金沢文芸館

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文芸館だより(ブログ)

文芸館だより R4年度

〇1月21日(土)第3回 短歌入門講座

歌会を楽しもう ~言葉と心のあやとり~

講師:島田 鎮子(短歌誌『沃野』選者)

 

 

 第3回短歌入門講座です。金沢文芸館の最終講座となります。講師は、短歌誌『沃野』選者、金沢中日文化センター講師などを務めておいでる 島田 鎮子(しまだ しずこ)先生です。受講生7名が参加されての講座。講座内容の概要をお伝えします。


□歌会を楽しもう
 受講生の短歌を照会し、みんなで意見や感想を出し合いました。続いて先生から批評いただき「こんなふうに詠んでみてはどう?」と添削した歌も提示いただきました。
 内容概要を挙げます。(下線部は受講生→太字は推敲(島田先生) ※(「感想・意見」)

 ① 誘われて県立図書館一周する思わず手に取る奈良への一冊
   →友達が誘いてくれし県立図書館新しき閲覧室を一周したり
    新しき県立図書館一周す思わず手に取る奈良への一冊

    ※感動は一首に一つ原則。心が言葉にのっている。
    「誘われて良かった」「手に取れて良かった」そんな2つの短歌を詠んでみ
     た。

 ② 冬支度終えし菜園夕陽落つフトミミズ冬眠に入る
   →冬支度終えし菜園夕暮れぬ冬眠に入る太蚯蚓いて
    ※自然を愛でる力がすごい。愛情深く生ける命に関わっている。
    「太蚯蚓」と漢字にすることで趣を出してみた。

 ③ 過去と今仏壇前で話し合う一喜一憂よしよしよしと
   →仏壇前で話し合いたり過去も今もよしよしよしとと受け入れて生きぬ
    過去のこと今のことなど話し合う仏壇前の一喜一憂

    ※「自分がよしよしよしと…」「ご両親がよしよしよしと…」人によって様々
     なとらえ方ができる歌だ。

 ④ 愛犬に「ねぇ、もう少し歩いてみない」なんてね空には三日月
   →愛犬に「ねぇ、もう少し歩いてみない」なんてね空には三日月かかりて(見えて)
    ※句割れ、句跨りの歌。少しリズムを整えてみた。
     情景が浮かび、いろいろな風にも詠めて面白い。

 ⑤
目にとまるターコイズブルーのセーターがあなたに似合うとささやいている
   →ショーケース(ショーウインドー)にターコイズブルーのセーターが
                        あなたに似合うとささやいている

    ※色鮮やかな歌だ。ターコイズブルーという色が利いている。
     ささやかなことを歌にしていくことが短歌には大切。素敵だ。
     「目にとまる」と「ショーケース」。場所を出して鮮明なイメージを持たせた。

 ⑥ 初実り源助大根まるまると大地の恵み頂戴します
   →今年初の源助大根ふとぶとと大地の恵み頂戴します
    ※嬉しい気持ちが見事に表現されている。
     初めて源助大根を作ったということで「初実り」と表現されたとのこと。
     そんな場合、「初実り」は生きた表現として、とても素敵だと思う。

 ⑦ 水仙が咲いてしまった十二月に雪解けあとのつぼみはあるかな
   →十二月に咲いてしまった黄水仙雪解けあとにつぼみはあるかな
    ※「の」と「に」の助詞の違いでの効果を味わってほしい。
     「の」だと、つぼみにのみ焦点がいくが、「に」にすると雪解けあとの情景が
     広く浮かんできて、つぼみを探す様子が見えてくる。広がりが出る。
     また、黄水仙として色合いを出してみた。
     自然を歌う感受性の素晴らしさを感じる。


□機関誌「沃野」(よくや)から
 令和四年十月十五日に開催された「種村弘氏と三枝浩樹氏の対談」から紹介いただきました。「上坂あゆ美」氏の短歌からです。
 ・撫でながら母の寝息を確かめる ひかりは沼津に止まってくれない
 ◇種村氏から
  「ひかりは新幹線のこと」「ひかり=夢や希望とか大きなもの」に見捨てられる感じ
  を象徴している。
  「ひかりに対して沼津の『沼』は湿度があって少し暗い逆の感じ」
  「のぞみだとベタになる。のぞみ、ひかり、こだまの三択ならここはやっぱりひかり」
 ◇三枝氏から
  「言葉選びが本当に重要で、こだまだと歌は生きない」

※対談からの引用でしたが、何とも奥深いお話となりました。他にもいろいろな資料をいた
 だきました。次の内容です。

  ・結句による着地のさせかた
  ・飛躍とは
  ・一首の中の空白について
  ・ことばの働かせ方について


 島田鎮子先生の短歌入門講座は、凛とした中に豊かな時が流れていく講座でした。合評会では受講生同士の温かな交流があり、島田鎮子先生からは具体的で的確な添削をいただき、みんなで短歌の奥深さを実感する時となりました。また、いろいろな資料をもとにした話では、様々な技法を用いた優れた短歌をたくさん紹介いただきました。
 三回の貴重な講座は、これから短歌の道を歩む上で、これからの人生を歩んでいく上で、大きな道標となりました。島田鎮子先生、受講生の皆様、ありがとうございました。


 来年度は、開催時期を変えて、六月、七月、八月の第3土曜日午前に「短歌入門講座」を開催する予定です。新年度になりましたら、ご案内と申し込み受付をいたします。
 皆様方の参加を、心よりお待ちしております。

      



〇12月17日(土)第8回 小説講座

~作品批評と推敲②~ 個別指導

講師:寺本 親平(小説家)   皆川 有子(『櫻坂』同人)

 

 

 第8回小説講座が開催されました。講師は、寺本先生、皆川先生です。宮嶌先生はご都合により欠席でしたが、受講生お一人ずつに批評と推敲のアドバイスをいただきました。
 本日、最終回は受講生5名の小説の批評と推敲です。まず、皆川先生から作品批評と推敲を、次に受講生全員から感想や質問等を受け、最後に寺本先生から作品批評と推敲がありました。
 本日、批評と推敲があったのは、次の作品です。
  ・「僕は一体何がしたいのか」
  ・「大いなる僥倖」(ぎょうこう)
  ・「浜昼顔」
  ・「熱帯雨林に吹く風」
  ・「やわらかな日々」


◆先生方や受講生からの感想・アドバイスを抜粋して紹介します。
  ・一つの小説を書き上げるには、頭の後ろの背景が豊かであることが大切だ。
   材料があり、下準備があり、読書量が豊富であることが不可欠だ。頑張ってほしい。
 ・人物描写が長けている。ただ人間関係の違和感がある。
 ・小説の出だしは大切だ。自分なら途中の記述にある「橋本香織。不思議な奴だ」から
  入る。短編小説だからこそ印象付けないとだめだ。
 ・きれいなまとめ方が気になる。物足りなく感じる。
 ・「…のような」という表現は安易に使わない。多用すると曖昧になる。
 ・「死んでも死なんそんな意気込みが大切だ強い思いが小説を創っていくのだ。
 ・視覚障害者の方は、体中を目にして神経を張り詰めて白杖を持って歩かれている。
  小説では、もっとセンシティブに書くことが必要ではないか
 ・方上記の引用はより効果的なものにしていくことが大切だ。
 ・あなたにとって、本小説はまだまだあなたにふさわしいものではない。例えば、
  暗がりに光を差すような小説であったりと、それがあなたならできると思う。
  私は、今後のあなたの小説に大きな期待をしている。
 ・全体的に説明が多く、ある状況を提示する作品となっている。
  タイトル「熱帯雨林の風」が「香織」とどう関わるのかが見えてこない
 ・全体的にエッセイ風になっている。母親の娘への思いや心に去来するさまざまなこ
  とがストレートに記されるので、もう少し離れたところから客観的に描いた方がよい


 3人の先生方のご批評や推敲、そして受講生一人一人の質問や意見がたくさん出た講座となりました。一つ一つの小説に対し賛同意見もあれば、厳しい意見も出ました。「小説入門」から一歩進んだ「小説講座」であるからこそ厳しい時間となりましたが、それは、講師の先生方の受講生に対しての期待感の表れでもあると感じました。
 小説作りに関して、こんなに様々な意見をいただける機会は、他にはないのではないかと思います。大変に貴重な時間となりました。
 来年度も、ぜひ実りある充実した講座にと思います。受講を心からお待ちしています。

      



〇12月17日(土)第2回 短歌入門講座

現代を生きて、今を詠う  ~言葉はこころ~

講師:島田 鎮子(短歌誌『沃野』選者)

 

 

 第2回 短歌入門講座です。講師は、短歌誌『沃野』選者、金沢中日文化センター講師などを務めておいでる 島田 鎮子(しまだ しずこ)先生です。受講生9名全員が参加されての講座でした。第2回講座内容の概要をお伝えします。


□言葉はこころ
  ①短歌のリズムで読んで、確認してみて。
  ②心と言葉と流れが一致していますか。
  ③助詞のやさしさ、大切さを味わってみて。
  ④かなづかいの確認を(旧かな 新かなの混在▲)
  ⑤言葉遣い、送り仮名など広辞苑を基本にしています。


□一部の受講生の短歌から(受講生本人→推敲(島田先生) ※推敲や感想)
  ①十余年花見ることのなかりけり椿今秋七個のつぼみ
   十年余り花見ることなく過ぎて来て椿はこの秋七個のつぼみ
     ※実感を伴う表現へ。時間を越えて見つけた楽しみ。
      言葉の奥から命の不思議を感じる思いがほんのりと。

 ②見えない手落ち葉をザッとすみにやるああそうやって道がひらくよ
   →見えない手落ち葉をガサッとすみにやるああそうやって道がひらくよ
     ※「見えない手」がという初句の助詞を味わって。
       哲学的なとらえをしました(受講生)。
       優しい言葉だからこそ深い解釈も可能です。

 ③自販機のホット・コーヒー入れかわり枯れ葉舞い散る駅ホーム
   →自販機ホットコーヒーに入れ替わり駅のホームに枯れ葉が舞って
     ※上の句が少々固いです。助詞の面白さを味わいましょう。
       「は」にはかすかな感動が含まれていると思います。

 他、受講生一人一人から次の短歌が詠まれ、童謡に島田先生からのアドバイスがありました。
 ④友よりの新米届くいつまで作るかとの一文あり
   →友から届く新米いつまで作れるか淋しい思いをひとこと添えて
 
 ⑤まちのりでマラソンの街すいすいと夫婦並んで走るおかしき
   →まちのりでマラソンの街すいすいと夫婦で走る楽し 金沢

 ⑥解禁のカニ半バイの軽さかなこれでよいよい いやもう少し
   →解禁の半バイ(杯)の軽さかなこれでよいよい いやもう少し

 ⑦退院後陽眩しい散歩道生きる喜び足取り軽く
   →足取り軽く日差し眩しい散歩道喜びわき来病の癒えて

 ⑧だいじょうぶ今日も夏日単衣まとふ衣替えの日
   →だいじょうぶ(大丈夫)今日も夏日だまだ単衣まとえる十月一日衣替えの日
   →だいじうぶ今日も夏日だまだ単衣まとる十月一日衣替えの日


 本日は、まず島田先生が、受講生一人一人の短歌に感想を交えながら推敲していきました。次に、受講生一人一人が質問・意見・感想を出していきました。いろいろな意見が出てきました。
   「③の短歌で、ホット・コーヒーに入れ替わることに気づき、そこに想いを持つ。
    そんなAさんのような感性を持つことって大切なんだなあと学びました」
     →「とてもうれしいです。ありがとうございます」(Aさん)

   「私は①の短歌で、Bさんが『今秋、初めて七個のつぼみを発見した』との解釈
    をしていました。十余年の間、Bさんの心には何があったのかと思って考えて
    いました。お話をお聞きして「山椿が初めてつぼみを付けたのだとわかりました」
    なるほどと思いました。
     →「そんなふうに解釈していただけてうれしく思います」(Bさん)

   「②の短歌で、Cさんの解釈ではなく、私は哲学的な解釈をしていました。
    風が落ち葉をすみにやって道が開けていく。なんかそんな希望というかそんな
    気持ちが表れていると解釈していました。元気が出る短歌だと思います」
     →「そんなふうにまで思っていただいて本当に幸せです。ありがとうございます」
                                    (Cさん)

 まず、島田先生のアドバイスから学びの大きさを実感する受講生でした。島田先生の的確で温かなアドバイスが一人一人にありました。
 ・「これでよいよい」4と言いながら、一字あけをつかって「いやもう少し」なんて、
   なかなかの表現ですよ」
 ・「見えない手」という初句の助詞を味わって。生きていくことを肯定的にとらえ
   た歌ですね。有名な河野裕子の歌から「ガサッと」を拝借しました。
   でも拝借は二言までね。
 ・「自販機の」を「自販機」に。「ホットコーヒー入れ替わり」を「ホットコーヒー
   に入れ替わり」とする。「の」と「は」の違いを感じてみて。
  「は」にはかすかな感動が…。

 その後の合評会では、一つの歌を様々な解釈をしていく受講生のみなさんがいました。それを新たな発見という視点で喜び合う受講生の姿があり、人と人が言葉でつながり合って認め合う、そんなかけがえのない大切な時間となりました。
 第3回は最終回です。1月21日(土)のテーマは『「歌会を楽しもう」言葉と心のやりとり』です。受講生の皆さんのご来館をお待ちしています。

      



〇12月11日(日)第8回 朗読会 五木寛之作『金沢あかり坂』

五木寛之作 「金沢あかり坂」②

朗読:髙輪 眞知子(朗読小屋・浅野川倶楽部 代表)

 

 

 12月11日(日)第8回朗読会が、朗読小屋・浅野川倶楽部の代表 髙輪 眞知子(たかなわ まちこ)さんにより行われました。五木寛之作「金沢あかり坂」の後編の朗読となります。

 髙輪さんの朗読は、高木凛が金沢放送テレビのアルバイト募集の面接をするところから始まりました。その後、帰郷した黒江透と凛との出会い、2人の恋愛、そして別れが描かれていきます。そして『笛くらべ金沢・冬の宴』が行われます。笛比べは笛師の艶也(えんや)と高木凛との間で行われていきます。いよいよ対決が始まりました…。
 それでは、本日朗読された内容の概要をお伝えします。


    *    *    *    *    *    *

 黒江、池がドキュメント番組を作成する中、旧町名復活での番組作りで、黒江のたっての願いで、高木凛はADとして勤めることになり、黒江と凛は付き合い始めます。そんな中、旧町名復活の番組は全国的に大きな反響を生み、池高志、黒江透、スタッフに社長賞が贈られます。
 上京して映像作家として大成したい黒江と、「黒江の心の中に自分はいない」と感じて別れを心に決める凛。黒江は東京に向かいます。黒江の子を妊娠していた凛は黒江に相談することもなく手術を受けて、一人で生きていくことを決めていきます。
 祖母もいなくなり、遺品の中から出てきたのは一本の竹笛でした。凛は、芸妓として生きていくことを決めます。笛の師匠に自分の芸を聞いてもらったところ、
 「わたしが教える笛は、和する笛だ。あんたの笛は独り笛。斬りむすべば、わたしでも倒されるだろう。こんなユニークな笛を殺したくはない。だから教えられない」と言われます。
 凛は、芸妓として生きるため、笛以外の稽古事に精進していきます。そして、ある日、浅野川沿いの河原で、「笛くらべ」が行われます。芸妓「凛也」(高木凛)と異端の笛師「艶也」(高橋先生)の対決でした。
 双方が「私が負けました」と相手を讃え合う二人。艶也は「あなたに負けまいとして派手な技を私は披露しただけ。あなたの笛は最高だったわ。雪にも、風にも、川の音にも負けない。つよくて、どこまでも響いていく音だった。つよいだけじゃない。すごく情がこもってた」と凛を讃えるのでした。

    *    *    *    *    *    *


 今回は、髙輪 眞知子さんによる金沢あかり坂の後編でした。本日は18名もの方々に参加いただきました。朗読会の第1回から第6回までは、髙輪眞知子さんによる朗読会「青春の門 第一部 筑豊編後半部」、そして第7回、8回は「金沢あかり坂」をお楽しみいただきました。
 髙輪さんの朗読は、「金沢あかり坂」では、高木凛の父親譲りの力強い笛の調べが耳元に聞えるような思いがする朗読となりました。また「青春の門」では、青春時代の甘酸っぱい恋の爽やかさ、義理と人情の大切さ、人を守るための厳しさや男気等、場面ごとに映し出される人の細やかな心情の移ろいを見事なまでに演じていただきました。
 朗読会に参加いただいた方々のおかげで、各回とも充実した会となりましたこと、心より感謝申し上げます。髙輪眞知子さん、ご来館いただいた皆様、ありがとうございました。来年度もぜひ五木寛之氏の作品の朗読をと考えています。ご案内を申し上げますので、皆様のご来館を心よりお待ちしております。

      



〇12月10日(土)第8回 小説入門講座 

作品批評と推敲②(個別指導を中心に)

講師:高山 敏(『北陸文学』主宰)  小網 春美(『飢餓祭』同人)

 

 

 12月、小説入門講座も最終の第8回を迎えました。今回は「作品批評と推敲②」です。講師は。高山 敏氏と小網 春美氏です。最終回は、受講生4名の「作品批評と推敲」を実施しました。まずは、作品タイトルを紹介します。

◆タイトル名
   ・おばあちゃんの家       ・わたしに「還る」場所
   ・遠凪の下で          ・知りて知らざれ
 「優しく温かな家族愛」が描かれた小説、「自分らしい生き方とは何か」を見つめ直す小説、「暗闇の中で悩みながら自分の生き方」を模索していく小説、「死後の世界を独自の転生の視点」で夫婦の在り方等を見つめ直す小説など、個性的な作品での批評・推敲の会となりました。また今回、批評・推敲の対象となっていない方も何名も参加し、メモをとられての充実した会となりました。
 講座の一部となりますが、作品批評と推敲内容をお伝えします。


◆作品批評と推敲
 1 小説の表現方法について大切にすべきこと
   ・原則、小説での敬語表現を避ける。
   ・表現の重なり▲ → ○的確な表現にする。(つくづく痛感 → そう思った 等)
   ・強調「のだ」は多用しない。ここぞという時に使用する。
   ・「 」(話し言葉)は行の一番上から書く。会話の部分は独立させる。
   ・主人公の設定は早い段階でわかるようにする。(「何歳」等の特徴)
   ・幼稚な表現は避ける。(「…かな」「どうしたら……かな」 等)
   ※その他、受講生の表現について、きめ細やかな批評と推敲がありました。

 2 小説を書く上で大切にしなければならないこと
   ・強烈な個性を持つ登場人物二人を同時に描くのは困難である。
    どちらか一人は普通の人物に振り幅を振ると良い。
   ・頑張り過ぎる表現を使わない。オーバー過ぎる表現はあえて省くこと。
   ・時系列を大切にした小説を書く。読み手の混乱を招かないようにすること。

 3 文章の出だしを熟慮していくこと
   ・「ある日突然私は死んだ。心臓発作だった」衝撃で印象的な出だしが素晴ら
    しい。
    ここで一気に読み手が惹きつけられる。このように出だしを熟慮してほしい。

 4 独創性ある発想と新たな視点が小説では大切となる
   ・「輪廻転生」を独自で解釈して創り上げているのが大変に素晴らしい。
   ・家族愛が上手く描かれている。小説の最終場面で「祖母は「そうやね。家では
    ないけど、家みたいなもんや」と答えたそうだ。(略)…」の表現が素敵です。
    ここにいたり、タイトル「おばあちゃんの家」の位置づけが見えてきています。
    効果的です。


 高山先生、小網先生から受講生一人一人に的確な指導がありました。すべて紹介しきれませんが、他にも厳しくも温かい指導の数々でした。
  ・一読したらすうっと心に入っていく小説です。上手です。でも「あなたのタイトル
   (わたしに「還る」場所)」の本来持つ意味が単なる紹介に終わっていると思いま
   す。具体的に「あなたは何をしたいのか」「あなたは何を言いたいのか」を、もっ
   ともっと掘り下げていってほしい。それがあなたならできるはずです。
  ・小説は頑張り過ぎてはだめです。飾ってもだめです。あなた、文章力は本当にある
   と思う。いいですか。「普通に書く」のです。見ればわかります。あなたは書ける
   人なのです。「普通に書く」それがあなたならできると私は思います。


 最後の講座となりました。受講生の皆さんの小説も全力で書かれたものでしたし、小説を受けて批評・推敲される先生方も全力で向き合われた講座となりました。
 受講生の渾身の力作があってこその充実した会となりました。これも、高山先生、小網先生、貴重な講話をいただいた小西先生らのお力あってのことです。先生方、受講生の皆さん、本当にありがとうございました。来年度、講座体制で、さらなる改善をして臨んでまいります。たくさんの方々の受講を心からお待ちしております。

      



〇12月8日(木)出前講座 不動寺小学校2年

金沢の民話を学ぼう

講師:吉國 芳子(ひょうし木の会)

 

 

 金沢市立不動寺小学校に訪問しました。素直で大変に反応が素敵な2年生12名でした。共に手拍子で唄うコーナー、金沢三大民話検定、金沢の民話「だんごひょいひょい(紙芝居)」「飴買い幽霊(ペープサート)」「オオカミを退治したこま犬(大型テレビ)」などの読み聞かせがありました。
 素直な反応で喜怒哀楽を表現する子どもたちで、子どもたちはもちろん、吉國先生、参観者もほのぼのとした心で時を過ごす素敵な時間となりました。
 内容を抜粋して紹介します。


 手拍子唄「あんたがたどこさ」
   とても有名な唄で子どもたちも得意気に歌ってくれました。
   ①『さ』の箇所で拍手を入れて歌う。
   ②スピードアップして『さ』の手拍子を入れて歌う。
   ③『さ』の箇所だけ手拍子をしないで大きな声で歌う。
   反応がとても良くて、歌うことも大好きな子どもたちでした。ノリノリのスタート
  となりました。

 金沢昔話検定
   金沢三大昔話は何?といっても、難しくてなかなか声が出ません。そこで吉國先生
  は、「大サービスだよ」と「お銀小銀」「飴買い幽霊」までは、早めに提示しました。
  そして最後の問題を三択としました。①かいけつゾロリ ②芋掘り藤五郎 ③鬼滅の
  刃 です。②に集中と思えばそうでなく、①が0人、②が5人、③が6人でした。
  「解答②」と先生が言うと当たった子は大喜びです。今流行中の「鬼滅の刃」は子ど
  もたちの心の中では、金沢の三大民話と言っていい位置づけなんだろうなあと思いま
  した。
   何気ないやり取りに子どもたちの温かさが滲み出るひと時でした。

 ・パワーポイント「オオカミを退治したこま犬」
   鳴和からずっと山奥にある伝燈寺に伝わるお話です。
   ある日、孫の「みよ」が家の壁を食い破ったオオカミに手を食らいつかれます。
  「みよ」のおじじは伝燈寺の和尚さんに、孫をかくまってくれるように頼みます。
  その夜、和尚さんの一心に念仏を唱えます。次第にオオカミの無気味な声も大きくな
  ってきます。暗闇に輝く目だけでも、二、三十匹はいます。おじじは、仏壇の前で念
  仏を唱え続けました。すると、不思議なことに風もやみ、空には月までが顔を出し、
  山の上の寺を静かに照らします。
   あくる朝、孫は無事に本堂でぐっすり眠っていました。しかし、寺の下の田んぼに
  は、たくさんのオオカミが倒れています。
   ふと伝燈寺のこま犬を見ると、その口の周りが血でべっとりとして、顔やら背中や
  らが傷だらけになっています。「ゆうべのオオカミを退治したのは、やはりお前たち
  だったのか」和尚さんは、自分の衣の袖で口の周りの血をそっとふいてやりました。
   いま、オオカミを退治したというそのこま犬は、伝燈寺よりずっと奥の牧の三河神
  社に収められています。


 子どもたちは「オオカミを退治したこま犬」の話は「初めて聞いた」と、うれしそうにしていました。その様子を見て、吉國先生も他の先生方も幸せな時間となりました。
 金沢の民話には、「このお話は子どもたちにはちょっときついかな」というお話もあります。民話には子どもたちが「生きていくうえでの戒めとしてほしい話」(お銀小銀)、反対に「教訓として大切にしてほしい話」(芋ほり藤五郎等)があります。
 今回、クイズで「あと一つの金沢の民話は『鬼滅の刃』だ」と半数が手を挙げた子どもたち。その時、私たち大人は笑いましたが、今思えば、きっとこのお話の「こま犬」は、子どもたちにとってのヒーロー、鬼滅の刃の「煉獄」さんのような存在なのかと思いました。二匹のこま犬が、たくさんのオオカミに向き合った時、しゃべったとしたら「俺は俺の責務を全うする!ここにいる者は誰も死なせない!」「心を燃やせ!」と煉獄さんのように叫んでとびかかっていったような気もします。
 不動寺小学校の子どもたちにとって、金沢の民話のイメージは「正義感ある勇気と優しさのあるお話」なのかとも思われました。

 そんなことを感じさせる素直で優しく温かな心にあふれている子どもたちです。これからも、みんなの健やかな成長を心から願っています。
 今年度の出張出前講座は、今回で最終となりました。また来年度、皆さん方とお会いしていくのを楽しみにしています。子どもたち、先生方、そして吉國先生、本当にありがとうございました。
 金沢市内の幼稚園、保育園、小・中学校の皆さん、来年度の出張出前講座でお会いできるのを楽しみにしています。来年度の申し込みをお待ちしております。

      



〇12月2日(金)出前講座 三谷小学校1・2年

金沢の民話を学ぼう

講師:神田 洋子(ストーリーテラー)

 

 

 金沢市立三谷小学校に訪問しました。美しく磨き上げられた校舎、子どもたちの作品が息づく玄関や廊下、ピカピカのメダカ水槽、優しく穏やかな表情の素敵な絵画の数々が、温かく私たちを迎えてくれました。
 子どもたちは天真爛漫な1,2年生複式学級の3人でした。金沢市の民話は初めてとのことです。金沢市の民話や全国的に有名な民話を学ぶことで、子どもたちにとっては大変に貴重な体験になったかと思います。


 ・芋ほり藤五郎
   子どもたちにとっては初めて知るお話だったそうです。神田先生のような「語り」
  の体験は初めての子どもたち。一生懸命聴こうと努力する姿がよく表れていました。
  芋ほり藤五郎は、紙芝居や絵本も出ていますので、これから、触れていく機会があ
  るかと思います。どんどんと理解を深めていくのだろうなあと思いました。素直な
  反応が素敵な子どもたちでした。

 飴買い幽霊
   金石の道入寺に伝わる民話です。話が進むにつれて集中力が増して話に聴き入っ
  ていく子どもたちでした。「語り」という視覚に頼らず想像を心の中で働かせて聴
  いていく講座に戸惑いはあったかと思いますが、子どもたちにとって、貴重な体験
  になっていったかと思います。母親の愛情の尊さを感じているなあと感じる時間と
  なりました。

 かさこじぞう
   よく見聞きしている話のようでした。やはり一番興味深くお話の世界に入り込ん
  でいて、子どもたちの様子は素敵でした。全国的に有名な民話ですが、優しく慈愛
  に溢れた民話を愛していく心をこれからも大切にしていってほしいと思いました。


 最後、もちつきの手遊び唄では、家庭へのお土産用に餅つき手遊び唄に取り組んでいる姿が素敵でした。きっとおうちに、お土産の餅(空気で作られた餅)を持って帰る素直な子どもたちがいるのだろうなあと思われました。
 三谷小学校の1、2年生の3人、そしてお二人の先生ありがとうございました。神田先生による出前講座は最終となりました。神田先生、本当にありがとうございました。

      



〇11月28日(月)出前講座 花園小学校2年

金沢の民話を学ぼう

講師:吉國 芳子(ひょうし木の会)

 

 

 金沢市立花園小学校に訪問しました。吉國先生は、今年度初めての講座です。まず、吉國先生が八田與一氏の名前を挙げると、元気いっぱい「知っているよ」との声が返ってきます。2年生の子どもたちが八田與一氏を敬愛している心が十分に伝わるスタートとなりました。
 子どもたちは吉國先生のいろいろな機器等を駆使しての読み聞かせを堪能していました。抜粋して紹介します。

 金沢昔話検定
   桃太郎、さるかに合戦、舌切り雀、花咲か爺さん、かちかち山など、日本の昔話
   を紹介し、その後「金沢の三大民話を知っているかな?」とつないでいきました。
   ○×クイズ音声入り判定機も使用しての楽しい検定になりました。
   三大民話とは「お銀小銀」「飴買いゆうれい」「いもほり藤五郎」でした。

 紙芝居「だんごひょいひょい」
   続いては、紙芝居です。紙芝居の扉を開いていくのを心待ちに楽しんでいる素敵
   な子どもたちです。一場面ごとに子どもたちは一喜一憂しています。吉國先生の
   紙芝居は、登場人物の語り方が見事で、自然に物語の世界に引き込まれていく子
   どもたちがいました。

