寸々語

寸々語(すんすんご)とは、秋聲の随筆のタイトルで、「ちょっとした話」を意味します。
秋聲記念館でのできごとをお伝えしていきます。





百万石まつりの日
  2020.6.6

 昨日5日(金)、そうか夜間開館は中止であったな…というところの意識まではあったのですが、本日6日(土)が金沢市祭「百万石まつり」の本祭当日であったことには先ほど日めくりカレンダーを見るまで気がつきませんでした。例年であれば、街の中心部に百万石行列がながれているころ…!(ついでに今夜は満月だそうです) そんなお祭りの日だからでしょうか、1日以来、再開館してもお客さまおひとり、おふたり、おさんにん…くらいの日々であったものが、今日はぼちぼちとご来館くださる人の影が増え、受付背後にある事務室へもガチャンガチャンと缶バッジガチャをまわす音が頻繁に聞こえてまいります。ありがとうございます。また本日お見えになったお若いお客さまで「ここからここまでください」とみなが一度は憧れるであろうカッコイイ買い方でもってオリジナル文庫を全冊ご購入くださった方がいらしたとのこと。ありがとうございます。こちらからのお礼となり失礼をいたします。道中、だんだん手に食い込んでくるであろう秋聲作品の重みが心配でなりません。どうぞお気を付けてお帰りください。
 さて、オリジナル文庫。本日、7月刊行予定の新刊『思ひ出るまゝ』の初校があがってまいりました。ここからまた何度となく校正作業をおこない、真の本の姿へと近づいてゆくのです。今はまだ背中を巨大クリップでギャッと留められただけの仮の姿。おとうさん僕はいつ人間になれるの? みたいな顔をしてこちらを見てくる彼の人間性(本文)はいったん置いておいて、現在お洋服(カバー)デザインの最終チェックをしているところです(ディズニー映画『ピノキオ』公開から今年でちょうど80年だそう! 原作者コッローディも今年没後130年だそうです)。
 なお岡栄一郎は今年生誕130年。『思ひ出るまゝ』には岡少年もチョロッと出て来ますし、ディズニー映画にもなった『ノートルダムの鐘』すなわち病床に伏した師・紅葉の代理で秋聲が文飾を施した『鐘楼守』のお話も出て来ますよ!





「或売笑婦の話」完結!
  2020.6.3

 先日ご紹介した菊池寛の上座ドカッ事件、実は里見弴の「氏に関しては美談ばっかでアレだから敢えて一個だめなとこ言っとく」との前書きを端折ったことでただただ不躾な話になってしまったことをお詫び申し上げます。
(←そしてふたりは仲良し! へっちゃら!)
もののついでに菊池寛記念館さんにもお詫びをいたしましたところ、「菊池寛の性格は、皆よく知っていますから(笑)」とさらりと返ってきて笑いました。寛も館もさすがの大御所KAN…!
 さて、その里見弴がだいたいいいんだけど一個だけ文句言っとくわ、と批評したのが秋聲「或売笑婦の話」。総合的には「近頃感服して拝見したものです」としながら、「前書きのやうなものと最後に船から下りて来たのが、女主人公が尋ねて行つた男の○○だつたといふのだけ、余計だと思ひました」(「文壇の半年」〔一〕/「読売新聞」大正9年6月21日)とのこと(※未読、未聴の方を鑑み、一部伏せ字にしております)。それこれ含め、みなさまこの作品についてどう受けとめられたでしょうか? おかげさまをもちまして、声優・うえだ星子さんによるご朗読「或売笑婦の話」、一昨日最終回を迎えました!(https://youtu.be/b5UUHw2rX0E)ありがとうございます! こうしてお声のプロの方に秋聲作品に命を吹き込んでいただけるという喜びとともに、こちらの好き勝手な感想や要望に対してもお気を悪くすることなく「なるほどー! もう一回撮り直します!」と毎度真摯に応えてくださったうえ、ああかな?こうかな?と同じ目線で議論を交わさせていただいたこと、とても得難く何より楽しい日々でした。「朗読が怖かった」と仰るうえださん。乱暴に言えば、ただ字面を追って読むことだって物理的には可能な朗読ながら、「仮に作者の意図とは違っても、まず自分が納得しないことには語れない」とも仰っていたとおり、描かれるそれぞれの立場でもって時に激し、時に感情を制しながら進行する物語に身ひとつで向き合うこの行為にどれだけの覚悟を要するか…うえださんのご姿勢を通じて学びました。約一ヶ月強、ほんとうにありがとうございました。アッアッ座らせませんけど!? 次の作品が玄関先で待っていますけど…!?





起立する最年長
  2020.6.1

 遅ればせながら、アニメ「文豪とアルケミスト」第7話を視聴いたしました。なかなかヘビーな展開でしたがわれわれ記念館の思うところはただひとつ、「秋声くんにも誰か椅子をすすめてあげてっ…」です。すみません。
 みな一堂に会し深刻なお話をされているなか、彼らの着席する背中がワワ~と流れていくなかで実はすでに気になっておりました。(あれっ秋声くんだけ立ってる…?)そしてカットが変わり、その不安が確信に…(やっぱり秋声くんてば立たされて…!!) いえ、ご自身の判断でお立ちになっているならば構わないのです。しかしあの中においてはたしか最長老格…どうか…どうか彼に…われわれに代わってどなたかあの彼にお椅子をすすめてさしあげて…っ!(作家とキャラとの間でいくぶん混乱しています。)
 とはいえ新潮社の編集者で実作者、ほぼ秋聲会の会長と言っていいくらいに秋聲を慕った中村武羅夫が言っていました。自分が知るなかで、主人とお客の座布団に差をつけない=皆に平等なのは漱石と秋聲だけ、ってね…(『明治大正の文学者』より)。それから里見弴も言っていました。とある会合で、大先輩の秋聲を差し置いて菊池寛がドカッと上座に座るのを見て呆れてしまった、ってね…(『私の一日』より)。そう、きっと秋聲本人は誰がどの椅子に座ろうが座るまいが立っていようがいっそ出ていこうがまるで意に介さない……(スックーン!→)。
 よくみれば椅子はいっぱい余っていましたし、どうやら意地悪されたり遠慮して言い出せなかったわけではなさそうです。なるほど芥川が心配でとても座ってなんかいられるもんか! ってことですね。坊ちゃんはァ昔っから仲間思いだもんでねェ…!
 今回、自作「地獄変」の世界に捕らわれてしまった芥川ですが、開催中の岡栄一郎展では、秋聲と栄一郎、すなわちざっくり徳田一族との間の係累に捕らわれ疲弊する芥川の姿がございます。「秋声は岡の叔父だけある」(芥川筆 佐佐木茂索書簡より)。…ふ、含み~~~… 





1日より開館いたします
 2020.5.31

 いよいよ明日6月1日より再開館いたします。一ヶ月半にわたる休館中、7月刊行予定の文庫本の校正作業に勤しんだり、岡栄一郎展の会期延長手続きに奔走したり、注意喚起の貼り紙を制作したり、長い時間をかけてこれまでに見たことのないオリジナルの地層をズンズン作っていた参考図書の書架をガッと整理したりなどして過ごしておりました。その過程でたまたま川端康成全集の隣に菊池寛資料が来たりなんかして「あらあら仲良く並んでうれしいね、ウフフ」とそんなところにひそかな楽しみを見つけたりもしながら、心残りは秋聲全集と某K花全集の間に犀星全集を持ってこられなかったこと…分量の関係で上から秋聲→K花→犀星になってしまってちょっとコレ緩衝材が…!
 ちなみに展示室に出してあるほうの全集はこの機に白鳥さんを加え、藤村、花袋、白鳥、秋聲(と紅葉先生)と自然主義文学の四大家にしてみました。実は以前から某K花さんと犀星さんの全集は陳列しておらず、特に兄弟弟子の某K花全集を出していないところに「意図的ですか(笑)」とお客さまから突っ込まれることも多かったのですが、たしかに意図的といえば意図的ですが決してそういう意味の意図でなく、単純におふたりの全集は市内それぞれの館に行けば見られるから、という理由でお出ししていないのでした。なおこの作業とともに、閲覧用書籍および朗読試聴用タブレットは一時的に撤去いたしております。極めて愛想のないコーナーになってしまいましたが、しばらくのあいだ何卒ご容赦願います。この試聴用音源はご近所の「浅野川倶楽部」さんからお借りしており、同倶楽部さんの方で先日YouTubeにてそれら音源を一挙公開されたそうですので、ぜひそちらからお楽しみください。
 さて栄一郎展の会期の件、とりいそぎまして6月29日まで前期展を延長することといたしました。30日に前後期資料入れかえ休館をいただきまして、後期展は8月23日(仮)までの予定です。ご案内が直前となりまして申し訳ございません!



 


縮図マスク
 2020.5.28

 6月1日からの開館に向け、館内にありとあらゆる貼りものをし、各部屋部屋から椅子を減らしてゆくおばけになりながらふと見た和紙人形シアターのお姉さん方がしっかりソーシャルディスタンスだなぁと思いました(感想)。
 さて、以前にもお知らせしておりました秋聲作品モチーフグッズ制作者・ロカワークショップさんより、このたび新製品『縮図』マスク販売開始につきましてご案内いただきましたので、こちらでもご紹介申し上げます。最近ではすっかりマスクもファッションの一部と化し、ネクタイとコーディネートしたりマスク用アクセサリーが登場したり、といった報道をお見かけします。こちらで言えばマスクとタイツで上下コーディネートができますね! 秋聲ファンあるいは縮図ファンのみなさま、ぜひチェックしてみてくださいませ。お隣には縮図手ぬぐいの掲載もあり、現在マスク・タイツ・手ぬぐいの3種をこのサイトからお買い求めいただけます。
 ちなみに当館ご近所のひがし茶屋街にあるギャラリーエッジさんでも一部の販売があり(現在、無期臨時休業中。お出かけの際にはHP等でご確認のうえ…)。以前お伺いした際「秋聲のもの売れますか??」とお尋ねいたしましたら「派手なものから売れてゆきます」とのこと。さすがおしゃれ上級者たち…合わせるのが難しそうなものからチャレンジしてゆかれるようです。なお当館では手ぬぐいと、工房の臨時休業により制作の遅れている風呂敷を今後ご納品のあり次第お取り扱いさせていただく予定です。
 
 さて、そろそろこのヒロインも上記シアターのお姉さん方に交えたいくらいにキャラクターが立ち上がってまいりました(しかし名はない)。うえだ星子さんによるご朗読「或売笑婦の話」第6回の配信開始です!(https://youtu.be/qGpMpqZzq8Q



 

調理実習かと思ったら農業体験でした。
 2020.5.24

 「『中央公論』の『五十年記念号』の「『三十四人集』の目次を見てゐると、坐りなほした徳田秋聲と、坐りなほした島崎藤村との間に三十二人の作家がはさまれて、小言を喰つて居るやうな妙な気がしてくるのである。」と、林房雄氏の比喩は多分当つてゐるのだろう。それほど徳田秋聲氏の『勲章』は立派である。」
 さて、昨日アニメ「文豪とアルケミスト」、略して文アニさんの第6話を視聴いたしまして頭に浮かんだのが前掲、世界の川端康成による賛辞です(昭和10年11月「文芸時評」より)。厳密には林房雄の引用ですが、「中央公論」同年10月号目次に「現代作家三十四人集」としてズララと居並ぶ34名の作家たち、その先頭に君臨する徳田秋聲「勲章」、末尾に鎮座する島崎藤村「夜明け前」、間にはさまる佐藤春夫、広津和郎、横光利一、正宗白鳥、康成、尾﨑士郎、里見弴、犀星さん、中野重治、武者小路実篤、久米正雄ら32名の作家たち……もう言わんとすることがおわかりでしょうか…? 文壇の二大家、藤村・秋声組を前に若手作家たちはこうべをたれるほかないのだと……!!!
 興奮にまかせちょいとお口が過ぎましたけれども(しかも犀星さんと武者小路さんしかいなかったです)、昨日のお料理対決にあたりあまりにもダークホースであった藤村・秋声組が勝利したことにわれわれはもはやアワアワなどいたしません。あっそうでしょうそうでしょう、「秋聲氏や藤村氏などの老大家の健在は日本の文学のやや成熟して来たしるし」(川端康成「徳田秋聲氏の『仮装人物』」より)なのですから最初っからこの勝負は見えていた! ナイス、金沢カレー! 大事だ郷土色!!
 ただ、紅葉先生からものをいただいてもたいしたリアクションもできずそのうち何ももらえなくなったという秋聲先生を思えば、秋声くん快心の「やったぁ!」にはすかさず一張羅の懐から取り出したクラッカーを鳴らしましたし、派手に立ち回るみなみなさまの後方でせっせと農耕作業に励みつづけるそのお姿に、長きにわたる作家生活の地味でただただ一途な歩みのさまを見、知らず目頭があつく…。
 アッあと、彼らの勝利に一瞬かすみましたが、トクダ呼ばわりと秋声くんを雑にこきつかった冒頭のくだりはわすれていません。わすれていませんよ!





編集の鬼
  2020.5.22

 20日を過ぎても届かない…と、そんなところから当館が「月末の福音書」と呼び毎月楽しみにしていた「月刊金澤」さまがもうこの世に存在しないのだということを改めて実感しております。本来であれば今月20日発行の「月刊金澤」6月号、廃刊が決まるまえに実は秋聲コラムはすでに校了しており本誌発行を待つばかり、という状態であったものですから、手配した第35回は幻の原稿となってしまいました。と言ってこれは決して恨み節でなく、今後また何かの機会に同誌が復刊、あるいは形を変えて生まれかわるその時までぜひ眠らせておきましょう…との希望の種でもあるのです。敢えて宙ぶらりんにさせておくことで、いつか着地か飛躍か新天地に到達することもあろうかと、好きに泳がせておくのです。ちなみにタイトルは「小説の鬼」。締め切りを破りすぎて担当編集者にしこたま怒られる秋聲先生のお話です。
 この時、秋聲をしこたま怒ったのは「中央公論」の名物編集長・滝田樗陰。樗陰は漱石門に出入りしておりましたので、先日よりご紹介しております岡栄一郎展で展示中の栄一郎による自筆原稿「漱石山房追憶」にも初っぱなから登場してまいります。毎週木曜に漱石宅に弟子たちが集う「木曜会」にて、みななんとなく夜に行く感じにしているところひとり毎週昼過ぎに現れては夕方まで先生を独占する男。また先生にふんだんに書なり画なりを書かせてすべて取りあげ去ってゆく男。なかなかに無遠慮かつ傍迷惑な空気が漂っておりますが、漱石の妻・鏡子夫人はあれのおかげで漱石の筆跡が多く世に残された、とも語っています。作品を書かせる、世に出す、世に残す、ということにかけては一流であったと思えば、樗陰こそ「編集の鬼」と言っていいのかもしれません。
 そういえばこの作品も「中央公論」に掲載されたのでした。声優・うえだ星子さんによるご朗読「或売笑婦の話」早くも第5回です(https://youtu.be/_cZy1_HYtyg)。坊ちゃん坊ちゃんした彼の自宅にとうとう出かけてしまった女…夜はくらいし道はわるいし牛はくさいし蛙はうるさいしおまけに呼んでも誰も出てこないし…! さて出迎えた男の反応やいかに。





ナイスお留守番
 2020.5.18

 おっ…おかえりィ~~ッ!!
 と、冒頭から取り乱しまして失礼をいたしました。このたびアニメ「文豪とアルケミスト」、略して文アニさんの第5話を視聴いたしました。秋声くん界隈で申し上げればじらされ続けて実に4週間…ようやくのお戻り、記念館一同ほっと胸を撫でおろしております。
 久しぶりに見せてくだすったお姿すなわち自然主義仲間の島崎藤村氏と仲良くお留守番担当秋声くん……ヘイ! ナイスお留守番! いいよいいよ! 声でてるよ~! ヘイ、ナイス視聴者目線! いいよいいよ、親切だよ~! 藤村氏もナイス解説! ふたりいいコンビネーションだよ~! と、今週は手をパンパン叩きながら後方より大いに盛り上げました秋声陣営です。時に保護者のように、時に執事のように、そして時にマネージャーのようにあの手この手でとにかく秋声くんを応援したい記念館一味でありますが、その実、彼にとって何者でもなし…。
 また満を持して犀星さんのご登場! 文アニさんデビューおめでとうございます! 萩原朔太郎さんとの関係性を描くこの回、実際の犀星さんも秋聲を中心とする「二日会」に一度朔太郎さんを連れてこようとしたことがありました。「当夜、萩原君をさそひてうかがひます。」(昭和3年12月1日付秋聲宛書簡より) 結局出席の記録がないので、何かしらの事情で実現されなかったようですが、思い悩めるそんな夜には、みんなみんな徳田さんちでご飯を食べたらいいじゃない! 友達の友達だって連れてきていいのが徳田さんちじゃない! と、そんな気持ちで拝見いたしました。
 さて来週の授業参観は調理実習とうかがっております。藤村氏あたりから「あれ君んとこの記念館?」と指を差されても秋声くんが恥ずかしくないよう一張羅で出かけますし、間違っても「ヘイ! ナイスエプロン!」とか言わないように我慢しながら品位ある厳粛な面持ちで出席したいと思います。お口にチャック!





