金沢蓄音器館

館長ブログ ほっと物語

2019年8月

その300店頭を飾る装飾用レコード

 





金沢蓄音器館には、SPレコードに文字や絵をかいて店頭装飾用として宣伝する12インチ(30センチ)の盤がある。

 

盤には「俄然、驚異的出現!全世界楽壇の寵児 コロムビア専属芸術家 宮川美子嬢」と文字が消えて見にくくなっているが、書かれている。

 

いろんなレコードを寄贈いただくが、そんな中に1枚、初めて見る店頭用宣伝盤が混じっていた。
10インチ(25㎝)「コロムビア芸術家」と紹介された「勧進帳」で有名な7代目松本幸四郎のPR盤だった。

 

裏面は、コロムビアポータブル蓄音器NO.164Aの宣伝で、価格が100円と書かれている。この値段から推測すると昭和8年だろうか。演奏が終わると自動で止まる装置付きとある。
品番の末にある「A」の文字は、「オート(自動)」の意味だ。

このレコードを入れたスリープも綺麗な状態で残っていた。
これは店頭装飾用で、万一演奏すれば印刷された文字が消えてしまうので針をかけないでと、しっかり注意書きがある。

 

宮川美子(よしこ)は、オペラ「蝶々夫人」を歌わせては世界一といわれた三浦環(たまき)をはじめ、ベルトラメリ能子(よしこ)などと並んで日本の生んだ世界的な女流声楽家のひとりでコロムビア専属だった。

 

明治45年、東京・京橋では大仏が耳を立てて音楽を聴くネオンサイン、昭和6年には川崎工場の屋根上に東海道線から見えるよう高さ30m直径15mの巨大ネオン設置など、時代の話題をさらった。
コロムビアはもともと宣伝に熱心だった。


さて、この店頭装飾用レコードもお客さまからどんな反応があったのだろうか。

 



店頭装飾用宣伝盤 宮川美子 12インチ盤

店頭装飾用宣伝盤松本幸四郎 10インチ盤

同裏面 コロムビア蓄音器NO.164A

宣伝盤のスリープ
宮川美子 「からたちの花」
その2991.5㎜のボールベアリングの効果

 

 1台のポータブル蓄音器がSPレコード盤とともに贈られてきた。

梱包を解いてみると、大事にされていたのだろう、蓄音器の外側はたいした傷もなく綺麗だった。

 

調べてみると、ビクターVV J2-5という1935(昭和10)年に発売されたポータブル蓄音器だった。価格は50円。映画館入場料が50銭の時代だ。

特長は、10インチ盤レコード12枚収納可能で、蓋つき針ツボ2個、重量7.7㎏、高さ15.7㎝、幅30㎝、奥行40.6㎝、鍵付き。外装は黒色と青灰色(J2-5B)の2種類があり(寄贈品は黒色)、瀟洒ですっきりとしたデザインだ。
かっこいい。

 

早速オイルをさしながら、ゆっくりとゼンマイを回し、1枚、盤をかけてみた。動いた。

音量は大きいが、音は割れている。

 これは音の取り入れ口であるサウンドボックスについているトンボと呼ばれる部品の中心の軸受(中は1.5㎜の鋼球―ボールベアリングー 8個が両サイドについている)がうまく機能していないのでは?と思った。

サウンドボックス裏側のリングを手づくりの大きなネジ回し(これば元ビクターエンジニア、桑波田敏勝氏よりプレゼントされたもの)で回転させて、取り外した。
表側のカバーを外すと片側8個の鋼球を押さえてあるゴムが硬化して動かなくなっていた。このため音が割れているのだ。
そこで1つ1つ鋼球を取り外し、磨いた。息を殺しながらの細かな作業だ。
老眼乱視も加わり結構しんどい。

 こうして、ようやく磨いた鋼球の上に内径2.8㎜の丸いゴム製のリングで押さえ、表側のカバーを取り付け、元の状態に戻した。

フー!

唄:マリー・フォード、ギター:レス・ポールの奏でた軽快な「モッキン・バード・ヒル」の音は臨場感タップリ!

その場で演奏しているように聞こえた。


(写真,上から)
1,元ビクター桑波田敏勝氏からいただいた手製ねじ回し
2,1.5mmの鋼球ーボールベアリングー8個
3,ボールベアリングのゴム押さえ
4,修理の終わったJ2-5
5,レス・ポール&マリー・フォード「モッキン・バード・ヒル」












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