 パワーポイント「さかなのおんがえし」
   花園地区から近い森下(もりもと)川の民話です。ある時、新九郎が釣った魚の
   すずきをびくから川へ放してやります。新九郎がうっとりと夕焼けを見ていた時、
   「もしもし、私はさっき放してもらったすずきです。みよと言います。あなたの
   お嫁さんにしてください」と言われます。
   ある年の春。「新九郎様。釣りをするも仕事ですが、生き物をとるのは仏様にそ
   むきます。仏様におすがりするには、お念仏を」とみよは言います。
   そして何年も過ぎたある年。
   「新九郎様。私は竜宮からきたすずきです。竜宮へもどらなければなりません。
   お別れの時が来ました。これは私がずっと胸に抱いていた菩薩像です。あなたの
   みもとにおいて念仏をお忘れなく。ありがとうございました」と、みよは菩薩像
   を新九郎に手渡しました。
   新九郎は、あのすずきを放した岸に来ました。
   「あっ。これはあのすずき。おお、みよ。どうしてこんな姿に」
   新九郎は、すずきの亡きがらを、お宮のそばにねんごろに弔いました。その後、
   新九郎は富樫正親に仕え、ずっと八田の村を治めました。

 自分たちの住む地域の民話に、子どもたちは興味津々でした。大型テレビでの映像と吉國先生の読み聞かせに魅了される子どもたちでした。

 ・ペープサート「あめかいゆうれい」
   続いては、ペープサートでの飴買い幽霊です。黒い下地の布に、登場人物が貼ら
   れていく場面は各人物の存在感を際立たせて、独特の世界を生み出していました。
   飴買い幽霊の哀しさと温かみが見事に演出されていました。花園小の子どもたち
   は、まさに食い入るように吉國先生が創り出す民話の世界に引き込まれていきました。


 「花園って名前、ステキだよね」そんな吉國先生の言葉がスタートとなった本出前講座でした。先生のお話に嬉しそうにうなづく子どもたち。そして「さかなの恩返し」など、地域の民話を大切にしようとするその姿勢に感心させられるばかりでした。また、八田與一氏を敬愛する子どもたちの姿は素晴らしいと感じました。先人の功績をきちんと学び、その志を継承していこうとする学校の教育方針が表れているのだと思われました。
 いろいろと学ぶことが多い講座となりました。吉國先生、そして花園小学校の先生方、子どもたち、本当にありがとうございました。

      



〇11月27日(日)第3回伝承文芸講座 ~金沢の昔話と伝説をたずねて~

「長太貉譚の伝承と展開をめぐって」 ~『加賀藩史料』の記録と説教化~

講師:藤島 秀隆(金沢工業大学名誉教授)

 

 

 第3回「長太貉譚(むじなたん)の伝承と展開をめぐって ~『加賀藩史料』の記録と説教化~」の講座です。藤島先生の著書からの貴重な研究資料プリントを使用しての講座となりました。ほんの一部となりますが紹介します。


 「長太貉譚の伝承と展開をめぐって」 ~『加賀藩史料』の記録と説教化~
                        金沢工業大学名誉教授 藤島 秀隆
◆長太貉の伝承
 長太貉話の舞台は石川県輪島市大沢町です。およそ百世帯余りの人々が居住する半農半漁の町です。この話の原拠は天保4年(1833)長太が49歳の年の談話であり、能登国鳳至郡大沢村の十村役筒井家によって記録されています。次があらすじです。
 ・江戸時代後期の文化4年、大沢村の百姓五衛門の弟で木こりの長太の小屋に毎晩のよう
  に怪物が訪れて、「長太居るか」と呼びます。その化け物は八百年を経た貉で、夜中に
  長太が山中を徘徊して邪魔するのは許せないと言って、長太に組み付き大格闘となり、
  長太が斧で斬りつけると貉は逃げ去ります。その後、左衛門の稲干し小屋に怪獣の死骸
  が発見されます。それは長太と対峙した貉で、皮の長さ約1.6メートル、幅約85セ
  ンチあったと言います。
 ・4年後、長太が山奥で炭焼き中、十八、九歳の美女が現れ、
  「われは千七百年を経た雌貉で、汝に討たれた夫の貉の仇を討つためにやって来た」と
  言います。長太は所持する観音の護符により難を逃れます。雌貉は長太に請願して大沢
  村の浄土真宗霊光寺の住職を招いてもらい、亡父の法要を営んでもらい、感謝して去り
  ました。


 このような内容となっています。この伝本に対して、長太貉の初出と思われる古記録が現存しています。藩庁の届書です。届書は全般に木こり長太の武勇が強調されていて、その内容は伝奇的な形式を採っていません。また、伝本には、4年後、敵討ちに来た貉の妻の話が付加されていますが、届書には、これらの記述が全くありません。
 なお、この長太貉の伝承話は、文豪泉鏡花の『山海評判記』に、素材として採録されています。
 本日が、藤島先生の最後の講座となりました。他にも、伝承文芸として、平家物語の義経、小松市原町に伝わる仏御前、ててぽっぽ(山鳥)、飴買い幽霊等の話も溢れるようにしてお話いただきました。
 そんな中で、最後に藤島先生が語られた言葉が大変に印象的でした。
 「口承文芸を引き継ぐ語り部の方々がいなくなってきています。伝承文芸を研究している文学者も減っています。以前は大学の卒業論文でもよく取り上げられたものですが、現在はそれもなくなっています。伝承文芸を引き継ぎ、研究して残していくことは大切なことなのです。例えば、百万石まつりはじめ、何か一つの祭りにしてもそのまま楽しむことに終わらずに、その祭りの背景を学んでいくことがないとだめだと思います。何とか、伝承文芸の大切さを認識して、学んでいく人が増えていくことを願っています」

 各地に伝承文芸は残っています。各地区ごとに同じ話でも内容は微妙に異なっています。各地区ごとに、住んでいた方々の願いが伝承文芸には受け継がれているような気がしてなりません。それを調査して学んでいくことは、大変に大切なことなのでしょう。
 今年度、3回の伝承文芸講座は、毎回定員いっぱいの参加をいただきました。今回は、金沢星稜短期大学の学生さんも多数参加してくださいました。お伺いしたところ、自主的な参加であったと伺っています。大変に嬉しく思います。
 受講生の皆さんからは「来年度の申し込みをぜひしたいです。いつ申し込みが始まりますか?」「溢れ出るような藤島先生の講座は本当に素晴らしかったです」等、何人もの方々からお声をいただきました。改めて、金沢文芸館だからこそ実現できる講座であると思いました。石川県に伝わる伝承文芸を後世に伝えていくことの大切さを再認識させられた講座となりました。
 藤島先生、そして参加いただいた受講生の皆様、本当にありがとうございました。


      



〇11月27日(日)第2回 フォト&五・七・五

~私の好きな秋のこえ、秋のいろ~


 

 

 中田敏樹先生が10月16日に急逝されての合評会です。中田先生の講評をいただくことは叶いませんが、中田先生の遺志を大切にとの思いで開催した合評会でした。中田先生のご冥福を祈り、黙とうからのスタートとなりました。受講生の方々で質問、意見、感想を出し合いながらの充実した会となりました。

 まず、合評会に参加された方々の作品を抜粋して紹介します。

 ・憧れの婆―爺ンロード老い二人 (注:婆(バ)、爺(ジ))
  …花畑の道の向こうの建物を目指し、支え合い仲良く歩く二人の写真です
   ※ウィットに富んだ大変に微笑ましい作品です。
    軽やかなおかしみの中に愛情が溢れ出る作品です。

 ・ついて来いムジナに云われ一歩引く
  …熊走から奥の山道でムジナが撮影者の方を振り返ろうとする写真です。
   ※後ろ姿のムジナが威厳を持って振り返ろうとする姿が印象的です。
    句をつけることで動物との対話が見えるような作品です。

 ・紺碧の空に怒涛の水しぶき
  …白川郷ホワイトロード「ふくべの大滝」で、紺碧の空を水と見立てての句です。
   ※発想の豊かさに驚かされます。
    句を添えることで写真の雄大さや力強さが増しているようです。
    その表現が素敵です。

 ・鳳凰の飛ぶ台風一過澄み渡る
  …台風後の夕焼けの美しき赤に染まる雲の姿を広角レンズで撮影した写真です。
   ※写真だけでその美しさに心震えます。
    そして句を見て写真を見ると、まさに「鳳凰」そのものの華麗さです。
    これは見事な作品だとみなさんが大絶賛でした。

 ・山の幸いいね金沢梨便り
  …2つの見事な梨(加賀しずく)を届いた段ボールの前に置いて写した写真です。
   ※梨の置き方、バックの構図など、きめ細やかな配慮がなされています。
    遠近感もあり、見るからに美味しそうな梨の輝きが表現されています。

 ・行き過ぎてまた振り仰ぐ金木犀
  …中田敏樹先生を偲んで撮影された金木犀の花の写真です。
   写真にはご冥福を祈って黒縁取りがなされています。
   ※中田敏樹先生は、金沢市民憲章の歌「金木犀の匂う道」の作詞をされています。
    今も泉鏡花文学賞授賞式はじめ、晴れの舞台に歌われる歌です。受講生は、本
    作品の写真と句を心で何度も読み返しながら中田先生を偲びました。金木犀の
    匂う道には、「手紙を書こう 春が好きだという君へ」「話してみたい 夏が
    好きだという君と」「歩いてみたい 秋が好きだという君と」「届けてみたい
    冬が好きだという君へ」といった詩があります。中田先生の詩にはいついかな
    る時も、人を愛する温かな想いに充ち溢れています。受講生みんなが「こんな
    美しい生き方をしたいものです」と語られ、頷かれる時間となりました。私た
    ちの心に優しくそっと届けられた1枚の写真と句でした。

 他の方の提出作品を掲載します。
 ・残雪の白き峰々や思わず連写す
 ・夕焼けにコロナ終息願う秋
 ・窯出しの花器により添う柿一つ
 ・陸奥の糸引く水も秋探し

 講座の最後に、ある方が「中田先生、絶対、今ここに来られていると思います」と言われましたが、まさに同じ思いがしました。にこにこ笑顔で本日の温かな合評会を頷かれながら参加しておられるような気がしてなりませんでした。
 「美しい生き方」を最後まで貫かれた中田先生。本日、作品を提出された皆さんもまさに「美しい生き方」をされておられる気がしました。ギャラリーでの展示会では多数の方に見ていただきました。それらの作品は、たくさんの方々に「勇気・元気・優しさ」を届けていたのではないかと思います。
 中田先生は2011年度から本講座の講師を務めていただきました。心より感謝申し上げます。来年度、何らかの形で展示会等ができたらとは考えています。

      



〇11月19日(土)第7回 小説講座

~作品批評と推敲①~ 個別指導

講師:寺本 親平(小説家) 、 宮嶌 公夫(『イミタチオ』同人)、
   皆川 有子(『櫻坂』同人)

 

 

 第7回小説講座が開催されました。講師は、寺本先生、宮嶌先生、皆川先生です。2つのグループに分けて、合評会を行いました。
 次の作品での合評会となりました
  □宮嶌先生グループ
    ・お盆の日に    ・ログハウスと猫    ・北風からの贈り物
  □皆川先生グループ  ※本グループは寺本先生にもアドバイスをいただきました。
    ・マリーゴールド  ・奇跡         ・影と日向


 合評会で出ていた話から一部を紹介します
  ・主人公の気持ちをもっと描くようにしなげればならない。
  ・上手な作品であり、読後感が満足できる。
  ・話の内容が心にストンと落ちていかない。じんわり残る印象が薄い。
  ・短編小説としてテーマが大きすぎる。無理が出る。
  ・題名は工夫が必要。題名は熟慮しなければならない。
  ・男性が子を亡くした母親の気持ちを表現していくのは至難の業。難度が高い。
  ・どこか話の筋をなぞっている感がある。作者の生き様が本音の部分として書か
   れていない。小説に生き様を落とし込む苦労が必要だ。

 合評会で、講師の先生はもちろん、受講生からも忌憚のない意見が出されました。これから金沢創作工房に提出することもあり、小説の内容紹介、細かい指摘部分等の説明は出来ませんが、作品提出に向けて受講生の皆さんは全力で頑張っています。自分で納得できる作品提出をと思います。

 次回12月17日(土)小説講座は最終回です。講師は、寺本先生、皆川先生のお二人です。次回は合評会対象の人数も少ないこともあり、当初の予定と変更し、グループ分けはせずに合評会をしていきます。アドバイスもお二人の先生からいただくこととなります。
 寺本先生、皆川先生から全員アドバイスをいただける有意義な機会となります。多数の皆様の参加をお待ちしております。

 ※追伸
 先日、小説入門講座の講師「小西 護(まもる)」先生からお話いただいた書籍を
 購入しました。次のとおりです。
  ・「若い読者のための短編小説案内」 村上春樹   文春文庫
  ・「作家との遭遇」         沢木耕太郎  新潮文庫
  ・「教科書名短編」 人間の情景          中公文庫
  ・「教科書名短編」 少年時代           中公文庫
  ・「教科書名短編」 家族の時間          中公文庫
 ※短編小説作成での参考になればと思います。金沢文芸館3階金沢の文学コーナー
  に入っています。良かったら読んでいただき、ご活用ください。

      



〇11月19日(土)第1回 短歌入門講座

現代短歌の世界へ ~歌の準備体操~

講師:島田 鎮子(短歌誌『沃野』選者)

 

 

 短歌入門講座の開講です。講師は、短歌誌『沃野』選者、金沢中日文化センター講師などを務めておいでる 島田 鎮子(しまだ しずこ)先生です。第1回「現代短歌の世界」、第2回「現代を生きて、今を詠う」、第3回「歌会を楽しもう」となっています。
 第1回講座に8名参加の講座内容の概要をお伝えします。


□まず、短歌の世界の紹介がありました。
 ①「現代短歌」と「現代の短歌」
    ・和歌………万葉集・古今集
    ・近代短歌…明治40年代に旧派和歌と新派和歌に分かれ、新派が短歌と呼ぶよう
          になる。正岡子規、与謝野鉄幹・晶子など。
    ・現代短歌…短歌の口語化が一般的になる。
 ②「現代の短歌」はどんなふうに
    ・新聞の短歌…生活を詠う
    ・歌会始………晴れの歌
    ・結社や歌会で研鑽している人たち。
 ③短歌の方向やテーマや内容
    ・今、短歌表現は、年代、テーマ、言葉、表現方法は千差万別。
     自分が自分のテーマを持ち、表現。

□次に、いろいろな短歌の紹介がありました。抜粋します。
  ・「寒いね」と話しかければ「寒いね」と答える人のいるあたたかさ
                           俵  万智
    ※改革ともいえる歌。しみじみとした思いが伝わる。
  ・しやうもないから泣くのは今は止めておこ 全天秋の夕焼けとなる
                           河野 裕子
    ※不治の病。空白を設けることで、両句をぶつけて一つの想いを打ち出して
     いる。
  ・サバンナの象のうんこよ聞いてくれだるいせつないこわいさびしい
                           種村 弘
    ※大変な論議を生んだ歌。短歌の世界がひっくり返った。
  ・うつむいて並。とつぶやいて男は激しい素顔となった
                           斉藤 斎藤
    ※句点を入れている。「読んでもらいたい」との強調となる。
  ・受話器まだてのひらに重かりしころその漆黒は声に曇りき
                           大辻 隆弘
    ※句切れ・句またがりの技法を用いている。
  ・大根を探しにゆけば大根は夜の電柱に立てかけてあり
                           花山 多佳子
    ※面白い歌。大根が2つ入っていてもそれが効果的である。
  ・今しばし生きなむと思ふ寂光に園(その)の薔薇(さうび)のみな美しく
                           上皇后美智子様
    ※大きく深い味わい、仏心に溢れる

□短歌を作ってみよう
  1 実感を大切に。常套句(ひらひら、ゴウゴウ等)で説明してしまわないこと。
  2 作者と読者が「共感」という心でつながって一首完成する詩だ。
  3 短歌は、目と耳で味わう。
     ・声に出して作品の響きを味わう。
     ・かな、漢字の配合・組み合わせで目でも感じていく。
     ・短歌のリズムは心のリズム。何度も声に出して、心とリズムの確認を目と
      耳で確認する。
  4 与謝野晶子の言葉から
     ・歌はどうして作る。じっと観、じっと愛し、じっと抱きしめて作る。
      なにを、真実を


 短歌づくりが初めての方が8名中、5、6名の中でのスタートです。島田先生が驚かれるぐらいに受講生から疑問や質問が途切れることなく出て情熱あふれる講座となりました。先生ご自身も「素晴らしい講座です。これからも楽しみです。今後も充実した会にと思います」と言われるスタートとなりました。
 次回は、受講生の皆さんには「自分の一番好きな短歌を一首、選んできてください」との宿題も出ました。次回の講座も楽しみです。
 最後に島田鎮子先生から作られた一首を紹介します。
   ・紺の天さへぎるものなき三十八万キロの月の光はまつすぐに来る
                           島田 鎮子

 次回は12月17日(土)10時30分からです。
   ※受講生のみなさん、ご自分の好きな短歌一首をお持ちください。

      



〇11月13日(日)第7回 朗読会 五木寛之作『金沢あかり坂』

五木寛之作 「金沢あかり坂」①

朗読:髙輪 眞知子(朗読小屋・浅野川倶楽部 代表)

 

 

 11月13日(日)第7回朗読会が、朗読小屋 浅野川倶楽部の代表 髙輪 眞知子(たかなわ まちこ)さんにより行われました。前回までの青春の門 筑豊編に続き、11月と12月は、五木寛之作「金沢あかり坂」の朗読となります。
 髙輪さんの朗読は、金沢の七つ橋めぐりで金沢情緒を表現されるところから始まりました。そして、ひがし茶屋街を舞台にした主人公「高木 凛」と父との関わり、笛の稽古等が、実に艶やかな朗読で表現されていきました。
 朗読内容の概要をお伝えします。


     *     *     *     *     *     *
 浅野川では、年に二度、彼岸の中日の前夜、午前零時から七つ橋めぐりをする人影がみられます。上流から常盤橋、天神橋、梅ノ橋、浅野川大橋、中の橋、小橋、昌永橋を人影が一筆書きのように巡っていきます。「声を出さない」「挨拶をしない」「背後を振り返らない」の約束を守って橋巡りをしていきます。そんな浅野川界隈において、同じ職場に勤める黒江透、友人の池 高志、職場の後輩 高木 凛、そして凛の父 高木庄司が紡いでいく小説です。
 幼少の凛には父親への四つの怖い記憶がありました。①父親が「ユウキ-リンリ―ン」と凛を放り投げて落下する自分を受け止める事 ②父親が奇妙な男が出没する「ハッタロウ伝説」で脅すこと ③父親が仕事をせずに笛ばかりに熱中すると愛用の笛を母の光江が叩き割っていたこと ④父親が「名なしの坂が持つこわいイメージ」で凛を脅すことでした。
 植木職人である高木庄司は、笛の名人級の誰よりも増す「独特の強さ」「音量」「音色」を持っていました。娘の凛はそんな父親に笛の手ほどきを受けていきます。凛は、大人もびっくりするようなつよい笛の音を習得していきます。荒れる内灘の海で父親と練習する凛にとって、幼い頃、嫌いだった父親の別の面を知る機会となり、その後も笛を学んでいきます。
 やがて中二の時、母親が癌で急死し、高校進学時には父親が事故で死んでしまいます。そして、若かりし頃、辛い時期に、黒江透、池高志と出会います。三人は、金沢市の地元局の仕事を共にやっていくこととなります。
     *     *     *     *     *     *


 今回は、15名もの方々に参加いただきました。金沢市民が和やかに集いながら、凛と響き渡る髙輪さんの朗読に聴き入っている文芸館。そんな朗読の場を羨ましそうに見つめる観光で来館された方々の姿がありました。金沢文芸館が果たしている文芸の役割を再認識させられる貴重な時間となりました。
 次回は、12月11日(日)で、金沢あかり坂の後編です。髙輪眞知子さんの朗読会の最終回です。皆様のご来館を心よりお待ちしております。

      



〇11月12日(土)第5回 詩入門講座

品批評と推敲

講師:井崎外枝子(詩誌『笛』同人)、中野徹(詩誌『笛』同人)

 

 

 詩入門講座の最終回第5回講師は、井崎 外枝子(いざき としこ)先生(詩誌『笛』同人)と中野 徹(なかの とおる)先生(詩誌『笛』同人)です。また、和田康一郎先生からも受講生へのアドバイスをいただきましたので、それも見合いながらの講座となりました。
 概要を紹介いたします。受講生の創作詩の題名は次のとおりです。

 「恋する雑草」  「足元に気を付けろ」  「秋めいて」  「旅立ち」 
 「あれ」  「炎天下のポスト」  「星屑たち」  「未知の途中で」


 いよいよ「金沢創作工房」提出。受講生も原稿最終推敲の段階です。よって、詩の詳細内容紹介は差し控えますが、本講座では、井崎先生、中野先生から具体的なアドバイスをいただきました。また、和田先生からはメールにて助言の言葉を送っていただきました。講座での先生方のご意見、ご助言の一部を可能な範囲で紹介します。

 名詞止めの効果○
   …○読み手に考えさせる詩になっている。
    ○感性が光っている。
 説明しすぎない良さ
   …△母と微笑み歩んだ秋の夜長を私は忘れない → ○母と微笑み歩んだ秋の夜長
    ※読み手に想いを抱かせる。説明しなくても十分に伝える。作者の美質○
 温かみが伝わる詩だ
   …○形が整いより良くなっている。大変に力がある詩だ。母の死から慈愛を想わせる。
 擬人法の効果○
   …○着眼点が光る。
    ○機知に富み、巧みさに作者の美質がある。
 考え方の美質が大切
   …前向きな連が入って大きな力となっている。失望の印象がなくなる。考え方の美質○
 「構築の詩」の良さが際立つ
   …○物語性あり  自分の心境をポストに投影  ○構築の中に愛情がある
 幼き体験(友の死)からの想いを詩に託す○
   …母親の記述で死への解釈に混乱が出た可能性がある。改善ポイントになろうか。
 観念的・抽象的な言葉の使用に注意が必要
   …いろいろな作品に触れて光・ぬくもり・風に揺れる花等、イメージを借りて詩作をチャレンジすると向上していきます。


 今回が最後の講座です。今年度は、井崎外枝子先生、中野徹先生、和田 康一郎先生に講師を務めていただきました。個性を大切にして、お一人お一人の詩作に対して貴重なご指導をいただいたことを大変にうれしく思っています。また、詩を鑑賞し合う中で、自分にはない感性を学び、より自分の詩作を見つめ直す機会となった講座でした。
 これもひとえに力作を毎回披露いただいた受講生の皆さん、そして、井崎外枝子先生、中野徹先生、和田康一郎先生らのお力あってのことです。本当にありがとうございました。
 また来年度、お誘い合わせて参加いただけたら幸いです。よろしくお願いいたします。

      



〇11月12日(土)第7回 小説入門講座

作品批評と推敲①(個別指導を中心に)

講師:高山 敏(『北陸文学』主宰)、小網 春美(『飢餓祭』同人)

 

 

 11月中旬、小説入門講座も第7回を迎えました。今回は「作品批評と推敲①」です。今回の講師は、 高山 敏(たかやま さとし)氏と 小網 春美(こあみ はるみ)氏です。まず前半は、受講生4人の「作品批評と推敲」を実施しました。講座の一部とはなりますが、作品批評と推敲内容をお伝えします。


○創作にこだわり、書き始める

1 小説は焦点を合わせていくことが大切
  ・「紆余曲折の場面」「国際交流の場面」とみられる。焦点が定まっていない。
   ※小説の主役は一人であるべきで二人は要らない。主は「国際交流」であろう。
    ならば削除すべき箇所は削っていくべきだ。

2 表現方法について大切にすべきこと
  ・同一人物の表現は統一すること。(例:「黒人」「黒人青年」「黒人男性」等▲)
  ・年齢等、登場人物の紹介は的確に早めにしていく。
  ・情景描写は適宜入れていく。
   (「○○空港からバスで市内へ向かう」で終わらずに、情景描写を効果的に入れることが肝要)
  ・改行は適宜していく。
   ※長い文が続くとうんざりする。短い文が多用されると軽くなる。
  ・「いい年なので」「女子率の高い大学で」→安易な言い方は▲
  ・□□という都市で○○小学校の5年生で→Aという都市でB小学校の5年生で
   ※□□、○○だとひいてしまう。自分で作った名前を入れていくと良い。
  ・よく似ている表現は外していく。表現の絞り込みが大切。

3 必要な文章を把握し、具体的に表現していく
  ・原文
    「僕たち、いや村の誰もがその意味合いがどういうことなのかを知っていた」
  ・改善点
    ※「意味合い」を具体的に書くべきである。

4 熟慮したタイトルを
  ・タイトルが「ユウウツな空」
    →「現実逃避」になってしまう場合あり。
      自分自身で一歩掘り下げていきタイトルを決めていくことが必要ではないか。

5 自分の想いを打ち出すことが肝要。強い思いがあったら物の見方と表現が変わる
 4人の受講生の作品で、お二人の先生から批評と推敲をいただきました。最終稿に向けての良き時間となりました。講師の先生から心に深く残るアドバイスがありましたので紹介します。
 『作者』が登場人物の「嫌味な部分、嫌な部分」を書く場合に「書く人の心までも嫌味」だと「読んで読者が嫌な思いをする小説」となってしまいます。書く人も登場人物と一緒に嫌味になるのではなく、作者はそこで立ち止まって「登場人物は嫌味になっていないか?」と、自分で掘り下げて考えていくことが大切です』
 講師の先生、受講生の皆さんから深くて大切なことを学ばせていただきました。「いついかなる時も作者は読者を意識して小説作りをしていくことが大切であること」「登場人物の嫌味な部分の表現に作者はしっかりと向き合い、己の心を冷静に掘り下げていくことが大切であること」を学びました。そうした時に、小説の展開に新たな道が開けて、作品が読者を惹きつけていくものになっていくのだと気付かせられました。高山先生、小網先生、深い学びをありがとうございました。
 もちろん、これは受講生の皆さんの渾身の力作があってこその賜物です。ありがとうございました。

 次回、最終回、第8回小説入門講座は12月10日(土)10時30分からです。講師は、高山敏先生・小網春美先生で、『作品批評と推敲②』です。後半の方々の「作品批評と推敲」をしていきます。大きな学びにつながる講座です。ぜひより多くの方々の参加をお待ちしております。

      



〇11月3日(木・祝)古典の日記念事業 

朗読「平家物語」と琵琶の調べ

出演:朗読 神田 洋子(ストーリーテラー)
   琵琶演奏 尾山峰水(錦心流琵琶奏者)、増泉友水(錦心流琵琶奏者)

 

 

 今年の古典の日記念事業は「平家物語」です。第1章はストーリーテラーとして活躍されておられる 神田 洋子(かんだ ひろこ)さんの朗読です。今回は、錦心流琵琶奏者の 尾山 峰水(おやま ほうすい)さんの共演もいただきました。演目は①「祇園精舎」、②「禿髪(かぶろ)」、③「祇王(ぎおう)」、④「那須与一」、⑤「壇ノ浦」、⑥「女院死去(にょういんしきょ)」の6演目です。
 また、第2章では 増泉 友水(ますいずみ ゆうすい)さん、尾山 峰水さんに「琵琶の調べ」と台紙て琵琶演奏の弾き語りを披露いただきました。演目は増泉さんが「壇ノ浦」、尾山さんが「茨木」です。簡単に本日の演目紹介をします。