臨時休館、継続中 
 2020.5.16

 5月13日の前後期展示替え休館がそっと臨時休館に含まれてしまいながら、14日の外部講座も延期となり、16日本日開催予定であった岡栄一郎展記念対談もやはり延期(詳細未定)、そんななか石川県の緊急事態宣言の解除を受け、館内の貼り物や受付まわりのアクリル板の設置などじわじわとシミュレーションを進めつつ開館の前倒しがあるかないか、と息をひそめ注視しておりました昨夕、金沢市の発表により当館を含む市の施設は当初予定通り今月31日まで休館を継続することとなりました。
 それすなわち栄一郎展の公開期間実質2週間、との無念さに耐えきれず、現在この会期の延長を検討中です。昨日、もののついでに印刷会社さんに「次回企画展のチラシの発注時期がずれ込むかも」とお話しした際「ええ、そうでしたね」とのリアクション。「あれっ? もうお伝えしましたっけ??」と不思議に思って聞き返すと「ラジオで仰ってました!」とのこと。ご清聴ありがとうございます。
 先日のラジオでも申し上げましたとおり、いざ延長するとなるとよそさまからお借りしている資料や画像の借用再申請やら、展示構成の調整、保険期間の延長手続き、広報手段の検討やらと、さまざまな手続きが発生いたしまして、まだなかなか具体的に公表できずにおりますが、とりいそぎ6月1日(月)予定通り再開館いたしました暁には、向こう一ヶ月ほど前期展の資料をそのまま展示させていただくつもりで動いております。本来であれば6月28日までの会期であったところ、それをも飲み込み、後期展(全会期)のお尻につきましては次回企画展との兼ね合いともなりますのでさらにさらに検討中…。先行きが見えましたらまた改めてご案内を申し上げます。
 そうしてぐずぐずしている記念館のいっぽう、うえだ星子さんの動きの素早さたるや、日月星光矢の如し! 昨日、ご朗読「或売笑婦の話」早くも第4回がアップされました(https://youtu.be/MTRTEkNmVTg)。
 あぁ、夏がやってきますね…。そこはかとない山椒のかほり… 
 


 


光を追うて 
  2020.5.13

 昨日、MROラジオ「あさダッシュ!」さんに学芸員が出演させていただきました!(番組名ほんとは真ん中に太陽が入ります。かわいいです→)
 先月に続き、今回も自宅からの電話出演です。それを当日も当日、出演10分前にツイッターで告知いたしましてまるで超大物ゲスト緊急生出演!みたいな過剰演出、申し訳ございません。
 その都度次月の出演日程を決めさせていただき(ちなみに来月は17日の予定です)、事前にお話しする内容もお送りし、かつ出演の20分くらい前に軽く打ち合わせをしてそれから…という段取りになっているのですが、どうしてもスタジオにお伺いするまで(今回は20分前のお電話がかかるまで)、イヤそんなこと言って中止になるかもしれないよォ…? 急に別の出演者さんに交代になるかもしれないよォ…? と持ち前のネガティブが脳に囁きかけてきて信じきれず、なかなか告知できないというのが実情です。もうこれは病、薄ら暗い湿地帯育ちの記念館一味の身に染みついた悲しい性なのですから、何卒ご容赦ねがいたく…。とはいえいつもきちんとお約束を守ってくださるMROさんを信じ、いいかげん少し朝の太陽の光を追うてゆくことを覚えたいと思います。
 放送では牛田和希アナとはじめましての冨優香子アナに優しく聞きだしていただきながら、休館中のお仕事についてお話しさせていただきました。職員はこんなことしてます~のあとに〝個人的にやっていること〟を聞かれ、それはおそらく学芸員としての仕事内容であったにもかかわらず、「あっなわとび始めました!」と超個人的なことを無邪気にお答えしてしまったことは一生の恥としてこの胸に抱え、これからもともに生きてゆくこととして、先日からご案内している声優・うえだ星子さんによる朗読「或売笑婦の話」のYouTube配信についてお話ができましたので大満足です。と、ちょうど昨日、第3回が配信開始!(https://youtu.be/orMyIA0o2h8) 男と女の間の距離が微妙に変わってゆくさまが7分間の会話劇の中で表現されます。最後の一文がぐっと胸にくる…きた結果、一夜明けてなお生々しいなわとびの傷にさわる…そんな第3回です。 


 


書架まで隈なく探す
  2020.5.10

 アニメ「文豪とアルケミスト」、略して文アニさんの第4話を視聴いたしました。今回は全国の秋声会のみなみなさまとその感想が一致したのではないでしょうか。曰く「秋声どこいった??」、以上です……ってなにこれデジャヴ…?(4月20日記事参照) 冒頭より急にちがうアニメになったかと思いつつ拝見しておりましたら太宰くんが現れほっとしたのもつかの間、やっぱり急にちがうアニメになったかのように秋声のしゅの字がかたくなに隠され、しかもどうやら今回は総力戦でみなお呼ばれしているなか、一体あの子はどうした、からあげ定食にあんぱんまで追加した結果、食べきれずに居残り給食でもさせられているのかい…? と、だんだん心配になってまいりました。えっ…もしかして最初からいなかっ、た…? 強すぎる願望の生せるまぼろし…??
 そう、そもそも彼がそこにいるという事実を当たり前にしてはいけないのでした。三文豪と称されながら、地元でもかなりの確率でひとりすっとばされる秋聲…作家たちを列記するなかその名のないことなんぞ日常茶飯事、慣れている、慣れているといえど傷ついてないわけじゃない…みたいな甘酸っぱい悲しみの上に立つわれわれを、「秋声くん」という救世主が華奢ながら力強いその手でひっぱりあげてくれたことがまず奇跡でしたから、いつもいて当たり前、と思うことがもはや驕り、慢心…。いけないいけない、初心わするべからず、感謝の心が不足しておりました。
 そんな気持ちで顧みれば、ざっくり雑に「秋声のしゅの字がかたくなに隠され」と書いてしまいましたが、しゅの字はちゃんとございました。アニメ中、どこぞかの文学館さんで開催中の展覧会ポスター、紹介される文豪達の一覧の中にきちんと「徳田秋声」の名がございました(ええ、一時停止いたしましたけれども何か?)。そのことがまず嬉しく、とりいそぎこの文学館さんに菓子折を持ってご挨拶に伺いたいのでお名前とご住所と職員さんのおおまかな人数が知りたいです。





うえだ星子朗読「或売笑婦の話」第2回
 2020.5.9

 先日お知らせいたしました声優のうえだ星子さんによるご朗読「或売笑婦の話」。初回の公開後、音量やら音質やらを再調整のうえアップし直されたそうですので、改めまして下記からどうぞ! 秋聲のためによりよい環境を目指してくださってありがとうございます。また昨日さっそく第2回をアップしてくださいましたので(全7回予定)、それではどうぞ2回続けてお聴きください。秋聲原作、朗読うえだ星子で「女」の淡い初恋の結末やいかに……!(スッとステージ脇にはける熟練司会者のイメージで。)

 (第1回)https://youtu.be/f5WHSheH7vo
 (第2回)https://youtu.be/jqE6-2PA_EI
 
 本作の選定にあたり、うえださんからご指摘いただき初めて気がついたことには、これが発表されてなんと今年でちょうど100年だということ! えっ大正9年?? 1920年? アッ今年2020年?? ほんとだーーー! となりました。ぼんやりな記念館で恐縮です。そうそう大正9年ったら田山花袋さんと一緒に生誕50年を祝われた年でもありますね。このときは数え年の50歳を祝われており、昭和6(1931)年、還暦祝賀会の時には満年齢で祝われており(数えの61歳)、その没後、石川近代文学館さんによる生誕100年記念展覧会は昭和45(1970)年、すなわち数えの100歳で開催されており(テープカットは川端康成)、はぁややこしい!! こののち半世紀…では秋聲生誕150年はどうするどこにする?? と検討を重ねた結果、田山花袋記念文学館さんとともに来年2021年の満年齢に設定することといたしました。だって記念館が早く決めないと秋聲をお祝いしたいみんなが困っちゃう…! と、いっちょまえに慌てたりもしたのですが、その間どこからもお問合せが来なかったです。アレッ…? 他館さんとか出版社さんとかみんな、困らない…? 秋聲をお祝いする年、はやく決めなくてもみんなみんな困らない…??(なお当然ながら、記念館にその決定権があるわけではございませんのでいつお祝いされても自由です!) 

 ら、来年ですよ~~~! オーイみんな~! もう来年で~すよ~~~…!





うえだ星子朗読「或売笑婦の話」
 2020.5.6

 こんなご時世にうれしいお知らせです! なんと声優としてご活躍のうえだ星子さんが、このたび秋聲の名編「或売笑婦の話」を朗読のうえ、YouTubeで公開をしてくださることになりました!(https://youtu.be/AlFqIAN_g5c) ヒーー想定外!
 ご企画にあたり、うえださんはわざわざ館にご連絡をくださり、記念館一味に大いなる衝撃と喜びとを齎してくださいました。アァうえださんうえださん…本当にありがとうございます…金沢のご出身でいらっしゃるとか…? 奇遇ですね…秋聲も金沢出身なんですよ…ふふ…これはご縁ですね? このうえなく深いご縁といって差し支えございませんね…? と、そんなわけでステイホームの今日この頃、秋聲の世界にぜひお耳から親しんでみられてはいかがでしょうか? なにせお声が素晴らしいので、それだけでまず鼓膜が幸せ…ってあれっ? しかもよく聞いたら秋聲じゃん! まさかの秋聲作品じゃん! 或売笑婦の話じゃん! みたいに意味もなく後から気づくごっこなどして、この喜びを味わい尽くしている一味でございます(下記画像は初版本の扉です)。
 本作と言えば、セットで思い出すのがこれを絶賛した林芙美子。秋聲を心の師と仰いだ作家で、生活苦のなか女給をしながら秋聲を初訪問して見せた詩稿、それを読み秋聲が涙した、とは双方が記録するところですが、それらを収録したものか、のちに刊行された芙美子の詩集『蒼馬を見たり』の序詩がまさに「或売笑婦」の心境に通じるような気がいたします。
「あゝ二十五の女心の痛みかな!//細々と海の色透きて見ゆる/黍畑に立ちたり二十五の女は/玉蜀黍(とうもろこし)よ玉蜀黍!/かくばかり胸の痛むかな/廿五(にじゅうご)の女は海を眺めて/只(ただ)呆然となり果てぬ。」(冒頭)
 
 アッちょっと結末を暗示してしまった感もありますが、全七回の予定です! ぜひぜひお耳から…!
 
(追記)録音環境を再調整されたそうで、第一回は下記よりお楽しみください。
      https://youtu.be/f5WHSheH7vo         (2020.5.8)


   


「漱石山房追憶」
 2020.5.2

 さて「岡る」といえば「久米る」、本日は久米正雄のお話です(すると自動的に芥川もついてくる…)。岡展前期のみで展示予定の(その上で休館中です)栄一郎の自筆原稿「漱石山房追憶」(石川近代文学館蔵)、昭和30年2月頃に書かれたものですが、栄一郎の娘で当時文芸春秋新社の編集者であった富久子が掲載予定の雑誌「文学界」にふさわしくないとして、結局未発表・未完に終わった随筆です。
 ここに、大正2年~4年頃、最晩年の漱石の元に出入りしていたときの思い出が綴られ、同じく門下生となった久米・芥川・松岡譲が登場してまいります。しかしこの3名、栄一郎が出入りを始めた数年あとにやってきたために、たくさんの門下生たちのなかでやや出遅れてしまった模様。漱石先生が自分の講演集『社会と自分』に署名をして栄一郎たちに配ってくれるなか、久米と芥川はもじもじと羨望の眼差しでもってその様子を見つめており、最後に数冊余ったのを見届けてようやく「僕も欲しいな」と思い切って久米が声を発したことで、「いいよ。名前は」と漱石先生がふたりにも署名をしてくれた、とのエピソードが記されています。受け取った久米は素直に喜色満面のいっぽう、芥川はピクリと眉を動かしただけで(べつに動揺してませんけど?)風を装ったとか。これは貴重な証言ですね(あと見所はちょっと先輩面する栄一郎です)。発表されなかったことがたいへん惜しく思われますが、編集者・岡富久子は当時、「自分の姿が出過ぎて駄目!」と突き返したそうで、実の親子ながら(だから?)なかなか手厳しい判断と言わざるを得ません。
 ちなみに栄一郎研究の第一人者・井口哲郎氏作成による年譜によれば、同年前月、富久子自身を紹介した雑誌に誤って父・栄一郎は物故者として紹介されてしまったそうで(当時65歳)、この頃いかに文壇で栄一郎の影が薄くなっていたかということが推し量られます。そうして経済的に逼迫した岡家を援助したのが菊池寛で…(ってやっぱり自動的についてくる菊池寛…!)



 

「岡る」
  2020.4.30

 昨日、岡栄一郎の「悪巧みのない暴君」っぷりをひとつご披露申し上げました。そのさま、栄一郎も創刊同人となったご存じみんなの菊池寛による、ご存じみんなの「文芸春秋」においてもネタのひとつとされています。
 同誌大正12年3月号に掲載されている「文壇新語字典」の「お」の項、「おかる(岡る)」という聞き慣れない言葉が記されていて、その意「岡栄一郎なる男が友人に対してよく怒るので、発生したる言葉。筋違の事で、直ぐ腹を立てること」。なるほど、栄一郎さん怒りっぽいそうな! しかも「筋違(すじちがい)の事」で…! 
 芥川龍之介の佐佐木茂索宛て書簡にもこんな記述がありました。「我鬼窟(※自宅書斎)時々俗客を迎へるに閉口す この間も×××××と云ふ半可通来(きた)り岡を怒らせ遂に僕まで怒らせたり あゝ云ふ連中には今後露骨に悪意を表して会はない事にしようかと思ふ」(大正8年9月11日)。あ~やっぱり岡ってるわ~! と思うと同時に、結局このお客さんは芥川をも怒らせていますので、この場合においては「筋違の事」とは言えない模様。ただ芥川より栄一郎の沸点が低め、ということだけはわかります。
 そしてここで注目したいのは、今後お客は選ぼっかな~と記す芥川がふるいにかける対象に栄一郎は入っていないというところ! いかに岡りっぽくても、同宅に出入りが許されているのが栄一郎という人間なのです。「暴君」であろうがそこに「悪巧み」がないから他者に愛されるのでしょうか。より丁寧に引用すれば「あれほど鼻息の荒い、父や母や友人の前に、悪巧みのない暴君として、我儘に挙動(ふるま)つて来通した世間見ずの男」(徳田秋聲「陰影」より)、そんな栄一郎を、この子は上手に生きていけるかしら…と保護者目線で心配したのが徳田秋聲という男。そしてそんな秋聲をあの人を保護しなければ! と気遣ったのが菊池寛という男です。以上、ドヤ顔で書き連ねました「岡る」のエピソード、菊池寛記念館さんより教えていただきました!(上記パネル用画像もお借りしました!) 記念館単位でもいまだお世話をおかけしまして…!





