金沢文芸館

ENGLISH

文芸館だより(ブログ)

文芸館だより R4年度

〇9月11日(日)第5回 朗読会『青春の門 筑豊編』

信介と織江の大人への階段

朗読:髙輪 眞知子(朗読小屋 浅野川倶楽部代表)

 

 9月11日(日)第5回朗読会が、朗読小屋・浅野川倶楽部の代表 髙輪 眞知子(たかなわ まちこ)さんにより行われました。今回は「落日のまえに」からのお話です。
 髙輪 眞知子さんには、大人への階段を登っていく信介と織江の心のやりとりを、爽やかに朗読いただきました。

        *     *     *     *     *

 療養中のタエの病気が好転し、外泊の許可が出ます。そこで、竜五郎とタエ、二人だけの約束を知らされます。その約束とは、タエに、人前では竜五郎の女として振舞ってもらうことでした。その後、竜五郎は重蔵(信介の父)とタエをめぐって対決はしました。しかし、竜五郎自身は、いつも男気のある重蔵を認めていて、彼の最期の頼みを守って、タエと信介を引き受ける決心をします。そして今度は、本気でタエに惚れてしまっていることを伝えます。そんなタエと竜五郎の思いを聞きながら、受け止めていく信介でした。

 タエの病状はまたも悪い方向へ向かっていきました。母親のタエを残して東京の大学に進むことへの不安、世話になった金朱烈が強盗殺人犯として重い刑を宣告されたこと、母親タエが金さんに冷たい態度をとることへの不信感、梓先生や早竹先生への思いなど、いろいろな思いが交錯していくのでした。
 そして昔を懐かしく思った信介は、キャバレーに勤めている牧織江に会いに行きます。店を出た信介でしたが、自分のオートバイを盗まれてしまいます。帰ることができない信介は、織江と一緒に泊まることとなります。

 そして信介と織江は、じっと体を寄せ合い、結ばれます。しかし、二人とも、すべてを許し合って結ばれた男と女、という気持ちはしないのでした。ただ二匹の同種の動物のような親密感のなかで二人は黙って、ずっと向き合っていたのでした。
                            (「犯す男たち」まで)

        *     *     *     *     *

 今回の朗読は、信介と織江が結ばれる場面です。髙輪眞知子さんは、朗読を終えられた後、参加者の顔を見つめながらにっこりと「信介ってかわいいね」と言われます。瞬間、会場は柔らかな優しい空気に包まれました。そして、髙輪さんが最期に言われた言葉が「私たちみんな、信介の応援団ですから」というお言葉でした。髙輪さんの朗読には、いつも信介や織江を応援していく愛情が根底にあるのだと思うばかりでした。だからこそ、どんな場面の朗読にしても、根底に人への愛情の根がしっかりと息づいているのだと思いました。だからこそ、会場のみんなが笑顔で、爽やかで優しい空気に充ち溢れるのでしょう。
 髙輪眞知子さんの朗読には、人を「幸せの風」で包み込む豊かで大きな力があるように思えて仕方がありませんでした。
 髙輪さん、そして来てくださった皆様、本当にありがとうございました。


 次回は10月9日(月)で、「青春の門(筑豊編)」の朗読は最終回です。「人と別れるとき」「ひとりだけの夜明け」「十八歳の出発」の朗読予定です。ぜひ皆様方のご来館をお待ちしております。


      



〇9月10日(土)カナザワナイトミュージアム2022  『廓のおんな』井上雪 作  

~朗読と笛と三味線で楽しむ~

出演:玉井明日子(朗読)/藤舎眞衣(笛)/千本民枝(三味線)

 

 今宵のナイトミュージアムは、玉井 明日子さん(たまい あすこ)さん(朗読)、藤舎 眞衣(とうしゃ まい)さん(笛)、千本 民枝(ちもと たみえ)さん(三味線)による「朗読と笛と三味線で楽しむ 井上雪 作 廓のおんな」です。


◆出演者の紹介
 ○玉井明日子さん(朗読)
   昔話の語り手です。金沢の様々な民話を金沢弁で語る他、様々なアーティストと
   コラボしておられます。他、イラストレーターでもあり、近年では動画制作も手
   掛けられています。
 ○藤舎眞衣さん(笛)
   平成16年金沢市文化活動賞、平成18年北國芸能賞、平成28年石川県文化奨
   励賞を受賞されています。笛を中川善雄師に師事し、ご自身は、北國新聞文化セ
   ンター、金沢素囃子子ども塾の講師も勤め、後進の指導を積極的に行っておられ
   ます。
 ○千本民枝(三味線)
   祖父母の影響で8歳より三味線を始め、金沢市内で端唄・三味線の指導にあたら
   れています。端唄を千本扇民に、新内を富士松鶴千代に師事しています。平成2
   5年より『和LIVE』活動を各所で開催しておられます。


◆本日の演目「井上雪・作 廓のおんな」について
 7歳の時に百円という値段で廓の置屋に売られた少女、きぬ。明治、大正、昭和を生き抜き、ひがしの廓で名妓と呼ばれた彼女の生涯を描いたノンフィクション作品「廓のおんな」です。


◆朗読と笛と三味線で楽しむ 本日の会から
 本日のお話は、きぬの回想シーンから始まりました。能登での貧しい幼少時代。置屋の養女になり厳しい修行と奉公の日々。振袖芸者への憧れを抱く時。本小説には、きぬを取り巻く厳しい生活の変化と、それに伴うきぬの喜び・哀愁・悲しみといった心情の移ろいがあります。今宵、そんなきぬの移ろいを、朗読・笛・三味線での共演で表現していただきました。
 玉井明日子さんの朗読は、美しく心に染み入る金沢弁で耳に心地よく、主人公きぬの心の移ろいを、如実に表すものでした。透き通る玉井明日子さんの朗読は、刻々の情景を私たちの心の瞼に映し出していくものでした。
 藤舎眞衣さんの笛は、きぬの哀しき心情の時には、彼女を優しく包み込むような音色で変幻自在の音の揺れがきぬの心の揺れとして、私たちの心に届けられるようでした。そしてきぬの決意や運命的な場面転換では、笛の音が、稲妻を伴った雷鳴となり、暗黒の厚い雲を突き抜け、天空まで駆け上がる龍のような力強さで奏でられました。心打たれるばかりでした。(言葉では語り尽くせません)
 端唄・三味線の千本民枝さんは、三下りさわぎ、京の四季、潮来出島で、唄と三味線により演じていただきました。華やかな座敷風景、廓の町並みが灯りに浮かぶ風景など、千本民枝さんの三味線の音色と艶やかな唄で私たちの心は魅了されるばかりでした。今も心の中に唄と三味線の音色を鳴り響いています。
 朗読、笛、三味線が三位一体となって演じられた井上雪・作「廓のおんな」。総合芸術そのものでした。


 最後にアンケートから一部を紹介いたします。
 ・情景が目に浮かぶような素敵な朗読会でした。金沢の伝統芸能にふれられて良かっ
  たです。
 ・とても良かったです。日本の美を堪能いたしました。そのまま、美の壺になりそう
  だった。三人を見ているだけで三人は金沢の美でした。座る椅子も素敵です。
 ・朗読、笛、三味線が一体化してお話の中に惹き込まれました。情景が頭に浮かび、
  素敵なひと時を過ごさせていただきました。ありがとうございます。
 ・やはりライブは素晴らしい。金沢の文化を守っていってください。
 ・玉井さんの透き通る朗読と千本さんの三味線、藤舎さんの笛は、タイムスリップし
  たような感覚となり、心にしみ入りました。これだけの方々が勢ぞろいするステー
  ジは、忘れられないものになるでしょう。
 ・朗読は初体験でした。日頃、視覚(テレビ)が主な日常ですが、今回、聴覚をずい
  ぶん集中して聴き入り、情景が浮かび、とても感動できた。また、笛、三味線の響
  きも心よく、ステキで、とても充実した時間をもててよかったです。


 他、いただいた改善点、ご助言等も生かして歩んでまいります。玉井様、藤舎様、千本様、依田様(音響等)、そしてご来館いただいた皆様、本当にありがとうございました。心より感謝申し上げます。


      



〇9月10日(土)第3回 詩入門講座  

詩の実作①

講師:井崎外枝子(詩誌『笛』同人)/中野徹(詩誌『笛』同人)
   和田康一郎(金城大学非常勤講師)

 

 詩入門講座第3回の講師は、井崎 外枝子(いざき としこ)先生(詩誌『笛』同人)と 中野 徹(なかの とおる)先生(詩誌『笛』同人)です。
 第1回、第2回の和田康一郎先生は教えていただきた詩作の基本をもとに、これからは詩作に挑んでの講座です。
 次の題の詩が提出されました。

  「空をみあげて」  「長月の夜」    「自然育ちの面構え」  「寒つばき」
  「炎天下のポスト」 「うてなのしずく」 「四つの感謝」     「顔」  「顔」

 もうすぐ「金沢創作工房の提出もあり、詩の詳細内容紹介は差し控えます。今回は、特別に詩の講座の講師を務められた和田先生にもご参加いただき、お二人の先生と共に、受講生一人一人にご助言をいただきました。ありがとうございます。
 次に、講座での先生方のご助言の一部を紹介します。

 ・形容詞での表現(悲しい、つらい、うれしい等)は禁じ手です。避けましょう。
 ・詩において題名に「 」づけはしません。
 ・題名で内容想起ができることが大切です。
  例「自然育ちの面構え」→「メロンの面構え」などにしていくと良いです。
 ・詩は自分の心の内面を表現していくことが大切です。
  詩の中に、急に「・・・の思いがした」といった表現を入れてしまうと客観的な
  言い方になってしまいます。
 ・イメージの違い過ぎる言葉の使い方に注意します。(吐き出した← →手渡した)
  この場合、同じ詩にある言葉なのにイメージが違い過ぎて違和感が生じます。
 ・聴覚、味覚、視覚、触覚、嗅覚等の表現が、バランスよく散りばめられているこ
  とが大切です。
 ・言葉に想いをのせて、そして言葉を吟味してから表現して詩を作っていきましょう。


 今回は、一作品ずつ、三人の先生からアドバイスをいただきた貴重な機会となりました。これからは詩の実作が続いていきます。いろいろな方からアドバイスをいただきながら、充実した会にしてまいりましょう。
 井崎外枝子先生、中野徹先生、和田康一郎先生、そして受講生のみなさん、ありがとうございます。


 次回は、10月8日(土)15時からで「詩の実作②」です。自由課題となります。
 それぞれ詩の実作の締め切りは次のとおりです。

 ○第2回  個別指導日10月 8日(土)
       ※作品締切日 9月28日(水)

 ○第3回  個別指導日11月12日(土)
       ※作品批評と推敲



 ※締切日は上のようになっています。締切までには提出をお願いします。


      



〇9月10日(土)第5回 小説入門講座  

描写力を養う ~課題小説による個別指導を中心に~

講師:高山敏(『北陸文学』主宰)/小網春美(『飢餓祭』同人)

 

 9月上旬、小説入門講座も第5回を迎えました。今回は「描写力を養う」です。今回は受講生の皆さんには短編小説を書いてきてもらいました。課題は「懐かしい風景」または「フリー課題」です。小説入門講座にて、小説を書いて合評会を開催するのは初めての試みです。講座の様子を紹介します。
 講師の先生は、『北陸文学』主宰の 高山 敏(たかやま さとし)先生と、『飢餓祭』同人の 小網 春美(こあみ はるみ)先生です。


○皆さんの作品から
 今回、小説を書けた人も、書けなかった人も参加して、2つのグループ(高山先生グループと小網先生グループ)に分かれての合評会を実施しました。集まった作品の題名は次のとおりです。9作品、集まりました。

 「Pocket Dream」    「神様からのメッセージ」  「懐かしい風景」(2作品)
 「あおいた」       「残像」          「『わたし』に還る場所」
 「(無題)」(2作品)

 今後、「金沢創作工房」の申し込みと関係する場合もあり、詳細内容の紹介はしませんが、受講生の皆さんの個性的で魅力的な作品ばかりでした。

 ・夫婦愛を自らの生活体験をもとにして描いた作品
 ・庶民の生活の中から、嗅覚の優れた表現により、様々な臭いが混ざり合う描写力を伴った
  描き方で話が展開する作品
 ・誰にでもある懐かしき思い出の品を題材にして描いた作品
 ・今と小さき時の人の対比を考え、読者を深い思索の時へと誘う作品
 ・旅先で、登場人物が父母への思い出を回想して、それを綴る作品
 ・自分の心を見つめて、「わたし」に還る場所を求め、新たな発見をしていく作品

等々、一人一人個性的な小説を紹介いただきました。高山先生、小網先生、そして受講生からの批評や感想を交換しながらの講義となりました。受講生一人一人の光る感性に魅了される講座となりました。

 小網先生は最後に受講生の皆さんにこう語られました。
 「私は今日、出されていた作品を拝見し、合評会で話される受講生の皆さんの言葉をお聴きしながら感心するばかりでした。また、私自身がハッと気付かされる事もありました。何より皆さんの作品、そして合評会での話から、皆さんの考えの深さと的確な言葉に感心させられました」
 受講生の皆さんのますますの成長が心から楽しみとなる一日となりました。高山先生、小網先生、そして受講生の皆さん、ありがとうございました。


 次回、第6回小説入門講座は、10月8日(土)10時30分からです。
講師は、 小西 護先生で『創作のこだわり』(構想から実践へ)です。

 なお、第7回講座11月12日(土)、第8回講座12月10日(土)とも、作品批評と推敲①、作品批評と推敲②となります。
 ぜひ次回、10月8日(土)小西先生の講義を受講され、作品作りに活用していただきたいと思っています。皆様の受講を心よりお待ちしております。


      





       高山敏先生








       小網春美先生

〇9月7日(水)出前講座 四十万小学校2年 

金沢の民話を聞こう

出演:神田 洋子(ストーリーテラー)

 

 今回は、白山市よりに位置する金沢市立四十万小学校にお伺いしました。
 2年生3クラスの児童が参加して、出前講座「民話を聞こう」が実施されました。講師はストーリーテラーの 神田 洋子(かんだ ひろこ)先生です。感染症への安全対策のため、3回に分けての学習をしました。


◆主なプログラム  ※クラスの実態に合わせて話を選んでくださいました。
  「飴買いゆうれい」  …金沢では金石や森山に伝わるお話
  「芋ほり藤五郎」   …金沢の地名発祥として知られるお話
  「なら梨とし」    …三人の仲のよい兄弟がなら梨取りにいくお話
  「鳥呑み爺」     …爺のだんごを食べた鳥が爺に歌のお返しをしていくお話
  *手遊び唄など     …いろいろな手遊び
      *      *      *      *      *      *

 今回は「鳥呑み爺」のお話を紹介します。
 爺さが山仕事に行き、持って行っただんごを食べようとします。すると前の木にいた、きれいな鳥がこう言います。
「じいじ じいじ だんごをくれえ」と。
 爺じは、だんごをやると、鳥はふちゃふちゃ食ってしまいます。するとまた、
「じいじ じいじ だんごをくれえ」といいます。
 爺じはお昼のだんごを全部鳥にやりました。もう紙しかないよと爺じは「ほらっ」と投げると、ふちゃふちゃ、それも鳥は食ってしまいました。
 そして、爺じが大あくびをすると、何を間違えたのか鳥は爺じの口の中めがけて飛んできて、ストンと腹の中へ落ちてしまいました。そのうち、爺じのへそから羽根がブルっと出てきました。爺じは鳥を腹から出してやろうとして力いっぱい引っ張ると、鳥がこう鳴きます。
「♬あや ちゅうちゅう こゆ ちゅうちゅう 錦(にしき) さばさば 五葉(ごよ)の盃(さかずき)、もってまいりましょう、ピピラ ピー♬」
 羽根を引っ張るたびに、こう鳥は唄います(鳥の歌♬)。そして、鳥は
「爺さ、これおめえ、ばかしにいい声の鳥だすけえ、おめえあの がいろばた行って あの日本一の歌うたい爺だいうて、金もうけさっせ」と言いました。(鳥の歌♬)
 それから殿様にもその歌を披露(鳥の歌♬)して、ほうびをたくさんもらいました。
 それで爺じ、今度はその羽根、引っ張っては、町中 歌って歩いた(鳥の歌♬)とのこと。
 それで、だいぶたってから、羽根をポツンと引っ張ったら、羽根がポロンともげてしまって、それっきり 鳴かないようになったと。
 いきがポーンとさけた。

      *      *      *      *      *      *

 神田先生が独特の調子で「鳥の歌」を歌うたびに、会場は楽しい雰囲気になっていき、笑い声も回数ごとに増えていきました。
 そして、話が終わった後、心配そうに、ある子が「鳥はどうなったのかな?」と言います。神田先生は、子どもたちに安心させる言葉を与えるのではなく、にっこりとうなずかれるようにして終えられました。子どもたちは、一人一人、心の中で様々なことを考えているのであろう不思議な空気に包まれました。「鳥はどうなったの?」と。
 これも民話の楽しさ、奥深さなのかと思いました。鳥の気持ちになって聞いていた子どもたちだからこそ、いろいろ想いが湧き出ているのだと感じました。四十万小の子どもたちの温かい姿いっぱいのお話会となりまし。

 また、一時間目のお話会で、なんと三本の「ろうそく」が並びました。その内訳は?

