室生犀星

犀星の作品


故郷にて冬を送る

ある日とうどう冬が来た
たしかに来た
鳴りひびいて
海鳴りはひる間も空をあるいてゐた
自分はからだに力を感じた
息をこらして
あらしや
あらしの力や
自分の生命にみち(わた)ってゆく
あらい動乱を感じてゐた
木は根をくみ合せた
おちばは空に舞うた
冬の意識はしんとした一(とき)にも現はれた
自分は目をあげて
悲しさうな街区を眺めてゐた
(かはら)には一面に水が鋭く走ってゐた


             『愛の詩集』より

  

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室生犀星記念館