金沢文芸館

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文芸館だより(ブログ)

文芸館だより R6年度

〇6月19日(水) 出前講座 杜の里小学校2年生

金沢の民話を学ぼう

講師 : 吉國 芳子

 金沢市立杜の里小学校2年生「金沢の民話を学ぼう」の学習で、吉國芳子さんの読み聞かせを各クラスごとで実施しました。全プログラムから抜粋して紹介します。


1 「あんたがたどこさ」
 「さ」の時に手拍子を打つバージョン、「さ」の時に手拍子しないバージョンの2通りの歌い方で子ども達は童謡にチャレンジしました。唄いながらする(しない)手拍子では、間違えることを臆せず堂々とチャレンジしていく勇気ある子ども達の姿が印象的でした。エネルギッシュな杜の里小学校の子ども達との出会いとなりました。


2 紙芝居「子育てゆうれい」
 紙芝居が始まる前、「幽霊のお話だよ」の吉國さんの声に興味津々の子ども達でした。吉國さんの拍子木に合わせた手拍子で紙芝居が始まりました。エネルギーある子ども達は、いつの間にか背筋が伸びて、輝く瞳で紙芝居の世界に入り込んでいきました。
 まさに息を呑むような集中力ある静けさが訪れました。吉國さん演じる母親、飴屋の主人、和尚さん、そして赤ちゃんらを見事に使い分けた声に、登場人物の姿が今目の前にいると思う世界が広がっていきました。
 最後に、吉國さんは、お寺と住職の写真、そして幽霊となった母親の絵を子ども達に見せました。お話が伝わる金石「道入寺」と円山応挙作と言われる「子育て幽霊の墨絵」の写真でした。最後、教室に帰る時には円山応挙作と言われる子育て幽霊の絵に手を振りながら一人一人が「さようなら」をしていく子ども達の姿がありました。子ども達にとっては「幽霊」というよりも「命が亡くなっても飴を買い続けて赤ちゃんを育てた優しいお母さん」という意識だったのかもしれません。素敵な子ども達の心に感じ入るばかりでした。
 素晴らしい読み手は金沢民話の根底にある優しき世界に子ども達を誘うのでしょう。優れた読み手と感受性高い子ども達が一緒に創り出した伝承文芸の世界がここ杜の里小学校にありました。


3 語り「おばけ学校の三人の生徒」から
 2022年1月に亡くなられた児童文学者「松岡享子」氏の作品を、吉國さんが語りと体表現で演じられました。内容を紹介します。
 おばけ学校の三人の生徒(一年生、二年生、三年生)は立派なおばけになるために修行を重ねています。夏休みを迎えた三人の生徒たちに、先生はテストをすることになりました。先生から与えられた課題は次のとおりです。
・おばけの「こうもりの羽ばたき」
・おばけの「足音の立て方」
・おばけの「人をびっくりさせるやり方」
一年生、二年生、三年生と、順に吉國さんは絶妙な語りと豊かな体表現力で、三人の生徒を演じ分けていきます。先生から「こんなのはだめだ!」「もうすこしだな!」「とってもいいじゃないか。マル!」と、その度ごとに生徒に語りかけていきます。もう杜の里小の2年生は吉國さんの語りと体表現に夢中になっていました。
 友だち同士で笑い合う素直な子ども達がいました。エネルギッシュな中に、心豊かな感性を持つ子ども達がそこにはいました。


4 パワーポイント「法船寺のねずみたいじ」
【あらすじ】
 金沢市の新橋と御影大橋の間、中央通り「法船寺」の話です。そこではねずみが悪さばかりをして和尚さんも困っていました。そんな時、近所のおじいさんが一匹の子猫を持ってきました。なんでもその子猫の母親はよくねずみをとる猫で、子どももよくねずみをとってくれるだろうと思って村人が持ってきてくれたのでした。
 しかし、子猫は大きくなっても寝てばかりでねずみをとろうとしません。そんなある日、和尚さんはお寺の猫の夢を見ます。
「和尚さん、あのねずみはただのねずみではありません。能登の鹿島に強い猫がいます。私は助けてもらいたいと思います」と猫は言います。
 2、3日して、お寺の猫は見たことがない猫を連れてきました。そして、2匹の猫は本堂の天井裏に上がっていきました。「ニャー、ニャー!」凄まじい戦いです。和尚さんもお経を読んで応援します。ついに、ねずみは天井から落ちてきて、お寺の2人のお坊さんに退治されました。しかし、2匹の猫はねずみの毒気にあてられたのでしょう。天井裏で下に落ちていったねずみをにらみながら死んでいました。
 和尚さんは、その2匹の猫のためにお墓を作って毎日拝みました。今も法船寺には義猫塚(ぎびょうづか)といって、立派な猫のお墓が残っています。

 子ども達は不思議な金沢民話の世界に引き込まれていました。まるで自分が勇敢な猫になったように応援している子ども達がいました。中には、猫の模様が入ったハンカチを私たちに見せてくれる子どもの姿もありました。読み聞かせが終わっても、吉國さんのもとにたくさん集まり歓談している子ども達の姿がありました。


 杜の里小学校2年生は、パワフルで思った、感じたことを素直に声や態度で表現していく子ども達でした。読み聞かせや語りに聴き入る姿の集中度は高く、キラキラと輝く瞳が印象的でした。

 他にも吉國さんは手品にもチャレンジしました。が、残念ながらすべて失敗に終わってしまいました。でもそんな失敗を誰一人笑うことなく、さりげない優しさで包み込む優しさある子ども達でした。
 杜の里小学校の皆さん方の健やかな成長をこれからも心から願っています。素敵な出会いをありがとうございました。そして充実した時間を紡ぎ出して下さった吉國さん、ありがとうございました。
 次の学校出前講座は、7月8日(月)金沢市立三和小学校5年生3クラス90名の皆さんです。各クラスで実施する3時間の講座予定です。講師は石川県児童文化協会理事長の 「竪畑 政行」さんで「俳句の学習」です。
 夏の季語を使っての俳句学習です。楽しみに待っていて下さいね。




〇6月15日(土)第2回 小説講座

小説の実作について①

講師 : 藪下 悦子(やぶした えつこ)(小説家)

 第2回小説講座です。講師の藪下さんは、童話作家、小説家、そして『櫻坂』同人です。また、小説『こおりとうふ』で、第50回泉鏡花記念金沢市民文学賞を受賞されています。今年度は、藪下さんから貴重な講義をいただく時間を設けました。
 内容を抜粋して紹介いたします。


1 自己紹介と事前アンケート項目から
(1)小説を書く目的をもっているか?
  〇明確な目標を持ちましょう。
・文学賞に入賞する ・作家になる ・自費出版する ・同人誌で発表する 等々

※ハリーポッターの作者「J・K・ローリング」は、小説家として全く日の目を見ずに、貧困と心労のために深いうつ病になっていた。そんな彼女が30歳で「ハリーポッター」シリーズを完成させて巨大な富を得た。貧困な中、コーヒーをすすりながら執筆した作品が大ヒットした作者。ここにも夢物語があるのではないか。

※小説は読んでもらうためにあるもの。その意味で書きっぱなしにしておくのはいけない。いろいろな文学賞に応募していくのも大切なこと。あなたが書いた作品は世の中に出してやらねばならない。


(2)書く時間をどれだけ確保しているか?
  〇時間は確保するものです
・毎日時間をきめる。
・1週間に書く曜日と時間をきめる
・朝でも良い。隙間時間でも良い。時間を確保する。

※「書く時間がない」を理由にしないこと。書かないと筆力は落ちるもの。


(3)書きたい小説の強い構想はあるか?それは原稿用紙何枚くらいの予定か?
読んでほしい人はいるか?具体的に投稿する予定の文学賞はあるか?

  〇具体的な構想を持つ事が大切です
・「読んでもらいたい」という強い思いこそ必要だ。
・具体的に考えていくことが必要だ。

※例えば「時代小説」であれば、嘘は通用しない。正しい知識が必要で図書館での地道な調査をしていく時間が大切である。


(4)小説を読んでいるか?小説を書くことを目標にしてライバルや友はいるか?

  〇小説を読むことは絶対に必要。切磋琢磨し合う友やライバルが大切だ。

・自分が書こうとしている小説(原稿用紙枚数)と同じ長さの作品を読んでいく。

・自分の力を高めるために、意識して作品を読むことが大切だ。
・違うジャンルの本も読んでいくことで広がりあるものとなる。
・「あいつも今書いているんだ」と思える友やライバルが必要だ。
・前向きに考えられる同人がいると良い。


2 小説の実作について(1)

➀小説とは自分が創り出した世界を、文字により読者に見せ、感じさせるもの

・知っている世界から書いていく
・設定力を鍛えていこう
・まず視点を決めよう
・説明しすぎないこと。描写で書いていくこと
・自分の経験と重ねて読んでいくこと

・知識をひけらかせてはならない。また教訓めいたものは誰も見たがらない。

・登場人物の心を描いていこう

➁「うまい小説」と「よい小説」の違いは?「読み物」と「小説」の違いは?

