鈴木大拙館

本の展示会ー思索の扉

第2回「スポーツをする理由」

「スポーツは楽しいものだ」とお話する人にお会いしたことがあります。
年齢を重ねてもスポーツを長年続けてきたというその人は、スポーツの醍醐味について、
実にうれしそうに語ってくださったのが印象的でした。
健康のためや、体形を維持するため、またはやせるため、といった「スポーツをする理由」はあるけれど、
その人の体験によれば、それ以外の理由があるのだといいます。
おそらくきっと、その人だけが特別ではなく、また種目に限らず、スポーツを愛好される方は、
そういった理由をそれぞれ経験をされているように思われます。

スポーツをテーマとする本の選定において、
「苦しい思いまでしてなぜスポーツをするのか」という問いにふれる書籍に注目してみました。
選定していく中で、私自身が或る前提を持っていることに気付きました。
それは「人間は心地よいことや楽しいことを好むけれど、苦しいことやつらいことは嫌う」という前提です。
きっと大きな間違いではないのでしょう。しかし、正確さに欠けるようです。

「人間は、人からもらった快楽などでは退屈して、自分で獲得した快楽の方を、はるかに喜ぶものである」
アラン『幸福論』(石川湧・訳)

著者アランは、古代ギリシャの哲学者ディオゲネスについてふれた文章で、
競技者は「進歩したり、困難にうち勝ったりすることによって、別な報酬を得る」ことを挙げ、
怠け者はそれを知る由もないと述べています。
そして、その「報酬」は、競技者自身の内部にあり、その人自身に依存するということも。


「行動のともなわない快楽よりは、むしろ行動をともなう苦痛を選ぶのだ」とも
述べるその考えは、スポーツのお話にかぎらず、私たちが取り組んでいる様々な事柄に
あてはまる気がします。

 この項目で選んだ書籍は上記の『幸福論』をはじめ、以下のとおりです。
 9月14日の再開時からは前期の書籍も閲覧可能です。

・豊福まきこ 『おどりたいの』BL出版
・トル・ゴタス 楡井 浩一・訳 『なぜ人は走るのか』筑摩書房
・ナンバープラス『走るのが好き、追い込むのが好き。』文藝春秋
・ホイジンガ『ホモ・ルーデンス』中央公論新社
・為末大『「遊ぶ」が勝ち』中央公論新社
・マーク・ローランズ 今泉みね子・訳『哲学者が走る』白水社
・滝沢克己『競技・芸術・人生-附 将棋の哲学』 内田老鶴圃
・シェリル・ベルクマン・ドゥルー  川谷茂樹・訳 『スポーツ哲学の入門』ナカニシヤ出版


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