□第1章 古典文学に親しむ 朗読「平家物語」より
① 『祇園精舎』
 平家物語の冒頭の一節で、七五調の美文として名高いです。本物語は、平家一門の浮かばれぬ霊を慰める弔辞の意義があります。冒頭部には、慰霊の深い祈りが込められています。
② 『禿髪(かぶろ)』
 平清盛は、独裁政治をしくために、京中に赤い上着を着た14才から16才までの少年の密偵(スパイ)を放ちました。髪型を短く禿髪にそろえて300人を選抜し、平氏に対し不穏な言動があれば仲間と共に徒党を組んでその家に乱入し家財道具を没収し、本人を捕縛して清盛の前に突き出したと書かれています。
③ 『祇王』
 平清盛は、女性でありながら男装して舞う白拍子(しらびょうし)の祇王(ぎおう)を、寵愛しました。そんな中、祇王の配慮で今様(流行歌謡)と舞を披露したのが仏御前(小松市原町出身)です。なんと清盛は仏御前に心奪われ、祇王を追放してしまいます。その後、捨てられた祇王が母・妹と共に暮らす嵯峨の山奥に、清盛のもとを逃れた仏御前が訪れます。仏御前と和解した祇王、そしてその母・妹の4人は一緒に暮らし、朝夕、仏前に花や香を供え、浄土を願い、4人とも念願を果たしたと書かれています。
④ 『那須与一』
 場は兵庫県播磨灘。源平、両軍が対峙する中、平家軍の小舟が1艘、波打ち際に漕ぎ寄せてきます。浜の源氏軍が「どうしたことか」と見ていると、一人の女が紅一色の扇で日の丸を描いたものを船の縁に立てて手招きします。そして「あの扇を射よ」と義経に命じられたのが那須与一です。平家物語でも人気のある場面です。
⑤ 『壇ノ浦』
 壇ノ浦合戦の前、源義経と梶原景時との間で同士討ちになろうかという場面がありました。互いが先陣争いをして両者が刀を抜き合います。こんな場面いおいても、わがことのみを考えて争う二人です。壇ノ浦合戦で源氏は平家を滅ぼします。しかし、その後、義経は、景時の頼朝への告げ口により追われる身となり非業の死を遂げます。一方、景時も頼朝の死後、反対勢力に一族33名と共に殺されます。壇ノ浦の本朗読は「平家軍、幼き安徳天皇の死に対する悲哀」にとどまらない深い意味合いを持つ場面である気がしてなりません。
⑥ 『女院死去』
 壇ノ浦で死にきれなかった建礼門院(安徳天皇の母、清盛の娘)が、大原の寂光院にてわび住まいをします。そんな彼女の元に、後白河法皇(安徳天皇の祖父、建礼門院の義父)が訪れます。悲しみに打ちひしがれる建礼門院の様々な歌が紹介されます。
 ・「先帝聖霊、一門亡魂、成等正覚、頓証菩薩
   ※帝の御霊と平家の亡き御霊が迷いを取り去り、悟りを開き極楽往生しますように
 ・「過去聖霊、一仏浄土へ
   ※亡くなった霊よ、極楽往生へいっておくれよ
 ・「南無西方極楽世界教主弥陀如来、必ず 引摂し給へ
   ※必ず極楽往生へお導きください


 以上、6つの演目の朗読がありました。神田さんの朗読は、平家物語の勇ましい合戦に焦点を当てたものではなく、男同士の身勝手な争いから生まれ出た大きな悲劇や女性の深い悲しみを語っていくものであったと思いました。また、今回、尾山さんの琵琶演奏の力も大変に大きく、古典文学に親しむよき機会となりました。

 続いて第2章では、増泉さんによる「壇ノ浦」、尾山さんによる「茨木」の琵琶演奏と語りがありました。次の内容です。


① 『壇ノ浦』  演奏 増泉友水
 源氏との戦いに敗れ、8歳の幼帝 安徳天皇と仁位殿(清盛の妻)が、海底の水屑となって海底深く沈んでいく場面です。
 「小さう美しき御手を合わせ、先ず東に向かわせ給ひて、伊勢大神宮・正八幡宮に、御暇申させおはしまし、その後西に向かわせ給ひて、お念仏ありしかば、仁位殿、やがて抱き参らせて「波の底にも都の候ぞ」と慰め参らせて千尋の底にぞ沈み給う」
② 『茨木』  演奏 尾山峰水
 茨木童子は、平安時代の京都を荒らし回ったとされる「鬼」の一人です。「羅生門に鬼が出る」との噂で、武将「渡辺の綱(わたなべのつな)」が鬼の茨木童子と戦い、激しい格闘の末、茨木童子の腕を切り落とします。腕を切り落とされた茨木童子はそのまま逃げ出しましたが、後日、別の姿に化けて渡辺綱の屋敷まで腕を取り返しに来るというお話です。


 お二人の朗々とした語りと琵琶の音が一体となって、時には弦が弾けるほどの迫力で、時には悲しみにむせぶ弦の揺れを伴っての表現など、琵琶演奏と語りの奥深さを感じさせられたものとなりました。


 今回の古典の日記念事業は、古典文学に親しみ、古典芸能を味わう良き機会になりました。これを機に、皆様と共に古典をより深く理解し楽しんで学んでいく歩みを大切にと考えております。
 ご参加いただいた皆様、出演いただいた神田洋子さん、尾山峰水さん、増泉友水さん、本当にありがとうございました。

      




    朗読:神田洋子さん(右)
    伴奏:尾山峰水さん(左)










     演奏:増泉友水さん

〇10月23日(日)第2回 伝承文芸講座 ~金沢の昔話と伝説をたずねて~ 

「金沢の飴買い幽霊譚をめぐって」~伝説の伝達者~

講師:藤島 秀隆(金沢工業大学名誉教授)

 

 

 金沢工業大学名誉教授の 藤島 秀隆(ふじしま ひでたか)先生による、第2回目の伝承文芸講座が開講されました。今回は「金沢の飴買い幽霊譚をめぐって」というテーマで、金沢市内には多数の子育て幽霊譚が伝承されていますが、その主な要因に触れながら、市内の主な伝達地(伝承地)として現存する四ヵ寺に関する伝承についてお話いただきました。


◆日本における子育て幽霊譚と飴買い幽霊(金沢市)の伝承について
  ・本格昔話「子育て幽霊」は全国的に採集報告の比較的多い昔話であり、その分布は
   奄美大島から青森までに及んでいる。
  ・日本における子育て幽霊譚の元祖は、南北朝時代の禅僧(曹洞宗)通幻寂霊とされ
   る。通幻は越前府中(現、福井県武生)の曹洞宗龍泉寺の開基であり、まず通幻子
   育て幽霊譚が越前府中の龍泉寺の伝承を母体として流布し、やがて北陸道を北上す
   る雲水などによって越前からもたらされ、曹洞禅と共にその伝説が普及したと考え
   られる。
  ・金沢市内において、飴買いの幽霊譚が伝承されている主因を挙げると、①藩政時代
   から特定の寺院及び人名と結びついた昔話が伝説化して語り伝えられている。②主
   な伝達地(伝承地)として四カ寺現存する。ということである。
  ・通幻の墓中誕生説が時代の流転の中で変容して、各宗に波及していったと思われる。
   金沢における四ヵ寺に関わる子育て幽霊譚の背景には、通幻伝承の影響が看取され
   るのである。

◆日蓮宗立像寺(寺町四丁目)に関する伝承について
  ・立像寺の伝承は、団子屋へ白餅を買いに来た型であり、一般的とされる墓中から救
   助された赤ん坊が後に名僧となるという話は欠如している。
  ・同寺の境内には飴買い幽霊の小さな地蔵の墓が現存している。

◆天台宗道入寺(金石西三丁目)に関する伝承について
  ・前述の立像寺の伝承と類話であるが、白餅が飴へと転化し、赤ん坊はそのご道玄と
   命名され同寺の七代目住職となり名僧といわれ、道玄は、養育してくれた快典和尚
   の徳と亡母の愛を偲び、画匠円山応挙に母の幽霊の絵を描いてもらい朝夕拝礼した
   と伝えられている。
  ・この幽霊の掛け軸は同寺の秘宝として現存している。

◆浄土宗光覚寺(山の上町五丁目)に関する伝承について
  ・「飴屋坂(同寺門前の飴屋が坂の上にあったので、そこを飴屋坂という)の飴買い
   幽霊」譚であり、本話は代々の住持の口伝えである。
  ・赤子の将来が語られているが、同寺の名僧にはならず母の行方を尋ねて遍歴の旅に
   出たという結末である。そこに説教僧(旅僧)の介在が考えられる。
  ・同寺は金沢における地蔵菩薩順拝の第三十五番目の札所であり、本話は地蔵信仰と
   結び付き宣布されたと推断したい。

◆天台宗西方寺(寺町五丁目)に関する伝承について
  ・資料に掲載されている同寺における伝承話は、話者は西方寺の庵主(尼僧、第三十
   一代)であり、先代住職(尼僧)及び檀家の古老からの口伝である。
  ・同寺の門前の地蔵堂には飴買い地蔵さんが祭られている。
  ・同寺は金沢における地蔵菩薩順拝の第七番寺に当たり、また、金沢西国三十三所観
   音順礼の第十五番札所でもあることから、本話も地蔵信仰と結び付いて普及したと
   考えられる。

◆伝説の伝達者
  ・金沢における四ヵ所に関わる飴買い幽霊譚は、日蓮宗・天台宗・浄土宗と異なる宗
   派の世界で生成され、発展して行ったが、特に、僧侶の説教に基づく伝達が顕著で
   ある。
  ・次いで檀徒も伝達に大いに寄与しており、流布の原動力となったのである。
  ・浄土真宗では真実の教えは蓮如が中心であって、飴買い幽霊のような伝承は出てこ
   ないのである。


 当日は、午後から激しい雨が降り出すといったあいにくのお天気となりましたが、ほぼ満席となる受講生の皆様にお集まりいただきました。
 今回は、皆さんもよく耳にしたことがある有名な「飴買い幽霊」のお話をテーマとして、藤島先生にご講義いただきました。資料に基づいて具体的に分かり易く解説をしていただき、受講生の皆様にも熱心にお聴きいただきました。本当にありがとうございました。

 次回、第3回伝承文芸講座は、11月27日(日)です。「長太貉譚の伝承と展開をめぐって」というテーマで、藤島先生にお話していただきます。皆様のご参加を心よりお待ちしております。

      



〇10月15日(土)第6回 小説講座 

~小説の実作について②~

講師:寺本 親平(小説家)

 

 

 第6回の小説講座が開催されました。講師は、小説家の 寺本 親平(てらもと しんぺい)先生です。テーマは「小説の実作について②」です。使用教材は「小山薫堂」氏の「フィルム」です。
 小説家としての立場から、歯に衣着せぬ厳しさある愛情いっぱいのお話をいただきました。講座の内容から一部紹介いたします。


1 教材『小山薫堂氏(こやまくんどう)の「フィルム」』について
  ・小山薫堂氏は、映画「おくりびと」の脚本家であり、本作品は小山氏の原点とい
   われる「第一小説集」の中にある作品です。概要は次の通りです。
  ・30年間も音信のなかった「あの人」の訃報が、縁もゆかりもないはずの山梨県
   勝沼の老人ホームから八坂潤一郎の元に届きました。そして潤一郎は、「あの人」
   (顔も知らない父親)の残したわずかな遺品の中から、一本のフィルムに残され
   た一枚の写真を見つけます。そこから、潤一郎は、父親、母親、息子の潤一郎ら
   の家族間にあった様々な出来事を知ることとなります。我々の暮らす街の片隅で、
   仕事をし、恋をする人々、それに翻弄される家族をきめ細やかに描いた小説です。

2 寺本親平氏の教えから
  ○小説講座は仲良しクラブではない
    ・小説家は一人ぼっちの孤独な者だ。その集まりが束になっているものなんだ。
    ・「てにをは」について私は語らない。それは自らが修練して学んでいくものだ。
  ○小説作りについて
    ・小説を読み込むこと。「読む」と「書く」は表裏一体だ。
    ・小説は「会話・説明・描写」だ。
     ①思った通りをぐちゃぐちゃに書く →②削る(説明は▲ 回想べったり▲)
  ○小説の読み方について
    ・好きな作家を持て
     ①好きな作家の作品を読みつくす ②真反対の作家の作品を読む
  ○小説家としての覚悟を持て
    ・「どぼそ(方言)に落ちて這い上がる」
     そんな情景を思い描いた小説を作れ!
     ①真面目に正面から取り組め →
     ②「どぼそ」(方言)に落ちろ →
     ③「死」を見つめろ →
     ④這い上がってこい
    ・文章は人のまねをするな。自己表現こそ命なんだ。
  ○小説家としての心の持ち方について
    ・「自分に個性がある」などと思うな。所詮、人は赤子のような存在なんだ。
    ・「自信がある」と語る者は、遅かれ早かれ、いずれ打ち砕かれるだけだと自覚
     せよ。
    ・肝っ玉は図太く持って、己が村八分の存在になれ。
    ・「自分はどういう人間で何を目指していくのか」を持って小説作りに勤しめ。
    ・己が別人間にならなきゃ小説作りはできない。


 まず「小山薫堂氏のフィルム」の朗読が受講生がしました。そして寺本先生から本小説の良きテンポ感、すっきりした文体、相手に伝わる書き方の見事さについて話がありました。続いて、小説家としての心構え、覚悟、講座に向き合う心構え等について、大変に厳しくも滋味深いお話がありました。
 ぼんやりとのどかに平和に生きている者には決して小説は書けないこと、自分を追い込んで自己をみつめてこそ小説作りの入り口が見えること等、歯に衣着せぬ厳しい口調での講座となりました。一人一人の小説作りへの強烈なアドバイスがなされた講座でした。
 小山薫堂氏の小説「フィルム」での朗読から始まった講座でしたが、寺本氏の厳しく熱い講座は、私たちの心に一滴の熱湯を落とされたようでした。今後、小説を見ていただいた時、厳しく熱いご助言があろうかと思います。どぼそ(方言)に落ちても這い上がって小説作りに勤しむことの大切さを心に刻んでいく講座となりました。
 寺本先生、受講生のみなさん、本当にありがとうございました。


 次回は11月19日(土)です。講師は、寺本親平先生(小説家)、宮嶌公夫先生(『イミタチオ』同人)、皆川有子先生(『櫻坂』同人)です。次回の講座は「作品批評と推敲①」です。皆様のご参加をお待ちしております。もしも作品提出がまだの方がおいでましたら、提出をお願いします。

      



〇10月15日(土)第3回 川柳入門講座

~川柳で人・社会とつながる!~

講師:赤池 加久(石川県川柳協会会長)

 

 

 川柳入門講座第3回です。第3回目講師は石川県川柳協会会長 赤池 加久(あかいけ かきゅう)先生です。テーマは「ミニ句会から柳社句会、そして大会へ」です。プリントを使っての講座が進められました。講座から一部を紹介します。


◆はじめに  ※一部紹介します
  ○「川柳の生い立ち」=ほかの文芸と共に
   ①川柳・俳句・短歌の流れ
   ②今から約260年前、江戸時代に前句付けが大流行
   ③柄井八衛門がその前句付けに評点して選句する
   ※川柳の前句付けとは?→下七七(しもしちしち)に、五七五をつけていく。
    五 □□□□□
    七 □□□□□□□
    五 □□□□□
    七 楽しかりけれ
    七 楽しかりけれ
    ※付け句をしていくのが大流行。川柳は庶民性が強いです。

◆川柳を楽しむ「その一」   ※抜粋です
  ○川柳の三要素
   ア 穿ち(うがち)
     ・皮肉や風刺のことです。世の中の出来事や事象を正面から覗かず、裏から、
      または斜めからの視点で表現します。
   イ 滑稽(こっけい)
     ・じわりと湧いてくる笑い、自然なユーモアであることが大切。
   ウ 軽み(かるみ)
     ・さりげなくサラリと言ってのけた句体から、深い奥行きや広がりを感じさ
      せること。
   ※川柳は三要素の全てが入らなくても意識してどれかが入ることが大切。
  ○川柳とは短詩型の文芸である
  ○人間を詠む・社会を詠む・自分を詠むのが特徴

◆川柳をたのしむ「その二」   ※抜粋です
  ○句作の流れと要点
    ①句材を見つける
    ②五・七・五の十七音字を基本に
    ③リズム良く
    ④難しく考えず、口語体(話し言葉)で作る
    ⑤多作・多読に心がける
    ⑥句会などにも参加する
    ⑦誰にも解り、誰にも作れない句を作る

◆終わりに
  ◎楽しみ・雑感・その他   ※抜粋です
    ○俳句の作家 楠本憲吉の言葉 (『俳句上達法』講談社)
      ・表面的にさっと見て簡単に十七字にまとめてみても、読者は誰も感心し
       てくれないし、共感も覚えてないし、まして感動などしてくれない。
    ○五木寛之氏のエッセイ (「新地図のない旅」北國新聞R1.5.14)から
      ・「川柳と日本人の心」 ドイツと日本のユーモアの感覚の違い。それは
       タフな精神とある種の軽さ
    ○兎にも角にも「継続は力」をモットーに、要は「感性」を磨くことが大切。
    ○県内の柳社や各地大会・句会、各種情報詩、新聞などに投句や参加等々行動
     範囲を広げることで人生が豊かになる。


 最終回は、赤池加久氏(石川県川柳協会会長)から貴重な話をいただきました。長年にわたり研鑽を積まれた中からお話いただく貴重な教えは、受講生の胸に深く響くものとなりました。
 最後には「石川県の川柳協会加盟柳社の定例句会の一覧表」をいただきました。川柳講座は、金沢文芸館では3回の講座でしたが、今後の川柳活動へのきっかけと継続のための貴重な資料をいただきました。
 今年度、川柳講座が実施できたこと、毎回、深まりある内容となったこと、これも3人の講師の先生方のお力はもちろん、受講生の皆さんの川柳への探求心と愛情があったからこそと思います。本当にありがとうございました。
 来年度は、ぜひたくさんの方々に参加いただきたいと思います。講義形式の中に「優れた川柳を鑑賞し合う時間」「受講生の皆さんで作った川柳を学び合う時間」を、さらに効果的に取り入れた川柳教室にと思います。心から皆様の参加をお待ちしております。

      



〇10月12日(水)出前講座 浅野川小学校2年

すぐれた物語を読もう

講師:神田 洋子(ストーリーテラー)

 

 

 浅野川小学校には3回目の訪問です。今回は、2年生2クラスの児童が参加して出前講座「すぐれた物語を読もう」が実施されました。外国のお話をいろいろと紹介していきました。講師はストーリーテラーの 神田 洋子(かんだ ひろこ)先生です。感染症への安全対策のため、2回に分けての学習をしました。


◆主なプログラム
  □王子様の耳はロバの耳  ……ポルトガル
  □ボタンインコ      ……イギリス
  □ジャマイカ島の民話   ……ジャマイカ
  □グリム童話       ……ドイツ            など

 浅野川小学校の学校司書さんが石川県立図書館から、本日語りをする「エパミナンタス…東京子ども図書館編」「岩波世界児童文学集…岩波書店」「世界の民話…実業之日本社」「魔法のオレンジの木」の本を借りてきてくださいました。


◆今日はジャマイカ島の民話「アナンスと五」を紹介します。
 ジャマイカ島の「アナンス」という男の近くに、「五」という名前の魔女が住んでいました。魔女は五という自分の名前が嫌いで、五と呼ばれるのをとても嫌がっていました・ある時、魔女が、大鍋で魔法の草を煮ていて、鍋から煙が立ち始めると、魔法のつえを振り上げて『「五」という言葉を言ったものは、その場で死んでしまえ』と、怖ろしい呪文を唱えます。これを聞いたアナンスは、「これはよいことを聞いた。うまく使えばごちそうにありつけるぞ」と思いました。

 これを聞いたアナンスは市場につながる道にサツマイモの山を並べて、誰かが来るのを待ちます。そこにアヒルの奥さんが通りかかりました。そして「サツマイモを作ったんだけど、上手く数えられない。代わりに数えてくれませんか?」と持ちかけます。アヒルは気軽に引き受けてサツマイモの数を数え始めます。
 「一、二、三、四、五」アヒルの奥さんは五と言ったとたん、魔女の呪いにかかって死んでしまいます。アナンスは、アヒルの奥さんをペロリと食べてしまいます。
 次にウサギが通りかかるとアヒルと同じように、サツマイモの数を数えさせます。そして丸ごとペロリと食べてしまいます。
 しばらくすると今度は、ハトの奥さんがやってきました。同じようにサツマイモの数を数えさせますが、ハトの奥さんは「一、二、三、四、それから、私の乗っている分」と言って、五とは言いません。それを聞いたアナンスはハトの奥さんにもう一度数えさせますが、また「私の持っている分」…。「私の座っている分」…と、言います。

 それを聞いて、アナンスは怒ってこう言いました。
 「なんてバカなハトだ!いいか、こうやって数えるんだ。一、二、三、四、」。
そうしたら、『五』と言ったとたん、アナンスはバッタリと倒れて死んでしまいましたとさ。


 子どもたちは誰一人と喋らずに真剣に聴いていました。そして、語りが終わったら「安堵感」と「言いようのない切なさ」が交錯しているであろう静けさが訪れた後、大きな拍手が沸き起こりました。面白い、楽しい、悲しい、寂しいなどの言葉がぴったりと当てはまらない民話の奥の深さに戸惑いながらも、子どもたちは心から神田先生の語りを楽しんでいました。子どもたちは、心の中にいろいろな思いを巡らせながら、深い民話の世界に誘われているようでした。「また来てくれるの?」そんな声も何人も聞える語りの会となりました。今年度は、浅野川小学校はこれで最後です。素直な優しさと深い思いを心の中で持つ子どもたちです。その成長を心から願っています。
 浅野川小学校の先生方、子どもたち、たくさんの本を各図書館から借りて準備いただいた学校司書さん、皆さま、本当にありがとうございました。またお会いできる時を楽しみにしています。

      



〇10月9日(日)第6回 朗読会『青春の門 筑豊編』

タエの死、そして18歳の新たな出発を

朗読:髙輪 眞知子(朗読小屋 浅野川倶楽部代表)

 

 10月9日(日)第6回朗読会が、朗読小屋 浅野川倶楽部の代表 髙輪 眞知子(たかなわ まちこ)さんにより行われました。今回は「人と別れるとき」から筑豊編の最後「十八歳の出発」までのお話です。
 いよいよ筑豊編の最終となります。タエの死、そして新たな出発を信介は迎えます。信介の母親との別れ、揺れ動く心、そして新たな一歩を歩み出す信介の決意の心情の変化を、髙輪さんは見事に演じてくださいました。


     *       *       *       *       *      


 信介は入学願書を持って竜五郎のところを訪ねます。竜五郎と相談をして信介は東京の大学を受験することを決めます。そして受験を終えた信介は久しぶりに織江と会います。織江は「おっ母しゃん、竜五郎さん、みんなのことを忘れてしまうがよか。あんたはもう筑豊の人間じゃのうなるとたい。東京で大学にいって、夏休みに角帽かぶって帰ってきて、そこらの女学生でもひっかけて歩くがよか」と信介に自分の想いをぶつけるのでした。信介は織江を突き放しながらも、そんな織江のことを可愛く思うのでした。

 そして、信介は東京の私立大学文学部合格の電報を受け取ります。さっそく竜五郎、そして病床の母親に報告に行きます。母親タエの病状は思いのほか、思わしくなく、命の危険も感じられるほどでしたが、信介の合格を心から喜びました。しかし、みんなの回復への願いは叶わずに、タエは命を閉じます。信介は、単なる悲しみではなく、過去のタエに対する強い思慕の情と追憶の心を感じるばかりでした。

 母親タエの葬儀が行われました。竜五郎、塙組の若い衆、織江、春男、早竹先生らも参列しました。信介は、タエが亡くなった今、これ以上、竜五郎の世話になるわけにはいかないと竜五郎に打ち明けます。しかし、竜五郎は、そんな信介に対して「伊吹信介という一人の男の将来を、この目で見届けたいのだ」という思いをぶつけます。
 信介は、骨壺のひとすくいのタエの遺骨をハンカチで包み、上着のポケットに入れて、出発する準備を整えていきました。信介は、まず二年間は自分一人で独立してやっていくことを心に決めて、竜五郎への手紙にそれを綴ったのでした。
 信介は、タエの骨のかけらを口に入れて噛んで出発しました。筑豊の子、伊吹信介は、祖父耕平、父重蔵、そして母タエの人生を育んだ大地を蹴って、いまようやく、すべての人間が一生に一度だけくぐりぬける青春の門の入口に近づこうとしているのでした。
                       筑豊編・完 「十八歳の出発」まで


     *       *       *       *       * 


 今回で、青春の門 筑豊編の朗読はすべて終えました。髙輪眞知子さんには、毎回、一時間を超える朗読をいただきました。
 次回、髙輪眞知子さんには、第7回11月13日(日)、第8回朗読会12月11日(日)において、五木寛之氏の「金沢あかり坂」を朗読いただく予定です。ぜひともご来館いただきますようお願いいたします。心より皆様のご来館をお待ちしております。

 ※なお、来年度は、青春の門「自立編」を髙輪さんに朗読いただく予定です。自立編、
  放浪編、堕落編、望郷編、再起編、挑戦編、風雲編と青春の門は続いていきます。
  引き続いて皆様に、青春の門の本もご愛読いただけますと幸いです。

      



〇10月8日(土)第4回 詩入門講座

詩の実作②

講師:井崎 外枝子(『笛』同人)/中野 徹(『笛』同人)

 

 詩入門講座第4回目の講師は、 井崎 外枝子(いざき としこ)先生(詩誌『笛』同人)と 中野 徹(なかの とおる)先生(詩誌『笛』同人)です。第1回、第2回の和田康一郎先生から学んだ「詩作の基本」、そして第3回目の「詩の実作① 合評会」での学びを活かした講座となりました。今回は詩の実作②となります。
 受講生の創作詩の題名は次のとおりです。

  「眠れない」   「瑠璃色の地球に生まれた星屑たち」  「道の途中で、、、」
  「旅立ち」    「よく見ればそこにある」       「秋めいて」
  「満月が刺す海」 「石川県立中央病院」

 もうすぐ「金沢創作工房」原稿受付です。受講生も原稿発送準備中ですので、詩の詳細内容紹介は差し控えます。受講生の創作詩実作②へ、井崎先生、中野先生のご助言をいただきました。また、和田先生からはメールにて助言の言葉を送っていただきました。講座での先生方のご助言の一部を紹介します。


 ・話の展開は面白い。題名が大切です。ピンとくるものにしたい。
 ・面白い素材だが、擬音で全て語る詩は難しい。書き手と読み手のやりとりが困難になる。
 ・母親との距離感を生んでしまう言葉は削除すると良い。
   ・『不動の笑顔』(不動→「変わらぬ」に変えると○)
   ・「唯一無二の存在」→この表現は削除すると○」
 ・教訓的な言葉の多用は▲
   ・いらない部分は削除すると○
   ・作者は悩みに特化して語ることが○
 ・母への想いがよく書けている。素直な詩である。よどみなく流れる。
 ・詩にもう1行付け加えるとよい。私的な心情が表れるとよい。
 ・しつこい表現を削除する。 ※下線削除「膨らんだ(ようにみえる)」
 ・題名は固すぎてもいけない。


◆井崎先生から、詩を書くための留意点をプリントで説明いただきました。書き記します。
 1 詩の3つの要素
    ・意味   ・イメージ   ・リズム
 2 詩と散文の違い
   ・詩は散文ではない。
   ・散文を改行しても詩にはならない。
   ・余白を活かす改行でなければならない。
 3 詩というもの
   ・詩は知識や考え、主張のアピールではない。
   ・詩は自分自身の内面である。怒りや苦悩、一人間の根元にあるものを時間を
    かけて覗き込むこと。
 4 詩の構成
   ・詩はそれぞれの型をもっている。
   ・連の構成にあたっては、起承転結、ホップ・ステップ・ジャンプなどの流れ
    を強く意識する必要がある。
 5 詩は答えを出せないことが多い
   ・テーマを深めてゆくべきである。
    また安易な結論を避け、読者にゆだねることである。



 今回は、前回同様、一作品ずつ、先生方からアドバイスをいただいた貴重な機会となりました。今後、
  ・「実作①・②から選んで修正していくのもよい
  ・「気分を新たに実作③にチャレンジしていく
 今回のアドバイスを活かして、どちらかの方法で提出をとのことです。
 井崎外枝子先生、中野徹先生、和田康一郎先生、そして受講生の皆さん、ありがとうございます。受講生の皆さんの納得いく詩の掲載をと思います。

 次回は、11月12日(土)15時からです「作品批評と推敲」です
 ※詩の最終締切日は10月29日(金)です。最終校正用の作品提出をお願いします


      



〇10月8日(土)第6回 小説入門講座

創作へのこだわり ~構想から実践へ~

講師:小西 護(『イミタチオ』同人)

 

 10月上旬、小説入門講座も第6回を迎えました。今回は「創作へのこだわり」です。今回は金沢文芸館 前館長の 小西 護(こにし まもる)先生による「小説入門講座」です。前回、小説を書いて合評会を開催した受講生の皆さんです。今回は、「創作へのこだわり」をテーマに小西先生に講義をいただきました。講義内容から概要をお伝えいたします。


○創作にこだわり、書き始める

1 書く目的を明確にする
 ~精神的な深化、自己改革の契機~
   ・書くことで自分と向き合う
   ・「この時にこのことがあってこそ自分が変わっていく」…貴重な体験を大切に
2 主たる読者(層・相)を想定する
 ~誰になんのために発信するのか~
   ・家族、仲間、同人
   ・友人、親戚、地域住民、同世代など
   ・一般の読者
   ※小説作りでは作品を信頼できる誰か一人に見てもらい意見をもらうことが大切
3 独自性・独創性にこだわり 書き進める
 ~熱く高いモチベーションと冷静な評価・判断~
   ・入口は自分が理想とする作家、作品にこだわること 自分の方向性が見えてくる
   ※ちなみに小西先生は衝撃を受けた作品として「梶井基次郎作「檸檬(れもん)」
    角川春樹事務所」をあげられました。
4 想像力と創造力を 大胆に発揮する
 ~文学性と娯楽性、両面の追求~
   ・テーマ (主題)
   ・モチーフ(表現の動機となる核心)
   ・プロット(展開、構想)
   ※「書き始める」→「続ける」→「書き直す」を大切に 積み重ねるとひらめきが
     沁み出てくる
5 多用多彩なエピソード(挿話)を練り込む
 ~魅力あるエピソードの蓄積・整理・活用~
   ・実体験、想像
   ・間接体験・経験
   ・創作・創造につながる生活習慣づくり
   ・蓄積する場所、タイミング、アイテム、ルーティン
   ※ドラマが山ほどある すかさずメモを