A トイレットペーパーロールをろうそくと見立て、芯の部分にティッシュをこよりのよう
  にして立てたろうそく(ロールは担任の先生が準備、芯は神田先生が作られました)

B 理科室の蒸発皿、ろうそく立て、実験用ろうそくを組み合わせたろうそく

C 神田先生の旦那様が学校に届けてくださったろうそく(七尾の高澤 和ろうそく)


A 「ろうそくを家に忘れてしまったの。みなさんごめんなさいね。」と謝る神田先生に、
  「ろうそくを作ろう」と促してアイデアを出した子どもたち。
  そして出来上がった世界に一つのトイレットペーパーロールろうそく

B 「ろうそくを忘れてしまって…」と言うのを聞かれて、理科室の材料で作成してくださった
  教頭先生の手作りろうそく

C 旦那様が運んでくださった神田先生愛用の燭台と和ろうそくのセット。
  美しい色どりで描かれた石川県の伝統工芸品である七尾市の高澤和ろうそく。


 「B・Cのろうそく」には最後、火がともされましたが、子どもたちの心には全てのろうそく「A・B・C」に火が灯されていたようです。「ごめんね。忘れてしまって」という神田先生の淋しい心に「A 優しきろうそく」の火を灯してくれた四十万小学校の子どもたちです。
 次に、理科室で一生懸命にろうそくの手配をしてくださった教頭先生。そして子どもたちのために懸命にろうそくを届けてくださった神田先生の旦那様。
 優しさの火の連鎖は、子どもたち発案のトイレットペーパーろうそくから始まりました。四十万小学校のみなさん、どうぞ、これからもこのろうそくの火のような優しさを大切にして、人の心を大切にして歩む人たちであり続けてください。
 四十万小学校の2年生のみなさん、先生方、本当にありがとうございました。そして、勧善懲悪として終わらない民話の持つ味わい深さを伝えてくださった神田先生、本当にありがとうございました。四十万小学校のみなさん、またお会いできる日を楽しみにしています。


      



〇8月29日(月)出前講座 玄門寺幼稚園 年長児 

おはなしの会を楽しもう

講師:中村順子(金沢おはなしの会)/松本文恵(金沢おはなしの会)

 

 東山・卯辰山寺院群にある玄門寺幼稚園を訪問しました。浄土宗の本寺には、金沢4大仏として有名な「阿弥陀如来像」があります。おはなしの会の前に三人で浅井園長にご案内いただきました。大きな光背のついた、煌びやかな寄木造の1丈6尺の黄金に輝く大仏です。また、天井の龍図は円山応挙に学んだ仙台藩御用絵師の東東洋(あずまとうよう)により描かれた見事なものでした。自然と、おはなしの会の前に手を合わせていた私たちでした。
 そんな由緒あるお寺で学ぶ健やかな年長児50名です。今回は、感染症対策のため2組に分けて一人ずつの先生で実施しました。
 講師は金沢おはなしの会の 松本 文恵(まつもと ふみえ)さんと 中村 順子(なかむら じゅんこ)さんです。


◆プログラムA 【松本文恵さん】
 ①童謡  「ねこじゃらし」
 ②お話  「ふたりのあさごはん」 東京子ども図書館
 ③絵本  「ニャーンといったのは だーれ」 ステーエフ 文・絵/西郷竹彦 訳
 ④手遊び 「やなぎの下には」
 ⑤お話  「なら梨とり」     東京子ども図書館


◆プログラムB 【中村順子さん】
 ①お話  「ふたりのあさごはん」 東京子ども図書館
 ②絵本  「やさいのおなか」   きうちかつ 作・絵  福音館書店
 ③絵本  「スイミー」
 ④童謡  「こまんかこまんか」
 ⑤お話  「若返りの水」         福音館書店
 ⑥お話  「北斗七星」 トルストイ 作  福音館書店


◆プログラムから一部紹介します。
◇わらべ歌「ねこじゃらし」
 ♪ねこじゃらし/ねこじゃらし/だれにじゃれつく/ねこじゃらし/
  となりのしまねこでてこんか/うちのどらねこでてこんか/
・先生の歌声に合わせて園児もどんどん歌えるようになっていきました。笑顔満開です。

◇ペープサート「ふたりのあさごはん
・右手にねこの「みけや」、左手に男の子「けんいち」のペープサートを持ちながらの紙芝
 居劇です。けんいちの朝ごはんメニューは毎日変わるのに、ねこのみけやは、毎朝「おか
 かご飯」です。ペープサートで繰り返していくごとに、子どもたちの笑い声が大きくなっ
 ていきます。最後、けんいちはみけやからおかかご飯を半分もらいます。子どもたちの豊
 かな笑いが雪だるまのように増えていった不思議な魅力あるお話でした。

◇絵本「やさいのおなか」きうちかつ 作・絵 福音館書店
・みんな知っている野菜。でも切った断面(おなか)は見慣れない不思議な形ばかりです。
 「野菜のおなかの素敵な形」が次々に登場していきます。そのたびに、子どもたちの驚
 きの声があがります。料理をしている家族の手元を興味を持って覗き込む子どもたちに
 なっていくのでしょうね。新たな世界を発見していく感性豊かな子どもたちでした。

◇絵本「ニャーンといったのはだーれ」ステーエフ 文・絵/西郷竹彦 訳
・ロシアの作家のお話です。子犬の「ころ」が、初めて聞いた「ニャーン」と鳴く生き物の
 正体を探って走り回るお話です。「ころ」はおんどり、ねずみ、かえるなどに会って鳴き
 声を確かめていきます。ワクワク、ドキドキ、子どもたちも一緒になって「ころ」を応援
 していきます。手に汗握る子どもたちの姿が素敵でした。

◇お話「北斗七星」 トルストイ 作 福音館書店
・ロシアの作家のお話です。病気で寝込んだ母の「水を飲みたい」という願いを叶えるため
 に娘は水探しに出かけます。寝込んでしまい、眼を覚ました目の前に、きれいな水が入っ
 たひしゃくが置いてあります。娘は、困っているイヌ、母親、知らないおじいさんに水を
 与えて、ついに自分の水はなくなってしまいます。でもその後なんと…。
・優しく温かいお話です。子どもたちの顔を見ていると、初秋の爽やかな風が子どもたちの
 頬を撫でているようにも感じました。輝く水と頬がそこにはありました。


 金沢おはなしの会 松本文恵さん、中村順子さんのお話に魅了される園児の姿がありました。集中力があり、登場人物の背中をそっと押して応援していく優しい子どもたちでした。中村さんと共に
「私たちが玄門寺の子どもたちから元気をもらいましたね」
「あの阿弥陀如来様を毎日見ていてあんな優しい子どもたちに育つのかもしれないね」
と、感心しきりの帰路となりました。
 今回、ロシアの作家トルストイのお話もありましたが、トルストイは「人生論」の中で次のように語っています。
○「植物の幸福が光にあるのと同じように、そういう人の幸福は愛にある。だから植物が、
  どっちの方に伸びるべきかだの、光はいいものだろうかだの、もっとよい別の光を待つ
  べきではなかろうかだのと訊ねることなく(訊ねるはずもないが)、世界にある唯一の
  光を選んで、ぐんぐんその方に伸びてゆくのと同じように、自分に可能な、自分の前に
  ある愛に、自分自身を、自己の生存を捧げるのである。このような愛だけが、人間の理
  性的な本性に完全な満足を与えるのである」

 また、今年の広島原爆の日で、松井市長はトルストイの言葉を引用されています。
○「他人の不幸の上に自分の幸福を築いてはならない。他人の幸福の中にこそ、自分の幸福
  もあるのだ」

 童謡「北斗七星」で、娘は困った人たちにひしゃくの水を全て与えます。でもなくなった水の代わりに、娘が手にしたのは「水がこんこんと湧き出るひしゃく」でした。
 トルストイの子ども向けの童話「北斗七星」と大人向けのお話「人生論」です。それぞれ読者の土俵は違いますが、深いところで「根」がつながり合うのを感じました。優しい眼差しでおはなしを聞く子どもたちがいました。トルストイのおはなしの持つ「深い豊かな根」を感じている子どもたちの眼差しを貴いと感じました。

 金沢おはなしの会の皆様、玄門寺幼稚園の園長先生、先生方、そして園児の皆さん、保護者の皆様、素敵な出会いをありがとうございました。
 今後も玄門寺幼稚園の子どもたちの健やかな成長を心から願っています。


      





       松本文恵さん








       中村順子さん

〇8月20日(土)カナザワナイトミュージアム2022 朗読会『夏の夜の物語』 

~明治・大正・昭和に生きた危ない女達~

出演:朗読小屋 浅野川倶楽部  櫻井美代子/五十川千枝子/」山口範子

 

 今宵のナイトミュージアムは「朗読小屋 浅野川倶楽部」の皆様による朗読会です。「明治・大正・昭和に生きた危ない女達」のテーマで次の先品を朗読いただきました。
 ・谷崎潤一郎 作 「刺青」  …朗読 櫻井美代子
 ・志賀直哉 作  「転生」  …朗読 五十川千枝子
 ・五木寛之 作  「内灘夫人」…朗読 山口範子
 話の内容と当日の様子を紹介します。


○『刺青』 谷崎潤一郎 作  朗読:櫻井美代子
 「刺青」は谷崎潤一郎24才の時の出世作です。谷崎は本作品の後、痴人の愛、春琴抄、卍、鍵、細雪と、危ない女を描き続けていきます。刺青は、本日の朗読会「危ない女達」のオープニングを飾るのにふさわしい作品です。
 「刺青」の話を紹介します。ある天才的な彫青師が、ある娘の足の見事さに惚れて、悪女になる素質をその足に見出します。再び、その足をもつ女と出会った彫青師。彼は、彼女の背中に女郎蜘蛛の刺青を彫り付けていきます。そして変貌を遂げていく女性がいました。女の心の底に眠っていた悪女の魂が頭を持ち上げていきます。最初の犠牲者が、彫青師自身となります。櫻井美代子さんの朗読は、男を踏みつけ、破滅させていく妖婦の誕生を、怖いぐらいの迫力と妖気で演じてくださいました。櫻井美代子さんの熟練の技に魅了されるばかりでした。

○『転生』 志賀直哉 作  朗読:五十川千枝子
 志賀直哉は白樺派の小説家で、「暗夜行路」「和解」「小僧の神様」「城の崎にて」が有名です。本公演の「転生」は志賀直哉41才、1924年に刊行された作品です。
 「転生」の紹介をします。ある夫婦での現世でのやり取り。夫は細君を「馬鹿」よばわりし続け、反対に妻はそんな夫を「利口」呼ばわりしていきます。夫は「転生」で鴛鳥(おしどり)に転生することを妻に約束させます。そして夫の死、間をおいて妻が死を迎えます。いよいよ転生の時、どんでん返しが起こります。しつこい夫の言動のため、妻は危ない女に変貌してしまいます。志賀直哉独特の夫婦間のユーモアあふれる表現、話の展開の見事さが光る作品です。五十川千枝子さんの朗読は、最初の入りから最終場面までが自然な大河の流れの中で、変幻自在に変容していく夫婦の感情が見事に描かれて、夫婦の悲哀さを見事に表現していくものでした。崇高な朗読に魅了されるばかりでした。

○『内灘夫人』抄 五木寛之 作  朗読:山口範子
 1969年に刊行された五木寛之の長編小説です。2年前には五木氏が「蒼ざめた馬を見よ」で直木賞を受賞しています。「内灘夫人」は小説家としての地位を確立した時期の作品です。
 本小説は長編小説ですので、朗読は最終「孤独なる出発」場面となります。まずは内灘夫人」の簡単なあらすじを紹介します。
 1969年頃、ベトナム戦争反対闘争、学生運動に携わる学生活動家「森田克己」と学生活動家で恋人である「西城杏子」が出会います。そしてさかのぼること16年前、1953年頃、金沢市内灘闘争時に「沢木良平」と、後に妻になる「露子」が出会います。
 そして1969年、ベトナム戦争時に、世代の違う「森田克己」と「沢木露子」が出会い、繰り広げられる話です。克己と露子との愛、沢木良平と露子の心の乖離、克己と杏子との心の乖離、杏子の死、克己の凶行などが、複雑に絡み合いながら話は展開していきます。財産、杏子、森田克己ら、全てを失った露子が、沢木良平と愛を育んだ金沢の地で夫 良平そして過去と離別すべく、再び金沢を訪れたところから朗読は始まります。

 山口範子さんの朗読は、30分間に渡る長丁場です。山口さんの朗読のもと、露子が体験した全ての出来事が、内灘の地において露子の心の中で回想されていきます。そして、山口さんの朗読が進むうちに、いつの間にか露子の心の移ろいが走馬灯のように、私たち自身の心のスクリーンに映し出されていくように感じました。
 最後「さようなら、私の内灘。私の青春」と立ち尽くして過去と決別する場面の朗読では、五木寛之氏の作品を堪能し尽くしたと感じ入る私たちがいました。最終場面(抄)という難しい場面での、山口さんの見事な朗読に魅了され続けた30分間でした。


 浅野川倶楽部の櫻井美代子さん、五十川千枝子さん、山口範子さんの三者三様の巧みな朗読に魅了されたのはもちろん、場面に応じた音楽選曲、音響効果、照明効果等、表川さんの演出効果も素晴らしく、まさにこれこそ総合芸術と言えるものでした。