芥川や菊池
 2020.4.29

 岡「『松永弾正』だが、これもやつぱり菊池にすゝめられて書いたんだ。しかしこの時は書上げてから暫(しばら)くほうつておいた。するとその時分菊池は速達病といふのにかゝてゐてね。何かといふとすぐ友達の所へ速達を出す、この速達に見舞はれなかつたものは芥川ぐらゐだらう。僕もこの時早速その速達に見舞はれたので菊池のうちに出掛けた。すると菊池は、僕にさかんに言ふんだ。友達がこんなに一所懸命にすゝめてゐるのに君がほうつておいて書かないのはけしからん、何故自発的にもつと書かんのかッてね。」
 …ってね。栄一郎が「演劇新潮」昭和2年5月号掲載の座談会「劇作、舞台、演出雑話」で語っています(同誌展示中)。
 栄一郎が「これもやっぱり」と語るのには、この前の作「意地」の制作にも菊池寛がかかわっていたから。同じ座談会で「第一僕なんかは脚本などをかく気は少しもなかつたんだ。僕が書く様になつたのは、やつぱり芥川や菊池にすゝめられたからなんで、大正十年頃だつたかな。芥川が、僕や菊池が既に作家になつてゐるのに、君だけがならんのは淋しい気がするといふし、菊池も、君が何か書きさへすれば、あとはどうにでもするからといふんで、ついふらふらと一週間ばかりかかつて書いたのが『意地』といふ脚本だ。」とも語っており、ちょっと芥川や菊池…お節介というか(すみません)、世話焼きがすぎるというか、過保護というか、連帯意識強すぎというか、淋しいって…淋しいって…。どうも甘やかされ体質の栄一郎がここにいますし、それを感謝とともに語る風でもなく、「いやはやまったくあいつらったらね」みたいなテンションでもって、はぁ~~この「悪巧みのない暴君」め!(Ⓒ徳田秋聲)
 ちなみに栄一郎の「意地」を掲載するために芥川が同じ雑誌「大観」大正11年3月号に手配したのがかの名編「トロツコ」ですし、晩年、生活に窮した栄一郎の娘さんの学費・生活費を補助したのが菊池寛です。栄一郎なくして「トロツコ」は生まれず(たぶん)、軽く世代を超えてゆくのが菊池寛の温情です。





「松永弾正」
  2020.4.28

 きのうテレビで好きな戦国武将総選挙という番組の放送があり、ふと「松永弾正…」と頭をよぎりました。岡栄一郎の初の舞台化作品のタイトルがまさに「松永弾正」。
 企画展チラシにも用いた栄一郎初の戯曲作品「意地」(上の黄色いほう)は、大正11年3月に発表され、その舞台化は発表から2年後の大正13年11月。「新国劇」により「返り討」と改題されました。「意地」の9ヶ月後に発表され、しかし「意地」より早く舞台化されたのが「松永弾正」で、大正13年3月に同じく「新国劇」により舞台化されています。
 そんなパネルテキストを書いていたおり、大阪の高槻市立しろあと歴史館さんが、弾正の従来にはなかったリアルな肖像画を入手されたとの報道があり、館長がこれはぜひお貸しいただきたいなァ! とのことで勇んで同館に連絡をとり、ものすごくご無理をいって画像をお貸しいただきました。その節は唐突なご依頼にて申し訳ございません。急に畑違いの文学館から、急に「栄一郎が! 書いてるもんで!!」と鼻息も荒くお願いをいたしまして…おかげさまでパネルがいつになく華やかになりました。本当にありがとうございます。実は同館でもこの実物資料を報道から間もなく初公開されるご予定であったものが、コロナウィルスの影響により今も休館のうえ、展覧会も延期延期となっていらっしゃいます。そのご無念、お察しします。
 栄一郎の戯曲「松永弾正」は、弾正こと久秀の最期を描くもの。『現代戯曲全集』第16巻(大正15年・国民図書)に収録され、これは「本」という形になった作品の極めて少ない栄一郎にとって唯一、唯二くらいの貴重資料。金沢市立玉川図書館さんからお借りして展示させていただいています(しかも前田侯爵家寄贈本)。
 実は本作の執筆経緯にかかわっているのがご存じみんなの菊池寛。明日の「寸々語」はこの続き、栄一郎が語る菊池寛の「速達病」についてご紹介します。





「月刊金澤」に寄せて
   2020.4.26

 当館はちょっとはしゃぐと何か悲しいことに見舞われるというシステムの中心にいるのでしょうか。つい先日毎月コラムを連載させていただいている「月刊金澤」さま発行のご案内をした矢先に、新型コロナウィルスの影響により同誌発行元である金沢倶楽部さん倒産との報を受け、ショックのあまりここ数日べそべそしておりました。
 この寸々語に目を留めてくださり、2017年8月号から連載が始まって早いもので3年弱のお付き合いです。当初全6回で、と依頼されていたものが、編集部さまのご厚意によりこの5月号で第34回にもなりました。初回掲載時には「ずっと暗い路地で誰にも見られず踊り続けていたものが編集部さまに手を引かれ、急に大通りの歩行者天国に連れ出されたような心もち」と当時のブログに記しています。イヤそんな明るいところでの踊り方なんて知らないですけども!! と慌てふためく当館に「そのままでいいです。無理に合わせるとせっかくのリズムが壊れるから」と、雨の日も風の日もいつも先頭に立ってこの妙な踊りをニコニコと見守ってくださっていたことを思い返しては無力感に涙が出ます。
 ずっと担当をしてくださっていた編集者の方からお電話をいただき、「ご迷惑をおかけして申し訳ありません」と何度も仰るそのお言葉に、当館は記念館史上もっとも野太い大きな声で力一杯言い返したいのです。秋聲の価値を認め、秋聲をこそ選んでくださった貴誌には感謝しかないのだと…!!! 
 『縮図』よろしく嫌がられながら80回まで書いてやるつもりが、こんな幕切れになろうとは思いもしませんでした。が、当館なんかより本当は誰より泣きたいであろうに、お電話くださったとき担当編集者さまは泣いていませんでした。最後まで編集者としてきっちりお仕事をしてくださいました。その気丈な振る舞いを、われわれは見習わなければなりません。
 そんなわけで、コラム「第三の男、秋聲を嗜む。」はこれにて連載終了です。毎月ご購読くださったみなさまと「月刊金澤」編集部さまに、深く深く、心よりお礼を申し上げます。

 泣きたいときにはほっこりポストを見るといいって誰かが言ってました。
 
  



秋聲と中也ン坊
  2020.4.20

 アニメ「文豪とアルケミスト」、略して文アニさんの第3話を視聴いたしました。今回は全国の秋声会のみなみなさまとその感想が一致したのではないでしょうか。曰く「秋声どこいった??」、以上です。
 あっそうそうオダサクさんの介抱にいったんだった→ちがった。以上です。
 えっ、寝た? ……ウンウン、それもよし。よく食べよく眠る。でなければいざというときに戦えません。次回以降、文アニさんも2週ほどお休み(再放送)とのことで、ご制作陣の方々におかれましてもぜひこの間に英気を養っていただきたく存じます(ご事情も知らずに勝手を申しまして…何卒おゆるしください)。
 中原中也と島崎藤村(ここは詩人同士でもあり)、あるいは中原中也と徳田秋聲のツーショットを見るとなんだかもぞもぞしてしまうのは、中也日記における「自然主義のあとが素晴らしいぞ!」(昭和2年3月7日)がまずピチョーンと頭に鳴り響くからでしょうか(とりいそぎ上辺だけなぞりました)。一応金沢という土地で微妙に繋がっている中也と秋聲、でもとても仲良くはなれないよね、ということをちょこっと書かせていただいた「月刊金澤」5月号は本日発売です! いつもありがとうございます!
 なるほど特集「自転車と私」…自転車と秋聲=「あらくれ」ッ! ターーーン! と弾き出してしまうこの脊髄反射の回路を力尽くで食い止め、本日は中也さんのこの季節に似合う一篇「春と赤ン坊」をお届けします(※「ン」はほんとうは小さく書きます)。

 菜の花畑で眠つてゐるのは……
 菜の花畑で吹かれてゐるのは……
 赤ン坊ではないでせうか?

 いいえ、空で鳴るのは、電線です電線です
 ひねもす、空で鳴るのは、あれは電線です
 菜の花畑に眠つてゐるのは、赤ン坊ですけど
 
 走つてゆくのは、自転車々々々
 向ふの道を、走つてゆくのは
 薄桃色の、風を切つて……

 薄桃色の、風を切つて
 走つてゆくのは菜の花畑や空の白雲〈しろくも〉
 ――赤ン坊を畑に置いて

 

 

カメラ趣味万歳
  2020.4.18

 昨夜、BSテレ東さんで放送された「発見! ニッポンの100年 企業の㊙映像タイムズ」という番組で、昭和2年に久米正雄が撮影した「現代日本文学巡礼」フィルムの一部が紹介されました。バァーンと「こおりやま文学の森資料館所蔵」と画面いっぱいに表示されたときには、ワーーこおりやまさーーーん! とブンブン手を振りたい気持ちに…(栄一郎展でもたいへんお世話になりました!)。久米が13人の作家のもとを訪れ撮影したその中にはわれらが秋聲もいるのですが、残念ながら今回紹介されたのは芥川龍之介、菊池寛、武者小路実篤のお三方。映らないだろうな、でも名前くらいは出るかな、出ないかな、と思いながら拝見した結果、秋聲のしゅの字もなかったですね! 大丈夫です、いつものことです。
 現在確認される秋聲の映像はこれが唯一。昨秋こおりやまさんで開催された企画展「甦る文豪たち」で学んだことには、実は大正13年、久米の撮影によりもう一度フィルムに収まる機会があったところ、ご家庭の事情で秋聲欠席! そんな「玉川撮影記」なる映像作品も現存するそう。田山花袋はじめ吉井勇、宇野浩二、葛西善蔵、加能作次郎、近松秋江などなどが参加した玉川遊びの様子で、秋聲ってば大事なところで欠席しちゃう、そういうところがおありです。
 ちなみに現在の栄一郎展では、久米と栄一郎らによる別府旅行のお写真を展示中。久米の撮影した別府港の写真などとともに「文章倶楽部」大正12年5月号の口絵として掲載されたもので、仲良く砂風呂に埋まっている四氏、奥から栄一郎、作次郎、田中純、久米です(栄一郎と作次郎が幽体離脱~みたいになって見えますが、栄一郎は現世に残る本体のほうです)。
  




黴とロダン
 2020.4.17

 6月初旬に予定していた今年の金沢市祭「百万石まつり」の中止にともない、6月のナイトミュージアムまでが全面的に中止になりました。当館の場合、6月3日の夜間開館、13日の体験イベント「黴を見る」がそれに該当します。すでに市中に出回っているナイトミュージアムのパンフレットに掲載されておりますが、こちらの催事すべてないものとお考えいただけましたら幸いです(なお、ついでに6月6日、日中の展示解説も中止といたします。申し訳ありません…!)。
 「黴を見る」は実はもう3回目。秋聲の出世作『黴』にちなんで実際に生物としてのカビの生態を観察する、という尖った内容でして、最初こそみなさまびっくりされますが、講師・森川千春氏のお人柄も手伝いあれよあれよとカビの魅力に取りつかれ、最後には顕微鏡から離れられないという恐ろしい蟻地獄イベントです。黴はサンタ同様、当館の広報部、すなわち最前衛に配属されたメンバーですから、人様の思いも寄らぬあらゆる角度から攻めに出て行かせる所存です。ええ、使い倒します。
 『黴』発表当時、島崎藤村は、談話「『黴』の批評」の中でヒロイン「お銀」の描写を高く評価し、その結びとして次のように述べました。「人から聞いた話だから、真偽の程は分らないが、ロダンが人の足を彫刻した時に、其の人の全体を先づ造つて置いて、それから足以外の部分は打ち砕いて足だけ残したと云ふ話がある。『黴』もかう書かなければ、之れだけに現はれないと思ふが、一旦之れだけ出来たのを、お銀に関する部分だけを残して他はすべて打ち砕いてしまひ、そして此の女の一生を書いて見たらどんなものだらうかと思ふ。」(ロダンかな? なんでしょう??→)
 なお、あるとき師・漱石にお風呂に誘われ、湯船の中で「いゝ体をしてゐるね。ロダンの彫刻のやうだ」と言われたことを記す岡栄一郎自筆原稿「漱石山房追憶」(石川近代文学館蔵・前期のみ展示)を結びとしているのが開催中の企画展「岡栄一郎の陰影」です。
 『黴』のお話だとお思いに? なんの岡栄一郎展のお話です! 休館中です!





新入生来たらず
  2020.4.16

 館報「夢香山」最新号(第12号)を専用ページにアップいたしました! と同時にイベント登録をしてくださっているみなみなさまのお手元にも間もなく到着することと存じます。遅くなりまして申し訳ございません。またこんなおりにも外を奔走してくださっているすべての宅配業者さんに深く深くお礼を申し上げます。こんなときにすみません。
 今回の館報は、昨年の秋聲忌にご登壇くださった西田勝先生によるご講演録「田岡嶺雲と徳田秋聲との出会い」を巻頭に、新刊案内、グッズ案内、企画展・事業案内、それから以前にもお知らせいたしました新収蔵資料「蓄音器之友」から全集未収録の秋聲随筆を全文掲載いたしました。最後のほうには、在スウェーデンの超強力秋聲広報隊長・アンカルクローナさんのかっこいいお写真もありますよ!(ちいさくて恐縮です) 
 なお中ほどのグッズ案内ページに秋聲モチーフのタイツをご制作くだすった地元企業さんによるバリエーション、風呂敷や手ぬぐいの新発売について言及があり、「4月から当館内ミュージアムショップでも取り扱う予定です」などと意気揚々と記してしまったアレは2月の中旬でしたでしょうか…その頃には当の4月がここまでのことになっていようとは予想もしておらず、まさかの4月いっぱい休館です! またそれを制作する工房さんのほうにも影響がお出になっているそうで、そんなわけですから秋聲の絶筆「縮図」をモチーフにした新グッズの取り扱いにつきましてはもう少し様子見のうえ、時期が決まりましたらまた改めてご案内をさせていただきます。
 わ~風呂敷さんやら手ぬぐいくんが来るからね~! ショップ棚をあけようね~! と新入生をお迎えする気満々で新たに購入したショップ用本棚(古株の文庫先輩たちを追い出す方針)がまだただのオブジェと化している今日この頃。さびしいのでてるてる秋聲を住まわせたりしています。






士郎と栄一郎
  2020.4.14

 5月16日に開催予定であった栄一郎展記念対談の延期が決まりました。お申し込みくださったみなさまには、個別にご連絡をさせていただきました。栄一郎研究の第一人者・井口哲郎先生(石川近代文学館元館長)をお招きしての貴重な機会になる、と意気込んでおりましたので、ぜひどこかしらで開催をいたしたく、状況をみながら改めてご案内を申し上げます。
 また5月23日に予定していた地元有志による「女川祭」も中止が決定されたため、それに伴い当館の夜間開館もあわせて中止とさせていただきます。すなわち5月いっぱい催事なしとご理解ください。
 そんな寂しいご連絡ばかりではアレなので、以前にこちらに記しました井口先生のご発言「(この展示に)尾﨑士郎は出てる?」(3月28日付記事参照)の内実について、フライング気味にご紹介をさせていただきます。尾﨑士郎と岡栄一郎の関係性と言いましたら、栄一郎が日活の撮影所にいたころ、士郎の代表作「人生劇場」を映画化したことが井口年譜に記されており、その裏付けとして昭和10年前後、集中的に士郎から栄一郎に宛てた書簡が石川近代文学館で保管されています。栄一郎が満州映画協会に移籍したのちも士郎の作「成吉思汗(ジンギスカン)」の取材に同行したり、士郎が著作権の件でどこかしらと揉めた時にもその折衝役が依頼されていたりと、ふたりの間に深い信頼関係があったことがわかります(士郎の回顧録にも出てきます→)。そこらへんの書簡は出てる? とのお尋ねだったのですが、残念ながら今回はお借りいたしませんで申し訳ございません…
 士郎と言えば秋聲ともゆかり深く、何より「秋聲会」発起人のおひとり。秋聲を尊敬してやまず、坂口安吾が秋聲作品をけちょんけちょんにけなした時に、なんたる非礼!! と彼に決闘を申し込んだことで知られています(要は飲み比べのような…)のちには親友になったそうですが、安吾と秋聲が同じ画面に収まっていると(ハァッおっかない! 誰か士郎さん呼んできて…!)という気持ちになるのはそうしたわけです(秋聲本人はたぶんどこ吹く風)。
 


 


出た、しゃべった、しゃべ…
  2020.4.13

 アニメ「文豪とアルケミスト」、略して文アニさんの第2話を視聴いたしました。秋声くん(秋聲の名を借りたキャラクター)が出るか出るか出ないーーー! と派手に地に伏した初回でかなり額に擦り傷し、持てる体力を使い果たしてしまったもので、第2回は一周回って冷静に…いや見られるかーーーい! 今度はしょっぱなから秋声くんのご登場で度肝を抜かれました。出さないよ出さないよ出すよーーー! 先週からご制作陣の秋声会一味への弄び方がえげつな……そういえばゲームのほうをダウンロードしてみたときにもこんな感じであったことを思い出します。どれ、秋聲が出る…って出たーーーもう出たーーーー! となって何かゲームを始めるにあたって大事なことをいろいろと教えてくれていたのに何も頭に入って来ず、すぐさまお隣の職員に強制的にダウンロードをさせてもう一回頭から見たそんな思い出…(パワハラ)。あの時の気持ちを新鮮に思い出しました。ありがとうございます。  
 その他思うところはありながら、気持ちが先に溢れて文章として構築するちからがパーーーンとなってしまったので、「今週の秋声くん」を箇条書きでお届けします。
 
