その162「金沢人はクラシック好き」 | |
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ゴールデンウィークに開かれる「ラ・フォル・ジュルネ金沢」。 さて、当館はSPレコード盤を全国の方々から寄贈いただく。クラシック盤もたくさん集まるが、セット物(アルバムと呼ばれるもの)が多いのには驚く。 1937(昭和12)年の支那事変ごろまで、多くの外国人音楽家が来日した。当時東京、大阪は世界の音楽市場においてもっとも高級な音楽を愛好する都市として有名になっていたからだ。 クラシックのレコードも世界一売れるようになっていた。西洋音楽が日本に入ってきて日も浅いのに?といぶかるかもしれない。 日本初の全集は大正13年ドイツ、グラモフォンのベートーベンの第9交響曲で300組の予約があったという。その後ワインガルトナー指揮の同じ曲が3,000組売れた。第5番「運命」はトスカニーニ指揮が約30,000組、他にもメンゲルベルグ指揮、フルトベングラー指揮、ワインガルトナー指揮のものがそれぞれ数千組売れた。 このようなレコード愛好家を生んだのは、あらえびす(銭形平次の原作者、野村胡堂のペンネーム)、野村光一などの評論家の面々のお陰だったとも書かれている。レコード会社も洋盤担当者は「売れるレコード」より「良いレコード」を出す方針を曲げなかったことも指摘している。 ところで、ラ・フォル・ジュルネの立役者であるアンサンブル金沢の最初のCDはビクターから発売になったモーツアルトの40番だった。小生が制作に関わったこの盤は、9,000枚販売した。 来日した著名な外国人音楽家 (昭和3年) (昭和4年) (昭和5年) (昭和6年) (昭和7年) (昭和8年) (昭和9年) (昭和10年) (昭和11年) (昭和12年) (昭和14年) |
![]() 音楽堂前のでコーラス 2014,5,4 ![]() ワインガルトナー指揮、第9「合唱」 ウィーン・フィル ![]() トスカニーニ指揮,第5番「運命」 シンフォニー・オケ ![]() フルトベングラー指揮、第5番「運命」 ベルリン・フィル ![]() ワインガルトナー指揮、第5番「運命」 ロンドン・フィル ![]() アンサンブル金沢の初CD、モーツアルト40番とチャイコフスキー「弦楽のためのセレナード」 ![]() |
その161「レアものの”V-DISC”」 | |
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12インチ(30㎝)で、下半分が赤色の白レーベルで大きく”V-DISC”と書かれている78回転/分のSP盤が当館にある。 アメリカ陸軍の委託を受けて、1942(昭和17)年の後半からニューヨークのビクター工場でプレスされた。1948(昭和23)年までの6年間に900W(種類)ほど作られた軍用の慰門レコードである。ヨーロッパ、アフリカ、南太平洋各地の戦地へ送られた。 本国から来た”V-DISC”を軍のある指揮官は「いるのは弾薬だ」と言ってレコードを送り返したり、「食料品だ」と喜んで開きガッカリしたこともあったようだが、カ―キ―色の軍用蓄音器とともに軍隊生活のなかで大きな慰めになったのは間違いない。 最初はレコード会社からの原盤提供が主流だったが、その後は“V-DISC”のためのセッションが増え、軍用なので所属レコード会社の枠を越えてアーティストが共演している。 クラシックの盤もあり、当館にある“V-DISC”の収蔵ジャンルは、ボーカル、ダンス、スィング、ジャズ、ブルース、インストロメンタル、クラシックなどである。 非売品なので、プレーヤーが自由なコンビネ―ションを組んでおり、ジャズの歴史から見ても見逃せないレアものだと識者はいう。演奏の前に曲の紹介がある盤もある。ポピュラーミュージックの面でも当時のヒットメロディー、時代の色合い、好みを伺うことが出来る。
元々消耗品扱いの盤であり、欠けていたり音質の良くないものもあるが、時代を覗くことが出来る“V-DISC”を聴いていただく機会を是非作りたいと思っている。開催日時は未定だが、決まれば当ブログで発表する。 |
![]() 片面にビング・クロスビーが 2曲入っている(レコード番号503A) NO,515までレーベルの下の赤のギザギザがあり、以後は丸くなっている ![]() フランク・シナトラが2曲入っている (レコード番号722B) ![]() バディー・クラークと、ダイナ・ショアーの2曲入り(レコード番号861B) |
その160「ヒットネット」 | |
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平成26年2月4日から3月23日までの48日間、東京上野にある国立科学博物館地球館2階で、第2回ヒットネット(HITNET)ミニ企画展「記録し、伝えるー日本の産業技術」が開かれ、当館が紹介された。
ヒットネットとは、日本の産業技術に関する資料を所蔵・展示している産業系博物館等が全国にあることを紹介する産業技術史資料データーベースのこと。そこに登録されている100館を超すなかから4館が紹介された。
当館からは、エジソンの小型のろう管式蓄音器「GEM」(ジェム)、国産量産第1号蓄音器である「ニッポノホン50号」の2台と、SPレコードでは、流行歌、民謡、童謡(児童用のための8インチの小さな盤)、クラシック、ジャズなど10枚を貸し出し、一部は来館者が実際に触れるように展示した。
音は、振動が空気を伝わってくるものであること、レコードはその振動を細い溝にかえて記録するもの、蓄音器は電気を使わず動力にゼンマイを使うこと、音を大きくするために「振動板」、さらに大きくするため「ラッパ」という仕掛けがあることなどを写真、図を用いてわかりやすく大きなパネルで説明してある。
子どもでも理解しやすい配慮がゆき届いていた。
開場当日には平日にもかかわらず多くの家族連れ、修学旅行の生徒たちが訪れていた。
子ども時代の好奇心は科学の芽を育てる。そのことに協力できたのが嬉しい。 |
![]() 当館の紹介と持参した蓄音器 エジソン「GEM」ろう管式蓄音器(左)、 ニッポノホン50号蓄音器(右) ![]() 触れられるSPレコード盤 ![]() 久米裕二国立科博主任調査員(右)と小生 |