・「うまい小説」はスラスラと読める。でも内容がないものが多い。
「よい小説」は粗さがあるかもしれない。でも読み手の心に爪痕を残すものである。

・「読み物」は出回っていてパターン化したもの。焼き直しがあり予定したとおりのものである。
「小説」とは読み手の心に残るものである。


➂小説のパターンは今までに書き尽くされている。だがその中でも、自分しか書き得ないものを、自分でしかできない切り口で。どう書いていくか。

・必然性があるものを。偶然も重なっていくと面白くなくなる。

・インプットがあってこそアウトプットがある。でもそのままでアウトプットしたら他の人と同じものになる。自分の形としてアウトプットしなければならない。

・既成のものと同じものではない。いつもと違う方向で書かねばならない。悪人を「悪」としてとらえてしまうのではなく、悪人の心を見つめて「悪人の正義」といった見方で人を見ていくことも大切である。
心の影を書くのが大切なのだ。視点を変えて書いていくのも大切となる。

・知識のひけらかしほどつまらないものはない。教訓めいた話など誰も読みたくない。

・人はストーリーを読みたいのではない。人物の心を読んでいきたいのだ。

・性格的にも欠陥ある人物がいて、そこに努力があり、共感があり、感動があるから小説となるのではないか。


④小説を書くことに王道はない。たくさんの小説を読み、たくさんの小説を書きあげ、推敲をして文章を磨き、目標に向かって挑み続けること

・自分の書いたものを書きっぱなしにはしないこと。読み返さないのではなく、推敲をし続けることこそ大切だ。

・初稿を推敲して磨くこと。そして合評をして他人に読んでもらうこと。耳の痛いところを指摘してもらうこと。耳の痛い話は取り入れていく。小説は作品が一人歩きしないことが大切だ。

     

⑤書かない理由を探さないこと

・「忙しくて書く時間がない」は理由にしてはならない。

・「書きたいものがないから書けない」ではなく「ないのだったら探しましょう」



 『「自分の作品を世の中に出して多くの人に読んでもらいたい」「いつか文学賞をとって大金を手にしたい」等、どんな理由でもよい。明確な目標を持つ事が大切なのです』と語る藪下さん。小説家として日々研鑚に励み、努力を重ねてきたからこそ、説得力ある講義となりました。
 最後、受講生から「藪下さんは、どんな目標で小説を書かれているのですか?」との質問がありました。藪下さんは2つの答えを語られました。
➀出版社から依頼を受けて、世の中に自分の本を出して小説を読んでもらうこと
➁自分の時代小説が世の中に出た時、そのインタビューで私は言いたいことがある。
 「私の時代小説の師は『剣町柳一郎』です!」と。
 私には、天国におられる剣町柳一郎さんが、にっこりと微笑んでおられるように思えてなりませんでした。「小説を書くには明確な目標を持つこと」と語られた藪下さんです。
 これ以上に明確な目標はないのではないかと思えてなりませんでした。藪下さんには、素敵な切磋琢磨し合う同人(友、ライバル)と同時にかけがえのない大切な師が心の根底に存在しておられて、藪下さんの心を支えておられるのだと感じ入るばかりでした。
 藪下さん、貴重な講義をいただきました。心より感謝申し上げます。

 次回の講座は7月20日(土)Aグループ(皆川先生、宮嶌先生)、7月27日(土)Bグループ(皆川先生、藪下先生)で提出作品の批評会です。受講生のみなさんにはどちらのグループかをお伝えしていきます。
 次回も充実した講座をと思います。受講生のみなさん、参加の方、よろしくお願いします。




〇6月15日(土)第1回 短歌入門講座

「ようこそ短歌の世界へ」   ~どんな歌が好きですか~

講師 : 栂 満智子(短歌雑誌「新雪」編集人)

 入門講座の開講です。講師は、短歌雑誌「新雪」編集人を務め、ご自身の短歌集「ゆきあかり」にて第48回泉鏡花記念金沢市民文学賞を受賞された栂 満智子さんです。
 講座は全3回で、第1回「ようこそ短歌の世界へ」、第2回「歌を詠む−感動を言葉に」、第3回「歌会を楽しもう」となっています。第1回講座内容の概要をお伝えします。


1 受講生の好きな短歌、自作(家族作)の短歌の紹介から
 自分の好きな歌一首、または自作の歌を紹介していきました。一首ごとに栂さんの解説をいただきながら講座は進んでいきました。紹介いたします。

・韓衣裾にとりつき泣く子らを置きてぞ来ぬや母なしにして

読み方知らず

・七重八重花は咲けども山吹の実のひとつだになきぞ悲しき

太田 道灌

・花の色はうつりにけりないたづらにわが身世にふるながめせしまに

小野小町

・靴紐を結ぶべく身を屈めれば全ての場所がスタートライン

山田 航

・大空にとけゐるやうなガラス窓無心に羽ばたく鳥を撃ちたり

野村 義範 ※受講生自作

・絶望もしばらく抱いてやればふと弱みを見せるそのときに刺せ

木下 龍也

・紙切れを幹に押しつけ歌しるす山人われに春は来にけり

大瀧 市太郎 ※ご家族

・京かのこ青葉の庭に色映えて用水の流れに風渡るらん

大谷 悦子 ※受講生自作

・田子の浦にうち出でてみれば白妙の富士の高嶺に雪は降りつつ

山部赤人

・葉ぼたんに日々飛び来たる蝶のゐて蒴果と見まがふ青虫うごく

森田 外志枝 ※受講生自作


 受講生が好きな短歌、または自作や家族が詠まれた短歌を持ち寄り、自己紹介をしていきました。栂さんは受講生が紹介していく一首一首を慈しまれるように寄り添い、一人一人にお言葉をかけて下さいました。
「万葉集からですね。いつの時代も変わらぬ親子の情愛の深さが感じられる歌ですね」
「短歌はリズムと言葉が大切ですね。言葉は考え続けていると突然降ってくるものです」
「短歌は暗誦性が大切です。ぜひ言葉にして声に出して何度も詠んでいただきたいです」
「短歌は歌の記録になります。心の動きや思ったことが記録されていくのですね」
「みなさんの心の中に残る、心のつぶやきをためていってくださいね」
「一日一首、週に一首、自分の心の中で伝えたい歌を詠んでみてください。そんな習慣をつけていくことが大切です」
「独りよがりになっていないか、読み返してみてください」
「気になる言葉を見つけたら書き留めていってくださいね。言葉の貯金をしましょう」
「ときめきを探して、そんな出来事を歌にしていきましょうね」
「言葉の採取を大切にしてくださいね。自分で考えた言葉が大切なのですよ」
「枕元に手帳などを置いて、突然降ってくる言葉を書き留めていきましょう」
「みなさん、ご自分がシンガーソングライターになったつもりでね」

 栂さんは受講生一人一人に寄り添いながら、温かく優しい言葉で受講生への共感を伝えながら、また時にはアドバイスもいれながら講座は進行していきました。ゆったりとした時間が流れ、ふと気づくとあっという間の90分間でした。


2 愛誦性のある歌から
 栂さんから23首の短歌を紹介いただきました。その中で一部とはなりますが、紹介いたします。※受講生が心に残った11首となります。

・大海の磯もとどろによする波われて砕けて裂けて散るかも

源 実朝

・幾山河越えさり行かば寂しさの終てなむ国ぞ今日も旅ゆく

若山 牧水

・白玉の歯にしみとほる秋の夜の青海のあをにも染まずただよふ

若山 牧水

・君かへす朝の舗石さくさくと雪よ林檎の香のごとくふれ

北原 白秋

・寂しさに赤き硝子を透かし見つちらちらと雪のふりしきる見ゆ

北原 白秋

・木屋街は火かげ祇園は花のかげ小雨に暮るる京やはらかき

山川登美子

・大原女のものうるこゑや京の町ねむりさそひて花に雨ふる

山川登美子

・東海の小島の磯の白妙にわれ泣きぬれて蟹とたはむれる

石川 啄木

・観覧車回れよ回れ想ひ出は君には一日我には一生

栗木 京子

・「寒いね」と話しかければ「寒いね」と答える人のいるあたたかさ

俵  万智

・四万十に光の粒をまきながら川面をなでる風の手のひら

俵  万智



 受講生一人一人の好きな短歌もすべてが違うものでした。他にも、与謝野晶子、長塚 節、正岡子規、大西民子、寺山修司らの短歌が紹介されました。
 第1回の講座は、ゆったりとしたやり取りの中から、受講生一人一人の感じ方の違いを心から楽しんでいく時間となりました。この時間は、温かく、穏やかで、豊かなものとなりました。
 今年の短歌入門講座は10名もの人に参加いただくこととなりました。なかには、ある受講生の友人が「金沢文芸館の小説入門講座の講義がとても充実していて有意義だったんだ。君も何か金沢文芸館講座を受講してみるといいよ」と勧められて入って来られた方もおいでました。
 これからの短歌入門講座も楽しみです。栂さん、本当にありがとうございました。

