金沢蓄音器館

館長ブログ ほっと物語

2025年5月

その435 SP時代の面白コミック集 その1/4

 



森淑
(もりきよし)
さん(元日本コロムビア音楽ディレクター)を招いて昭和歌謡の解説も24
回目を数えた。
今回のテーマは森さん本人がSP時代の面白い、コミックだと思うものを17曲選んだ。

 出囃子(でばやし)は、発売直後に歌詞を変更した「のぞかれた花嫁」。しかも変更前の曲でスタートした。
確かに歌詞は卑猥?で発売停止だったのかもしれないし、レコード会社が自粛し、詞を変えて再発売したのかもしれない。
だが、この盤のカップリング曲「二人は若い」人気があったので、随分れた盤だった
このメロディは昔、よく踊ったフォークダンスの「オクラホマ・ミキサー」だ。

作詞者は玉川映二だが、これはサトウハチローの別名。
又、サトウハチローは「二人は若い」を歌った女優・星玲子のファンで応援していたのでふざけて「ほしの ていしゅ」の意味をこめて「星野貞志」という別名ももっていた。
随分愉快な話ではないだろうか。


次いで「のんきな(とう)さん」:横尾晩秋
大正時代に録音されたので、ラッパ吹き込みではないか。
政治的な書生節を作った添田唖(そえだあ)蝉坊(ぜんぼう)の弟子が作詞の石田一(いしだいち)(まつ)
大震災、不況な時代に漫画のような感覚で歌った。音楽的にみてもまだ未完だ。
戦後、石田は芸人で議院議員になった第1
号だった。
この子息が「石田(ゆき)(まつ)さん。
森淑さんがレコード業界に入ったころ、作曲家船村徹のマネージャーで、よく一緒に酒を飲んだ間柄だったという。
         (つづく)

                 

 


森さんと小生

「のぞかれた花嫁」

「のんきな父さん」
その434 ゆっくり感がある童謡

 





4
月に入って、久しぶりに立命館大学大学院教授、増田梨花先生の話を聞く機会を持った。
今回は「絵本と童謡のコラボレーション ―春を歌おう」と題して開かれた。


「ちょうちょ ちょうちょ」という童謡の歌詞には「~があいたら ~に止まれ ~止まれよ遊べ ~遊べよ止まれ」。

童謡「お花がわらった」の歌詞では「わらった」という歌詞が1題に6度もある。

滝廉太郎「花」には、春の隅田川にみる景色を桜、櫂のしずく、青柳、おぼろ月、長堤に焦点を当て、美しさ、のどかさを格調高く表現している。

「春の小川」では、水の中、えび、めだか、小鮒のほか川のふちにある「すみれ」、「れんげ」、「におい」、「さらさら流れるさま」、遊びに興ずる子供たちの様子。

「みかんの花咲く丘」は「いつか来た丘 かあさんと~ 見ていると やさしいかあさん 思われる」思わず母に出会えるのだ。

「さくらさくら」は「弥生の空は 見渡す限り 霞か雲か 匂いぞする いざ見に行かん」と花見を勧めている等々。

 
ひるがえってみると、今の私たちは、子供たちに「早く」、「早く」とせかせる言葉がおおいのではないかと思ってしまう。

昔からの童謡には、ゆっくり感があったのでは。「やさしさ」があることを童謡は教えているのではと話された。
ゆっくり行けば日頃見えなかったものが見える。

 


増田先生と

「花」

「みかんの花咲く丘」

「春の小川」

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