作品完成までの覚悟と実践
 作品完成までの覚悟と実践について詳しくお話いただきました。受講生は真剣な面持ちで小西先生のお話を聞いていました。抜粋して紹介いたします。
 1 とにかく書き始める 逃げずに書き続ける
    ・ノルマを定める
    ・自分を褒めてモチベーションの向上を
     *粘る=耐える  *切り替える=風通し良く  *諦める=再出発
 2 作品完成まで 書くことを最優先に
    ・創作を生活全体のど真ん中に置く
    ・自分の分身たちとの対話を楽しみ味わう
 3 音読しながら どんどん推敲する
    ・木を見て森を見る 森を眺めて木を見直す
    ・退屈な説明、迷いの部分は削除し、書き直す
 4 複数の他者から 率直な意見・感想をもらう
    ・全般的な印象
    ・登場人物の魅力
    ・表現・表記
    ・全体的な評価
 5 納得するまでこだわり 楽しみながら推敲する
    ・虚構を絡ませ、小説空間を膨らませる
    ・説明を簡潔に、ベタ過ぎない、描写と会話表現で


 他『豊かな創作につなげる10のヒント』をお話いただきました。
  ①人への立体的なアプローチ
  ②隙間・余白を活かす
  ③イメージ、あそびを孤立させない
  ④「つや」「あや」を出す
  ⑤単純明快から曖昧模糊へ
  ⑥「語り手」がでしゃばらない
  ⑦見落としやすいもの、美しくて愛らしいものを活かす
  ⑧赤ちゃん、幼児、少年、少女たちの「今」と「未来」と
  ⑨感覚を研ぎ澄ませ想像した文章表現を
  ⑩時間差、空間移動の「奥行き」づくり



 最後に 『村上春樹「職業としての小説家」より 新潮文庫』 からまとめられた資料をもとに、小西先生が説明してくださいました。一部を紹介します。

源泉にたどり着くには流れに逆らって泳がなければならない。流れに乗って下っていくのはゴミだけだ」(ポーランドの詩人 ヘルベルトの言葉)
「大事なことは健全な野心を失わないことだ」
「我慢強く書き続けるために必要なものは「持続力」「基礎体力」だ」
「作家の仕事は物語を語ること。意識の下部に自ら下っていくこと。心の闇に下降していくこと」
生きた登場人物は、ある時点から作者の手を離れ、自立的に行動し始める…小説が軌道に乗ってくると、登場人物がひとりでに動き出し、ストーリーが勝手に進行し、小説家はただ目の前で進行していることをそのまま書き写せばいいという、きわめて幸福な状況が現出する」


 小西先生のどのお話も心に深く刻まれるものばかりでした。講座が進むごとに、受講生の皆さんも自然に前のめりになり1時間30分の講座時間はあっという間に終了してしまいました。本講座は、小説入門講座の受講生の「小説創作意欲と技術の習得意欲」への大きな灯火となりました。
 小西先生、貴重なお話を本当にありがとうございました。受講生の皆さんも、真剣な受講をありがとうございました。どうぞ、本日の講話を今後の小説の創作活動に活かしていただけたらと思います。

 次回、第7回小説入門講座は、11月12日(土)10時30分からです。講師は、高山敏先生小網春美先生で、『作品批評と推敲①』です。提出作品は、第7回講座(半数)と第8回講座(半数)に分けて「作品批評と推敲」を行っていきます。
 受講生の皆さんで、作品未提出の方は、早めの提出をお願いします。


      



〇10月5日(水)出前講座 大浦小学校4年

「秋の楽しみ」季節の言葉を使って俳句をつくろう

講師:竪畑 政行(石川県児童文化協会 理事長)

 

 今回は、明るさいっぱい、元気いっぱい、笑顔いっぱいの大浦小学校に訪れました。4年生49名の児童参加で出前講座「俳句をつくろう」を実施しました。講師は石川県児童文化協会理事長の 竪畑 政行(たてはた まさゆき)先生です。
 大浦小学校の児童、授業での反応が良く、自分たちの考えを積極的に発表し、友だちの意見を大切にしていく子どもたちでした。大まかな学習の流れを抜粋してお伝えします。


◆『どちらの俳句が素敵と言えるかな?』
 A 春風にふかれてぼうしとんでゆく  …… あたりまえの俳句
 B 春風がぼくのぼうしをかぶってく  …… 発見のある俳句 良い俳句と言える
※子どもたちはA、Bの俳句の素敵な点を話していく中で、だんだんBの意見を述べていく子
 が増えていきました。竪畑先生から、Aは「あたりまえの俳句」、Bは「発見のある素敵
 な俳句」なんだねと話をしてくださいました。

◆『発見のある俳句をつくろう』
 A ミニトマト夏になったら赤くなる   …… あたりまえの俳句
 B ミニトマト□□□□□□□赤いかお  …… 発見のある俳句をつくってみよう!
 竪畑先生が、子どもたちに「発見のある俳句をつくってみよう」とうながすと、子どもたちは様々な言葉を考えて発表していきました。一部をあげます。
  熱中症で  ・長く育って  ・太陽やけで  ・日焼けして  ・光輝く
  ・怒ってしまって  ○
お日様あびて(竪畑先生から) など
 子どもたちの言葉はいかがでしょうか。竪畑先生から、一つの例として○印の言葉が用意してあったのですが、子どもたちの言葉もなかなか素敵な言葉の連続でした。私自身も子どもたちの「熱中症」との言葉を聞いて、その発想の豊かさに驚きました。世間一般には、「熱中症」と言うとマイナスイメージなのですが、子どもたちの感性は豊かです。
 これ以降、感性光る子どもたちは、いろいろな俳句で「光る言葉」を自分たちでつくって入れていきました。一部紹介します。
 A 夏休み出番がないよランドセル  …… あたりまえの俳句
 B 夏休み□□□□□□□ランドセル …… 発見のある俳句をつくってみよう!
  ・たいくつそうな  ・ひとりぼっちの  ・しゅくだいわすれた
 A 満月がうつっているよろてんぶろ …… あたりまえの俳句
 B 満月も□□□□□□□ろてんぶろ …… 発見のある俳句をつくってみよう!
  なかまにいれて  ・湯船につかる  ・ワクワクうれしい  など

 最後に竪畑先生から俳句作りの4つの極意を教えていただきました。
俳句作りの4つの極意から
  ○あたりまえから出発すべし
  ○目も耳も使うべし
  ○自分だけの見方をするべし
  ○心の目で見るべし



 俳句の言葉をいろいろ創造していく素敵な大浦小学校の子どもたちでした。友だちの考えをよく聴いて反応して「いいなあ」と思った俳句には、自分事のように、自然と拍手をしていく様子が微笑ましかったです。
 意見がいろいろ出たために一人ずつ俳句を作るまでにはいきませんでしたが、「今度は自分で発見のある俳句をつくりたい!」と意気込む子どもたちでした。
 作成・完成した作品は必ず竪畑先生のところに持っていきますので、よかったら、金沢文芸館まで送ってくださいね。お待ちしております。
 竪畑政行先生、大浦小学校の先生方、そして温かい子どもたち、ステキな出会いをありがとうございました。またお会いできるのを楽しみにしています。


      



〇9月18日(日)第1回 伝承文芸講座 ~金沢の昔話と伝説をたずねて~

「芋掘り藤五郎譚と金城霊沢」~加賀藩史家の記録と口承文芸~

講師:藤島 秀隆(金沢工業大学名誉教授)

 

 伝承文芸講座では、藩政時代に成立した古典文学の主要な作品を取り上げて学習します。作品を読解して人間像の把握につとめ、説話の伝承と展開および口承文芸との関わりを考究していく講座です。全3回講座で、次のような予定となります。

  ○第1回  9月18日(日)
        「芋掘り藤五郎譚(たん)と金城霊沢」~加賀藩史家の記録と口承文芸~
  ○第2回 10月23日(日)
        「金沢の飴買い幽霊譚をめぐって」~伝説の伝達者~
  ○第3回 11月27日(日)
        「長太貉譚(むじな)の伝承と展開をめぐって」
              ~『加賀藩史料』の記録と説教化~

 第1回『「芋掘り藤五郎譚と金城霊沢」~加賀藩史家の記録と口承文芸~』の講座を紹介いたします。藤島先生の著書から貴重な研究史料プリントを使用しての講座となりました。ほんの一部とはなりますが抜粋して紹介します。


 『芋掘り藤五郎譚(たん)と金城霊沢 ~加賀藩史家の記録と口承文芸~』
                      金沢工業大学名誉教授   藤島 秀隆
◆金沢の地名のおこり
 ・兼六園内の湧泉「金城霊沢」(きんじょうれいたく)は別名「金洗沢」(かねあらい
  さわ)と呼ばれ、往昔、芋掘り藤五郎が砂金を洗ったところとされる場所である。そ
  こから金沢の地名が起こったという。
芋掘り藤五郎譚(たん)の諸伝承について
 ・藩政時代から昭和初期に至るまで、執筆されたものは20種類が現存している。
「藤五物語」(金沢市立図書館加越能文庫蔵写本、作者未詳)から(一部紹介)
 ・ある年の大みそかの夜、黄・白・黒の三頭の小牛が藤五郎の家の軒下に現れた。翌朝
  見ると、金銀鉄の三つの兜だったので仏像を作らせて、これを本尊とする一寺を建立
  して伏見寺と名づけた。さらに小牛の来た山を三子牛山(みつこうじやま)と名づけ
  
 ・最後に藤五の節操を讃える四首の歌をもって結んでいる。はじめの一首が
  「むさぼらぬ心の土のたねよりぞ、こがねの花は咲ける」というものである。

 ・本話は昔話「炭焼き長者」「芋掘り長者」話が根底に流れていて、その上に寺院縁起
  が挿入されて伝説化して形成されたと考えられている。文学化された縁起が伏見寺や
  石浦山慈光院(長谷寺、現在の石浦神社の前身)等に確立された後は、代々の往僧の
  口伝として語られてきたといえるだろう。

 ・本話の主人公藤五郎は無欲で正直者。妻の持参して財宝や黄金は貧しい人々に分け与
  えた。物質優先主義を否定し、拝金主義を批判している。藤五郎の生き方は現世にお
  いても光彩を放っている。またその夫婦不随の生き方は賞賛に値する。

 ・寺町5丁目の伏見寺の本堂内には、藤五郎夫妻の木像(立像)が安置されている。境
  内には藤五郎の墓がある。さらに藤五郎が居住したという山科町には藤五郎神社(彼
  の石像がある)と鍬かけの松の跡がある。


 講座の一部の紹介しかできませんが、他、加賀藩士富田景周の『越登賀三州志』等の原文紹介もいただきました。いただいたのは貴重な資料ばかりで、どれも難解な資料なのに、大変わかりやすい藤島先生の解説のおかげで、口承文芸の面白さを存分に堪能することができました。
 藤島先生、そして定員いっぱいの受講生の皆さん、本当にありがとうございました。次回の参加も心よりお待ちしております。

 次回、第2回伝承文芸講座は、10月23日(日)です。有名な「金沢の飴買い幽霊譚」をめぐって藤島先生にお話いただきます。皆様のご参加を心よりお待ちしております。


      



〇9月17日(土)第5回 小説講座

小説を読む②~

講師:宮嶌 公夫(『イミタチオ』同人)

 

 第5回小説講座が開催されました。講師は、文学誌『イミタチオ』同人の 宮嶌 公夫(みやじま きみお)先生です。テーマは「小説を読む②」です。教材は『現代の小説2022 短篇ベストコレクション(日本文藝協会・編』です。
 講座の内容から一部紹介いたします。


1 小説の主要要素
  ・主題がはっきりしている
    → 問題解決型 目的達成型 関係変化型 心情変化型など
  ・構成がきっちりしている
    → ストーリーとそれを支える時間・空間・人物の枠組など
  ・描写がしっかりしている
    → 性格で的確な言葉遣い ぶれない語り手 

2 現代小説2022短篇ベストコレクションから2作品を選んでの講座です。

ミソサザイ(小池真理子)を読む
   宮嶌先生は、手作りの物語構成一覧表を提示されました。表の「横軸に登場人物名」
  「縦軸に出来事(時系列)」、表空欄に「登場人物の年齢」を記してあります。「縦軸
  の出来事」を時系列で追いながら、その「出来事」(縦軸)は「どんな人物」(横軸)
  が「いくつの時にあった」こと(表空欄)なのかが瞬時にわかる一覧表となっていま
  す。
   そして『物語構造のなで?』と題して、次の課題を受講生と共に考えていきました。
  課題の一部を紹介します。受講生からもいろいろな意見が出た講座となりました。

◆物語構造のなぜ?
 ①なぜ生年年齢が記されているのか?
  ・時間軸が読み取れることで違和感なく小説を読める。
  ・主人公 武夫(小6)と左知子(30歳)という、思春期の武夫と大人の女性という
   関係性が浮き彫りになる効果がある。
 ②なぜ姉が設定されているのか?(登場する機会がほとんどない)
  ・女だらけの中で、武夫が男一人で育っているという意識を強く読者に持たせるため
 ③なぜ左知子は発達障害として描かれているのか?
  ・物語を創る設定で必要となるため。武夫と左知子の、より密な関係性が見えるため
 ④なぜ雷がなるのか?
  ・武夫と左知子を結びつけるものであるため
 ⑤なぜ物語を時間軸どおりに進めないのか?
  ・本小説は『現在→過去→現在』である。本小説は過去と現実の往還となっている。
   回想を終えて何かが変わり、最初の現実と回想後の現実には違いが生まれる。
  ・本小説のような構成の進め方は次のメリットがある。
   ○読者がすべてを知った上で物語を語ることができる。
    武夫という人物に焦点化して語らせることができる。
   ○左知子への哀惜の念・追慕の念が増すという効果がある。
 ⑥なぜ最後が妻と娘の笑いの場面で終わるのか?
  ・「笑い」が回想を現実に戻す役割をしている。
  ・「誰も知らない」という安堵。笑いで回想が吹き飛ばされる。
  ・左知子さんとの対比がある。

 他、「オリーブの実ること」(中島京子)で、物語の構造についてミソサザイとの対比を詳しく提示しながら「物語の構造」を検証していきました。

 まとめとして、物語構造のために大切なポイントを提示いただきました。
  ○語り手は誰に寄り添い何を語らせるか
  ○時間軸をどうするか
  ○登場する人物に必然性はあるか
  ○物語の山場をどこにどう作るか
  ○物語の伏線をどう張るか … 等々
     → 最適解をどこに求めるかが作品世界の優劣を左右する


 本講座では、受講生が自主的にどんどん意見交換していくなど、意欲的な中で深まりあるものとなりました。作者は「物語の構造」を強く意識して作品を書いていることが具体的な事例をもとに認識されていきました。
 集中して高まりがあるゆえの講座の楽しさと小説づくりの奥深さを、受講生みんなが体感した時間となりました。
 宮嶌先生、そして受講生の皆さん、ありがとうございました。


 次回は10月15日(土)です。講師は、寺本 親平(てらもと しんぺい)先生(小説家)です。次回の講座は、小説の実作について②の講義となります。
 皆様のご参加をお待ちしています。


      



〇9月17日(土)第2回 川柳入門講座

~味わうポイント 川柳は奥深い! 作句のポイント・鑑賞のポイント

講師:小森 靖江(石川県川柳協会副会長)

 

 川柳入門講座第2回です。第2回講師は石川県川柳協会副会長 小森 靖江(こもり やすえ)先生です。テーマは「作句のポイント・鑑賞のポイント」です。まずは受講生が作成した川柳の鑑賞会が開かれました。そしてプリントを使って講座が進められました。講座から一部を紹介します。


◆初心者の心得十章から ※一部紹介します。
 ①報告句・説明句を避けよう「そうですか川柳は×」
  「日本で富士は一番高い山」(そうですか?)
  「川柳は頭の体操ぼけ防止」(そうですか?)
   ▲報告句・説明句
 ②推敲をしよう 何回も読もう
  「バスの旅そろそろ眠たい顔ばかり」   (▲中八)
  「ハンドルを握るとすぐにスピード出す」 (▲下六)
   ▲中八、下六にならないように
 ③言葉を詰め込みすぎないように
  ▲「米寿の日義母と有馬の宿へバス」→○「山の湯へ母の米寿を祝う旅」
 ④ひとりよがり・堅苦しい表現・持って回った表現はやめて、明晰な句をめざそう
  ・井上ひさし氏の言葉から
   「むずかしいことをやさしく、やさしいことをふかく、ふかいことをおもしろく、
    おもしろいことをまじめに、まじめなことをゆかいに、そしてゆかいなことを
    ゆかいに」
   井上氏は「文章は明晰に」と言われています。川柳に通じるふかい言葉です。
  ▲「ひらがなの小文字の中の愛拾う」(?)……意味が伝わらない
 ⑤品格を保ちましょう
  ▲「賞味期限まだまだ私は女です」→○「古希の春わたしまだまだ女です」
 ⑥慣用語、言葉だけで作った句はやめよう
  ▲「氷柱を刻む額に玉の汗」→○「氷柱を刻む額ににじむ汗」
  ・慣用句「玉の汗」が効果を半減。もっと言葉探しを。
 
 他、川柳は五・七・五のリズム、十七音で詠む定型詩であり、いいリズムを作る大切さを語っていただきました。字余り、字足らず、全体で十七音のリズム、上六・上七等のリズムについて学びました。
 また今回は、「嘘」「母」というお題で、受講生の皆さんにも句を作っていただきました。「初めてなのに素敵ですね」と先生からお褒めの言葉をいただきながらの講座となりました。プリントで受講生に紹介された川柳から一部紹介します。

◇「嘘」
  ・聞かなかった事にしておく嘘もある
  ・人を愛して大嘘つきになる予感
  ・子の呉れる小さな嘘に甘えよう
◇「母」
  ・小包のこの結び目は母のもの
  ・母がつくる巻ずしの具はあふれてた
  ・遠くから母だとわかる咳の音

□また、こんな言葉や川柳も紹介いただきました。
  ・川柳は喜怒哀楽を詠む  -心のことば-
  ・川柳はまさに一呼吸の詩 -十七音で吐く心のことばである-
  【喜】もう少しこうしていたい傘の中   田頭 良子
  【怒】手と足をもいだ丸太にしてかえし  鶴    彬
  【哀】母さんと叫んだ兵の墓なりし    片岡 湖風
  【楽】生きているだけで交響曲になる   田辺 進水


 小森先生におかれましては、いろいろな川柳を紹介いただく中で、川柳づくりの基本、作成の注意点等をわかりやすく講義していただきました。小森先生、そして受講生の皆さん、ありがとうございました。次回は最終回です。課題作品も作成してお持ちください。

 第3回は 10月15日(土)「川柳で社会とつながる」
                ~ミニ句会から柳社句会、そして大会へ です
 ※課題作品のお願い
   1 作品のお題 「笑う」「趣味」
        各自作品を1句から2句ほど、作成してください。
        それぞれのお題で作成しても、ひとつのお題で2句作成してもよいです。
   2 提出について
        次回の講座の際に、お配りする紙に記入していただきます。

 講師は 赤池 加久(あかいけ かきゅう)先生(石川県川柳協会会長)です。
 皆様のご参加を心よりお待ちしております。


      



〇9月14日(水)出前講座 富樫小学校2年

金沢の民話を聞こう

講師:神田 洋子(ストーリーテラー)

 

 今回は、藤五郎神社がある金沢市立富樫小学校にお伺いしました。
 2年生2クラスの児童が参加して、出前講座「民話を聞こう」が実施されました。講師はストーリーテラーの 神田 洋子(かんだ ひろこ)先生です。


◆主なプログラム  ※クラスの実態に合わせたお話をしてくださいました。
 「飴買いゆうれい」 …金沢では金石や森山に伝わるお話
 「芋ほり藤五郎」  …金沢の地名発祥として知られるお話
 「鳥呑み爺」    …爺のだんごを食べた鳥が爺に歌のお返しをしていくお話
 「にんじん・ごぼう・だいこん」
 「さわがにのお話」
 *手遊び唄、字書き唄など………いろいろ紹介いただきました


◆今日は、「にんじん・ごぼう・だいこん」のお話を紹介します。
 あるところに、おばあさんが住んでいました。ある日、おばあさんは野菜畑からにんじん
 ・ごぼう・だいこんを採ってきました。おばあさんが風呂を沸かしていると「わしらも風
 呂いれてくれー」と野菜たちは言います。おばあさんはびっくりして「誰が入るんか?」
 と野菜たちに聞くと、野菜たちはこう答えました。
 だいこん「おまえらが先に入れや」
 にんじん「おらが先に入るよ」
 お風呂に先に入って熱いのなんの。にんじんの体は真っ赤になってしまった。
 次にごぼうに「早く入れ」と言ってお風呂に入ったと。
 するとごぼうは、熱くて真っ黒になって風呂から出てきたと。
 そして最後にだいこんが入ったと。
 だいこんが入る時にゃ、ちょうどいい湯でゆっくりとできたと。
 そして真っ白になってお風呂から出てきたとさ。

 他、子どもたちはいくつかの絵描き唄も楽しみました。「す」の平仮名の覚え描き唄、「タコ入道」の絵描き唄など、昭和世代の人たちにとっては懐かしい唄ばかりでした。広告の裏紙に、短くて使えなくなった鉛筆で友達と一緒に書いていたものでした。時には、車通りのない道路で描いたりしては大人に叱られて磨いて消していたのも懐かしい思い出です。
 今回は、令和時代を生きる子どもたちに披露しているのですが、黒板に描かれた「タコ入道」を興味深く見ている子どもたちの姿に驚くばかりでした。


 富樫小学校下には彼の石像が祀られている藤五郎神社があります。芋ほり藤五郎が住んでいたと言われるところです。神社には、藤五郎の鍬かけの松があったところです。鍬かけの松はたくさんの人が根を掘り起こしたために、昭和37年に枯れてしまい、その松の木で作られたうすが今は歴史博物館に残されているとのことです。
 2年生のみなさんは、自分たちの地域と関係するお話という意識で、真剣に聞いてくれました。また富樫小では高学年になると総合的な学習等で、芋ほり藤五郎のお話を学び、研究していくとのおとでした。金沢工業大学名誉教授 藤島秀隆氏によりますと、金沢市の一番人気の民話が「芋掘り藤五郎」だとの調査結果があるとのことです。
 富樫小学校の子どもたちの笑顔は、まるで藤五郎のような温かさ、幸せいっぱいのものでした。素敵な富樫小学校の子どもたちの出会いに感謝いたします。
 神田先生、そして富樫小学校の2年生のみなさん、本日はありがとうございました。またお会いできるのを楽しみにしています。


      



〇9月11日(日)第5回 朗読会『青春の門 筑豊編』

信介と織江の大人への階段

朗読:髙輪 眞知子(朗読小屋 浅野川倶楽部代表)

 

 9月11日(日)第5回朗読会が、朗読小屋・浅野川倶楽部の代表 髙輪 眞知子(たかなわ まちこ)さんにより行われました。今回は「落日のまえに」からのお話です。
 髙輪 眞知子さんには、大人への階段を登っていく信介と織江の心のやりとりを、爽やかに朗読いただきました。

        *     *     *     *     *

 療養中のタエの病気が好転し、外泊の許可が出ます。そこで、竜五郎とタエ、二人だけの約束を知らされます。その約束とは、タエに、人前では竜五郎の女として振舞ってもらうことでした。その後、竜五郎は重蔵(信介の父)とタエをめぐって対決はしました。しかし、竜五郎自身は、いつも男気のある重蔵を認めていて、彼の最期の頼みを守って、タエと信介を引き受ける決心をします。そして今度は、本気でタエに惚れてしまっていることを伝えます。そんなタエと竜五郎の思いを聞きながら、受け止めていく信介でした。

 タエの病状はまたも悪い方向へ向かっていきました。母親のタエを残して東京の大学に進むことへの不安、世話になった金朱烈が強盗殺人犯として重い刑を宣告されたこと、母親タエが金さんに冷たい態度をとることへの不信感、梓先生や早竹先生への思いなど、いろいろな思いが交錯していくのでした。
 そして昔を懐かしく思った信介は、キャバレーに勤めている牧織江に会いに行きます。店を出た信介でしたが、自分のオートバイを盗まれてしまいます。帰ることができない信介は、織江と一緒に泊まることとなります。

 そして信介と織江は、じっと体を寄せ合い、結ばれます。しかし、二人とも、すべてを許し合って結ばれた男と女、という気持ちはしないのでした。ただ二匹の同種の動物のような親密感のなかで二人は黙って、ずっと向き合っていたのでした。
                            (「犯す男たち」まで)

        *     *     *     *     *

 今回の朗読は、信介と織江が結ばれる場面です。髙輪眞知子さんは、朗読を終えられた後、参加者の顔を見つめながらにっこりと「信介ってかわいいね」と言われます。瞬間、会場は柔らかな優しい空気に包まれました。そして、髙輪さんが最期に言われた言葉が「私たちみんな、信介の応援団ですから」というお言葉でした。髙輪さんの朗読には、いつも信介や織江を応援していく愛情が根底にあるのだと思うばかりでした。だからこそ、どんな場面の朗読にしても、根底に人への愛情の根がしっかりと息づいているのだと思いました。だからこそ、会場のみんなが笑顔で、爽やかで優しい空気に充ち溢れるのでしょう。
 髙輪眞知子さんの朗読には、人を「幸せの風」で包み込む豊かで大きな力があるように思えて仕方がありませんでした。
 髙輪さん、そして来てくださった皆様、本当にありがとうございました。


 次回は10月9日(月)で、「青春の門(筑豊編)」の朗読は最終回です。「人と別れるとき」「ひとりだけの夜明け」「十八歳の出発」の朗読予定です。ぜひ皆様方のご来館をお待ちしております。


      



〇9月10日(土)カナザワナイトミュージアム2022  『廓のおんな』井上雪 作  

~朗読と笛と三味線で楽しむ~

出演:玉井明日子(朗読)/藤舎眞衣(笛)/千本民枝(三味線)

 

 今宵のナイトミュージアムは、玉井 明日子さん(たまい あすこ)さん(朗読)、藤舎 眞衣(とうしゃ まい)さん(笛)、千本 民枝(ちもと たみえ)さん(三味線)による「朗読と笛と三味線で楽しむ 井上雪 作 廓のおんな」です。


◆出演者の紹介
 ○玉井明日子さん(朗読)
   昔話の語り手です。金沢の様々な民話を金沢弁で語る他、様々なアーティストと
   コラボしておられます。他、イラストレーターでもあり、近年では動画制作も手
   掛けられています。
 ○藤舎眞衣さん(笛)
   平成16年金沢市文化活動賞、平成18年北國芸能賞、平成28年石川県文化奨
   励賞を受賞されています。笛を中川善雄師に師事し、ご自身は、北國新聞文化セ
   ンター、金沢素囃子子ども塾の講師も勤め、後進の指導を積極的に行っておられ
   ます。
 ○千本民枝(三味線)
   祖父母の影響で8歳より三味線を始め、金沢市内で端唄・三味線の指導にあたら
   れています。端唄を千本扇民に、新内を富士松鶴千代に師事しています。平成2
   5年より『和LIVE』活動を各所で開催しておられます。


◆本日の演目「井上雪・作 廓のおんな」について
 7歳の時に百円という値段で廓の置屋に売られた少女、きぬ。明治、大正、昭和を生き抜き、ひがしの廓で名妓と呼ばれた彼女の生涯を描いたノンフィクション作品「廓のおんな」です。


◆朗読と笛と三味線で楽しむ 本日の会から
 本日のお話は、きぬの回想シーンから始まりました。能登での貧しい幼少時代。置屋の養女になり厳しい修行と奉公の日々。振袖芸者への憧れを抱く時。本小説には、きぬを取り巻く厳しい生活の変化と、それに伴うきぬの喜び・哀愁・悲しみといった心情の移ろいがあります。今宵、そんなきぬの移ろいを、朗読・笛・三味線での共演で表現していただきました。
 玉井明日子さんの朗読は、美しく心に染み入る金沢弁で耳に心地よく、主人公きぬの心の移ろいを、如実に表すものでした。透き通る玉井明日子さんの朗読は、刻々の情景を私たちの心の瞼に映し出していくものでした。
 藤舎眞衣さんの笛は、きぬの哀しき心情の時には、彼女を優しく包み込むような音色で変幻自在の音の揺れがきぬの心の揺れとして、私たちの心に届けられるようでした。そしてきぬの決意や運命的な場面転換では、笛の音が、稲妻を伴った雷鳴となり、暗黒の厚い雲を突き抜け、天空まで駆け上がる龍のような力強さで奏でられました。心打たれるばかりでした。(言葉では語り尽くせません)
 端唄・三味線の千本民枝さんは、三下りさわぎ、京の四季、潮来出島で、唄と三味線により演じていただきました。華やかな座敷風景、廓の町並みが灯りに浮かぶ風景など、千本民枝さんの三味線の音色と艶やかな唄で私たちの心は魅了されるばかりでした。今も心の中に唄と三味線の音色を鳴り響いています。
 朗読、笛、三味線が三位一体となって演じられた井上雪・作「廓のおんな」。総合芸術そのものでした。