 最後に一部ではありますが、アンケートから紹介いたします。
  ・三人の方々の朗読がとても上手で見入ってしまいました。とても情景が浮かび、すて
   きなひとときでした。また聞いてみたいです。ありがとうございました。
  ・朗読に聞きほれてしまいました。朗読会は初めてでした。とても良かった。
  ・作者三人三様の作品で、面白く引き込まれました。朗読も三人三様の語り口で最高に
   良かった。
  ・三人の方の熟練した話し方が上手でベテランの味が出ていた。
  ・演出も良かったです。
  ・初めてこのようなイベントに参加させてもらいましたが、大変楽しかったです。
  ・雰囲気のある場所で、知らなかった文学を知ることができて良かったです。
  ・とても素敵でした。また拝見したいです。


 他、いただいた改善点、ご助言等も活かして歩んでまいります。浅野川倶楽部の皆様方、そしてご来館いただいた皆様、本当にありがとうございました。心より感謝申し上げます。


      



〇8月20日(土)第4回 小説講座 ~小説を読む①~

小説 「劇場」 作 又吉直樹 から

講師: 皆川 有子(『櫻坂』同人)

 

 第4回小説講座が開催されました。講師は文学誌『櫻坂』同人 皆川 有子(みながわ ゆうこ)先生です。テーマ「小説を読む①」です。
 受講生一人一人が「劇場」又吉直樹・著(新潮文庫)の文庫本をテキストにして講座が開講されました。又吉直樹氏は、作品「火花」で芥川賞を受賞しています。
 講座の一部を紹介します。作品引用部は、すべて又吉直樹氏「劇場」からです。


◆小説を読む① 素敵な表現を読み込んで(小説「劇場」又吉直樹をテキストとして)

○主人公の鬱屈した内面の描き方の巧みさ
・まぶたは薄い皮膚でしかないはずなのに、風景が透けて見えたことはまだない。もう少しで
 見えそうだと思ったりもするけど、眼を閉じた状態で見えているのはまぶたの、裏側の皮膚
 にすぎない。あきらめて、まぶたをあげると、あたりまえのことだけれど、風景が見える。
  …小説の最初の出だし
・自分よりも駄目な人を見かけると、この程度の状況で憂鬱になっていることが、みっともな
 いように思えてしまう。「そういう自分に酔ってるんでしょ?」と本気で言ってきた女を、
 携帯の電話帳に「得意げなタコ」の名で登録しなおした。
  ⇒鮮烈な描写である。「こんなことを考えているのか」と思わせる出だしである。
  ⇒「なんてめんどくさい人なの」と思わせてしまうほどの表現である。

○光る会話の妙
・「靴、同じやな」
 その人は僕の汚れたコンバースのオールスターを見た。
 そして、「違いますよ」と言った。
 「同じやで」
 同じであって欲しかった。
 僕はもう一度「同じやで」と、さきほどよりも優しく繰り返してみたけれど状況は変わら
 なかった。
  ⇒会話文のセンスが光る。他、川端康成の雪国の冒頭部分を読みながら日本語としての
   美しさ、言葉の巧みさについてお話があった。

○会話文の工夫① 二人の関係性を読み手に伝える巧みさ
・「なんかいいことあったの?」
 沙希は少し冷めたたこ焼きを口のなかで移動させながら、僕に聞いた。
 「なんで?」
 「だって、永くんがお土産で、たこ焼きを買ってきてくれる時はだいたいそうでしょ?」
 今まで意識したことはなかったけれど、もしかしたらそうなのかもしれない。
 「いや、店の前を通ったから買っただけやで」
 沙希がたこ焼きのパックを僕に差し出したので、ソースが掛かり過ぎていない端の一つに
 楊枝を刺し、丸ごと口に入れると程良い重さが舌と顎で感じられた。
  ⇒何気ない会話文に二人の特異な関係性が垣間見える。

○会話文の工夫② 自分の主張を表現する巧みさ
・「お前の鈍感さで誰かの人生を汚すな。お前は自分の大切な人生と、それに共感する人達
 と、その感覚を健やかに育てればいい。多くがお前と同じ考え方をもって幸せに暮らせて
 いるなら俺も祝福する。でも、今はまだ違うやろ?いろんな価値観が混在してるやろ?振
 り回すな馬鹿。勝手に広い大地に攻め込んでいった「キミらの信じてる神様はタコだよ。
 我々の神様を信じなさい」とか言うてる暴力的な輩よ同じように見えんねん」
  ⇒スピード感を持って自分の主張を相手に畳みかけていく。その巧みな話術とスピード
   感、そして自分の主張を正当化していく言葉。「面倒くさい人間」と思えるぐらいの
   会話文の表現力の巧みさが光っている。

○会話文の工夫③ シナリオのセリフを使いながら本音を吐露する巧みさ
※沙希と一緒にやった舞台の脚本を一緒に読み合わせていく場面。内容を抜粋します。
 「それにしても、キミには本当に迷惑をかけた」
 「ん?永くんそんなセリフ書いてないよ」
 「迷惑ばっかりかけた」
 「どこだ?そんなセリフないぞ」
 沙希は少しふざけた口調で言う。
  …略…
 「沙希ちゃんは実家に帰る。そこで働きながら元気になる。今も元気やけれどもっとって
 ことな。ほんで俺は演劇を続けて、飛躍的な成長をとげてな、アホみたいな言葉やけど認
 められるかもしれへん。
  …略(2ページにわたり、主人公は沙希に自分の想いを吐露し続けます)…
 還暦を迎えたら、何色かわからんような茶碗を買って、ちょうどよい温度のお茶を淹れて
 飲もう」
  ⇒昔、書いた脚本のセリフを使いながら、不器用な主人公が、沙希への想いを吐露して
   いきます。もはや、沙希は合間に「ごめんね」と繰り返すことしかできない状況とな
   ります。そして沙希の嗚咽の響き。それでも変な猿のお面を自分の顔にかぶせて「ば
   あああああ」と何度も沙希に言い続ける主人公。しつこく何度も繰り返します。
   最後に又吉直樹氏は「沙希は観念したように、ようやく泣きながら笑った」と書いて、
   執筆しているペンを置きます。
  ⇒不器用であり続ける主人公。精一杯の愛情を沙希に吐露し続ける心情が痛いぐらいに
   描かれています。脚本のセリフという演出設定の巧みさが光るものとなっています。


 皆川 有子先生の講座は、又吉直樹氏の小説「劇場」に対する受講生のいろいろな思い、考え、疑問を受け止めながら進行されていくものでした。受講生は、又吉直樹氏の文章の巧みさ、技の凄さに感心しながら、今後の小説作りを再考していく時となりました。本講座は、受講生の皆さんへの小説作りへの大きさ示唆となりました。


 次回、第5回小説講座「小説を読む②」は、9月17日(土)です。講師は、 宮嶌 公夫(みやじま きみお)先生(『イミタチオ』同人)です。次の本について学びを深めていく予定です。
 ※必ずしも本は準備いただく必要はないとのことですが、皆さんに紹介しておきます。
 「現代の小説2022短編ベストコレクション 日本文藝家協会・編」
 小学館

 皆様のご参加をお待ちしております。


      



〇8月20日(土)第1回 川柳入門講座 

~川柳は楽しい!~

講師: 浜木 文代(石川県川柳協会副会長)

 

 川柳入門講座がスタートしました。第1回目講師は、石川県川柳協会副会長 浜木 文代(はまき ふみよ)先生です。テーマは「短歌・俳句との共通点・相違点について」です。
 今年度、浜木先生はじめ次の先生が講座を担当します。
  ・小森 靖江(こもり やすえ)先生(石川県川柳協会副会長)
  ・赤池 加久(あかいけ かきゅう)先生(石川県川柳協会会長)
 以上、3名の先生方で、「川柳のポイント・鑑賞のポイント」「ミニ句会から柳社句会、そして大会へ」をテーマに講座を進めていきます。

 第1回目浜木先生の川柳入門講座は、資料を使い、受講生と講師の先生が双方にやり取りをしながら進められました。スタートにふさわしい、笑顔あふれる充実した講座となりました。概要を紹介いたします。


◆短歌・俳句との共通点・相違点にふれて
  1 川柳とは…短詩型文芸である。音数律による定型を持つ韻文である。
  2 川柳の源流は和歌である。
  3 俳句と川柳の相違点

    ○俳句
      ・文語体
        ・季語あり   ・切れ字あり   ・自然が対象
    ●川柳
      ・口語体
      ・季語はない
      ・切れ字はない
      ・人間や人間社会が対象
    ※ただ、季語、切れ字が入っても、それは川柳です。
     川柳は裾野の広いものですとの話がありました。

  4 川柳は楽しい文芸
    ◇川柳の三要素(基本)
      ①穿ち   掘る、えぐる、などの人情の機微をうまく言い表す
      ②滑稽   ユーモアであり自然に湧き出る笑い
      ③軽み   当たり前の平凡な中にいいなあと思わせるもの

  ★川柳にみる人間模様
    (時事川柳)
     ○マトリョーシカいまだ平和がでてこない
    (サラリーマン川柳)
     ○娘来て「誰もいないの?」オレいるよ
    (シルバー川柳)
     ○振り返り犬が気遣う散歩道
    (遺言川柳)
     ○相続の説明会で嫁と会う
    (ジュニア川柳)
     ○ゆめ見てるぶたいの上でミュージカル(小4)
    (番傘川柳、現代川柳)
     ○疲れたと言わぬお日様お月様
     ○敗戦を待っていたのは花の種


 他にも、虫くい川柳で受講生で言葉を入れて紹介し合ったりと、大変に充実した講座となりました。浜木先生が本講座で次のように話された言葉は、心に沁みるものでした。

 ・川柳は楽しい文芸。哀しみに終わらず力強く立ち上がるものこそが川柳なのだ。
「悲しい、寂しいに終わらずに、悲しみの中に人が困難に立ち上がっていく力強さ、独特のユニークさの中に息づく、前に向かう力強さが川柳にはある」とお話いただきました。
 川柳の奥深さ、力強さ、魅力を講座から学ばせていただきました。浜木文代先生、受講生の皆様、本当にありがとうございました。


 第2回は9月17日(土)「作句のポイント・鑑賞のポイント」
 講師は小森 靖江(こもり やすえ)先生 (石川県川柳協会副会長)です。
 もしも宿題等が出るような場合は、お一人お一人に連絡をいたします。その際は取り組みの方、よろしくお願いいたします。皆様の参加を心よりお待ちしています。


      



〇8月18日(木)夏休み子ども博物館セミナー 

のまりんの紙芝居劇場

演じ手: 野間 成之 のまりん:(のまひょうしぎの会代表)

 

 大人も子どもも楽しんでいただける紙芝居、それがのまりんの紙芝居劇場です。
 本日の演目は次のとおりでした。
  ・おまんじゅうのすきなとのさま
  ・動物園
  ・おすしのあいちゃん どーこだ
  ・かわいそうなぞう
  ・まんまるまんまたんたかたん


 拍子木で始まった「紙芝居劇場」。拍子木とみんなの手拍子が息ぴったりです。
「ようこそここへ♪クック…私はのまりんだ」(桜田淳子「私の青い鳥」替え歌)
 なんと49年前の歌(桜田淳子)です。耳慣れない歌なのに歌い出しだけでみんな笑顔いっぱい「のまりんの世界」に誘われていました。

 簡単に「内容」と「のまりんの紙芝居の様子」を紹介します。


◆おまんじゅうのすきなとのさま
 昔むかしあるところに、おまんじゅうの大好きな殿様がいました。殿様は、町中のおまんじゅうを取り寄せて食べていましたが、普通のおまんじゅうにあきてしまい、食べたことがないほど大きなまんじゅうを作らせることにしました。困ったおまんじゅう屋がやったことは…。
 ※大きいまんじゅうの上に乗ったお殿様…。みんなハラハラドキドキの時となりました。

◆動物園
 仕事は昼食・昼寝付きでお金も当たる。そんな男がとびついたのが移動動物園でした。なんと目玉展示の虎が死んでしまったため、男は虎の毛皮をかぶって檻に入って虎になりますが、虎はいろいろな問題を起こします。パンを食べたり、お話したりと。そしていよいよアナウンスが「虎とライオンの猛獣ショー」の開催を告げました。
 ※着ぐるみの虎が問題を起こすたびに、笑い声が響きます。猛獣ショーの時には、もう最高
  潮です。手に汗を握る紙芝居でした。

◆おすしのあいちゃん どーこだ
 いろいろなお寿司の中にかくれんぼしているあいちゃんを、紙芝居の登場人物と一緒にさがしていく物語です。
 ※あいちゃんを探すのに真剣な子どもたちです。かっぱ巻の中からころりと出てきた
  あいちゃん。みんな楽しくて笑顔になりっぱなしです。

◆かわいそうなぞう
 太平洋戦争の末期、東京の町は空襲を受けます。もし上野動物園が空襲されて、象が暴れてしまったら…。ジョン、トンキー、ワイリーの三頭の象の運命を描いたお話です。三頭の象はどうなっていったのでしょうか。実話をもとに作られたお話です。
 ※みんな、しーんと静かに聞いています。最後に静かな拍手。心に沁みるようでした。

◆まんまるまんまたんたかたん
 忍者修行中のまんまるは、隣町のおじいちゃん忍者のところまで頼まれた手紙を届けに行きます。すると途中に、なんと大きなへびが…。紙芝居を聞いているみんなが、忍者まんまると協力して一緒に問題を解決していきます。無事に手紙を届けることが出来るでしょうか?
 ※みんなしっかりとノリノリで手拍子してくれました。忍者まんまると心ひとつになった
  時でした。


◇野間成之(しげゆき)さんとお話させていただき、「今起きている戦争」と小川未明の「野ばら」は同じ話だねと話をしました。野間さんは小川未明「野ばら」を紙芝居で紹介されておられるとのことです。
 小川未明は明治15年、新潟県上越市に生まれた童話作家です。「赤い蝋燭と人魚」はよく知られています。「野ばら」は、国境を定めた石碑を守る「大きな国の老兵士」と「小さな国の青年兵士」の物語です。国境に咲く一株の野ばら、集うみつばち、唄うひばり、良い香りの白いばら、仲睦まじく将棋に興じる二人の兵士。
 ある時、二つの国は戦争を始めます。仲睦まじく暮らしていた二人の兵士が自ら歩んだ道と待ち受ける運命。そして二人の結末。
 戦争が始まる中で、お互いがかけ合う言葉、老兵士が見た夢、夢の中での青年兵士の行動、そして枯れた野ばら。今、読んでも胸を締め付けられる童話だと思いました。
 公演の「かわいそうなぞう」の静かなるときと拍手。最後に「心に残った作品は?」の問いかけに、「かわいそうなぞう」にたくさんの子が手をあげていました。小さな子どもたちの自然な反応です。のまりんの紙芝居の持つ、広くて深い意味を今一度かみしめるばかりでした。野間成之さん、皆様、本当にありがとうございました。

      



〇8月7日(土)第4回 朗読会 『青春の門 筑豊編』 

高校入学、そして大人の階段を登っていく信介

朗読: 髙輪 眞知子(朗読小屋 浅野川倶楽部代表)

 

 8月7日(日)第4回朗読会が、朗読小屋・浅野川倶楽部の代表 高輪 眞知子(たかなわまちこ)さんにより行われました。今回は「春の病葉」(わくらぱ)からのお話です。
 高校生となった信介。病床の母親、東京の梓先生、そして長太らとの関りの中で、大人の階段を一歩ずつ上っていく信介がいました。高輪眞知子さんには、悩みながら揺れ動く信介の心の陰影を、私たちの心に投影いただくような朗読をいただきました。