 ・あの中也さんと仲良くできてえらい
 ・太宰くんを落ち着いてなだめていてえらい
 ・館長代理のお話をちゃんと聞けてえらい
 ・オダサクさんを心配していてえらい
 ・安吾はおっかない

 以上、えらいところしかなかったです。唐揚げでもあんぱんでも彼の欲するもの何でも与えてやってほしいです。今は坂口安吾の「桜の森の満開の下」がテーマの回ですが(写真は満開の下の地味な当館〔左奥〕)、そのうち「あらくれ」とか「あらくれ」とか、あっそうそう「あらくれ」の回とかがあるんでしょうね! 楽しみです。





臨時休館のお知らせ
  2020.4.11

 金沢市の方針により、市設置施設の臨時休館のお尻が伸びました。本日4月11日(土)~5月1日(日)であったものが、5月6日(水)のGWを含む形への変更です。よって2日の栄一郎展ギャラリートーク、同日と4日の夜間開館もあわせて中止となります。やむを得ないことながら、とすると栄一郎展(前期)の残る会期はあと6日…これぞまさに血を吐くようなせつなさに…。しかし有り難いことにこのわずかな開館期間中にも何人かの新聞記者さんが取材に寄ってくださり、展示の胆について少しお話させていただく機会を得ました。今回の目玉は漱石の書簡であり、芥川の書簡であり、と同時に、秋聲作品に登場する栄一郎の影を追っかける、というところでもありまして、タイトルに拝借した「陰影」、これがまさに栄一郎を中心に据えて描く重要な短編小説。「中央公論」大正5年9月号に発表されました。さらにこの前後の作品にもちょこちょこと栄一郎の影が現れてきて、レコオド展でもご紹介をいたしました長女瑞子の死を描く「犠牲者」(同年9月)、それから母タケの葬儀に帰省した体験を描く「蕈(きのこ)」(同6年1月、のち「夜行列車」に改題)などに連続して現れる様子から、あぁこの頃にいちばんふたりの交渉が密だったのかしら…などと想像が膨らみます。
 なお「犠牲者」にも「蕈」にもその死因として疫病が描かれ、ともに死者のいた部屋を主人公(秋聲をモデルとする)の口が焼けただれるほど石炭酸を激しくかけて消毒する場面があり、そんなことを意図したわけではなかったのですが、この時期に読み返しては何とも言われぬ気持ちになっています。
 展示ではお借りいたしませんでしたが、芥川がインフルエンザにかかり栄一郎に出したお手紙がありましたね。「久米(正雄)病み江口(渙)病み僕病み我々連中方なしですな/伝染を惧(おそ)れなければ遊びに来給へ熱は三十六度九分位」(大正8年2月22日)。遊びに行く、ダメ、ゼッタイ!
 
 



何かを隔てて
  2020.4.8

 今朝ほど、例月のMROラジオさん「あさダッシュ!」に出演させていただきました。いつもはスタジオにお邪魔してマイクなどのあるブースでMCのおふたりとわちゃわちゃ会話させていただくのですが、こんなご時世ですから、とのことで初めての電話出演となりました。お話しされる方のお顔が見えないというのはなんともやりにくいもので、いつも以上にふがふがしてしまった感もありながら、そんな方法ででもお約束どおりお招きくださったことをたいへん有り難く思います。たださんざ栄一郎展についてPRしながら、でも11日からお休みなんですけどね! と最後にとんだ当て身を食らわせてピャッと逃げてくるこの感じ…申し訳のないことです。 
 さて最後に当て身といえば「和解」、「和解」といえば秋聲と某K花さん(短編小説傑作集I『風呂桶・和解・チビの魂』に収録!)。先日、川向こうの某K花館へ潜入してまいりました。この様子だと実際に開催できるかどうかもわからないのですけれども、しかしいま準備すべきことはしておかねばなるまいよ…との一抹の切なさを抱えながら先々の事業の打ち合わせです。浅野川を挟んでぜんぜん和解できてない、でお馴染みの両館ですが、一応「金沢の三文豪」というくくりにて、永世中立国・犀星さんをかすがいに一緒に動くこともございます。その場合、いつも会合にはなんとなく火鉢のないお部屋にしてもらっています。
 打ち合わせの後、開催中の企画展「鏡花百物語」を観覧させていただきました。当館では絶対に企画展テーマとしてのぼらない内容ですし主な展示資料「鏡花自筆のおばけ」ってなんだソリャ! 強っ! となりながら、手帳に書きつけられたおばけを拝見。「おばけ書くのやめなよ~」という若き日の秋聲の声が聞こえてきそうです。
 ちなみに以前にもご紹介いたしましたとおり、当館でご好評をいただいているチラシ再利用ブックカバーの元祖はこちらの館です。いい案ですね! パクリますね!! と言って元気にパクリました(撮影の許可は得ました)。



 


本日は開館15周年記念日です。
 2020.4.7

 文アニさんオープニングの再現に勤しんでいる間に金沢市のほうからまたも緊急指令が飛んでまいりました。新型コロナウィルス感染拡大防止のため、4月11日(土)~5月1日(日)、当館を含む市の施設が全館臨時休館することとなりました。2月末に続き二度目の緊急措置です。こうなってくるとはしゃいでいたあの日のツイートから緊急ツイートへの落差の激しさがなんとも恥ずかしく、そのあまりの高低差にいま耳がキーン…。しかし後悔はしていない…あの遺品(秋聲先生のダンスシューズ)を所持しているのは現状当館だけなのですから(厳密には徳田家蔵)できるところがやらずしてどうするマインドにて、終始真剣にはしゃぎきりました。ご理解ください(写真は過去のダンス展のときのものです。現在は展示しておりません)。
 さて11日から1日まで休館ということは今日を含めて4日+11日…アッ岡栄一郎展(前期)の残る会期のお話です。ついこの間開幕したばっかり、という気でおりましたところ、あれよあれよと残り正味2週間しか…栄一郎展の会期がどんどん短く…。後期展はつつがなく、と呪文のように唱えることしかできません。
 大正5年頃、ちょうど栄一郎をモデルとする人物がもっともよく登場してくる秋聲の小説群に挟まれた「骨甕(こつがめ)」という作品からこんなくだりをご紹介して本日はお別れいたしましょう。
 
 『七月頃までに、熱がさめれば大丈夫だけれど、冷めないと危険ださうだ。』
 『何の病気とも言はないんですか。』
 『無論肺病だらうよ。』
 『やつぱり然(そ)うですかね。あの子が奈何(どう)してそんな病気になつたもん
  ですかね。移つたものでせうか。』
  妻は心配さうに溜息をついた。
 『何だか厭(いや)になつてしまひましたね。』
 『でも、そんな事は言つてゐられない。』
 『え、どんな事をしたつて、癒(なお)してやらなけあなりません。』
  




ハンゴロシ
 2020.4.5

 みました…文アニ…。キャラクターとしての「徳田秋声」が登場するゲーム「文豪とアルケミスト」さんがこの春アニメになり、ほうほうテレビ東京、テレビ大阪、テレビ愛知…アッアッ金沢では見られない…! ときてAT-X! 救いの神です。ありがとうございます(その他、各種配信サイトがおありだそうです)。
 そんなわけで昨夜晴れて第一回放送を拝見いたしました。まだご覧になっていない方も多いでしょうからあんまりアレコレ言わないほうがいいことはわかっているのですが、どうかこれだけは言わせてください。「われらが秋声くんはまだ出てきませんよ…!!!」 すみませんすみません、しかし記念館といたしましてはこの情報が先にほしかった! でなくば30分間期待に悶え、そして高まりすぎた期待からの落胆、いや落胆というには興奮のほうが先走り過ぎていてもはやなんだか感情迷子…! そう、本編に出てきさえしないけれどもオープニングですでに一回やられてしまっているので落胆というほどの落胆はなく、もちろん本編だって楽しめますし、いやでもやっぱりちょいとそこの青いお兄さん、ほんのお一言お声を、お声をーーーー! みたいな忙しさでした。弄ばれました。同族の方、ご覚悟ください。
 さて問題のオープニング…かなり情報過多ではないですか!? そして展開が、はやっ、はやすぎる…ちょっコマ、コマ送りを…! となっている間に終わります。刮目した結果、こうなりました↓

 おのおのがた、こういうことでよろしいか……!!?

 なんにせよ秋声会派すなわち記念館一味、別名秋聲(秋声)ひいき倒し族にとっては生殺しのような放送でした。
 ………ふぅ…今日も桜がきれいですね…。桜餅のチュブチュブが残ったやつ(道明寺)は「ハンゴロシ」というそうですよ。お米の半殺し…物騒ですね!






7日発売
 2020.4.4

 先日お知らせしておりましたオリジナル缶バッジ第二弾の発売日が決まりました! 本日より3日後、4月7日(火)当館15周年開館記念日で~す!  
 この日より館内ショップのガチャマッシーンに投入! および通信販売での5種セットのお取り扱いを開始いたします。先ほど当HPグッズページにも詳細を掲載いたしました(なお館ではガチャのみの販売となります。セット売りはございません)。
 ラインナップといたしましては、①『あらくれ』初版本表紙、②『熱狂』初版本表紙、③『黴』初出紙タイトルカット、④秋聲遺品サンタクロース面(イラストver)、⑤開館15周年限定デザイン、⑥シークレット(館内ガチャのみ)の6種類。①③④あたりの執拗さはもう触れぬがよしとして、完全新規の②『熱狂』は、紅葉門下生時代から秋聲と仲良しの画家・小峰大羽による斬新な表紙デザイン! こちらは明治40年に刊行された単行本からとりました(ゴーリキー作品の翻案です)。ご覧のとおり、モチーフはザ・〝飲んだくれ〟。飲んだくれの主人公・鉄造が、町一帯に流行し出したコレラ騒動を通して人生観を変えてゆく、といったお話で、決してこのご時世を狙ったわけでなく、ただただこのダイダイ色がキャッチーじゃわい、と呑気に採用したばかりなのですが、今となっては作中、患者を取り巻く外野が漏らす「コレラ病には酢漬の瓜が可いんだとさ。」といった台詞ひとつにももの思わせられる一篇です。
 ⑤の開館15周年限定デザインには、館のこれまでの活動を意味する15本の波紋と、秋聲遺品の眼鏡があしらわれていて、これだけちょっとサイズも大きめ。また、これだけ限定150個の再販なしです。決して来年度まで持ち越すわけにはいかぬ、という大いなるプレッシャーのもと、あらゆる手を使ってはけさせてゆきたい記念館の思惑満載でお送りしております。どうかみなみなさま、哀れにお思いになりましたなら(チラッ)、ぜひご協力のほどよろしくお願い申し上げます(チラッ)。





缶バッジリニューアル
  2020.4.1

 さて新年度です。ミュージアムショップで取り扱っております缶バッジガチャ(1回150円)、おかげさまでそろそろ在庫の底が見えてまいりました。今年が当館開館15周年ということもあり、これを記念して中身のデザインを一新し、このたび第二弾を作成いたしました! つきましては、第一弾デザインは現在ガチャマッシーンの中にあるものがなくなり次第しばらくお休み。と言いつつ、ご好評をいただきました『あらくれ』表紙とシークレットデザインは続投で、その他4種類(『黴』・『和解』・『縮図』・サンタイラスト)をリニューアルすることといたしました。
 やぁ新グッズだ! とワキワキする気持ちの一方、他のグッズと異なり、ガチャのガチャたる所以はよくわるくも現地に来てでしかご購入いただけないというところ…。これに関し通信販売はおこなっていないものですから、しかしこのご時世、こんなタイミングで現地に来ないと買えないグッズを無邪気に発売する勇気がどうしたって沸いてでてきやしませんで、第二弾のみ向こう3ヶ月程度を目安に記念館ホームページを通じて通販でもご購入いただけるよう準備している最中です。
 通販を開始するにつけ、いろいろとシミュレーションをいたしまして、このガチャシステムをどう活かすか、1回分、2回分などとご指示いただきご入金のうえ、ガチャの運を記念館職員に託してもらうか? いやいやちょっと荷が重すぎる、いざひいてみて黴・黴・黴だったらどんな顔してお送りすればよいものか! …などと議論のすえ全員で腰が引け、結局シークレットを除く全5種類セット(バラ売り不可・750円税込)とさせていただくことに決定いたしました。送料等がかかりますし、またガチャのたのしみこそないですけれども、何卒ご理解くださいませ…。詳細は近日中にご案内いたします! 





年度末気分
 2020.3.31

 ザ・年度末でございます。一応、館は開いていますし、外もとっても好いお天気、そして「秋聲のみち」沿いの桜がいい具合に咲きそろってまいりました。しかし人足はまばら…。所用ありて立ち寄ったひがし茶屋街。近年みたことのないガラン具合…(14時半頃)。
 今はこれでいい、と言わざるを得ない状況です。
 館を開けながらにして「来てね」と手放しで言うことはできない、そんな葛藤を抱えながら、アンニュイな気持ちで29日に放送のありましたMROラジオ特別番組「金沢三文豪打ち明け噺~ウラからオモテから~」(三館学芸員出演)を聞かせていただきましたらば(すみません、後日ラジコで…)、「秋聲先生の靴の匂いまで嗅いじまう記念館学芸員!」と落語調ナレーションベースで改めて紹介されていてハウッとなりました。アッいえ…確かに自らそう申し上げましたけれども何だかきれいにつくりなおしていただいたラベルを顔にピチッと貼られたような心持ちです。……ええ、嗅ぎました。嗅ぎましたともさ…!
 あくまでも靴を手にしたものの礼儀としての振る舞いにつき、初版本の書誌情報をとるのと同じことです。何より「無臭でした」とお客さまに伝えるために!
 靴ではないのですが、現在の岡栄一郎展から足もとのお話をひとつ。最初のケースに展示してある「文章倶楽部」大正6年2月号に、その年の年末年始を秋聲と栄一郎、中村武羅夫とともに江ノ島で過ごしたという近松秋江の旅行記「初日の出」の掲載があり、そこにとっても紳士な秋聲先生がご登場です。曰く、江ノ島に続く長い板橋の上をみんなで歩いているとき、〈栄氏が粋な穿き下しの中歯の下駄の歯を一足ごとに板橋にとられて歩行に悩んで居るのを秋聲氏は深切に手を引いてずつと後になつてゐるのを、私(秋江)は一人でさつさつと渡つていつた〉そうな。あ、あまーーーい…! 秋聲、栄一郎(数えで28歳)にあまーーーい!





