから書くのは難しい」という意見も出されました。
 
ただ本講座では、小説作り時に構造面を読み解くことは欠かせない要素であることを再認識させられましたし、まずは小説作りの推敲場面では構造面を意識していくことが大切だと思いました。
 
宮嶌先生には、小説の見方に関する大切なことを学ばせていただきました。また、堀江敏幸さんの小説には今まで提示いただいた作家にはない違った味わいがありました。
 
特に小説の終わり方は堀江さんの特徴が出ていました。けっしてきれいに終わることはなく「えっここでこう終わる?……この後、主人公はどうなっていくのだろう…」と言った思いにかられて、いつまでも心の中にいろいろな想いが交錯していく、そんな余韻に浸っている自分がいました。きれいに終わらないことの大切さがあるような気がしました。
 
素晴らしい作家の小説との出会いもいただいたようです。宮嶌先生、充実した講座をありがとうございました。

 
次回の小説講座は10月21日(土)「小説の実作について②」で講師は小説家「寺本親平」氏です。
 この日が小説実作の提出〆切日です。〆切厳守での提出をお願いします。皆さんのご来館を心よりお待ちしております。
 
なお今回お渡しした寺本先生の資料は、次回10月21日(土)に使用しますので、必ずご持参ください。

      



〇9月16日(土) 第3回短歌入門講座

「歌会を楽しもう」~言葉と心のやりとり~

講師: 栂 満智子(短歌雑誌『新雪』編集委員)

 

 
 第3回短歌入門講座は「歌会を楽しもう」~言葉と心のやりとり~です。本講座が今年度の最終となります。講師は栂 満智子先生(「新雪編集委員」)で本日は歌会です。第3回講座内容の概要をお伝えします。

□歌会をしましょう!
 「自由題」「題詠 雲」の課題提出があり、文芸館で皆さんの短歌を順序バラバラに並べてまとめたプリントをもとにして歌会をしました。初心者ばかりですので今回は次のような形式で行いました。
➀栂先生が短歌を詠み上げる。
➁受講生二人を指名し感想を言う。他に意見がある方は語る。
➂栂先生から講評をいただく。
④作者が誰かをお知らせして本人から感想を言ってもらう。
 それでは受講生の短歌とそれに対しての感想を一部あげます。

1 集まってときめき聞いてときめいて1のわたしが10にもなった
  ・本講座でときめかれた心を詠んでいただき本当に嬉しく
   なりました。

  ・具体的な数字が示されていて素直であり、とっても内容が
   濃い歌ですね。

2 けふがまだ 一番涼しき 猛暑日か 張りなき蝉のたつた一鳴き
  ・鳴くことがなかった蝉が疲れぎみに一鳴きだけした様子が
   よく表現されています。

  ・7年間も土の中にいた蝉が猛暑日で鳴くこともできずに地面に
   落ちて死んでいる。何とか鳴かせてやりたいという作者の優しい
   気持ちが表れている。

3 銀色の流線型の翼持つ異形の影が降り立つ晩夏
  ・いろいろな想像ができる。でも何を表現しているのかな?
   心の中の淋しさ、心のゆれ、そんなものを感じる歌だ。

  ・異形の影は新幹線を比喩しました。私は新幹線に威圧感を
   感じます。ただ「新幹線」と表現するとポジティブな歌になって
   しまうような気がしたのです。

4 あこがれの上布を纏ひ出かけむと暑さのハードル一、二と跳び越す
  ・素晴らしい短歌です。暑さのハードルを跳び越す気持ちが実に
   上手く表現されています。上の句「上布を纏ひ出かけむと」が実に
   効果的です。

  ・ウキウキして出かけていく気持ちがよく表現されていて「一、二と
   跳び越す」エイヤッといった強い気持ちがうまく表現されているなあ。

5 ガタンゴットン誘ふがごとく夜汽車ゆく今宵は京へ翔んでみようか
  ・作者が思っていることがイメージとして見事に表現されている。
  ・オノマトペの効果的な使い方を見て音の言葉の表現っていい
   なあと思います。とっても具体的でイメージがしやすい歌です。

6 退院後光眩しい散歩道生きる喜び弾むスキップ
  ・歌を詠み、退院後のこれからも元気でおられることを心から
   願っています。

  ・素直な表現で動きがあって喜び、嬉しさを感じます。
   道が眩しく見えます。心から
おめでとう!
7 問いかける我もひとりのソクラテス思索と対話真理求めて
  ・ご自分の立ち位置から真理を求める具体的なシーンを
   書いていくと良いと思います。

  ・下の句は素直過ぎるかな。具体的に半分ひねった方が
   面白いかなあと思いました。

8 目交(まなかひ)をアゲハが一羽過りゆく初成りの()さき柚子の実辺り
  ・本当にきれいな歌です。自分にないものがあって、絵が目の前に
   見えてきます。

  ※栂先生の詠まれた歌です。視線の先に広がるアゲハ、初成りの柚子
   の実などの見た体験が描かれていきます。後に本短歌を見て映像
   が心の動きを伴い、蘇ってくる気がします。


 6番の短歌を詠まれた方はお休みだったのですが、受講生みんなが「〇さんのもやろう」と一致しての歌会を行いました。みんなで〇さんの体調が良くなられたことを喜び合う温かい歌会となりました。3回受講の受講生同士がこんなに深い絆を築かれてこられたことに感動するばかりでした。

 続いて「題詠 雲」の歌会です。時間の関係で栂先生が中心となって講評いただきました。作者の順序はバラバラです。ここでは短歌のみを紹介します。
1 崩れいく湖上の雲の一片を携え陰りの家へと還る
2 夜十時見えつ隠れつ戯れるブルームーンに幸を祈らん
3 立ち止まり雲ひとつなき空眺むわが心知る空の青さよ
4 亡きものの 煙いつしか 雲となり 見上げるものを我に返らす
5 雲雲のむくり逆立ちもくもくだ もくもくもくも空空ラララ
6 夕照のなかを伸びゆく飛行機雲やがてほどけて茜に染まる
7 2年前手術を決めた散歩道に入道雲も微笑んでいる
8 東雲のさんごの色で歩き出し 小路ぬけるとすじ雲走る

 栂 満智子先生からは、一首一首に具体的な講評とアドバイスをいただきました。
「具体的な情景が目に見える歌になっているね」「みんなから共感を得る歌ですね」「題詠の良さですね。今回、哲学の思索から抜け出て具体的な良い歌が詠まれています」「谷川俊太郎を思い出しました。〇ワールドですね」など、的確で温かな講評をいただきました。

 「3回の講座ではもの足りないと思われました」そんな声が何人もの方から聞かれました。みなさん、熱心に受講いただき、本日の歌会も温かみのあり、作者の心に寄り添っての感想が交流される充実した会となりました。
 今年度の短歌入門講座は終了しますが、来年度の講座の在り方につきまして、今年度の反省を踏まえた上でさらに充実したものとなりますよう検討してまいります。
 栂 満智子先生、ありがとうございました。そして受講生の皆様方、受講いただいたこと、心より感謝申し上げます。

      



〇9月10日(日)第5回 朗読会『青春の門 自立編』

朗読: 髙輪 眞知子(朗読小屋・浅野川倶楽部代表)



 9月10日(日)第5回朗読会が、朗読小屋・浅野川倶楽部の代表 髙輪 眞知子(たかなわ まちこ)さんにより行われました。今回は「新宿風月堂界隈」「奇妙な誘い」です。

 信介は、アルバイトのお金で学生証を返してもらうため、カオルの部屋を訪ねます。それから二人は新宿風月堂に行きコーヒーを飲みながら何気ない話をします。カオルからは「あんたは人間の根本的な問題に自然に触れているような気がする」「伊吹くんって面白い人。あなた、きっと女の子にもてるわよ」と言われます。
 そうして、信介の心の中にカオルの存在が大きくなっていったのでした。
 また大学で体育の授業に出た信介はボクシング部コーチの石井と出会います。彼に悪態をついた信介は「遠慮せず打って来い」と言われますが殴ろうとしても触れることもできずに散々な目にあいます。
 石井は「君はボクシングをやりたまえ。そうすれば生活もでき大学へも通える」と言われ、彼の自宅に呼ばれます。そこで彼から「飢えたサラブレットが必要だ」とボクシング部入りを説得されます。彼の愛人、早瀬理子が止めるのも聞かず、信介はボクシングをやる生活を引き受けていくのでした。
                 (「新宿風月堂界隈」「奇妙な誘い」)

 髙輪眞知子さんの弟子、田村紀子さんによる朗読会「滝の白糸」(泉鏡花原作)が、9月2日、本館で開催されました。田村紀子さんの入場時のスリッパの音、村越欣哉と白糸との出会いでのやりとり等、何度もやり直す厳しい指導がそこにはありました。
 そんな厳しい髙輪眞知子さんです。しかし今回、朗読前に次のように語られました。
「昨日の夜は、五木先生が夢の中に出ておいでたのです。私をニコニコとした笑顔で見てくださっておられるのです…」と。
 そういわれる髙輪さんの表情は「滝の白糸」の時の厳しさと打ってかわり、満面の笑顔となられます。青春の門「自立編」。今回の朗読も「信介が愛しくて仕方がない」といった思いがあふれ出してきます。
 朗読後に「信介、ボクシングをしていくのですかね。」と優しく語られて、それにつられてみんなもにこりと自然に笑顔になります。「また来ますね」そう言って笑顔で帰路につかれるみなさんの姿がありました。本日も充実した時でした。ありがとうございます。
 第6回朗読会は10月8日(日)14時からです。「女に賭ける」「禁じられた淵に」(途中まで)です。ぜひご参集ください。心よりお待ちしております。

      



〇9月9日(土) 第4回詩入門講座

詩の試作品合評会

講師: 中野 徹(詩誌『笛』同人)
    和田 康一郎(金城大学講師)

 

 
 今回の講座は、詩の実作品の合評会です。6人参加での合評会でした。当初の予定では井崎 外枝子先生と中野 徹先生との合評会でしたが、井崎先生の体調が優れず、和田 康一郎先生に参加いただいての会となりました。今回は7作品の内、4作品についての意見交換をしました。二人の先生方の貴重なご助言はもちろん、受講生同士の実りある意見交換もあり大変に充実した講座となりました。一部、紹介していきます。

受講生の実作詩(「」は詩の一部抜粋)から

 ➀一つの命の誕生
  「私の生命体は数か月前に/海水に似た二人の命の水/
   すなわち母はハチミツ水を/父はレモン水を注いでくれた/
   それは私の知らないところで始まっていた」

  ・テーマは面白い。今後、削る、言葉の並び等、磨いていくことが大切。
  ・読者がつまずく点がある。今後、適切な言い替えや例えが必要。
   (客観的相関物)

  ・女性らしい、そして深い表現だ。詩の入り方が説明的で小説
   みたいになってしまった。
  
※作者の想いを聞いていくごとに詩の味わい深さが伝わっていく時と
   なりました。他人が誤解しやすい表現を直して表現を磨いていく
   大切さが話し合われました。


 ②罪深いお菓子
  「キャラメルを一気に口に放り込んだ途端/ぽろりととれた
   妹の乳歯/(中略)/お母さんが雷を落としている間に/
   ひとつの乳歯がきらりと光った」

  ・最後の一行「ひとつの乳歯がきらり…」が気になる。
   お菓子のこと?母親との思い出?、乳歯のこと?
   …何を一番書きたいのかはっきりとしていないかな。

  ・キャラメルを味わう様子があると良い。詩作は余韻を楽しむこと
   が大切。

  ・心温まるエピソードだ。心の良さが伝わる詩で描写が素晴らしい。
  ※「キャラメルを一気に口に放り込んだ途端」で終わらせてしまう
   のではなく、妹がキャラメルを味わう様子を細かく描写するともっと
   詩が実感をもったものとなる等の意見交換がなされました。

 
③さくらの後悔
  「「櫻の木の下には屍体が埋まっている※」/そんな噂が
   広まって/さくらは迷惑そうに枝を揺すった。/(中略)/
   ああ/やっぱり/この地面には無数の屍体が埋まっている」

  ・梶井基次郎氏の作品引用だが自分なりの別の言葉で語ると
   良いかと思う。

  ・題「さくらの後悔」とあるが何を後悔しているのかな?
  ・新たな美の発見がある。時代時代にさくらには新しい見方がある。
   国によっても違う。

  ※さくらに対するイメージががらりと変えられるような詩だ。作者も
   今までと全く作風が異なり、すごいと思いました等、新たな詩作の
   可能性を感じる時となりました。


 ④さっちゃん
  「二つ違いの妹/遠くにお嫁に行って四十年/(中略)/
   父のこと母のこと/語りあえるただひとりの妹」

  ・詳しく姉妹のエピソードを入れていきたい。何かが足りないと
   感じる詩だ。

  ・典型的な散文の詩(普段の文章)だ。韻文の書き方を
   していきたい。

  ・作者はエピソードを語る時、そのやりとり、愛情、仲の良さが
   よくわかる。そんなエピソードこそ書いていってほしい。

  ※「散文詩でなく韻文を」との指摘がありました。言葉で語って
   いくとエピソードの山でみんなが感心するばかりでした。
   「それを詩に…」との意見交流がなされました。


 今回は、四人の作品を対象にした合評会でしたが、たくさんの方々の参加があり、実り多い充実した会となりました。一人一人の配当時間は多いかと思っていましたが、次々と出される意見に時間が足りないと感じるほどでした。
 次回は三人の受講生の作品の合評会ですが、みなさんが「ぜひとも参加して」という気持ちが溢れる講座となりました。一人一人が作者の気持ちに寄り添いながら、「こうしてみたら…」と忌憚のない意見を交流し合ったこと、そしてお二人の講師の先生から一人一人に対して厳しくも温かいご指導があったからこその会となりました。
 次回は引き続き詩実作品の二回目の合評会で10月14日(土)午後3時からです。講師の先生は、井崎 外枝子先生、中野 徹先生です。井崎先生のお身体が回復されますよう、受講生一同、文芸館スタッフは、心よりお祈り申し上げます。
 たくさんの方々のご出席をお待ちしています。

※「石川現代詩人集」(能登印刷出版部)が令和5年8月31日に
 発刊されました。
戦後78年、当地の文学土壌を広く、深く高く
 育んできた詩人48人の軌跡が書いてある435ページにわたる本です。
 一度手にとってお読みいただけたら幸いです。金沢文芸館にも一冊
 展示しますので、ぜひご覧ください。


      



〇9月9日(土) 第5回小説入門講座

小説作りの基本とは②

講師: 小網 春美(『飢餓祭』同人)

 

 
 小網先生の体全体から小説作りへの情熱が溢れ出る講座となりました。受講生も小網先生の講義を一言一句も聞き漏らさないという思い溢れる講座となりました。
 
講座の一部となりますが、紹介いたします。

■講座内容
 話の内容は多岐・多様・多方面にわたりました。次の内容について紹介します。
 
1 「書き出し」と「結び」は作品の心臓部だ。
 2 「描写」と「説明」は異なる。
 3 「小説づくり」の基本とは?
  ・キャラクター設定  ・タイトル設定  ・小説とテレビ、映画との違いは?
 4 小説作りに挑む受講生へ

1 「書き出し」と「結び」は作品の心臓部だ。
 (1)「書き出し」とは?
   ・作品の心臓部を感じるのが書き出しだ。
   ・永井龍男は会話文から効果的な始まりをねらった。
    垣根を作らない入り方だ。

   ・風景描写は避けた方が良いといわれる場合が多い。
   ・力を入れて書いたら、時間をおいて冷静に読み直すことが
    大切。

 (2)「結び」とは?
   ・言いたいこと10の内8で書くつもりで。思い切り捨てることも
    大切。

   ・きれいに終わり過ぎない。
    余韻を残すことが大切だ。(特に短編小説は)

    「えっこれで終わりなの?」と思わせることで余韻が
    生まれることがある

   ・「書き出し」と「結び」を関連させるかどうかはご自身の判断で
    決める。

    ※両者が関連する場合「円環構成」とも言う。

2 「描写」と「説明」は異なる。
 (1)描写と説明について
   ・描写…小説の肉付けとなる
       小説の深まるかどうかは「描写」で決する
       「描写」は作者の眼を通したもの
       「描写」は作者の主観が表れたもの
   ・説明…作者の眼を通していないもの
 (2)描写について
   ➀自然描写…生の自分の眼で見たことを書くのが大切
         ▲美しい

   ②心理描写…心の中を描く描写。人間を描く、心の中をのぞく
         表面に見えない裏側の心のひだを覗かなきゃだめだ。
   
➂人間描写…家の間取りを全部描いてみること。
         階段のある場所で小説の描き方は変わってくる。

3 「小説づくり」の基本とは?
 
(1)キャラクター設定では?
   
・印象に残る個性を持たせること
   
・主人公の登場は早めに
   
・服装、持ち物、見た目、癖、匂い、声など
   
・有名人に似せる▲ 美人▲ ◎人に頼らない。
    ◎自分のイメージで書く

    
※川端康成の雪国冒頭部、永井龍男、三浦哲郎など
     から学ぶ。

     チェーホフ…「魚を書くなら魚の棲む水を書くことだ」
   
・名前の付け方…自分の子どもにつけるのと同じ気持ちで。
     
キラキラネーム▲ 名前は凝ってつける
 
(2)タイトル設定では?
   
・小道具を使うのも一つの手(芥川龍之介「蜜柑」)
   
・小説の空間づくりをする
 
(3)小説とテレビ、映画との違いは?
   