 それでは話の内容を紹介いたします。


     *      *      *      *      *      *      *


 信介は高校に入学します。病院から出た塙竜五郎、いまだ病床中のタエは大変喜びます。タエと竜五郎、二人の人間が、自分にさまざまな期待を抱いてくれていることは信介にとって、強い張り合いを感じさせたのでした。
 竜五郎は、高校三年間のうちに体を張って命がけでやる気になるものをみつけることが大事だと信介に語ります。
 そんな中、長太から「塙組の後継者は信介だ。」と聞かされます。長太の目の中に、今まで見たことのない暗い翳を見る信介でした。

 同じ日、東京へ去った梓先生から、手紙と小包が届きます。梓先生からは、つつましい、良い演奏家になる道を目指して懸命に歩んでいるとの連絡がきます。そして信介へ励ましの手紙と腕時計をプレゼントします。その晩、もらった腕時計をはめた手首を、胸のあたりに抱え込むように眠り込む信介でした。

 高校生になった信介。信介はいろいろな部から勧誘を受けたのですが、どの部にも加入しませんでした。授業を終えると家へ帰り、若い衆と一緒にトラックの上乗りをしたり、事務所で帳面をつけたりして、手伝いをするのでした。
 そんな中、塙組の春男と長太兄との間で、松原楼のエリカを巡り、いさかいが起きます。
長太は、
「男はいつも女のことで苦しむんだ。人を殺したり、金をつかいこんだ、いろんなことが女のためにおこる。女には惚れるんじゃない。信介、このことを忘れるなよ」
と、信介に語るのでした。 

                            (「女を売る町」まで)



    *      *      *      *      *      *      *


  第5回朗読会は、9月11日()です。「落日のまえに」からの朗読となります。
 ぜひ、ご参集ください。皆様のご参加をお待ちしています。


      



〇8月6日(土)第2回 詩入門講座 

詩を読み、学び、書こう

講師: 和田 康一郎(金城大学講師、『イミタチオ』同人)

 

 詩入門講座第2会の講師の方は、1回目と同じで金城大学講師の 和田 康一郎(わだ こういちろう)先生です。和田先生には、今回も優れた作品を読み、詩の魅力を知り、詩作の基本を教えていただきました。いろいろな作品の詩を紹介いただきながらの講義でした。
 和田先生の講座内容で紹介されたのは次の詩です。


 ☆観想(抑制と調節。寸鉄化。余白重視。)
   ・「自分の感受性ぐらい」 茨木のり子
 ☆五段構成 
   ・「帰途」        田村隆一
    ※第一連…述懐
     第二連…無関係でいられたのに
     第三連…「あなた」は涙を流し、「きみ」は沈黙により痛苦を表している
     第四連…言葉の世界よりもとびっきりすぐれたものが世の中に実在。
     第五連…でも自分は人間の世界・言葉の世界に帰ってくる。
 ☆構成美の三要素[調和(ハーモニー)
   ・「シジミ」       石垣りん
 ☆対称(コントラスト)
   ・「家庭」        天野忠
 ☆多様性(バラエティ)通常思いつかないようなイメージの使用
   ・「(ある日……)」    倉田比羽子
 ☆ソネット(十四行詩)形式
   ・「悲歌」        田中清光
 ☆散文詩
   ・「雪」         粕谷栄市


 一つ一つの詩を提示いただき、各詩が持つテクニック的な面からのアプローチについての解明をしていただきました。多様な詩の在り方を提示いただいた貴重な機会となりました。和田先生、ありがとうございました。

 最後に、井崎外枝子先生から、石川近代文学館での企画展「石川ゆかりの詩人たち」の案内がありました。室生犀星、中野重治、井上靖、広津里香はじめ、森山啓、永瀬清子、水芦光子、濱口國雄ら県ゆかりの詩人たちの著書、原稿・色紙など自筆資料も展示されるとのことです。川近代文学館にも足を運んでいただけたらと思います。

 

 3回目以降、実施の詩講座 実作の課題候補です。紹介します。

  ・顔    ・空    ・家族    ・仕事    ・光    食    その他

 
それぞれ詩の実作の締め切りは次のとおりです。

〇第1回  個別指導日 9月10日(土)
     ※作品締切日 8月31日(水)


〇第2回  個別指導日10月 8日(土)
     ※作品締切日 9月28日(水)

〇第3回  個別指導日11月12日(土)
     ※作品批評と推敲 

 受講生のみなさん、よろしくお願いします。

 次回、9月10日(土)の講師は、井崎利枝子(いざきとしこ)先生(詩誌「笛」同人)、中野徹(なかのとおる)先生(詩誌「笛」同人)です。井崎先生は第46回、中野先生は第49回泉鏡花記念市民文学賞を受賞されています。お二人の先生には、受講者の作品を批評、推敲いただきます。
 みなさまの参加をお待ちしています。


      



〇8月6日(土)第4回 小説入門講座 

推敲について

講師: 高山 敏(『北陸文学』主宰)

 

 8月上旬、小説入門講座も第4回を迎えました。今回は「推敲について」です。前回の講座で、小網先生から「自作小説は自分で百回読んだら百回直すところがあるものだ」とのお話がありました。本講座は、推敲についての具体的な学びとなりました。
 講師の先生は、『北陸文学』主宰の 高山 敏(たかやま さとし)先生の担当です。内容を抜粋し紹介します。


○各作家の推敲についての考え
◇高樹のぶ子
  ・どうしたら、今思っていること、感じていることが、より鮮明に正しく相手に受け取られるか、
   ひとりよがりになっていないかということを、いつも考えながら書いている。
◇阿刀田 高

  ・とにかく最後まで書き上げる。それから推敲する。書き直す。
   全体の輪郭が定まって初めて細部が決まる。
   また、結末が決まって、逆に書き出しが変わる。
   短編小説は、特にこういうケースが多い。

◇宮本 輝

  ・『泥の河』は、文章の欠点や構成上の欠点を指摘され、「いい作品だ」と言われる

   まで7回書き直した。
◇太宰 治
  ・文章の中の、ここの箇所は切り捨てたらよいものか、それともこのままの方がよい
   ものか、途方にくれた場合には、必ずその箇所を切り捨てなければいけない。
   いわんや その箇所に何か書き加えるなど、もってのほかというべきであろう。

◇ドストエフスキー

  ・書き上げるために、隣に住むばあさんに見せて、ここがよくわからないと言われる
   と書き直した。


 高山先生には、他、いろいろな作家の「推敲」への考えを教えていただきました。名だたる作家も推敲の限りを尽くして作品が出来上がっていることを学びました。また、他にも、推敲の14ポイントを具体例と共に学びました。一部を紹介します。

①常套語、決まり文句の使用を控える。
  ・工夫した自分の言葉で
  △決まり文句、ありふれた表現
②力みすぎの文章になっていないか。できるだけ削る。
  △うまい文、美辞麗句、修飾する言葉での気取り、格好いい文、劇的表現、飾る言葉
  ・不幸な人物に読書の同情を引こうというなら、できるだけそっけなく、冷酷に突き放し
   て書くがいい。(チェーホフ)
③句読点に気を配る。読み違いを防ぐ。

  ・作者の息づかい、心のリズム
  △句読点の打ち方で意味が変わってしまう。
④擬音や符号は適切に使う。
  ・できるだけ文字を使っての表現に努める。

  △「・・・・」 ? ! ( ) ドドドドドッという大きな羽音 等

⑤接続語を多用していないか。

  △……。そして……。そして………そして………。

⑥同じ言葉、同じ言い回しが多くないか。

  ・文末を同じような言い方で繰り返すのではなく、語尾変化を持たせる。
  △…だった。…した。…していた。…だ。…である。などの一本調子
⑦不要な箇所はないか。

  △テーマの結びつかない箇所、書きすぎている⇒削ぎ落すべし

⑧ねじれ文に気を付ける。

  ・主語と述語は正確に対応すること。
⑨文章の贅肉を削ぎ落とすこと。

⑩誤字・脱字はあってはならない。

 

◆次回9月10(土)小説入門講座には、課題(宿題)が出ています。
受講生のみなさん、課題(宿題)は次のようになります。よろしくお願いします。


〇小説入門講座 課題(宿題)について

【実践編】

 1 次回のテーマ

  ・描写力を養う
   (課題による小説(600字から1000字程度)による個別指導を中心に)
 2 講師 
  ・高山 敏  先生(「北陸文学」主宰)
  ・小網 春美 先生(「飢餓祭」同人)
 3 課題小説に挑戦しよう ※実際に小説を創作していただきます。
   (1)テーマを決める。
     〇テーマは次のどちらかです。選んでください。
       A 懐かしい風景
       B 自由テーマ 
      ※描写(情景・人物・心理等)を意識して小説に挑戦します。
   (2)600字(原稿用紙1枚半)から1000字(原稿用紙2枚半)でテーマに沿って
      小説を執筆します。
      ※描写力を意識して創作ください。
   (3)創作された小説を金沢文芸館にデータまたは郵送にてお送りください。
     ※締切日は9月8日(木)。できたところまででもOKです。
   (4)9月10日(土)小説入門講座の進め方

      ①2グループに分けます。 ※事前にスタッフでグループ分けしておきます。
      ②各グループ内活動 ※一人ずつ時間を決めて実施します
        ・創作小説の紹介
        ・講師の先生からアドバイス
        ・受講生同士の意見交換
      ③高山先生、小網先生からの全体講評



 このような流れで、第4回小説入門講座(9月10日(土))を行います。受講生の皆さんにとっては、初めての創作活動です。小説は完成形でなくても大丈夫です。グループ内で、講師からの助言、講評、受講生同士の意見交換等をしていくことで、学びを深められたらと思います。

 なお、受講生の皆様には、本課題提出については書類等でもご案内をいたします。
不明な点がありましたら、金沢文芸館「端館長」または「本郷」までご連絡ください。今年度、小説入門講座で小説を創作していく学びは初めての取り組みとなります。受講生の方々にとりまして、少しでも実りあるものにしていきたいです。
 書けなかった場合でも、その悩みを打ち明けていただき、講師から助言をいただくことで一つの収穫になると思います。

 次回、第5回小説入門講座は、9月10日(土)10時30分からです。高山 敏先生、小網 春美先生で「描写力を養う」(課題作文による個別指導を中心に)についてです。
皆様のご参加をお待ちしております。

※追伸
・講師の先生から小説入門講座受講生へのお知らせがあります。 「もし『金沢創作工房』の小説作りで「作品を見てほしい」「アドバイスをいただきたい」という依頼等があれば、作品を見せていただきたい。推敲していきます。」 とのことです。お知らせしておきます。


      



〇7月23日(土)カナザワナイトミュージアム2022 『ソプラノとオルガンの夕べ』

~こころのふるさとを唄うⅧ~

出演: 直江 学美(ソプラノ歌手)、黒瀬 恵(オルガン奏者)

 

 夏の恒例行事となった『ソプラノとオルガンの夕べ』を開催いたしました。出演は、ソプラノ歌手の 直江 学美(なおえ まなみ)さん、オルガン奏者は、 黒瀬 恵(くろせ めぐみ)さんです。
 2014年以降、今回が8回目の出演となります。今回は、日本の童謡・唱歌とならんで、ウクライナの子守歌「夢は窓辺を過ぎて」が披露されました。柔らかなオルガンの調べに乗り、我が子への成長の願いが込められた子守歌を、艶のあるソプラノ歌唱で歌っていただきました。ウクライナの子守歌の滋味深く、憂いある調べを聴きながら、ウクライナの平和を祈るかけがえのない時間となりました。


   ♪♪ プログラム ♪♪
  ☆『夏の思い出』         作詞:江間章子   作曲:中田喜直
  ☆真夏は来ぬ           作詞:佐々木信綱  作曲:小山作之助
  ☆しゃぼんだま          作詞:野口雨情   作曲:中山晋平
  ☆かもめの水平さん        作詞:武内俊子   作曲:河村光陽
  ★マーチ             作曲:L.J.Aフェビュール=ヴェリ
  ☆七つの子            作詞:野口雨情   作曲:本居長世
  ☆めえめえこやぎ         作詞:藤森秀夫   作曲:本居長世
  ★希望の歌            作曲:G.H.スウィフト
  ☆夢は窓辺を過ぎて        ウクライナの子守歌
      ※ ☆は歌とオルガン   ★はオルガン演奏 です。


○夢は窓辺を過ぎて  ウクライナの子守歌
 ※ウクライナ語での歌唱でしたが、演奏前に直江さんが和訳を伝えてくださいました。

     夢は窓辺を過ぎて

   夢は窓辺を過ぎて
   眠りは垣根を過ぎる
   夢は眠りに尋ねる
   僕らは今夜どこで休もうか?

   小屋は暖かく 子どもは小さい
   どこに行っても 眠りへ誘う

   僕らは そこで眠る
   子どもに歌いかける
   眠れ 眠れ 私の小さなハヤブサ
   眠れ 眠れ 私の小さなハト

 黒瀬さんの暖かいオルガンの響きに包まれた直江さんの優しく艶やかな歌声は、交流サロンにいる私たちをそっと包み込みました。いまだ戦禍の続くウクライナです。そんな中で幼き我が子の成長を願い、戦禍の中でも歌われているであろう子守歌。ウクライナの子守歌は、平和への祈りを願うかけがえのない時となりました。ご紹介いただいたことを心より感謝いたします。

 最後にアンケートから一部を紹介いたします。
・とても良い企画でした。リードオルガンがとてもコラボしていて良かったです。
・曲の解説があって良かった。ウクライナのこと、いろいろとお話を聞かせてもらってよかっ
 た。
・懐かしい曲をすばらしい歌唱と楽しいトークで、すばらしいひと時を過ごさせていただきま
 した。次回も楽しみにしています。
・手軽にこうしてコンサートが間近で聴けるのは大変にありがたいです。
 クラシック演奏が次回あればうれしいです。
・選曲がとっても良かった。小学校時代に覚えた曲もあり、なつかしさが込み上げてきた。
 オルガン独奏の曲もとても良かった。現代の日本人作曲による日本の歌曲も取り上げて欲し
 い。
・美しいソプラノとやさしいオルガンの音色を近くで聴くことができて、ぜいたくな気持ちに
 なりました。ありがとうございます。
・何度もうかがっています。感染の状況もありますが今後も続けていただきたいです。
・8回目→すばらしい。 是非続けてください。 応援します。
・これからもこのコンビでの演奏会を続けてください。

※他、今後への期待を込めたご意見・ご要望もいただきました。本当にありがとうございました。


      



〇7月16日(土)第3回 小説講座 ~提出作品についての批評~

個別指導を中心に

講師: 剣町 柳一郎(小説家)   宮嶌 公夫(『イミタチオ』同人)  皆川 有子(『櫻坂』同人)

 

 第3回小説講座が開催されました。講師は、小説家の 剣町 柳一郎(つるぎまち りゅういちろう)先生、文学誌『イミタチオ』同人の 宮嶌 公夫(みやじま きみお)先生、文学誌『櫻坂』同人 皆川 有子先生(みながわ ゆうこ)先生です。テーマ「提出作品についての批評」です。