 最後にアンケートから一部を紹介いたします。
 ・情景が目に浮かぶような素敵な朗読会でした。金沢の伝統芸能にふれられて良かっ
  たです。
 ・とても良かったです。日本の美を堪能いたしました。そのまま、美の壺になりそう
  だった。三人を見ているだけで三人は金沢の美でした。座る椅子も素敵です。
 ・朗読、笛、三味線が一体化してお話の中に惹き込まれました。情景が頭に浮かび、
  素敵なひと時を過ごさせていただきました。ありがとうございます。
 ・やはりライブは素晴らしい。金沢の文化を守っていってください。
 ・玉井さんの透き通る朗読と千本さんの三味線、藤舎さんの笛は、タイムスリップし
  たような感覚となり、心にしみ入りました。これだけの方々が勢ぞろいするステー
  ジは、忘れられないものになるでしょう。
 ・朗読は初体験でした。日頃、視覚(テレビ)が主な日常ですが、今回、聴覚をずい
  ぶん集中して聴き入り、情景が浮かび、とても感動できた。また、笛、三味線の響
  きも心よく、ステキで、とても充実した時間をもててよかったです。


 他、いただいた改善点、ご助言等も生かして歩んでまいります。玉井様、藤舎様、千本様、依田様(音響等)、そしてご来館いただいた皆様、本当にありがとうございました。心より感謝申し上げます。


      



〇9月10日(土)第3回 詩入門講座  

詩の実作①

講師:井崎外枝子(詩誌『笛』同人)/中野徹(詩誌『笛』同人)
   和田康一郎(金城大学非常勤講師)

 

 詩入門講座第3回の講師は、井崎 外枝子(いざき としこ)先生(詩誌『笛』同人)と 中野 徹(なかの とおる)先生(詩誌『笛』同人)です。
 第1回、第2回の和田康一郎先生は教えていただきた詩作の基本をもとに、これからは詩作に挑んでの講座です。
 次の題の詩が提出されました。

  「空をみあげて」  「長月の夜」    「自然育ちの面構え」  「寒つばき」
  「炎天下のポスト」 「うてなのしずく」 「四つの感謝」     「顔」  「顔」

 もうすぐ「金沢創作工房の提出もあり、詩の詳細内容紹介は差し控えます。今回は、特別に詩の講座の講師を務められた和田先生にもご参加いただき、お二人の先生と共に、受講生一人一人にご助言をいただきました。ありがとうございます。
 次に、講座での先生方のご助言の一部を紹介します。

 ・形容詞での表現(悲しい、つらい、うれしい等)は禁じ手です。避けましょう。
 ・詩において題名に「 」づけはしません。
 ・題名で内容想起ができることが大切です。
  例「自然育ちの面構え」→「メロンの面構え」などにしていくと良いです。
 ・詩は自分の心の内面を表現していくことが大切です。
  詩の中に、急に「・・・の思いがした」といった表現を入れてしまうと客観的な
  言い方になってしまいます。
 ・イメージの違い過ぎる言葉の使い方に注意します。(吐き出した← →手渡した)
  この場合、同じ詩にある言葉なのにイメージが違い過ぎて違和感が生じます。
 ・聴覚、味覚、視覚、触覚、嗅覚等の表現が、バランスよく散りばめられているこ
  とが大切です。
 ・言葉に想いをのせて、そして言葉を吟味してから表現して詩を作っていきましょう。


 今回は、一作品ずつ、三人の先生からアドバイスをいただきた貴重な機会となりました。これからは詩の実作が続いていきます。いろいろな方からアドバイスをいただきながら、充実した会にしてまいりましょう。
 井崎外枝子先生、中野徹先生、和田康一郎先生、そして受講生のみなさん、ありがとうございます。


 次回は、10月8日(土)15時からで「詩の実作②」です。自由課題となります。
 それぞれ詩の実作の締め切りは次のとおりです。

 ○第2回  個別指導日10月 8日(土)
       ※作品締切日 9月28日(水)

 ○第3回  個別指導日11月12日(土)
       ※作品批評と推敲



 ※締切日は上のようになっています。締切までには提出をお願いします。


      



〇9月10日(土)第5回 小説入門講座  

描写力を養う ~課題小説による個別指導を中心に~

講師:高山敏(『北陸文学』主宰)/小網春美(『飢餓祭』同人)

 

 9月上旬、小説入門講座も第5回を迎えました。今回は「描写力を養う」です。今回は受講生の皆さんには短編小説を書いてきてもらいました。課題は「懐かしい風景」または「フリー課題」です。小説入門講座にて、小説を書いて合評会を開催するのは初めての試みです。講座の様子を紹介します。
 講師の先生は、『北陸文学』主宰の 高山 敏(たかやま さとし)先生と、『飢餓祭』同人の 小網 春美(こあみ はるみ)先生です。


○皆さんの作品から
 今回、小説を書けた人も、書けなかった人も参加して、2つのグループ(高山先生グループと小網先生グループ)に分かれての合評会を実施しました。集まった作品の題名は次のとおりです。9作品、集まりました。

 「Pocket Dream」    「神様からのメッセージ」  「懐かしい風景」(2作品)
 「あおいた」       「残像」          「『わたし』に還る場所」
 「(無題)」(2作品)

 今後、「金沢創作工房」の申し込みと関係する場合もあり、詳細内容の紹介はしませんが、受講生の皆さんの個性的で魅力的な作品ばかりでした。

 ・夫婦愛を自らの生活体験をもとにして描いた作品
 ・庶民の生活の中から、嗅覚の優れた表現により、様々な臭いが混ざり合う描写力を伴った
  描き方で話が展開する作品
 ・誰にでもある懐かしき思い出の品を題材にして描いた作品
 ・今と小さき時の人の対比を考え、読者を深い思索の時へと誘う作品
 ・旅先で、登場人物が父母への思い出を回想して、それを綴る作品
 ・自分の心を見つめて、「わたし」に還る場所を求め、新たな発見をしていく作品

等々、一人一人個性的な小説を紹介いただきました。高山先生、小網先生、そして受講生からの批評や感想を交換しながらの講義となりました。受講生一人一人の光る感性に魅了される講座となりました。

 小網先生は最後に受講生の皆さんにこう語られました。
 「私は今日、出されていた作品を拝見し、合評会で話される受講生の皆さんの言葉をお聴きしながら感心するばかりでした。また、私自身がハッと気付かされる事もありました。何より皆さんの作品、そして合評会での話から、皆さんの考えの深さと的確な言葉に感心させられました」
 受講生の皆さんのますますの成長が心から楽しみとなる一日となりました。高山先生、小網先生、そして受講生の皆さん、ありがとうございました。


 次回、第6回小説入門講座は、10月8日(土)10時30分からです。
講師は、 小西 護先生で『創作のこだわり』(構想から実践へ)です。

 なお、第7回講座11月12日(土)、第8回講座12月10日(土)とも、作品批評と推敲①、作品批評と推敲②となります。
 ぜひ次回、10月8日(土)小西先生の講義を受講され、作品作りに活用していただきたいと思っています。皆様の受講を心よりお待ちしております。


      





       高山敏先生








       小網春美先生

〇9月7日(水)出前講座 四十万小学校2年 

金沢の民話を聞こう

出演:神田 洋子(ストーリーテラー)

 

 今回は、白山市よりに位置する金沢市立四十万小学校にお伺いしました。
 2年生3クラスの児童が参加して、出前講座「民話を聞こう」が実施されました。講師はストーリーテラーの 神田 洋子(かんだ ひろこ)先生です。感染症への安全対策のため、3回に分けての学習をしました。


◆主なプログラム  ※クラスの実態に合わせて話を選んでくださいました。
  「飴買いゆうれい」  …金沢では金石や森山に伝わるお話
  「芋ほり藤五郎」   …金沢の地名発祥として知られるお話
  「なら梨とし」    …三人の仲のよい兄弟がなら梨取りにいくお話
  「鳥呑み爺」     …爺のだんごを食べた鳥が爺に歌のお返しをしていくお話
  *手遊び唄など     …いろいろな手遊び
      *      *      *      *      *      *

 今回は「鳥呑み爺」のお話を紹介します。
 爺さが山仕事に行き、持って行っただんごを食べようとします。すると前の木にいた、きれいな鳥がこう言います。
「じいじ じいじ だんごをくれえ」と。
 爺じは、だんごをやると、鳥はふちゃふちゃ食ってしまいます。するとまた、
「じいじ じいじ だんごをくれえ」といいます。
 爺じはお昼のだんごを全部鳥にやりました。もう紙しかないよと爺じは「ほらっ」と投げると、ふちゃふちゃ、それも鳥は食ってしまいました。
 そして、爺じが大あくびをすると、何を間違えたのか鳥は爺じの口の中めがけて飛んできて、ストンと腹の中へ落ちてしまいました。そのうち、爺じのへそから羽根がブルっと出てきました。爺じは鳥を腹から出してやろうとして力いっぱい引っ張ると、鳥がこう鳴きます。
「♬あや ちゅうちゅう こゆ ちゅうちゅう 錦(にしき) さばさば 五葉(ごよ)の盃(さかずき)、もってまいりましょう、ピピラ ピー♬」
 羽根を引っ張るたびに、こう鳥は唄います(鳥の歌♬)。そして、鳥は
「爺さ、これおめえ、ばかしにいい声の鳥だすけえ、おめえあの がいろばた行って あの日本一の歌うたい爺だいうて、金もうけさっせ」と言いました。(鳥の歌♬)
 それから殿様にもその歌を披露(鳥の歌♬)して、ほうびをたくさんもらいました。
 それで爺じ、今度はその羽根、引っ張っては、町中 歌って歩いた(鳥の歌♬)とのこと。
 それで、だいぶたってから、羽根をポツンと引っ張ったら、羽根がポロンともげてしまって、それっきり 鳴かないようになったと。
 いきがポーンとさけた。

      *      *      *      *      *      *

 神田先生が独特の調子で「鳥の歌」を歌うたびに、会場は楽しい雰囲気になっていき、笑い声も回数ごとに増えていきました。
 そして、話が終わった後、心配そうに、ある子が「鳥はどうなったのかな?」と言います。神田先生は、子どもたちに安心させる言葉を与えるのではなく、にっこりとうなずかれるようにして終えられました。子どもたちは、一人一人、心の中で様々なことを考えているのであろう不思議な空気に包まれました。「鳥はどうなったの?」と。
 これも民話の楽しさ、奥深さなのかと思いました。鳥の気持ちになって聞いていた子どもたちだからこそ、いろいろ想いが湧き出ているのだと感じました。四十万小の子どもたちの温かい姿いっぱいのお話会となりまし。

 また、一時間目のお話会で、なんと三本の「ろうそく」が並びました。その内訳は?

A トイレットペーパーロールをろうそくと見立て、芯の部分にティッシュをこよりのよう
  にして立てたろうそく(ロールは担任の先生が準備、芯は神田先生が作られました)

B 理科室の蒸発皿、ろうそく立て、実験用ろうそくを組み合わせたろうそく

C 神田先生の旦那様が学校に届けてくださったろうそく(七尾の高澤 和ろうそく)


A 「ろうそくを家に忘れてしまったの。みなさんごめんなさいね。」と謝る神田先生に、
  「ろうそくを作ろう」と促してアイデアを出した子どもたち。
  そして出来上がった世界に一つのトイレットペーパーロールろうそく

B 「ろうそくを忘れてしまって…」と言うのを聞かれて、理科室の材料で作成してくださった
  教頭先生の手作りろうそく

C 旦那様が運んでくださった神田先生愛用の燭台と和ろうそくのセット。
  美しい色どりで描かれた石川県の伝統工芸品である七尾市の高澤和ろうそく。


 「B・Cのろうそく」には最後、火がともされましたが、子どもたちの心には全てのろうそく「A・B・C」に火が灯されていたようです。「ごめんね。忘れてしまって」という神田先生の淋しい心に「A 優しきろうそく」の火を灯してくれた四十万小学校の子どもたちです。
 次に、理科室で一生懸命にろうそくの手配をしてくださった教頭先生。そして子どもたちのために懸命にろうそくを届けてくださった神田先生の旦那様。
 優しさの火の連鎖は、子どもたち発案のトイレットペーパーろうそくから始まりました。四十万小学校のみなさん、どうぞ、これからもこのろうそくの火のような優しさを大切にして、人の心を大切にして歩む人たちであり続けてください。
 四十万小学校の2年生のみなさん、先生方、本当にありがとうございました。そして、勧善懲悪として終わらない民話の持つ味わい深さを伝えてくださった神田先生、本当にありがとうございました。四十万小学校のみなさん、またお会いできる日を楽しみにしています。


      



〇8月29日(月)出前講座 玄門寺幼稚園 年長児 

おはなしの会を楽しもう

講師:中村順子(金沢おはなしの会)/松本文恵(金沢おはなしの会)

 

 東山・卯辰山寺院群にある玄門寺幼稚園を訪問しました。浄土宗の本寺には、金沢4大仏として有名な「阿弥陀如来像」があります。おはなしの会の前に三人で浅井園長にご案内いただきました。大きな光背のついた、煌びやかな寄木造の1丈6尺の黄金に輝く大仏です。また、天井の龍図は円山応挙に学んだ仙台藩御用絵師の東東洋(あずまとうよう)により描かれた見事なものでした。自然と、おはなしの会の前に手を合わせていた私たちでした。
 そんな由緒あるお寺で学ぶ健やかな年長児50名です。今回は、感染症対策のため2組に分けて一人ずつの先生で実施しました。
 講師は金沢おはなしの会の 松本 文恵(まつもと ふみえ)さんと 中村 順子(なかむら じゅんこ)さんです。


◆プログラムA 【松本文恵さん】
 ①童謡  「ねこじゃらし」
 ②お話  「ふたりのあさごはん」 東京子ども図書館
 ③絵本  「ニャーンといったのは だーれ」 ステーエフ 文・絵/西郷竹彦 訳
 ④手遊び 「やなぎの下には」
 ⑤お話  「なら梨とり」     東京子ども図書館


◆プログラムB 【中村順子さん】
 ①お話  「ふたりのあさごはん」 東京子ども図書館
 ②絵本  「やさいのおなか」   きうちかつ 作・絵  福音館書店
 ③絵本  「スイミー」
 ④童謡  「こまんかこまんか」
 ⑤お話  「若返りの水」         福音館書店
 ⑥お話  「北斗七星」 トルストイ 作  福音館書店


◆プログラムから一部紹介します。
◇わらべ歌「ねこじゃらし」
 ♪ねこじゃらし/ねこじゃらし/だれにじゃれつく/ねこじゃらし/
  となりのしまねこでてこんか/うちのどらねこでてこんか/
・先生の歌声に合わせて園児もどんどん歌えるようになっていきました。笑顔満開です。

◇ペープサート「ふたりのあさごはん
・右手にねこの「みけや」、左手に男の子「けんいち」のペープサートを持ちながらの紙芝
 居劇です。けんいちの朝ごはんメニューは毎日変わるのに、ねこのみけやは、毎朝「おか
 かご飯」です。ペープサートで繰り返していくごとに、子どもたちの笑い声が大きくなっ
 ていきます。最後、けんいちはみけやからおかかご飯を半分もらいます。子どもたちの豊
 かな笑いが雪だるまのように増えていった不思議な魅力あるお話でした。

◇絵本「やさいのおなか」きうちかつ 作・絵 福音館書店
・みんな知っている野菜。でも切った断面(おなか)は見慣れない不思議な形ばかりです。
 「野菜のおなかの素敵な形」が次々に登場していきます。そのたびに、子どもたちの驚
 きの声があがります。料理をしている家族の手元を興味を持って覗き込む子どもたちに
 なっていくのでしょうね。新たな世界を発見していく感性豊かな子どもたちでした。

◇絵本「ニャーンといったのはだーれ」ステーエフ 文・絵/西郷竹彦 訳
・ロシアの作家のお話です。子犬の「ころ」が、初めて聞いた「ニャーン」と鳴く生き物の
 正体を探って走り回るお話です。「ころ」はおんどり、ねずみ、かえるなどに会って鳴き
 声を確かめていきます。ワクワク、ドキドキ、子どもたちも一緒になって「ころ」を応援
 していきます。手に汗握る子どもたちの姿が素敵でした。

◇お話「北斗七星」 トルストイ 作 福音館書店
・ロシアの作家のお話です。病気で寝込んだ母の「水を飲みたい」という願いを叶えるため
 に娘は水探しに出かけます。寝込んでしまい、眼を覚ました目の前に、きれいな水が入っ
 たひしゃくが置いてあります。娘は、困っているイヌ、母親、知らないおじいさんに水を
 与えて、ついに自分の水はなくなってしまいます。でもその後なんと…。
・優しく温かいお話です。子どもたちの顔を見ていると、初秋の爽やかな風が子どもたちの
 頬を撫でているようにも感じました。輝く水と頬がそこにはありました。


 金沢おはなしの会 松本文恵さん、中村順子さんのお話に魅了される園児の姿がありました。集中力があり、登場人物の背中をそっと押して応援していく優しい子どもたちでした。中村さんと共に
「私たちが玄門寺の子どもたちから元気をもらいましたね」
「あの阿弥陀如来様を毎日見ていてあんな優しい子どもたちに育つのかもしれないね」
と、感心しきりの帰路となりました。
 今回、ロシアの作家トルストイのお話もありましたが、トルストイは「人生論」の中で次のように語っています。
○「植物の幸福が光にあるのと同じように、そういう人の幸福は愛にある。だから植物が、
  どっちの方に伸びるべきかだの、光はいいものだろうかだの、もっとよい別の光を待つ
  べきではなかろうかだのと訊ねることなく(訊ねるはずもないが)、世界にある唯一の
  光を選んで、ぐんぐんその方に伸びてゆくのと同じように、自分に可能な、自分の前に
  ある愛に、自分自身を、自己の生存を捧げるのである。このような愛だけが、人間の理
  性的な本性に完全な満足を与えるのである」

 また、今年の広島原爆の日で、松井市長はトルストイの言葉を引用されています。
○「他人の不幸の上に自分の幸福を築いてはならない。他人の幸福の中にこそ、自分の幸福
  もあるのだ」

 童謡「北斗七星」で、娘は困った人たちにひしゃくの水を全て与えます。でもなくなった水の代わりに、娘が手にしたのは「水がこんこんと湧き出るひしゃく」でした。
 トルストイの子ども向けの童話「北斗七星」と大人向けのお話「人生論」です。それぞれ読者の土俵は違いますが、深いところで「根」がつながり合うのを感じました。優しい眼差しでおはなしを聞く子どもたちがいました。トルストイのおはなしの持つ「深い豊かな根」を感じている子どもたちの眼差しを貴いと感じました。

 金沢おはなしの会の皆様、玄門寺幼稚園の園長先生、先生方、そして園児の皆さん、保護者の皆様、素敵な出会いをありがとうございました。
 今後も玄門寺幼稚園の子どもたちの健やかな成長を心から願っています。


      





       松本文恵さん








       中村順子さん

〇8月20日(土)カナザワナイトミュージアム2022 朗読会『夏の夜の物語』 

~明治・大正・昭和に生きた危ない女達~

出演:朗読小屋 浅野川倶楽部  櫻井美代子/五十川千枝子/」山口範子

 

 今宵のナイトミュージアムは「朗読小屋 浅野川倶楽部」の皆様による朗読会です。「明治・大正・昭和に生きた危ない女達」のテーマで次の先品を朗読いただきました。
 ・谷崎潤一郎 作 「刺青」  …朗読 櫻井美代子
 ・志賀直哉 作  「転生」  …朗読 五十川千枝子
 ・五木寛之 作  「内灘夫人」…朗読 山口範子
 話の内容と当日の様子を紹介します。


○『刺青』 谷崎潤一郎 作  朗読:櫻井美代子
 「刺青」は谷崎潤一郎24才の時の出世作です。谷崎は本作品の後、痴人の愛、春琴抄、卍、鍵、細雪と、危ない女を描き続けていきます。刺青は、本日の朗読会「危ない女達」のオープニングを飾るのにふさわしい作品です。
 「刺青」の話を紹介します。ある天才的な彫青師が、ある娘の足の見事さに惚れて、悪女になる素質をその足に見出します。再び、その足をもつ女と出会った彫青師。彼は、彼女の背中に女郎蜘蛛の刺青を彫り付けていきます。そして変貌を遂げていく女性がいました。女の心の底に眠っていた悪女の魂が頭を持ち上げていきます。最初の犠牲者が、彫青師自身となります。櫻井美代子さんの朗読は、男を踏みつけ、破滅させていく妖婦の誕生を、怖いぐらいの迫力と妖気で演じてくださいました。櫻井美代子さんの熟練の技に魅了されるばかりでした。

○『転生』 志賀直哉 作  朗読:五十川千枝子
 志賀直哉は白樺派の小説家で、「暗夜行路」「和解」「小僧の神様」「城の崎にて」が有名です。本公演の「転生」は志賀直哉41才、1924年に刊行された作品です。
 「転生」の紹介をします。ある夫婦での現世でのやり取り。夫は細君を「馬鹿」よばわりし続け、反対に妻はそんな夫を「利口」呼ばわりしていきます。夫は「転生」で鴛鳥(おしどり)に転生することを妻に約束させます。そして夫の死、間をおいて妻が死を迎えます。いよいよ転生の時、どんでん返しが起こります。しつこい夫の言動のため、妻は危ない女に変貌してしまいます。志賀直哉独特の夫婦間のユーモアあふれる表現、話の展開の見事さが光る作品です。五十川千枝子さんの朗読は、最初の入りから最終場面までが自然な大河の流れの中で、変幻自在に変容していく夫婦の感情が見事に描かれて、夫婦の悲哀さを見事に表現していくものでした。崇高な朗読に魅了されるばかりでした。

○『内灘夫人』抄 五木寛之 作  朗読:山口範子
 1969年に刊行された五木寛之の長編小説です。2年前には五木氏が「蒼ざめた馬を見よ」で直木賞を受賞しています。「内灘夫人」は小説家としての地位を確立した時期の作品です。
 本小説は長編小説ですので、朗読は最終「孤独なる出発」場面となります。まずは内灘夫人」の簡単なあらすじを紹介します。
 1969年頃、ベトナム戦争反対闘争、学生運動に携わる学生活動家「森田克己」と学生活動家で恋人である「西城杏子」が出会います。そしてさかのぼること16年前、1953年頃、金沢市内灘闘争時に「沢木良平」と、後に妻になる「露子」が出会います。
 そして1969年、ベトナム戦争時に、世代の違う「森田克己」と「沢木露子」が出会い、繰り広げられる話です。克己と露子との愛、沢木良平と露子の心の乖離、克己と杏子との心の乖離、杏子の死、克己の凶行などが、複雑に絡み合いながら話は展開していきます。財産、杏子、森田克己ら、全てを失った露子が、沢木良平と愛を育んだ金沢の地で夫 良平そして過去と離別すべく、再び金沢を訪れたところから朗読は始まります。

 山口範子さんの朗読は、30分間に渡る長丁場です。山口さんの朗読のもと、露子が体験した全ての出来事が、内灘の地において露子の心の中で回想されていきます。そして、山口さんの朗読が進むうちに、いつの間にか露子の心の移ろいが走馬灯のように、私たち自身の心のスクリーンに映し出されていくように感じました。
 最後「さようなら、私の内灘。私の青春」と立ち尽くして過去と決別する場面の朗読では、五木寛之氏の作品を堪能し尽くしたと感じ入る私たちがいました。最終場面(抄)という難しい場面での、山口さんの見事な朗読に魅了され続けた30分間でした。


 浅野川倶楽部の櫻井美代子さん、五十川千枝子さん、山口範子さんの三者三様の巧みな朗読に魅了されたのはもちろん、場面に応じた音楽選曲、音響効果、照明効果等、表川さんの演出効果も素晴らしく、まさにこれこそ総合芸術と言えるものでした。

 最後に一部ではありますが、アンケートから紹介いたします。
  ・三人の方々の朗読がとても上手で見入ってしまいました。とても情景が浮かび、すて
   きなひとときでした。また聞いてみたいです。ありがとうございました。
  ・朗読に聞きほれてしまいました。朗読会は初めてでした。とても良かった。
  ・作者三人三様の作品で、面白く引き込まれました。朗読も三人三様の語り口で最高に
   良かった。
  ・三人の方の熟練した話し方が上手でベテランの味が出ていた。
  ・演出も良かったです。
  ・初めてこのようなイベントに参加させてもらいましたが、大変楽しかったです。
  ・雰囲気のある場所で、知らなかった文学を知ることができて良かったです。
  ・とても素敵でした。また拝見したいです。


 他、いただいた改善点、ご助言等も活かして歩んでまいります。浅野川倶楽部の皆様方、そしてご来館いただいた皆様、本当にありがとうございました。心より感謝申し上げます。


      



〇8月20日(土)第4回 小説講座 ~小説を読む①~

小説 「劇場」 作 又吉直樹 から

講師: 皆川 有子(『櫻坂』同人)

 

 第4回小説講座が開催されました。講師は文学誌『櫻坂』同人 皆川 有子(みながわ ゆうこ)先生です。テーマ「小説を読む①」です。
 受講生一人一人が「劇場」又吉直樹・著(新潮文庫)の文庫本をテキストにして講座が開講されました。又吉直樹氏は、作品「火花」で芥川賞を受賞しています。
 講座の一部を紹介します。作品引用部は、すべて又吉直樹氏「劇場」からです。


◆小説を読む① 素敵な表現を読み込んで(小説「劇場」又吉直樹をテキストとして)

○主人公の鬱屈した内面の描き方の巧みさ
・まぶたは薄い皮膚でしかないはずなのに、風景が透けて見えたことはまだない。もう少しで
 見えそうだと思ったりもするけど、眼を閉じた状態で見えているのはまぶたの、裏側の皮膚
 にすぎない。あきらめて、まぶたをあげると、あたりまえのことだけれど、風景が見える。
  …小説の最初の出だし
・自分よりも駄目な人を見かけると、この程度の状況で憂鬱になっていることが、みっともな
 いように思えてしまう。「そういう自分に酔ってるんでしょ?」と本気で言ってきた女を、
 携帯の電話帳に「得意げなタコ」の名で登録しなおした。
  ⇒鮮烈な描写である。「こんなことを考えているのか」と思わせる出だしである。
  ⇒「なんてめんどくさい人なの」と思わせてしまうほどの表現である。

○光る会話の妙
・「靴、同じやな」
 その人は僕の汚れたコンバースのオールスターを見た。
 そして、「違いますよ」と言った。
 「同じやで」
 同じであって欲しかった。
 僕はもう一度「同じやで」と、さきほどよりも優しく繰り返してみたけれど状況は変わら
 なかった。
  ⇒会話文のセンスが光る。他、川端康成の雪国の冒頭部分を読みながら日本語としての
   美しさ、言葉の巧みさについてお話があった。

○会話文の工夫① 二人の関係性を読み手に伝える巧みさ
・「なんかいいことあったの?」
 沙希は少し冷めたたこ焼きを口のなかで移動させながら、僕に聞いた。
 「なんで?」
 「だって、永くんがお土産で、たこ焼きを買ってきてくれる時はだいたいそうでしょ?」
 今まで意識したことはなかったけれど、もしかしたらそうなのかもしれない。
 「いや、店の前を通ったから買っただけやで」
 沙希がたこ焼きのパックを僕に差し出したので、ソースが掛かり過ぎていない端の一つに
 楊枝を刺し、丸ごと口に入れると程良い重さが舌と顎で感じられた。
  ⇒何気ない会話文に二人の特異な関係性が垣間見える。

○会話文の工夫② 自分の主張を表現する巧みさ
・「お前の鈍感さで誰かの人生を汚すな。お前は自分の大切な人生と、それに共感する人達
 と、その感覚を健やかに育てればいい。多くがお前と同じ考え方をもって幸せに暮らせて
 いるなら俺も祝福する。でも、今はまだ違うやろ?いろんな価値観が混在してるやろ?振
 り回すな馬鹿。勝手に広い大地に攻め込んでいった「キミらの信じてる神様はタコだよ。
 我々の神様を信じなさい」とか言うてる暴力的な輩よ同じように見えんねん」
  ⇒スピード感を持って自分の主張を相手に畳みかけていく。その巧みな話術とスピード
   感、そして自分の主張を正当化していく言葉。「面倒くさい人間」と思えるぐらいの
   会話文の表現力の巧みさが光っている。