・小説とは想像力をかきたてるもの
   
・行間を読むものが小説だ
   
・テレビは見えるものは一つだ。小説は人により見えるもの
    が違う。

   ・テレビ、映画はむこうからやってくるもの。小説はこちらから入り
    込んでいくもの

   
・ワンランク上の小説とは読み手の想像をかきたてるものだ。

4 小説作りに挑む受講生へ −私の小説作りから−
   
・努力したものはけっしてなくならない。無駄にならない。
   ・地道にコツコツと歩むことで「感動する小説」へとつながる
   ・こじんまりとまとめてしまうことはしていけない。
   ・志賀直哉「小僧の神様」、森鴎外「高瀬舟」「山椒大夫」
    芥川龍之介「鼻」など

    
若い時は我慢してでも読んでもらいたい。
    (受講した高校生へのメッセージ)

   ・永井龍男、三浦哲郎、安岡章太郎、吉行淳之介なども読み
    込むと良い。

   
・宮本輝「魂がふるえる時」、川端康成「掌の小説」、ヘミングウェイ
    等にも触れよう

   
※これらの作品は金沢文芸館にも所蔵しています。
    ぜひ、お読みください。


 小網春美先生の講座は、1時間30分間にわたり留まることがない、心から湧き出でる話となりました。また前回の受講生の質問にも、ご自身の小説家としての体験を交えながら話をしてくださいました。
 受講生のみなさんの熱気もすごく、うなずき、感慨深げに小網先生のお話に聴き入っておられました。大変に充実した講座となりました。小網春美先生、受講生のみなさん、本当にありがとうございました。
 次回、第6回講座は10月14日(土)「推敲のポイント」で講師は高山敏先生です。皆様の参加をお待ちしています。なお、次回は小説入門講座の小説の実作の提出〆切日となっています。原稿〆切厳守となります。提出の方、よろしくお願いいたします。

      



〇9月2日(土)金沢ナイトミュージアム『朗読会 滝の白糸』

出演: 田村 紀子(朗読小屋 浅野川倶楽部)


 今宵のナイトミュージアムは「朗読小屋 浅野川倶楽部」田村紀子さんによる朗読会です。演目は「滝の白糸」です。
 まず、「滝の白糸」の演目、次に朗読小屋 浅野川倶楽部における「滝の白糸」の上演の歴史、最期に「田村紀子さんの朗読」について紹介します。

〇泉鏡花 原作『滝の白糸』について
 
「義血侠血」がもとになっています。「義血侠血」は明治27年、泉鏡花21歳の作品です。初稿を見た師匠「尾崎紅葉」は泉鏡花に手紙を送っています。(一部を紹介します)『見所之ありそうらへば、十分加筆の上世間に見せむとおもひ候が、趣向に無理なる所も見え文章未だ到らざる所多く、彼此ひまどり申すべきか、しかしかなりの出来の中なり』深い愛情が感じられる手紙で、一番弟子の泉鏡花の才能を認め、大きな期待を寄せる紅葉がいます。尾崎紅葉は泉鏡花の初稿に真っ赤になるまでの添削を行います。
 そして読売新聞に掲載された「義血侠血」。その作品は、翌年、川上音二郎一座により新派劇「滝の白糸」として初演されます。
 ちなみに、今回の浅野川倶楽部の朗読原稿は、日本の劇作家で泉鏡花記念金沢市民文学賞を受賞されている「松田章一」氏によるものです。

〇朗読小屋 浅野川倶楽部の「滝の白糸」上演の歴史について
 (一部紹介です)

 
2000年から第1回浅野川倶楽部の出前朗読劇が始まりました。演目は泉鏡花作「湯島の境内」でした。そして2002年から「滝の白糸」の朗読劇が入ってきます。たくさんの演目の中「滝の白糸」上演数を紹介します。2002年から2010年までの紹介をすると、「滝の白糸」の公演数は68公演、来場者数5629人となります。この人数は、今の金沢市中学生全生徒数の半数以上にあたる数です。
 泉鏡花原作「滝の白糸」は彼の名作の一つであり、金沢市民、石川県民にとって広く知れわたっていて、今も市民、県民に深く愛され続けている作品です。
 しかし、その作品は、自然に知れわたり愛されるようになったのでしょうか。それはあたっていないと考えます。朗読小屋 浅野川倶楽部の髙輪眞知子さん、表川なおきさんを核とした倶楽部員のたゆまない懸命な努力があってこそ、なし得ていることなのかと思います。

〇「田村紀子」さんが創り出された「滝の白糸」の世界は
 髙輪眞知子さんはこう語られました。「うちの倶楽部は、みんな一生懸命に朗読に取り組んでくれる人達です。そんな中で田村紀子さんは、長年、コツコツと根気強く朗読に取り組み続けてきた人なんです」と。
 田村紀子さんの朗読は、長年の修行からなし得る作品世界の探求と創造に満ちあふれたものでした。
 「白糸を抱きかかえ馬に乗り人力車を追い抜いた村越欣弥に対する白糸の一途な想い」
 「『白糸は欣弥が立派な人間になるまで支えていくこと』『欣弥は親類のような血のつながりを持っていくこと』を約束し合う二人の心」
 「『検事として事実を隠さずに述べることを白糸に説く欣弥』『真実を隠さず検事になった欣弥に申し述べて死刑宣告を受ける白糸』約束を貫き通す法廷での迫真のやり取り」
 「最後に自殺する道を自らが選んだ欣弥の白糸への一途な想い」
 各場面ごとに私たちの心に食い入る田村紀子さんの朗読がありました。二人に対する複雑な想いが絡み合い、田村さんが創り出す朗読世界に入り込んでいくばかりでした。
 聞き終えた後も余韻に浸りながらもふと我に返り万雷の拍手をする私たちがいました。

 ずいぶん前となりますが「田村さんは修行中の身ですから花束の用意は必要ありません」と言われた髙輪眞知子さんでした。当日のリハーサルでも厳しくも温かい指導が続きました。入場する時の履物の音一つにしても何度もやり直しが入りました。芸の道とはこれほどまでに厳しいものなのかと思うばかりでした。
 そして朗読を聞き終えて改めて感じ入ったのは、泉鏡花の作り出す作品世界の奥深さでした。

 今回、髙輪さんのお弟子さんにあたる田村紀子さんが朗読会「滝の白糸」を上演されたことは、今後の金沢市、石川県の文芸文化において大きな意義を持つものだと感じました。「何もしなければ文化は廃れる。文芸文化は、努力、精進してこそ継承・発展していくものだ」と感じました。
 これも、髙輪さんはもちろん、田村紀子さんの長年の研鑚、観客のみなさんの温かいまなざしがあればこそだと思います。田村紀子さん、朗読小屋浅野川倶楽部の皆様、そして来場いただいた皆様方、本当にありがとうございました。


      



〇8月26日(土)金沢ナイトミュージアム『大野川』

~朗読と笛と三味線で楽しむ~

出演: 玉井明日子(朗読)・藤舎眞衣(笛)・千本民枝(三味線)


 本日の演目は、川端甚一作「大野川」です。満席のお客様にお越しいただいての開演となりました。ありがとうございました。
 本作品「大野川」は、川端甚一氏が昭和54年に自費出版したものです。100年前の大野町やそこに生きた人々の様子が生き生きと描かれています。作者 川端甚一氏は、三味線の千本民枝さんの祖父にあたります。千本民枝さんの三味線、藤舎眞衣さんの笛、そして玉井明日子さんの朗読での共演となりました。今宵の「大野川」は、まさに世界初演であり、大変に貴重な時となりました。まずは出演者の方々の紹介、続いて演目の紹介をしていきます。

◆出演者の紹介
 〇玉井明日子さん(朗読)
  ・金沢の様々な民話を金沢弁で語る語り手として、様々な
   作品を各方面のアーティストとコラボしての朗読会もされて
   います。他、イラストレーターでもあり、近年では動画制作
   も手掛けられています。たくさんの作品が紹介されています。

 〇藤舎眞衣さん(笛)
  ・平成16年金沢市文化活動賞、平成18年北國芸能賞、
   平成28年石川県文化奨励賞を受賞されています。笛を
   中川善雄師に師事し、ご自身は、北國新聞文化センター、
   金沢素囃子子ども塾の講師も務め、後進を積極的に行って
   おられます。

 〇千本民枝さん(三味線)
  ・祖父母の影響で8歳より三味線を始め、金沢市内で端唄・
   三味線の指導にあたられています。端唄を千本扇民に、
   新内を富士松鶴千代に師事しています。平成25年より
   『和LIVE』活動を各所で開催しておられます。北陸中日
   文化センターの講師も務めておられます。


◆本日の演目「大野川」川端甚一/作 について
 ◇「郷土文化抄」より 順風満帆
   〇笛・無題 作曲/藤舎眞衣
 ◇鰯船と干鰯(ほしか)
   〇大野小唄(千本民枝)
 ◇鯖の大量とシラスの遡上
   〇官女(千本民枝)
 ◇「大野川」より 烈女
   〇米洗い(千本民枝)
 ◇奉納相撲
   〇相撲甚句(千本民枝)
 ◇結婚・離婚・再婚
   〇なごみ月 作曲/藤舎眞衣
   〇春はうれしや(千本民枝)
   〇秋の香りする夜 作曲/藤舎眞衣
   〇千扇小唄(玉井明日子、藤舎眞衣、千本民枝)

 川端甚一作「大野川」は、449ページにわたる大作です。今回、玉井明日子さんが「大野川」から6つの場面を選んで新たに構成されました。今回は、その中でも『「郷土文化抄」より順風満帆』『鰯船と干鰯』と『奉納相撲』を紹介します。

 
◇順風満帆・鰯船と干鰯(ほしか)
   川端甚一は明治末に大野町に生まれ、大正、昭和にわたり大野町で
  活躍された方です。
甚一の父は、小さな帆船を持ち、春4月から10月
  終わりにかけて能登通いをする。ここ大野川には十数隻の帆船が出航
  していく。次から次へと帆を張って海へ出ていく。

   帆船が河口に出るのには技術がいる。二、三十人ほどの艀(はしけ)
  の人達が東岸に
待機して艀衆が旗で水先案内をする。でも浅瀬に
  乗り上げようとすると、皆が川へ飛び込み、船の船尾を担いで皆で押し
  出す。

   船が冲へ出て、満帆、風を孕んだ頃、船尾に立った父が座板を
  高く掲げて「オーイ」と分かれの合図をする。陸では、祖父母と私が両手
  を上げて「オーイ、いいがにいってらっしゃーい」と声をかぎりに叫び
  ながら、海上安全を祈って見送る。

   祖母はいつも両手を合せて「南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏」と称え
  ながら砂の上を
跣(はだし)で歩き廻っていた。老いの眼に涙を浮かべ
  ながら…。

   そしていつまで、いつまでも、水平線に帆影が見えなくなるまでも…。
                  (「順風満帆」から抜粋)

  〇藤舎眞衣さんが笛で「凪」(藤舎眞衣さん作曲)を演奏
  〇千本民枝さんが三味線と小唄で「大野小唄」を披露
 ※大野川の凪の様子が見えるような艶やかな笛の音色。航海の無事を
  願う家族の祈りと
人々の息づかいが表現されているような「凪」です。
 ※「アアー 加賀の大野は港の町よ …… 音に聞こえた 味自慢♪」
  大野の町の人々の活気ある行き交い、そして醤油の香りが香ってくる
  千本さんの三味線と小唄による「大野小唄」です。


 ◇奉納相撲
   船が難破し、裸一貫で命からがら福浦港に泳ぎ着いた祖父は脛の骨を
  折っていた。治療をし、温泉療養した祖父。傷もだいぶ癒えた頃、福浦港
  の祭礼見物に行き、奉納相撲に出る。江戸相撲力士もたくさんいる中、
  取る者、取る者のまわしをつかんで、まるで麻幹のように振り回して、土俵
  の外へ放り出したそうである。

   遂に大関をとって、大野の船方連中が祖父を胴上げして担いだまま、
  宿まで帰って来た。祖父の父 甚吉から祖父はこっぴどく叱られた。

   地元大野の祭り、おとなしく見物席に座っていた甚作。同僚の
  強い勧めで、又、土俵に上がってしまった。そしてまたまた大関をとったの
  である。

   船方連中に胴上げされて、家まで土つかずに帰った。火のように
  怒った父 甚作は、取って来た大関の太い孟宗竹をナタで叩き
  割ってしまった。

                  (「奉納相撲」から一部抜粋)
  〇千本民枝さんが「相撲甚句」を、端唄と三味線で披露しました。
 ※川端甚一の父 甚作が相撲で大関になって船方連中に胴上げされて
  家に帰る勇猛な
場面です。千本民枝さんはそんな光景を熱気
  あふれる唄と三味線で再現しました。


 どの場面も心の中に蘇ると感動があふれてきて、とても言葉では語り尽くせないものでした。他、藤舎眞衣さんの「なごみ月」「秋の香りする夜」(共に藤舎眞衣作曲)」は川端甚一の心穏やかな想い、また民子さんとの新しい生活が大河のような流れで優しさを伴った笛の音色で表現いただきました。
 そして千本民枝さんの「春はうれしや」では、甚一の民子との幸せな出会いをこれ以上ないくらいの喜びの表現を三味と唄でしていただきました。会場いっぱいに幸せの春風が桜吹雪と共に吹きこんでくるような気がしました。
 フィナーレは、玉井さん、藤舎さん、千本さんによる「千扇小唄」は、まさに「大野川」の壮麗な大団円となりました。
「エー 加賀の金沢城下町 百万石の芸どころ 桜が吹雪く 兼六に♪ 今じゃ端唄の 花が咲く 千扇小唄で ヨイトナ ソレ ヨーイトナ♪」
 フィナーレは観客の拍手に包まれました。世界初演の「大野川」は大きな感動を観客のみなさんに届けてくれました。
 まさに「大野川」(川端甚一作)が歴史の回顧にとどまらず、今、新たな創作文芸として蘇った貴重な場となりました。玉井さんが語る美しき金沢弁が表現する大野町の温かき人情が、藤舎さんの笛と千本さんの唄・三味線の音色を伴って表現されました。
 ご来館いただいた皆様、玉井明日子さん、藤舎眞衣さん、千本民枝さん、素晴らしい時を共有させていただきました。本当に素晴らしき時間をありがとうございました。

      



〇8月25日(金)出前講座 玄門寺幼稚園年中児

おはなしの会を楽しもう

講師:澤崎 知子(金沢おはなしの会)
   志村 由紀子(金沢おはなしの会)


 東山・卯辰山寺院群にある玄門寺幼稚園を訪問しました。浄土宗の本寺には、金沢4大仏として有名な「阿弥陀如来立像」があります。大きな光背のついた、煌びやかな寄木造の1丈6尺の黄金に輝く大仏です。また、天井には龍図があります。丸山応挙に学んだ仙台藩御用絵師の東東洋(あずまとうよう)により描かれたものです。
 そんな由緒あるお寺で学ぶ健やかな年中児40名です。2組に分けて二人の先生で実施しました。
 講師は金沢おはなし会の澤崎知子さんと志村由紀子さんです。

◆プログラムA【澤崎知子さん】
 ①手遊び「1本と1本で」
 ②絵本 「あつい あつい」 垂石眞子作 福音館書店
 
③絵本 「すいかをどうぞ」 笠野裕一作 福音館書店
 ④手遊び「いちじくにんじん」
 ⑤絵本 「コッケモーモー」 ジュリエット・ダラス=コンテ作 徳間書店
 ⑥手遊び「1、2、3、2の4の5」
 ⑦お話 「カラスの親子」
 ⑧さよならあんころもち

◆プログラムB【志村由紀子さん】
 ①お話 「めのまどあけろ」 谷川俊太郎作 福音館書店
 ②お話 「カラスの親子」
 ③絵本 「すいかをどうぞ」 笠野裕一作 福音館書店
 ④童歌 「やなぎのしたには」
 ⑤絵本 「オバケ?ホント!」 岡田善敬作 福音館書店
 ⑥お話 「おばけとモモちゃん」 松谷みよこ作 講談社
 ⑦さよならあんころもち

●プログラムから一部紹介します。
〇お話「めのまどあけろ」
 ♪目のまどあけろ ♪おひさままってるぞ
 ♪耳のまどあけろ ♪だれかがうたってる
 ♪鼻のまどあけろ ♪おみおつけいいにおい
 ♪口のまどあけて ♪お・は・よ・う
 ※子どもたちは一回目からにこにこ笑顔全開、そして2回目にはもう
  自分で手で目や耳や鼻に手を添えて自然に笑顔で歌い出します。
  その感受性の豊かさに驚かされるばかりです。


〇童歌「やなぎのしたには」
 ♫柳の下には/おばけが う、う
 ♫おばけのあとからおけやさんが/おけ、おけ
 ♫おれやさんのあとから/おまわりさんがえっへんぷ
 ♫おまわりさんのあとから/いたずらぼうずがじゃんけんぽん
 ※いつのまにか先生に合わせて友達同士が顔を見合わせながら
  動作を始める子どもたち。
見合わせる顔がなんとも言えない
  温かな顔、顔、顔。慈愛溢れる子どもたちです。


〇コッケモーモー
  ある朝、おんどりが息を大きく吸って鳴きます
  コッケモーモー!/コッケガーガー!/コッケブーブー!/
  コッケメーメー

  鳴き方を忘れてすっかり悲しくなったおんどりです。
  そんなある晩、メンドリ小屋を狙うキツネに気が付いたおんどりが
  大活躍をします。

 ※子どもたちは最初のコッケモーモーでもう大きな笑い声が部屋
  中に響きました。いろいろな鳴き声にみんなで大笑いです。
  絵本を読む楽しさが心にしっかりと根付いている園児の姿に驚く
  ばかりです。


 他にも、手袋シアター「カラスの親子」では、左手袋は5人兄弟のカラスの子どもたち(すべて一羽ずつの子カラスのかわいい顔が手袋に刺繍されている)、そして右手袋は優しいお母さんカラス(親指は頭、他の4本の指は優しい羽を表している)を表現しての親子の掛け合いは何とも言えず温かいものでした。
 もう子どもたちは自分たちがまるで子カラスになったように、にこにこ甘え顔でおうちの方の愛情を自分たちが受けているような喜びようでした。「お話してくれなきゃ眠れない」「お歌うたってくれなきゃ眠れない」の子カラスのセリフには何とも言えない温かい柔らかな風が部屋の中に吹いているのを感じるほどでした。みんなで笑顔を確認し合っている友達想いの優しい子どもたちがそこにはいました。

 金沢おはなしの会の澤崎さん、志村さんの熟練の技術と周到な準備、そしてつい先日に発刊された本(「すいかをどうぞ))を使っての読み聞かせをしてくださるなど、大きな配慮をいただいての読み聞かせとなりました。
 
金沢おはなしの会の皆様、玄門寺幼稚園の先生方、そして園児の皆さん、素敵な出会い
をありがとうございました。今後も玄門寺幼稚園の子どもたちの健やかな成長を心から願っています。

      




     澤崎 知子さん




     志村 由紀子さん

〇8月24日(木)夏休みイベント/子ども博物館セミナー

のまりんの紙芝居劇場

演じ手: 野間 成之【のまりん(のまひょうしぎの会代表)】


 今年は二部構成とし、一部は一般参加者、清泉幼稚園の皆さん、二部はまことこども園、馬場児童クラブの皆さんに「のまりんの紙芝居劇場」を楽しんでもらいました。
 演目は、次の通りです。
 ・さるじぞう
 ・わっしょいわっしょい ぶんぶんぶん
 ・おりますのります チンチンでんしゃ
 ・まんまるまんまたんたかたん
 拍子木をマイク代わりに、のまりんの歌声と踊りで始まった「紙芝居劇場」。「ようこそここへ♪クッククック…♪私はのまりんだ♩」最初の一声で、会場は笑い声に包まれました。もう子どもたちは「のまりんの紙芝居の世界」に引き込まれてしまいました。
 それでは、のまりんの紙芝居の様子を紹介します。あらすじは一部のみです。

〇さるじぞう
 ・おじいさんの弁当をみんなで楽しく食べてしまったおさるさんたちです。
  おじいさんをお地蔵様と間違えたおさるさんたち。川向こうのお堂へ
  おまつりしようと「♪さるのおしりはぬらしても、じぞうのおしりはぬら
  すなよ♪」と、はやし唄を歌いながらおじいさんを抱えて川を
  渡って行きます……。

 ※のまりんの楽しい歌声と豊かな表情に子どもたちは大笑いです。
  働き者のおじいさんと欲張りなおじいさんが登場する昔話ですが、
  紙芝居の世界にすっかり引き込まれていく子どもたちがいました。


〇わっしょいわっしょい ぶんぶんぶん
 ・音楽好きの楽しい国へいじわるなこわい悪魔がやってきました。
  大切な楽器を盗み、人々が道具や動物で音楽を楽しむと、
  それも奪っていきます……。

 ※子どもたちは手に汗を握って真剣そのものです。悪魔に楽器を
  取り上げられても、国の人々は自分たちで工夫をしながら悪魔
  に立ち向かっていきます。「ワッショイ♪ ワッショイ♪ ブンブン
  ブン♪ぼくの私の楽しみは…♪」のまりんの元気いっぱいの歌声
  は、参加者全員に勇気を与えていきました。登場人物と同じ
  気持ちで悪魔に立ち向かっていく正義感あふれる子どもたちが
  そこにはいました。


〇おりますのります チンチンでんしゃ
 ・「チンチン電車は今日も走る♪ 走る♪ ぼくらをのせて
  走るよ♪」

  軽快なのまりんの歌でスタートした紙芝居です。動物たちが
  繰り広げる楽しく優し
い心配りがとても印象的な紙芝居です。
 ※ワニが電車から降りたり、パンダがたくさんの子どもたちを連れて
  乗ってきたり、一場面ごとに歓声をあげて盛り上がる子どもたち。
  カバが乗るために他の動物がみんな自然に降りてしまうところは、
  その優しさにほっこりするみんながいました。

〇まんまるまんまたんたかたん
 ・参加している子どもたちと力合わせて手拍子をすることで、
  大きなへびは目を回してしまい、まんまるまんまはおじいさんの
  ところへ手紙を届けることに成功します。

 ※「まんまるまんま」「たんたかたん!」と力合わせて一生懸命手
  拍子をした子どもたちはみんな満足した笑顔です。「まんまんる
  まんま」「会場の友達もんな」「のまりん」と力合わせた紙芝居
  劇場は、子どもたちにとって一生忘れられない思い出になったようです。


 「紙芝居は日本にしかないんだよ」というのまりんの言葉に驚く子どもたち。「ほかの国の人にも教えてあげたいね」「こんなに面白いのにね」という声が聞こえました。紙芝居が終了しても、のまりんのところに集まってお話する子が絶えませんでした。
 『みんなにとって大切なことは「甘えること」「遊ぶこと」「食べること」「眠ること」…』と語ったのまりんです。おうちの人からはけっして言われたことがないだろう言葉をのまりんからもらった子どもたちでした。
 のまりんは様々な笑いを通して「みんなにとって大切なことはね…」と問いかけてくれているように思いました。たくさんの子らが「来年も来ますね」と笑顔で帰路につかれました。
 今年度はたくさんの方々に参加いただきました。ぜひ来年度もたくさんの申し込みをお待ちしています。
 のまりん、参加いただいたみなさま、猛暑と土砂降りの中、本当にありがとうございました。またお待ちしています。