 今年度は「批評の講座のやり方」を次のように行いました。
 ①剣町柳一郎先生から全体講評をいただく
 ②全体を2グループに分けます。A:宮嶌先生グループ、B:皆川先生グループとして、
  各グループ6人として受講生も意見を述べていく批評会を実施します。
 ③剣町先生には、適宜2グループに入っていただき、ご助言をいただく。
 ④代表の講師の先生から全体講評をいただく。


◆全作品タイトル(現時点)
 ・影と日向     ・父の大政奉還         ・ぴいちゃんを笑うな
 ・笑うカラス    ・やわらかな日々        ・暗闇
 ・鼻毛       ・黄身と白身          ・たかもどき
 ・暴力       ・がっこみちを踏む       ・伊右衛門の最後

※いろいろなタイプの作品が揃い、どれも自分にしか書くことができない個性的な作品ばかり
 でした。これらの作品は、文芸館から3人の講師の方々、受講生の皆さんに事前送
 付しました。皆さんが全作品を読まれての今回の講座となりました。


◆全体講評(剣町柳一郎先生)から
 ・作品が語りたいことを明確にしていくことが大切である。
 ・小説は読む人とのコミュニケーションが大切である。
 ・小説作りは決して自己満足にならないことが大切である。
 ・作品内容自体が面白い作品が数多くあった。
 ・タイトルにこだわり、それ自体が素晴らしい作品がある。(大政奉還等)
 ・なかには新作落語のように面白く読ませてもらう作品もあった。
 ・優れた本をどんどん読んでいくことが上達のポイント。1ヵ月に4冊は読む必要がある。
 ※剣町先生には、全作品1作ずつのご講評をいただきました。


各テーブルでの協議・批判から(ほんの一部です)
 ・身近な素材(鼻毛等)を先生の描写としているのは面白い。
  普段気付かないところに読みの視点がある。素敵だと思う。
 ・途中に「歌」を入れている。歌詞を入れられているが、非常に効果的である。
 ・怖さの情景がいつまでも頭に残る。強烈な印象を残す作品だ。
 ・舞台作品の脚本を見ているような気がしてきた。楽しさが抜群である。
  これもありなのかと思われた。
 ・温かい人柄がそのまま作品に素直に出ている。幸せな気持ちにさせられる作品だ。
  お会いしてみて、やはり作品そのままの素敵な方だ。

 ※各テーブルでは話が途切れることがなく、剣町先生、宮嶌先生、皆川先生を中心としなが
  ら、受講生自身がタイプの違う作品を認めての意見交換がなされました。忌憚のない質
  問、意見、改善点等が出されました。お互いを尊重し合う真摯な話し合いは、受講生の皆
  さんが客観的にご自身の作品を見つめ直す良き機会となり、今後への創作意欲への灯火と
  なったようでした。実に充実した第3回の講座となりました。これは3人の先生方のお力
  、受講された方の作品の力、受講生の方々の学び合う姿勢と真心の賜物と思いました。
  充実した素晴らしい講座を創り上げてくださった皆さま、ありがとうございました。


 次回、第4回小説講座「小説を読む①」は、8月20日(土)です。講師は、 皆川 有子(みながわ ゆうこ)先生(『櫻坂』同人です。次回の講座で取り上げる本は、『又吉直樹さんの「劇場」』です。書店や図書館にもございますので、一読してご持参いただけると幸いです。申込みいただいた皆さまのご参加をお待ちしております。


      



〇7月10日(日)第3回 朗読会 『青春の門 筑豊編』

「これが わしの線香たい」 矢部虎治 男気ダイナマイト

講師: 髙輪 眞知子(朗読小屋 浅野川倶楽部 代表)

 

 7月10日(日)第3回朗読会が、朗読小屋・浅野川倶楽部の代表 髙輪 眞知子(たかなわ まちこ)さんにより行われました。今回は「川筋喧嘩作法」のお話です。
 今回の場面は、塙竜五郎の怪我、長太の殴り込み、信介、矢部虎次と門司の門映会らとの駆け引き等、まさに手に汗握る話となっています。
 髙輪眞知子先生には、そんな緊迫した場面を、時にはスピード感を伴い、そして気迫の込もった地響きするような朗読をいただきました。内容を簡単に紹介いたします。


      ※       ※       ※       ※       ※

 塙竜五郎が、門司の門映会を名乗る男に散弾銃で片足をぶっ飛ばされて、大怪我を負います。伯父の矢部虎次が「この事件には、入り組んだ裏のからくりがある」との思い出、信介はじめ若い衆の暴走を止めに入ります。しかし、兄貴分の長太は、親父 塙竜五郎の仕返しに門映会に単身で向かいます。

 信介と矢部虎次は、竜五郎のハーレーに乗って長太を説得しに門映会へと走ります。信介は、兄貴分の長太を救うために、巨体な化け物のハーレーに喧嘩装束の伯父 矢部虎次を乗せて出発します。

 門映会事務所で、長太は板張りの部屋の真ん中に座らされて、両腕を背中でかたくくくりあげられています。白い肌着と腹巻が血で真っ赤になり、血がしたたり落ちて床を染めています。膝頭が割れ、白い骨のようなものも見えています。

 矢部虎次は単身、門映会内部に飛び込みます。そしてこう語ります。
「ダイナマイトが六本あるけん、映画館もろともいっしょに吹っとばすにゃ充分ばい」
「わしは昔、三池炭鉱の発破係りやったけん、爆発物は専門家たい。話によっちゃ一丁、ここでマイト心中といくのも面白かろ。わしは冗談ば言いよっとじゃなかぞ」
 命がけの駆け引きで長太を助けた矢部虎次、虎次と長太を乗せたトラックと、信介のハーレーは、深夜の街道を唸りながら疾走していきました。その時、急に激しい恐怖感に襲われる信介でした。
                      (「川筋喧嘩作法」まで)

      ※       ※       ※       ※       ※


 第4回は8月7日(日)からです。「春の病葉(わくらば)」からの朗読となります。
 ぜひ、ご参集ください。皆さまのご来館を心からお待ちしております。


      



〇7月9日(土)第1回 詩入門講座 

詩を読み、学び、書こう

講師: 和田 康一郎(金城大学講師、『イミタチオ』同人)

 

 「詩の魅力を知りたい!」「詩を書いてみたい!」など、初めて詩に触れる方を対象に、「詩人を知り、詩作を楽しむ」講座が始まりました。
 第1回の講師の方は、金城大学講師の 和田 康一郎(わだ こういちろう)先生です。和田先生は、第1、2回の講座担当で、優れた作品を読み、詩の魅力を知り、詩作の基本を教えていただきます。
 また、後半の講師は、 井崎 外枝子(いざき としこ)先生(詩誌『笛』同人)、 中野 徹(なかの とおる)先生(詩誌『笛』同人)です。井崎先生は第46回、中野先生は第49回泉鏡花記念市民文学賞を受賞されておられます。お二人の先生には、受講者の作品を批評、推敲いただきます。
 さて、今年度は、定員いっぱい10名の参加申し込みをいただいての活気あるスタートとなりました。
 和田先生の講座内容を一部、ご紹介いたします。作家の作品3編、高校生の作品を2編紹介して、それぞれを読み味わっていきました。


     初恋     島崎藤村

  まだあげ初めし前髪の
  林檎のもとに見えしとき
  前に差したる花櫛の
  花ある君と思いけり

  やさしく白き手をのべて
  林檎をわれにあたへしは
  薄紅の秋の実に
  人こひ初めしはじめなり

  わがこころなきためいきの
  その髪の毛にかかるとき
  たのしき恋の盃を
  君が情に酌みしかな

  林檎畑の樹の下に
  おのずからなる細道は
  誰が踏みそめしかたみぞと
  問ひたまふこそこひしけれ


     初恋     吉原幸子

  ふたりきりの教室に 遠いチンドン屋
  黒板によりかかって 窓をみていた

  女の子と もうひとりの女の子
  おなじ夢への きびしい共犯
  ひとりはいま ちがふ夢の 窓をみている
  ひとりは もうひとりのうしろ姿をみている

  ほほえみだけは ゆるせなかった
  おとなになるなんて つまらないこと

  ひとりが いたづらっ子に キスを盗まれた
  いたづらっ子は そっぽをむいてわらった

  いたずらっ子は それから いぢめっ子になった
  けふは歯をむいて「キミ ヤセタナ」といった

  それでひとりは 黒板に書く
  オコラナイノデスカ ナクダケデスカ

  ひとりはだまって ほほえみながら
  二つの「カ」の字を 消してみせた

  うすい昼に チンドン屋のへたくそラッパ 急に高まる


     春     安西冬樹

  てふてふが一匹韃靼海峡を渡って行った。


※このほか、高校生の作品2編も紹介されました。


 韻文と散文についての違いを説明いただきながら、多感な青年の思いが表現されている島崎藤村の「初恋」、多義的な解釈が可能な吉原幸子の「初恋」、短くとも強烈な印象を与える安西冬樹の「春」を読み味わっていきました。

 島崎藤村「初恋」は、詩集「若菜集」に収められている作品です。本作品は、日本で生まれた清純な恋愛詩であり、優美な七五調のリズムが甘美に響くものです。和田先生が1連ずつ読み解くことで、受講生は島崎藤村の甘美な表現に酔いしれるばかりでした。また、散文と違い、韻文であるために複数の解釈が同時成立しても構わないことを、先生から学んでいきました。

 吉原幸子「初恋」は、読み手によりいろいろな解釈が可能な詩です。本詩について、和田先生は「余計なことは説明していない」と言われました。それゆえ、多義的な解釈ができます。本講義でも本詩に対していろいろな解釈が出てきました。
 また4連の「ほほえみだけは ゆるせなかった/おとなになるなんて つまらないこと」の意味の大きさについても講師から指摘がありました。講義が終わって帰路につく時も、参加者が各自の解釈を語られている様子に、この詩の大きな価値がある気がしました。

 そして、「春」安西冬樹さんの1行詩です。ある受講生からは解釈の在り方について「ちょうととらえずに人としての生き方ととらえて自分は解釈しているんだけれど、そんな読み方はどうなのか」といった質問もありました。講師からは多義的なとらえがなされていけるところが本詩の一つの魅力ではないかという話となりました。

※ブログを書いている自分は、高校の現代国語テストを思い出します。問題はこの1行詩のみでした。この詩をあげて「この詩について論ぜよ」という1問だけの問題でした。問題用紙をもらったときの困窮は今も覚えています。出題者は、後に金沢文芸館初代館長となられた兼近靖志氏でした。鮮明にその時の詩の風景を今も覚えていることに、これほどまでに記憶に残るテストはあるまいと懐かしく思うばかりです。1問だけのテストとみんなで向き合う時間。何とも大らかな時代であったのかと思います。

 次回の詩入門講座は8月6日(土)「詩というもの②(詩を味わう)」です。講師は第1回目と同じく「和田康一郎」先生です。次回は、石垣りん、茨木のり子らの詩も紹介いただけるかと思います。楽しみですね。

 また最後には、第3回目以降に実施される詩入門講座 実作の課題候補も発表されました。一例ではありますがご紹介します。

 ・顔   ・空   ・家族   ・仕事   ・光   ・食   ・その他

 それぞれの詩の実作の締め切りは次のとおりです。

 ○第1回  個別指導日  9月10日(土)
       ※作品締切日  8月31日(水)

 ○第2回  個別指導日  10月8日(土)
       ※作品締切日  9月28日(水)

 ○第3回  個別指導日  11月12日(土)
       ※作品批評と推敲


 宿題が出ていますので、受講生の皆さんは、よろしくお願いします。


      



〇7月9日(土)第3回 小説入門講座 

小説の文章

講師: 小網 春美(『飢餓祭』同人)

 

 7月中旬、体調管理が難しいほどの猛暑が続いています。そんな中、小説入門講座は3回目で、受講生の皆さんにおかれましては、大変意欲的に取り組んでいただいています。
 今回は、『飢餓祭』同人の 小網 春美(こあみ はるみ)先生の担当(第1回の講座も担当)で、「小説の文章」のテーマでお話いただきました。
 内容をご紹介いたします。


○小網 春美 先生のアドバイスから
◆小説作りで大切な基本は?
描写を活かす

○文章上達には名文を読む
   …・名文は人に聞き、自分でも探す。俳人・詩人は小説作りが上手

○文章は短文がベター
   …・短文はごまかしがきかない
    ・長文を短文にする→主述のねじれに気付く

倫理が通る文章を
   …・倫理が通らない時は思い切って文を捨てる

丁寧語常体に気を付けて
   …・丁寧語(です・ます)、常体(である・だ)のどちらかで統一する
    ・小説作りは原則、常体が望ましい

○文章はスラスラと滑りすぎない
   …・抑制を効かせることが大切だ

○自分の気持ちにピッタリの文章に
   …・「屈折」(この表現は気持ちが伝わらない)→類義語の検索→自分のぴったりを探す
    ・「屈折」 → 類義語の検索 → ぴったりを探す

体言止めは余韻効果あり
   …・使いすぎると▲

文末は現在形と過去形をバランスよくミックスして
   …・現在形は臨場感が出てくる

効果的な表現の追求
   …・すごい、こんにちは  安易な表現は▲
    ・少し(すこし)→少し(ちょっこし)などの表現を入れるのも効果的
    ・安易な比喩表現は、手垢にまみれた表現▲
      悪い例:ニャーオ、りんごのようなほっぺ、ウグイスがホーホケキョッキョ▲
    ・岡本かなこ…ぺきんと鉛筆を折った。キャラキャラ笑う。 などは効果的

○小説の骨格となるストーリーを
   …・描写は肉付け
    ・筆者の主観がそこに入る

登場人物の表現への配慮
   …・有名人に似ているなどの表現▲  自分で表現する○
    ・個性を描き出すこと  ノッポ等の表現は▲
    ・効果的は比喩表現を
    ・主人公は早めに登場させる

背景への配慮
   …・背景は自分で間取りをイメージして小説作りを  生きた表現を

名前の付け方について
   …・キラキラネームは▲
    ・苗字は単純に  名前は凝ってつけて
    ・死亡欄の名前を見てはメモをとっている。貪欲な姿勢で。

○季節感ある小説を
   …・時代設定がある場合は最初の一枚目、二枚目でわかるように

○五感に立った小説を
   …・視覚だけの小説▲
    ・視覚 > 聴覚 > 嗅覚 > 味覚 > 触覚
    ・冷たい腕 等の表現も効果的

○タイトルは小説の顔 大切
   ※熟慮していくことが大切


 小網先生から、たくさんの小説作りのポイントが提示されました。そんな中、
『「小説の何が面白いか?」と問われたなら、すぐさま私は「行間を読むということだ」と答えると思う。描写から行間を読んでいく。小説はそんな数字の計算のない計算の世界ではないか。小説作りでは、ぜひみなさん、数字のない計算を意識してほしいと願っている』
 とのお話がありました。
 講義の後も、受講生からもいくつかの質問も寄せられました。みなさんの熱い気持ちでいっぱいの講座となりました。小網先生、ありがとうございました。いよいよ課題作文を書いていく場面となってきました。これからも楽しみですね。

 次回は8月6日(土)10時30分からです。高山 敏 先生で「推敲について」です。皆様のご参加を心からお待ちしております。


      



〇7月6日(水)出前講座 浅野川小学校2年

金沢の民話を聞こう

講師: 神田 洋子(ストーリーテラー)

 