○会話文の工夫③ シナリオのセリフを使いながら本音を吐露する巧みさ
※沙希と一緒にやった舞台の脚本を一緒に読み合わせていく場面。内容を抜粋します。
 「それにしても、キミには本当に迷惑をかけた」
 「ん?永くんそんなセリフ書いてないよ」
 「迷惑ばっかりかけた」
 「どこだ?そんなセリフないぞ」
 沙希は少しふざけた口調で言う。
  …略…
 「沙希ちゃんは実家に帰る。そこで働きながら元気になる。今も元気やけれどもっとって
 ことな。ほんで俺は演劇を続けて、飛躍的な成長をとげてな、アホみたいな言葉やけど認
 められるかもしれへん。
  …略(2ページにわたり、主人公は沙希に自分の想いを吐露し続けます)…
 還暦を迎えたら、何色かわからんような茶碗を買って、ちょうどよい温度のお茶を淹れて
 飲もう」
  ⇒昔、書いた脚本のセリフを使いながら、不器用な主人公が、沙希への想いを吐露して
   いきます。もはや、沙希は合間に「ごめんね」と繰り返すことしかできない状況とな
   ります。そして沙希の嗚咽の響き。それでも変な猿のお面を自分の顔にかぶせて「ば
   あああああ」と何度も沙希に言い続ける主人公。しつこく何度も繰り返します。
   最後に又吉直樹氏は「沙希は観念したように、ようやく泣きながら笑った」と書いて、
   執筆しているペンを置きます。
  ⇒不器用であり続ける主人公。精一杯の愛情を沙希に吐露し続ける心情が痛いぐらいに
   描かれています。脚本のセリフという演出設定の巧みさが光るものとなっています。


 皆川 有子先生の講座は、又吉直樹氏の小説「劇場」に対する受講生のいろいろな思い、考え、疑問を受け止めながら進行されていくものでした。受講生は、又吉直樹氏の文章の巧みさ、技の凄さに感心しながら、今後の小説作りを再考していく時となりました。本講座は、受講生の皆さんへの小説作りへの大きさ示唆となりました。


 次回、第5回小説講座「小説を読む②」は、9月17日(土)です。講師は、 宮嶌 公夫(みやじま きみお)先生(『イミタチオ』同人)です。次の本について学びを深めていく予定です。
 ※必ずしも本は準備いただく必要はないとのことですが、皆さんに紹介しておきます。
 「現代の小説2022短編ベストコレクション 日本文藝家協会・編」
 小学館

 皆様のご参加をお待ちしております。


      



〇8月20日(土)第1回 川柳入門講座 

~川柳は楽しい!~

講師: 浜木 文代(石川県川柳協会副会長)

 

 川柳入門講座がスタートしました。第1回目講師は、石川県川柳協会副会長 浜木 文代(はまき ふみよ)先生です。テーマは「短歌・俳句との共通点・相違点について」です。
 今年度、浜木先生はじめ次の先生が講座を担当します。
  ・小森 靖江(こもり やすえ)先生(石川県川柳協会副会長)
  ・赤池 加久(あかいけ かきゅう)先生(石川県川柳協会会長)
 以上、3名の先生方で、「川柳のポイント・鑑賞のポイント」「ミニ句会から柳社句会、そして大会へ」をテーマに講座を進めていきます。

 第1回目浜木先生の川柳入門講座は、資料を使い、受講生と講師の先生が双方にやり取りをしながら進められました。スタートにふさわしい、笑顔あふれる充実した講座となりました。概要を紹介いたします。


◆短歌・俳句との共通点・相違点にふれて
  1 川柳とは…短詩型文芸である。音数律による定型を持つ韻文である。
  2 川柳の源流は和歌である。
  3 俳句と川柳の相違点

    ○俳句
      ・文語体
        ・季語あり   ・切れ字あり   ・自然が対象
    ●川柳
      ・口語体
      ・季語はない
      ・切れ字はない
      ・人間や人間社会が対象
    ※ただ、季語、切れ字が入っても、それは川柳です。
     川柳は裾野の広いものですとの話がありました。

  4 川柳は楽しい文芸
    ◇川柳の三要素(基本)
      ①穿ち   掘る、えぐる、などの人情の機微をうまく言い表す
      ②滑稽   ユーモアであり自然に湧き出る笑い
      ③軽み   当たり前の平凡な中にいいなあと思わせるもの

  ★川柳にみる人間模様
    (時事川柳)
     ○マトリョーシカいまだ平和がでてこない
    (サラリーマン川柳)
     ○娘来て「誰もいないの?」オレいるよ
    (シルバー川柳)
     ○振り返り犬が気遣う散歩道
    (遺言川柳)
     ○相続の説明会で嫁と会う
    (ジュニア川柳)
     ○ゆめ見てるぶたいの上でミュージカル(小4)
    (番傘川柳、現代川柳)
     ○疲れたと言わぬお日様お月様
     ○敗戦を待っていたのは花の種


 他にも、虫くい川柳で受講生で言葉を入れて紹介し合ったりと、大変に充実した講座となりました。浜木先生が本講座で次のように話された言葉は、心に沁みるものでした。

 ・川柳は楽しい文芸。哀しみに終わらず力強く立ち上がるものこそが川柳なのだ。
「悲しい、寂しいに終わらずに、悲しみの中に人が困難に立ち上がっていく力強さ、独特のユニークさの中に息づく、前に向かう力強さが川柳にはある」とお話いただきました。
 川柳の奥深さ、力強さ、魅力を講座から学ばせていただきました。浜木文代先生、受講生の皆様、本当にありがとうございました。


 第2回は9月17日(土)「作句のポイント・鑑賞のポイント」
 講師は小森 靖江(こもり やすえ)先生 (石川県川柳協会副会長)です。
 もしも宿題等が出るような場合は、お一人お一人に連絡をいたします。その際は取り組みの方、よろしくお願いいたします。皆様の参加を心よりお待ちしています。


      



〇8月18日(木)夏休み子ども博物館セミナー 

のまりんの紙芝居劇場

演じ手: 野間 成之 のまりん:(のまひょうしぎの会代表)

 

 大人も子どもも楽しんでいただける紙芝居、それがのまりんの紙芝居劇場です。
 本日の演目は次のとおりでした。
  ・おまんじゅうのすきなとのさま
  ・動物園
  ・おすしのあいちゃん どーこだ
  ・かわいそうなぞう
  ・まんまるまんまたんたかたん


 拍子木で始まった「紙芝居劇場」。拍子木とみんなの手拍子が息ぴったりです。
「ようこそここへ♪クック…私はのまりんだ」(桜田淳子「私の青い鳥」替え歌)
 なんと49年前の歌(桜田淳子)です。耳慣れない歌なのに歌い出しだけでみんな笑顔いっぱい「のまりんの世界」に誘われていました。

 簡単に「内容」と「のまりんの紙芝居の様子」を紹介します。


◆おまんじゅうのすきなとのさま
 昔むかしあるところに、おまんじゅうの大好きな殿様がいました。殿様は、町中のおまんじゅうを取り寄せて食べていましたが、普通のおまんじゅうにあきてしまい、食べたことがないほど大きなまんじゅうを作らせることにしました。困ったおまんじゅう屋がやったことは…。
 ※大きいまんじゅうの上に乗ったお殿様…。みんなハラハラドキドキの時となりました。

◆動物園
 仕事は昼食・昼寝付きでお金も当たる。そんな男がとびついたのが移動動物園でした。なんと目玉展示の虎が死んでしまったため、男は虎の毛皮をかぶって檻に入って虎になりますが、虎はいろいろな問題を起こします。パンを食べたり、お話したりと。そしていよいよアナウンスが「虎とライオンの猛獣ショー」の開催を告げました。
 ※着ぐるみの虎が問題を起こすたびに、笑い声が響きます。猛獣ショーの時には、もう最高
  潮です。手に汗を握る紙芝居でした。

◆おすしのあいちゃん どーこだ
 いろいろなお寿司の中にかくれんぼしているあいちゃんを、紙芝居の登場人物と一緒にさがしていく物語です。
 ※あいちゃんを探すのに真剣な子どもたちです。かっぱ巻の中からころりと出てきた
  あいちゃん。みんな楽しくて笑顔になりっぱなしです。

◆かわいそうなぞう
 太平洋戦争の末期、東京の町は空襲を受けます。もし上野動物園が空襲されて、象が暴れてしまったら…。ジョン、トンキー、ワイリーの三頭の象の運命を描いたお話です。三頭の象はどうなっていったのでしょうか。実話をもとに作られたお話です。
 ※みんな、しーんと静かに聞いています。最後に静かな拍手。心に沁みるようでした。

◆まんまるまんまたんたかたん
 忍者修行中のまんまるは、隣町のおじいちゃん忍者のところまで頼まれた手紙を届けに行きます。すると途中に、なんと大きなへびが…。紙芝居を聞いているみんなが、忍者まんまると協力して一緒に問題を解決していきます。無事に手紙を届けることが出来るでしょうか?
 ※みんなしっかりとノリノリで手拍子してくれました。忍者まんまると心ひとつになった
  時でした。


◇野間成之(しげゆき)さんとお話させていただき、「今起きている戦争」と小川未明の「野ばら」は同じ話だねと話をしました。野間さんは小川未明「野ばら」を紙芝居で紹介されておられるとのことです。
 小川未明は明治15年、新潟県上越市に生まれた童話作家です。「赤い蝋燭と人魚」はよく知られています。「野ばら」は、国境を定めた石碑を守る「大きな国の老兵士」と「小さな国の青年兵士」の物語です。国境に咲く一株の野ばら、集うみつばち、唄うひばり、良い香りの白いばら、仲睦まじく将棋に興じる二人の兵士。
 ある時、二つの国は戦争を始めます。仲睦まじく暮らしていた二人の兵士が自ら歩んだ道と待ち受ける運命。そして二人の結末。
 戦争が始まる中で、お互いがかけ合う言葉、老兵士が見た夢、夢の中での青年兵士の行動、そして枯れた野ばら。今、読んでも胸を締め付けられる童話だと思いました。
 公演の「かわいそうなぞう」の静かなるときと拍手。最後に「心に残った作品は?」の問いかけに、「かわいそうなぞう」にたくさんの子が手をあげていました。小さな子どもたちの自然な反応です。のまりんの紙芝居の持つ、広くて深い意味を今一度かみしめるばかりでした。野間成之さん、皆様、本当にありがとうございました。

      



〇8月7日(土)第4回 朗読会 『青春の門 筑豊編』 

高校入学、そして大人の階段を登っていく信介

朗読: 髙輪 眞知子(朗読小屋 浅野川倶楽部代表)

 

 8月7日(日)第4回朗読会が、朗読小屋・浅野川倶楽部の代表 高輪 眞知子(たかなわまちこ)さんにより行われました。今回は「春の病葉」(わくらぱ)からのお話です。
 高校生となった信介。病床の母親、東京の梓先生、そして長太らとの関りの中で、大人の階段を一歩ずつ上っていく信介がいました。高輪眞知子さんには、悩みながら揺れ動く信介の心の陰影を、私たちの心に投影いただくような朗読をいただきました。

 それでは話の内容を紹介いたします。


     *      *      *      *      *      *      *


 信介は高校に入学します。病院から出た塙竜五郎、いまだ病床中のタエは大変喜びます。タエと竜五郎、二人の人間が、自分にさまざまな期待を抱いてくれていることは信介にとって、強い張り合いを感じさせたのでした。
 竜五郎は、高校三年間のうちに体を張って命がけでやる気になるものをみつけることが大事だと信介に語ります。
 そんな中、長太から「塙組の後継者は信介だ。」と聞かされます。長太の目の中に、今まで見たことのない暗い翳を見る信介でした。

 同じ日、東京へ去った梓先生から、手紙と小包が届きます。梓先生からは、つつましい、良い演奏家になる道を目指して懸命に歩んでいるとの連絡がきます。そして信介へ励ましの手紙と腕時計をプレゼントします。その晩、もらった腕時計をはめた手首を、胸のあたりに抱え込むように眠り込む信介でした。

 高校生になった信介。信介はいろいろな部から勧誘を受けたのですが、どの部にも加入しませんでした。授業を終えると家へ帰り、若い衆と一緒にトラックの上乗りをしたり、事務所で帳面をつけたりして、手伝いをするのでした。
 そんな中、塙組の春男と長太兄との間で、松原楼のエリカを巡り、いさかいが起きます。
長太は、
「男はいつも女のことで苦しむんだ。人を殺したり、金をつかいこんだ、いろんなことが女のためにおこる。女には惚れるんじゃない。信介、このことを忘れるなよ」
と、信介に語るのでした。 

                            (「女を売る町」まで)



    *      *      *      *      *      *      *


  第5回朗読会は、9月11日()です。「落日のまえに」からの朗読となります。
 ぜひ、ご参集ください。皆様のご参加をお待ちしています。


      



〇8月6日(土)第2回 詩入門講座 

詩を読み、学び、書こう

講師: 和田 康一郎(金城大学講師、『イミタチオ』同人)

 

 詩入門講座第2会の講師の方は、1回目と同じで金城大学講師の 和田 康一郎(わだ こういちろう)先生です。和田先生には、今回も優れた作品を読み、詩の魅力を知り、詩作の基本を教えていただきました。いろいろな作品の詩を紹介いただきながらの講義でした。
 和田先生の講座内容で紹介されたのは次の詩です。


 ☆観想(抑制と調節。寸鉄化。余白重視。)
   ・「自分の感受性ぐらい」 茨木のり子
 ☆五段構成 
   ・「帰途」        田村隆一
    ※第一連…述懐
     第二連…無関係でいられたのに
     第三連…「あなた」は涙を流し、「きみ」は沈黙により痛苦を表している
     第四連…言葉の世界よりもとびっきりすぐれたものが世の中に実在。
     第五連…でも自分は人間の世界・言葉の世界に帰ってくる。
 ☆構成美の三要素[調和(ハーモニー)
   ・「シジミ」       石垣りん
 ☆対称(コントラスト)
   ・「家庭」        天野忠
 ☆多様性(バラエティ)通常思いつかないようなイメージの使用
   ・「(ある日……)」    倉田比羽子
 ☆ソネット(十四行詩)形式
   ・「悲歌」        田中清光
 ☆散文詩
   ・「雪」         粕谷栄市


 一つ一つの詩を提示いただき、各詩が持つテクニック的な面からのアプローチについての解明をしていただきました。多様な詩の在り方を提示いただいた貴重な機会となりました。和田先生、ありがとうございました。

 最後に、井崎外枝子先生から、石川近代文学館での企画展「石川ゆかりの詩人たち」の案内がありました。室生犀星、中野重治、井上靖、広津里香はじめ、森山啓、永瀬清子、水芦光子、濱口國雄ら県ゆかりの詩人たちの著書、原稿・色紙など自筆資料も展示されるとのことです。川近代文学館にも足を運んでいただけたらと思います。

 

 3回目以降、実施の詩講座 実作の課題候補です。紹介します。

  ・顔    ・空    ・家族    ・仕事    ・光    食    その他

 
それぞれ詩の実作の締め切りは次のとおりです。

〇第1回  個別指導日 9月10日(土)
     ※作品締切日 8月31日(水)


〇第2回  個別指導日10月 8日(土)
     ※作品締切日 9月28日(水)

〇第3回  個別指導日11月12日(土)
     ※作品批評と推敲 

 受講生のみなさん、よろしくお願いします。

 次回、9月10日(土)の講師は、井崎利枝子(いざきとしこ)先生(詩誌「笛」同人)、中野徹(なかのとおる)先生(詩誌「笛」同人)です。井崎先生は第46回、中野先生は第49回泉鏡花記念市民文学賞を受賞されています。お二人の先生には、受講者の作品を批評、推敲いただきます。
 みなさまの参加をお待ちしています。


      



〇8月6日(土)第4回 小説入門講座 

推敲について

講師: 高山 敏(『北陸文学』主宰)

 

 8月上旬、小説入門講座も第4回を迎えました。今回は「推敲について」です。前回の講座で、小網先生から「自作小説は自分で百回読んだら百回直すところがあるものだ」とのお話がありました。本講座は、推敲についての具体的な学びとなりました。
 講師の先生は、『北陸文学』主宰の 高山 敏(たかやま さとし)先生の担当です。内容を抜粋し紹介します。


○各作家の推敲についての考え
◇高樹のぶ子
  ・どうしたら、今思っていること、感じていることが、より鮮明に正しく相手に受け取られるか、
   ひとりよがりになっていないかということを、いつも考えながら書いている。
◇阿刀田 高

  ・とにかく最後まで書き上げる。それから推敲する。書き直す。
   全体の輪郭が定まって初めて細部が決まる。
   また、結末が決まって、逆に書き出しが変わる。
   短編小説は、特にこういうケースが多い。

◇宮本 輝

  ・『泥の河』は、文章の欠点や構成上の欠点を指摘され、「いい作品だ」と言われる

   まで7回書き直した。
◇太宰 治
  ・文章の中の、ここの箇所は切り捨てたらよいものか、それともこのままの方がよい
   ものか、途方にくれた場合には、必ずその箇所を切り捨てなければいけない。
   いわんや その箇所に何か書き加えるなど、もってのほかというべきであろう。

◇ドストエフスキー

  ・書き上げるために、隣に住むばあさんに見せて、ここがよくわからないと言われる
   と書き直した。


 高山先生には、他、いろいろな作家の「推敲」への考えを教えていただきました。名だたる作家も推敲の限りを尽くして作品が出来上がっていることを学びました。また、他にも、推敲の14ポイントを具体例と共に学びました。一部を紹介します。

①常套語、決まり文句の使用を控える。
  ・工夫した自分の言葉で
  △決まり文句、ありふれた表現
②力みすぎの文章になっていないか。できるだけ削る。
  △うまい文、美辞麗句、修飾する言葉での気取り、格好いい文、劇的表現、飾る言葉
  ・不幸な人物に読書の同情を引こうというなら、できるだけそっけなく、冷酷に突き放し
   て書くがいい。(チェーホフ)
③句読点に気を配る。読み違いを防ぐ。

  ・作者の息づかい、心のリズム
  △句読点の打ち方で意味が変わってしまう。
④擬音や符号は適切に使う。
  ・できるだけ文字を使っての表現に努める。

  △「・・・・」 ? ! ( ) ドドドドドッという大きな羽音 等

⑤接続語を多用していないか。

  △……。そして……。そして………そして………。

⑥同じ言葉、同じ言い回しが多くないか。

  ・文末を同じような言い方で繰り返すのではなく、語尾変化を持たせる。
  △…だった。…した。…していた。…だ。…である。などの一本調子
⑦不要な箇所はないか。

  △テーマの結びつかない箇所、書きすぎている⇒削ぎ落すべし

⑧ねじれ文に気を付ける。

  ・主語と述語は正確に対応すること。
⑨文章の贅肉を削ぎ落とすこと。

⑩誤字・脱字はあってはならない。

 

◆次回9月10(土)小説入門講座には、課題(宿題)が出ています。
受講生のみなさん、課題(宿題)は次のようになります。よろしくお願いします。


〇小説入門講座 課題(宿題)について

【実践編】

 1 次回のテーマ

  ・描写力を養う
   (課題による小説(600字から1000字程度)による個別指導を中心に)
 2 講師 
  ・高山 敏  先生(「北陸文学」主宰)
  ・小網 春美 先生(「飢餓祭」同人)
 3 課題小説に挑戦しよう ※実際に小説を創作していただきます。
   (1)テーマを決める。
     〇テーマは次のどちらかです。選んでください。
       A 懐かしい風景
       B 自由テーマ 
      ※描写(情景・人物・心理等)を意識して小説に挑戦します。
   (2)600字(原稿用紙1枚半)から1000字(原稿用紙2枚半)でテーマに沿って
      小説を執筆します。
      ※描写力を意識して創作ください。
   (3)創作された小説を金沢文芸館にデータまたは郵送にてお送りください。
     ※締切日は9月8日(木)。できたところまででもOKです。
   (4)9月10日(土)小説入門講座の進め方

      ①2グループに分けます。 ※事前にスタッフでグループ分けしておきます。
      ②各グループ内活動 ※一人ずつ時間を決めて実施します
        ・創作小説の紹介
        ・講師の先生からアドバイス
        ・受講生同士の意見交換
      ③高山先生、小網先生からの全体講評



 このような流れで、第4回小説入門講座(9月10日(土))を行います。受講生の皆さんにとっては、初めての創作活動です。小説は完成形でなくても大丈夫です。グループ内で、講師からの助言、講評、受講生同士の意見交換等をしていくことで、学びを深められたらと思います。

 なお、受講生の皆様には、本課題提出については書類等でもご案内をいたします。
不明な点がありましたら、金沢文芸館「端館長」または「本郷」までご連絡ください。今年度、小説入門講座で小説を創作していく学びは初めての取り組みとなります。受講生の方々にとりまして、少しでも実りあるものにしていきたいです。
 書けなかった場合でも、その悩みを打ち明けていただき、講師から助言をいただくことで一つの収穫になると思います。

 次回、第5回小説入門講座は、9月10日(土)10時30分からです。高山 敏先生、小網 春美先生で「描写力を養う」(課題作文による個別指導を中心に)についてです。
皆様のご参加をお待ちしております。

※追伸
・講師の先生から小説入門講座受講生へのお知らせがあります。 「もし『金沢創作工房』の小説作りで「作品を見てほしい」「アドバイスをいただきたい」という依頼等があれば、作品を見せていただきたい。推敲していきます。」 とのことです。お知らせしておきます。


      



〇7月23日(土)カナザワナイトミュージアム2022 『ソプラノとオルガンの夕べ』

~こころのふるさとを唄うⅧ~

出演: 直江 学美(ソプラノ歌手)、黒瀬 恵(オルガン奏者)

 

 夏の恒例行事となった『ソプラノとオルガンの夕べ』を開催いたしました。出演は、ソプラノ歌手の 直江 学美(なおえ まなみ)さん、オルガン奏者は、 黒瀬 恵(くろせ めぐみ)さんです。
 2014年以降、今回が8回目の出演となります。今回は、日本の童謡・唱歌とならんで、ウクライナの子守歌「夢は窓辺を過ぎて」が披露されました。柔らかなオルガンの調べに乗り、我が子への成長の願いが込められた子守歌を、艶のあるソプラノ歌唱で歌っていただきました。ウクライナの子守歌の滋味深く、憂いある調べを聴きながら、ウクライナの平和を祈るかけがえのない時間となりました。


   ♪♪ プログラム ♪♪
  ☆『夏の思い出』         作詞:江間章子   作曲:中田喜直
  ☆真夏は来ぬ           作詞:佐々木信綱  作曲:小山作之助
  ☆しゃぼんだま          作詞:野口雨情   作曲:中山晋平
  ☆かもめの水平さん        作詞:武内俊子   作曲:河村光陽
  ★マーチ             作曲:L.J.Aフェビュール=ヴェリ
  ☆七つの子            作詞:野口雨情   作曲:本居長世
  ☆めえめえこやぎ         作詞:藤森秀夫   作曲:本居長世
  ★希望の歌            作曲:G.H.スウィフト
  ☆夢は窓辺を過ぎて        ウクライナの子守歌
      ※ ☆は歌とオルガン   ★はオルガン演奏 です。


○夢は窓辺を過ぎて  ウクライナの子守歌
 ※ウクライナ語での歌唱でしたが、演奏前に直江さんが和訳を伝えてくださいました。

     夢は窓辺を過ぎて

   夢は窓辺を過ぎて
   眠りは垣根を過ぎる
   夢は眠りに尋ねる
   僕らは今夜どこで休もうか?

   小屋は暖かく 子どもは小さい
   どこに行っても 眠りへ誘う

   僕らは そこで眠る
   子どもに歌いかける
   眠れ 眠れ 私の小さなハヤブサ
   眠れ 眠れ 私の小さなハト

 黒瀬さんの暖かいオルガンの響きに包まれた直江さんの優しく艶やかな歌声は、交流サロンにいる私たちをそっと包み込みました。いまだ戦禍の続くウクライナです。そんな中で幼き我が子の成長を願い、戦禍の中でも歌われているであろう子守歌。ウクライナの子守歌は、平和への祈りを願うかけがえのない時となりました。ご紹介いただいたことを心より感謝いたします。

 最後にアンケートから一部を紹介いたします。
・とても良い企画でした。リードオルガンがとてもコラボしていて良かったです。
・曲の解説があって良かった。ウクライナのこと、いろいろとお話を聞かせてもらってよかっ
 た。
・懐かしい曲をすばらしい歌唱と楽しいトークで、すばらしいひと時を過ごさせていただきま
 した。次回も楽しみにしています。
・手軽にこうしてコンサートが間近で聴けるのは大変にありがたいです。
 クラシック演奏が次回あればうれしいです。
・選曲がとっても良かった。小学校時代に覚えた曲もあり、なつかしさが込み上げてきた。
 オルガン独奏の曲もとても良かった。現代の日本人作曲による日本の歌曲も取り上げて欲し
 い。
・美しいソプラノとやさしいオルガンの音色を近くで聴くことができて、ぜいたくな気持ちに
 なりました。ありがとうございます。
・何度もうかがっています。感染の状況もありますが今後も続けていただきたいです。
・8回目→すばらしい。 是非続けてください。 応援します。
・これからもこのコンビでの演奏会を続けてください。

※他、今後への期待を込めたご意見・ご要望もいただきました。本当にありがとうございました。


      



〇7月16日(土)第3回 小説講座 ~提出作品についての批評~

個別指導を中心に

講師: 剣町 柳一郎(小説家)   宮嶌 公夫(『イミタチオ』同人)  皆川 有子(『櫻坂』同人)

 

 第3回小説講座が開催されました。講師は、小説家の 剣町 柳一郎(つるぎまち りゅういちろう)先生、文学誌『イミタチオ』同人の 宮嶌 公夫(みやじま きみお)先生、文学誌『櫻坂』同人 皆川 有子先生(みながわ ゆうこ)先生です。テーマ「提出作品についての批評」です。

 今年度は「批評の講座のやり方」を次のように行いました。
 ①剣町柳一郎先生から全体講評をいただく
 ②全体を2グループに分けます。A:宮嶌先生グループ、B:皆川先生グループとして、
  各グループ6人として受講生も意見を述べていく批評会を実施します。
 ③剣町先生には、適宜2グループに入っていただき、ご助言をいただく。
 ④代表の講師の先生から全体講評をいただく。


◆全作品タイトル(現時点)
 ・影と日向     ・父の大政奉還         ・ぴいちゃんを笑うな
 ・笑うカラス    ・やわらかな日々        ・暗闇
 ・鼻毛       ・黄身と白身          ・たかもどき
 ・暴力       ・がっこみちを踏む       ・伊右衛門の最後

※いろいろなタイプの作品が揃い、どれも自分にしか書くことができない個性的な作品ばかり
 でした。これらの作品は、文芸館から3人の講師の方々、受講生の皆さんに事前送
 付しました。皆さんが全作品を読まれての今回の講座となりました。


◆全体講評(剣町柳一郎先生)から
 ・作品が語りたいことを明確にしていくことが大切である。
 ・小説は読む人とのコミュニケーションが大切である。
 ・小説作りは決して自己満足にならないことが大切である。
 ・作品内容自体が面白い作品が数多くあった。
 ・タイトルにこだわり、それ自体が素晴らしい作品がある。(大政奉還等)
 ・なかには新作落語のように面白く読ませてもらう作品もあった。
 ・優れた本をどんどん読んでいくことが上達のポイント。1ヵ月に4冊は読む必要がある。
 ※剣町先生には、全作品1作ずつのご講評をいただきました。


各テーブルでの協議・批判から(ほんの一部です)
 ・身近な素材(鼻毛等)を先生の描写としているのは面白い。
  普段気付かないところに読みの視点がある。素敵だと思う。
 ・途中に「歌」を入れている。歌詞を入れられているが、非常に効果的である。
 ・怖さの情景がいつまでも頭に残る。強烈な印象を残す作品だ。
 ・舞台作品の脚本を見ているような気がしてきた。楽しさが抜群である。
  これもありなのかと思われた。
 ・温かい人柄がそのまま作品に素直に出ている。幸せな気持ちにさせられる作品だ。
  お会いしてみて、やはり作品そのままの素敵な方だ。

 ※各テーブルでは話が途切れることがなく、剣町先生、宮嶌先生、皆川先生を中心としなが
  ら、受講生自身がタイプの違う作品を認めての意見交換がなされました。忌憚のない質
  問、意見、改善点等が出されました。お互いを尊重し合う真摯な話し合いは、受講生の皆
  さんが客観的にご自身の作品を見つめ直す良き機会となり、今後への創作意欲への灯火と
  なったようでした。実に充実した第3回の講座となりました。これは3人の先生方のお力
  、受講された方の作品の力、受講生の方々の学び合う姿勢と真心の賜物と思いました。
  充実した素晴らしい講座を創り上げてくださった皆さま、ありがとうございました。