      



〇8月19日(土) 第4回小説講座 ~小説を読む①~

短編小説の魅力について

講師: 皆川 有子(『櫻坂』同人)

 

 
 第4回小説講座が開催されました。講師は文学誌『櫻坂』同人 皆川 有子(みながわゆうこ)先生です。テーマは「小説を読む①について」です。
 受講生一人一人が「TUGUMI」吉本ばなな・著(中公文庫)の文庫本をテキストにした講座が行われました。講座の一部を紹介します。作品引用部は「TUGUMI」吉本ばなな・著(中公文庫)です。

◆吉本氏ばなな氏の小説の優れたところは?
 ○鮮烈な出だしが印象的である
  ・「確かにつぐみは、いやな女の子だった」
  ⇒この出だしは鮮烈で印象的。最初の一文でもう読み手を
   惹きつけている。

 ○比喩表現が巧みで、面白さが際立っている。
  ・「怒りはやってきた一瞬の後に、波がひいてゆくように砂地に
   吸いこまれてしまう」

  ・「愛情はいくらだって注げる、まるで日本国の水道のように、
   いくら出しっ放しにしてもきっとつきない、そんな気がするものね。
   と何でだかふと思ってしまったのだ」

  ⇒見事な比喩表現だ。自分に語りかけている表現も魅力的である。
 ○表現(引っ越し作業)一つにも並々ならぬ工夫と苦労がある。
  ・「それはきらきらと美しい、胸の痛む作業だった。波によく似ていた。
   さけがたいけれど決して不幸ではない自然な別離の、そういう作業の
   どこにいてもふと立ち止まると、つらさよりももっと切なくてどきどきする
   ような感情が、胸のうちに絶えまなく寄せてきていることを知るのだ」

  ⇒引っ越し作業を海の波に例えて表現している。こんな表現は何気なく
   生まれるものではない。よく考えこまれ、苦労の末に生み出されたものだ。

 ○普遍性ある世界観が登場人物(父はじめ全て)の言葉に表れる。
  ・「恋っていうのは、気がついた時にはしちゃっているものなんだよ、いくつに
   なって
もね。しかし、終わりが見えるものと、見えないものにきっぱりと分かれ
   ている、
それは自分がいちばんよくわかっているはずのことだ。見えない場合
   は、大がかりになるしるしだね。うちの今の妻と知りあった時、突如未来が
   無限に感じられるようになった。だから別にいっしょにならなくてもよかった
   のかもしれないね

  ⇒登場人物一人一人に吉本ばななさんの世界観が反映されている。
   最後の一文はうんと考えさせられる言葉だ。工夫を重ねて苦労して生み
   出された小説なんだ。

 ○優れた感受性が豊かな表現力を生む。
  
・「山本屋の広いたたみに、白くぬいた大きな花柄がよく映える浴衣の紺を
   広げ、赤や
ピンクのいかにも安っぽい、てかてかした帯を合わせる。私が
   つぐみに赤い帯をしめた。そんな時、つぐみの細さを実感する。どこまでも
   しめたその先に闇があるような、手の中にするりと固い帯が残るだけのような
   気がして、瞬間ぎくりとする」

  
⇒「帯のしめたその先に闇が…」とはなんという感受性なのか。言葉に作者
   の感受性がきらめいて、豊かな表現となっている。それを私たちは学んで
   いきたい。

 〇人を想う心がその表現を通して複雑な感情として伝わってくるすごさがある。

  ・「「俺ね、あの子のことを考えていると、いつの間にか巨大なことを考えて
   しまっている時があるんだ」恭一が告白のようにふいにそう言った。
   「考えがいつの間にか、とてつもなく大きいことにつながっている。
   人生とか、死とか。別に、あの子が体弱いからではないんだ。あの目を
   見ていると、あの生き方を見ていると、何とはなしに厳粛な気分になって
   いるんだ」」(恭一が語るつぐみへの想い)

  
⇒恭一のつぐみへの想いは単純なものとして読み手に伝わってこない。
   「明確ではなくとも、何となく伝わってる」そんな表現のすごさがある。


 
他にも皆川先生の提示があり、受講生はそれらの表現への想いを交流していきました。「つぐみが最終場面で『今は死ぬのが怖い』と言っている。つぐみの心情の変化はどうして生まれたのか?」
「ラストを『つぐみが死ぬ』という安直なもの自分ならしてしまいがちなのだが、そうしていない本小説の素晴らしさを感じたい」
など、彼女の小説の素晴らしさを実感する時間となりました。
 
本小説は「つぐみの手紙」で終わります。その場面で皆川先生はこう言われました。
「最後の手紙文はつぐみのイノセントな心に満ちている。彼女の心は善意に満ちたものと言っていいのではないか」と。
 
死を覚悟して書いたつぐみの手紙ですが、つぐみは病状が回復していきます。吉本さんは安直で陳腐なつぐみの死を選択しませんでした。それだからこそ、より充実した小説となったように思います。本講座では受講生らが吉本ばななさんの筆力に感心する時間となりました。今後、受講生のみなさんの血肉となり小説づくりの一助になっていくと思われました。
 
今回、来館されるだけでも危険と言える猛暑日のため、来館できなかった方もおられたことと思います。どうか、お身体をご自愛いただき、次回、貴重な講座の機会に参加いただくことを楽しみにしております。

 
次回、第5回小説講座「小説を読む②」は、9月16日(土)です。講師は、宮嶌公夫(「イミタチオ)同人)先生です。参考図書は「雪沼とその周辺」堀江敏幸です。皆様のご参加をお待ちしています。

      



〇8月19日(土) 第2回短歌入門講座

「歌を詠む-感動を言葉に」  ~言葉はこころ~

講師: 栂 満智子(短歌雑誌「新雪」同人)

 

 
 第2回短歌入門講座は「歌を詠む−感動を言葉に」です。講師は、栂 満智子先生(「新雪編集委員」)です。第2回講座内容の概要をお伝えします。

□短歌を作ってみましょう!
 1 ときめきを見つけよう。
  ・「喜び、怒り、悲しみ、楽しみ+感動、希望、憧れ、驚き」を言葉にして
   みましょう

        
  ・言葉を探す。さらには詩情のある言葉に変換する
  ・歌はカタルシス(浄化)とも言われる。
        

  ・「つぶやきを入れる器に丁度いい三十一文字にわたしを仕舞う」
      
(第三十九回石川県歌人協会大会 日本歌人クラブ会長賞)
 2 貴方も呟いてみよう
  ・つぶやきの中から生まれてくる詩的な言葉や、お気に入りの言葉を
   キャッチする。

   魅力的な言葉やフレーズを捕まえる。
 3 日常の中からも感動を見つけて歌にしよう。
  ・花が咲いた。鳥が鳴いている。可愛い小学生が歩いている。
 4 出来上がった短歌を声に出して読んでみましょう。
  ・読み上げやすい? 愛唱性ある歌が好まれます。
   リフレインや韻も踏んでみよう

 5 短歌を声に出して読みあげるうちに新たな気づきが。
  ・詠んで見てもらう。同人誌に発表する。歌会。

□心をうたに−ときめきを歌に
 〇喜びのうた
  清水へ祇園をよぎる桜月夜こよひ逢ふ人みなうつくしき
                            与謝野晶子

 〇怒りのうた
  一本の冬薔薇の白極まれり忿懣やるかたなき目交(まなかひ)に
                            北西佐和子

 〇哀しみ(悲しみ)のうた
  悲しみがいつか私をつよくする 今朝の心のペンキぬりたて
                            俵  万智

 〇愛のうた
  
幾億の生命の末に生れたる二つの心そと並びけり
                            柳原 白蓮

 〇青春のうた
  一粒の向日葵の種をまきしのみに荒野をわれの処女地と呼びき
                            寺山 修司

 〇旅の歌
  立ち別れいなばの山の峰に生ふるまつとし聞かば今帰り来む
                            在原 業平

 
※他にもたくさんの短歌を紹介していただきました。

□受講生のみなさんもときめきをもとに短歌を詠んでみましょう
 一人一人が紹介したときめきをもとに、受講生が5分間ほどで詠まれた
 短歌です。

 ・憧れを失くしましょうと大谷はトキメク気持ち全国民へ
 ・白茶けた真昼の街を腐乱した魚の眼がかみくだく
 ・スーダンの戦禍逃れし日々消えずタラップ下りるスニーカーの汚れ
 ・風吹いた汗と疲れがとんでいく見上げた空に太陽と月
 ・あれがそう過去へと走る夜汽車ならこぼれし夢をすくってみたい
 ・考えて考え抜いて見きわめる善と悪の境界線
 ・誰ひとり遊ぶ子のなき公園の熱き道具も猛暑を耐ふ

 急な話でしたが、5分間ほど時間をおいて一人ずつが白板に自作の短歌を書いていかれました。この後、栂先生からの講評と推敲がありました。一人一人の歌に受講生みんなが心惹かれながら読み味わう貴重な時間となりました。講座の初めは緊張感ある空気感でしたが講座の終了時には和やかな雰囲気で、一人一人が打ち解けて意見を交流し合う姿がありました。講座が終わってみんな笑顔で帰路につかれました。今回の短歌入門講座も大変に充実した時間となりました。栂先生、そして受講生のみなさん、ありがとうございました。

 次回は、9月16日(土)で歌会です。課題が出ています。
 ・歌を二首あらかじめ作って金沢文芸館に送って下さい。
   自由題  一首
   題詠「雲」一首
 いよいよ最終講座となります。送り方はメール、FAX、郵送のどれでも良いです。
〆切は9月8日(金)必着です。みんなでの歌会は楽しみですね。みなさんのご来館を心よりお待ちしております。

      



〇8月6日(日)第4回 朗読会『青春の門 自立編』

売血者の群れから離れて想う

朗読: 髙輪 眞知子(朗読小屋・浅野川倶楽部代表)


 

 8月6日(日)第4回朗読会が、朗読小屋・浅野川倶楽部の代表 髙輪 眞知子(たかなわ まちこ)さんにより行われました。今回は「売血者の群れ」です。

 アルバイトをクビになった信介は、新しい仕事を見つけるべく学徒援護会に登録しようとしました。しかし、借金のカタに置いてきた学生証がないと登録は叶いませんでした。1日だけでも学生証を貸して欲しいとカオルに頼みますが断られてしまいます。
 帰り道、屋台で知り合った人から「バイケツ」で金を得ることを習います。そして人生初の売血をします。しかし、その金で学生証を取り戻してカオルに渡してしまうことが無意味に思われた信介は、ある食堂に入ったのでした。
 そこで同テーブルに座った親子3人がコロッケ一つを分け合う注文をします。それに比べて豪華な食事をたくさん注文した信介はいたたまれなくなり、そのまま食べずにお金だけをはらって食堂を飛び出してしまいます。
 家に帰ってから緒方には「相手の母子には人間的な率直さと明るさで料理をすすめることが大切だ。自然に相手に受け入れられるような、そんな人間になることこそ大事なことなのだ」と諭されるのでした。
 「おれは勉強しなくちゃならん」暗い部屋の中で、真剣にそう考え続ける信介がそこにいたのでした。
                       (「売血者の群れ」まで)

 熱中症警戒アラートが発令されている中での朗読会です。16名の方々に来館いただきました。ありがとうございます。ただ「参加したいのに本日も熱中症危険度「危険」で家族から「行かないで」とストップがかかってしまって…」とのお断りの電話もありました。
 大変な猛暑の中、髙輪さんは着物を着て徒歩で誰よりも早く来館されます。今回は1時間も前からお越しになられて、着座位置、マイク調整、灯りの状態などを入念にチェックされます。そしてしばし、お客様との会話の後、無声での自己練習が始まります。凛とした緊張感の中で朗読の練習をされるお姿に、その心構えの大切さを学んでいく私たちです。
 本朗読会を終えられた後「五木先生自身も若い時、売血をされたのですね。先生は、若い頃、苦労をされたのですね」とのお話がありました。
 いつもいつも五木寛之先生のことを思いながら朗読会に向き合っておられます。今後とも、皆様方と共に髙輪さんの朗読を聞かせていただく幸せを噛みしめながらの歩みにと思います。髙輪さん、本当にありがとうございました。
 第5回は9月10日(日)14時からです。「新宿風月堂界隈」「奇妙な誘い」です。ぜひご参集ください。お待ちしております。


      



〇8月5日(土) 第3回詩入門講座

詩の試作品合評会

講師: 中野 徹(詩誌「笛」同人)
    和田 康一郎(金城大学講師)

 

 
 今回の講座は、詩の試作品の合評会です。7人の参加をいただいての合評会となりました。最初は緊張の面持ちであった受講生のみなさんも、進むにつれて打ち解け合いながらお互いの詩について意見交換を徐々に進めていくようになりました。二人の講師の先生方の貴重なご助言もあり、充実した講座となりました。
 一部となりますが、みなさんの力作を簡単に紹介いたします。

1 受講生の試作詩(「」は詩の一部抜粋)から
 ➀風まかせ志向
  「あの子はシクラメン/もう気にしないで綿毛になり旅立つのよ/あたしはタンポポ
   なのだから」

   皆がうっとりと見つめるシクラメンのあなた。居場所を探し旅支度を整えて風の
   吹くまま身を任せていくタンポポの自分。シクラメンがタンポポを羨む擬人法が
   説得力ある詩を生み出している。

 ②七夕の夜空に
  「一瞬の花火のような光の時間の中で/天国にいる父母は
   今年出会えたのだろうか/一滴の水音が消え入る間で/あれから
   いろいろあった出来事を話したい」

   通りゃんせの歌詞を最初と最後に書いて、自分の想いを真ん中に置いた作品。
   ぎりぎりまで文章を削って、読み手に想像させていくことをねらった意欲的な
   作品。

 ③伝える
  「ふよふよと/空中に散らばっていて/無数に浮かんでいるもの/ひとつずつ
   掴んでみると/何を手にしたかわからない」

   夢や希望をつかんでいく、そんな思いを持たせてくれた解釈もあり、心に
   引き込まれていく詩らしい感じがする作品となっている。

 ④夏の一ページ
  「頬赤らめる/でっかいトマト/ツンと澄ます/白いスイレン/魔法をかけた
   ピンクのお空/束の間の夏休みを/母とともに」

   亡くなった母への想いを色彩感覚豊かに綴った作品。全て二行ずつの連
   としてすっきりとした良き詩となっている。
 
⑤夢の中で
  
「場面は幼いころの思い出のひとコマの風景/春は桜のピンク色/夏は空の
   青色/
秋は黄金色/冬は一面モノクロ」
   46年前に不慮のスキー事故で亡くなった父、16年前に亡くなった母。夢の
   中でしか会えない二人。季節ごとに思い出される特別な想い出の風景が
   甦ってくる作品。

 ⑥ユズリハ
  「春には そよ風/夏には 木漏れ日/秋には 匂いのいい木の実/
   そして、冬には 葉脈を流れる血液を/あなたにゆずって/わたしはゆく」

   ユズリハを通して、脈々と息づいて受け継いでいく命の尊さが表現されて
   いる。
命のバトンが引き継がれていく「夢」や「希望」を託していく作品で
   ある。

 ⑦ひたすら
  「儚きは人の夢 過ぎ去れば泡沫/懐かしさは けっして手に入らない
   憧れ/
憧れはただ一筋の閃光/つんざくは私の叫び/まぶたの向こう
   で神が鳴る」

   ひたすらに生きる哀しい葛藤を抱えた男性の生き様を表現している。
   「私の生き方はこうではない」昔への憧憬を強く訴えかけていく人間の
   深みを表現した作品。


2 批評と推敲から
 〇花は難しい素材でもある。読者がイメージを共有してくれない場合があり。
  ただ今回は良き二種類の花を選択した印象がある。

 〇うまく世話をされないと夏を越して翌年花を咲かせられないシクラメンが
  タンポポを羨む擬人法は説得力がある。

 〇人と違う感覚をもつことは詩を作る時の武器となる。萩原朔太郎が
  その例と言えよう。

 〇自分を見つめる力がある。いくつもいくつも詩を作ることで力をつけて
  いける。

 〇すっきりとした良き詩となっている。
 〇自分の想いが素直に表現されてきている。

 〇春夏秋冬にゆずるものを詩行に登場させたい意図がうかがえる。
 △通りゃんせの歌詞と詩のイメージとのギャップが大きく感じる。
 △母が亡くなったことが読者に伝わる工夫必要。娘・母の年齢が確定
  できるイメージが欲しい。

 △「モノクロ」という表現に父親の不慮の事故への想いが込められて
  いる話を伺った。
  その深き思いを読者に伝える詩にしていきたい。

  一生消えない大事な想い、人の一生を変えた
 
△「匂いのいい」は食を連想させる。それよりも「飾れる」などの表現が
  良いかと。

 △「雷」の中での言葉はいろいろある。それを使ってみるのも良いのでは
  ないか。


 今回は、和田先生が司会進行してくださり、中野先生、和田先生のご指導はもちろん、受講生同士の感想交流などもありました。いろいろな助言、感想、意見などをもらい、今後の創作活動での糧になった方も多いように思います。
 
いよいよ次回は詩本作品の合評会で9月9日(土)午後3時からです。講師の先生は井崎 外枝子先生、中野 徹先生です。講座の形態については、またお知らせいたします。
 たくさんの方々のご出席をお待ちしています。

      



〇8月5日(土) 第4回小説入門講座 ~試作小説の批評と推敲~

試作小説の批評

講師: 高山 敏(『北陸文学』同人)
    小網 春美(『飢餓祭』同人)
    小西 護(『イミタチオ』同人)

 

 
 第4回小説入門講座は、試作小説ABグループの批評と推敲です。講師は、高山 敏先生(『北陸文学』同人)、小網 春美先生(『飢餓祭』同人)、小西 護先生(『イミタチオ』同人)です。高山先生には総評と個別指導、小網先生にはAグループ指導、小西先生にはBグループ指導で、各講師をお勤めいただきました。
 A・Bグループを大きく離した場所に設置して白板で仕切っての批評会としました。お互いの声が交錯することなく、各講師の先生方の真摯なご指導もあり、大変に充実した講座となりました。簡単に受講生の力作を紹介します。

1 受講生の試作小説から
 (1)(A(小網先生)グループ)
 ➀流月という名前       (テーマ 流す・流れる)
  「留紺の空に流れゆく霞色の雲の合間から、優しい月が顔を覗かせている。
   遠慮がちな佇まいが、二年前に亡くなった祖母の微笑みと重なった」

   産まれ来る愛娘の命名に際し、さまざまな人々の狭間で悩み、苦悩し、
   挫折していく主人公。彼が自ら決断して手に獲得していったこととは?

 ②臍帯            (テーマ 流す・流れる)
  
「飾り棚に置かれていた写真を手に取った。ネガフィルム特有の解像度が
   低くて柔らかな画は、水着を着た女の子を描き出している。それをめくる
   と同じ子どもが、今度は桜の下で笑っている。…」

   娘のみひろだけ流れず、取り残され、留まり続けている。最愛の娘への
   尽きせぬ深い愛情が貫かれていて、ママの想いを受け止め、身を委ねる
   私たちがここにいます。

 ③風が来る          (テーマ 自由設定)
  「達夫は相談にのることはあったが、息子が選ぶことにはあまり口を挟まない
   ようにしてきた。意見をすることは、自らの選択を狭めると思っていた。
   人は選びながら自分の道を生きていく。そういうものだと思っていた」

   突然仕事を止めて東京から帰宅してきた息子。そんな息子と獅子吼への
   登山をする父親。そして共に登山をする中で息子との心を通わせ合っていく
   二人がいた。
 
④七夕イブ          (テーマ 自由設定)
  「今日は七月六日。夫の淳が『七夕イブ』と言うこの日は私たちの大切な
   結婚記念日「梅雨時期だからしかたないよね」重たそうな空を見上げて
   私は思った」

   淳と咲子との何気ないやりとりが語られていく。「本当の幸せ」とは何かを
   問い返し見つめ直していくことの大切さを読者にふんわりと問いかけてくれ
   る作品である。

 ⑤記憶の雨          (テーマ 忘れる・思い出す)
  「記憶の雨が降っている。この雨粒の一つ一つに、ガチャガチャから出てくる
   ような透明のカプセルが入っていて、記憶を呼び起こす鍵が閉じ込められて
   いる」
仕事で失敗した早乙女は、小さな鍵を拾う。帰宅すると身に覚えの
   ない段ボールの箱があった。先の鍵で箱を開けてみると中にあったものは?
   なんと…。

 ⑥大ちゃんとだいこん     (テーマ 自由設定)
  「「あっ、だいこんがない。先生、だいこんがない」と、保育士に告げに来ま
   した。確かに昨日まであった大根の稲架干しがすっかりなくなっています。」

   長年、保育士を勤め上げてこられた作者の園児への愛情あふれる作品
   が、私たちの心にそっと届けて語りかけてくれることは?