 徳田秋聲、泉鏡花、五木寛之氏ともゆかりが深い浅野川沿いに位置する、浅野川小学校にお伺いしました。
 2年生2クラスの児童が参加して、出前講座「民話を聞こう」が実施されました。講師はストーリーテラーの 神田 洋子(かんだ ひろこ)先生です。感染症への安全対策のため、二回に分けての学習をしました。


◆主なプログラム
  「飴買いゆうれい」…金沢では金石や森山に伝わる伝説
  「芋ほり藤五郎」 …金沢の地名発祥として知られる
  「ヤマバトの親子」…親の言うことは素直に耳を傾けなさい という教訓

 金沢市にはたくさんの民話が伝承されています。そんな中から「飴買いゆうれい」「芋ほり藤五郎」「ヤマバトの親子」などのお話をしていただきました。ストーリーテラーの方と接するのは初めてという子どもたちです。準備段階から、和ろうそく、土笛、折り紙などを机上に準備されていく神田先生を囲んで、民話の世界に誘われていく子どもたちがいました。
 そして、神田先生から語られる民話の世界に入っていく子どもたち。輝く眼で懸命に聴き入る姿は素敵でした。
 授業の最後に和ろうそくの灯りを消す場面がありました。一斉に一人ずつで願い事をした後に、7月生まれの人でろうそくの灯りを消すのですが、その願い事をする子どもたちの姿が本当に温かで豊かなのですね。一人一人の願い事が何かはわからないのですが、人の幸せをも思っているような空気感は実に柔らかく、幸せの春風が吹いているようでした。そんな子どもたちの姿に、心が洗われるようでした。
 2組では、担任の先生だけが7月生まれでした。子どもたちはうれしそうに、先生が前に出るようみんなで促していきます。自分のことのように喜ぶ子どもたちがそこにはいました。
 「2クラスとも子どもたちを大切に想う先生方の愛情がすごいですね。だからこそ、そんな先生の愛情を子どもたちはしっかりと受け止めているのですね。素敵ですね」と神田先生と語り合う帰路となりました。

 飴買いゆうれい、芋ほり藤五郎も、人を想う心が結び合って幸せを呼ぶ物語です。どちらも、純朴さ、温かな心があり、全国にも誇れる愛あふれる民話です。そんな民話を一生懸命学んでいく子どもたちとの学習は、貴重な体験となりました。
 こんな時間を創っていただいた神田先生、ありがとうございました。そして、浅野川小学校の先生方、子どもたち、素敵な出会いをいただき、本当にありがとうございました。


※ブログを記している私自身、50年以上も前に、芋ほり藤五郎夫妻の像とお墓がある寺町の伏見寺へ友達らと見学に行ったことがあります。夏休みのラジオ体操の後、
「金沢のことが詳しく知ることができたらなあ」と話をしていた時、地域のおじさんがみんなを伏見寺へ連れて行ってくれたのです。その時のご住職の温かい笑顔、石造りの大きな墓、十二支の像、阿弥陀如来坐像などが今も瞼に焼き付いています。また、その時に伺った芋ほり藤五郎のお話もいまだに覚えています。小学生の時に見聞きした、貧しくても実直に生きる藤五郎の生き方。そんな生き方が自分の胸のどこかに残って、歩んでくることができたような気がします。今は亡き町内のおじさんや当時のご住職らの笑顔が今も忘れられません。そんなことを思い出させてくれた浅野川小学校の子どもたちでした。
 民話の素晴らしさを再認識させてくれた子どもたち。ありがとうございました。今後の健やかな成長も心から願っています。


      



〇6月29日(水)出前講座 浅野川小学校4年

三文豪について学ぼう

講師: 薮田 由梨(徳田秋聲記念館 学芸員)

 

 情緒ある浅野川沿いにある浅野川小学校にお伺いしました。4年生2クラスが参加して、「三文豪について学ぼう」の出前講座を実施しました。今回の講師は、徳田秋聲記念館の 薮田 由梨(やぶた ゆり)学芸員です。まず三文豪についての話から授業は始まりました。


◇金沢の「三文豪」とは
 金沢で生まれ育ち、文学(小説・詩・俳句など)の面で活躍して、優れた作品を残された素晴らしい方々のことです。作風はそれぞれ異なりますが、故郷の金沢を離れて東京で作家活動を続けました。三人とも、ふるさと金沢に愛着を持ち、金沢を舞台にした作品も少なくありません。

◆徳田 秋聲(とくだ しゅうせい)
 明治4年、浅野川に近い横山町生まれで、昭和18年に亡くなりました。
 秋聲の小説は、ごく普通に生きる人々の何気ない日常生活を生き生きと描き出し、そのまま物語にするという特色があります。自然主義文学の大家です。特に、女性を描くことに優れた作家として知られています。

◆泉 鏡花(いずみ きょうか)
 明治6年、浅野川大橋近くの下新町(現在の泉鏡花記念館の場所)に生まれ、昭和14年に亡くなりました。
 鏡花は、心の中で空想したファンタジックできらびやかな世界、幽霊や妖怪などが登場する不思議な夢物語を創り出すのが得意な作家です。現実や日常をそのまま作品にした秋聲とは正反対の特徴といえます。秋聲とは正反対の作風のため、喧嘩することもありました。

◆室生 犀星(むろお さいせい)
 明治22年、犀川の畔にある千日町に生まれ、昭和37年に亡くなりました。
 犀星は、秋聲・鏡花よりは十数年も年下で、二人の先輩作家の長所を取り入れて、現実生活に即した作品と豊かな想像をもとに書かれた作品の両方があります。また、詩や俳句にも優れた作品を残しており、子ども向けの作品もあり、小中学生にとって親しみやすい作家といえます。


◇三文豪についてさらに詳しく学ぼう
 ・プリント「三文豪地図」に、子どもたちが二本の川の流れ(浅野川、犀川)を書き加えまし
  た。さらに浅野川小学校の場所も地図で押さえました。改めてお手製の「三文豪地図」を
  見て、自分たちの学校名(浅野川小)の川沿いに徳田秋聲、泉鏡花が関係していること
  に驚きを持つ子どもたちの姿がありました。
 ・ミニ知識として、次の三文豪像が薮田学芸員から紹介されました。

 ◆徳田 秋聲
   ・本名:末雄(すえお)
   ・洋服が好き ダンスが趣味
   ・動物が苦手だよ
   ・代表作は 「黴(かび)」「爛(ただれ)」

 ◆泉 鏡花
   ・本名:鏡太郎(きょうたろう)
   ・うさぎのコレクター
   ・かなりのきれい好き
   ・代表作は 「化鳥」「天守物語」

 ◆室生 犀星
   ・本名:照道(てるみち)
   ・庭づくりが趣味、動物好き、ハエを一日観察したりしている。
   ・代表作 「杏っ子」「動物詩集」「蜜のあはれ」

 そのほか、三文豪マップ作りをしながら、
 ○犀川、浅野川の流れと関係した中で三文豪が活躍したことを知る
 ○三文豪それぞれの作風の違いを実際の原稿から学ぶ
 ○三文豪の直筆原稿から感じることはあるかな?
 などにもチャレンジしていました。


 最後に、兼六園下の白鳥路にある「三文豪像」を見て、気付くことを出し合いました。
  ・「向かって一番右側の人はスーツ姿だな」…ということは「徳田秋聲だ!」
  ・「抱いているのはうさぎだ」…ということはウサギ好きの「泉鏡花だ!」
  ・「メモをしているね」…ということは俳句や詩も書いている「室生犀星だ!」


 あっという間の45分間でした。浅野川小学校4年生の子どもたちは、大変真剣に、意欲的に学習に取り組む子どもたちでした。薮田学芸員と共に、「4年生とは思えない真剣な取り組み方でしたね」「みんなの反応が良く、どう考えているのかがよく見えました。素敵な子どもたちです」など、いろいろとお話させていただく帰路となりました。
 印象的だったのは、子どもたちの意欲的に鉛筆を走らせて書く姿でした。金沢市の三文豪は日本を代表する素晴らしき作家です。そしてひたむきに考えながら書いていく子どもたちの姿は「未来の文豪」をも思わせるものでした。
 ぜひ、徳田秋聲記念館、泉鏡花記念館、室生犀星記念館、金沢文芸館にも、おうちの方々と共に訪問いただき、学んでいただけたらと思いました。
 教室を出る時に、薮田学芸員にこんな質問がありました。
「『あらくれ』って作品を徳田秋聲さんは書いておられると思います。『あらくれ』って『黴』『爛』と違っていて、ひらがなだったのですよね」と。

 ぜひ、小中学生の皆さんにもご来館いただき、学んでいただけたらと思う1日となりました。浅野川小学校の先生方、4年生の子ども達、本当にありがとうございました。


      



〇6月19日(日)第1回 フォト&五・七・五 合評会 

~私の好きな風景~

講師: 中田 敏樹(俳人)

 

 今年度前半期の『フォト&五・七・五』には、5名の方々のご応募をいただきました。新たな試みがなされた「フォト&五・七・五」となり、合評会は和やかな中にも充実したものとなりました。
 俳人で、写真愛好家でもある 中田 敏樹(なかた としき)先生を囲んで、深い学びある学習と交流の機会を得ることが出来ました。お一人二句ずつ紹介いたします。


 ・白山を君と眺める冬愛し
   ⇒白山の美しい山並み。そしてその風景写真には、女性の表情がわかるイラストが
    取り込んであります。そんな風景写真での一句です。
   ・発想がとても斬新で素敵です。イラストが女性の表情ではなく後ろ姿でもよいので
    はないかと思います。「どんな表情なのかなあ?」と、みんなに女性の表情を想像
    させるのも一つのアイデアではないかと思います。

 ・風そよぐ君がほほ笑む桜道
   ⇒右手の土手にずらりと並んだ桜並木の風景写真です。そこに一人の女性イラスト
    が描かれています。女性の視線は桜並木の方にあります。そこでの一句です。
   ・表情を一人一人変えているイラストが効果的です。イラストサイズを今の三分の一
    以下にして、風景を前面に出してやると、より効果的と思います。

 ・なんでやろ二人が似合う二二二みち
   ⇒つつじが咲き誇る大乗寺丘陵公園での風景写真です。二二二(つつじ)道を見る
    と、二人ペアで歩いている方々ばかりです。そんな風景写真での一句です。
   ・「なんでやろ」はユニークさがあり、出だしからほっこりさせられます。たくさんの
    方々がペアで二二二(つつじ)道を歩かれている。二二二(つつじ)と詠ませるのも
    ユニークで楽しいです。温かい俳句づくりにユニークさは大切ですね。

 ・山に入り山を見つけて山笑う
   ⇒奥卯辰山から見た山々の風景写真です。手前に奥卯辰山の稜線。その稜線に
    三本の大木があります。その三本の大木の間から、はるか遠くに春の訪れを感じさ
    せる雪化粧の山々(ところどころ地表が見える)が見えます。そんな風景写真からの
    一句です。
   ・手前の稜線、三本の大木、遠くの雪化粧の山々と、写真の構図が見事です。山、
    山、山と重ねた手法、リズム感がとても良いです。「山笑う」と詠んだ春心と写真が
    一体となっていて本当に素敵です。

 ・春日影まどろみの中笑みこぼす
   ⇒金沢市小立野寺院群 慶恩寺(きょうおんじ)の満開の枝垂桜の写真です。ピン
    ク色に染まった枝垂桜と寺院が全面に映されています。そんな中での一句です。
   ・一面をピンクに染めるように撮影されている写真の技法の素晴らしさが見事です。
    春日影で作者がまどろんでいる様子が見えます。それも笑みの中で。穏やかな春
    の光景であり、とてもなごやかな心が表されています。
    ※慶恩寺の見事な枝垂桜です。ぜひ皆様にもご覧いただけたらと思います。

 ・夏ひと夜祈りを写す女川
   ⇒浅野川の灯篭流しの夜景写真です。浅野川大橋方面から卯辰山方面に向けて
    撮影されたものです。川に浮かぶ灯篭の灯りと、川面に映し出された優しい幻想的
    な灯りが素敵な写真です。大変に情緒溢れる風景写真での一句です。
   ・大変に美しい夜景です。金沢に住んでおられる人なら、灯篭流しは御存知かと思い
    ます。灯篭流しから一人一人の祈りを感じる心が本当素敵です。写真は遠景となっ
    ているので、よりわかりやすくするために、句の中に「灯篭流し」という文言を入
    れて創作できるとなおよいかもしれないですね。

 ・春紫苑姫女苑とて夏に入る (はるじおん ひめじょおん)
   ⇒左側に春紫苑(はるじおん)が三輪、右側に姫女苑(ひめじょおん)が四輪あり、そ
    れぞれが満開となった写真です。そんな七輪の花を愛でての一句です。
   ・写真だけを見ても、実によく練って創られた作品です。合わせて七輪の花です。何気
    ないことですが、三輪と四輪、合わせて奇数配置にすることで構図の落ち着きと安定
    感を生んでいます。春紫苑と姫女苑、ちょっと見ただけでは見分けがつかないのだけ
    れど、微妙な違いに着目すると発見がある。そんな一句です。

 ・木漏れ日の透けてルビーの川蜻蛉
   ⇒一本の細長い草に止まった川蜻蛉。そこに木漏れ日があたり、羽根は透けてルビー
    色に光っています。草に映った川蜻蛉の影も、透けた部分が光って映えています。そ
    んな宝石の輝きのような写真からの一句です。
   ・素晴らしい生命感あふれる写真です。写真と俳句が呼応し合ってたれる写真と俳句
    が呼応し合って見事です。眩しいばかりの光、影、輝くばかりのルビー色の羽根がそ
    こにはあります。俳句とは、意識的に見つけていく心があってこそ生まれる芸術であ
    ることを再認識される作品です。

◆中田 敏樹 氏  ※ご本人からのお言葉からです
 ・おすすめは白えびマリネ雪柳
     …全く別と思える雪柳をあえて持ってきました。取り合わせをした俳句です。

 ・紫木蓮紡績工場の煉瓦壁
     …市民芸術村の煉瓦をバックに紫木蓮の花が満開の風景での一句です。

 ・青葉騒蓮如さんの御眼にも
     …金沢市 子来坂上にある宝泉寺奥の蓮如像を見つめての一句です。
      息をきらしながら登っての一句。ぜひ一度見にいかれたらと思います。

 ・紅格子一輪挿しにチューリップ
     …今はなくなってしまった店での一句。素晴らしき風景は残したいものです。

 ・窓際で鴨南蕎麦を注文す
     …お気に入りのお店のお気に入りの場所での一句です。


 石川県はじめ、全国各地の方々が一階ギャラリーにお越しいただいて、フォト&五・七・五の展示会を見ていかれました。
「こんなふうに俳句を楽しむことができるのですね。いいいですね」
「写真だけ見てもこれは芸術と言っていいのではないですか」等、いろいろなお声をいただきました。
 後半も作品を募集いたします。また合評会には見学いただくだけでも結構です。また作品募集、展示会の詳しい日程、合評会についてお知らせいたします。
 ぜひ多くの皆様のご応募、展覧会見学、ご参加をお待ちしています。


      



〇6月18日(土)第2回 小説講座 ~小説の実作について①~ 

短編小説の魅力について

講師: 皆川 有子(『櫻坂』同人)

 