 次回は、7月20日(土)午前10時30分からです。今回も課題が出ています。
 次回のテーマは「ときめき」です。「ときめき」とは「感動したこと」「発見したこと」「惹かれた言葉と出会ったこと」などです。受講生の皆さんが見つけた「ときめき」を、みんなで紹介し合います。「ときめき」は幾つあっても構いません。
 第2回講座では、みなさんの「ときめき」をもとに、短歌を作成していきます。ご家庭で作られても構いません。
 皆様、多数のご参加をお待ちしております。暑い日が続きますが、皆様、お身体ご自愛ください。




〇6月14日(金) 出前講座 浅野町小学校6年生

短歌について学ぼう

講師 : 三須 啓子(日本歌人協会)

 浅野町小学校6年1組25名、2組25名が参加して、出前講座「短歌について学ぼう」を実施しました。各クラスごとの講座で、講師は日本歌人協会の三須 啓子さんです。講座の内容を抜粋して紹介いたします。


 まずはプリントに沿って授業が進行していきました。
1 短歌とは

・五・七・五・七・七の三十一音で作るリズムをもった日本の詩

・初めの五句(初句)七(二句)五(三句)を上の句、残りの七(四句)七(五句・結句)を下の句といいます。数え方は、一首、二首、と言います。

※まずは短歌の基本について学びました。浅野町小学校の6年生はこれから始まる学習に対してワクワクしている様子でした。



2 作り方について

・俳句のように季語は使わなくてもよい。一句ずつあけないで、1行に書く。

・短歌は耳と目で味わう詩。漢字やひらかな・カタカナの配合を大切に。

・短歌は、思っていること、感じたことを自由に述べることができる。だから汚い言葉を使わないこと。悪口もやめよう。

・歌が出来たら、声に出して読んでみよう。

・言葉の発見は、思いの発見。新しい自分をみつけることかも。


※俳句の学習でお決まりであった「季語」。「短歌は必ずしも季語を入れなくても良い」という言葉に、まず新鮮さを感じている子ども達がいました。

※「自由に述べることができるからこそ大切にしなければならないことがあるのだよ。それはね…「汚い言葉を使わないこと」「悪口もやめること」なんだよ」と三須さんは語られました。三須さんの言葉を噛みしめるように聴いていく子ども達の真剣な眼差しが大変に印象的でした。

※「言葉を大切に」ということを三須さんは子ども達に伝えておられました。それを全身で受け止めていく浅野町小学校の子ども達の素晴らしき姿が随所にみられました。



3 短歌を読んでみよう  ※三須啓子さんからの提示がありました。
 ・消しゴムは小さくなるほど年をとる私たちとは真逆なんだな

※「真逆」という言葉に惹かれている子ども達の意見が出されていました。

 ・黒板のみぞに置かれた消しゴムはさびしそうですひとりぼっちで

※消しゴムを生きている人のように表現をしていることに驚きと感動をもってみつめる子ども達がいました。

 ・弟よおれが卒業した後は絵の具や消しゴムもう貸せないぞ

※「もう貸せないぞ」という強く思える言葉に隠された兄の愛情の深さを感じ入る子ども達がいました。

 ・花がまう真っ青な空見上げれば転校の子を乗せた飛行機

※さくらの花が舞う真っ青な空、そしてその中を飛んでいく飛行機です。そして転校する友達への思いを寄せる作者です。その優しさに心惹かれていく浅野町小学校のみんながいました。

 ・春休みおじいちゃんちのにわのおくかすかに光る雪のけっしょう

※昨年度の日本歌人協会賞に輝いた小学校3年生の作品です。それを聞いた時に自然にどよめく子ども達です。「この歌のすごさに何気なく気づいて驚く」感性の鋭い浅野町小学校の子ども達がいました。素晴らしいです。

 ・「寒いね」と話しかければ「寒いね」と答える人のいるあたたかさ

※俵万智さんの作品です。「寒いけれどあたたかさを感じる」「なんかあたたかさとやさしさを感じる短歌です」と次々に感想を言う子ども達がいました。



 この後、子ども達は、頭に浮かんだ言葉や情景などをメモして、それをもとにして自分で短歌を作っていきました。できた人からどんどんと声に出して自分の短歌を読む子ども達。みんなから自然な拍手をもらっての学習となりました。
 2クラスとも素敵な短歌がいっぱい読まれたのですが、この後、「日本歌人クラブ全日本学生・ジュニア短歌大会」に応募するためにブログでみなさんに紹介することができません。
 「金沢文芸館でも展示していただけたら…」とのことで、時期は未定ですが、金沢文芸館でも短歌を応募いただいて展示していきたいと思います。
 その時は、ぜひご家族揃って見に来ていただけたら幸いです。そして3階 泉鏡花文学賞、泉鏡花記念金沢市民文学賞の作品の数々、そして郷土の作家の作品、2階では五木寛之文庫に触れていただけたらと思っています。
 浅野町小学校のみなさんが、将来に向かって創作文芸である短歌に興味を持って歩んでいかれることを心から楽しみにしています。
 ある子が「私は百人一首が好きです」と言って、好きな歌を紹介してくれました。紀友則(きのとものり)の歌です。

「ひさかたの光のどけき春の日にしづごころなく花の散るらむ」
 ※現代語訳

→こんなに日の光がのどかに射している春の日に、なぜ桜の花は落ち着かなげに散っているのだろうか。


 情景が目に浮かぶ非常に視覚的で華やかな歌です。と同時に散りゆく桜のはかなさに心を寄せている名歌です。私たちに目を輝かせながら「好きだ」と言える浅野町小学校の子ども達に学ぶことが多かったです。
 「ありがとうございました」「また来てください」そんな声を、私たちの前に来て自然に心を込めて静かに語りかけてくれる子ども達がそこにはいました。
 素晴らしい出会いをいただいた私たちが学ぶことが大きかったです。みなさんの作品を短歌大会に応募できること、そして本館にみなさんの短歌を展示できるよう歩んでいけることを嬉しく思っています。
 浅野町小学校の6年生のみなさん、そして校長先生はじめ、担任の先生方、本当にありがとうございました。どうぞ、短歌を創り続けていただけたらと願っています。

 次回の学校出前講座は、6月19日(水)金沢市立杜の里小学校2年生のみなさんで 「お話の読み聞かせ」です。講師は「吉國 芳子」さんです。楽しみにしていてくださいね。




〇6月10日(月) 出前講座 浅野川小学校4年生

三文豪について学ぼう

講師 : 薮田 由梨(徳田秋聲記念館 学芸員)

 浅野川小学校4年生2クラス計48名が参加し、出前講座「三文豪について学ぼう」を 実施しました。2クラスまとめての講座で、講師は徳田秋聲記念館の「薮田 由梨(やぶた ゆり)」学芸員です。まず「三文豪とは」の話から始まりました。


◇金沢の「三文豪」とは
 金沢「三文豪」とは「三人」の「文学者」で「豪い(えらい)人」を表します。
「徳田秋聲」「泉鏡花」「室生犀星」のことです。作風は異なりますが、三人とも故郷の金沢を離れて東京で作家活動を続けました。ふるさと金沢に愛着を持ち、金沢を舞台にした作品も少なくありません。

◆徳田 秋聲(とくだ しゅうせい)
 明治4年、浅野川に近い横山町生まれ昭和18年に亡くなる。 本名:末雄(すえお)
 徳田秋聲は、人々の何気ない日常生活を生き生きと描き出し、そのまま作品に描いています。自然主義文学の作家です。
・洋服が好き ・ダンスが趣味 ・動物が苦手 ・代表作は 黴(かび)、爛(ただれ)
◆泉 鏡花(いずみ きょうか)
 明治6年、浅野川大橋近くの下新町(泉鏡花記念館の場所)に生まれ、昭和14年に亡くなりました。 本名:鏡太郎(きょうたろう)
 鏡花は、心の中で空想したファンタジックできらびやかな世界、幽霊や妖怪などが登場する不思議な夢物語を創り出すのが得意な作家です。鏡花は秋聲とは正反対の作風でお互いに喧嘩することもありました。
・うさぎのコレクター ・かなりのきれい好き ・代表作は「化鳥」「天守物語」
◆室生 犀星(むろお さいせい)
 明治22年、犀川の畔にある千日町に生まれ、昭和37年に亡くなりました。
 犀星は、秋聲・鏡花よりは十数年も年下で、小説家・詩人・俳人でもあります。なかには、子ども向けの作品もあり親しみやすい作家と言えます。
・庭づくりが趣味 ・動物好き ・代表作は「杏っ子」「動物詩集」「蜜のあはれ」


◇世界で一枚の三文豪マップを一人一人が作成しよう。

・プリント「三文豪地図」に描かれているのは『鼓門』『兼六園(ことじ灯篭)』『金沢城』『徳田秋聲』『泉鏡花』『室生犀星』のイラストです。

➀一本目の線を引いてみよう!