岡栄一郎展開幕!
  2020.3.28

 無事展示替えが終わりまして、本日、生誕130年記念企画展「岡栄一郎の陰影」がしなっと開幕いたしました。残念ながらいつも開催している初日のギャラリートークを中止にしてしまったものですから、誰にも気づかれずにこっそりと…。平素より初日に列をなすような記念館でこそございませんが、やっぱりちょっと寂しいですね。館の知名度を差し引いても、何せ外出を控えることを推奨されている昨今ですから仕方がありません。今を乗り越え、たくさんの方がなんの心配もなく遊びにきてくださることのできる日が1日も早く来るよう祈るほかありません。会期は6月28日(日)まで。間、5月13日(水)は前後期展示替えのため一日休館をいただきますのでご留意ください。
 今回の見所はなにせ「栄一郎に優しい秋聲」です。栄一郎展ではございますが、秋聲記念館における栄一郎展ですので、どこまでも秋聲ベース…。栄一郎その人の業績を全面に押し出せずに申し訳ない気持ちではおりますが、栄一郎によって引き出される秋聲の保護者顔がなんとも新鮮な…。えっえっちょっと甘すぎるのでは…!? と思われるほどの手紙の書きっぷり、小説の書きっぷりがたいへんに興味深く、そうした書簡等をまとめて保管してくださっていた関係者の方々、そして石川近代文学館さんが現在まとめて管理されていることに改めて感謝の念を献げます。そしてそれを整理された同館元館長・井口哲郎氏のご業績たるや…。
 こちらの井口先生をお招きして、5月16日(土)、当館上田館長との対談企画「岡栄一郎を語る」を開催予定です。展示で取りこぼしすぎている栄一郎その人の魅力と交友関係、その業績についてお話しいただく予定にしておりますので、ご興味おありの方、ぜひご参加ください。きのう、内覧にいらして「横光の書簡でてる?」「いえっ出してません…!」「尾﨑士郎は?」「いえっ……」、始まる前から取りこぼした感満載です。そのあたり、ぜひイベントにて…(無事にできれば、です。今後中止の可能性もございます…)。 
 


 


前期展の目玉資料
  2020.3.26

 展示替え4日目です。資料入れの8割が終わりました。
 頭では展示するつもりにしていても、無事にお借りしてきて、無事にケースに収めるまでは何があるかわからないもの。実際に今回はコロナの影響で急遽出張を取りやめにした経緯などもございますので、なかなか具体的に予告のできなかった展示資料につきまして、ようやくお話しすることができそうです。あさってから始まる岡栄一郎展は、5月13日(水)に1日展示替え休館をいただき、前期と後期で自筆のものを大幅に入れかえます。そんなわけで、前期展の目玉はコレとコレ!
 まず第一に、なんといっても夏目漱石筆 岡栄一郎宛書簡!(石川近代文学館蔵)
 こちら栄一郎の没後、昭和45年に岡家より発見されたもので、そこになんと秋聲のしゅの字が…! ということで新聞に載るなど話題になりました。今回はその新聞記事(徳田家寄託品)とともに前期展でのみ当該書簡を展示いたします。えっウソ前期だけ!? と思われることは想像に難くなく、しかし長い会期を思えばいかんともし難く、どうにかこの穴を…との気持ちによって後期は漱石筆 秋聲宛書簡(徳田家蔵)を展示させていただく予定です。こちらには栄一郎のえの字が出てきますので、一応三者のバランスは! とれているかと…!!
 それから第二に、新思潮組から前期は芥川龍之介と山本有三氏がご出陣です!(いずれも石川近代文学館所蔵書簡。といっても芥川は後期にも出ずっぱりです。むしろ半分芥川展です。)とくに山本有三氏は栄一郎に「いぢめられ」、栄一郎もまた有三氏を「いぢめる」関係性であったようですが、今度展示する有三筆 栄一郎宛書簡を見れば、アラアラなんだかんだで信頼関係があるっぽいよ…とも思われるその内容。そして字がきれい。
 このケース、後期には久米・菊池ペアに替わりますのでくれぐれもお見落としのございませんよう!





ほっこり神社
  2020.3.25

 展示替えの傍ら、近隣にチラシ配りに出かけた職員さんに撮ってきてもらいました。久々のほっこりポスト(※1)です。
 あぁアンパ○マンとばいきん○ん…ただ人気キャラクターを並べただけと見せかけて、これはほっこり主(※2)によるコロナウィルス撃退への祈りの形とお見受けします。ばいきん○んが勝ったとこって見たことないんだから…!(菌・ウィルス論争は脇へ…)

 四人衆のうち、両脇に控えるくまモ○は絶妙に「阿吽」の呼吸。狛犬的なソレですね。こちらもまた東山界隈の守り神です。 

 ※1 ひがし茶屋街手前の観音通りにある頭にいろいろ季節のものを載っけている
    ちょっとほっこりするポストの通称。なお当館以外では通じない。
 ※2 正体は謎。ほっこりポストの管理人の通称。なお当館以外では(以下同文)。





プチだるま
  2020.3.24

 雪だるまかと思ったらプチプチでした(搬入された新しいパネルたちを守ってきたエアキャップ)。本日、展示替え2日目です。
 きのうはフウフウ言いながらケースから2台の蓄音器を下ろしました。現在、展示室はからっぽです。





館の守り神
  2020.3.23

 昨今穏やかならぬ世の中なので、階段踊り場の展示スペースに鍾馗(しょうき)さまの色紙額(複製)を展示してみました。秋聲作品の挿絵などを多く手がけた梶田半古の作で、そのご遺族から頂戴いたしました。そのあたりの経緯は「寸々語」平成25年8月21日記事に記録してございます。あぁそう…企画展「徳田秋聲らしからぬ!~しゅうせいとこどもむけよみもの~」を開催した際、メインビジュアルになってもらった秋聲旧蔵のキューピッド像の作者が半古さんで、そのチラシやらをお送りした際にお礼としていただいたのでした。らしからぬ展を記念して刊行したオリジナル文庫『秋聲少年少女小説集』の表紙にも見られるキューピッドです。何度見てもキューピッドから鍾馗さまへの振り幅がすごい…
 この鍾馗さま、唐の六代皇帝玄宗がマラリアにかかった際に夢に現れ、すったもんだでその病から快復したことにより邪気除けの印として広く家々に祀られるようになったとか。病は邪気からやってくると申します。きっと館の守り神となってくださることでしょう。
 鍾馗さまと金沢とのゆかりで言えば、加賀百万石の前田利家公がその旗印に用いたほか、正室おまつの方お手製による鍾馗さまの刺繍入り陣羽織を着用されていたそうですよ! 陣羽織の実物は国の重要文化財。石川県立美術館さんで公開されたり、2001年には石川県加賀刺繍協同組合さんがこれを復元し、当館と同じ財団仲間の前田土佐守資料館さんで公開されたりしたようです。
 と、この色紙を展示して早々、本日より当館は展示替え休館に入りました。もはや誰のための展示なのだか…という気もいたしますが(19日閉館後に掲示しました。20・21・22日にご来館のみなさまにはご利益があったはず…!)、資料も人も怪我せず無事に展示替えを終了することもまた鍾馗さまの守備範囲であることを願います。





「ちょこっと文学散歩」
 2020.3.21

 昨日発売となりました「月刊金澤」3月号! 春らしい淡紅色(秋聲先生の好きな色)の表紙にくるまれた巻末の秋聲コラムは相変わらず妬み僻み嫉みでいっぱいです。ちょっとしたドス黒い差し色としてお読みいただけましたら幸いです。
 さて、少し前からちょこちょこと新聞各紙で報じられていた金沢大学院大学の学生さんによる「ちょこっと文学散歩」という企画。金沢の街には通常の路線バスのほか「金沢周遊バス」(一律200円)と「金沢ふらっとバス」(一律100円)という、前者は観光にうってつけの名所をめぐる派手なやつ、後者は地元民しか使わないような小道にガツガツ入ってゆく小型の強いやつ、と2種類のバスが走っております。そのうち後者の「金沢ふらっとバス」10カ所の停留所に、このたび学生さん作成によるその地ゆかりの三文豪の作品の一節を刻むパネルが設置されたそうです(→下のほうの正方形の)。ここにQRコードもくっついていて、作家・作品を紹介するウェブページに飛んでゆくというもの。記念館最寄りの「材木ルート⑳ 梅ノ橋」停留所には、秋聲の「挿話」と某K花さんの「義血俠血」からそれぞれ一節、仲良く並んでおりました。どうやらここだけ二文豪でシェアしているもようです。秋聲のもう一カ所は「此花ルート① 金沢駅東」停留所で、やはり「挿話」から主人公が最後にお絹さんからお弁当を手渡される名シーンの引用が(なお「ふらっとバス」は市街を4つのエリアに分け、此花・菊川・材木・長町の4バス・4ルートがございます)。以上です。
 …ん? 三文豪で計10カ所…? 10分の2…? アレちょっと割合が…?? アッ、ハイ、大丈夫です慣れてます泣いてません。わかりますわかります、「挿話」で二カ所というチョイスからもご苦闘の痕が見えるようです。梅ノ橋は誰のテリトリーか? ちょうど「月刊金澤」さまコラムにぶつけた当館の日々の葛藤と同根です。 



 


ミュージックの日
 2020.3.19

 3月19日、本日はさんいちきゅうで「ミュージックの日」なのだと机上の日めくりカレンダーさまが教えてくれました。ハーーイそれはもう「レコオドと私」の日ーーー! そんなことで、「レコオドと私」展、残る会期本日を入れてあと4日となりました。先日、館長に来客があり、館長室に内線電話をしても出られないので様子を見に行くと誰よりも熱心に展示の見納め中でした。当館のものはともかく、石川近代文学館さんからお借りしている秋聲自筆原稿「通人」(「自分、歌ひとつうたえない野暮な男ですから…」と書いている)などはお返ししてしまいますので、お近くまでお越しの機会がございましたらぜひ覗いてやってくださいませ。
 この展示で初公開しております大正期の専門雑誌「蓄音器之友」。地元の古本屋さんが秋聲の随筆「蓄音器の趣味と希望」(大正2年6月号)の掲載があることを見つけてくださり新聞でもその旨が報じられ、おかげさまで当館で収蔵させていただくこととなりました。全集未収録のこの随筆には、その題のとおり秋聲の理想とする蓄音器のある生活や、レコードへの具体的な要望などが語られています。何がおもしろいと言ってこの頃まだ秋聲宅に蓄音器がなかったということ(購入するのは10年近く後になります)。自分でもっていないからこそ夢が膨らんでいるその感じが実に微笑ましく、蓄音器馬鹿・小野田の登場する『あらくれ』(大正4年)と同じケースに展示中です。実物は会期終了とともに引っ込めてしまいますが、こちらの全文を今月末発行予定の館報「夢香山」第12号に掲載いたしました。4月に入りましたらイベント登録のみなさま方にお送りするほか、館内で無料配布いたしますのでぜひお読みいただけましたら幸いです(そのうちHPにもあげます)。
 さて蓄音器を購入してからの秋聲先生、「下手に手元にあるとずっと音楽聴いちゃってうるさいんだよねーやっぱり外のコンサートとか決められた時間の中で聴くのがいいよねー」。イヤ、そこはご自身の匙加減!!
  


 


「田山花袋氏の業績」
  2020.3.18

 善は急げで当館の「不定期連載」という名の「しゅうせいの部屋」に秋聲による追悼文「田山花袋氏の業績」をアップいたしました! フー危ない、うかうかしているとあっという間に5月ですから、「今、今」(秋聲による子ども向け作品の題。今、今! と言いながら何でも後回しにした結果、電車事故起こる→、というえげつないお話。オリジナル文庫に入っています)を合い言葉にさっさか打ち込み作業をおこないました。
 故人を偲ばせてもわりとドライな発言の多い秋聲にしてはけっこう気持ちのこもった感じではないでしょうか? 「氏の文学上の業績を語るつもりで、つい氏の個性を語りすぎてしまった」、「私自身の趣味に堕したような形があるが」などと済まなそうに断ってはいますが、いやいや秋聲さんでしか書けない内容、秋聲からみる花袋さんの個性のお話こそ有り難いんですよ…とニコニコしながら読みました。そこまで「おれたち親友~~~!!」といったニュアンスのないお二人です。しかしともに一時代を築いた両雄。以前にも書きましたが、こののち還暦祝賀会の際には壇上に秋聲ひとり、というのがたいへんな喪失感を醸します(島崎藤村は一歳下という扱いになります)。
 ちなみに同じく明治4年生まれの独歩さんは、明治のうちにとても若くして亡くなりまして、花袋さんとは親交深くおありでしたが秋聲とはあまり個人的な交流をもたなかった模様。もちろん面識はありますし互いにその作品は読んでいますので、秋聲も独歩さんの作品評はよく書き残しています。一方の独歩さん、結核を患い茅ヶ崎の結核療養所・南湖院に入院していたとき、「秋聲君の小説はよく出来てゐるだらうが、あゝいふじめじめした小説は、僕のやうな病人は読む気になれない」と発言されたとか。それもそうかな…と思うと同時に、この発言を伝えているのがお見舞いに行った正宗白鳥。ここに自然主義作家大集合です。



 


巨星落つ
  2020.3.17

 すっかりイベント中止のお知らせ用アカウントのような顔をしてあのサンタ(アイコン)は現在ツイッター界に溶け込み泣いたり笑ったりしながら楽しく暮らしているわけですが、本来当館のアカウントは来る2021年、秋聲生誕150年を広報するためこの世に生まれてきたのでした。それをあの子はまだ知らない…。すなわち同年生まれの田山花袋さんの生誕150年をも合わせて周知してゆくという大きな使命をその背に担っているのです(独歩さんも同い年ですね)。明治4年12月13日生まれの花袋さんと同年同月23日生まれの秋聲。わずか10日違いで生まれたこの二人はいつしか自然主義文学の両雄としてともに名を馳せ、文壇をあげてともに生誕50年を祝われたにもかかわらず、昭和5年、秋聲より13年も早く花袋さんが先に逝ってしまったというこの悲しさ…。
 今年が没後90年にあたられるのですね、群馬県は館林市にございます田山花袋記念文学館さんでは現在、没後90年花袋忌記念企画展「巨星落つ―田山花袋が去った日―」を開催中です。秋聲にとってなんと寂しい企画展…!
 あわせて同館HP上に門戸を開く「かたいの部屋」に、両雄の片割れ・われらが秋聲、二度目のゲスト出演で~す! ありがとうございま~す! ルールルッルルル、ルールルッルルル、ルールールールールー♪ チャラララーラーラーラーラーーラー、ラールラルー♪(わりとよく再現できたと思います。異論は受けつけます。)
 「かたいの部屋」とは当時を描く花袋さんや関係者による作品テキストを読むことができる有り難い一室のこと。こちらにてこのたび「花袋氏を見舞ふ」という秋聲の随筆の連載が始まりました(全3回)。これを発表した約1年後に花袋さんは亡くなってしまうわけですが、その際の追悼文が当館の「しゅうせいの部屋」こと「不定期連載」の今ちょうどトップページに…ってイヤッ! 去年の7月に更新したっきり…!! これは申し訳のないことです。花袋記念文学館さんの今会期中に、もうひとつの追悼文を上げます。きっと上げます。5月24日までですか? あっ、あ~…意外とすぐ~…



 


「いちがいもん」感
 2020.3.16

 2月29日(土)より臨時休館させていただいておりました当館、本日より通常どおり開館となりました。そんな再始動初日に合わせて急に雪、霰(あられ)。なんという洗礼でしょうか、これまでのお散歩日和が嘘のようです。
 今朝、浅野川沿いの「秋聲のみち」を通りましたらたくさんの作業員の方々が、ヘルメットをバチバチ叩きつける大粒の霰のなか、ぼんぼり設置に励んでいらっしゃいました。誰しもが想定外のお天気であったことが偲ばれます。
 館内におきましても、13日の市の発表を受け、みなのもの、開館じゃーーーーッ! とあわててそのあたりいっぱいに広げていた次回企画展で使用予定の大型パネルや納品されたばかりのポスターの包みをワーーーーと手近のバックヤードにしまいました。ちょっと寛ぎすぎました。
 さてポスターです。休館中に次回岡栄一郎展のチラシとあわせて納品され、現在発送作業中。今回はご覧のとおり、黄色とブルーグレーのバイカラー。はっと気づけばこの上下2色づかいっぷりが犀星記念館さんの企画展「旅する犀星~伊豆編~」とかぶっておりましたね! やっちまった感!
 しかし決定的にちがうのは、当館のチラシには爽やかな伊豆の風が吹いていないということ。犀星さんの気持ちよさに比べてこちらは完全なる無風状態、ものすごい閉塞感。上も下も岡栄一郎の作品初出誌からそのままデザインをお借りしてレイアウトさせていただいております。そしてちょっと荒い加工を施しているのでわかりにくいですが、上にはよくよく見ると「金澤城下」とか「浅野川」とか書いてございます。あらあら、金沢出身者のエキスが出ていますね。有り難いですね。金沢に生まれ、5歳のときに大阪に転居した栄一郎ながら三つ子の魂百まで、金沢人特有の「いちがいもん」であったことが周囲の人々との関係性からうかがわれます。
 いちがいもん、金沢弁で「頑固者、強情な人」の意です。



   


記念館再始動
  2020.3.14

 昨日金沢市により、現在臨時休館措置をとっている市施設の休館延長はせず、16日以降、予定通り通常開館する旨の発表がありました。すなわち当館を含む金沢文化振興財団所属16施設はおしなべて開館いたします。が、16日(月)、月曜を定休とされている大拙館、谷口建築館などもございますのでご注意ください。そうでなくとも展示替え休館等にもご注意ください(谷口さんがまさに)。われわれ秋聲記念館は16日(月)には開館いたしますけれども一週間後の23日(月)からまたスッと5日間ばかり展示替え休館に入りますのでそんなことにもご注意ください。いつでもどこでも手洗いうがいにはなおのことご注意ください。
 さてご注意ご注意で息のつまるこの春、たのしいお知らせもございます。先日お邪魔いたしましたMROラジオさんの特別企画で、三文豪館学芸員と同局・竹村りゑアナウンサーが三文豪についてしゃべくり倒す、そんな座談番組の放送が決まりました!