 第2回小説講座が開催されました。講師は文学誌『櫻坂』同人 皆川 有子(みながわ ゆうこ)先生です。テーマ「小説の実作について①」です。
 受講生一人一人が「海」小川洋子・著(新潮文庫)の文庫本をテキストにして講座が開催されました。ちなみに小川洋子氏は、作品「ブラフマンの埋葬」で泉鏡花文学賞を受賞されておられる方です。講座の一部を紹介いたします。作品引用部はすべて小川洋子氏「海」からです。


◆小説を書くにあたって大切なことは?(小説「海」小川洋子氏をテキストとして)

★飽きさせない表現の工夫がある

 ○状況を説明しすぎない巧みさ
 ○会話文(適宜な)で緩急とスピード感を持たせて

 ・古くて平凡だが、頑丈な造りの家だった。そう広くない庭には、ケヤキが緑を
  茂らせ果樹園の斜面から吹いてくる気持のいい風が葉を揺らしていた。家
  の中は準備万端すべてが整っていた。隅々まで掃除が行き届き、そこかし
  こに花が飾られ、廊下に並んだスリッパはおろしたての新品だった。どこに目
  をやっても隙がなかった。どんな種類であれ、客を迎えるのに、慣れていな
  い家のような気がした。
  「遠いところを、ご苦労だったねえ」「お疲れになったでしょう。さあ、どうぞ」
  「遠慮せず、のんびりしてくれたらいいんだ」「何か、お飲み物はいかが?」
   ⇒状況を説明しずぎないことで読み手は想像を膨らませることができる。
    また会話文を入れることで緩急とスピードを生む。ただ過度の引用は逆効果。

 ○比喩表現の巧みさ
 ・僕たちはいつもその話題を、何かの拍子に皿からこぼれ落ちた一粒のピーナ
  ッツのように散った。拾って、殻をむいて、口に放り込んでしまえば終わり。そ
  れで不都合は生じなかった。
 ・おばあさんは皴の間に埋もれた目蓋を懸命に見開き、干涸びた小石のよう
  な瞳をこちらに向けた。
   ⇒巧みな比喩的表現は効果が大きい。ただ過度の引用は逆効果。

 ○独特なひっかかりのある表現を入れていく
 ・小さな弟(実際は主人公よりずっと大きい)
 ・お母さんはおばあさんのナプキンを整え直した。襟元に挟まれたそれには、ご
  飯粒や牛肉の筋や魚の小骨がくっついていた。
   ⇒独特な気持ちの悪いひっかかりがあると読み手の読む意欲につながっていく。

 ○人物像の表現の巧みさ
 ・階段を上り、別々の戸口を入る時、泉さんは
  「ごめんなさいね」と言った。
   ⇒この一言で泉さん(恋人)の人柄がわかる。こまごまとした説明を必要としない。

 ・「お客さんはいつになったら来るんだろうねえ」(おばあちゃん)
 ・「毒があるかもしれませんからね。十分にご注意なさいまし」(おばあちゃん)
   ⇒会話文からおばあちゃんは痴呆症かなとわかる。細かい説明はいらない。

 ・大きすぎる身体がお客さんの邪魔になってはいないだろうかと気遣うように、
  首をすくめ、背中を丸めていた。パジャマの柄はキリンだった。
   ⇒弟の性格の多様な解釈が読者に可能となる。
    形容詞「かわいい」などを安易に使うと読み手は登場人物の性格が
    想像できず、微妙な肌合いが表現されない。


★しかけ、技が巧妙である

 ○現実的描写と幻想的描写の混ざり合いの高い効果
 
○唐突な独特な表現は、小説の重要な意味を持つことが多い
 ・僕は泉さんの唇を見つめた。それはふっくらとして瑞々しく、思わず指先で
  なぞってみたくなる曲線を持ち、僕が想像もつかないあらゆる言葉を隠し
  ているような不思議に満ちていた。付き合いはじめて間もなくの頃、私の
  どこが一番好きかと聞かれ、唇と答えたのを思い出した。
  「整列の合図のホイッスルを吹く、君の唇だよ」
  と。
  泉さんは保健体育担当の教師で、いつも胸元に、唾で湿ったホイッスルを
  下げている。
   ⇒唇はこの小説での大切な意味合いを持つこととなる。
    小川洋子氏の技が随所にちりばめられている。

 ○ファンタジーの世界へ誘う(いざなう)巧みさ
 ・小さな弟は心から安堵し、長い息を吐き出した。
       (空白部分)
  「君は、何の楽器の演奏者なんだい?」
  布団に入り、電灯を消してから僕は尋ねた。
   ⇒空白を設け、電灯を消すことで、読者をファンタジーの世界へといざ
    なっている。
    読者の視覚を覆って聴覚を研ぎ澄ませることで、読み手の「視覚」か
    ら「聴覚」への転換を図っている。音の描写に迫るために。

 ○音の描写の素晴らしさ。ファンタジーの中にドキュメンタリーを入れてくる。
 ・口笛とも違う、歌声とも違う、微かだけれど揺るぎない響きが聞えてきた。
  それは海の底から長い時間を経て、ようやくたどり着いたという安堵と、更
  に遠くへ旅立ってゆこうとする果てのなさの、両方を合わせ持っていた。
  僕は小さな弟が海辺に立っている姿を思い浮かべてみた。
        (略)
  彼の唇は本当に今そこに鳴鱗琴があるのと変わりなく、暗闇を揺らし続け
  た。それは愛する泉さんの唇と、そっくり同じ形をしていた。
   ⇒書き手の工夫をぜひ感じてもらいたい。書き手と読み手の真剣勝負
    がそこにある。
    ※少ない紙面ではとても表現しきれない描写の素晴らしさです。
     ぜひ本作品をお読みいただきたいと思います。


 講座の一部を紹介しました。本講座は日本の小説のトップランナーのお一人である小川洋子氏の「海」をテキストとして使用されての講座であり、皆川先生には、貴重な数々の教えをいただきました。
 また、講座ではロマンバルト氏のテクスト論も提示して、小説の読みについてもお話いただきました。大変印象的でしたので、一部紹介いたします。

   ・正しい読み方というものはない。(作者はこう言いたいのだ▲)
   ・読み手の価値観が揺すぶられていくことが大切だ。
   ・一冊の本には膨大な知性がある。言葉の世界が広げられる。
   ・一つの経験として本を読むことが大切だ。

 皆川 有子先生の講座は、小川洋子氏の「海」を通して、小説家はいかに工夫をして小説を書き上げているか、読み手はその技の凄さをも感じ入りながら「書き手と読み手の真剣勝負」といった観点で見ていくことも大切であると学ばせていただきました。これから実際に小説づくりをしていく受講生の皆さんへの大きな示唆となりました。

 次回、第3回小説講座「提出作品についての批評(個別指導を中心に)」は、7月16日(土)です。講師は、剣町 柳一郎(つるぎまち りゅういちろう)先生(小説家)、宮嶌 公夫(みやじま きみお)先生(『イミタチオ』同人)、皆川 有子(みながわ ゆうこ)先生(『櫻坂』同人)です。皆さまのご参加をお待ちしています。


      



〇6月12日(日)第2回 朗読会『青春の門 筑豊編』 

梓先生への恋心 先生と十年先の約束を交わす信介

講師: 髙輪 眞知子(朗読小屋 浅野川倶楽部 代表)

 

 6月12日(日)第2回朗読会が、朗読小屋・浅野川倶楽部の代表 髙輪 眞知子さんにより行われました。今回は「黒い犬の影に」「男と女の間で」「十年先の約束」「義理の世界」の途中(梓先生を博多駅まで送ったところ)までです。

 信介の梓先生への恋心、性的な欲望との葛藤、世の中・大人に対する信介の憤り、そして梓先生がいる東京での生活を夢見る信介。そんな揺れ動く信介の心情を、青春の一頁として爽やかな朗読で演じられた髙輪 眞知子さん。その凛とした日本語の美しさに魅了される一時間でした。


          *          *           *

 タエの病気は、春ごろ一時的に快方へ向かったものの、夏になると再び悪化していきます。一方信介は、竜五郎から高校進学の強い勧めを受けて、受験勉強に取り組んでいきます。そんな時、信介は梓先生から、迷信や偏見によって自分の結婚が駄目になった話を打ち明けられます。
 しかし、その時信介が感じたのは、梓先生への同情や世間の人への怒りでもなく、それとはまったく異質のなまなましい性的な欲望だったのでした。彼はその時、人間の内部に棲む黒い犬のような、無気味なものの影を見たのでした。

 ある日信介は、例の作法室で梓先生とあの男性教師との関係を目にします。信介は悩んだ末、梓先生にあんな男と付き合うのを止めるよう忠告したいと考えます。信介は、梓先生には堂々と胸を張って、夏のヒマワリみたいにまっすぐ空を見上げて生きていくのが一番似つかわしい、と考えたのでした。

 そして信介は梓先生に、先生は駄目な男を好いとること、学校を辞めて東京へ戻るほうが先生のためになることを伝えます。そんな信介に対して梓先生は、理屈で割り切れずに地獄の中にいること、私自身がこの地獄を抜け出す力がわいてくるよう信介に手伝ってほしいことを伝えます。
「伊吹くん、いつかまたきっと会って、そのときはあなたの恋人になってあげる-」と話す梓先生。信介はそんな梓先生を、世界で一番魅力的な人だと考えるようになったのでした。

 それから二週間後、梓先生は退職して、東京へ戻ることとなります。梓先生から、信介は上京して大学進学することを勧められます。先生と生徒というかたくるしい関係じゃなくて、二人の若い男と女として仲良くしたいと語る梓先生の言葉にうなずく信介。しかし同時に、竜五郎さんへの義理を返すことも考えて悩む信介でした。
                            (「義理の世界」途中まで)

          *          *           *


 第3回は7月10日(日)14時からです。「義理の世界(塙竜五郎の家に戻ったところ)」から「川筋喧嘩作法」までの朗読となります。手に汗握る緊迫した場面の朗読です。ぜひ、ご参集ください。お待ちしております。


      



〇6月11日(土)第2回 小説入門講座 

小説を書く力

講師: 高山 敏(『北陸文学』主宰)

 

 6月上旬、百万石祭り各種イベントも行われ、日常の生活も戻りつつあります。今回は、同人誌『北陸文学』主宰、高山 敏(たかやま さとし)先生の担当で、「小説を書く力」のテーマでお話いただきました。内容を抜粋し紹介いたします。


◆高山 敏先生のアドバイスから
 ○私は小説を書く時には、いつもこう自分に問いかけています。
  ・作品には、切実さがどれだけ表現されているか。
   苦しみの中に置かれて懸命に生きている人間をどれだけ描けているか。

 ○小説を書くために
  ①ここまで歩んできた自分はなぜ小説を書きたいという思いになっているのかを考えたい。
  ②人は何に興味や関心をもつのかを考える。おのずと光を当てて書く対象が決まる。
  ③何に光を当てて、何に眼差しを向けて書くかを考えて、書いていく。
   ※私(高山氏)の場合、光を当てて書く対象は?
     ・自分の抱えている「負」の部分、すなわち「人間の持つ闇」の部分を題材に
      光を当てて書いている。
   ※ある作家の言葉から(抜粋)
     ・光が真実を隠し、闇が偽りを暴くこともある。
      闇に目を凝らせば真実が見えてくるかもしれない。
     ・自分の暗部を、恥ずかしがらずに、かつ、飾らずに、過ぎた憐れみも求めずに
      さらけ出し、裸になって書く必要がある。

 高山先生の優しい笑顔で語られる言葉の一つ一つ。しかし、その言葉に込められた小説への向き合い方は大変に厳しく、私たちの胸に切々と響くものとなりました。


◆小説を書くとは
 お話の中で、車谷 長吉(くるまたに ちょうきつ)氏の小説を書く時の極意が紹介されました。内容を簡単に紹介いたします。

作家 車谷 長吉の言葉から
-“はずれ者”が一生書き続ける私家版「小説道」
○車谷 長吉の小説の極意 五箇条-
1.計画を立てるべし    人生をいかにやりくりして時間と労力を傾注するか
2.経験を積むべし     他人に向ける視線の2倍以上厳しい視線を自分に
3.勉強量を増やすべし   最低30人、好きな作家の全集を全巻読むこと
              好きな小説一篇を最低50回声に出して読むこと
4.思索を深めるべし    頭が強い人=魂が強い人となれ
5.覚悟をするべし     作者となる覚悟とはつまり死ぬ覚悟


 講習会終了後も、たくさんの質問があり、受講生と先生とのやり取りからも大変に深まる講座となりました。そんな中、ある受講生から
「講座を一つずつ聴くことが新鮮で、初めて学ぶことばかりです。ただ全講座を聞いてから小説を書くというのは不安もあって……」との声がありました。
 すると、先生はにこやかな笑顔で
「もう小説を書き始めていかないと間に合わないですよ。もう書き始めてくださいね。第4回、私の講座では『推敲』について学んでいきます。とても大切なところですので、ぜひご自分の作品作りに推敲を活かしていってほしいです」と答えておいでました。
 受講生の皆さんにとって本講座は、作品作りに対する向き合いかた、作品作りへの意欲の灯火・期待感が心に生まれるものとなったようです。
 講座では、小網 春美先生(『飢餓祭』同人)から受講生の皆さんに
『「金沢創作工房」へ自作品を出すことを目標にしてください』との言葉もありました。そんな目標に向けて歩み出す第2回高山 敏先生の講座となりました。高山先生、受講生の皆さん、充実した講座の時間をありがとうございます。

 第3回は7月9日(土)「小説の文章」です。講師は第1回講師を務められた小網 春美(こあみ はるみ)先生(『飢餓祭』同人です。申し込まれた皆さまの参加をぜひお待ちしています。


      



〇5月21日(土)第1回 小説講座 ~短編小説を書いてみよう~ 

短編小説の魅力について

講師: 宮嶌 公夫(『イミタチオ』同人)

 

 小説講座がスタートしました。第1回目講師は、文芸誌『イミタチオ』同人 宮嶌 公夫(みやじま きみお)先生でした。テーマ「短編小説の魅力について」で、村上春樹氏「カンガルー日和」(講談社文庫)もテキストに使用しながらの講座となりました。
 今年度は、宮嶌先生はじめ次の先生方が講座を担当されます。
 ・寺本 親平 (てらもと しんぺい)先生(小説家)
 ・剣町 柳一郎(つるぎまち りゅういちろう)先生(小説家)
 ・皆川 有子 (みながわ ゆうこ)先生(『櫻坂』同人)
 以上、4名の先生方で、「小説の実作①」「提出作品の批評(個別指導)」「小説を読む①②」「小説の実作②」「作品批評と推敲①②(個別指導)」をテーマに「書く」「読む」「推敲」を連動させての歩みとなります。

 第1回目宮嶌公夫先生の小説講座は、スタートにふさわしい熱気ある充実したものとなりました。概要を紹介いたします。


◆小説とは?
  ・前提として → 虚構であること、読み手を想定していること
  ○主題がはっきりしている
  ○構成がきっちりしている
  ○描写がしっかりしている
 宮嶌先生からは「主題」「構成」「描写」が三位一体となってはじめて小説創作につながるとのお話がありました。具体的な例示をいただいて、小説の基本をわかりやすく教えていただきました。

◆短編小説とは?
  ・前提として → 様々な制約の中でうまれる作品
  ○分量的な制約 → 今回は400字詰め原稿用紙で20枚程度を想定して
  ○内容的な制約 → 広がりすぎないように配慮して
  ○構成的な制約 → 時間、空間的な制約を大切に
 宮嶌先生には「短編小説だからこそ大切にしていかねばならないことがある」と、それぞれの制約について実践に活かすべく説明いただきました。