「地図の左上にある☆印の右下から出て金沢駅に向かいます。そこからぐいと曲がって徳田秋聲と泉鏡花の間を通って右へ突き抜けましょう。」

②二本目の線を引いてみよう!

「金沢駅の右から出て金沢城、兼六園の下側を通ります。そして最後は右下に突き抜けましょう。ただし一本目の線とクロスしてはいけませんよ。」

 薮田さんの指示を聴いて二本の謎の線をフリーハンドで書いていきます。そして薮田さんから問いかけがありました。
「二本の線は何を表しているのかな?」と。
子どもたちは答えていきます。すぐに「川?」「浅野川」「犀川」と出てきました。
 続けて「犀川に近いところは室生犀星がいるんじゃないのか」とお話してきます。
 浅野川沿いにある泉鏡花と徳田秋聲の記念館、犀川沿いにある室生犀星記念館。三人の作家と二つの川との関わりに自ら目を向けていく子ども達です。
 そして★印が浅野川小学校を表していることに気づきます。もちろん学校のそばには自分で引いた浅野川の線があります。喜びある子ども達の笑顔が満開です。
 二つの川が流れている金沢市。自作の地図を見て三文豪ゆかりの地と二つの川との関わりを自然に学ぶ子ども達の姿がありました。

 次に、十二干支の方位表をもとに、泉鏡花は酉年で「向い干支のウサギ」を大事にしていたことを知る子ども達です。
「鏡花は向かい干支のうさぎをラッキーアイテムしてグッズを集めていたんだよ」
そんな薮田さんの話を聞いた子ども達は自分の干支と向かい干支に関心を持ちます。
「みんなは「うま(午)年」だから、向かい干支は「ねずみ(子)だね」」
「エー、ねずみ? …… でもミッキーも? うわあ!いいかも」と喜ぶ子ども達。
「未(ひつじ)年もいるね。向かい干支は「丑(うし)」だよ」との薮田さんの声です。
子ども達は、泉鏡花の気持ちになりながら、向かい干支を興味深く思い描いていたようです。
「また、秋聲はひつじ(未)年。向かい干支のうし(丑)年は犀星なんだ。なるほど。だからこの二人はとっても仲が良かったのかもしれませんね」
「それに比べて酉(とり)年の鏡花は、秋聲とは描く小説が全く違っていて、ケンカをすることもあったのだよ」との話もありました。
 向い干支からさりげなく「秋聲と犀星の交遊関係」を伝える薮田さん。どんな専門書でも得られない学ぶ喜びある時間となりました。


 徳田秋聲記念館の薮田由梨学芸員には、4年生にわかりやすく授業いただきました。薮田さん、浅野川小学校の先生方、そして子ども達。素敵な出会いをありがとうございました。浅野川のほとりにある浅野川小学校で、金沢偉人の学習で「金沢の文学」について探求している子ども達がいることに感心するばかりでした。
 これから、金沢三文豪はじめ、石川県の数ある作家の作品にふれる機会もあると思います。今回の学びが小さな貴重な火種となって、みなさんの人生において「一つの光明」とならんことを願っています。素敵な出会いをありがとうございました。




〇6月9日(日)第2回 朗読会『青春の門 自立編 後半部』

□命を懸けて織江を助ける信介の男気

朗読: 髙輪 眞知子(朗読小屋・浅野川倶楽部代表)

信介はカオルから織江の居場所を教えてもらいます。信介は意を決して織江を取り戻そうと「照葉」という店に向かいます。そこで信介はヤクザに売られてユカリという名で働いている織江と会います。
信介は「照葉」で北池会の客分である「人斬り英二」と出会います。英二は、自分の身を投げ出して織江を助け出そうとする信介の男気に感心して信介を助けます。
英二とその女「お英」のおかげで、店抜けして信介のもとに戻ることができた織江。
そして命懸けで助けてくれた信介の胸の中で安堵する織江がいました。                     
(「夜の迷路をぬけて」「人斬り英二」から)

*   *   *   *

 60分間ぴったりの朗読でした。今回の場面は、信介が織江を助けるために自分の命を懸けて挑み、北池会の客分で、つい先月、つとめから帰ってきた「人斬り英二」と勝負する緊迫の場面です。もちろん赤子の手をひねるようにやられてしまう信介でしたが、塙竜五郎に恩義ある「人斬り英二」は、信介の一途な思いにほれ込み、人肌脱いでいくことになります。
 緊迫感、臨場感、そして仁義を大切にした世界を、見事なまでに朗読されていく髙輪さんの姿がそこにはありました。
 あっという間の60分間となりました。中には、頷きながら髙輪さんの一言一言を聞き逃すまいとする方もおられました。髙輪さん、ありがとうございました。


 今回、髙輪さんの朗読に対する感想を手紙にしたためてこられた方がおられました。一部ではありますが、ご紹介いたします。

『一昨年、ボランティア大学の研修で館長の熱心な勧めで「あかり坂」(五木寛之作)を拝聴しました。1回目は「朗読とはこんなものか」と興味半分で聞いていました。2回目も同じで「キョロキョロ」していました。ところが篠笛との対決で鳥肌がたち、夜の影静かなる浅野川の情景が浮かんできました。朗読の力と怖さを垣間見た瞬間でした。昨年はボランティア活動仲間を誘い、心が弾む1年でした。
 思えば小学校6年の国語の時間に毎回、「恩讐の彼方」(菊池寛作)の朗読を聞かされ、涙ぐむ生徒もいる中、いつも下敷きに絵を描いている自分がいました。勿体ないことをしたと思います。朗読に目覚めさせていただき、感謝です。(中略)』


 ほんの一部抜粋です。この後も、髙輪さんとお話させていただいたこと、内灘夫人を読んでの感想、作家吉田健一のこと、「あかり坂」と命名された五木寛之氏の作家としての凄さ等、いっぱいの熱い思いが綴られていました。
 「朗読会に導いてくれてありがとうございました」と結ばれたお手紙でした。
 髙輪眞知子さんの朗読の力は、人の生き方にも大きな影響を与えておられるのだと改めて思いました。
 だからこそ、このかけがえのない灯を絶やしてはならないのだと思います。新規の受付もしております。髙輪眞知子さんの貴重な朗読の機会を多くの方々に知っていただきたいと思っております。髙輪さんの朗読はもちろん、こうやって自分の想いをお手紙にして届けて下さった方にも心より感謝いたします。ありがとうございました。皆様のおかげです。

 さて次回、髙輪眞知子さんの朗読会は「青春の門 自立編」の後半部分3回目です。7月14日(日)14時です。「男の生き方」からの朗読です。ぜひご参集ください。新規の方も受付いたします。心よりお待ちしております。




〇6月8日(土)第1回 詩入門講座 詩というもの1(詩に親しむ)

詩を読み、学び、書こう!