 次回、第4回小説講座「小説を読む①」は、8月20日(土)です。講師は、 皆川 有子(みながわ ゆうこ)先生(『櫻坂』同人です。次回の講座で取り上げる本は、『又吉直樹さんの「劇場」』です。書店や図書館にもございますので、一読してご持参いただけると幸いです。申込みいただいた皆さまのご参加をお待ちしております。


      



〇7月10日(日)第3回 朗読会 『青春の門 筑豊編』

「これが わしの線香たい」 矢部虎治 男気ダイナマイト

講師: 髙輪 眞知子(朗読小屋 浅野川倶楽部 代表)

 

 7月10日(日)第3回朗読会が、朗読小屋・浅野川倶楽部の代表 髙輪 眞知子(たかなわ まちこ)さんにより行われました。今回は「川筋喧嘩作法」のお話です。
 今回の場面は、塙竜五郎の怪我、長太の殴り込み、信介、矢部虎次と門司の門映会らとの駆け引き等、まさに手に汗握る話となっています。
 髙輪眞知子先生には、そんな緊迫した場面を、時にはスピード感を伴い、そして気迫の込もった地響きするような朗読をいただきました。内容を簡単に紹介いたします。


      ※       ※       ※       ※       ※

 塙竜五郎が、門司の門映会を名乗る男に散弾銃で片足をぶっ飛ばされて、大怪我を負います。伯父の矢部虎次が「この事件には、入り組んだ裏のからくりがある」との思い出、信介はじめ若い衆の暴走を止めに入ります。しかし、兄貴分の長太は、親父 塙竜五郎の仕返しに門映会に単身で向かいます。

 信介と矢部虎次は、竜五郎のハーレーに乗って長太を説得しに門映会へと走ります。信介は、兄貴分の長太を救うために、巨体な化け物のハーレーに喧嘩装束の伯父 矢部虎次を乗せて出発します。

 門映会事務所で、長太は板張りの部屋の真ん中に座らされて、両腕を背中でかたくくくりあげられています。白い肌着と腹巻が血で真っ赤になり、血がしたたり落ちて床を染めています。膝頭が割れ、白い骨のようなものも見えています。

 矢部虎次は単身、門映会内部に飛び込みます。そしてこう語ります。
「ダイナマイトが六本あるけん、映画館もろともいっしょに吹っとばすにゃ充分ばい」
「わしは昔、三池炭鉱の発破係りやったけん、爆発物は専門家たい。話によっちゃ一丁、ここでマイト心中といくのも面白かろ。わしは冗談ば言いよっとじゃなかぞ」
 命がけの駆け引きで長太を助けた矢部虎次、虎次と長太を乗せたトラックと、信介のハーレーは、深夜の街道を唸りながら疾走していきました。その時、急に激しい恐怖感に襲われる信介でした。
                      (「川筋喧嘩作法」まで)

      ※       ※       ※       ※       ※


 第4回は8月7日(日)からです。「春の病葉(わくらば)」からの朗読となります。
 ぜひ、ご参集ください。皆さまのご来館を心からお待ちしております。


      



〇7月9日(土)第1回 詩入門講座 

詩を読み、学び、書こう

講師: 和田 康一郎(金城大学講師、『イミタチオ』同人)

 

 「詩の魅力を知りたい!」「詩を書いてみたい!」など、初めて詩に触れる方を対象に、「詩人を知り、詩作を楽しむ」講座が始まりました。
 第1回の講師の方は、金城大学講師の 和田 康一郎(わだ こういちろう)先生です。和田先生は、第1、2回の講座担当で、優れた作品を読み、詩の魅力を知り、詩作の基本を教えていただきます。
 また、後半の講師は、 井崎 外枝子(いざき としこ)先生(詩誌『笛』同人)、 中野 徹(なかの とおる)先生(詩誌『笛』同人)です。井崎先生は第46回、中野先生は第49回泉鏡花記念市民文学賞を受賞されておられます。お二人の先生には、受講者の作品を批評、推敲いただきます。
 さて、今年度は、定員いっぱい10名の参加申し込みをいただいての活気あるスタートとなりました。
 和田先生の講座内容を一部、ご紹介いたします。作家の作品3編、高校生の作品を2編紹介して、それぞれを読み味わっていきました。


     初恋     島崎藤村

  まだあげ初めし前髪の
  林檎のもとに見えしとき
  前に差したる花櫛の
  花ある君と思いけり

  やさしく白き手をのべて
  林檎をわれにあたへしは
  薄紅の秋の実に
  人こひ初めしはじめなり

  わがこころなきためいきの
  その髪の毛にかかるとき
  たのしき恋の盃を
  君が情に酌みしかな

  林檎畑の樹の下に
  おのずからなる細道は
  誰が踏みそめしかたみぞと
  問ひたまふこそこひしけれ


     初恋     吉原幸子

  ふたりきりの教室に 遠いチンドン屋
  黒板によりかかって 窓をみていた

  女の子と もうひとりの女の子
  おなじ夢への きびしい共犯
  ひとりはいま ちがふ夢の 窓をみている
  ひとりは もうひとりのうしろ姿をみている

  ほほえみだけは ゆるせなかった
  おとなになるなんて つまらないこと

  ひとりが いたづらっ子に キスを盗まれた
  いたづらっ子は そっぽをむいてわらった

  いたずらっ子は それから いぢめっ子になった
  けふは歯をむいて「キミ ヤセタナ」といった

  それでひとりは 黒板に書く
  オコラナイノデスカ ナクダケデスカ

  ひとりはだまって ほほえみながら
  二つの「カ」の字を 消してみせた

  うすい昼に チンドン屋のへたくそラッパ 急に高まる


     春     安西冬樹

  てふてふが一匹韃靼海峡を渡って行った。


※このほか、高校生の作品2編も紹介されました。


 韻文と散文についての違いを説明いただきながら、多感な青年の思いが表現されている島崎藤村の「初恋」、多義的な解釈が可能な吉原幸子の「初恋」、短くとも強烈な印象を与える安西冬樹の「春」を読み味わっていきました。

 島崎藤村「初恋」は、詩集「若菜集」に収められている作品です。本作品は、日本で生まれた清純な恋愛詩であり、優美な七五調のリズムが甘美に響くものです。和田先生が1連ずつ読み解くことで、受講生は島崎藤村の甘美な表現に酔いしれるばかりでした。また、散文と違い、韻文であるために複数の解釈が同時成立しても構わないことを、先生から学んでいきました。

 吉原幸子「初恋」は、読み手によりいろいろな解釈が可能な詩です。本詩について、和田先生は「余計なことは説明していない」と言われました。それゆえ、多義的な解釈ができます。本講義でも本詩に対していろいろな解釈が出てきました。
 また4連の「ほほえみだけは ゆるせなかった/おとなになるなんて つまらないこと」の意味の大きさについても講師から指摘がありました。講義が終わって帰路につく時も、参加者が各自の解釈を語られている様子に、この詩の大きな価値がある気がしました。

 そして、「春」安西冬樹さんの1行詩です。ある受講生からは解釈の在り方について「ちょうととらえずに人としての生き方ととらえて自分は解釈しているんだけれど、そんな読み方はどうなのか」といった質問もありました。講師からは多義的なとらえがなされていけるところが本詩の一つの魅力ではないかという話となりました。

※ブログを書いている自分は、高校の現代国語テストを思い出します。問題はこの1行詩のみでした。この詩をあげて「この詩について論ぜよ」という1問だけの問題でした。問題用紙をもらったときの困窮は今も覚えています。出題者は、後に金沢文芸館初代館長となられた兼近靖志氏でした。鮮明にその時の詩の風景を今も覚えていることに、これほどまでに記憶に残るテストはあるまいと懐かしく思うばかりです。1問だけのテストとみんなで向き合う時間。何とも大らかな時代であったのかと思います。

 次回の詩入門講座は8月6日(土)「詩というもの②(詩を味わう)」です。講師は第1回目と同じく「和田康一郎」先生です。次回は、石垣りん、茨木のり子らの詩も紹介いただけるかと思います。楽しみですね。

 また最後には、第3回目以降に実施される詩入門講座 実作の課題候補も発表されました。一例ではありますがご紹介します。

 ・顔   ・空   ・家族   ・仕事   ・光   ・食   ・その他

 それぞれの詩の実作の締め切りは次のとおりです。

 ○第1回  個別指導日  9月10日(土)
       ※作品締切日  8月31日(水)

 ○第2回  個別指導日  10月8日(土)
       ※作品締切日  9月28日(水)

 ○第3回  個別指導日  11月12日(土)
       ※作品批評と推敲


 宿題が出ていますので、受講生の皆さんは、よろしくお願いします。


      



〇7月9日(土)第3回 小説入門講座 

小説の文章

講師: 小網 春美(『飢餓祭』同人)

 

 7月中旬、体調管理が難しいほどの猛暑が続いています。そんな中、小説入門講座は3回目で、受講生の皆さんにおかれましては、大変意欲的に取り組んでいただいています。
 今回は、『飢餓祭』同人の 小網 春美(こあみ はるみ)先生の担当(第1回の講座も担当)で、「小説の文章」のテーマでお話いただきました。
 内容をご紹介いたします。


○小網 春美 先生のアドバイスから
◆小説作りで大切な基本は?
描写を活かす

○文章上達には名文を読む
   …・名文は人に聞き、自分でも探す。俳人・詩人は小説作りが上手

○文章は短文がベター
   …・短文はごまかしがきかない
    ・長文を短文にする→主述のねじれに気付く

倫理が通る文章を
   …・倫理が通らない時は思い切って文を捨てる

丁寧語常体に気を付けて
   …・丁寧語(です・ます)、常体(である・だ)のどちらかで統一する
    ・小説作りは原則、常体が望ましい

○文章はスラスラと滑りすぎない
   …・抑制を効かせることが大切だ

○自分の気持ちにピッタリの文章に
   …・「屈折」(この表現は気持ちが伝わらない)→類義語の検索→自分のぴったりを探す
    ・「屈折」 → 類義語の検索 → ぴったりを探す

体言止めは余韻効果あり
   …・使いすぎると▲

文末は現在形と過去形をバランスよくミックスして
   …・現在形は臨場感が出てくる

効果的な表現の追求
   …・すごい、こんにちは  安易な表現は▲
    ・少し(すこし)→少し(ちょっこし)などの表現を入れるのも効果的
    ・安易な比喩表現は、手垢にまみれた表現▲
      悪い例:ニャーオ、りんごのようなほっぺ、ウグイスがホーホケキョッキョ▲
    ・岡本かなこ…ぺきんと鉛筆を折った。キャラキャラ笑う。 などは効果的

○小説の骨格となるストーリーを
   …・描写は肉付け
    ・筆者の主観がそこに入る

登場人物の表現への配慮
   …・有名人に似ているなどの表現▲  自分で表現する○
    ・個性を描き出すこと  ノッポ等の表現は▲
    ・効果的は比喩表現を
    ・主人公は早めに登場させる

背景への配慮
   …・背景は自分で間取りをイメージして小説作りを  生きた表現を

名前の付け方について
   …・キラキラネームは▲
    ・苗字は単純に  名前は凝ってつけて
    ・死亡欄の名前を見てはメモをとっている。貪欲な姿勢で。

○季節感ある小説を
   …・時代設定がある場合は最初の一枚目、二枚目でわかるように

○五感に立った小説を
   …・視覚だけの小説▲
    ・視覚 > 聴覚 > 嗅覚 > 味覚 > 触覚
    ・冷たい腕 等の表現も効果的

○タイトルは小説の顔 大切
   ※熟慮していくことが大切


 小網先生から、たくさんの小説作りのポイントが提示されました。そんな中、
『「小説の何が面白いか?」と問われたなら、すぐさま私は「行間を読むということだ」と答えると思う。描写から行間を読んでいく。小説はそんな数字の計算のない計算の世界ではないか。小説作りでは、ぜひみなさん、数字のない計算を意識してほしいと願っている』
 とのお話がありました。
 講義の後も、受講生からもいくつかの質問も寄せられました。みなさんの熱い気持ちでいっぱいの講座となりました。小網先生、ありがとうございました。いよいよ課題作文を書いていく場面となってきました。これからも楽しみですね。

 次回は8月6日(土)10時30分からです。高山 敏 先生で「推敲について」です。皆様のご参加を心からお待ちしております。


      



〇7月6日(水)出前講座 浅野川小学校2年

金沢の民話を聞こう

講師: 神田 洋子(ストーリーテラー)

 

 徳田秋聲、泉鏡花、五木寛之氏ともゆかりが深い浅野川沿いに位置する、浅野川小学校にお伺いしました。
 2年生2クラスの児童が参加して、出前講座「民話を聞こう」が実施されました。講師はストーリーテラーの 神田 洋子(かんだ ひろこ)先生です。感染症への安全対策のため、二回に分けての学習をしました。


◆主なプログラム
  「飴買いゆうれい」…金沢では金石や森山に伝わる伝説
  「芋ほり藤五郎」 …金沢の地名発祥として知られる
  「ヤマバトの親子」…親の言うことは素直に耳を傾けなさい という教訓

 金沢市にはたくさんの民話が伝承されています。そんな中から「飴買いゆうれい」「芋ほり藤五郎」「ヤマバトの親子」などのお話をしていただきました。ストーリーテラーの方と接するのは初めてという子どもたちです。準備段階から、和ろうそく、土笛、折り紙などを机上に準備されていく神田先生を囲んで、民話の世界に誘われていく子どもたちがいました。
 そして、神田先生から語られる民話の世界に入っていく子どもたち。輝く眼で懸命に聴き入る姿は素敵でした。
 授業の最後に和ろうそくの灯りを消す場面がありました。一斉に一人ずつで願い事をした後に、7月生まれの人でろうそくの灯りを消すのですが、その願い事をする子どもたちの姿が本当に温かで豊かなのですね。一人一人の願い事が何かはわからないのですが、人の幸せをも思っているような空気感は実に柔らかく、幸せの春風が吹いているようでした。そんな子どもたちの姿に、心が洗われるようでした。
 2組では、担任の先生だけが7月生まれでした。子どもたちはうれしそうに、先生が前に出るようみんなで促していきます。自分のことのように喜ぶ子どもたちがそこにはいました。
 「2クラスとも子どもたちを大切に想う先生方の愛情がすごいですね。だからこそ、そんな先生の愛情を子どもたちはしっかりと受け止めているのですね。素敵ですね」と神田先生と語り合う帰路となりました。

 飴買いゆうれい、芋ほり藤五郎も、人を想う心が結び合って幸せを呼ぶ物語です。どちらも、純朴さ、温かな心があり、全国にも誇れる愛あふれる民話です。そんな民話を一生懸命学んでいく子どもたちとの学習は、貴重な体験となりました。
 こんな時間を創っていただいた神田先生、ありがとうございました。そして、浅野川小学校の先生方、子どもたち、素敵な出会いをいただき、本当にありがとうございました。


※ブログを記している私自身、50年以上も前に、芋ほり藤五郎夫妻の像とお墓がある寺町の伏見寺へ友達らと見学に行ったことがあります。夏休みのラジオ体操の後、
「金沢のことが詳しく知ることができたらなあ」と話をしていた時、地域のおじさんがみんなを伏見寺へ連れて行ってくれたのです。その時のご住職の温かい笑顔、石造りの大きな墓、十二支の像、阿弥陀如来坐像などが今も瞼に焼き付いています。また、その時に伺った芋ほり藤五郎のお話もいまだに覚えています。小学生の時に見聞きした、貧しくても実直に生きる藤五郎の生き方。そんな生き方が自分の胸のどこかに残って、歩んでくることができたような気がします。今は亡き町内のおじさんや当時のご住職らの笑顔が今も忘れられません。そんなことを思い出させてくれた浅野川小学校の子どもたちでした。
 民話の素晴らしさを再認識させてくれた子どもたち。ありがとうございました。今後の健やかな成長も心から願っています。


      



〇6月29日(水)出前講座 浅野川小学校4年

三文豪について学ぼう

講師: 薮田 由梨(徳田秋聲記念館 学芸員)

 

 情緒ある浅野川沿いにある浅野川小学校にお伺いしました。4年生2クラスが参加して、「三文豪について学ぼう」の出前講座を実施しました。今回の講師は、徳田秋聲記念館の 薮田 由梨(やぶた ゆり)学芸員です。まず三文豪についての話から授業は始まりました。


◇金沢の「三文豪」とは
 金沢で生まれ育ち、文学(小説・詩・俳句など)の面で活躍して、優れた作品を残された素晴らしい方々のことです。作風はそれぞれ異なりますが、故郷の金沢を離れて東京で作家活動を続けました。三人とも、ふるさと金沢に愛着を持ち、金沢を舞台にした作品も少なくありません。

◆徳田 秋聲(とくだ しゅうせい)
 明治4年、浅野川に近い横山町生まれで、昭和18年に亡くなりました。
 秋聲の小説は、ごく普通に生きる人々の何気ない日常生活を生き生きと描き出し、そのまま物語にするという特色があります。自然主義文学の大家です。特に、女性を描くことに優れた作家として知られています。

◆泉 鏡花(いずみ きょうか)
 明治6年、浅野川大橋近くの下新町(現在の泉鏡花記念館の場所)に生まれ、昭和14年に亡くなりました。
 鏡花は、心の中で空想したファンタジックできらびやかな世界、幽霊や妖怪などが登場する不思議な夢物語を創り出すのが得意な作家です。現実や日常をそのまま作品にした秋聲とは正反対の特徴といえます。秋聲とは正反対の作風のため、喧嘩することもありました。

◆室生 犀星(むろお さいせい)
 明治22年、犀川の畔にある千日町に生まれ、昭和37年に亡くなりました。
 犀星は、秋聲・鏡花よりは十数年も年下で、二人の先輩作家の長所を取り入れて、現実生活に即した作品と豊かな想像をもとに書かれた作品の両方があります。また、詩や俳句にも優れた作品を残しており、子ども向けの作品もあり、小中学生にとって親しみやすい作家といえます。


◇三文豪についてさらに詳しく学ぼう
 ・プリント「三文豪地図」に、子どもたちが二本の川の流れ(浅野川、犀川)を書き加えまし
  た。さらに浅野川小学校の場所も地図で押さえました。改めてお手製の「三文豪地図」を
  見て、自分たちの学校名(浅野川小)の川沿いに徳田秋聲、泉鏡花が関係していること
  に驚きを持つ子どもたちの姿がありました。
 ・ミニ知識として、次の三文豪像が薮田学芸員から紹介されました。

 ◆徳田 秋聲
   ・本名:末雄(すえお)
   ・洋服が好き ダンスが趣味
   ・動物が苦手だよ
   ・代表作は 「黴(かび)」「爛(ただれ)」

 ◆泉 鏡花
   ・本名:鏡太郎(きょうたろう)
   ・うさぎのコレクター
   ・かなりのきれい好き
   ・代表作は 「化鳥」「天守物語」

 ◆室生 犀星
   ・本名:照道(てるみち)
   ・庭づくりが趣味、動物好き、ハエを一日観察したりしている。
   ・代表作 「杏っ子」「動物詩集」「蜜のあはれ」

 そのほか、三文豪マップ作りをしながら、
 ○犀川、浅野川の流れと関係した中で三文豪が活躍したことを知る
 ○三文豪それぞれの作風の違いを実際の原稿から学ぶ
 ○三文豪の直筆原稿から感じることはあるかな?
 などにもチャレンジしていました。


 最後に、兼六園下の白鳥路にある「三文豪像」を見て、気付くことを出し合いました。
  ・「向かって一番右側の人はスーツ姿だな」…ということは「徳田秋聲だ!」
  ・「抱いているのはうさぎだ」…ということはウサギ好きの「泉鏡花だ!」
  ・「メモをしているね」…ということは俳句や詩も書いている「室生犀星だ!」


 あっという間の45分間でした。浅野川小学校4年生の子どもたちは、大変真剣に、意欲的に学習に取り組む子どもたちでした。薮田学芸員と共に、「4年生とは思えない真剣な取り組み方でしたね」「みんなの反応が良く、どう考えているのかがよく見えました。素敵な子どもたちです」など、いろいろとお話させていただく帰路となりました。
 印象的だったのは、子どもたちの意欲的に鉛筆を走らせて書く姿でした。金沢市の三文豪は日本を代表する素晴らしき作家です。そしてひたむきに考えながら書いていく子どもたちの姿は「未来の文豪」をも思わせるものでした。
 ぜひ、徳田秋聲記念館、泉鏡花記念館、室生犀星記念館、金沢文芸館にも、おうちの方々と共に訪問いただき、学んでいただけたらと思いました。
 教室を出る時に、薮田学芸員にこんな質問がありました。
「『あらくれ』って作品を徳田秋聲さんは書いておられると思います。『あらくれ』って『黴』『爛』と違っていて、ひらがなだったのですよね」と。

 ぜひ、小中学生の皆さんにもご来館いただき、学んでいただけたらと思う1日となりました。浅野川小学校の先生方、4年生の子ども達、本当にありがとうございました。


      



〇6月19日(日)第1回 フォト&五・七・五 合評会 

~私の好きな風景~

講師: 中田 敏樹(俳人)

 

 今年度前半期の『フォト&五・七・五』には、5名の方々のご応募をいただきました。新たな試みがなされた「フォト&五・七・五」となり、合評会は和やかな中にも充実したものとなりました。
 俳人で、写真愛好家でもある 中田 敏樹(なかた としき)先生を囲んで、深い学びある学習と交流の機会を得ることが出来ました。お一人二句ずつ紹介いたします。


 ・白山を君と眺める冬愛し
   ⇒白山の美しい山並み。そしてその風景写真には、女性の表情がわかるイラストが
    取り込んであります。そんな風景写真での一句です。
   ・発想がとても斬新で素敵です。イラストが女性の表情ではなく後ろ姿でもよいので
    はないかと思います。「どんな表情なのかなあ?」と、みんなに女性の表情を想像
    させるのも一つのアイデアではないかと思います。

 ・風そよぐ君がほほ笑む桜道
   ⇒右手の土手にずらりと並んだ桜並木の風景写真です。そこに一人の女性イラスト
    が描かれています。女性の視線は桜並木の方にあります。そこでの一句です。
   ・表情を一人一人変えているイラストが効果的です。イラストサイズを今の三分の一
    以下にして、風景を前面に出してやると、より効果的と思います。

 ・なんでやろ二人が似合う二二二みち
   ⇒つつじが咲き誇る大乗寺丘陵公園での風景写真です。二二二(つつじ)道を見る
    と、二人ペアで歩いている方々ばかりです。そんな風景写真での一句です。
   ・「なんでやろ」はユニークさがあり、出だしからほっこりさせられます。たくさんの
    方々がペアで二二二(つつじ)道を歩かれている。二二二(つつじ)と詠ませるのも
    ユニークで楽しいです。温かい俳句づくりにユニークさは大切ですね。

 ・山に入り山を見つけて山笑う
   ⇒奥卯辰山から見た山々の風景写真です。手前に奥卯辰山の稜線。その稜線に
    三本の大木があります。その三本の大木の間から、はるか遠くに春の訪れを感じさ
    せる雪化粧の山々(ところどころ地表が見える)が見えます。そんな風景写真からの
    一句です。
   ・手前の稜線、三本の大木、遠くの雪化粧の山々と、写真の構図が見事です。山、
    山、山と重ねた手法、リズム感がとても良いです。「山笑う」と詠んだ春心と写真が
    一体となっていて本当に素敵です。

 ・春日影まどろみの中笑みこぼす
   ⇒金沢市小立野寺院群 慶恩寺(きょうおんじ)の満開の枝垂桜の写真です。ピン
    ク色に染まった枝垂桜と寺院が全面に映されています。そんな中での一句です。
   ・一面をピンクに染めるように撮影されている写真の技法の素晴らしさが見事です。
    春日影で作者がまどろんでいる様子が見えます。それも笑みの中で。穏やかな春
    の光景であり、とてもなごやかな心が表されています。
    ※慶恩寺の見事な枝垂桜です。ぜひ皆様にもご覧いただけたらと思います。

 ・夏ひと夜祈りを写す女川
   ⇒浅野川の灯篭流しの夜景写真です。浅野川大橋方面から卯辰山方面に向けて
    撮影されたものです。川に浮かぶ灯篭の灯りと、川面に映し出された優しい幻想的
    な灯りが素敵な写真です。大変に情緒溢れる風景写真での一句です。
   ・大変に美しい夜景です。金沢に住んでおられる人なら、灯篭流しは御存知かと思い
    ます。灯篭流しから一人一人の祈りを感じる心が本当素敵です。写真は遠景となっ
    ているので、よりわかりやすくするために、句の中に「灯篭流し」という文言を入
    れて創作できるとなおよいかもしれないですね。

 ・春紫苑姫女苑とて夏に入る (はるじおん ひめじょおん)
   ⇒左側に春紫苑(はるじおん)が三輪、右側に姫女苑(ひめじょおん)が四輪あり、そ
    れぞれが満開となった写真です。そんな七輪の花を愛でての一句です。
   ・写真だけを見ても、実によく練って創られた作品です。合わせて七輪の花です。何気
    ないことですが、三輪と四輪、合わせて奇数配置にすることで構図の落ち着きと安定
    感を生んでいます。春紫苑と姫女苑、ちょっと見ただけでは見分けがつかないのだけ
    れど、微妙な違いに着目すると発見がある。そんな一句です。

 ・木漏れ日の透けてルビーの川蜻蛉
   ⇒一本の細長い草に止まった川蜻蛉。そこに木漏れ日があたり、羽根は透けてルビー
    色に光っています。草に映った川蜻蛉の影も、透けた部分が光って映えています。そ
    んな宝石の輝きのような写真からの一句です。
   ・素晴らしい生命感あふれる写真です。写真と俳句が呼応し合ってたれる写真と俳句
    が呼応し合って見事です。眩しいばかりの光、影、輝くばかりのルビー色の羽根がそ
    こにはあります。俳句とは、意識的に見つけていく心があってこそ生まれる芸術であ
    ることを再認識される作品です。

◆中田 敏樹 氏  ※ご本人からのお言葉からです
 ・おすすめは白えびマリネ雪柳
     …全く別と思える雪柳をあえて持ってきました。取り合わせをした俳句です。

 ・紫木蓮紡績工場の煉瓦壁
     …市民芸術村の煉瓦をバックに紫木蓮の花が満開の風景での一句です。

 ・青葉騒蓮如さんの御眼にも
     …金沢市 子来坂上にある宝泉寺奥の蓮如像を見つめての一句です。
      息をきらしながら登っての一句。ぜひ一度見にいかれたらと思います。

 ・紅格子一輪挿しにチューリップ
     …今はなくなってしまった店での一句。素晴らしき風景は残したいものです。

 ・窓際で鴨南蕎麦を注文す
     …お気に入りのお店のお気に入りの場所での一句です。


 石川県はじめ、全国各地の方々が一階ギャラリーにお越しいただいて、フォト&五・七・五の展示会を見ていかれました。
「こんなふうに俳句を楽しむことができるのですね。いいいですね」
「写真だけ見てもこれは芸術と言っていいのではないですか」等、いろいろなお声をいただきました。
 後半も作品を募集いたします。また合評会には見学いただくだけでも結構です。また作品募集、展示会の詳しい日程、合評会についてお知らせいたします。
 ぜひ多くの皆様のご応募、展覧会見学、ご参加をお待ちしています。


      



〇6月18日(土)第2回 小説講座 ~小説の実作について①~ 

短編小説の魅力について

講師: 皆川 有子(『櫻坂』同人)

 

 第2回小説講座が開催されました。講師は文学誌『櫻坂』同人 皆川 有子(みながわ ゆうこ)先生です。テーマ「小説の実作について①」です。
 受講生一人一人が「海」小川洋子・著(新潮文庫)の文庫本をテキストにして講座が開催されました。ちなみに小川洋子氏は、作品「ブラフマンの埋葬」で泉鏡花文学賞を受賞されておられる方です。講座の一部を紹介いたします。作品引用部はすべて小川洋子氏「海」からです。


◆小説を書くにあたって大切なことは?(小説「海」小川洋子氏をテキストとして)

★飽きさせない表現の工夫がある

 ○状況を説明しすぎない巧みさ
 ○会話文(適宜な)で緩急とスピード感を持たせて

 ・古くて平凡だが、頑丈な造りの家だった。そう広くない庭には、ケヤキが緑を
  茂らせ果樹園の斜面から吹いてくる気持のいい風が葉を揺らしていた。家
  の中は準備万端すべてが整っていた。隅々まで掃除が行き届き、そこかし
  こに花が飾られ、廊下に並んだスリッパはおろしたての新品だった。どこに目
  をやっても隙がなかった。どんな種類であれ、客を迎えるのに、慣れていな
  い家のような気がした。
  「遠いところを、ご苦労だったねえ」「お疲れになったでしょう。さあ、どうぞ」
  「遠慮せず、のんびりしてくれたらいいんだ」「何か、お飲み物はいかが?」
   ⇒状況を説明しずぎないことで読み手は想像を膨らませることができる。
    また会話文を入れることで緩急とスピードを生む。ただ過度の引用は逆効果。