 (2)(B(小西先生)グループ)
 ➀戻ってきた忘れ物      (テーマ 忘れる・思い出す)
  「『サンタさんが忘れ物をしたぁ』 『゛私゛は何を忘れたのか』」
   父と娘、秘密のクリスマスプレゼントのやりとり。そんな毎年恒例の場で
   うっかりと忘れ物(サンタの赤い三角帽子)をしてしまう父親サンタ。
   そこから父(サンタ)
と娘の新たな温かで爽やかなやりとりとは?
 ②未定            (テーマ 自由設定)
  「母はご機嫌に鏡台へ微笑んでいても、私が映り込めば「アンタ、
   自分が邪魔なの分かってる?」なんて言われてしまう」

   巧みな心理描写の中で描かれていく主人公の心の葛藤が書かれる。
   こだわって突きつめていく見えない炎。本作品がみんなに訴え
   かけていくこととは?

 Where do you want go  (テーマ 自由設定)
  
「俺は四つ目の引き出しの中身しか見てなかったやろう。あの引き出し
   の奥に、実は隠しと言われる秘密のスペースがあるんやで」

   百歳近い芸子「須美さん」の旦那さんの持ち物を整理していく宗介。
   巨万の富を築いた彼が遺した最後のものは一冊の手帳であった。
   そこに書かれていたこととは?

 ④青い富士山カレー      (テーマ 自由設定)
  
「ある日、お父さんが出張の帰りに、珍しいカレーを一箱お土産に買って
   きました。『えっ 青いカレー?』しんちゃんはびっくりしました」

   しんちゃんは中腹から、お父さんはふもとのカレー池から、お母さんは
   てっぺんのご飯をたっぷりとって、ルーをちょこちょこと…さあ、どんな味が
   するのでしょうか?

 ⑤松の木は教えてくれた    (テーマ 流す・流れる)
  「浅野川の氾濫は友人が特に大切にしている物を2つ流し去ったという。
   2008年7月28日、この日は未明から早朝にかけて、激しく雨が降り…」

   大切な2つのものとは何か?流された2つの宝物と氾濫にも流されなかった
   松の植木鉢。そこから駆け巡る作者の想いとは?

 ⑥お父さんと私        (テーマ 忘れる・思い出す)
  
「生きている時よりも亡くなってからの方が父を身近に感じている自分が
   いるのである。すぐそばにいる気がするので、常に話しかけている自分が
   当たり前になっている」

   父が亡くなり、この世の中に頼れる人は誰もいなくなったと思った主人公が、
   成長していく中で何を頼りに生きて来たのか?私たち自身に問い直す
   生き方があるかも。

2 批評と推敲から
 ・本小説にあった表現をしていくように
  △ぐでんぐでんによっぱらう…優しい本小説にその表現がそぐわない
 ・タイトルは工夫して熟考するように
  △「戻って来た忘れ物」 → 一例:〇「おくりおくられ」「プレゼント再び」等
  〇「風が来る」…何と良きタイトルか。素敵だ。
 ・作者の伝えたい思いが明確にある小説作りを
  △タイトルが決まらないのは伝えたい思いが決まっていないからとも言える
  〇タイトルは楽しみながらつけていきたい
 ・主人公と親(小説上)との心のねじれ→一歩踏み込んで書く
  △ねじれのわけが不明確 → 掘り下げていきたい
 ・素晴らしき表現を創り出していく大切さ
  〇「心の時計の針は一向に進まない」
   …なんと素敵な表現か
  〇「留紺の空にながれゆく霞色の雲の合間から、優しい月が顔を覗かせて
    いる。遠慮がちな佇まいが、二年前に亡くなった祖母の微笑みと重なった」

   …とても良い終わり方で、良き小説だと読者に思わされる。
  
〇「人は選びながら自分の道を生きていく」
   …何と素敵な表現か。実に良い。
  〇「次の日曜日、咲子はキラキラ光る指輪をつけていこうと思った」
   …小説の終わり方としてとても良い。
  〇才能ある書き出しの一ページと本文とのつながりを何とか明確にしたい

   …何度でもチャレンジしてつながりを持たせたい。また見せてもらいたい。

 今年度、小説入門講座試作小説では、二つのグループに分けての批評と推敲の会を実施しました。受講生一人一人にかける時間も増えて、講師の先生方のきめ細かなご指導がい
きわたりました。
 
受講生の皆さんからも「きめ細かく見て頂き、自分で気づけないことも教えていただき、本当に良かったです」との感想をいただきました。
 「これから本作にも取り組んで意欲的に取り組んで頑張りたい」と帰宅される様子を見させていただき、大変に嬉しく思いました。
 次回は、9月9日(土)小網先生による講義「小説作りの基本とは②」です。小説実作にあたって参考になる講座です。ぜひ参加いただきたいと考えています。
 また、実作の〆切は10月14日(土)「推敲のポイント」(高山先生講義)の日です。〆切日厳守での提出をお願いいたします。


      


       高山敏先生




      小網春美先生




      小西護先生

〇7月23日(日) 第2回伝承文芸講座 ~金沢の昔話と伝説をたずねて~

「加賀藩の能楽と『平家物語』」

講師: 藤島 秀隆(金沢工業大学名誉教授)

 

 
 熱中症厳重警戒の中、たくさんの方々に足を運んでいただきました。今回は、「加賀藩の能楽と『平家物語』」です。藤島先生のエネルギーあふれるお話に、皆、釘付けでした。
 講義の最後に「片山津温泉に入って、ぜひ近くにある斎藤別当実盛に関する史跡を巡ってみるのも良いかと思います」と語られた先生。たくさんの貴重なお話から一部となりますが紹介いたします。

1 加賀能楽の能楽
(1)加賀能楽の起こり
  ➀加賀国・能登国の能楽の源流は?
   ・14世紀、白山猿楽座が存在して神事能に奉仕
  ②室町時代以降
   ・能楽は武士の嗜みとして重視
  ③前田利家がした保護は?
   ・幸若舞を好み舞々三郎太夫らを保護→能楽の愛好者となる(秀吉の影響)
  ④1593年 京都の利家邸にて
   ・利家は「松風」「山姥」、秀吉は「定家」「田村」、家康は「通小町」を
    演能

(2)加賀藩の能役者
  ➀加賀藩では?
   ・1623年 竹田権兵衛安信が最初の金春流の能太夫として召し抱え
    られる

   ・加賀藩の能楽の基礎は利常の時代に固められる
(3)加賀藩の二大神事能
  ➀利長の時代の業績は?
   ・寺中の能の復興にあり
  ②利常の時代の業績は?
   〇観音院の神事能
     ・卯辰山観音院境内の山王社(豊臣秀吉を祀る)に能を奉納
      (年中行事)

     
・利常の次男利次が宮参りをした時、お伽衆の中の子どもが謡を謡う
     ・僧や町の人々が集まって神前で囃子を興行して祝う
     ※明治2年まで250年余り続く。
   〇久保市乙剣社(金沢市尾張町)での舞囃子
     ・能装束の代わりに紋服・袴姿で舞う
     ・寺子屋でも謡曲などの芸能を教科に入れる(口移しで暗誦)

     ・職人も謡を嗜む
     
・屋根屋や植木屋が仕事の間に小謡を口ずさむ
     →「高所(たか)から謡が降ってくる」と言われるようになる
(4)加賀宝生の興隆 ※一部紹介
  ➀前田綱紀(5代藩主)
   ・加賀藩の能をすべて宝生流にまとめる(京都の竹田権兵衛
    (金春流)を除く)

   ・能の奥義を極める。地獄番と恐れられる →技量は向上した
   ・細工人(刀剣の鍛冶研磨、漆器制作、装束・武具その他工芸品
    の製作)に、シテ方を除く笛・太鼓・小鼓・地謡などを習熟させ、保護、
    奨励した

  ②前田斉広(なりなが)(12代藩主)
   ・宝生流能楽の爛熟期

   ・大規式能(だいきしきのう)は加賀藩最大の盛事
    
…出演した役者は259人(当時の江戸5座の役者総数より多い)
      ※町役者だけでも202人もいた。
  
③前田斉康(なりやす)(13代藩主)
   ・中納言任官儀式能 加賀藩最期を飾るにふさわしい祝儀能
    …「田村」「望月」「氷室」「俊寛」「右近」「卒塔婆小町」など多数の
      曲を演じる


2 能楽「実盛」とその周辺
(1)斎藤別当実盛の諸伝承(石川県江沼郡誌(大正14年刊)から)
  
➀首洗い池
   ・斎藤別当実盛の首を洗った池
   ・池の背後の手塚山で実盛を祭る兜の宮がある
   
・池のほとりに松尾芭蕉の詠んだ「むざんやな甲の下のきりぎりす」の
    句碑あり

  ②実盛塚(首洗い池の北西2キロ)
   ・実盛の遺骸を葬った場所
   ・実盛の亡霊が現れ、遊行上人が回向(えこう)して成仏させた
  
③鏡の池
   
・実盛が白髪を黒染めにした時に、顔を写したという鏡を池中に納めて
    いる池

   ※毎年、9月15日に池の清掃、鏡の取り出しなどが行われている。
(2)能「実盛」あらすじから
  ➀他阿弥上人(たあみ)が加賀国篠原で、連日説法を行っています。
   一人の老人が1日も欠かさずに聴聞に来ます。しかし老人の姿は、
   上人以外には見えません。

  ②その老人が今日もやってきたので、名を尋ねますが答えません。
  
③強いて尋ねると、斎藤実盛は篠原合戦で討たれ、その首をこの前の
   池で洗ったことを話し、自分こそ二百余年を経て成仏できずにいる実盛
   の亡霊であると明かします。

  
④ある夜、上人が池のほとりで念仏を唱えていると、実盛の霊が老武者の
   姿で現れ、
感謝し、報恩のため、首実検の様、出陣の様子、木曽義仲と
   組もうとして手塚太郎に打ち取られた一部始終を語り、なおも回向(えこう)
   をたのんで消えます。


 最後の質問コーナーでこんな質問がありました。
 「能楽が金沢でこんなにも盛んになっているのには大きな理由があるのでしょうか」
 それに藤島先生はこう答えられました。
 「やはり生活に根ざした中で能楽が行われていたことではないかと。今では形態も変わってきたようですが、例えば結婚式と言えば当たり前のように「高砂」が謡われていました。また、高校や大学では各校で能楽が部活動として行われてきました。これは今も続いています。他、謡を子どもが謡ったり、職人が笛や小鼓等を嗜んだりといったことも大きいです。何より一番大切なのは、小学生など小さい頃から能を嗜んでいくことかと思います。今もその面で努力がはらわれている。それが能楽が盛んな理由としてあげられるのではないかと私は考えています」と。

 藤島先生の講義では聴聞している私たちの心が躍動していくのをいつも感じます。
 最終回は8月27日(日)「堀麦水著『三州奇談』の世界」です。少しでも涼しくなり講師の先生、受講生の皆様方が、安全にお越しいただけることを心から願っております。
 熱中症が心配される毎日です。どうぞ皆様、お体ご自愛くださいませ。皆様のご来館を心よりお待ちしております。 


      



〇7月22日(土) 第3回小説講座 ~提出作品の批評(Bグループ)~

試作小説の批評

講師: 皆川 有子(『櫻坂』同人)
    藪下 悦子(小説家)

 

 
 第3回小説講座は、試作小説Bグループの批評会です。講師は文学誌『櫻坂』同人 皆川 有子先生、小説家 藪下 悦子先生です。今年度より、令和4年度「こおりとうふ」で第50回泉鏡花記念金沢市民文学賞を受賞された藪下 悦子先生が講師に加わり、一層充実した小説講座となりました。今回は、テーマ「時計」「めがね」「鉛筆」から一つ選択して小説を書いてきています。ではBグループの作品を紹介していきます。

1 試作小説の題名は?(Bグループ)
 ⑥眼鏡       (テーマ 眼鏡)
   「シュンは自分の気持ちが高揚するのを感じた。次の試合では誰よりも大きな声を
    だそう。明日の練習では、久しぶりにあのスポーツ用眼鏡をかけてみようか。
    もしかしたら、今日よりも捕球もうまくできるかもしれない−」

    両親が買ってくれたスポーツ用眼鏡をけっして使わなかったシュン。その気持ち
    を変えたものは何だったのか?青春の1ページが蘇ります。

 ⑦ちょうどよい距離感 (テーマ 鉛筆)
   「息子の筆箱の中にきれいに並んだ5本の鉛筆についた歯形。私は小学生の頃、
    祖母の前で鉛筆を噛んでしまって起きた出来事が思い出された」

    どの家庭にもある嫁、姑の関係を、実母の言動から問い直していく主人公の
    生き方を描いた物語が始まります。

 ⑧色眼鏡でみるなよ  (テーマ 眼鏡)
   「骨董巡りで見つけた素晴らしき一品の『老眼鏡』。鼻にかける真ん中の部分を
    ヒョイとつまみ、傷だらけのガラスを覗いてみると…」

    特殊な眼鏡を手に入れた主人公。この眼鏡の秘密とは?そして自分は時代に
    選ばれた正義の使者だ!と思い込んだ主人公がしていったことは?

 
⑨永遠の絆      (テーマ 時計)
   「二人が結婚するとき、特別な記念の贈り物として手に入れたユニセックスタイ
    プのスイス製腕時計を机の上において父ピエールと母マリーはおしゃべりに
    花を咲かせています」

    娘のソフィーと父母が織りなす時計にまつわる物語。フランス調のおしゃれさを
    演出した小説が私たちに問いかけることは?

 ⑩メガネ     テーマ(メガネ)
   「メガネが弾き飛ばされた。ぼくは必死でその行方を追い、3メートルほど先の
    コートに落ちていたメガネを拾った。そしてメガネを手に取った」

    あの時、帰り道や公園で泣きたい気持ちになったのはなぜか。あれから50年
    ほど過ぎた今。考えを巡らせていく主人公。自らに問いかけをしていく。


2 批評と推敲から
 
〇すうっと読める小説は技術あり。でも読めても心に残らなければそれは小説ではない。
 〇視点は誰なのか?視点を固定化することが大切。
 〇良い意味で読者を裏切ることが大切。歯形→嫁・姑の関係△→安易に想像がつくのは▲
 〇視点が変わる時は読者にわかる工夫が必要
  
・1行空けていく
  ・段落を変えていく。
 ▲手垢のついた表現にならないように
 ▲エッセイになってしまう→その対応はいかに?
  
・一人称でなく三人称で書いていく。人物と距離をとって書く。
  ・描写がないと説明になってしまう。
  ・主人公は別人格である。

3 小説を書くときに心にとめておいていただきたいこと
 ➀読み手を意識して書くこと
  ・手を抜かず、読んでもらう人たちに丁寧に応対するつもりで書くこと
 ②主人公=作者ではない
  ・一般的に小説とは想像力を働かせて、第三者である主人公を創り出すもの。
 ③誰の視点で書いているかを意識する
  ・複数の視点は混在させない。
 ④何を書こうとしているのかを明確にしておく
  ・エッセイ? 小説? 論文? 日記? エンターテーメント? 純文学? 
   時代小説? 歴史小説? 推理小説? ファンタジー? 何を書くかを明確。
 
⑤小説を書く時の基本を押さえること
  ・視点、描写、会話文や地の文の書き方、プロットの作り方、書き出し、タイトルの
   つけ方等を学んでいこう。

 ⑥物語ではなく、人を書くこと
  ・小説は、ストーリーを通して人を書くもの。人の心の奥深くにあるものをあぶり
   出していけるような筆力が大切である
 
⑦いい小説とは?
  
・読み手の心に爪痕を遺してくれるものを小説と言う。すらすらと読めるのは
   「うまい小説」にとどまる。すらすらと読めたけれど心に残るものがなかったら、
   それは技巧的には上手で表面的にもよく書けているが、文章に作者の想いの
   丈が滲んでいなかった小説だということ。


 小説講座では、剣町先生、宮嶌先生、皆川先生、藪下先生から一人一人へのきめ細かなご指導がありました。また受講生同士の感想を交流し合うことで、励みとしている受講生の姿がありました。充実した批評と推敲の講座となりました。
 次回の小説講座は、8月19日(土)小説を読む➀ 講師は皆川 有子先生です。次回までの宿題は、吉本ばなな氏「TUGUMI」を読んでくることです。ストーリーを理解するだけでなく「小説を書く」視点で読み込んでくることが大切となります。
 小説の実作にむけて力をつける充実した会となるよう、ご来館を心よりお待ちしております。

      



〇7月16日(日)第3回 朗読会『青春の門 自立編』

怜子、英子に心惹かれていく信介

朗読: 髙輪 眞知子(朗読小屋・浅野川倶楽部代表)


 

 7月16日(日)第3回朗読会が、朗読小屋・浅野川倶楽部の代表 髙輪 眞知子(たかなわ まちこ)さんにより行われました。今回は「青ざめた娘」「5月の夜の乳房」です。

 信介は緒方の部屋に同居して1週間が過ぎていました。二人は原始共産制で金も物もいっしょに使うと決めていました。そんな生活の中で、信介は米軍のベースキャンプで働いている怜子と出会います。信介は肉感的な怜子に惹かれますが、緒方からは「怜子には気をつけろ。夢中になると、えらい目にあうぞ」とくぎを刺されます。
 ある日、信介は体調を崩して、製本屋のアルバイトを休ませてもらうよう連絡をしたのですが「代わりの人間はすぐにはいない」と仕事をクビになってしまいます。
 そんな時に出会ったのが英子でした。信介は、英子と出あいがしらにぶつかり、その胸の豊かな膨らみに翻弄されていきます。自然に、英子を意識していきます。
 下宿のおばあちゃんからは「うちの英子はあんたが好きらしい」「この家が気に入ったらずっといていいんだよ」と優しく言われます。仕事のことでは冷たくされた信介でしたが、東京の人も冷たい連中ばかりじゃないと思うのでした。
                        (「5月の夜の乳房」まで)

 熱中症危険で外出を控えるよう発令された日となりましたが、14名の方々に来館いただきました。感謝するばかりでした。
 本日は、怜子、英子と出会い、様々な女性に惹かれていく信介の揺れ動く心情が描かれている場面です。髙輪さんの朗読は、読み進めるごとに勢いを増し、その迫力に魅了されっぱなしの私たちでした。たまたま来館された若い学生さん4名は「こんな素敵な場面に出会わせていただいて良かったです。金沢文芸館の髙輪さんの朗読会は本当に素晴らしいです。最初から参加したかったです」と語っていかれました。
 猛暑の中、参加いただいた皆様、遠方から来館された皆様、そして髙輪眞知子さん、本当にありがとうございました。貴重な一期一会の機会に感謝するばかりでした。

 第4回は8月6日(日)14時からです。「売血者の群れ」です。ぜひ、ご参集ください。お待ちしております。


      



〇7月15日(土) 第3回小説講座 ~提出作品の批評(Aグループ)~

試作小説の批評

講師: 剣町 柳一郎(小説家)
    宮嶌 公夫(『イミタチオ』同人)

 

 

第3回小説講座は、試作小説の批評会です。講師は小説家 剣町 柳一郎先生、『イミタチオ』同人 宮嶌 公夫先生です。今回は、テーマ「時計」「めがね」「鉛筆」から一つ選択して書いてきた小説の批評会です。批評会の順番に作品を紹介していきます。

1 試作小説の題名は?
 