講師 : 木村 透子(詩誌「イリプス」同人)

 今年度の詩入門講座は三人の講師の方にお力いただきます。紹介します。
 井崎 外枝子先生(詩誌「笛」同人)、木村 透子先生(詩誌「イリプス」同人)、 和田 康一郎先生(金城大学非常勤講師)です。
 今年度は、中野 徹先生のご逝去に伴い、新たに木村 透子先生を講師にお迎えしての講座となります。7名の受講生での講座がスタートしました。より深まりある講座を目指して、講師の先生方にも新たな工夫をいただいています。講座から抜粋して紹介します。


1 新たな講師「木村透子」さんのプロフィール紹介から
・1999年頃 金沢市竪町商店街主催「詩のボクシング」らに参加し優勝。
        審査員は、ねじめしょういち、村井幸子、井崎外枝子。
        これから本格的に詩を書き出す。
・2004年  第一詩集『メテオ』(ふらんす堂)を出版
・2005年  宝塚に転居
        大阪文学学校の詩創作課程に入学
・2007年  神戸女子大のオープンカレッジの詩創作と講義の受講
        倉橋健一氏とたかとう匡子(まさこ)氏に学ぶ
        2020年頃まで通学
・2011年  第2詩集『黄砂の夜』(思潮社)を出版
・2015年頃 同人誌『イリプス』に参加
・2022年  金沢市に転居
・2024年  金沢文芸館に詩入門講座の講師となる。


2 木村透子さんの詩との出会い  ―私の愛する詩―
 木村透子さんを詩の世界に誘ったのは『鈴木ユリイカさん「生きている貝」だ』とお聴きしました。木村さんから全文朗読をいただいたのですが、ほんの一部を抜粋しての紹介をいたします。(全文は1200字ほどの詩となります)
  「生きている貝」  鈴木ユリイカ
外では雪が幽かに降りはじめたようだ
「働きすぎじゃない?
 あたしたちって、どうなるのかしら?」
24時間も眠らずに仕事をし
真夜中に帰ってきたあなたが
ものも言わずビーフシチューを食べ
果物の皮をむくのを見ていた私は
何かの不安にかられ あなたに聞いたのだ
音なしテレビの瞬きの中にいたあなたは
いよいよ寝床に入る段になって
ふすま一枚へだてた葉なりの部屋から
ゆっくりと 答えた
「あの貝のこと憶えているだろ?
 ぼくらはあの貝のようになるのさ。」
   (以後、略)
  今まで経験のない長い詩に様々な思いを受講生は持ったようです。
「聞いていると言葉が押し寄せる波のようで、穏やかで温かい気持ちになりました」
「長い詩で自分にとっては戸惑いもあった。自分が愛する武者小路實篤のような短く凝縮した言葉で語るのが好きな自分にとっては、この詩はとても新鮮な感じがしました」
 木村透子さんが詩人としての道を歩むきっかけとなった詩の紹介は、受講生にとっても 新鮮な驚きをもって聞かせていただくこととなりました。


3 『何のために詩を書くか』―参考資料から―
 〇新藤 涼子さんの文章から

「自分のために書かれたものであっても、自己を突き抜けて普遍となる強さと高さがほしい。私たちの目で見えるものの奥や裏に隠されている本当の姿を視通す目を持たなくてはならない。それは現実と真実を発見させることであり、人間世界や宇宙を越えて彼岸にまでも深い洞察を行うきっかけとなる。
詩は夢想や幻想や、独りよがりのとりとめもない自己表白ではないのだ――どうしても書かずにいられないという強烈な意志が必要である」

 〇吉原 幸子さんのことば

「死ぬ代わり殺す代わりに詩を書く。が、生きる代わりに書くのではない」

 〇日高 てるさんの文章から

「創造とは、日常、社会の風景をあなたの思考の器に導き入れて送り出すとき、対話し彼らの語りを記録してごらん、それが表現の一つです」

 〇長谷川龍生さんの文章から

「現実の自明の理を壊していく。その非現実の分野に想像力を伸ばしていく。そうでないと現代詩は愉しくならないのです」

 〇江戸 雪さん(歌人)の文章から

「詩である河野裕子さんに歌を見てもらうときは、必ず歌の奥にある私自身へ突き刺さるような問いを投げられた。『これが本当のあなたの言葉ですか、その答えはあなたの中にしかありませんよ』と。怖かったけれど、自分でも知らなかった心の暗がりを共に覗いてくれた。その時に見た淵は、今でも歌を作るときに佇む場所だ」


 また、今年92歳を迎えた谷川俊太郎さん(朝日新聞 2024年4月28日、29日、 30日 文化面 -未来を生きる人たちへ-から)
〇いきる  「違うもの書くには 変わらなきゃ」
〇はなす  「表現できる自己なんてあるのかな」
〇あいする 「命の基本 好きって単純で力がある」
〇きく   「無意味がえらい 美しく楽しい言葉を」
〇つながる 「言葉って、万人共有のもの」


4 自分のお気に入りの詩を見つけよう
 木村さんは、いろいろな作家の優れた詩を見つけて詠んでいくことの大切を語られました。本講座では、いろいろな本や記事から紹介いただきましたし、重い本を抱えながら「受講生の方によかったら読んでいただきたくて…」ということでいろいろな詩集を紹介いただきました。
 本文芸館に新たに常設しましたのでご覧いただけたらと思います。紹介します。
・詩集「黄砂の砂」     木村透子    思潮社
・季刊「イリプス」05、06、07
・詩集「アナザミミクリ」  藤原安紀子   書肆山田
・詩集「1 サイードから風が吹いてくると」鈴木ユリイカ 書肆侃侃房
・詩集「2 私を夢だと思ってください」  鈴木ユリイカ 書肆侃侃房
・詩集「3 群青君と自転車に乗った白い花」鈴木ユリイカ 書肆侃侃房
・詩集「ウイルスちゃん」  暁方ミセイ   思潮社
・詩集「魔法の液体」    山口洋子    思潮社
・詩集「出口という場処へ」 永井章子    澪標
・詩集「耳凪ぎ目凪ぎ」   たかとう匡子  思潮社
・詩集「官界の行方」    青木左知子   澪標
・詩集「蝙蝠が歯を出して嗤っていた」猪谷美知子 澪標
 3階常設です。ぜひご覧ください。


 木村透子さんの作家としてのお話、そして今回は和田先生も参加され貴重なお話をいただきました。お二人の先生方、ありがとうございました。
 次回は、7月13日(土)「試作詩の批評と推敲」です。試作品の提出は6月21日(金)テーマ「樹」です。皆さまの参加をお待ちしております。




〇6月8日(土)第2回 小説入門講座

小説作りの基本とは

講師 : 小網 春美(「飢餓祭」同人)

 第2回小説入門講座の講師は、小説家の小網春美さんです。小網さんは2023年度、「しずり雪」(能登印刷出版部)にて「泉鏡花記念金沢市民文学賞」を受賞されました。小網さんは、2008年度から15年間、小説入門講座の講師を務め、たくさんの受講生を育ててこられました。また、長い執筆活動の中から学んでこられた教えを講義いただきました。一部とはなりますが、紹介します。


◎小説を書く意味は?
1 小川洋子「深き心の底より」に収められた「人間の哀しさ」から
  ・小網さんは講座の初めに、まず本作品を朗読されました。※次は抜粋です
 子供の頃、自転車に乗った、野菜売りのおじいさんがいた。小雨が降っていた日、商売がすんだおじいさんが家の前に止めた自転車に乗ろうとしていた、不自由な足を両手で持ち上げようとするのだが、すぐバランスを崩してしまう。自転車はぐらぐらし、売れ残った野菜は雨に濡れ、足は頼りなくだらんとしている。しまいにおじいさんは、「乗れん」とつぶやいて、自分をあざけるように弱々しく笑った。(中略)
 私は夜、その光景を繰り返し思い浮かべて泣いた。泣くことが一番ふさわしいわけではないと分かっていたが、他に気持ちを表現する方法を知らなかった。
 単純にかわいそうに思ったからではない。手助けすべきだったのにと後悔したわけでもない。はかなく、哀しい様子を目のあたりにし、深く心に染み入り、いとおしく思う。そんな感じだろうか。でもいくら言葉を継ぎ足しても、足りない気がする。
(中略)
 自分が今目にしたものは何だったのか。当時は見当もつかなかった。わけもわからずただ泣くしかなかった。やがて私は小説を書くようになった。涙の代わりをしてくれる表現の方法を、ようやく見つけた。(後略)
 小川洋子さんの「小説を書く意味」の重さが私たちの心に染み入ってくるような小網さんの朗読でした。本文は1997年5月26日毎日新聞に「あはれの記憶」として掲載されたものからの一部抜粋です。
 講座が終わっても、本文を何度も読み返して小川洋子さんの思いをつかもうとする私たちがいました。
 小川洋子さんの小説は、小説講座でも具体的な本が毎年取り上げられての講座が実施されています。
「小川洋子さんの作品をいろいろ読む中で、小川さんの真意がより深く理解できるのかもしれない」
 そんなことを思わせる講座の始まりとなりました。