 日 時:3月29日(日)午前10時~11時
 番組名:MROラジオ特別番組「金沢三文豪打ち明け噺~ウラからオモテから~」
 出 演:三文豪(某K花・犀星・秋聲)館学芸員、竹村りゑ
 朗 読:川瀬裕子
 ナレーション:夢見家春木

 たしかたしか、先日のコーナー最後でやはりMCであった竹村アナからこちらの情報解禁があったと思うのですが、そのころ(あぁ~ボランティアさんのこと言えなかったァ~あぁ~ボランティアさんのことォ~~)とひとり悶々としておりましたもので、ちょっとなんだか…記憶がさだかでは…(昨日記事参照)。
 もしフライングであったなら申し訳ございません。アッ公式サイトにもまだ…上がっていなかったですね…アッ…アッ… 



 


中で何かが
 2020.3.13

 未明の地震、おかげさまで当館は資料・建物ともに無事でした。体感ではけっこう揺れた感じがありましたが、初公開の蓄音器もすっくと立っておりましたし、書斎の違い棚の上のお皿も微塵も動いておりませんでした。館を頑丈につくってくださった大工さんにただただ感謝です。「泣きっ面に蜂」みたいな今日この頃、それでも次の開館に備えて現在館内の定期清掃中。床も窓もぴかぴかになってみなさまのお越しをお待ちしております。 
 また、おとといは例月のMROラジオさんに出演させていただきました。イベントの中止三昧でとくに告知すべきことがらもなかったため、休館中のいま館内で何がおこなわれているか、あまり外からは見えない部分のお話をさせていただきました。学芸員は目下次回企画展の準備にどっぷり浸り、山盛りの紙資料と格闘の日々、事務のほうでは年度末のアレコレの処理やら、封筒など消耗品の管理やら、倉庫の整理やら、障子の貼り替え手続きやら、企画展チラシの発送準備やらと何かと忙しくしております。そんななかでもちょっと手が空かれたとみるやコレェェエ…! 次年度刊行予定のオリジナル文庫に使用するテキストの打ち込みをばァアア…!! と、横から無理やりに滑り込ませてそのちょっとの指の隙間さえ埋めさせていただいているのです。
 そんなお話もラジオでさせていただいたところ、毎度べらぼうに緊張をしてしまってテキスト打ち込みボランティアさんの存在について言及することができませんでした。まるで自分たちだけでやってますぅ~たいへんなんですぅ~みたいな顔をしてしまいましてたいへん申し訳なく思っております。去年の暮れに募集いたしました5名の入力ボランティアさんにも水面下で大きな働きをしていただきながら、待望の第11弾は菊池寛の勧めで執筆したという回顧録『思ひ出るまゝ』、7月刊行予定です!(言っておこう! そして自らを追い込もう!!)





四人組の文通
 2020.3.10

 レコオド展と次回岡栄一郎展を繋ぐ資料としてもう一つ、石川近代文学館さんからお借りした秋聲筆 岡栄一郎宛絵葉書を出品させていただいているのでした。まさにまさに、どストレートな橋渡しです。大正2年8月12日消印、この前月末に三世竹本大隅太夫が死去し、その後を継いで弟子の春子太夫が大隅を襲名しないことへの不満を述べたもの。そう、秋聲先生は義太夫の二世春子太夫が何よりお好きなのです。この二ヶ月前には岡山に帰省中の近松秋江に「春子を見てくるよ~」と絵葉書(←の裏面)で書き送っており、こちらも現在展示中です。
 このころのちの劇作家・栄一郎はまだ東京帝国大学在学中。劇場通いが頻繁になった頃でもあり、おじさんと甥っ子とで文楽について話が弾んだのかもしれません。もう数ヶ月もすれば、栄一郎が漱石と出会い、そして芥川や久米正雄と出会う…といった物語になってゆきます。
 ついでに秋江宛て葉書のお隣には、正宗白鳥から秋聲に宛てたお葉書が。こちらは旅先の大阪より、当地で二世越路太夫の公演に出かけたことを報告する内容で、そもそも秋聲は白鳥について〈一緒に芝居を見ても、音楽を聴いても、物を食べても散歩しても、少しの厭味も迎合も阿諛(あゆ)も、誇張もないのが、私には殊に気持ちがいゝ〉と語り、さらには〈殊に音楽に好い耳をもつてゐる〉と評しており、その感性の合いっぷり、仲良しっぷりが伝わります。年齢は白鳥の方が8歳年下になりますが、やはり好きなものを一緒に楽しめるのが気の合うコツといったところでしょうか。何より年上の秋聲にも変に気を遣わないところが好ましかったようです。
 このコーナーの締めは上司小剣筆、秋聲宛葉書。大阪にて、秋江にはまだ会えてないんだ~コッソリこっちおいでよ~、岡山の白鳥のとこにも行こっかな~などと記されていて、この「特殊な四人組」(Ⓒ正宗白鳥)のマメな文通にほっこりできる一画です。





龍之介ファッションチェック
 2020.3.9

 新設された「08 徳田秋聲記念館」ポート(7日付記事参照)から今朝ほど自転車がすべて出払っており、観光客の方か地元の方のご出勤か、世の中の人の動いている気配をそんなところから感じております。記念館は本日も休館です。
 中で粛々と岡栄一郎展の準備を進めるにつけ、もはや彼と一心同体(一時的に)の芥川龍之介の日記を読んでいて、これは…と思われた部分、しかしスペースの関係上、次回企画展ではパネルから漏れてしまうであろうエピソードをこちらでご紹介。
 「大彦老人の十日祭の御馳走に行く。徳田さんに会ふ。徳田さんは土耳古(トルコ)のネクタイ・ピンをして来た。」、大正14年日記「澄江堂日録」より2月8日の記述です(ちなみにこの前日に栄一郎に会っていますし、このあと「帰りに室生による」とも記してあります。石川県人率が高いです)。
 はぁッ! ネクタイ・ピン! 徳田・ナイスミドル・秋聲(当時55歳)のファッションチェックをありがとうございまーす! ネクタイ・ピンといえば現在のレコオド展で秋聲愛用のネクタイ・ピンをふたつばかり初公開させていただいております。コンサートやレコード鑑賞会にこういうのつけていかれたんですかね~~といったねじ込み方で、徳田家より強奪してまいりました。展示中のものはサファイアとオパールとうかがっております。トルコ? トルコ石? そんな青いやつもお持ちなんですね。オッケー、今度名誉館長にうかがっておきます(ごめんなさい、もしあっても栄一郎展には間に合いません次の機会に…!)。
 ギャラリートーク最終回も中止となり、会期の途中で思わぬ休館…そんな状況下で「観覧に来る予定だったけれど、どうしても断念せざるを得なかった」という切なくも有り難いメールを頂戴して、せめてこちらより気持ちばかりの展示物紹介をさせていただきました。レコオド展と栄一郎展を繋ぐ、ちょうど今しかできないお話です。





「まちのり」に参入!
 2020.3.7

 本来であれば今日はレコオド展最後のギャラリートークを開催予定でしたが、こんなご時世ですので中止とさせていただきました。午前中、確認のお電話をくださった方、申し訳ございません。たしかに毎回解説を終え事務室に戻ると「明日○ジョー」よろしくぐでりと椅子に体を預け、真っ白な灰になってしまうほどには熱量を込めてお話しいたしますので、口からピッピピッピと飛沫の30や40、元気いっぱいに出撃させてしまっていることでしょう。今回は断腸の思いで口を塞ぎ、また再開の目処が立ちましたらご案内をさせていただきます。そしてそれより何よりそもそもが休館中です。
 こちらはすこし明るい話題でしょうか、実はこの冬の間に記念館脇で工事がおこなわれており、金沢市運営によりますレンタルサイクル「まちのり」のポートが新設されました! 市内各所にスポットがあり、そこで借りた自転車をまた別にスポットにちゃっと返したりできるというもの。われわれは堂々の「08 徳田秋聲記念館」(スポット名)です! 詳しい仕組みは公式サイトからご確認ください。1回だけ借りたり1日、1ヶ月単位で借りたりできるもよう。観光にはもちろんのこと(当財団施設で言うと「室生犀星記念館」「金沢蓄音器館」「谷口吉郎・吉生記念金沢建築館」がスポットになっていますよ!)地元の方の普段使いにもちょっといいかもしれません。なにせ金沢は弁当忘れても傘を忘れるな、の土地ですから、雨が降ってきたら近くのポートにちゃっと返してそこから徒歩・バスの利用などもできそうですね。
 さて自転車といえば「お島」、「お島」といえば「あらくれ」。毎度バリエーションのないことで恐縮ですが、やはりセットで思い出してしまうのがこの場面です。「そこらが全く夜の帷(とばり)に蔽ひ裹(つつ)まるゝ頃まで、草原を乗まはしてゐる、彼女の白い姿が、往来の人たちの目を惹いた」(『あらくれ』より)。「白い夏の女唐服に、水色のリボンの捲かれた深い麦稈(むぎわら)帽子を冠(かぶ)つ」て自転車に跨がったなら、より精度の高い「お島さん」の完成です。



 


そこにある日常
  2020.3.6

 本日は菊池寛御大のご命日ですね。秋聲を常に支えてくれた年下の友人、そんな菊池氏は次回岡栄一郎展でも大活躍です。現在、栄一郎資料のキャプションを書きながら「…したのが菊池寛である」、「菊池寛による…」のような言い回しがたくさん出てきてもはや栄一郎展なのか菊池寛展なのか、はたまた芥川龍之介展なのか、というくらいの入り乱れっぷり…。栄一郎が戯曲を書き出したのは菊池寛と芥川龍之介のすすめがあったからだそうですよ。友人思いの彼らにまつわる具体的な出展資料につきましては、追ってご案内をさせていただきます。
 さて臨時休館中の館の中の中、現在はその心臓部とも言える収蔵庫にこもって資料とにらめっこ中。限られたケースに選りすぐりの資料を展示すべく、似たタイプの初出誌ならどちらがより栄一郎の旨味が滲み出ているかを吟味している最中です。収蔵庫手前の準備室(秋聲パネルon座布団→)にパソコンを持ち込み、ポチポチとキャプションを書き進めるうちにも各種業者さんが続々お見えになり、慌ただしく打ち合わせをしながら、あ、あの数量はどうだったかな、と事務室に飛び込んでは「アッ、パソコンないんだった…!」と自ら額をペチンとうつ、これを3セットくらいやりました。ちょっと学習能力が…どこかへ…。
 そういえば、日本全国の紙資料が集結する心臓部、国立国会図書館さまが休館されたそうですね(~16日)。栄一郎展準備でも何度お世話になったか知れず、正直なところこのご休館がもし3週間前であったなら、いまこうしてキャプションを書ける段階にあったかどうか自信がもてません。どんどん非日常感の強まる昨今、今のところ16日から開館してすぐまた閉めちゃう秋聲記念館ですが(展示替えのため)、28日、当たり前のような顔をして戻ってこられることを祈るばかりです。 





続・「問3」の残影
 2020.3.3

 今日も今日とて、まだ(入試に秋聲…)と呟きながら次回企画展準備に勤しんでおります。しつこくって恐縮ながら、金沢大学さんといえば、ざっくり申し上げて秋聲の母校なのですから、未来の後輩たちがその入学試験で秋聲のしゅの字に出会うというのはなんともドラマティック…。
 さて、先日そんな秋聲の母校・第四高等中学校(金沢大学前身校のひとつ)を記念した石川県四高記念文化交流館併設・石川近代文学館さんにお邪魔して、次回企画展関連岡栄一郎資料のもろもろを事前調査してまいりました。栄一郎の没後、ご遺族よりその資料が一括して同館に寄贈され、漱石・芥川・久米・菊池をはじめとするそうそうたる文士たちからの書簡、日記、写真、演劇資料などなど、マスク越しに何度雄叫びをあげたことか知れません。当館の狭い展示室につきそのほんの一部にはなりますが、同館のご協力を得てお披露目させていただく予定です。
 調査を終え、実はこれもたのしみにしていた企画展「中野重治の文学批評―先人・友人たちとの交わり」を観覧させていただきました。毎度この館にお邪魔するとは一言、「圧巻!」とレポートしているような気がします。が、今回もやはり圧巻!! いやいやどれだけ自筆原稿だすつもり!? と自筆原稿に乏しい当館が逆ギレしてしまいそうな勢いで、とにかく中野フォント(通称「しげ字」)がぎっしりです。えっ約100点? 自筆原稿を約100点…?? ちょっと意味がわかりません。
 しかも勉強不足で恥ずかしながら、件の入試に出題されたテキスト中にも言及のある中野の文章「そのとき徳田秋声と武者小路実篤とが顔を見合わせた」、この自筆原稿、近文さんでお持ちでいらっしゃるんですね…! ギャッとなってムフーッとして拝見して帰って出くわしたのがきのうの入試事件です。さ、さっき見てきたがな…!! となりました。こちら今月22日(日)までの会期となっておりますが、われわれ市の施設が全館休館の近頃ですから、県の施設もいつ休館措置がとられるかわかりません。ぜひ! と言えない事態があるのだ、と今これを書きつつ激しく身悶えています。 





「問3」の衝撃
 2020.3.2

 昨日たいへんびっくりする出来事を館長から聞きまして、今日になってもまだそのびっくりが心の中で尾を引いております。なんと今年の金沢大学の入学二次試験の国語の問題にわれらが秋聲のしゅの字がでたという…聞いた瞬間、今年いちばん大きな声が出ました。あわてて数日前の新聞(2月26日)を紐解きましたら、中川成美先生のご著書『戦争をよむ 70冊の小説案内』からの出題で、ちょうど秋聲の戦争に対する態度の部分が引用されておりました。
 「その一例が徳田秋声である。」…ひええええ、例としてあがっているぅうう~~~!!! しかもこの文章から問3、「傍線部B『市井の平凡とも呼べる日常生活の細部に注がれた秋声の眼の鋭さに、何時も圧倒される』のはなぜか、本文に即して八〇字以上、一〇〇字以内で説明しなさい。」……ひええええ、と、問われているぅぅぅ~~~!!! 100字以内じゃないとだめですか、100字じゃちょっと足らないのですけれども、秋聲の眼の鋭さにつきましては8,000字くらい要るのですけれども…!!? なんとも酷な設問です。
 なお新聞の次ページには回答例も載っており、「秋声の小説が描く戦争を…」云々と受験生さながらのリアルな筆致で書き込まれていて、はぁこの瞬間、金沢大学を受験された数百人? の生徒さんたちが一斉に秋聲について思いを巡らせたかと思うとちょっともう興奮が止まりません。こうした試験がどういう風につくられているものやら存じ上げませんが、この題材を選んでくだすった方々、ありがとうございました。試験会場にて、秋聲誰やねん! と一斉に思われたかもしれない生徒さん方、あの…ここで…この館で日々一生懸命顕彰しているその人、これが秋聲ですよ…! と全員に紹介して回りたいくらいの心持ちです。記念館でお待ちしておりますし(アッすみません今は休館中です)、この試験に出た中川成美先生のご著書もミュージアムショップで販売しています。全文がおすすめです。



 


この顔にピンと来たら
 2020.3.1

 さて3月ですね! 金沢もお散歩などにたいへん好いお日和となりましたが、向こう2週間はしっかり休館でございます。無念です。今朝ほど、書斎のお軸を替えねば~と思った瞬間、アッ替えても見る人いないんだった…と少し悲しくなりました。休館中でも中に職員はおり、展示替えやら年度末のもろもろを処理したりなどしております。
 臨時休館や、既公表のイベントの中止を告知するため、このたび遅ればせながら当館もツイッターアカウントを開設することといたしました。先日、館長(犀星記念館兼任)よりすでにツイッターを駆使していらっしゃる犀星のほうで秋聲の告知もしてあげようか? って言ってたよ、と聞き及び、アラアラそんな! いくら「秋聲会」発起人の犀星さんといえど、そこまで甘えるわけにはゆきますますまいよ…!!! と至極動揺いたしまして、実は4月7日、開館15周年記念日に開設しようかなぁ~と目論んでいたところ少し前倒しをすることに。犀星さんたら館までやさしい…
 それすなわち「アカウントを作った途端、中止のお知らせ三昧」という不遇な秋聲記念館なのでなく、「休館や中止をリアルタイムでお知らせするためのアカウント開設」とご理解いただけましたら幸いです。いくらいつもわりと不憫なことの多い当館だからって、さすがにそんなタイミングでは…!
 お申し込みいただくようなイベントはまだよいのですが、お申し込み不要の展示解説や立ち見自由などとアナウンスしてしまったイベントにつきましては、お客様の動向をつかみきれないというのが実情です。少しでもお客様に無駄足を踏ませることのないよう、できることはすべてしてゆかねば、とポジティブな思考のもと、当面中止中止しか言わぬネガティブなアカウントではございますが、当HPとあわせてご愛顧のほど、よろしくお願い申し上げます。
 