➀時計が刻むあのジカン? (時計)
  「牧男の住む県営住宅は生活困窮の単身者のみが入居できる。牧男は就職が
  まだ決まらず、立派な生活困窮者になっている。ある日、隣人になにかあったのだ
  ろうか。

  時々「ないない…ない…」と切羽詰まった声が漏れてくる。」
  隣人がないといっているものは何?牧男はポケットに携帯と武器になるボールペンを
  二本忍ばせて隣人のもとを訪ねていきます。

 ②ばばのメガネ      (眼鏡)
  「ばばが死んだ時、欲しいと思ったばばのメガネ。四角の黒っぽい鼈甲ぶちの、ずっ
  しりと大きい物で、ツルの部分がアールヌーボー風に、まさに葡萄のツルのように
  不規則な波を打っていたメガネ。」大切に想うばばのメガネの行方はどこへ?

 ③七夕はん        (時計)
  「何が何だか判らないうちに津幡署に着いた。衣服が並べられていた。見慣れた
  洋服である。袖とひざのつぎ布は私が手掛けたものである。そして時計がカチカチ
  と動いている」私にとって一番大切なものとは?

 ④電波時計        (時計)
  「洗面所の窓を開けて、五月の終わりの青い空が目に入った瞬間、里子は
  泣き声が喉元をせり上がってこようとするのに気づいて驚いた。池内里子は職場
  の上司で妻子のある岡田康一を好きになっていたのだった。」そんな恋の行く末は
  いかに?

 ⑤スペースペン      (鉛筆)
  「スペースペン!NASAが何百ドルもかけて開発したと言われている、宇宙で
  使えるペンだ。」スペースペンをめぐっていろいろな話が出てきます。アメリカが開発
  したスペースペン。対抗意識が激しいソ連が手にしていたものとはスペースペン?
  それとも何だったのか?


2 批評と推敲から
 〇原稿用紙5枚という制限の中、よく検討している。私の採点では作品10篇中
  80点
以上が4名いた。小説と言えるものが仕上がってきている。
 〇一人一人の受講生の苦労が見える作品だ。苦労に見合った作品となってきている。
 〇比喩表現がとても良い。
  ・「住民たちはなめくじのようにおとなしい。誰もがそっとしておいて欲しいから自分の
   存在を消してひっそりと暮らす」

 〇1行を大切にした表現をしなさい。
  ・「そのとき里子は息を止めている自分に気がついたのだった」
   この表現はとても良い。小説の1行を大切にしている。この姿勢が大切だ。
 〇心情表現と電波時計がぴったりとあっている良き表現である。
  ・「旅行にいく前日、荷物を鞄に入れながら里子がふと電波時計を見ると、針は
   正し
い時刻を指しているような気がした」
 ▲人称に問題あり。文章内では同一人物は統一していかねばならない。
  ・「牧男は…」「思わず僕は言ってしまった」△
 ▲手垢のついた表現は避けたい
  ・私はヒデちゃんの律義さに感激した。→同義語を探してぴったりする言葉を
   選んでいく。

  ・まずは着席した。→「腰を下ろした」等に言い換えると良い。
 ▲行替え、読点を多く乱用しない。適正な使い方を。
 ▲文末で同じ表現を続けない。文章が一本調子で単調となる。
  ・「訪れた」…「住み続けた」…「断られた」…「多くはなかった」「進めていった」
  ※同様にたくさんの受講生がこの指摘を具体的に受けた。

 ▲小説の全体構成をしっかりと考えていくことが大切。
 ▲「落ち」を意識することからの脱却を
  ・落語は良い。ショートショートも面白い。しかし小説となると、最初に最後の
   落ちを設定して文章を作っていく手法では限界が訪れる。

 ▲合わない表現は使わない。
  
・私は罪悪感を覚えた。→小学生の回想再現場面でこんな表現は使わない
   だろう。

 ▲読み手に伝わる表現であること。言葉のすみずみまで。
 ▲語り手(作中人物)が誰のことを語っていくのか。視点人物が語るのか等。
 ▲物語を無理に進めない。無理な状況設定をしない。


      



〇7月13日(木) 出前講座 杜の里小学校2年

金沢民話に親しもう(紙芝居、プレゼン、歌)

講師: 吉國 芳子(ひょうし木の会

 

 
 金沢市立杜の里小学校に訪問しました。2年生3クラス74名をクラスごとで外国の民話、金沢民話に親しむ学習活動をしていきました。紙芝居、昔の唱歌、読み語り、マジック、プレゼンテーションなどを取り入れた読み聞かせは、あっという間の45分間でした。内容を抜粋して紹介します。

・「アナンシー」と「ゴ」
  このお話はジャマイカの民話です。吉國さんは、手作り地図でジャマイカの場所を
 伝
えながら、子ども達の興味を高めながらお話が始まりました。「アナンシーとゴ」は
 このような内容です。


  ジャマイカのお話です。昔、アナンシ―という悪い奴がいました。アナンシーは、人間に
 化けたり、人を怖がらせたりして、みんなをいつも困らせていました。

  また、この国には「ゴ」という魔女がいました。魔女「ゴ」は自分の名前が大嫌いでした。
 みんなが自分のことを「ゴ!」「ゴ!」「ゴ!」と呼ぶのを聞くのが、魔女は嫌で仕方があり
 ませんでした。

  そこで魔女は鍋で薬草をぐつぐつ煮ながらこんな呪文をかけました。

 「今から『ゴ』と言った奴はみんな死んでしまうのだ!呪いをかけるぞ」と。
  
この様子を側で聞いていたアナンシーは「これを利用しない手はないぞ」と
 悪知恵を働かせます。

 ➀アヒルの奥さんと出会ったアナンシーは?
   「アヒルの奥さん。私はサツマイモの山を5つ作ったんだけれど、いくつの山かを
   数えられないから数えるのを手伝ってくれ」とお願いします。アヒルの奥さんは
   「それしきのこといいわよ」と言います。「イチ、ニ、サン、シ」…「ゴ」

    そう数えると、アヒルの奥さんは魔女の呪いにかかって死んでしまいました。
   そしてアナンシーはむしゃむしゃとアヒルを食べてしまいました。

 ②ウサギの奥さんと出会ったアナンシーは?
    
アナンシーは、アヒルの奥さんにしたことと同じことをウサギの奥さんにします。
   「ゴ」と言ってしまったウサギの奥さんはあっという間に息絶えてしまいます。
   アナンシーはウサギの奥さんも食べてしまいます。
 ③ハトの奥さんと出会ったアナンシーは?
    ハトの奥さんはこう数えていきます。

   「イチ、ニ、サン、シー」「ここで立っているところ!」
   「ちがう、ちがう。そうじゃない。もう一度やってみて。」
   「イチ、ニ、サン、シー」「ここで座っているところ!」
   
「ちがう。ちがう。そうじゃない。自分が数えてみるからよく見ていろよ」
   と言います。

   そして、ついにアナンシー自ら
   「イチ、ニ、サン、シ」…「ゴ」
   と言ってしまいます。たちまちアナンシーは息絶えて死んでしまいました。
   魔女の呪いを利用したアナンシーは、自らその呪いにかかってしまったのでした。


 子ども達は、アナンシーがやっつけられてほっとした様子でした。「自業自得だね」「自分が悪かったんだもんね」と、顔を見合わせます。民話と言うと日本の民話への馴染みが大きいのですが、子ども達は、遠いジャマイカの民話に心を弾ませているようでした。 大きくなって「ジャマイカ」という国を何かで学んだ時、きっとこの民話を思い出してくれるのではと思いました。

 この他にも、紙芝居「子育てゆうれい」のお話。パワーポイントによる「法船寺のねずみ退治」、「あんたがたどこさ(手拍子唄)」、「マジック」などが行われました。目を生き生きと輝かせながら参加している杜の里小学校の子ども達は清々しいばかりでした。
 休み時間、「あんたがた どこさ! 肥後さ 肥後どこさ 熊本さ!…」と元気に歌いながら歩いている子ども達もいました。また「また会おうね」「ありがとう」「さようなら」と吉國先生らに手を振られている素敵な子ども達。そんな素敵な姿がいつまでも心に残る素晴らしい読み聞かせとなりました。
 真心ある杜の里小学校の子ども達、また一人一人の子ども達に向き合い配慮して懸命に歩んでおられる先生方、そして講師の吉國先生、本当にありがとうございました。素晴らしい出会いに感謝いたします。子ども達の健やかな成長を心から願っています。
 
またお会いできるのを楽しみにしています。


      



〇7月8日(土) 第2回詩入門講座

詩というもの(詩を味わう)

講師: 和田 康一郎(金城大学講師)

 

 
 今回の講座は和田 康一郎先生の講義です。いろいろな詩を紹介していただきながら詩作のコツ、ポイントを丁寧に解説いただきました。抜粋して紹介します。

★理解目標
 〇驚きを持って、日常をとらえよう。
 〇比喩・擬人法は、ありきたりのものを使わない。

   月を眺めて
          室生犀星
 夜中に目をさまして/庭に下りると月が私の家の/その真上にすはってゐる
 あるだけの光がそそがれてゐる/地は光にうたれて湿ってゐる

 いままで静かに眠ってゐた自分の家/私がひらいた雨戸の音は/夜の葉と葉の上を亘り

 月の中心にまでとどいてゆくやうだ/かしこにもまた何者かが居て
 見下ろしてゐるやうな微妙さが来る/その明るさは未来の心をひらく

 
その美しい光の団欒/つきない光の泉/絶へず人の心にいり込み
 永い生涯のつづきを考へさせる

 
光のはげしさ新しさに/そのちからに今宵も私は抱かれて/ねむりの内も起されて
 庭にたたへられた激しさに追はれて/しづかに庭をあるいてゐる

 生活感覚で書かれていて、口語で書くスタート地点に立つ詩である。
 ・説明が多く、現在はそうしないイメージとなろう大正期の説明という詩である。

 一晩の体験が書いてあり、月の光への感謝が書かれている。

   流れ星のノート
          寺山 修司
 果物屋の店先には 必ず傷のついたリンゴがまじっています
 同じ一房の葡萄のなかにも 一粒や二粒の痛んだものがかならずある
 人生も同じことです
 同じ日に同じ町で生まれても
 すべて順調にいく人と 何をやってもうまくいかない人とがある
 ここにおさめた傷ついた果実たちを
 運がわるかったと言うのは 当っていないでしょう
 彼女たちは より深く人生を見つめ
 その裏側にあるものまで見てしまったのです
 そして
 
そんな詩の書ける人こそ
 
ほんとの友だちになれる人なのではなかろうか

 ・一つの価値観として痛んだ果実は売り物にならないと言える。しかし、それは
  より深く人生を見つめ、その裏側にあるものまで見てしまったと言えるのかしれない。

 人生の裏側に目を配っていく。マイナスポイントがあるからこそ、かえって深いものを
  見ることができるのではないか。

 タイトルにもこだわりがある。流れ星は、塵であり、滅びていくものである。しかし見る
  角度で同じものが違ったものとして見えてくる。美しさを表現するものともなる。


 他にも、「二十億光年の孤独 谷川 俊太郎」。宇宙の不思議を表現し、地球上のあらゆるものに引力が働いていることを示して人間関係のひずみを暗示している詩、「水の中の小さな生物 井坂 洋子」ではその表現で言葉を用いた芸術だと示している詩、比喩・擬人法が盛り込まれた「宝石の眠り 西脇 順三郎」、「洗面器 金子 光晴」の詩。

 和田先生におかれましては、様々な優れた詩を解説いただき、じっくりと鑑賞する時間をいただきました。ありがとうございます。


 次回、第3回講座は8月5日(土)試作詩の合評会です。中野先生、和田先生による批評と推敲、そして受講生同士の合評会です。試作詩は全て3人の先生、全受講生に送付いたします。ぜひとも次回の合評会で試作詩に対するご意見・ご感想を交流しましょう。
 皆様のご来館を心よりお待ちしております。


      



〇7月8日(土) 第3回小説入門講座

小説作りの基本とは

講師: 高山 敏(「北陸文学」同人)

 

 
 本講座は、北陸文学同人で編集代表をされている高山 敏(さとし)先生です。高山先生には、「小説を描く力となるもの」をテーマに、題材選び、場面設定、情景・心情描写、優れた作家の生き方など、小説創作に向かう時に大切にしなければならないことを様々な視点からお話いただきました。高山先生の熱き想いあふれる講義、そして受講生11名の真剣な息づかいが聞こえてくるような充実した講座となりました。一部を紹介いたします。

〇小説を描く力となるもの
 ・メモ用紙を常に持ち歩くこと
 ・あなたの信念を貫くこと
 ・こだわりを宿して書くこと
 ・「心中にある思い」をひきずって書くこと
 ・トラウマを書いても良い
 ・登場人物の個性・特徴を、その言動、しぐさから伺えるようにすること
 ・出だしは特に大切。丁寧に、動きをつける出だしでありたい
 ・心象風景は大切。普段から風景・人間への関心、意識を持とう
 ・印象深いエピソードを、効果的にどこに入れるかをよく考えよう
 ・登場人物の顔つき、表情は心の内面を表す
 ・人間が持っている五感を働かせて書いていこう

 高山先生には、様々な場面で、具体的な書き方を提示しての講義をいただきました。例えば「私ならこうやって小説の出だしを書いてみる」と言われて例文を提示されました。
 ・携帯が鳴った。〇〇だった。「どうしている?暇か?」〇〇は同年で親しい
  間柄であった。そんな〇〇はとても慌てている様子だった。「すぐに家に来て
  欲しいんだ!」と。

 どの話にも、具体的な例を交えながら大変にわかりやすくお話いただきました。その他、小説・エッセイ作品、新聞記事などを引用して、小説家としての歩み方、心がけについて作家の声を交えながら熱く講義いただきました。
 次にそれらの一部を紹介します。


◆紹介された記事などから
〇うつりゆく記憶 東日本大震災10年
 「酒浸った日々 生き抜いた」 
※文章は一部抜粋です
 
・ブシュ。枕元に並ぶ350㍉リットルの缶ビール。…5口ほどで1缶が空く。
  4時間ほどで24缶が空になった。「もうない。うそだべ?」…(略)…
 
・消防団員だったAさんは震災翌日から捜索にあたった。津波に流され家の
  雨どいにぶら下がっている近所の女性、そしてがれきにまみれた街…。体が
  震えた。コーラに混ぜた焼酎をちびちび飲むと心が静まった。…(略)…県内
  外のボランティアと物資を配ってストーブを置いた。…(略)…両親と仮設住
  宅に移ると酒の量が増えた。自分に価値がないように感じた。「俺がしっかり
  しなければなんねえのに」申し訳ない、情けない、でも酒をやめられない。

 ・その後、あるボランティアの紹介で彼の仕事先の山口県へ連れだされる。
  身長167cm。体重は30㌔余りになっていた。その後、山口県で入院し、
  3か月で退院する。

 ・酒浸りの自分に戻るわけにはいかない。つらい記憶に駆り立てられ、再建
  された工場で仕事に励んだ。

 ・その後、県外から来たボランティアの女性と結婚した。食卓を囲む。日常が
  うれしく、いとおしい。

 ・震災がなければ酒におぼれなかったかもしれない。でも震災がなければ会
  えなかっ
た大切な人もいる。楽しい思い出を少しずつ、増やしたい。

 「まるで一つの小説を見ているようです」と語られる高山先生。印象的な出だしのオノマトペ。そして、アルコール依存症でどん底にいたAさんの生き様が切々と語られていきます。講義の中で語られた高山先生の様々な言葉が浮かびます。
・「『人に話したくない物語』『人に言いたくない話』それらは良き作品になるのです」
・「あの人のことを胸に秘めたまま亡くなるのですか?」
 高山先生の数々の言葉が頭に浮かびます。受講生の皆さんも言葉を失い、静かに小説への向き合い方を想う時間となりました。

はずれ者が一生書き続ける私家版「小説道」から(車谷長吉のエッセイから)
 ➀自分をかばわないこと
  
・世間の常識から外れる自分の姿、人から後ろ指を指される自分の姿をじっと見
   つめる。厳しい視線に耐え、思索を深めることが大切。人間とは何かという
   問いに対して、自問を重ね、答えを出すのが小説である。

 ②勉強量が大切だ。
  ・国内、海外を問わず最低30人、自分の好きな作家の全集を全部読むこと。今年
   はこの人と決めて1年に一人ずつ読む。そうやって先達の技を吸収していくこと。
   ただ単にストーリーを追いかけるのではいけない。

 ③好きな小説一篇を最低50回読むこと
  ・僕の場合は、森鴎外の「安部一族」を誰もいない部屋で声に出して読んだ。小説家
   になろうとするなら、赤ん坊がはじめて言葉を覚えるときに戻って、もう一度、
   訓練をする必要がある。


 受講生は「とてもこんなことはできない」という声をもらしながらも、高山先生の「自分の好きな作家の全集でよいのです」という促しに、これから更に意欲をもって挑戦していこうとする心がみなぎっているのが見てとれました。

 
最後に、高山 敏先生が記された「暗闇を見つめる−負を愛するということ」を、自ら音読して講義は終了となりました。一部を紹介します。
・まず、自分は何を書くか。何に光を当てて書くか。何に眼差しを向けて書くか、です。
・私は自分の抱えている「負」の部分を、家族、職場、友人、社会現象を題材に書い
 てきました。「負」を「自分の持つ闇」と言い替えていいでしょう。

・エピソードとして、楽しい(幸せな時代の)思い出も必要なのですが、やはりどうしても、
 苦労を味わった(苦しんだ)思い出を書きたいと言う気持ちが湧き上がってきます。そう
 いう気持ちを私はずっと大切にしていきたいと思っています。


 
本日は小説入門講座の試作小説の〆切日でした。入門講座であるにもかかわらず、たくさんの方々が小説作りにチャレンジしてこられました。行き詰まったところ、書けなかった箇所等、困ったことも出し合っての合評会になればと思います。

 第3回講座は、8月5日(土)10時30分からで「試作小説の批評と推敲」です。受講生をABグループの2グループに分けて、高山先生、小網先生、小西先生を交えながらの合評会となります。本日講義いただいた高山先生には主に総評と随時の指導、そして小網先生、小西先生には各グループの講師となって批評と推敲をしていただきます。
 受講生の皆さんの渾身の試作小説の批評と推敲、合評会が、少しでも実りあるものとなるよう、スタッフ一同、工夫を取り入れた運営を考えています。たくさんの皆様の受講を楽しみにお待ちしております。


      



〇7月1日(土) 第1回短歌入門講座

「ようこそ短歌の世界へ」 ~どんな歌が好きですか~

講師: 栂 満智子(短歌雑誌「新雪」編集委員)

 

 

入門講座の開講です。講師は、短歌雑誌「新雪」編集委員を務め、ご自身の短歌集「ゆきあかり」にて泉鏡花記念金沢市民文学賞を受賞された栂 満智子先生です。
 講座は全3回で、第1回「ようこそ短歌の世界へ」、第2回「歌を詠む−感動を言葉に」、第3回「歌会を楽しもう」となっています。第1回講座内容の概要をお伝えします。


□受講生の好きな短歌の紹介から始まりました。
 まずは、自己紹介から始まりました。自分の好きな歌一首を紹介していきました。栂先生の解説を交えながら進んでいきました。
 ・売りにゆく柱時計がふいに鳴る横抱きにして枯野ゆくとき
                       寺山 修司
 ・たっぷりと真水を抱きてしづもれる昏(くら)き器を近江と言へり
                       河野 裕子
 ・東の野に炎の立つ見えてかへり見すれば月傾きぬ
                       柿本人麻呂
 ・ぬかるみを避けるがごとく掛け過ぎた七味選り分けきしめんを食う

 ・栄光の元禄箸を命とか未来のために割りましょう、いま
                       笹井 宏之
 事実と虚構が入り混じる多彩な才能の持ち主「寺山修司」の歌、無味、無音の透き通った琵琶湖の静けさと近江を昏き器と例えた「河野裕子」の歌、太陽と月が同時にある空を詠んだ有名な「柿本人麻呂」の万葉集からの歌、ユニークな素材に作者の懸命さが象徴された歌、難病を抱えインターネット短歌界で活躍され26歳で亡くなった「笹井宏之」の歌があげられました。
 講座は、体調を崩された方が多く5名のスタートとなりましたが、いろいろな歌が紹介されました。歌と詠まれるお声、人柄が結び合う大切な時が流れた自己紹介で講座はスタートしました。