2 短編小説を書こう
(1)注意事項は?
➀1週間から1か月に起こった出来事で
➁場所は移動しないで
➂登場人物は4人ぐらいで
④事件は少なく
(2)題材を探そう。普段の生活から
➀人との関わりから題材を見つけていこう
②人を眺めていると小説の種がみつかる
(3)次回の提出作品テーマ「坂」で小説を書いてみよう
➀人は心のどこかにため込んでいるものがある。無から引っ張り出そう。
②坂道があることで人は忍耐強さが身につく。また人の情緒も生まれる。
(4)誰の視点かを考えよう
➀一人称か三人称かを決める
 ・一人称…主観的になる
 ・三人称…客観的になる
②視点は決めたら決してぶれないように。一貫性が大切。
(5)丁寧語、常態語かを決めよう
・丁寧語…です、ます調
・常態語…である調、だ調
※小説は7、8割が「常態語」である。
(6)短い文章を心がけよう
・文章が長いと、主述関係が変わってくる可能性あり。
・長い文章は、論理的に矛盾が生まれやすい。
・しばらく時間をおいて読み返そう。客観的に読むことが大切だ。
(7)文章でなりがちなことと心がけについて
・文章がすべる時は抑制を利かせよう
・自分の文章に酔わないこと。興ざめしてしまう。
・「すごい」「本当に」などは他の文章で表現していこう。
・ありきたりの表現はしない
・「言う」
→「つぶやく」「話す」「吐き捨てる」「小声でささやく」「大声でどなる」
 「口ごもる」「申す」など
・的確な言葉をさがしていく
→まゆをひそめて「……」と言った
→この言葉でいいのかと自分自身で問いかける
・「現在形」「過去形」バランスよく使い分ける
 「現在形」は臨場感が出る。「過去形」ばかりだとつまらない表現となる


 最後には、小網さんから「良い小説を読むこと」「意識して良き小説を読んでいくこと」との話がありました。読んでもらいたい作家名もあげていただきました。
・小川洋子 ・川上弘美 ・重松 清 ・村上春樹 ・宮部みゆき ・宮本 輝
・志賀直哉 ・森 鴎外 ・芥川龍之介 ・三浦哲夫 ・チェーホフ
・ヘミングウェイ など
 金沢文芸館でも上にあげた作家(邦人名)の本を取り揃えています。ぜひ受講生の皆さんには来館いただいてお読みいただき研鑚を積んでいただきたいと思います。お待ちしています。
 本日の講座は、「今日の講座は参加できてよかったです。私は感動しました」と頭を下げていかれる受講生もおられました。
 第2回講座は、小網さんの小説家としての歩み方もふんだんに取り入れての充実した講座となりました。小網さんありがとうございました。

 次回講座は、7月13日(土)「小説を書く力」で10時30分開始です。講師は高山 敏先生です。多数の皆様のご参加をお待ちしています。




〇5月30日(木) 出前講座 馬場幼稚園 年長児
おはなしの会を楽しもう
講師 : 宮﨑 雅子(みやざき のりこ)(金沢おはなしの会)

 金沢市小橋にある馬場幼稚園を訪問しました。はだしで園庭を駆け回る園児たち、ノアの箱舟をイメージした落ち着いた読書スペース、また階段横のスペースには絵本や大人向けの本がずらりと並んで、いつでも親子で読める場が提供されています。どの絵本もよく読み込まれ、実によく手入れ(修繕)されています。素晴らしい読書環境がそこにはありました。
 中に入ると柔らかな笑顔の園児と先生方が「こんにちは」と実に柔らかな声で自然なあいさつをしてくれます。お話できない小さな園児もまんまる目で見つめながら一歩ずつ近づいてきます。たくさんの園児に自然に声をかけている私たちがいました。
 そんな温かで柔らかな声と笑顔あふれる園の中で、年長児26名へのストーリーテリングが始まりました。
 講師の先生は「金沢おはなしの会」の「宮﨑 雅子」(みやざき のりこ)さんです。
 まず本日のプログラムを紹介します。


◆プログラム【宮﨑 雅子さん】
 ①詩  「でたりひっこんだり」 『のはらうた』くどうなおこ(こぐま社)
 ②えほん『ゆかいなかえる』    ジュリエット・キープス ぶん・え (福音書店)
 ➂えほん『へそもち』      渡辺茂男さく 赤羽末吉え (福音書店)
 ④♪手あそび 「ぽっつん ぽつぽつ」
 ⑤おはなし「きしむドア」『英語と日本語で語る フランと浩子のおはなしの本(第2週)』
(一声社)

●プログラムから一部紹介します。
〇えほん『ゆかいなかえる』
4匹のかえるたちの一年間の楽しい物語です。水の中の4つのたまごは、おたまじゃくしからりっぱな4匹のかえるに成長します。かえるたちは、泳ぎの競走をしたり、かたつむりをかくしっこしたり、ときには敵から身を上手にかくしたりと仲良くくらします。
そして夏が終わり、冬がくると、花が咲く春まで眠ります。
かえるたちの楽しげな暮らしが生き生きと語られるえほんです。

◇子ども達の姿から
 「良かったね。上手にかくれているよ」「サギをだませてよかったね」「これは『とうみん』なんだよね」一つ一つの反応がとても温かいのです。みんな自分たちがかえるになった気持ちでの反応をしていく子ども達の姿がとても素敵でした。


〇おはなし『きしむ ドア』
※2つ、みんなにお手伝いをしてほしいことを宮﨑さんは伝えました。
➀「『電気を消して下さい』と言ったらひもを引っ張って『パチン』と言って下さいね」
➁「『ドアを閉めて下さい』と言ったら、声も入れ怖そうに『ギギギ…』(動作まじえて)として下さいね」
※そしておはなしが始まりました。
男の子が言いました。
「おばあさんのうちに泊まりにいっていいですか?今夜はこわがらずに眠れるよ」
そして男の子が眠る時、おばあさんは「電気を消して下さい」と言いました。
(園児はひもを引っ張る動作をしながら「パッチン」と言います)
次にきしむドアを閉めました。「ギギギギギ…」
(手のひらをドアに見立てて怖さいっぱい「ギギギギギ…」と戸を閉めていきます)
もう男の子はこわくて眠ることができません。
※この後おばあさんは男の子が怖くないように、「ねこ」「犬」「ブタ」「羊」「馬」などを順番に連れてきますが、最後には男の子だけでなく動物たちもみんな怖くて泣きだしてしまいます。

◇子ども達の姿から
 子ども達は動物が増えるたびに顔を見合わせて微笑んでいきます。音声化と動作化を入れていくことで、感情移入がよりできるようになったようです。
 最後「馬」が出てきてベット下に隠れることができなくなった時には、子ども達は楽しくてたまらない様子が見てとれました。宮﨑さんの巧みなストーリーテリングで、一人一人の頭の中でお話が見事に組み立てられていくのを感じずにはいられませんでした。


 素晴らしいおはなしの会となりました。おはなしの会が終わっても子ども達の笑顔はそのままでした。子ども達はお別れの時、笑顔で「ありがとう」「さようなら」と話しかけてきて、中には手のひらをパッチンと差し出す子もいました。
 宮﨑 雅子さんの読み聞かせは、誇張された表現、身振りはありません。それゆえにお話の内容が純粋に心に染み入るように届けられている気がしました。
 修錬された巧みな読み手である宮﨑さん、そして「良かったね」と温かな合いの手を入れ、聴き入る子ども達。両者の絶妙なやりとりがあったからこそ、こんな素敵な時間を共有できるのだと思いました。
 金沢おはなし会の宮﨑 雅子さん、馬場幼稚園の園児のみなさん、そして園長先生はじめ先生方、素敵な時間をいただき、誠にありがとうございました。
 子ども達にとって、そして私たちにとって大切な愛を育む幸せな時間となりました。心より感謝いたします。

 次回の出前講座は6月10日(月)金沢市立浅野川小学校4年生の予定です。講師は徳田秋聲記念館の「藪田 由梨」学芸員による「金沢の3文豪」(金沢の文学)の学習です。学芸員さんに学ぶという大変に貴重な機会です。子ども達にとって充実した学習になるようにと思っています。充実した時間としてまいりましょう。




〇5月18日(土)第1回 小説講座
~短編小説の魅力について~
講師 : 宮嶌 公夫(みやじま きみお)(『イミタチオ』同人)

 小説講座のスタートです。受講生は14名で定員いっぱいまで受け入れさせていただきました。高校生から広い年代にわたっての受講で、各世代の方々と交流して多様な価値観を学んでいく貴重な機会となります。ぜひ充実した講座にしていきたいです。
 第1回目講師は文学誌『イミタチオ』同人 宮嶌 公夫(みやじま きみお)先生です。宮嶌先生は各作家の作品分析等をされて「評論活動」をされている方です。それでは講座について抜粋して紹介します。