 


臨時休館のお知らせ
 2020.2.28

 無邪気にニャーニャー言っている間にいろいろなことが起こりまして、この一週間記念館事務室は騒然としておりました。新型コロナウィルスの猛威により、3月・4月のすべてのイベントを中止、かつ本日、金沢市設置による文化施設の一斉休館が発表されました。そんなわけで当館も明日29日(土)より来月15日(日)までひとまず休館いたします(原則、中に職員はおります)。みなさまにおかれましても、ご自身のお身体を第一にお過ごしください。今年の目標は「健康第一」、まさかギャラリートークを三度までも中止にすることになるとは思いもしませんでした。
 身ひとつでできるギャラリートークはまぁよしとして、泣く泣く中止といたしました「秋聲と三味線・金沢昔語り」および毎春の恒例行事「桜の季節のおもてなし」につきましては、実質的に無期延期です。いついつとはまだ申し上げられませんけれども、態勢が整いましたら秋のおもてなしでも冬のおもてなしでもとにかくおもてなしをしたい当館の気持ちひとつでもって改めて開催させていただくことと存じます。その日が来るのを、当館とともにお待ちいただけましたら幸いです。
 先日、これらの事態を東京の秋聲令孫・徳田名誉館長にお電話でご報告申し上げたところ、「どこにも行けないし何にもできないから、資料の整理に励んでる」と仰っていました。今は整理をしなさいって言われてるのよ~と(ひいては記念館のために)徳田家所蔵資料の整理にあたられる名誉館長のそのお気持ちを最大限に生かすべく、今は中に引きこもり、来る新年度のため粛々と目の前のお仕事をこなしてゆく所存です。





訃報
 2020.2.27


 18日、作家の古井由吉氏が逝去されました。心よりお悔やみを申し上げます。
 すでに8年前にもなりますが、記念講演にお招きしようとドキドキしながらお電話をした日のこと、一生わすれません。ご講演録「秋聲と私」は当館の宝です。





スーパー猫の日
 2020.2.22

 20日の日にもちょっとオッとなったものですが、やっぱりこの日。本日2月22日は「猫の日」です。しかもなんだか派手な並びの「令和2年2月22日」「20200222」(画像は受付で使用する日付印→)、いつもよりにゃんにゃん度数の高い今年です。
 20日付で掲載した「月刊金澤」さまの特集タイトルが「猫との暮らし」だったのにはそんなことも意識されていたのでしょうか。基本的に動物全般が嫌いな秋聲先生ですが、娘さんが猫を飼っていたことがあり、猫との暮らしに触れた随筆も少し残されています。が、猫好きの方はあまり読まれないほうがいいかもしれません…。同様に、基本どんなことがあっても全面的に秋聲肯定、秋聲支持の記念館一味ながら、家に住みついた野良犬を追い払う「犬を逐ふ」というお話を読んだ後だけは秋聲先生のことがちょっと嫌いになる記念館事務室犬馬鹿マジョリティ(実際に住みつかれては困る、というリアルな事情は理解します)。徳田家も秋聲亡き後、ご長男の代では犬を飼われていたことがおありだそう。秋聲が生前犬を飼おうとちょっと迷ったときもやはりお子さんたちのためでしたから、猫も犬も、あぁお子さんに言われちゃあ、な秋聲の父としての顔が垣間見られるような気がいたします(今回初公開している徳田家の蓄音器もご長男にねだられて買われたのでしたね…)。
 さて猫と言えば三味線、三味線といえば3月1日。昨日、ついに金沢で新型コロナウィルスの感染者が認められました。つきましては、感染拡大防止のためたくさんの人の集まる各館のイベントもまずこの三連休に開催予定であった泉鏡花記念館前田土佐守家資料館でそれぞれ延期や中止が発表されました。これ以降のことは、当館の所属する財団と市でもって現在協議中です。方針が固まり次第、当HPにてご案内をさせていただくほか、すでにお申し込みくださった方に関しましては個別にご連絡をさせていただきますので何卒ご理解のほど、よろしくお願い申し上げます。



 

閏年
  2020.2.20

 先日アナウンスさせていただきました「秋聲と三味線・金沢昔語り」イベント、おかげさまで満席につき受付を終了いたしました! お申し込みくださったみなさま、ありがとうございました。なお予約無用で立ち見や音声のみお聞きいただくことは可能です(その場合も観覧料金のみ頂戴します)。ただ「立ち見」といっても、会場の都合上出演者の姿はほぼ見えないであろうことを予めご了承ください。正確には「立ち聞き」…? が、さすがにイベントページの公式のお知らせに「立ち聞き、ご了承ください」とは書けませんでした。立ってか座ってか、お姿こそ見にくいですが、語りやお三味線の音色につきましては問題なくお聴きいただけるかと存じます。
 さてイベントもさることながら、次回企画展準備や今年度中すなわち3月末までにやっておかねばならぬことが立て込んでまいりました。例年のごとく2月の短さをオイオイ嘆いておりましたら「今年は長いよ」と言われてしまい、あぁ閏年であったか…と気がつきました。2月29日生まれの方、おめでとうございます。たかが1日、されど1日。すこし気持ちに余裕ができたような、一方で脳内の誰かが「焼け石に水…」と囁いてくるような…。
 そんな月末の福音書、「月刊金澤」3月号が届きました!表紙に春の訪れを感じますね~。しかし巻末秋聲コラムのタイトルは「不安のなかに」…ひとり不安から抜け出せていない記念館一味が混じっております。秋聲、金沢滞在時のお話です。そうして巻末にとんだ闇を孕んではおりますが、実は巻頭に秋聲コラボタイツのご案内が載っているんですよ! これはありがたいこと! 制作者さまの思いが語られておりますので「えっタイツ素敵!」と思われた方も「何故にタイツ!?」と思われた方も、ぜひご一読願います。





リハーサル
  2020.2.18

 昨日閉館後、3月1日のイベント「秋聲と三味線・金沢昔語り」のリハーサルをおこないました。もろもろお打ち合わせのうえ今回は1階再現書斎を舞台に開催することに。いつぞやの夜間イベントでほんの3分ほどの短い朗読を書斎でご披露いただいたことはありながら(立ち見、その後本編は会場移動)、全編をここでとりおこなうのは初めてのことです。はぁ~~なんせ死角が多い~~~と設置したすべての椅子に座ってみながらどこまでが正当なお座席として成立するか、ここは? 見切れ席? 体感席? アリ? あ、ナシ? と試行錯誤・・・。館のリニューアル工事の際に角っこの壁の部分を取り払う案も実は出ていたのですが、いやいやお家のこの閉塞感、必要でしょう、と残すことが選択されました。そもそもイベントを催すためのスペースではございませんので、やや窮屈な感じは否めませんが、館の新たな試みとしてあたたかく受け止めていただけましたら幸いです。ちなみに残り4席ほどです。
 リハーサルの結果、当日は下記のようなプログラムでお送りすることになりました。
  
 ①語り「お銀小金」(金沢民話)
 ②端唄「春雨」(お三味線パート、以下⑤まで)
 ③端唄「奴さん」 
 ④日本組曲「さくらさくら」「お江戸日本橋」「かっぽれ」
 ⑤端唄「今昔加賀舞志」(千本民枝作詞) 
 ⑥朗読「十二王子」(グリム兄弟作・秋聲訳・荒木明日子編)

 ⑤までの秋聲とのゆかりは当日お話しするほか、⑥はしっかり秋聲の名が出ておりますね! 意外や意外な組合せです。
 今回のイベント全体の内なるテーマが「過渡期、折衷、ミックス」となっており、そのイメージキャラクターが「十二王子」発表当時(明治38年)の挿絵における彼女です→





「文学館に行こう!」
 2020.2.16

 昨日のテレビアニメ「名探偵コナン」、ご覧になりましたでしょうか!? なんと「加賀令嬢ミステリーツアー」と題して金沢が舞台になっているうえ、冒頭に、さ、さ、犀星記念館さーーーん!? あのコナンくんご一行様が犀星記念館に入館して展示をご覧になっている…!! すごい絵面でございました。館長が「今日コナンくん見ないといけないから早く帰るね」と言われた意味がよくわかりました。犀星記念館さんコナンくんデビューおめでとうございます(あと島清も…)!
 その後ご一行様は「にし茶屋街」に観光に出かけ、それから「ひがし茶屋街」っぽいところにも行かれ、ん? にし? ひがしか? まだにし? いや……ひ、ひがしだーーーー!! と、何度も一時停止して確認したりなどしてしまいました(録画です)。西の犀星、東の某K花さんと秋聲なのですから、ぜひついでにチョロッとお立ち寄りいただきたかっ、た……。またのご来沢を心よりお待ちしております。ご存じのとおり、秋聲記念館の半分は優しさで、もう半分は妬み僻み嫉みでできております。解決編は22日(土)18時~の放送ですよ、お見逃しなく!(当館は出ていませんよ!)
 さて、こちらは三人仲良く載っけていただいている「本の雑誌」3月号! ありがたいことです。「文学館に行こう!」との特集で、「おじさん1号」こと浜本編集長さんと当館ご近所の古本屋あうん堂カフェの本多マスター、そしてカメラマンさんによる金沢三文豪館訪問記が掲載されています。
 ほっこりする犀星館、ぐっと知的な某K花館、そして急に所帯じみる秋聲館…。きちんと三館揃って取り扱っていただいているのにもかかわらず、一部(※個人の感想です)と注を入れていただかねばならぬほどの、妬み僻み嫉みが隠しきれていない様子で恐縮です。そのほか、全国の文学館の紹介、また文学館のバックヤードがよくわかる館職員による対談など、同業者がまずモリモリ読み込んでしまうばかりでなく、ぜひぜひ広くご高読いただきたい内容となっております。「おじさん1号」ご一行様、ご来館ありがとうございました!
  

 
 


黒くて丸いもの
 2020.2.15

 きのうはバレンタインデーでした。厳密にチョコレートではありませんが、実は記念館にはいまオ○オが溢れています。2月1日の秋聲新暦お誕生日にお客さまが差し入れてくださったもので、レコオド展にちなみ、黒く丸い形で知られるあの有名菓子オ○オをレコードに見立て、それを付属の蓄音器に乗せると音楽が流れだすというそんな愉快なワンセット…(もはやどちらが付属かわかりませんが、一応オ○オがメインということにしておきます)。ちょっと後半何を言っているのかわからないかと思われますが、世の中にはいろいろな発想があるのだと館職員も目から鱗が落ちる思いがいたしました。オレオがあんなに軽快な音楽をうちに秘めていただなんて…。そうだ、ちょっと回してみよう、だなんて…。これまで知らずに貪っていたことが申し訳なく感じられます。
 そのお客様方が専用蓄音器とセットで大量のオ○オ(実際に回しているところ→)をプレゼントしてくださり、その数レコードに換算して実に162枚…! する必要のない換算をしてしまいました。お菓子を、というより、あくまでも小さなレコードを頂戴したつもりでお受け取りしましたよ、といった気持ちの表れです。ご本人はかたくなに認めませんが、ほぼ甘党の秋聲先生を筆頭に甘い物に目がない職員たちにかかれば通常162枚などあっという間に消え失せるところ、いや一応レコードとしてお受け取りしたからにはただのオ○オとして消費するわけにゆきますまい、いただく際には必ず蓄音器に乗せ一曲聴いてから…と思うとクッとハードルがあがりなかなか手が付けられません。いかにほっこりとした事務室でも、あら~あんなに賑やかにして今からオ○オをたべようとしているな~と自然に周囲にお知らせしてしまうシステムには若干の羞恥心がはたらくというもの。十時とお三時に全員参加の強制レコード鑑賞会を開くことにいたしましょうか。
 秋聲のよく出席したレコード試聴会ではサンドウィッチが饗されたといいます。クリームがサンドされたアイツを牛乳にダンク! パンを牛乳に浸して召し上がることの多い秋聲先生好みです。





若葉に雨
  2020.2.13

 昨日画像をあげた歯朶、実はよく見ると葉っぱの先っちょのほうが枯れて茶色くなっているのです。まぁ冬だし鉢だしある程度は仕方がないや、と思っていると犀星さんからのこのお手紙(←)、「歯朶はなるべく陰を好いてゐるさうですからそのおつもりで植えてお置き下さい。御説のとほり冬も枯れないらしく、春の芽立がいいさうです。」(昭和3年8月11日付、徳田家蔵) ギャッ冬でも枯れないって言ってる…!! これは軽井沢の別荘から自前の歯朶を東京の秋聲宅に送る際に書き添えてくだすった内容で、「御説のとほり」とありますから、秋聲側からも「冬でも枯れないと聞きます」的なお手紙を出したということですね。これはこれは申し訳のないことです。とりいそぎこの冬をどうにか乗り切り、「春の芽立」すなわち新たなるベビ歯朶の誕生をじりじりと待つことにいたします。

 さてそんな春の話題、今年も「桜の季節のおもてなし」の開催が決まりました! 日程は4月4日(土)13時~、詳細は追ってアップいたしますが、とりいそぎましてもし春先のご来館をご検討くださっている方がいらっしゃいましたらこちらもひとつご検討材料に入れてやってくださいませ。ご近所の茶道裏千家 井奈宗孝社中さんにお抹茶をご提供いただくお作法無用のカジュアルな呈茶会です。ただ、問題は桜…。
 今年は過去にない暖冬の影響から桜の開花がかなり早いようで、いろいろな予報を見るにつけ3月中にもう満開を迎えてしまうようなものもございました。4月4日と、例年より少し早い開催にしてはいるのですがどうなることやら…。肝心の秋聲先生曰く「花の盛(さかり)は面白くない、春雨もいゝけれど、晩春の若葉に濺(そそ)ぐ雨の方が好きだ。一体若葉の頃の方が花の盛の頃よりもおちつきがあつていゝ」(「春に見出す趣味と感想」明治44年4月)。ねー! ねー! 若葉だっていいですよねー!(ただ雨は正直困ります…!)





心のオアシス
 2020.2.12

 今朝ほど3月末に発行予定の館報「夢香山」に掲載するための追加画像を新たに撮影したり、記録写真のフォルダから引っ張り出してきて、トリミングなど加工作業をおこなったその2枚が2枚とも植物の写真であることにハッと気がつきひとりで笑ってしまいました。もはや文学館の仕事なのかなんなのか、もろもろ切羽詰まっている殺伐とした心に一瞬のオアシス…!
 追加した2枚は今年度散々お世話になったご近所の円長寺さん境内にあるハアザミと、当館再現書斎にある犀星さんからいただいた徳田家の歯朶(シダ)です。まぁずいぶん大きく!(→)アレもコレも早いもので昨夏のこと、四高展と犀星展でご活躍いただいたそれぞれを、いったんレイアウトしてみた誌面にバランス調整役として投入することにいたしました。まさに観葉植物の感じです。お部屋(誌面)のここちょっと寂しいな、緑とかおいてみよっかな。そんな感じです。
 画像をデザイナーさんにお送りする際、仮に画像だけ黙って乱暴に送りつけたとしても文脈でまぁなんとなく入れ込む位置というのは伝わるものですが、これに限っては「ハアザミ(3ページ上段左)」とか、「シダ(4ページ中段右)」とかうるさいくらい丁寧に名前をつけてお送りしようと思います。送られてきた写真が、ワッどっちも緑! と文学館で扱う画像にしては珍しいタイプのものにてデザイナーさんを惑わせ、うっかり取り違えることのないように…。
 秋聲の作品にいわゆる「チェンジリング」、取り替え子の物語がございます。現在のレコオド展で展示中の長篇小説『心の勝利』がそれで、ヒロインの亮子と一枝が一緒にポオタブルの蓄音器を買いに出かける場面が…アッもしや盛大にネタばらしをしてしまったでしょうか。べ、べつに何も取り替えられてはいないです。亮子は亮子、一枝は一枝です。ハアザミはハアザミ、シダはシダです。



 

明るい町
 2020.2.6

 去る3日は節分、ちょいと企画展準備等々がカッ詰まっていてご近所の宇多須神社さんでの節分祭には行かれませんでしたが、神様は見ている…いつもお世話になっている写真家さんが、お福分けとしてお祭りの写真をメールで送ってくださいました! ありがたいこと!
 宇多須神社さんの節分祭はなんといっても芸妓さんによる豆まきが目玉で、毎年たくさんの方が広い境内に詰めかけます。なかなか日常的にお茶屋あそびには行かれませんが、館で毎年ひがしの芸妓さんをお招きしてイベントを開催していることから、お写真に写っている芸妓さんのお顔を見ながら無駄にお名前を言ってみたりしてよく知ってる風を装う記念館です(たぶん来年度も開催します!)。
 余談ながら最近、館の備品のデジタルカメラが壊れたので、新しいものを買ってもらいました。予算の関係もあり、そこまで高価・高性能ということもないのですが、これまで夜のイベントの記録写真などはもはや壊滅的だったので、新カメラの実力を試す機会を楽しみに待っています。が、撮影の腕が壊滅的なことにも自覚があるため、いったいどこまでどちらのせいなのやら…。
 写真家を目指す主人公の出てくる秋聲の小説に「暗い町」というのがございます。金沢が舞台となっており、写真の道に進みたくて父親に写真機を買わせたり、実家に暗室を拵えたりまでしながら今ひとつ才能が伴っていないような、雰囲気の…。本当に「暗い」のが町なのか何なのか、いったいどこまでどちらのせいなのやら、と思わせられる短篇です(お写真の優しい明るさになんだか泣けてきますね…→)。
 アッちょっと湿っぽくなってしまいましたのでここで明るい話題! 本日6日は「海苔の日」です!