 続いて栂先生の講義で、➀「短歌とは何か」②「何故うたというのか」③「短歌朗詠」④「歌会始のお題「友」から」と講義は進んでいきました。実際の短歌朗詠、歌会始の朗詠では朗々とした歌が会場に広がり、私たちの心に染みわたっていくようでした。
 最後⑤「いい歌をたくさん詠もう、口遊(ずさ)みましょう」では、「愛誦性のある歌」から25首の栂先生お気に入りの歌を紹介いただきました。受講生が25首の歌を順番に朗詠し、先生の歌に対する熱き思いをお聞きしながら詠み味わっていきました。ここでは、お話があった25首のうち8首を先生のお話も交えて短く紹介します。

 ・天(あめ)の海に雲の波立ち月の船星の林に漕ぎ隠る見ゆ
                       柿本人麻呂
  ◇万葉集です。星と言えば日本では七夕に見られる恋の歌はありますが、星を
   詠ったものは数少ないです。この歌は星そのものを詠った歌で、さざ波のような
   雲が流れる中、星の林にゆったりと進んで行く三日月の船を詠んでいます。壮
   大な情景が私たちの瞼に映し出されるようです。もう言葉が見つかりません。


 ・家にあれば笥(け)に盛る飯を草枕旅にしあれば椎の葉に盛る
                       有間 皇子
  
◇有間皇子は、中大兄皇子と不仲であり、謀反を企てたのですが、裏切られて
   最後は19歳で処刑されました。それを伺うと、この歌の哀しさが胸になおも
   迫ります。
栂先生が大切にされている万葉集からです。

 ・白鳥(しらとり)は哀しからずや空の青海のあをにも染まずただよふ
                       若山 牧水
  ◇「空の青」と「海の青」にも染まらずにたたずむ白鳥の哀しき様子が表れています。
   
お酒が好きでお酒の歌にも名歌が多い若山牧水です。若き時の青春の孤独さが
   痛感される歌です。空と海の境目がないほどの青の世界と白鳥の対比。見事です。
   若山牧水は子の対比で凄い世界を描いている気がしてなりません。


 ・君かへす朝の舗石さくさくと雪よ林檎の香のごとくふれ
                       北原 白秋
  ◇室生犀星が敬愛していた北原白秋です。恋の歌でしょう。君の足元から聞こえる
   音がします。「さくさく」というオノマトペの新鮮さ、まるで林檎を食べるような
   音が私たちの耳元に聞こえ、さらに林檎の香りが鼻からすうっと抜けていく気も
   します。なんと純朴で清冽な歌かと思うばかりです。


 ・清水へ祇園をよぎる桜月夜こよひ逢ふ人みなうつくしき
                       与謝野晶子
 ・木屋街は火(ほ)かげ祇園は花のかげ小雨に暮るる京やはらかき
                       山川登美子
  ◇与謝野鉄幹に恋する与謝野晶子と山川登美子です。同じ「祇園」を歌っても
   その表現は栂先生の言われるようにまるで趣が違います。前向きで自由奔放らしい
   陽の力あふれる与謝野晶子の歌。桜月夜、その月の明かりに照る桜が咲き誇る
   様子が見えます。そして対照的に山川登美子の作品は、まるで白黒の水墨画の
   ような静けさの中に祇園が浮かび上がります。栂先生のお話を伺っていると歌人へ
   の興味は高まるばかりです。

 
・死に近き母に添寝のしんしんと遠田のかはづ天に聞(きこ)ゆる
                       斎藤 茂吉
  ◇この歌を詠まれた栂先生の眼には、まるでご自分の母親を愛おしまれているような
   ほんのりとした明かりが灯されているようです。泉鏡花記念金沢市民
文学賞受賞
   作品、歌集「ゆきあかり」(栂 満智子 本阿弥出版)には、こんな
作品があります。
   ・幼児と指絡めれば思ひ出づ母とのげんまん約束ひとつ
   栂先生はご自身の母への思いを歌にたくさん綴られています。ぜひ歌集を今一度、
   手に取って開いていただけたらと思います。


 ・くれなゐの二尺伸びたる薔薇の芽の針やはらかに春雨のふる
                       正岡 子規
  ◇若き薔薇の芽の針のやはらかに春雨のふる様子が目の前にあらわれます。目の
   に見える細かな毛、そして水滴を湛える芽の針が見えます。何と繊細な歌なのか。
   私たちも朗詠する受講生の歌をみんな目をつぶって静かに聴き入るばかりです。


 このほかにも、大伴旅人、源実朝、長塚節、石川啄木、永井陽子、栗木京子、俵万智らの歌を1首ずつ紹介していただきました。
 今回の講座は、とても不思議な空間を生み出しました。歌を受講生同士で詠んで、先生の歌に対する想いを聞かせていただき、一人一人が心に浮かぶ数々の情景、におい、触感などを心から楽しんでいく空間となりました。
 しかもその空間は、温かく、穏やかで、豊かなものとなっていたような気がしています。第1回目は「ようこそ短歌の世界へ」との講義でしたが、「今、みんなが奥行深い短歌の世界の入口にそっと足を踏み入れている」のかもしれないと思いました。
 これからの講座も心から楽しみです。栂先生、本当にありがとうございました。

 次回は、8月19日(土)午前10時30分からです。今回も課題が出ています。
 次回のテーマは「ときめき」です。「ときめき」とは「感動したこと」「発見したこと」「惹かれた言葉と出会ったこと」などです。受講生の皆さんが見つけた「ときめき」を、みんなで紹介し合います。「ときめき」は幾つあっても構いません。
 第2回講座では、みなさんに紹介いただいた「ときめき」をもとにして、自分で短歌を作成していきます。
 皆様の多数のご参加をお待ちしております。また、体調が優れずに欠席された方もおられます。体調が回復されますよう、文芸館スタッフ一同、心から祈っております。


      



〇6月18日(日) 第1回伝承文芸講座 ~金沢の昔話と伝説をたずねて~

「加賀・能登の源平を伝説をたずねて」 ~平時忠の人物像と奥能登の伝承~

講師: 藤島 秀隆(金沢工業大学名誉教授)

 

 
 伝承文芸講座では、藩政時代に成立した古典文学の主要な作品を取り上げて学習します。作品を読解して人間像の把握につとめ、説話の伝承と展開および口承文芸との関わりを考究していく講座です。全3回講座となって、次のような予定です。
  ○第1回  6月18日(日)   「加賀・能登の源平伝説をたずねて」
  ○第2回  7月23日(日)   「加賀藩の能楽と『平家物語』」
  ○第3回  8月27日(日)   「堀麦水著『三州奇談』の世界」
 第1回「加賀・能登の源平伝説をたずねて」では、藤島先生の貴重な研究資料プリントを使用しての講座となりました。抜粋して紹介します。


1 平家物語とは?
  ・作者不詳 13世紀ごろには原形成立か。軍記物語。
  ・平家一門の興亡の歴史が語られていく。その中に、清盛の寵愛を失った祇王、高倉
   天皇の寵を得ながら清盛の圧迫を恐れて嵯峨野に隠れた小督、平家一門の滅亡後、
   大原に隠棲した建礼門院徳子など、女性の哀しい物語も織り込まれている。


2 平 時忠とは?
  ・1127年に平時信の長子として生まれる。清盛の補佐として、正二位権大納言に
   昇進。平氏没落後、能登に流され、1189年に没している。
  ・時忠の家は、忠盛・清盛の武家平氏とは違い、貴族平氏である。時忠は、平氏全盛
   時代には、清盛の側近として重んぜられ、世間では「平関白」と呼んだという。
  ・清盛亡きあとも一門の政治的指導者として活躍する。平氏滅亡後、帰洛(京に帰る)。
   そこでも保身のために娘を義経の妻とする策を講じたが、配流先で3年半ののち没
   した。
  ・策略に長けた政治家。検非違使別当の時には、強盗12人の右腕を切って獄門にか
   けたり、屋島では、死者の顔に「浪方」の焼き印を押すなどの蛮行も伝えられてい
   る。気性の激しい人でもあった。

3 石川の史跡巡り(伝承地)について
  (1)平大納言時忠卿およびその一族の墳(県指定)
    ①所在地
     …珠洲市大谷町則貞
    ②見学ポイント
     …壇ノ浦の合戦で捕らわれる。この地に流罪となる。その時忠と一族の墓が大
      谷峠の中腹に8基建っている。向かいの鞍干場には、源平盛衰記にある、時
      忠の自詠の句一首が自然石に刻まれている。
  (2)上時国家(県指定)
    ①所在地
     …輪島市街の町南時国
    ②見学ポイント
     …源平壇ノ浦の戦いに敗れて落ち延びた平家の大納言・平時忠の子孫と言われ
      る。
      家紋「揚げ羽の蝶」の衝立、格天井の「大納言の間」など威勢を偲ばせる豪
      華な調度品を眼を引く。
  (3)下時国家(県指定)
    ①所在地
     …輪島市町野町西時国
    ②見学ポイント
     …1670年、時国家12代藤左エ門時保の時、隠居分家してこの地に移る。
      肝煎、山回廻代官や能登外浦一円の塩吟味などを務めた家柄である。


 残念ながら講座の一部しか紹介できませんが、いただいたのは貴重な資料ばかりでした。難解な資料なのに、藤島先生は大変わかりやすく解説してくださいました。心の底から溢れ出てくる講話のおかげで、受講生は口承文芸の面白さを存分に堪能することができました。藤島先生、そして25名という定員いっぱいの受講生の皆さん、本当にありがとうございました。次回の参加も心よりお待ちしております。

 次回、第2回伝承文芸講座は、7月23日(日)午後2時からです。講座は「加賀藩の能楽と『平家物語』」です。講師は引き続き藤島秀隆先生です。皆様のご参加を心よりお待ちしております。
 なお、藤島秀隆先生の著書「加賀藩の伝承文芸」(北國新聞社)にも、本3講座と関連する内容があります。皆様におかれましては、ぜひともお読みいただけたらと思います。書店にもありますし、金沢文芸館3階にも置いてありますので、いつでも来館されてご一読いただけたら幸いです。お待ちしております。


      



〇6月17日(土) 第2回小説講座 ~小説の実作について①~

短編小説の魅力について

講師: 皆川 有子(『櫻坂』同人)

 

 
 第2回小説講座が開催されました。講師は文芸誌『櫻坂』同人 皆川 有子(みながわ ゆうこ)先生です。テーマは「小説の実作について①」です。
 受講生一人一人が「飛行機で眠るのは難しい」 小川洋子・著(新潮文庫)の文庫本をテキストにした講座が行われました。ちなみに小川洋子氏は、作品「ブラフマンの埋葬」で泉鏡花文学賞を受賞されています。講座の一部を紹介します。作品引用部はすべて小川洋子氏「飛行機で眠るのは難しい」(新潮文庫)からです。


◆小川洋子氏の小説の優れたところは?
 ○「呼びかけ」が効果的だ。
 ○ドラマは正反対から始めるのが良い。

   ・「飛行機で眠るのは難しい。そう思いませんか、お嬢さん?
    隣の男が話し掛けてきた時、わたしは嫌な予感がした。お嬢さんなどと気安く
    呼ばれたのが気に入らなかったし、それに見知らぬ人と話をするには、疲れす
    ぎていたからだ。
    ⇒「呼びかけ」を効果的に入れることで、読み手が飽きずに読み進めていける。
      太宰治、養老孟司らも「呼びかけ」の名手である。
    ⇒インパクトある出だしが良い。
 ○短い情報量で伝える。短編小説では特に大切だ。
   ・原稿を2本仕上げ、真夜中過ぎにファックスされてきたインタビュー記事のゲ
    ラをチェックし、それから今回の取材旅行に必要な書類をまとめていたら、い
    つのまにか夜が明けていた…(中略)…「ウィーンへはご旅行で?」「仕事で
    す」素っ気なくわたしは答えた。
    ⇒適切な情報を短く的確に表現している。短編小説の名手としての凄さが出て
     いる。
 ○小川氏独特の言語表現・描写は、不思議な物語の世界に読者を誘う。
   ・「言ってみれば、ここは時間の迷路ですからね。書類やら資料やら、そんな地
    上の現実になど惑わされず、出口にたどり着くまでじっと目を閉じる。眠りの
    世界に身体を浸す。それが大事だと思うんです」
    ⇒普通ならば「煩わされず」と書くべき。「惑わされず」という小川氏の独特
     な表現は読者のひっかかりを生んで強いインパクトを与える。
   ・僕を最も驚かせたのは、キャンディーの缶に入ったヤモリのミイラでした。
   ・ヤモリは黙って老女を見つめていました。
   ・暗闇にヤモリの影が映っていた。
    ⇒物語の要所にヤモリを登場させている。意図的で印象的な存在となっている。
 ○唐突な言い方は「布石」となり読者の心に残る。読者は小説を読み進める力を得る。
   ・「あなたは海老なの?
   ・「ひどい海老アレルギーなの」
   ・「海老のペーストです……」
    ⇒老女の死に至る原因となる。唐突な表現で布石が打たれる
 ○打った布石は必ず回収することが大切だ。
   ・「海老」「ヤモリ」など効果的に打った布石は、最後に回収していくことが大
    切である。布石を回収せずに打ちっぱなしでうやむやに終わることがあっては
    ならない。
 ○登場人物の心情の変化を短い言葉で表現する。
   ①隣の男が話し掛けてきた時、わたしは嫌な予感がした。
   ②素っ気なくわたしは答えた。
   ③うなずきながら、男のお喋りに対し、自分がさほど不愉快を感じてないことに
    戸惑っていた。
   ④気がつくとわたしは自分の方から口を開いていた。
   ⑤声には不思議な魅力があった。押しつけがましいわけではないのになぜか鼓膜
    を引き寄せ、しっとりとした響きを持ち、二人の間の狭い空間から決してはみ
    出さなかった。
    ⇒わたしがどんどんと隣の男に心惹かれていく様が短い言葉で示されている。
     見事な展開力だ。
 ○余韻あるラスト。小川氏の世界観、イノセント(大きな魂)に触れることが出来る。
   ・暗闇にヤモリの影が映っていた。キャンディーの缶や、映画俳優の写真や、銀
    色の紙や、エビのカナッペや、薄紫の花束が映っていた。私の手の中には、小
    さな死の魂があった。その魂がわたしを眠りへ導こうとしていた


 講座の途中では、随所に受講生から作品への思いを伝えてもらい、それについての皆川先生の思いをたくさん語っていただきました。一部を紹介します。
  A 生徒「伏線がいろいろあり、ひっかかって、よくわからない感じがしました」
  B 皆川「ひっかかるって意識はすごいです。『深い森はよく見えないもの』なのです」
  A 生徒「読解力がなくて本小説は自分にはしんどい感じがした」
  B 皆川「しんどさは新しい扉を開ける時。今、新たな入り口に立たれているんだよ」
  A 生徒「読解力がなくて。キャンディー缶は私は○○○ドロップの缶を思っていて…
       そうするとどうやってヤモリが飛び出たのかとか考えてしまって…」
  B 皆川「言葉の美しさにとりつかれてますね。人により言葉の捉え方は違います
       それがあるからいいのです。斎藤 孝さんは『映像でしか言葉を感じ取れな
       いことは人間の能力の危機』と言われています」
  A 生徒「描写のすごさがある。読後感が良くて悪意がない」
  B 皆川「小川氏のイノセント(大きな魂)をあなたは感じておられるからです」


 講座の一部を紹介しました。本講座は日本の代表的な小説家である小川洋子氏の「飛行機で眠るのは難しい」をテキストとして講座であり、皆川先生には、貴重な数々の教えをいただきました。今後の小説作りへの大きさ示唆をいただきました。

 次回、第3回小説講座「提出作品についての批評(個別指導を中心に)」は、Aグループ7月15日(土)、Bグループ7月22日(土)です。講師は、 剣町 柳一郎(つるぎまち りゅういちろう)先生(小説家)、宮嶌 公夫(みやじま きみお)先生(『イミタチオ』同人)、皆川 有子(みながわ ゆうこ)先生(『櫻坂』同人)、藪下 悦子(やぶした えつこ)先生(小説家)です。皆様のご参加をお待ちしています。
 なお、グループ分けについては、館からお知らせいたしますので、連絡をお待ちください。


      



〇6月16日(金) 出前講座 大浦小学校1年

金沢の民話を学ぼう

講師: 吉國 芳子(ひょうし木の会

 

 
 金沢市立大浦小学校に訪問しました。学校の門扉で立っておられる方に職名を伝えると、「聞いております。お待ちしていました」と笑顔で対応くださいました。こうやって学校安全ボランティアの方が常駐されて、子どもたちの尊い命を守っておられることに敬意をもって、頭が下がるばかりでした。
 今回の出前講座の講師は、 吉國 芳子(よしくに よしこ) さんです。1年生は2クラス50名で、一緒に読み聞かせをしました。吉國さんが「こんなに集中して聴く1年生は初めてです」といわれるくらいの充実した1時間でした。講座内容を抜粋して紹介します。


紙芝居「子育てゆうれい」
 紙芝居が始まる前、「怖い話だ。ヤッター!」と拍手して喜ぶ子どもたち。吉國さんの拍子木に合わせたみんなの手拍子で、紙芝居が始まりました。不思議です。お話が始まったとたんに、子育て幽霊のお話の世界に入り込んでいく子どもたちの姿がありました。
 息を呑むような静けさです。吉國さん演じる母親、飴屋の主人、和尚さん、赤ちゃん、そして村人らを使い分けた声によって、登場人物の姿が今目の前にいる世界が広がっていきました。子どもたちは手に汗握るような表情で、前のめりになって聴いています。
 そして、紙芝居を終えて、赤ちゃんが無事にお寺の住職にまで成長してことに安堵している子どもたちがいました。最後に、吉國さんは、お寺の写真と母親の絵を子どもたちに見せました。お話が伝わる金石「道入寺」と円山応挙作と言われる「子育て幽霊の墨絵」の写真でした。すると子どもたちからこんな声がもれました。
 「本当におったんや」「この話は本当やってんね」「よかった」とつぶやいて顔を見合わせる子どもたち。その空気は本当に温かいのです。決してにこやかな顔をしていないであろう幽霊となった母親の絵です。でも、それを「怖いもの」としてみるのではなく。「愛情あふれる母親」として優しく見つめる子どもたちがいました。
 「ああ、なんと優しい子らなんだ」と思うばかりでした。卓越した読み手は、金沢民話の根底にある愛と哀しみの世界に子どもたちを誘うのでしょう。優れた読み手と感受性高い子どもたちが一緒に創り出した伝承文芸の世界が、ここ大浦小学校にはありました。
 大浦っ子の育ちの素晴らしさを実感する時となりました。


パワーポイント「法船寺のねずみたいじ」
 続いてパワーポイントの大画面でのお話がありました。あらすじを紹介します。
【あらすじ】
 金沢市の新橋と御影大橋の間、中央通り「法船寺」のお話です。そこではねずみが悪さばかりをして、和尚さんも困っていました。そんな時、近所のおじいさんが一匹の子猫を持ってきました。なんでもその子猫の母親はよくねずみをとる猫で、子どももよくねずみをとってくれるだろうと思って村人が持ってきてくれたのでした。
 しかし、子猫は大きくなっても寝てばかりで、ねずみをとろうとしません。そんなある日、和尚さんはお寺の猫の夢を見ます。
 「和尚さん、あのねずみはただのねずみではありません。能登の鹿島に強い猫がいます。私は、助けてもらいたいと思います」と猫は言います。
 2、3日して、お寺の猫は見たことがない猫を連れてきました。そして、2匹の猫は本堂の天井裏に上がっていきました。「ニャー、ニャー!」凄まじい戦いです。和尚さんもお経を読んで応援します。ついに、ねずみは天井から落ちてきて、お寺の2人のお坊さんに退治されました。しかし、2匹の猫はねずみの毒気にあてられたのでしょう。天井裏で下に落ちていったねずみを睨みながら死んでしまいました。
 和尚さんは、その2匹の猫のためにお墓を作って毎日拝みました。今も法船寺には義猫塚(ぎびょうづか)といって、立派な猫のお墓が残っています。