1 小説とは?
➀前提として
  →虚構(フィクション)であること。読み手を想定して書かれていること。
②随筆(エッセイ、身辺雑記)との違いは?
  →フィクション性の高さ
   随筆 ⇒ 語り手=書き手(作者) 小説 ⇒ 語り手 ≠ 書き手(作者)
③語り手の設定
  → 作者 ⇒ 物語を構築する  語り手(△作者) ⇒ 物語を進める
  → 自分を語る語り手   ⇒ 一人称
    自分以外を語る語り手 ⇒ 三人称 ⇒ 焦点化する人物(視点人物)=ぶれない


2 短編小説とは?
 ➀長編小説との比較
  
・受講生から出た意見の一部です。
長編小説
・登場人物の数が多い
・本が厚い(300枚以上?)
・複数、表現したいことがある
・強烈度が控えめである
・頭抱えながら長期間悩んでいる感じ
・話の筋がゆるやかな感じで
短編小説
・登場人物の数が少ない
・本が薄い(10枚から80枚まで)
・一つ、表現したいことがある
・強烈度が大きい どうだ!って感じ
・やる気満々で強い覚悟がある感じ
・起承転結がはっきりしている感じ
 受講生からはいろいろな反応がありました。宮嶌先生の絶妙な合いの手もあり、 みんなが笑顔で楽しんで考えていく時となりました。
 さて宮嶌先生からは、次解釈が受講生に語られました。

  ・宮嶌先生から
長編小説
・ストーリー性がしっかりとあるもの
・複雑な人間関係を描いたもの
・視点人物を変えて表現していくのが可能であること
・壮大な歴史の中で前後関係がいろいろと描かれたりしたもの
・複雑な時間構造を描くのが可能
短編小説
・「一瞬」に心をこめていくもの
・限定された登場人物で描かれたもの
・視点人物を多様化するのは不可能である
・プロットを重んじ因果関係を意識して出来事を組み立てていくもの
・単純な時間構造でしか描けないもの
 この後、短編小説に求められるもの ➂魅力ある短編小説 ④全体として
と順を追ってお話いただきました。講義は的確な言葉でまとめられたプリントにて、大変にわかりやすく説明いただく時間となりました。


3 作品「晴れた空の下で」(江國 香織氏 新潮文庫)から
 最後に、「晴れた空の下で」(江國 香織氏 新潮文庫)を使っての学びがありました。本作品は3600字ほどの作品で400字原稿9枚ぐらいになる短編小説です。

➀あらすじ
 老人「わし」の一人称の語りの小説です。「わしらは最近ごはんを食べるのに二時間もかかりよる」からお話は始まります。妻の「婆さん」の料理を味わいながら、長い年月での思い出、穏やかな懐かしい夫婦の日々が語られていきます。
 そんなある日、わし(老人)は婆さんと散歩にでかけた懐かしい述懐を終え、満ち足りた気持ちで戻ってきます。すると、そこには次男の嫁の「妙子」が食事のあとかたづけをしていました。会話をしていく中で、老人(わし)は去年の夏に「婆さん」が死んだことを思い出すのでした。
 老人「わし」は、最後「わしは、最近、ごはんを食べるのに二時間もかかりよる。入れ歯のせいではない。食べることと生きることの、区別がようつかんようになったのだ」と述懐してお話は終わります。
 この教材をもとに、次のことについても意見交流も交えながら深めていきました。

➁物語の構造について
 → 人物構成・・・老夫(焦点化)・老妻・娘
 → 時間経過・・・物語現在(老夫の記憶)
 → 作品構造・・・前半・後半の対比
               → わしら ⇒ わし
               → 老婆との日常の記憶 ⇒ 老婆の死という現実
               → ほのぼのとした時間 ⇒ 打ちのめされる時間
               → 卵焼きと手毬麩のおつゆ(老婆 ⇒ 妙子)
               後半にむけての伏線

 この他、「物語の描写(擬態語・擬音語、リピート表現)」や「物語の主題」についても、いろいろな解釈をまじえながら深まりある講義をいただきました。宮嶌公夫先生、ありがとうございました。
 さて、第2回講座は「6月15日(土)小説の実作について①」で、講師は藪下悦子先生(櫻坂同人・小説家)です。今度は小説家の先生の講義となります。ぜひ今回同様に、充実した講座となるよう準備していきます。


 なお、次回講座までに課題が2点提示されました。提出〆切の課題となっていますので、 ご確認下さい。
A 課題……試作「掌編小説」創作と〆切日について

 ➀ 提出〆切日 6月15日(土)第2回講座時までに提出
 ② 400字詰めの原稿用紙で3枚から5枚まで ※字数です
 ③ テーマ
   ・食物・履き物・風景・別れ・勇気・自由テーマ

※テーマは先の5つの中から1つ、または自由テーマを選んで掌編小説を作成してください。題名は別に自由につけてください。批評会は、1グループ7月15日(土)、 2グループ7月22日(土)で、どちらかに所属いただいての批評会となります。 ただ、今年度より自分の作品の批評会ではない時でも、希望があればオブザーバーとして参加することもできます。参加希望の方は必ず事前に金沢文芸館スタッフまでお知らせください。座席準備の都合がありますのでよろしくお願いします。


B 課題……第2回講義の藪下悦子氏よりアンケートが宿題となっています。提出はありませんが、書いてきて参加ください。




〇5月17日(金) 出前講座 浅野川中学校 文芸部
金沢城公園を散策して俳句を作ろう
講師 : 小西 護(金沢文芸館 前館長)

 金沢城石川門に浅野川中学校文芸部員、27名が集いました。前日の荒れ模様の天候から一転して、爽やかな新緑に日の光が輝く素晴らしい日となりました。堀の脇には紫蘭が可憐に力強く咲き、側にはなでしこが風にそよいで小さな花を揺らしています。そんな素晴らしき景色の中で、浅野川中学校のみなさんの俳句創作活動が行われました。
 講師は、金沢文芸館の前館長 小西 護さんです。


1 主なプログラム
 1 金沢城公園を散策して俳句を作ろう
  (1) グループごとに散策して、俳句作りの素材を見つける。
  (2) メモしながら俳句を作っていく。
 2 金沢城公園からの帰りも散策を楽しんでいく。
 3 金沢文芸館3Fにて俳句を作り批評会をする。
  (1) 一人一人が短冊に俳句を書き込む。
  (2) 白板に完成した俳句の句会を行う。
  (3) 小西さんが、俳句紹介、添削、アドバイスをしていく。


2 吟味した俳句へと
 金沢文芸館で作句した子ども達から順に白板に貼っていきました。そしてそれぞれの作品に小西さんから一言ずつアドバイスがありました。俳句とアドバイスの一部を紹介していきます。
 小西さんアドバイス後の俳句を紹介します。(  )内は添削前の本人の俳句です。


 「日がのぼり新緑受けて風あびる」 (日がのぼり新緑の下風あびる)
  ※こんな時「受けて」という言葉を使うと有効かもしれないね。
 「夏の日照らされ僕ら影をふむ」 (夏の日照らされ僕ら影をふむ)
  ※上句、中句で詠嘆の「や」は有効だよ。
 「風の城戦国の世がよみがえる」  (風光る戦国の世がよみがえる)
  ※場所がはっきりとわかる俳句がいいね。
 「シラン花自然の力でさきほこる」
  ※初めて具体的な名前がでてきた俳句だね。これは大切なことだよ。
 「風が吹き若葉がゆれる夏の香よ」 (風が吹き若葉がゆれる夏の香り
  ※字余りになっているね。こうした方がすっきりとするかもしれないね。
 「大木は昔を生きた目印だ
  ※力強く壮大な俳句だね。とってもいいと思うよ。
 「木漏れ日の光反射す夏の色」
  ※これはいいなあ。「す」とした表現も光っているよ。


3 みなさんの「秀作・力作(◎)」と小西さんの「改作・試作(◇)」の紹介です。
 ◎夏の日に照らされ僕ら影をふむ  (秀作)
  ◇夏の陽や影を踏みゆく君と僕   (試作)
 ◎木漏れ日の光反射す夏の花    (秀作)
  ◇木漏れ日や跳ねる光に夏の歌   (試作)
 ◎風光る戦国の世がよみがえる   (秀作)
  ◇風の城戦国の香を震わせて    (試作)
 ◎新緑や古き都のサンキャッチャー (秀作)
  ◇気がつけば新緑の下風そよぐ   (試作)
 ◎そよ風やシロツメクサはゆらゆらと(秀作)
  ◇そよ風やシロツメクサはゆらゆらり(試作)
  ◇シロツメクサおしゃべり続く散歩道(試作)
 ◎風光る唐笠のそば分かれ道    (秀作)
  ◇雨上がり傘の向こうは分かれ道  (試作)
 ◎風に乗り新緑ゆれる通学路    (秀作)
  ◇新緑や笑顔はじける通学路    (試作)

