鈴木大拙館

本の展示会ー思索の扉

第1回「スポーツの祭典」

今年度のテーマは「スポーツ」。ブックリストには、テーマに合わせ前期・後期それぞれ3項目を挙げましたが、
第1回は、そのひとつ「スポーツの祭典」(前期)を紹介します。

延期開催された「東京オリンピック2020」。8月8日に閉会式を迎えましたが、会期中、テレビで熱心にご覧になった方も多いでしょう。 国・地域を超えてあらゆる人々が集い、競い、讃え合う姿に魅了され、「スポーツ」のもつ大きな力を感じた方もいらっしゃるでしょう。
また、子供の頃にみたオリンピックの忘れ難いシーンを思い出した方もいらっしゃるかもしれません。

みなさんにとって印象的なシーンは、いつの大会か、どの場面か、またはどのアスリートの活躍でしょうか。 そういったシーンを「本の展示会」の会場にてお聞かせいただければと願っておりました。 (個人的には、1992年のバルセロナの開会式での聖火台の点火シーンは忘れられないものです)

7月31日からの臨時休館に入る直前、「本の展示会」に参加された方から、或る体験を聞かせていただきました。 『完全復刻アサヒグラフ 東京オリンピック』(朝日新聞社)を手に取られ、1964年の東京五輪の思い出、 とりわけ、世界一の力持ちと形容されたジャボチンスキーというソ連の重量挙げ選手にまつわるお話を教えていただきました。

1960年代の出来事について教えていただくことは、鈴木大拙が生きていた時代を知ることにもつながります。
『1964東京オリンピックを盛り上げた101人』(鳥越一朗・ユニプラン)に登場する人々は、選手だけではなく懸命に支えたスタッフによって、 五輪が盛り上がったことをいまに教えてくれます。そして、金沢出身の日本初メダリスト・大島鎌吉など、この土地とつながりをもつ人々も知ることができます。

『<東京オリンピック>の誕生 一九四〇年から二〇二〇年へ」(浜田幸絵・吉川弘文館)は、 さらに時代を遡り、実現しなかった1940年の東京オリンピックの構想から、いまを捉え直す視点を見せてくれます。 柔道の普及でも有名な嘉納治五郎(1860-1938)は、日本「オリンピック運動の父」とも呼ばれ、アジア初となるIOC委員に就任。 日本人のオリンピック参加、そして、日本開催に大きく尽力しました。 さらには、IOC委員を務めた岸清一をはじめ様々な人々の支えと受け継ぎがあったことを忘れてはならないでしょう。
ちなみに、嘉納治五郎は、現在開催中の企画展でも紹介している柳宗悦の叔父(柳の母・勝子は治五郎の姉)にあたります。

オリンピックはたんなる「国際的な競技会」という枠には収まっていません。『学問としてのオリンピック』(橋田弦・村田奈々子編 山川出版社)は、 開催国の歴史や文化が色濃く反映されたメッセージをも発信するその理念を辿る試みを、また『オリンピック秘史 ―120年の覇権と利権』(ジュールズ ボイコフ 中島 由華 ・訳)は、 巨大な産業複合体ともいえるオリンピックは、そもそも何のための祭典なのかという問い掛けを、読者に示してくれます。
オリンピック観戦をきっかけに本を開いてみる、また本を読んでから改めてオリンピック・パラリンピックを観てみる、どちらも体験してみてはいかがでしょうか。

「スポーツの祭典」…ブックリスト
・『写真で見るオリンピック栄光の歴史』(ハーバーコリンズ)
・『五輪と万博』(畑中章宏 春秋社)
・『ケロリンピック』(文・大原悦子 絵・古川裕子 福音館書店)  など9点


鈴木大拙館・学習空間「床の間」
掛軸:鈴木大拙 書「無事」
生花:ノイチゴ/ヒペリカム
このウィンドウを閉じる