 子どもたちは不思議な金沢民話に魅了されるばかりでした。紙芝居を楽しむ子どもたちは、もう勇敢な猫になりきったように手に汗握らんばかりの姿がありました。
 紙芝居が終わって、吉國さんから「法船寺の義猫塚(ぎびょうづか)」の写真を見せてもらい、子どもたちは金沢民話の持つ魅力に引き込まれていました。


 大浦小学校1年生の子どもたちの「輝く目」「よく聴く耳」「きりりとした姿勢」に感心するばかりでした。そして、いかなる時も人への優しさを大切にする心がありました、吉國さんが手品ではさみを使った時に出る何気ない「手を切らないでね」という声。子育て幽霊の絵を優しい母親としてみることができる慈愛ある心。
 大浦小学校の感受性豊かな子どもたち、感動して涙をためておられた先生、そして充実した時間を紡ぎ出してくださった吉國さん、本当にありがとうございました。
 大浦小学校の子どもたちの健やかな成長を、これからも心から願っています。


      



〇6月11日(日)第2回 朗読会『青春の門 自立編』

英子、カオル、大人の女性との出会い

朗読: 髙輪 眞知子(朗読小屋・浅野川倶楽部代表)


 

 6月11日(日)第2回朗読会が、朗読小屋・浅野川倶楽部代表 髙輪 眞知子(たかなわ まちこ)さんにより行われました。今回は「最初の仲間」後半部です。

 信介は緒方と共に下宿することとなります。緒方からは、下宿の大家さんの三人娘(昌子、英子、怜子)について話を聞かされて、まず英子を紹介されます。自然と英子に魅力を感じる信介がそこにはいるのでした。
 それから、緒方は信介の持っているお金で女を買うことを提案しました。緒方の行きつけである赤線。そこで働いているカオル、初美と出会い、信介は赤線で大人としての体験をしていきます。
 風変わりな女カオル。ガルシア・ロルカの詩集を読み、チェーホフ、ドストエフスキーらの本を語る、そんな女性カオルとの出会いがあったのでした。
                          (「最初の仲間」まで)

 18名の参加の朗読会となりました。本日は、様々な女性と出会いながら大人の体験を重ねていく信介の言動や気持ちが描かれている場面です。髙輪さんのテンポ感ある勢いある朗読に魅了されていく私たちでした。気づいてみたらあっと言う間の40分間でした。畳みかけていくような緊張感とスピード感ある読みに魅了されるばかりでした。
 本日は、福岡市の筑豊ボタ山のふもとに住んでおられるご夫婦が、髙輪さんの朗読を聞きに文芸館にお越しいただきました。朗読会を終えてもなごり惜しむように、髙輪さんと共に、青春の門、そして五木寛之先生のお話に花が咲く貴重な時間となりました。
 参加いただいた皆様、遠くから駆け付けて下さった皆様、そして髙輪眞知子さん、本当にありがとうございました。

 第回は月16日(日)14時からです。「青ざめた娘」から「五月の夜の乳房」までの朗読となります。新たな女性「英子」との出会いがあります。みなさん、ぜひ、ご参集ください。お待ちしております。


      



〇6月10日(土)第1回 詩入門講座 

詩というもの1(詩に親しむ)

講師: 井崎 外枝子(詩誌「笛」同人)、中野 徹(詩誌「笛」同人)


 
 今年度の詩入門講座は三人の講師の方にお力いただきます。紹介します。
 井崎 外枝子先生(詩誌「笛」同人)、中野 徹先生(詩誌「笛」同人)、和田 康一郎先生(金城大学非常勤講師)です。
 今年度は8名の受講生参加での講座がスタートしました。例年以上に、より深まりある講座を目指して、講師の先生方にもさらなる工夫を取り入れていただいています。抜粋して紹介します。


1 「天声人語」にも「詩」が入っている。
  天声人語が提示されました。段落ごとに文章から抜き書きを提示しました。
 あの原爆はいったい、どこにおちたのだろうか−。…(G7各国の首脳)…
 ②原爆はどこに落ちたのか。それは日本に落とされた。…(78年前もう二度と)…
 ③原爆はどこに落ちたのか。それはアジアに落ちたと言える。…(北朝鮮の挑発)…
 ④原爆はどこに落ちたのか。それは世界に、この地球に落ちたのだ…(ロシアによる)…
 原爆は、広島に落とされた。

 井崎先生から提示された天声人語には、受講生一同、はっとさせられました。段落ごとに抜き書きした文は、それ自体が一つの完成した詩となって私たちに迫ってきました。このような見方、感性で新聞記事を見ていなかった私たちは、改めて詩人の感性の豊かさと鋭さを感じ入るばかりでした。身の周りを注意深く見ていく感性を磨いていかねばと思う時となりました。

2 雲の詩 3編から学ぶこと
 「雲」を題材に書かれた3編の詩を朗読しながら、学びを深めていきました。こんな講座も初めての試みです。令和4年度あすなろ青春文学賞奨励賞を受賞した中学生、次に講師の中野 徹氏の詩、そして講師の井崎 外枝子氏の詩です。3編の詩を原文のまま紹介します。

   雲の存在
       中学生(あすなろ青春文学賞受賞者)
 雲があると雲の形がある
 雲がないと形がない
 雲にも、体があると思
 雲の形が動物に見えたりする
 ある形にみえたりする
 だから雲にも見えない体がある
 そうやって雲も生きているんだ


   からっぽの空
       中野 徹
 ゛何も無い
  何も無いと わたしがわめけば
  あなたはわたしに 何をくださいますかしら゛※
 
 遠い昔
 とある詩人がわたしに問うたとき
 わたしは からっぽの空に浮かぶ
 ひとつのうすい雲だった
 何も思わない 何も考えない
 何もなしえない 何ものにもなり得ない
 何もない 何も 何もと つぶやきながら
 行きどころもなく漂う雲だった
 そうであっても
 からっぽの空にも雲は流れ
 時が流れて行く
 うすい雲にも対の雲が連れ添い
 小さな雲が従う
 何もないことに
 変わりはなかったが
 消えそうで消えない何かが
 小さな固いものが消えては生じる
 からっぽの空から
 荒々しく降る
 雹のようなものが生じてくる
          ※高野喜久雄詩集「存在」より「あなたに」


   雲の産着
       井崎 外枝子
 お母さん ぼくは
 いい子になれなかった
    あのとき ぼくは手を離してしまったのです

 海に出ていった お父さん
    あのとき ぼくに言いたかったことは何だったの?

    はるか下の方で
    友達が遊んでいます
    小さな輪になって
    一人、二人、三人、四人
    ぼくだけがいません

 ぼくはいま ふんわりと産着の中 雲の中
 ぼくは大人になれなかったけれど
 お母さんのことは忘れない

 もうすぐ お父さんにも会えそうです
 だって空と海はつづいているのだから

 遠い親戚で 夕暮れ
 男の子が生まれるでしょう
 もうすぐ 波が届けに行くはずです


 雲と言うものを題材にしながら、詠み方が全く違う三者の詩。それぞれの詩の持つ良さを噛みしめて詠み味わっていく豊かな時間が流れる学習となりました。
 「誰でもない自分。一人の人間としての感性で詩を詠んでいきたい」
 「詩は熟考していると天から舞い降りて来る一行があるもの」
と語られた井崎氏・中野氏。
 詩の持つ奥深さを二人の詩人、そして中学生から学んだ貴重な時間となりました。
 次回の詩入門講座は7月8日(土)15時からで、講師は金城大学非常勤講師の「和田 康一郎」先生です。皆さんのご出席を楽しみにしております。
 なお、試作の「詩作品」の提出日でもあります。8月には受講生みなさんの詩で合評会を行います。みんなで充実した時間にと思います。多数のご出席を楽しみにしております。 


      



〇6月10日(土)第2回 小説入門講座 

小説作りの基本とは

講師: 小網 春美(「飢餓祭」同人)

 

 第2回小説入門講座の講師は、小説家の小網春美氏です。小網氏は2021年度、「しずり雪」(能登印刷出版部)にて 「河林 満」賞を受賞されました。今回は長い執筆活動から学んでこられた教えを講義いただきました。一部とはなりますが、紹介します。


◎小説づくりで大切なことは?

1 ストーリーを創る時

 ・人との関わりは「話の宝庫」作り
  私は祖母、客人などの話にアンテナを張っている。
 ・小説は人の心の中をのぞいていくもの。人間を書くものだ。
 ・小説はフィクションだ。嘘をつくなら徹底的に嘘をつき通すことが大切だ。

2 視点について
 ・自分が、伝えたい「人間」を表現する視点を選ぼう。
  自殺した人がいる次のストーリーを考えたとする
  ①野球肘の痛みで眠れない→ ②夫婦仲〇→ ③自殺してしまう
  ④実母は精神科看護師である→ ⑤苦悩していく
   こんなストーリーを考えた場合、誰の視点で書いていくのかが大切である。
   主人公?妻?実母?など、どの視点が一番、作者が語りたい「人間」を
  伝えられるかをよく考えたい。視点により小説の書き方は異なってくる。

 ・一人称か、三人称か? 決めたらゆるがない。
  一人称は主観的で、三人称は客観的となる。一人称は主人公と自分との距離が
 とれなくなりがちである。視点はぶれてはならない。特に短編小説は一人の視点で
 決めていくことが大切である。


3 構成について
 ・起承転結で書くと言われるが窮屈で書けなくなるものだ。
 ・小説は書き始めができると流れが作られていくものだ。
 ・ただ、起承転結の「起」と「結」の部分には気を付けていくことが重要だ。

4 短編小説作りについて
 ・長編小説のあらすじになるのは決してあってはならない。
 木の「幹の断面」を書くのが短編小説である。
  …・エピソードや事件を少なくする。
   
・描かれる時間は短いものにすること 長年△
    ・1週間から1か月が   短編小説
    ・1か月から1年までが  中編小説
    ・一年から数年にわたるのが長編小説
 登場人物は4人までとするのが良い。
  …多くなった時、関わりが少ないAさん、Bさんをひとまとめにして差支えない。

5 文章で大切にすること
 〇センテンス、段落は短くして
 400字詰原稿で一つの文は2、3行までが妥当。短くする訓練を。
 ・長い文章はねじれやすい。主語と述語が合わなくなりがち。
 〇言葉は絶えず問い直すようにしていく
 言葉の豊富さは人の奥の深さを表す。
 ・言葉にこだわりを持つ→言葉を自分自身で絶えず問い直していく。
 ・類語を使う…辞書で自分の心とぴったりの言葉を見つけていく。
 ・合わない言葉は思い切って捨てる。四字熟語は避けて普通の言葉で。
 ・体言止めは強調する時に使う。でもいくつもあると軽くなる。
 ・「…」は使い過ぎると軽くなる。安易に使わない。
 ・「すごい」という言葉は使い過ぎると軽くなる。
 ・(  )の説明は原則使わない。例:あきこ(47歳)
 〇段落多用をしない
 ・若い作家は段落多用していく傾向あり。→軽くなる。
 
400字原稿用紙に3つの山ができるのが理想
 〇読点は適切に活用する
 1行に一つあるのが理想か→現在は少ない傾向あり→わかりやすさが大切
 読者に親切であることを意識して。
 〇文末は丁寧語(です・ます)と常体(である・だ)を意識して
 短編小説は常体であるのが基本。
 両者を混ぜてはならない。
 〇現在形、過去形は効果的にとりまぜて
 ・過去形ばかりだと単調になる。
 ・現在形は臨場感が出る。両者を織り交ぜて書くことが大切。
 〇ありきたりの表現をしないこと
 ・食べた△
  ・のみこんだ 流し込んだ 口に含んだ
 ・言う△
  ・もらす ・つぶやく ・声を上げる ・切り出した
   ・口を開いた ・小声で答えた ・耳元で囁く
 〇会話の文章を効果的に活用すること
 ・地の文が上手でも会話文がまずかったら小説は△
 〇方言を上手に活用すること
 ・「ちょっこし」(小網先生が表現した時)→「きれいな言葉だね」と言われた。
 ・「方言」を効果的に使うと言葉はわからなくても雰囲気が伝わってくる。
 ・会話文で対人関係が伝わってくる。
 〇オノマトペは自分で表現していくこと
 ・谷崎潤一郎のオノマトペは? →・鶯…ケッキョ ケッキョ
 ・岡本かの子のオノマトペとは?→・ペキンとおれた ・キャラキャラと笑い続ける
 〇手垢のついた比喩表現は絶対にしないこと
 ・赤いりんごのような頬っぺた→最悪△ もうここで誰も次を読まない。
 ・納豆の糸のような雨が降る。…小林多喜二「蟹工船」から

 小網春美先生のお話は、小説家としての執筆活動から具体的な事例をあげながらのお話でした。視点についても、現在ご自身が書かれている小説を例に挙げて視点をどう考えているかをお話いただきました。豊富な経験から生まれ出るお話は大変に重みのあるものとなりました。中学生から年配の方々まで幅広い受講生が、真剣に小網先生のお話を聞かれていました。大変に充実した講座となりました。結びに、小網先生のお言葉をあげます。

・小説作りは「楽しみ」であり「苦しみ」でもある。でも「苦しみ」は「楽しみ」へとなる。
・堂々とうそが付けるんだよ。こんな楽しみは他にはないんじゃないのかな。

 次回は、7月8日(土)10時30分からで、講師は高山 敏先生です。多数の皆様のご参加をお待ちしています。


      



〇6月9日(金)第3回 出前講座 中村町小学校4年

室生犀星について学ぼう

講師: 嶋田 亜砂子(室生犀星記念館 学芸員)

 

 
 中村町小学校4年生2クラス計52名参加の「室生犀星について学ぼう」の出前講座を実施しました。今回の講師は、室生犀星記念館の「嶋田亜砂子」(しまだあさこ)学芸員です。
 講座の内容を抜粋して紹介します。


◇室生犀星とは?

〇生まれた家、育った寺
 ・明治22年8月1日生まれ。本名は照道。
 ・詩、俳句、小説、エッセイ、童話など多数の作品を書く。
 ・犀星記念館のある場所で生まれる。→ 雨宝院に預けられる。
 ・養父「真乗」は優しいお坊さん、養母「ハツ」はきびしい女性。
〇小学校時代
 ・野町尋常小学校(旧野町小)に通う。
 ・勉強は苦手
 ・けんかして叱られてばかりの子ども
 ・庭や犀川で、木・草花・魚・虫などの生き物と触れ合うのが好き。
 ・長町高等小学校に通う。
〇文学へのめざめ
 ・12歳で金沢地方裁判所に務める。
 ・俳句を始める。たびたび新聞に載る。
〇旅立ち、放浪
 ・20歳に、詩人を志して東京へ行く。仕事もお金もなく、苦しい放浪生活を送る。
  やがて詩人北原白秋に認められる。また、萩原朔太郎と出会って親友となる。
〇はじめての詩集
 ・大正7年 29歳で詩集「愛の詩集」「抒情小曲集」を出す。
〇小説家になる
 ・小説「幼年時代」「性に目覚める頃」「あにいもうと」「杏っ子」などを書く。
〇結婚、家庭
 ・金沢の女性とみ子と結婚。長男豹太郎を1歳で亡くす。長女朝子、次男朝巳が生まれ、
  
幸せな家庭を築く。犀星は家庭をとても大切にした。
〇庭づくり
 ・趣味は庭づくり。「庭」「天竜寺」「名園の焼跡」は庭づくりから生まれた小説である。


 嶋田氏はその時々の室生犀星の顔写真を黒板に貼っていかれました。飼い猫と一緒に火鉢で温まっている写真を見ると、みんなは「かわいい」と笑顔いっぱいに歓声をあげました。その写真は、飼い猫が犀星の隣で犀星と同じように前足を火鉢にかけて嬉しそうに温まっているものでした。まさに動物を大事にする犀星らしい写真にみんなにこにこでした。

 最後に子どもたち自身が朗読したいと選んだ詩を、子どもたち、嶋田氏、先生らみんなで朗読しました。それが室生犀星作「金魚のうた」です。

  金魚のうた
 金魚はびっくりして/うんこをした。/僕がいそいで
 えんがわから/とびおりたときに/金魚は水の上にういていたが
 ふいにぼくのかげが水にうつると、/金魚はびっくりして/水のそこにしずんで行った。
 
あんまりびっくりしたので/うんこをした。
 うんこはかなしげにういてしずんだ。

 子どもたちは読み終えた後、うんうんとうなずいて共感しています。そして笑顔でにっ
こりと顔を見合わせます。その様子を見て微笑む嶋田氏。まさに室生犀星の詩が持つ力の大きさを感じ入るばかりでした。
 嶋田亜砂子学芸員の出前講座は、探求心旺盛な子どもたちに、新たな学びの火種を心に燃やして下さった気がしました。
 
これから子どもたちは、雨宝院、そして室生犀星記念館へと見学しながら歩みを進めていきます。中村町小学校の子どもたち、先生方、そして嶋田亜砂子学芸員には貴重な学びの時間をいただきました。ありがとうございました。
 
最後に中村町小学校から校歌の一番を紹介します。

  教えの庭に   百草の
  とりどり匂ふ  春なれや
  友らつどいて  あふぐ山
  秋はよそほひ  きらめきて

 中村町小学校の子どもたちが、友らとつどい、百草の匂いに包まれながら、幸せな未来を歩んでいかれることを心から願っています。


      



〇6月7日(水)第2回 出前講座 浅野川小学校4年

三文豪について学ぼう

講師: 薮田 由梨(徳田秋聲記念館 学芸員)

 

 

浅野川小学校4年生3クラス計85名が参加し、出前講座「三文豪について学ぼう」を実施しました。1クラスずつの講座で、講師は徳田秋聲記念館の「薮田 由梨(やぶた ゆり)」学芸員です。まず「三文豪とは」の話から始まりました。

◇金沢の「三文豪」とは

 金沢「三文豪」とは「三人」の「文学者」で「豪い(えらい)人」を表します。
「徳田秋聲」「泉鏡花」「室生犀星」のことです。作風は異なりますが、三人とも故郷の金沢を離れて東京で作家活動を続けました。ふるさと金沢に愛着を持ち、金沢を舞台にした作品も少なくありません。
◆徳田 秋聲(とくだ しゅうせい)
 明治4年、浅野川に近い横山町に生まれ、昭和18年に亡くなりました。 本名:末雄(すえお)
 徳田秋聲は、人々の何気ない日常生活を生き生きと描き出し、そのまま作品に描いています。自然主義文学の作家です。

 ・洋服が好き ダンスが趣味 ・動物が苦手 ・代表作は 「黴(かび)」「爛(ただれ)」
◆泉 鏡花(いずみ きょうか)
 明治6年、浅野川大橋近くの下新町(泉鏡花記念館の場所)に生まれ、明治14年に亡くなりました。 本名:鏡太郎(きょうたろう)
 鏡花は、心の中で空想したファンタジックできらびやかな世界、幽霊や妖怪などが登場する不思議な夢物語を創り出すのが得意な作家です。鏡花は秋聲とは正反対の作風でお互いに喧嘩することもありました。
 ・うさぎのコレクター ・かなりのきれい好き ・代表作は 「化鳥」「天守物語」

◆室生 犀星(むろお さいせい)
 明治22年、犀川の畔にある千日町に生まれ、昭和37年に亡くなりました。
 犀星は、秋聲・鏡花よりは十数年も年下で、小説家・詩人・俳人でもあります。なかには、子ども向けの作品もあり親しみやすい作家と言えます。
 ・庭づくりが趣味 ・動物好き ・代表作は 「杏っ子」「動物詩集」「蜜のあはれ」

◇世界で一枚の三文豪マップを一人一人が作成しよう。

・プリント「三文豪地図」に描かれているのは『鼓門』『兼六園(ことじ灯篭)』『金沢城』『徳田秋聲』『泉鏡花』『室生犀星』のイラストです。
①一本目の線を引いてみよう!
 「地図の左上にある☆印の右下から出て金沢駅に向かいます。そこからぐいと曲がって徳田秋聲と泉鏡花の間を通って右へ突き抜けましょう」
②二本目の線を引いてみよう!
 「金沢駅の右から出て金沢城、兼六園の下側を通ります。そして最後は右下に突き抜けましょう。ただし一本目の線とクロスしてはいけませんよ」
 薮田さんの指示を聴いて二本の謎の線をフリーハンドで書いていきます。そして薮田氏から問いかけがありました。
 「二本の線は何を表しているのかな?」と。
 子どもたちは考えて答えていきます。「道路?」「新幹線?」…そして出てきたのが「浅野川」「犀川」です。
 浅野川沿いにある泉鏡花と徳田秋聲の記念館、犀川沿いにある室生犀星記念館。三人の作家と二つの川との関わり。そして浅野川小学校が☆印で記されていることを発見します。もちろん学校のそばには自分で引いた浅野川の線があります。もう喜び溢れる子どもたちの笑顔でいっぱいになりました。
 二つの川が流れている金沢市。自作の地図を見て三文豪ゆかりの地と二つの川とのかかわりを自然に学ぶ子どもたちの姿がありました。