 小西さんは、この他にも提出された全俳句に改作・試作として評価をして下さいました。参加した文芸部の中学生はどれほど嬉しかったことかと思います。大変に貴重な良き学びの体験になったと思います。小西さん、ありがとうございます。
 また小西さんは最後に【一里塚】として大切にしてほしいことを書き記されました。
【一里塚】
※発想を飛ばす(見えない想像や映像、思い出も取り込んで)
※より具体的に(時間、場所、鳥・花の姿に思いを重ねて)
※自分だけの「題材」「場面」「発見」「思い」を切り取る
※とりあわせ(二つの題材を並べる)にも挑戦を


4 最後に
 小西さんの添削に、子ども達の感嘆の声がついもれてしまう会場でした。浅野川中学校のみなさんは心から素直で、学年同士はもちろん他学年間も仲が良いのがみてわかる学びの姿でした。そこには、小西さんの「ここがいいね」「こんな表現が素敵だよ」「こうするとどうかな」「こうするともっと良き俳句になるね」と絶えずポジティブな温かな声掛けいっぱいの指導があったからこそと思いました。
 部活動の日を活用して学びの場をつくられた浅野川中学校のみなさん。素敵な学びの姿をありがとうございました。
 金沢市では創作文芸を学んでいる子ども達がだんだん減っているという話を聞いています。文芸部がある中学校も減っているようです。
 中学生のみなさん。今回のような文芸部活動だけでなく、いつでも金沢文芸館に顔を出していただけたらと思います。俳句作り同様に、小説、詩の創作文芸活動にもチャレンジして、本館主催のあすなろ青春文学賞などにも応募いただけたら嬉しいです。
 感受性豊かな心ある浅野川中学校のみなさんはじめ、石川県の若者のチャレンジをお待ちしています。




〇5月12日(日)第1回 朗読会『青春の門 第二部自立編』
筑豊 誤解、そして織江との決別へと
朗読: 髙輪 眞知子(朗読小屋・浅野川倶楽部代表)

 第1回朗読会が、朗読小屋・浅野川倶楽部の代表 髙輪 眞知子(たかなわ まちこ)さんにより行われました。今年度は、青春の門「自立篇」後半部分の朗読を12月までの8回シリーズでお聴きいただきます。
◇令和5年度の朗読場面(青春の門 自立篇 前半部)を簡単に紹介します。
 昨年度の東独は青春の門 自立篇前半部。大学生となって、筑豊の山を背に、1人で東京へやってきた伊吹信介。自立して生きていくことを誓った信介だが、大学生活には失望して苦しい生活を送る。そんな中、友人、教師、そして様々な魅力的な女性と巡り合い青春の新たなページをめくりながら歩んでいく。
 ある日、信介はボクシング部のコーチ石井の彼女「早瀬理子」から相談を受ける。その内容とは?
(自立篇 前半部から)


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 ◇今回の朗読場面の紹介◇

 石井講師との子どもを妊娠した早瀬理子。そんな理子に、子どもをおろすように言う石井。そして傷心の理子から病院についてきてくれるよう信介は頼まれる。ついに理子と石井は別れることとなる。 そんな中、信介はちょっとした誤解で織江から決別の手紙を受け取る。外に出た織江を心配しカオルのもとを訪れた信介。そこでカオルから自身の壮絶な過去を聞かされる。カオルからは「中途半端な同情は人を苦しめるだけ。その子を抱きとめる気がないんなら放っておくことね」と忠告を受ける。カオルは織江の所在を調べる約束を信介と交わすのであった。
(「白い額の上に」「闇のなかの対話」「内臓の街へ」「幼い誤解」から)

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 いよいよ、髙輪眞知子さんの朗読会 青春の門 自立篇の後半部分が始まりました。
初回は17名の方々の参加がありました。朗読は60分以上にわたる熱気あふれるものとなりました。久しぶりの髙輪さんの朗読に、みんな釘付けとなりました。
 朗読小屋浅野川倶楽部の髙輪眞知子さんの朗読を間近に聴くことができるのは大変に貴重な機会です。あと何名かの追加申込みが可能です。ぜひともこの機会に応募いただきたいと思います。
 第2回朗読会は6月9日(日)14時「夜の迷路をぬけて」からです。ぜひご参集ください。お待ちしております。




〇5月11日(土)第1回 小説入門講座
創作への覚悟と実践
講師: 小西  護(『イミタチオ』同人)

 令和6年度は、受講生14名でスタートしました。中高生から20代、30代はじめ、70代、80代までといろいろな世代からの参加がありました。素晴らしい講師陣のもと、受講生同士が語り合い、互いに切磋琢磨し合う充実した講座となるよう努めてまいります。
 さて、1回目の講師は、イミタチオ同人「小西 護」(まもる)氏です。

 まず講座は、受講生の自己紹介から始まりました。次のような話が各受講生からありました。
 「何か自分の中でひっかかりがあり、やってみたいと思った。人の心に伝わる小説を
  書きたい」
 「心の奥底の想いを表現したいことに気づいた」
 「ユニークな子育てをしたので、その経験を題材にしたい」
 「村上春樹、角田光代、太宰治などが好き。執筆経験はないが、一つの作品を作る
  きっかけにしたい」
 「自分が何か生きた証として残したいと思い参加した」
 「エチオピア赴任経験があり、それも書いてみたい」
 「昔、児童文学家「かつやおきんや氏」の研究会に参加していた。今回、思い切っ
  て小説を書きたいと思った」
 「2年前に本講座を受講した。また刺激を受けたいと思い参加した」
 「村上春樹さんの本に『水に飛び込んで浮くか沈むか』との話がある。まずは今回、
  自分で飛び込んで小説を書いてみて、沈むなら沈んでみようかと思って…」
 「若い時に読んだ『安部公房』の小説『赤い繭』に刺激を受けて…」
 「妖怪アパートシリーズに触発されて…」
 どうして小説入門講座を受講したのかを本音で真剣に語っていく受講生の姿がありました。そしてその思いを真剣に聴いて、自然に拍手している受講生の姿がありました。
 一人一人の受講理由は違えど、今後の講座が楽しみなスタートとなりました。

 この後、プリントを使っての講義が始まりました。ここではプリントにない小西先生からの言葉を挙げていきます。

○小説は自分のために書こう
・へたくそでも良い。積み重ねの中で新しい自分を見つけていこう。求める自分に
 なっていこう。積み重ねこそが大切なのだ。まずは書き出してみよう。
○「めげない」「あきらめない」「見逃さない」を大切にしよう
・小説づくりでは「めげる」思いをすることもある。私もそうだが、誰もが経験し
 ていること。何があっても、何を言われても、決してめげてはならない。
・推敲は書いた人にしかわからないところがある。自分しか推敲できる人はいない。
 だからこそ諦めてはならない。
○多様多彩なエピソード(挿話)を織り込もう
・その場で気づいたことのメモをしていく。それを一冊のノート、スクラップブック
 にしていくと良い。小説家の名言などで「これは!」と思ったものは、いつでも
 すぐに手帳に書く。それをもとにアレンジして自分らしい味付けをして使うと良い。
○「登場人物が動き出す」(作家 川上弘美さんの講話から)
・一生懸命に小説を書く中で、ある日突然「登場人物が動き出す、はしゃぎ出す、
 逃げていく等」時が訪れるものだ。
○視点をひっくり返してみよう
・女だったら男の視点で、他に動物(犬とか)の視点で、といういように、視点を変
 えてみることも大切だ。
○作品完成まで、書くことを最優先しよう
・小説を書いていくという自分のルーティンを作ってみよう。
○納得がいくまで拘り、手直しを楽しもう
・自分が体験したことのみならず、想像したことや夢がとても大切だ。夢を生かそう。
○上手くやろうとするな
・「上手く」と思うと媚びが生まれる。こだわりを持つ事が大切だ。
○まず、作家のまねをしてもいいんだ
・良いと思うことを自分の小説作りにどんどん取り込んで行こう。まずまねから始まる。

 小西 護さんからは5枚にわたる手作りプリントをもとに「創作への覚悟と実践」について講義いただきました。1時間30分ではとても時間が足りない中身の凝縮した講座となりました。
 次回は6月8日(土)小説づくりの基本とは? で、講師は小網春美さんです。


 最後に本日出た課題の確認をします。テーマがありますので試作小説作りに挑戦してください。
○試作小説について
 1 作品のテーマ
    ①「坂」
    ②その他(自由に選択・設定)
    ※テーマはどちらかを選択し、題名は自由に書いてみてください。
 2 提出期限
    講座第3回 7月13日(土)必着(メール送付、郵送含む)
    ※形式等は、プリントにて渡しましたのでよくご覧になってください。




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