 ○比喩表現の巧みさ
 ・僕たちはいつもその話題を、何かの拍子に皿からこぼれ落ちた一粒のピーナ
  ッツのように散った。拾って、殻をむいて、口に放り込んでしまえば終わり。そ
  れで不都合は生じなかった。
 ・おばあさんは皴の間に埋もれた目蓋を懸命に見開き、干涸びた小石のよう
  な瞳をこちらに向けた。
   ⇒巧みな比喩的表現は効果が大きい。ただ過度の引用は逆効果。

 ○独特なひっかかりのある表現を入れていく
 ・小さな弟(実際は主人公よりずっと大きい)
 ・お母さんはおばあさんのナプキンを整え直した。襟元に挟まれたそれには、ご
  飯粒や牛肉の筋や魚の小骨がくっついていた。
   ⇒独特な気持ちの悪いひっかかりがあると読み手の読む意欲につながっていく。

 ○人物像の表現の巧みさ
 ・階段を上り、別々の戸口を入る時、泉さんは
  「ごめんなさいね」と言った。
   ⇒この一言で泉さん(恋人)の人柄がわかる。こまごまとした説明を必要としない。

 ・「お客さんはいつになったら来るんだろうねえ」(おばあちゃん)
 ・「毒があるかもしれませんからね。十分にご注意なさいまし」(おばあちゃん)
   ⇒会話文からおばあちゃんは痴呆症かなとわかる。細かい説明はいらない。

 ・大きすぎる身体がお客さんの邪魔になってはいないだろうかと気遣うように、
  首をすくめ、背中を丸めていた。パジャマの柄はキリンだった。
   ⇒弟の性格の多様な解釈が読者に可能となる。
    形容詞「かわいい」などを安易に使うと読み手は登場人物の性格が
    想像できず、微妙な肌合いが表現されない。


★しかけ、技が巧妙である

 ○現実的描写と幻想的描写の混ざり合いの高い効果
 
○唐突な独特な表現は、小説の重要な意味を持つことが多い
 ・僕は泉さんの唇を見つめた。それはふっくらとして瑞々しく、思わず指先で
  なぞってみたくなる曲線を持ち、僕が想像もつかないあらゆる言葉を隠し
  ているような不思議に満ちていた。付き合いはじめて間もなくの頃、私の
  どこが一番好きかと聞かれ、唇と答えたのを思い出した。
  「整列の合図のホイッスルを吹く、君の唇だよ」
  と。
  泉さんは保健体育担当の教師で、いつも胸元に、唾で湿ったホイッスルを
  下げている。
   ⇒唇はこの小説での大切な意味合いを持つこととなる。
    小川洋子氏の技が随所にちりばめられている。

 ○ファンタジーの世界へ誘う(いざなう)巧みさ
 ・小さな弟は心から安堵し、長い息を吐き出した。
       (空白部分)
  「君は、何の楽器の演奏者なんだい?」
  布団に入り、電灯を消してから僕は尋ねた。
   ⇒空白を設け、電灯を消すことで、読者をファンタジーの世界へといざ
    なっている。
    読者の視覚を覆って聴覚を研ぎ澄ませることで、読み手の「視覚」か
    ら「聴覚」への転換を図っている。音の描写に迫るために。

 ○音の描写の素晴らしさ。ファンタジーの中にドキュメンタリーを入れてくる。
 ・口笛とも違う、歌声とも違う、微かだけれど揺るぎない響きが聞えてきた。
  それは海の底から長い時間を経て、ようやくたどり着いたという安堵と、更
  に遠くへ旅立ってゆこうとする果てのなさの、両方を合わせ持っていた。
  僕は小さな弟が海辺に立っている姿を思い浮かべてみた。
        (略)
  彼の唇は本当に今そこに鳴鱗琴があるのと変わりなく、暗闇を揺らし続け
  た。それは愛する泉さんの唇と、そっくり同じ形をしていた。
   ⇒書き手の工夫をぜひ感じてもらいたい。書き手と読み手の真剣勝負
    がそこにある。
    ※少ない紙面ではとても表現しきれない描写の素晴らしさです。
     ぜひ本作品をお読みいただきたいと思います。


 講座の一部を紹介しました。本講座は日本の小説のトップランナーのお一人である小川洋子氏の「海」をテキストとして使用されての講座であり、皆川先生には、貴重な数々の教えをいただきました。
 また、講座ではロマンバルト氏のテクスト論も提示して、小説の読みについてもお話いただきました。大変印象的でしたので、一部紹介いたします。

   ・正しい読み方というものはない。(作者はこう言いたいのだ▲)
   ・読み手の価値観が揺すぶられていくことが大切だ。
   ・一冊の本には膨大な知性がある。言葉の世界が広げられる。
   ・一つの経験として本を読むことが大切だ。

 皆川 有子先生の講座は、小川洋子氏の「海」を通して、小説家はいかに工夫をして小説を書き上げているか、読み手はその技の凄さをも感じ入りながら「書き手と読み手の真剣勝負」といった観点で見ていくことも大切であると学ばせていただきました。これから実際に小説づくりをしていく受講生の皆さんへの大きな示唆となりました。

 次回、第3回小説講座「提出作品についての批評(個別指導を中心に)」は、7月16日(土)です。講師は、剣町 柳一郎(つるぎまち りゅういちろう)先生(小説家)、宮嶌 公夫(みやじま きみお)先生(『イミタチオ』同人)、皆川 有子(みながわ ゆうこ)先生(『櫻坂』同人)です。皆さまのご参加をお待ちしています。


      



〇6月12日(日)第2回 朗読会『青春の門 筑豊編』 

梓先生への恋心 先生と十年先の約束を交わす信介

講師: 髙輪 眞知子(朗読小屋 浅野川倶楽部 代表)

 

 6月12日(日)第2回朗読会が、朗読小屋・浅野川倶楽部の代表 髙輪 眞知子さんにより行われました。今回は「黒い犬の影に」「男と女の間で」「十年先の約束」「義理の世界」の途中(梓先生を博多駅まで送ったところ)までです。

 信介の梓先生への恋心、性的な欲望との葛藤、世の中・大人に対する信介の憤り、そして梓先生がいる東京での生活を夢見る信介。そんな揺れ動く信介の心情を、青春の一頁として爽やかな朗読で演じられた髙輪 眞知子さん。その凛とした日本語の美しさに魅了される一時間でした。


          *          *           *

 タエの病気は、春ごろ一時的に快方へ向かったものの、夏になると再び悪化していきます。一方信介は、竜五郎から高校進学の強い勧めを受けて、受験勉強に取り組んでいきます。そんな時、信介は梓先生から、迷信や偏見によって自分の結婚が駄目になった話を打ち明けられます。
 しかし、その時信介が感じたのは、梓先生への同情や世間の人への怒りでもなく、それとはまったく異質のなまなましい性的な欲望だったのでした。彼はその時、人間の内部に棲む黒い犬のような、無気味なものの影を見たのでした。

 ある日信介は、例の作法室で梓先生とあの男性教師との関係を目にします。信介は悩んだ末、梓先生にあんな男と付き合うのを止めるよう忠告したいと考えます。信介は、梓先生には堂々と胸を張って、夏のヒマワリみたいにまっすぐ空を見上げて生きていくのが一番似つかわしい、と考えたのでした。

 そして信介は梓先生に、先生は駄目な男を好いとること、学校を辞めて東京へ戻るほうが先生のためになることを伝えます。そんな信介に対して梓先生は、理屈で割り切れずに地獄の中にいること、私自身がこの地獄を抜け出す力がわいてくるよう信介に手伝ってほしいことを伝えます。
「伊吹くん、いつかまたきっと会って、そのときはあなたの恋人になってあげる-」と話す梓先生。信介はそんな梓先生を、世界で一番魅力的な人だと考えるようになったのでした。

 それから二週間後、梓先生は退職して、東京へ戻ることとなります。梓先生から、信介は上京して大学進学することを勧められます。先生と生徒というかたくるしい関係じゃなくて、二人の若い男と女として仲良くしたいと語る梓先生の言葉にうなずく信介。しかし同時に、竜五郎さんへの義理を返すことも考えて悩む信介でした。
                            (「義理の世界」途中まで)

          *          *           *


 第3回は7月10日(日)14時からです。「義理の世界(塙竜五郎の家に戻ったところ)」から「川筋喧嘩作法」までの朗読となります。手に汗握る緊迫した場面の朗読です。ぜひ、ご参集ください。お待ちしております。


      



〇6月11日(土)第2回 小説入門講座 

小説を書く力

講師: 高山 敏(『北陸文学』主宰)

 

 6月上旬、百万石祭り各種イベントも行われ、日常の生活も戻りつつあります。今回は、同人誌『北陸文学』主宰、高山 敏(たかやま さとし)先生の担当で、「小説を書く力」のテーマでお話いただきました。内容を抜粋し紹介いたします。


◆高山 敏先生のアドバイスから
 ○私は小説を書く時には、いつもこう自分に問いかけています。
  ・作品には、切実さがどれだけ表現されているか。
   苦しみの中に置かれて懸命に生きている人間をどれだけ描けているか。

 ○小説を書くために
  ①ここまで歩んできた自分はなぜ小説を書きたいという思いになっているのかを考えたい。
  ②人は何に興味や関心をもつのかを考える。おのずと光を当てて書く対象が決まる。
  ③何に光を当てて、何に眼差しを向けて書くかを考えて、書いていく。
   ※私(高山氏)の場合、光を当てて書く対象は?
     ・自分の抱えている「負」の部分、すなわち「人間の持つ闇」の部分を題材に
      光を当てて書いている。
   ※ある作家の言葉から(抜粋)
     ・光が真実を隠し、闇が偽りを暴くこともある。
      闇に目を凝らせば真実が見えてくるかもしれない。
     ・自分の暗部を、恥ずかしがらずに、かつ、飾らずに、過ぎた憐れみも求めずに
      さらけ出し、裸になって書く必要がある。

 高山先生の優しい笑顔で語られる言葉の一つ一つ。しかし、その言葉に込められた小説への向き合い方は大変に厳しく、私たちの胸に切々と響くものとなりました。


◆小説を書くとは
 お話の中で、車谷 長吉(くるまたに ちょうきつ)氏の小説を書く時の極意が紹介されました。内容を簡単に紹介いたします。

作家 車谷 長吉の言葉から
-“はずれ者”が一生書き続ける私家版「小説道」
○車谷 長吉の小説の極意 五箇条-
1.計画を立てるべし    人生をいかにやりくりして時間と労力を傾注するか
2.経験を積むべし     他人に向ける視線の2倍以上厳しい視線を自分に
3.勉強量を増やすべし   最低30人、好きな作家の全集を全巻読むこと
              好きな小説一篇を最低50回声に出して読むこと
4.思索を深めるべし    頭が強い人=魂が強い人となれ
5.覚悟をするべし     作者となる覚悟とはつまり死ぬ覚悟


 講習会終了後も、たくさんの質問があり、受講生と先生とのやり取りからも大変に深まる講座となりました。そんな中、ある受講生から
「講座を一つずつ聴くことが新鮮で、初めて学ぶことばかりです。ただ全講座を聞いてから小説を書くというのは不安もあって……」との声がありました。
 すると、先生はにこやかな笑顔で
「もう小説を書き始めていかないと間に合わないですよ。もう書き始めてくださいね。第4回、私の講座では『推敲』について学んでいきます。とても大切なところですので、ぜひご自分の作品作りに推敲を活かしていってほしいです」と答えておいでました。
 受講生の皆さんにとって本講座は、作品作りに対する向き合いかた、作品作りへの意欲の灯火・期待感が心に生まれるものとなったようです。
 講座では、小網 春美先生(『飢餓祭』同人)から受講生の皆さんに
『「金沢創作工房」へ自作品を出すことを目標にしてください』との言葉もありました。そんな目標に向けて歩み出す第2回高山 敏先生の講座となりました。高山先生、受講生の皆さん、充実した講座の時間をありがとうございます。

 第3回は7月9日(土)「小説の文章」です。講師は第1回講師を務められた小網 春美(こあみ はるみ)先生(『飢餓祭』同人です。申し込まれた皆さまの参加をぜひお待ちしています。


      



〇5月21日(土)第1回 小説講座 ~短編小説を書いてみよう~ 

短編小説の魅力について

講師: 宮嶌 公夫(『イミタチオ』同人)

 

 小説講座がスタートしました。第1回目講師は、文芸誌『イミタチオ』同人 宮嶌 公夫(みやじま きみお)先生でした。テーマ「短編小説の魅力について」で、村上春樹氏「カンガルー日和」(講談社文庫)もテキストに使用しながらの講座となりました。
 今年度は、宮嶌先生はじめ次の先生方が講座を担当されます。
 ・寺本 親平 (てらもと しんぺい)先生(小説家)
 ・剣町 柳一郎(つるぎまち りゅういちろう)先生(小説家)
 ・皆川 有子 (みながわ ゆうこ)先生(『櫻坂』同人)
 以上、4名の先生方で、「小説の実作①」「提出作品の批評(個別指導)」「小説を読む①②」「小説の実作②」「作品批評と推敲①②(個別指導)」をテーマに「書く」「読む」「推敲」を連動させての歩みとなります。

 第1回目宮嶌公夫先生の小説講座は、スタートにふさわしい熱気ある充実したものとなりました。概要を紹介いたします。


◆小説とは?
  ・前提として → 虚構であること、読み手を想定していること
  ○主題がはっきりしている
  ○構成がきっちりしている
  ○描写がしっかりしている
 宮嶌先生からは「主題」「構成」「描写」が三位一体となってはじめて小説創作につながるとのお話がありました。具体的な例示をいただいて、小説の基本をわかりやすく教えていただきました。

◆短編小説とは?
  ・前提として → 様々な制約の中でうまれる作品
  ○分量的な制約 → 今回は400字詰め原稿用紙で20枚程度を想定して
  ○内容的な制約 → 広がりすぎないように配慮して
  ○構成的な制約 → 時間、空間的な制約を大切に
 宮嶌先生には「短編小説だからこそ大切にしていかねばならないことがある」と、それぞれの制約について実践に活かすべく説明いただきました。

◆魅力ある短編小説を作るには?
  ・前提として → 制約を克服するところから始まる
         → 基本的な原稿用紙の使い方がされている
  ○内容面 → 絞ること
  ○構成面 → 密度を濃く
  ○描写面 → 取捨選択を大切に
  ○全体として → 読んで「アレッ」と違和感を覚えたら、そこから読者に
           読み進めてはもらえない。
           話に引き込まれていく自然な展開にしていかねばならない。


 宮嶌先生には、読み手を意識していくことで小説としての魅力が高まっていくことを、具体的に教えていただきました。独りよがりではなく、絶えず読み手を意識しての小説創作が大切であることを伝えていただきました。

 この後、村上春樹氏「カンガルー日和」の作品を全員が読んで、本作品を例に「物語の内容」「物語の構造」「描写」「物語の主題」等について、大切なポイントを伝えていただきました。講座の中で、受講者の感想・質問も交えての貴重な学びとなりました。
 また、自作資料には宮嶌先生から「基本的な文章の書き方と基本的な原稿用紙の使い方」について具体的な14項目の話がありました。宮嶌先生から「小説に向き合う心の在り方」と「小説を書く時の基本的な留意点」を一つずつ学んだかけがえのない講座となりました。
 今年度、宮嶌先生には、いくつか講座をお引き受けいただいています。第1回目の講座は、これからの小説創作への期待感いっぱいの講座となりました。宮嶌先生、ありがとうございました。

 第2回は6月18日(土)「小説の実作について①」です。
 講師は皆川 有子(みながわ ゆうこ)先生(『櫻坂』同人)です。皆様の参加をお待ちしています。次回使用するテキストとして『小川洋子氏 「海」(新潮文庫)』が必要です。受講される方はご準備をお願いします。


      



〇5月16日(月)第3回 出前講座 北陸学院中学校3年 

作った俳句(取り合わせ)で「句会」をしよう

講師: 竪畑 政行(石川県児童文化協会 理事長)

 

 竪畑先生が生徒作成の俳句から7句選出し、それを担任の玉作先生が毛筆で清書されて、みんなに紹介しました。
 まず竪畑先生から
  ・誰の俳句かわかっても、作者は最後まで秘密にしておくこと
  ・自分の俳句だということも秘密にしておくこと
 といった約束があり、学習をスタートしました。

 次に7句を提示し、その中から自分の「イチ押し」の句を選んで、理由も書く時間をとりました。7句をご覧ください。右は句会においての感想の一部です。
 1 春近し野菜スープとパンひとつ    …… 生き生きとした風景が見えるようだね
 2 父入院祈り合わせる春の月      …… 家族の気持ちが伝わる。私もそうするかと
 3 見たこともない漢字ばかりだ朧月  …… 朧月が漢字だからこそ光るんだよね
 4 新しいボールペン買う風光る    …… 使い古し-優しい作者の気持ちがある
 5 外耳炎激痛きたる入道雲      …… 入道雲が激痛と化学反応を起こしている
 6 余寒の夜まだかまだかと君のLINE  …… 竪畑先生お薦め。余寒や英語の表現さすが
 7 ミルクティー飲んでまったり春の雨 …… 雨の日のまったりとした気持ちが伝わる

 担任の玉作先生の心こもったきりりとした書と、竪畑先生の優しい促しもあり、自分の思いを素直に表現していく生徒の姿がありました。それぞれのイチ押しを挙手してもらい、
     ◎最優秀賞7句目(ミルクティー)  
     ○優秀賞2句目(父入院)  
     ○優秀賞3句目(みたことも)
 に決定しました。

 竪畑先生から、手作り賞状を授与された生徒たちは、本当に嬉しそうでした。
 北陸学院中三年生のみなさんは、とても友達を大切に想う生徒で、俳句の一句一句にもそれがよく表れていました。
「祈り合わせるとあって、家族みんなの様々な思いが伝わってきた」
「きっとみんな、祈ることしかできなかったんだと思う」
「入院した父にも春の月を見てもらいたいという思いがあった」
 など、ジーンと胸にくる言葉があふれ出た1時間でした。
 これからも素直な優しさあふれる北陸学院中の生徒は、俳句に親しみ、これからも俳句づくりに取り組んでくれることと思います。素敵な出会いに心から感謝いたします。ありがとうございました。


      



〇5月14日(土)第1回 小説入門講座 

人はなぜ小説を書きたくなるのか

講師: 小網 春美(『飢餓祭』同人)

 

 悪天候の中でしたが、13名の方にご参加いただきました。定員10名程度のところ、13名ぎりぎりで応募を締め切らせていただきました。当日朝も申込み願いがありましたが、お断りせざるをえず、申し訳ありませんでした。
 小網 春美(こあみ はるみ)先生の穏やかで優しく、しかし大変重みのある一言ひとことを逃さまいとする、凛とした空気の中で講座は進んでまいりました。一部、講座内容をご紹介いたします。


◆小説を書くにあたって
  ・小説とは「人間を描くこと」が大切
  ・幼年期の屈折した思い、挫折体験は、書く力へつながる
  ・上手な文でなくても心打たれることがある。それは作者が「人間を描いている」からだ
  ・書き言葉にこそ力がある
  ・小説を書くのはしんどい。でも楽しい。その楽しさに取りつかれてしまう時がある
  ・小説は100回読んだら100回直すところがあるもの
  ・小説は基礎が大切 基礎作りを大切に


 一時間半の講座はあっという間でした。ほかにも、小網先生のおすすめの本の紹介、小説を書くために普段の生活で心がけていかねばならないこと、誰の視点で書くかをしっかりと意識していくことが大切であること、長編小説と短編小説の違いと書き方の工夫、小説の書き出しと終末の大切さ、小説の最後の1行で作品の良し悪しが決まること、起承転結への思いなど……。落ち着いた中に噛みしめるような小網先生のお言葉、先生の豊かな経験に裏打ちされた貴重なお話を伺う、大変に充実した時となりました。
 小網先生からは受講者に
『「金沢創作工房」へ自作品を出すことを目標にしてください』との言葉もありました。これからの学び・小説づくりへの期待感あるスタートとなりました。

 第2回は6月11日(土)小説を書く力です。講師は 高山 敏先生です。申し込まれた皆様のご参加をお待ちしています。


      



〇5月13日(金)第2回 出前講座 浅野川中・西南部中学校 文芸部

金沢城公園を散策して俳句を作ろう

講師: 小西 護(金沢文芸館 前館長)

 

 金沢城内に両校文芸部員15名が訪れました。眩しいばかりの新緑の上を気持ちよさそうに駆け抜けていく燕たち、堀に凛と並び咲き誇る杜若等、素晴らしい景色の中で俳句創作活動が行われました。講師は、金沢文芸館の前館長 小西 護(こにし まもる)先生です。

◆主なプログラム
 1 金沢城公園を散策して俳句を作ろう。
 (1)グループごとに散策して、俳句作りの素材を見つける。
 (2)メモしながら俳句を作っていく。

 2 金沢城公園からの帰りも散策を楽しんでいく。

 3 金沢文芸館1F交流サロンにて俳句を作る。
 (1)一人一人が短冊に俳句を書き込む。
 (2)白板に完成した俳句の句会を行う。
 (3)小西先生が生徒たちと共に、俳句紹介、添削、アドバイスをしていく。
 (4)活動のふりかえり


◆吟味した俳句へと
 生徒たちの力作が白板にずらりと並びました。「オー」「いいね」と反応を交えながら、両校の子どもたちが仲睦まじく句会を楽しみました。小西先生のアドバイス後の俳句を一部だけご紹介します。(  )内は添削前の本人の俳句です。
  「白壁の 歴史の証 しみ一つ」(真っ白に 歴史の証 しみ一つ)
   ※白壁とはっきり書いたら、あなたの思いがより伝わるよね。

  「五月雨や 足音ひびく 夜明け前」(夜明け前 足音ひびく 五月雨(さつきあめ))
   ※五月雨を「さみだれ」と読ませると、よりすっきりした句になるね。

  「見上げれば 曇天の中 舞うトンビ」(見上げれば くもりの空に トンビ舞う)
   ※曇天としたり舞うトンビと体言止めにすると、より伝えたい気持ちが表現されるね。

 添削後の子どもたちの感嘆の声が、何度も会場に響きました。友達に対しての応援の気持ちがあふれた温かな句会となりました。両校の子どもたちの柔らかな雰囲気の中、お互いを大切に思い合っている姿が素敵でした。
 また、小西先生の「ここがいいね」「こんな表現がいいよね」と温かな声掛けいっぱいのご指導は、本当に素敵でした。鑑賞している子どもたちと共に、気持ちを盛り上げながら添削されていく小西先生の姿が、印象的な時間となりました。小西先生、ありがとうございました。

 中学生のみなさん。今回のような文芸部活動に限らずに、いつでも金沢文芸館に顔を出していただけたらと思います。いつでもお越しください。お待ちしています。


      



〇5月9日(月)第1回 出前講座 北陸学院中学校3年

取り合わせの俳句を創ろう

講師: 竪畑 政行(石川県児童文化協会 理事長)

 

 新緑の眩しい木々に囲まれた小立野台地に位置する、北陸学院中学校にお伺いしました。子どもたちが楽しそうに校舎内を行き来する中、中学3年生の国語「取り合わせの俳句を創ろう」の学習に取り組みました。講師は、石川県児童文化協会 理事長 竪畑 政行(たてはた まさゆき)先生です。


◆主なプログラム

 1 取り合わせの俳句を鑑賞しよう
 (1)取り合わせの俳句を鑑賞しよう
   ①新聞投句から2句提示
     「三軒のためのバス停つづみ草」
     「コーヒーにミルクたっぷり春炬燵」
     ※取り合わせをすると俳句が良き化学反応を起こすよ。

 2 次の2句の十二音と季語を取り合わせてみよう
 (1) ①(    )初めて君を呼び捨てに  ← 春の風、春の水、春の月
     ②さかあがりやっとできたよ(    )  ← 風光る、春の風、山笑う
     ※子どもたちは思い思いの季語を取り合わせて、
      一人一人が思い描いて楽しみ始めました。
      自分の心の中で化学反応を楽しみ始めたようでした。

 3 取り合わせの技法で俳句を創ろう
 (1)何気ない日常を十二音でつぶやいてみよう。
 (2)つぶやきに合う季語をみつけよう。
 
 一生懸命に俳句を創ろうとする子どもたちの意欲的な姿がありました。各々季語を吟味したり、長い時間、教科書の俳句を見つめたり、頭を悩ませる子どもたちの姿を見て、竪畑先生はこう続けられました。
「ちょっと先生が悪かったね。みんなに俳句を創るのを急がせ過ぎてしまったね。何気ないことでいいんだよ。例えばね」
「君は今日の朝、何を食べたかな?(ごはんとヨーグルトです)なるほどね」
「ごはんとヨーグルトと書いてみるよ。白いごはんとヨーグルトとして…そこに季語を入れてみよう。化学反応がおきるかもしれないよ」
 竪畑先生が次の季語を入れて俳句を詠まれました。

     衣がえ白いごはんとヨーグルト

 子どもたちはハッとして柔らかな表情になりました。何気ない朝ごはんのメニュー「白いごはんとヨーグルト」と「衣がえの白ワイシャツ」が、化学反応を起こすのを心に感じたようでした。取り合わせを楽しみ始めた子どもたちがそこにはいました。
 子どもたちは学習終了時間を迎えましたが、次から次へと俳句を手にして持ってくるようになりました。本来は一時間のみの出前講座の学習活動でしたが、日を改めてみんなで句会を行うこととなりました。竪畑先生も駆け付けてくださることとなりました。北陸学院中学校の子どもたちの一生懸命さと誠実さ、そして子どもたちの日常の言葉を宝の言葉に魔法のように変えていかれた、竪畑先生の愛情に心温まる一時間となりました。

 次回の句会は5月16日(月)に決まりました。また学習の様子をお伝えしていきますね。


      



〇5月8日(日)第1回 朗読会『青春の門 筑豊編』

思春期を迎え苦悩する信介の成長

朗読: 髙輪 眞知子(朗読小屋・浅野川倶楽部代表)

 

 五木寛之の小説『青春の門』第1部・筑豊編は、「週刊現代」に1969年から70年に連載された作品ですが、全面的な加筆を経て、1989年に改訂版としてまとめられました。
 筑豊で生まれた伊吹信介(いぶき しんすけ)が、幼い頃に死んだ父、女一人で家を守る母、情に厚い竜五郎らに見守られて、幼馴染である織江との愛を育みながら成長していく物語です。

 第1回朗読会が、朗読小屋・浅野川倶楽部の代表 髙輪 眞知子(たかなわ まちこ)さんにより行われました。誰もが悩む思春期の場面。髙輪さんには、若葉の香りいっぱい初夏の薫風のような朗読をいただきました。
 今年度は、昨年度の『青春の門』筑豊編 前半部分の朗読に引き続き、筑豊編 後半部分の朗読を、12月まで8回シリーズとしてお聴きいただきます。

      *     *     *     *     *     *     *

 

 伊吹信介は、恩師 早竹先生に会うために田川の街にやってきました。思春期を迎えた信介。彼自身、快楽の行為への誘惑と、それを止めようとする決心を貫き通せない自身への不快感。信介は早竹先生に、自身の心の葛藤を洗いざらいぶちまけて、どうすればいいかを聞きにやってきたのです。信介の悩みに真剣に答えていく早竹先生の体を張っての対応は、いろいろな誤解を生むこととなります。しかし信介自身、心の中が混乱しながらも早竹先生の力で、頭の中に鉛をつめたような重苦しさは、嘘のように消えていったのでした。

 いろいろな噂のなかで転入生である信介は孤立していました。そんな時、信介の中学校に東京の音楽大学を卒業した、若い女教師 梓旗江(あずさ はたえ)が赴任してきました。異性として強い印象を与える梓先生に、信介は心惹かれていきます。
 ある時、自転車が故障して困っていた梓先生を、オートバイに博多まで乗せて助けます。力いっぱいエンジンをふかせ、二人は八木峠に向けて爆音をひびかせながら疾走します。
 用事を終えて、梓先生は信介を誘って、海の見える西公園の丘の上へ連れていきます。夕日を見ながら自らの恋の悩みを信介に打ち明けて、体を震わせ泣く梓先生。そんな梓先生を好きになっていることに気づく信介でした。
 その晩、信介が梓先生を家まで送り届けて帰ると、塙竜五郎から「わしの息子にならないか」「信介の母親とわしが夫婦になるのはどうか」といった話がありました。「信介の母親を昔から好きで惚れていること」「信介のことも好きであること」を、まるで同年輩の友人のように熱心に身を入れて話す竜五郎でした。「大人の世界には自分の知らないことがたくさんあるのだ」と、信介は早く大人になりたいと、心の中でつぶやくのでした。
                              (「女の匂い」まで)


いよいよ、筑豊編の後半部分の物語が始まりました。第2回は6月12日(日)14時からです。「黒い犬の影に」からの朗読となります。ぜひ、ご参集ください。お待ちしております。


      



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