 他、十二干支の方位表をもとに、泉鏡花は酉年で「向い干支のウサギ」を大事にしていたことを知って驚く子どもたち。
 「鏡花は向かい干支のうさぎをラッキーアイテムにしてグッズを集めていたんだね。」そんな薮田氏の話を聞いた子どもたちは自分の干支と向かい干支に関心を持ちます。
 「私たちは「へび(巳)年」だから、向かい干支は「いのしし(亥)」
 「うわあ、いのしし! うりぼうならいいけれど…」
 「僕たちはうま(午)年だから向かい干支はねずみ!」
 「うわあ、ねずみ?でもちょっと待って。ミッキーマウスがいる。それならいいよね」
 すかさず薮田氏はこう語られました。
 「みんなと勉強して初めて私が分かったことがあったよ。それはね、秋聲はひつじ(未)年。向かい干支のうし(丑)年は犀星なんだ。なるほど。だからこの二人はとっても仲が良かったんだなと学んだよ。みんなと勉強することで新しく発見することができたよ」と。
 向い干支からさりげなく「秋聲と犀星の交遊関係」を伝える薮田氏。どんな専門書でも得られない学ぶ喜びがあふれる時間となりました。
 最後に、三人の作品からほんの一部の紹介がありました。徳田秋聲「無駄道」、泉鏡花「化鳥」、室生犀星「犀川」からです。他、室生犀星の「動物詩集」を手に取り、一編の詩も紹介いただきました。詩を紹介します。

    
夏に雀のうた
        室生犀星
あつくなると/雀のあたまも黒くなる。/雀もきっと/あつい日にやけるのでせう。
雀はあんまりあついと/からだがかゆくなって/水で羽根をさうぢをする。
雀のあしはあかだらけで/おうちで
あしがきたないといって、/しかられているのだらう。

 朗読後、温かな余韻がありました。続いて「私もその詩集を読みたい」「その本って買えるのですか?」という声が子どもたちから出てきました。素直な想いで自分の思いを表現していく子どもたち。感心するばかりでした。

 徳田秋聲記念館の薮田由梨学芸員には、4年生にわかりやすく授業いただきました。授業が終わった後も何人も薮田氏のもとにきて質問しに子どもたちが来ました。
子ども「秋聲、鏡花の師匠は尾崎紅葉さんですね。でも犀星の師匠はいなかったの?」
薮田氏「師匠とは言えないかもしれないけれど尊敬していたのは北原白秋なんだよ。白秋はね…」
子ども「秋聲に師匠はいたんだね。そんな秋聲にお友達はいたの?」
薮田氏「実はね。たくさんいてね。どうしよう…。ここじゃあ答えきれないよ」
 短い時間には答えきれない質問をどんどんしてくる子どもたちでした。

 帰路につきながら薮田由梨学芸員はこう語られました。
「すごかったです。素晴らしい子どもたち。あの子どもたちの何人かでいいんです。大きくなり『自然主義』という言葉を聞いて「あの時に…」と「ハッ」として文学に興味を持ってくれたらと思います。それが楽しみです」と。
 授業中、子どもたちから「浅野川小学校前は鏡花の道だね」という声がありました。自分たちの学校を郷土の文豪と結んで誇りをもって思いを寄せる心。「『鏡花の道』へと続く浅野川小学校、心豊かな子どもたちと共に今ここに立つ」そんな思いがして体が震えるばかりでした。子どもたちに学ぶ楽しさを私たちがいただいた時間でした。

 徳田秋聲記念館の薮田由梨学芸員、浅野川小学校の先生方、そして子どもたち。素敵な出会いをありがとうございました。小学校時代からこういった文学への学びを深めていく時間を持つことの大切さを感じるばかりでした。
 最後となりますが、金沢文芸館では、短歌、川柳、詩、小説などの創作文芸講座を開設しています。講師は一流の先生方。いつか小学生の皆さんが創作文芸に興味を持たれて、受講生となって来館されるのを楽しみにしています。未来の文豪の皆さん、金沢文芸館にもいつでも見学にお越しくださいね。


      



〇5月20日(土)第1回 小説講座 

~短編小説の魅力について~

講師: 宮嶌 公夫(「イミタチオ」同人)

 

小説講座のスタートです。第1回目講師は文学誌『イミタチオ』同人 宮嶌 公夫 (みやじま きみお)先生でした。内容を抜粋し紹介いたします。


1 小説とは?


 ①前提として
  →虚構(フィクション)である。読み手を想定して書かれている
 ②随筆(エッセイ、身辺雑記)との違いは?
  →フィクション性の高さ、語りの自在性、語り手≠作者(書き手)
 ③語り手の存在
  →書き手(=作者) ⇒語り手(≠作者) ⇒焦点化人物(≠作者、=語り手、
   ≠語り手)
  ※「主人公が三人称(彼、□□は)≠作者」はわかりやすい。
   
「一人称小説(わたしは…)は注意が必要」=作者となる場合もあり。
   わたしに作者が投影されるとフィクションではなくなる。

2 魅力ある短編小説とは?


 ①三本柱があること
  A主題(人生、人物、事件など)
   →描かれる内容の焦点が絞られている
  B構成(時間構造、空間構造、人物構成など)
   →物語世界が構築されている
  C描写
   →書きこまれる情報が制御されている
     (描く/描かない、地の文と会話文のバランスなど)
    ※地の文は説明で省略が可能。会話文は再現となる。
 ②全体として大切なこと
   →読んでいて違和感を感じさせない
    作品世界に濃密さ・奥行きの深さが確保されている
    ※薄っぺらな作品▲

3 「紅梅」から

 川端康成氏の掌編小説「紅梅」を教材に、その表現の巧みさを解説していただきました。
 〇対比が効果的に描かれている→いろいろな対比関係がみられる
    「古木の紅梅」⇔「父の死(人間の生命の短さ)」
    「明治製菓」 ⇔「風月堂」
 〇掌編小説では焦点化人物はあまり動かさないのが良い
    本小説では焦点化人物は「娘」となっている
 〇最初と最後で変わることが大切
    最初と最後で焦点化人物(娘)の心情が変わっていくことが大切
 〇文章が大変に構造的である

4 基本的な文章の書き方と基本的な原稿用紙の使い方は?

 〇14点の留意事項を紹介いただきました。一部のみ紹介します。
   ・敬体と常体の文体を混ぜないこと
   ・文の主語・述語の関係をはっきりさせ、ねじれないようにする
   ・独りよがりな表現がないか、文意がしっかりと伝わる表現になっているか
    確認する

 ☆2点目のねじれについて
   ・図書館では、ゆっくり本を読めるために、静かなスペースが確保されている。
    →ねじれが生じている。混乱が生じている。


 宮嶌先生の講座は「小説に向き合う姿勢」と「基本的な留意点」を学んだかけがえのないものとなりました。受講生の皆さんも真剣に聴き入り、今後の創作意欲を高めておられました。
 なお、本講座では、今後の課題が2点提示されました。提出〆切の課題もありますので、ご確認下さい。

A 課題……試作「掌編小説」創作について
 ① 提出〆切日 6月17日(土)第2回講座時までに提出
 ② 400字詰めの原稿用紙で3枚から5枚まで ※字数です 
 ③ お題(テーマ)
    ・時計    ・鉛筆    ・眼鏡
 ※テーマはこの3つの中から1つを選んで作成してください。1グループ7月15日(土)、
  2グループ7月22日(土)どちらかに所属いただいて合評会となります。


B 課題……小説を読んでおいてください。第4回講座8月19日(土)で使用します。
  使用教材………飛行機で眠るのは難しい
  掲載本 ………まぶた
  著者  ………小川洋子
  発行所 ………新潮文庫
  ※単行本「まぶた」(小川洋子)に掲載された短編小説です。ご準備下さい。

 今年度は、題(テーマ)が出題されての試作小説作り、少人数制での合評会等で充実した会にと工夫を取り入れました。課題が出て大変とは思いますが、より充実した講座をと思います。ご不安な点は何でも相談いただけたらと思います。受講生の皆さん、一年間、どうぞよろしくお願いします。


      



〇5月14日(日)第1回 朗読会『青春の門 自立編』

筑豊から東京へ旅立つ信介

朗読: 髙輪 眞知子(朗読小屋・浅野川倶楽部代表)

 

 令和4年度の朗読は青春の門 筑豊編でした。筑豊生まれの伊吹信介が、敵対関係にある塙竜五郎一家を助けるためダイナマイトを背負い死んでいく父「重蔵」、女一人で家を守る母「タエ」、重蔵との約束を守り信介やタエを助ける竜五郎らに見守られ、幼馴染の織江との愛を育みながら成長していく物語でした。
 令和5年度は青春の門 自立編です。東京で一人暮らしを始める信介。そこで様々な人との出会いや別れを経験しながら歩んでいく信介の生き様がつづられていきます。

 第1回朗読会が、朗読小屋・浅野川倶楽部の代表 髙輪 眞知子(たかなわ まちこ)さんにより行われました。今年度は、昨年度の青春の門 筑豊編 後半部分に続き、自立編 前半部分の朗読を、12月までの8回シリーズとしてお聴きいただきます。

 今回の朗読場面を紹介します。


             *   *   *   *   *   *   

 

東京に着いた信介。信介は東京の激しい人の波を見つめながら、ここの街の人間になることを思うのでした。信介は、まず靴磨きのアルバイト学生の緒方と出会います。信介は泊まろうとした大学から追い出されて途方に暮れている時、緒方の提案で彼が住む学生下宿屋の部屋に一緒に住み始めます。二人は、家賃、食費、風呂銭もいっしょに使う共同会計で過ごすこととなります。

                        (「最初の仲間」半ばまで)

  髙輪眞知子さんの朗読会は、 皆さんが心待ちにしていたものです。髙輪さんの朗読の一言一言を聞き逃すまいとするみなさんです。部屋は独特の緊張感が交錯する中、髙輪さんの「凛」とした朗読が響き渡りました。終わった時には、皆さん今まで待ち望んでいた喜びを溢れさせるような万雷の拍手となりました。

 いよいよ、髙輪眞知子さんの朗読会 青春の門 自立編の前半部分が始まりました。第2回は6月11日(土)14時です。「最初の仲間」中間部からの朗読です。ぜひご参集ください。お待ちしております。


      



〇5月13日(土)第1回 小説入門講座 

創作へのこだわり

講師: 小西  護(「イミタチオ」同人)

 

令和5年度は、受講生13名のスタートとなりました。中学生、高校生の参加もあり、いろいろな世代の受講生同士で切磋琢磨し合う講座になればと思います。
 1回目の講師は、イミタチオ同人「
小西 護」氏です。まず、受講生の自己紹介で「講座を受講したわけ」についてみなさんからお話いただきました。「小説への憧れがあって…」「面白そうな講座だと思い…」「私は小説はよく書いていて一度見ていただけたら…」「百歳の人が小説を書いている世の中。自分もチャレンジしてみようと…」「泉鏡花記念金沢市民文学賞の松村昌子さん「姫ヶ生水」に触発され…」等、様々な動機が語られました。みなさんの話を聞きながら、拍手・笑顔・笑い声ありの和やかなスタートとなりました。

 それでは小西先生の講座から一部を紹介します。


〇創作にこだわり、書き始める


A 基礎編 自分らしさを踏まえて書き始める

1 書く目的を明確にする

 ~精神的な深化、自己改革の契機

  ・忘れられない風景、出会い、強い印象を大切に

2 読者相()を想定し絞り込む

 誰に向けて、何のために発信するのか

  ・家族、親しい友人、仲間・同人

  ・友人、知人、親戚、地域住民、同世代、子孫

  ・一般(不特定多数)の読者
3 独自性・独創性にこだわり 書き進める

 熱く高いモチベーションと冷静な判断・評価

  ・大切にしてきた風景を想い、こだわりのスタイルを見つけていく。

  ・ジャンルにこだわり、自分自身が惹かれるものを見つめていく。

  ・小説は自由なもの。相手を傷つけること以外は自由。

  ※すべての芸術は模倣から始まる 先人に学び、真似る

  ※私は梶井基次郎「檸檬」が衝撃的な出会いに 百年先にも届く矢・光がある

4 想像力と創造力を自由自在に、大胆に発揮する

 ~文学性と娯楽性、両面の追求

  ・テーマ (主題、ねらい、主旋律)
  ・モチーフ(表現の動機となる核心・中心思想)

  ・プロット(展開、筋立て、構想、仕組み)
5 多様多彩なエピソード(挿話)を織り込む
 魅力あるエピソードの蓄積・整理・活用
  ・整理・蓄積する場所(引き出し、ガラクタ箱)

  ・創作・創造につながる生活習慣(ルーティン)

  ※ルーティンは創作に、創作はルーティンにつながる オン・オフを大切に

  ※夢の「死んだ父の言葉」「何十年もあっていない人の言葉」など全てが材料に。

    書き留めていくことが大切


B 実践編 作品完成までの覚悟と実践

1 とにかく書き始める 逃げずに書き続ける

 ・ノルマを定める……一日〇ページ 一か月に〇ページ等

 ・持久力・体力・集中力の維持

2 作品完成まで 書くことを最優先に

  ・「創作」を生活サイクルの真ん中に置く

 ・自分の分身たちとの対話を楽しみ味わう

3 音読しながら どんどん推敲する

  ・木を見て森を眺める 森を眺めて木を見つめ直す

  ・退屈な説明、迷いの部分は削除し、書き直す

4 信頼できる読み手から率直な評価・感想をもらう

  ・全般の印象(展開力、テンポ、意外性、単純、予定調和…)

  ・登場人物の魅力(対立、矛盾、明かい・曖昧、善人・悪人、地味・派手、
   饒舌・寡黙)

  ・表現・表記(違和感、漢字・平仮名・片仮名…)

5 納得がいくまでこだわり 楽しみながら推敲する

  ・虚構を絡ませ、小説空間を膨らませる

  ・敢えて書き尽くさない

   …読者の読み方・想像に委ねる余裕が余韻と奥行きを生む

 『豊かな創作につなげるヒント』
  ①「つや」「あや」を磨きだす
  ②「語り手」(視点人物)が語りすぎない・出しゃばらない
  ③ささやかで見落としそうなもの、美しくて愛らしいものを活かす
  ④感覚を研ぎ澄ませて、想像した文章表現を
  ⑤時間差、空間移動による「奥行き」(立体的な構成)づくり
  ☆『創作のこだわり』=何にこだわり、積極的に関わって生きるか
            =何に注目し、どんな価値を見つめ、磨いて生きるか
  「表現力」「展開力」「求心力」 … 『人間力』(尽きることのない豊かな泉)


☆次回の課題作文(試作小説)のテーマについて 〆切日は7月8日(土)です。

 ➀「流す・流れる」    ②「忘れる・思い出す」    ③その他 

  二つをつなげてもよいし、どちらかだけでもよい

  ※涙を流す、過去の思い出を流す、水に流す、川が流れる、歳月・時間が流れる

  ※ある人の仕草、口癖、表情、過去の情景、季節・時間・天候、音・匂い・色
   など、心に映し出された素材を、大切に切り取って読み手に伝える文章を期待して
   います。
   書き出しだけ、一場面だけの短い断片でもよいでしょう。

  ➀②では書きにくい、すぐにでも書き出したい題材・情景があるという方は、③その他(自由に題材やテーマを選ぶ)で、のびのびと描いてください。

 小西先生の文芸に対しての熱き想いが溢れ出る講義でした。

 「『文学』は作家の作品を読んでいくもの。しかし『文芸』は違う。文芸は短くとも自分で作品を創り出していくこと。それこそが大切なことだ。私たちがやろうとしているのは文芸だ。」と。

 初日に課題もあり、みなさんは戸惑いながらも、笑顔で帰路につかれていきました。ある受講生の言葉です。

 「いやあ、書き方から教えてもらえると思っていたら、もう書いてみるんや。いやあ、書けるだろうか?できるかなあ。でもやらんなんなあ。」と。

  頭を抱えながらも、それでも笑顔で語る受講生の姿がありました。不安、お困りのことがありましたら、何でもスタッフに相談いただけたらと思います。一緒に歩んでまいりましょう。
 小西 護先生、充実したスタートをありがとうございました。そして受講生のみなさん、これからよろしくお願いします。


次回、第2回小説入門講座は、6月10日(土)10時30分からです。講師は、

小網春美先生で、講義『小説作りの基本とは➀』です。


      



〇5月10日(水)第1回 出前講座 三谷小学校2年

金沢の民話を学ぼう

講師: 吉國 芳子(ひょうし木の会)

 

 金沢市立三谷小学校に訪問しました。講師は吉國芳子さんです。二年生は男女各1名、計2名の笑顔いっぱいの子ども達。反応が素晴らしく、何でも積極的に答えていく子ども達。吉國さんの工夫ある読み聞かせを堪能していました。抜粋して紹介します。


・ペープサート「あめかいゆうれい」

 ペープサートでの飴買い幽霊。黒い布地に貼られていく幽霊やお坊様らの登場人物。読み進めていくうちに、黒い布が深い暗闇のように感じられました。吉國さんの声に呼応するように二人の息づかいまで聞こえてきます。静けさの中でのすごい集中力。身じろぎ一つせずに話に聴き入っています。最後は両手を広げた元気な赤ちゃんの姿絵と吉國さん演じる赤ちゃんの元気な泣き声に、やっとほっとした笑顔になる二人でした。心優しい二人の子ども達の姿に感じ入るばかりでした。
 最後には、金石の道入寺にある飴買い幽霊の絵(円山応挙作と言われる)を不思議そうな表情で見入る子ども達でした。

 優しき金沢民話を心から楽しむ子ども達の真剣な姿が大変に印象的でした。


・パワーポイント「おおかみを退治したこま犬」

 三谷小から近い金沢市鳴和「伝燈寺」に伝わる金沢民話です。
 ある夜、村の孫娘「みよ」が寝ていたところ、おおかみが家の壁を食い破って中に入り、手に食らいつかれてけがをします。そこで、伝燈寺の和尚さんが寺でかくまってくれることになります。その夜、おおかみは群れとなり寺を襲います。そして念仏を一心に唱える和尚さんがそこにはいました。

 あくる朝、見るとおおかみたちが命を落としていました。ふと見ると二匹のこま犬が傷だらけになり口に血がついていたのでした。孫のみよをおおかみから救ってくれたのはまさに二匹のこま犬だったのでした。


 最後、吉國さんは実際のこま犬の写真も見せて下さいました。その迫力ある姿に、金沢民話の不思議な世界に引き込まれていく子ども達二人でした。
「今も血はついているのかな?」そんな疑問を声にして出す純朴な子ども達でした。読み聞かせを息を呑んで聴き入る子ども達の姿がここにもありました。
 他、吉國さんは、ハーモニカ演奏、紙芝居、民話クイズ、マジックなど、大変に工夫ある内容で読み聞かせをして下さいました。そして何より集中力が継続していく素晴らしい子ども達がいました。他、三谷小学校の先生方にもたくさんの準備をいただきました。ありがとうございました。

 三谷小学校の子ども達は、素直な心で想いを私たちに伝えてくれました。耳を澄ますと聞こえてくるのは「子どもたちの息づかい」と「山で啼く鳥の声」だけでした。窓から香る木々の青葉の匂いをかぎながらの読み聞かせ。子ども達との幸せなひと時となりました。
 三谷小学校の元気な二人の子ども達、そして配慮いただいた先生方、様々な工夫をしていただいた吉國芳子さん、ありがとうございました。

 今年度の出前講座、素敵なスタートとなりました。これから一年間、様々な学校へ訪れます。どうぞ、よろしくお願いいたします。


      



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