◆魅力ある短編小説を作るには?
  ・前提として → 制約を克服するところから始まる
         → 基本的な原稿用紙の使い方がされている
  ○内容面 → 絞ること
  ○構成面 → 密度を濃く
  ○描写面 → 取捨選択を大切に
  ○全体として → 読んで「アレッ」と違和感を覚えたら、そこから読者に
           読み進めてはもらえない。
           話に引き込まれていく自然な展開にしていかねばならない。


 宮嶌先生には、読み手を意識していくことで小説としての魅力が高まっていくことを、具体的に教えていただきました。独りよがりではなく、絶えず読み手を意識しての小説創作が大切であることを伝えていただきました。

 この後、村上春樹氏「カンガルー日和」の作品を全員が読んで、本作品を例に「物語の内容」「物語の構造」「描写」「物語の主題」等について、大切なポイントを伝えていただきました。講座の中で、受講者の感想・質問も交えての貴重な学びとなりました。
 また、自作資料には宮嶌先生から「基本的な文章の書き方と基本的な原稿用紙の使い方」について具体的な14項目の話がありました。宮嶌先生から「小説に向き合う心の在り方」と「小説を書く時の基本的な留意点」を一つずつ学んだかけがえのない講座となりました。
 今年度、宮嶌先生には、いくつか講座をお引き受けいただいています。第1回目の講座は、これからの小説創作への期待感いっぱいの講座となりました。宮嶌先生、ありがとうございました。

 第2回は6月18日(土)「小説の実作について①」です。
 講師は皆川 有子(みながわ ゆうこ)先生(『櫻坂』同人)です。皆様の参加をお待ちしています。次回使用するテキストとして『小川洋子氏 「海」(新潮文庫)』が必要です。受講される方はご準備をお願いします。


      



〇5月16日(月)第3回 出前講座 北陸学院中学校3年 

作った俳句(取り合わせ)で「句会」をしよう

講師: 竪畑 政行(石川県児童文化協会 理事長)

 

 竪畑先生が生徒作成の俳句から7句選出し、それを担任の玉作先生が毛筆で清書されて、みんなに紹介しました。
 まず竪畑先生から
  ・誰の俳句かわかっても、作者は最後まで秘密にしておくこと
  ・自分の俳句だということも秘密にしておくこと
 といった約束があり、学習をスタートしました。

 次に7句を提示し、その中から自分の「イチ押し」の句を選んで、理由も書く時間をとりました。7句をご覧ください。右は句会においての感想の一部です。
 1 春近し野菜スープとパンひとつ    …… 生き生きとした風景が見えるようだね
 2 父入院祈り合わせる春の月      …… 家族の気持ちが伝わる。私もそうするかと
 3 見たこともない漢字ばかりだ朧月  …… 朧月が漢字だからこそ光るんだよね
 4 新しいボールペン買う風光る    …… 使い古し-優しい作者の気持ちがある
 5 外耳炎激痛きたる入道雲      …… 入道雲が激痛と化学反応を起こしている
 6 余寒の夜まだかまだかと君のLINE  …… 竪畑先生お薦め。余寒や英語の表現さすが
 7 ミルクティー飲んでまったり春の雨 …… 雨の日のまったりとした気持ちが伝わる

 担任の玉作先生の心こもったきりりとした書と、竪畑先生の優しい促しもあり、自分の思いを素直に表現していく生徒の姿がありました。それぞれのイチ押しを挙手してもらい、
     ◎最優秀賞7句目(ミルクティー)  
     ○優秀賞2句目(父入院)  
     ○優秀賞3句目(みたことも)
 に決定しました。

 竪畑先生から、手作り賞状を授与された生徒たちは、本当に嬉しそうでした。
 北陸学院中三年生のみなさんは、とても友達を大切に想う生徒で、俳句の一句一句にもそれがよく表れていました。
「祈り合わせるとあって、家族みんなの様々な思いが伝わってきた」
「きっとみんな、祈ることしかできなかったんだと思う」
「入院した父にも春の月を見てもらいたいという思いがあった」
 など、ジーンと胸にくる言葉があふれ出た1時間でした。
 これからも素直な優しさあふれる北陸学院中の生徒は、俳句に親しみ、これからも俳句づくりに取り組んでくれることと思います。素敵な出会いに心から感謝いたします。ありがとうございました。


      



〇5月14日(土)第1回 小説入門講座 

人はなぜ小説を書きたくなるのか

講師: 小網 春美(『飢餓祭』同人)

 

 悪天候の中でしたが、13名の方にご参加いただきました。定員10名程度のところ、13名ぎりぎりで応募を締め切らせていただきました。当日朝も申込み願いがありましたが、お断りせざるをえず、申し訳ありませんでした。
 小網 春美(こあみ はるみ)先生の穏やかで優しく、しかし大変重みのある一言ひとことを逃さまいとする、凛とした空気の中で講座は進んでまいりました。一部、講座内容をご紹介いたします。


◆小説を書くにあたって
  ・小説とは「人間を描くこと」が大切
  ・幼年期の屈折した思い、挫折体験は、書く力へつながる
  ・上手な文でなくても心打たれることがある。それは作者が「人間を描いている」からだ
  ・書き言葉にこそ力がある
  ・小説を書くのはしんどい。でも楽しい。その楽しさに取りつかれてしまう時がある
  ・小説は100回読んだら100回直すところがあるもの
  ・小説は基礎が大切 基礎作りを大切に


 一時間半の講座はあっという間でした。ほかにも、小網先生のおすすめの本の紹介、小説を書くために普段の生活で心がけていかねばならないこと、誰の視点で書くかをしっかりと意識していくことが大切であること、長編小説と短編小説の違いと書き方の工夫、小説の書き出しと終末の大切さ、小説の最後の1行で作品の良し悪しが決まること、起承転結への思いなど……。落ち着いた中に噛みしめるような小網先生のお言葉、先生の豊かな経験に裏打ちされた貴重なお話を伺う、大変に充実した時となりました。
 小網先生からは受講者に
『「金沢創作工房」へ自作品を出すことを目標にしてください』との言葉もありました。これからの学び・小説づくりへの期待感あるスタートとなりました。

 第2回は6月11日(土)小説を書く力です。講師は 高山 敏先生です。申し込まれた皆様のご参加をお待ちしています。


      



〇5月13日(金)第2回 出前講座 浅野川中・西南部中学校 文芸部

金沢城公園を散策して俳句を作ろう

講師: 小西 護(金沢文芸館 前館長)

 

 金沢城内に両校文芸部員15名が訪れました。眩しいばかりの新緑の上を気持ちよさそうに駆け抜けていく燕たち、堀に凛と並び咲き誇る杜若等、素晴らしい景色の中で俳句創作活動が行われました。講師は、金沢文芸館の前館長 小西 護(こにし まもる)先生です。

◆主なプログラム
 1 金沢城公園を散策して俳句を作ろう。
 (1)グループごとに散策して、俳句作りの素材を見つける。
 (2)メモしながら俳句を作っていく。

 2 金沢城公園からの帰りも散策を楽しんでいく。

 3 金沢文芸館1F交流サロンにて俳句を作る。
 (1)一人一人が短冊に俳句を書き込む。
 (2)白板に完成した俳句の句会を行う。
 (3)小西先生が生徒たちと共に、俳句紹介、添削、アドバイスをしていく。
 (4)活動のふりかえり


◆吟味した俳句へと
 生徒たちの力作が白板にずらりと並びました。「オー」「いいね」と反応を交えながら、両校の子どもたちが仲睦まじく句会を楽しみました。小西先生のアドバイス後の俳句を一部だけご紹介します。(  )内は添削前の本人の俳句です。
  「白壁の 歴史の証 しみ一つ」(真っ白に 歴史の証 しみ一つ)
   ※白壁とはっきり書いたら、あなたの思いがより伝わるよね。

  「五月雨や 足音ひびく 夜明け前」(夜明け前 足音ひびく 五月雨(さつきあめ))
   ※五月雨を「さみだれ」と読ませると、よりすっきりした句になるね。

  「見上げれば 曇天の中 舞うトンビ」(見上げれば くもりの空に トンビ舞う)
   ※曇天としたり舞うトンビと体言止めにすると、より伝えたい気持ちが表現されるね。

 添削後の子どもたちの感嘆の声が、何度も会場に響きました。友達に対しての応援の気持ちがあふれた温かな句会となりました。両校の子どもたちの柔らかな雰囲気の中、お互いを大切に思い合っている姿が素敵でした。
 また、小西先生の「ここがいいね」「こんな表現がいいよね」と温かな声掛けいっぱいのご指導は、本当に素敵でした。鑑賞している子どもたちと共に、気持ちを盛り上げながら添削されていく小西先生の姿が、印象的な時間となりました。小西先生、ありがとうございました。

 中学生のみなさん。今回のような文芸部活動に限らずに、いつでも金沢文芸館に顔を出していただけたらと思います。いつでもお越しください。お待ちしています。


      



〇5月9日(月)第1回 出前講座 北陸学院中学校3年

取り合わせの俳句を創ろう

講師: 竪畑 政行(石川県児童文化協会 理事長)

 

 新緑の眩しい木々に囲まれた小立野台地に位置する、北陸学院中学校にお伺いしました。子どもたちが楽しそうに校舎内を行き来する中、中学3年生の国語「取り合わせの俳句を創ろう」の学習に取り組みました。講師は、石川県児童文化協会 理事長 竪畑 政行(たてはた まさゆき)先生です。


◆主なプログラム

 1 取り合わせの俳句を鑑賞しよう
 (1)取り合わせの俳句を鑑賞しよう
   ①新聞投句から2句提示
     「三軒のためのバス停つづみ草」
     「コーヒーにミルクたっぷり春炬燵」
     ※取り合わせをすると俳句が良き化学反応を起こすよ。

 2 次の2句の十二音と季語を取り合わせてみよう
 (1) ①(    )初めて君を呼び捨てに  ← 春の風、春の水、春の月
     ②さかあがりやっとできたよ(    )  ← 風光る、春の風、山笑う
     ※子どもたちは思い思いの季語を取り合わせて、
      一人一人が思い描いて楽しみ始めました。
      自分の心の中で化学反応を楽しみ始めたようでした。

 3 取り合わせの技法で俳句を創ろう
 (1)何気ない日常を十二音でつぶやいてみよう。
 (2)つぶやきに合う季語をみつけよう。
 
 一生懸命に俳句を創ろうとする子どもたちの意欲的な姿がありました。各々季語を吟味したり、長い時間、教科書の俳句を見つめたり、頭を悩ませる子どもたちの姿を見て、竪畑先生はこう続けられました。
「ちょっと先生が悪かったね。みんなに俳句を創るのを急がせ過ぎてしまったね。何気ないことでいいんだよ。例えばね」
「君は今日の朝、何を食べたかな?(ごはんとヨーグルトです)なるほどね」
「ごはんとヨーグルトと書いてみるよ。白いごはんとヨーグルトとして…そこに季語を入れてみよう。化学反応がおきるかもしれないよ」
 竪畑先生が次の季語を入れて俳句を詠まれました。

     衣がえ白いごはんとヨーグルト

 子どもたちはハッとして柔らかな表情になりました。何気ない朝ごはんのメニュー「白いごはんとヨーグルト」と「衣がえの白ワイシャツ」が、化学反応を起こすのを心に感じたようでした。取り合わせを楽しみ始めた子どもたちがそこにはいました。
 子どもたちは学習終了時間を迎えましたが、次から次へと俳句を手にして持ってくるようになりました。本来は一時間のみの出前講座の学習活動でしたが、日を改めてみんなで句会を行うこととなりました。竪畑先生も駆け付けてくださることとなりました。北陸学院中学校の子どもたちの一生懸命さと誠実さ、そして子どもたちの日常の言葉を宝の言葉に魔法のように変えていかれた、竪畑先生の愛情に心温まる一時間となりました。

 次回の句会は5月16日(月)に決まりました。また学習の様子をお伝えしていきますね。


      



〇5月8日(日)第1回 朗読会『青春の門 筑豊編』

思春期を迎え苦悩する信介の成長

朗読: 髙輪 眞知子(朗読小屋・浅野川倶楽部代表)

 

 五木寛之の小説『青春の門』第1部・筑豊編は、「週刊現代」に1969年から70年に連載された作品ですが、全面的な加筆を経て、1989年に改訂版としてまとめられました。
 筑豊で生まれた伊吹信介(いぶき しんすけ)が、幼い頃に死んだ父、女一人で家を守る母、情に厚い竜五郎らに見守られて、幼馴染である織江との愛を育みながら成長していく物語です。

 第1回朗読会が、朗読小屋・浅野川倶楽部の代表 髙輪 眞知子(たかなわ まちこ)さんにより行われました。誰もが悩む思春期の場面。髙輪さんには、若葉の香りいっぱい初夏の薫風のような朗読をいただきました。
 今年度は、昨年度の『青春の門』筑豊編 前半部分の朗読に引き続き、筑豊編 後半部分の朗読を、12月まで8回シリーズとしてお聴きいただきます。

      *     *     *     *     *     *     *

 

 伊吹信介は、恩師 早竹先生に会うために田川の街にやってきました。思春期を迎えた信介。彼自身、快楽の行為への誘惑と、それを止めようとする決心を貫き通せない自身への不快感。信介は早竹先生に、自身の心の葛藤を洗いざらいぶちまけて、どうすればいいかを聞きにやってきたのです。信介の悩みに真剣に答えていく早竹先生の体を張っての対応は、いろいろな誤解を生むこととなります。しかし信介自身、心の中が混乱しながらも早竹先生の力で、頭の中に鉛をつめたような重苦しさは、嘘のように消えていったのでした。

 いろいろな噂のなかで転入生である信介は孤立していました。そんな時、信介の中学校に東京の音楽大学を卒業した、若い女教師 梓旗江(あずさ はたえ)が赴任してきました。異性として強い印象を与える梓先生に、信介は心惹かれていきます。
 ある時、自転車が故障して困っていた梓先生を、オートバイに博多まで乗せて助けます。力いっぱいエンジンをふかせ、二人は八木峠に向けて爆音をひびかせながら疾走します。
 用事を終えて、梓先生は信介を誘って、海の見える西公園の丘の上へ連れていきます。夕日を見ながら自らの恋の悩みを信介に打ち明けて、体を震わせ泣く梓先生。そんな梓先生を好きになっていることに気づく信介でした。
 その晩、信介が梓先生を家まで送り届けて帰ると、塙竜五郎から「わしの息子にならないか」「信介の母親とわしが夫婦になるのはどうか」といった話がありました。「信介の母親を昔から好きで惚れていること」「信介のことも好きであること」を、まるで同年輩の友人のように熱心に身を入れて話す竜五郎でした。「大人の世界には自分の知らないことがたくさんあるのだ」と、信介は早く大人になりたいと、心の中でつぶやくのでした。
                              (「女の匂い」まで)


いよいよ、筑豊編の後半部分の物語が始まりました。第2回は6月12日(日)14時からです。「黒い犬の影に」からの朗読となります。ぜひ、ご参集ください。お待ちしております。


      



ページの上へ

金沢文芸館

〒920-0902 石川県金沢市尾張町1-7-10 TEL:(076)263-2444 FAX:(076)263-2443

アクセスマップ

展示日程の一覧

金沢文化振興財団