より美味い餅
  2020.2.3

 2月に入りまして、ようやく次回企画展タイトルおよび会期が固まりました。岡栄一郎生誕130年記念展「岡栄一郎の陰影」、3月28日(土)~6月28日(日)までの開催です。栄一郎が明治23〈1890〉年生まれということで、2020年の今年が生誕130年にあたります。犀星さんの一歳下ですね~。先日芥川龍之介と仲良しで云々、と申し上げましたように、龍之介と仲良し、すなわち犀星とも仲良し、そして菊池寛・久米正雄らの新思潮派とも仲良し、となってくる文壇交流網(※「仲良し」の度合いはちょっと脇へ置いておきます)。
 そんなわけで、先日から田端文士村記念館さんを煩わしたり、菊池寛記念館こおりやま文学の森資料館その他、関係各館もろもろを煩わしたりしております。自分で調べればよいものを「餅は餅屋」なる言葉を悪用して、すーぐにメールしちゃう…! 文学館交流網と言えば聞こえが良いですが、悪い癖でございます…。
 が、さすがそれぞれの餅のエキスパートたち。すぐにレスポンスがあり、こちらの準備がはかどり、そうしてまた味を占める。たいへんありがたいことです。

 先日、菊池寛記念館さん(まさに今「新思潮」展を!)から資料一式が郵送で届き、はぁこりゃありがてぇ! と涎を垂らしながら拝見するうちこんな可愛らしいシール(←)が同封されておりました。職員さんお手製の菊池寛「迎春」シール! 1月のカルタ大会の景品としてお子様限定で配られたものだそうです。へぇ! こちとらすっかり大きいおともだちなのにいただいてしまって…! 資料というそれだけで美味しいお餅にきな粉ついてきた、みたいな嬉しさです。染み入ります。
 またそうしてお送りいただいた資料の中に岡栄一郎が「関脇」にランクインしている、とある番付表がございました。ちなみに秋聲は「前頭」。ふたつ前の記事にて、恥ずかしながらお相撲には明るくないと記したばかりですが、さっそくお相撲の格付けを調べることに…。ものごとは…細やかな網で…繋がっている…





二度目のお誕生日
 2020.2.1

 学芸員のインフルエンザによりやむなく中止とさせていただきました1月4日の展示解説から一ヶ月、本日の展示解説は無事とりおこなうことができました! しかも本日2月1日はゲーム「文豪とアルケミスト」に登場するキャラクターとしての「徳田秋声」のお誕生日。ゆえなきことではございませんで、当館が作家本人のお誕生日としてお祝いする12月23日は旧暦、それを新暦に換算すると、2月1日がお誕生日ということになっています。
 意図したわけではなかったのですが、そんな日に展示解説をあてていたことからたくさんのお客様よりお祝いのお言葉を頂戴することができました。お誕生日にちなみ鳩サ○レーをくださったお客様(※毎年12月23日周辺の寸々語をご参照ください)、レコオド展にちなみ蓄音器にまつわるグッズをくださったお客様などなど、日々当館が愛し顕彰する以上に「愛されている秋聲(秋声くん)」を実感し(決してモノにつられたわけでは…!)とても嬉しい一日となりました。この日ご来館くださったすべてのお客様に厚く厚くお礼を申し上げます。
 解説を終えると文アルさんのユーザーでいらっしゃるお客様より、ゲームで見られるお誕生日記念特別ストーリーを見せていただき、そのあまりのレコオド展っぷりに驚きました。イヤちょっと待って、いろんな表情ができるようになってる!? というところにもまずおののき、みんなにお祝いされて薄く微笑んでいる秋声くんに(あ、あの子が笑えるように…!!)と心の中でむせび泣きましたが、さらにさらにその筋書きのレコオド展とのリンクっぷりが…! えっえっDMMさんこの企画展ご観覧くださって!? とバッとうしろを振り返らざるを得ないつくりで、かなり動揺したあげくお客様のスマホでうっかりスクリーンショットをとってしまいそうになりました。ご観覧くださっていても、そうでなくとも、たいへんなお誕生日プレゼントをありがとうございます…。
 
 秋声くんがみんなに大事にされていることが何より嬉しい記念館です。





「じわもんラジオ」
 2020.1.31

 本日17時~のNHKさん「じわもんラジオ」に学芸員が出演させていただきます! しかもNHK金沢放送局玄関ホールにおける公開生放送とのことで、ファーッと行って自由に放送のようすが観覧できるそう。もうお一方のゲストには金沢のご出身で津軽三味線奏者の永村幸治さんがご出演ですから、お近くの方はぜひ遊びにいらしてくださいませ。

 三味線つながりで当館は現在のレコオド展のお話をさせていただく予定にしております。が、いかんせん生放送、イベントの日時をまちがえないようにしなくてはなりません。司会は水谷彰宏アナウンサーで、お忙しいなか事前にしっかり企画展も見に来ていただいておりますのでちょっと安心です。水谷アナはニュースも読まれていますが、お相撲の解説でも有名な方。この出演の依頼に水谷アナからお電話いただいたんですよ~と他の職員が館長に報告したところ、「えっ学芸員がお相撲の話をしてくるの??」とのリアクションだったそうで、あとで聞いて笑ってしまいました。すみません、正直お相撲にはあんまり明るくないです…!
 秋聲がお相撲について書いた作品に「白日」(明治42年7月)がございます。「大きな釜を伏せたやうな此の異様の建物のだゝツ広い底と周囲には人が豆を撒いたやうに頭脳(あたま)を 駢(なら)べてゐた。それが皆な日に蒸される蛆(うじ)のやうに蠢々(うようよ)動いて、目間苦しいやうであつた。」
 しょ、紹介できるかーーーい!! 
 「可也(かなり)力の入つたらしい取組も、僕の目には、子供の弄具(おもちゃ)の紙片(かみきれ)がパタリパタリ仆(たお)れるのと、大した相違はない。」
 二度と呼ばれるかーーーい!! ……取り乱しまして失礼いたしました。



 


目下の不安
  2020.1.26

 開催中の田端文士村記念館さんの企画展「芥川龍之介の生と死~ぼんやりした、余りにぼんやりした不安~」もいよいよ本日が最終日となりました。当館からは龍之介筆秋聲宛書簡画像を提供させていただき、パネル展示していただいております(厳密には徳田家蔵)。入場無料との大盤振る舞いですので、お近くの方はぜひ駆け込み訴え…駆け込み観覧なさってください。
 次回、岡栄一郎展でも龍之介さん大活躍の予定です。実は栄一郎と龍之介はとっても仲良し! 栄一郎の最初の奥様・綾夫人は龍之介の幼なじみである野口功造・真造兄弟の姪っ子さんにあたる方で、その結婚の際には龍之介が立会人を、秋聲が媒酌人をつとめたとか。しかしすぐに離婚騒動がもちあがり、龍之介と秋聲とがやはり一緒になっておおわらわ…! 申し遅れましたが栄一郎は秋聲の遠縁にあたり、秋聲のことを「おじさん」と呼んで慕ったそうですからそりゃ「甥っ子」の結婚・離婚に「おじさん」が一肌脱がないわけにはまいりません(※一応カギ括弧つきの「甥っ子」です。家系図がやや複雑で…)。そんなわちゃわちゃも含めて次回展でガバッとご紹介する予定にしております。
 もうひとつ目玉となるのは、栄一郎と漱石との関係。栄一郎は漱石門下生でありまして、栄一郎が絡む漱石筆秋聲宛書簡(徳田家蔵)を当館で開催いたしました漱石生誕150年記念特別展「書斎の人―拝啓、夏目漱石様。」以来3年振りにお出しするつもりなのですが、これが長い! いつ見ても長い! 2メートル級のお手紙(→)だもんですからそうすると必然的に展示する場所が決まってしまい、そうするとそれを中心に展示構成を組まねばならず、そうするとどうしたって時系列がゴチャゴチャになって、あ~漱石そこに来ちゃうか~~~! というのが目下の悩みです。
 あ~そこに来ちゃったか~~と感じさせない自然な流れを…どうにかこうにか…
 




名人芸 
  2020.1.23

 やっとこさ三味線イベントの詳細をイベントページにアップいたしました! そういえば先日の千本先生の三味線和ライブ終了後、「アッ秋聲記念館さんでのイベント告知するの忘れちゃった、ごめんなさい!」と仰る千本先生と「記念館さんスックと立って告知すればよかったのに!」と仰ってくださるお弟子さん、「いやいやいや! みなさん余韻に浸っていらっしゃるところとてもしゃしゃり出る勇気は…!!」と、そんなやりとりがございました。今となってはしゃしゃり出ていって告知すればよかったナ、とちょっと後悔したりしております。次の機会はいつかしら? ときっとみなさま思っていらしたはず。秋聲先生ならスックとお立ちになって言うべきことを言ってのけてしれっと帰ったに違いありません(「文芸懇話会 秋聲 庶民」で検索!)。
 そんなわけで3月1日のイベント「秋聲と三味線・金沢昔語り」、何卒よろしくお願いいたします。三味線パートではそれぞれ秋聲ゆかりの端唄「春雨」や「奴さん」など、昔語りパートでは秋聲が幼少期に聞いていた金沢の民話「お銀小金」(犀川が舞台です)ほかをお送りする予定です。
 秋聲はとかく浄瑠璃における三味線を高く評価しており、「日本人は一体かう云う技巧に器用なんだらうと思ふが、勿論今の洋楽のバイオリンやピアノを、学校で教はるのとは、修業の仕方がまるで違ふのだと思はれる。名人から名人へ伝はつてゐて、洋楽のやうにテクニツクは或ひはなかつたにしても、づゐぶん全身的に霊を打ちこんだものにちがひない。もともと芸術は学校なんかで教はるべき性質のものではないので、名人から名人へ吹きこまるべきものだらうと思ふ。日本の芸事で何が尤も真剣かといへば、太棹なぞは確かに其の一つで、その稀薄に至つては西洋の一流の提琴家(※ヴァイオリニスト)や洋琴家(※ピアニスト)におさおさ劣らないものだと思ふ。」(「人形浄瑠璃の運命」昭和3年7月)と述べています。千本先生もお祖母さまが三味線のお師匠さんであったとのこと。名人から名人へ、ぜひご体感ください。

 ↑端唄「からかさ」にちなみ解説中。これも名人(金沢和傘)×名人の図!


 


雪不足
  2020.1.22

 大寒を過ぎてようやく冬らしくなってまいりました。今朝は「秋聲のみち」沿いの水たまりも表面が凍って、隣の緑地の芝には霜柱がさくさくと。きのう当館の所属する金沢文化振興財団のホームページを見ていて、トップに「金沢湯涌江戸村の雪遊びイベント(1/26)は雪不足のため中止になりました。」と書いてあるのを発見し、おぉ…! となったりしたところであったので、この冬の暖かさがいかに例にないことかと改めて感じます。
 さてそんな大寒の発売「月刊金澤」さま2月号、毎度空気の読めないことで恐縮ながら秋聲と雪にまつわるエピソードについて書かせていただきました。だってホラ2月って…いっつも大雪なんだから…! 受付さんによると昨日はちらほらと雪が舞ったそう。来月にはしっかり雪が降るのでしょうか(いま事務室の窓から青空が見えています…)。
 秋聲と雪といえば、全42巻を誇る八木書店版『徳田秋聲全集』第1巻のいちばん最初の収録作品が「ふゞき」と申します。明治26年1月、大阪の雑誌「葦分船」に掲載されたもので、大阪を舞台に支え合いながら暮らす貧しい一家の涙涙の物語です。まさにこの頃、尾崎紅葉への弟子入りに失敗し、長兄直松のいる大阪に身を寄せていた秋聲23歳。現在確認されるうち、活字になった最も早いもの、と全集の解説に記されています。
 この大阪時代に「文楽」に触れていた、とは現在のレコオド展でご紹介するところで、人形浄瑠璃、すなわち「文楽」の名が生まれた本場ですからこりゃ耳も肥えるわけですね! もひとつちなみに、当時直松の家にちょこちょこ遊びに来ていたというのが次回企画展でとりあげるのちの劇作家・岡栄一郎少年。各所から概要をだせーだせーとせっつかれているのですが、まだタイトルも構成も会期の終わりすら決まりません!! 


 


秋聲と三味線 
 2020.1.19

 昨日はご近所の尾張町老舗交流館で開催された「歴史と伝統文化講演会」の第8回に潜入してまいりました。9月に当館学芸員も第4回講座を担当させていただいたシリーズで、今回のテーマは「気軽に聞こう~三味線和ライブ~」。端唄千本流金沢分家師範 金沢千扇会会主・千本民枝先生のご出演により、1時間半たっぷりと三味線と端唄の音色を聴かせていただきました(写真は展示されていたかっこいい手作り三味線。段ボール製。音、鳴ります)。と、とても遊びにいっているような雰囲気ですが、一応打ち合わせ兼…といいますのも、開催中の企画展「レコオドと私~秋聲の聴いた音楽~」にちなみ、当館でもこの千本先生による三味線ライブの開催が決まりました! 
 お日にちは3月1日(日)14時~。詳細は近日中にイベントページに掲載いたしますので、ぜひぜひチェックしてみてください。また、当館では千本先生ともうお一方、ともにユニット「縁音(えんね)」として活動していらっしゃる昔話の語り手・荒木明日子さんとおふたりのご出演です。イベントタイトルは「秋聲と三味線・金沢昔語り」。荒木さんには秋聲が幼少期に聞いていた金沢の民話の語り(金沢弁でなさるのです、これはレア!)と秋聲の子ども向け作品からひとつふたつ朗読を、千本さんには秋聲の作品に登場する端唄をいくつかご披露いただく予定です。
 今回の展示では出し切れませんでしたが、秋聲さん年齢を重ねるにつれ何か音楽にまつわる習い事をしたくなったようで、「暇があつたら自分で何かをやりたい。義太夫でも清元でも常磐津でもいゝ。三味線か提琴(※ヴァイオリン)も亦(また)いゝ。」(「あらくれ会」昭和9年8月)とお書きでいらっしゃいます(ただし謡はイヤ)。
 ヴァイオリンも似合うし三味線も似合う! えーーおやりになったらよかったのに…!! と、秋聲の趣味? ええ、お三味線を少々…とか言いたくてもぞもぞしている記念館がここにいます。



 


最先端のくらし
 
 2020.1.18
 派手に寸々語はさぼりましたが、中ではしっかり活動をおこなっております! ありがたいことに雑誌社さまの取材を受けたり(追ってお知らせいたします)、MROラジオさんに出演させていただいたり、学芸会議に出席したりなどなんとなくせわしく過ごしております。今回の会議の会場は金沢くらしの博物館さん(写真が驚くほどへたくそですが、くらしといったらくらしです!→)。全世代においていつも問答無用で己の幼少期の記憶を引きずり出されてしまう恐ろしい館です。そんなくらしさまにこのほど時代の最先端技術が導入されました。それすなわち「AR」=Augmented Reality(拡張現実)なるものだそうで、貸し出し型のタブレットを持って館内を巡り、番号が振られたパネルや展示品にそれを翳すと関連する映像や音声が流れるという内容です。たとえば柱時計に翳せばボーンボーンという時報が聞けたり、昭和初期のお櫃に翳せば炊きたてのご飯が画面上に現れたり、古民具の使い方の映像が見られたりいたします。会議では出席した学芸員仲間全員でキャッキャしながら体験して回らせていただきました。
 今では使い方のわからなくなったものなど、こうして実際に映像としてそれが見られることで俄然展示物が生き生きしてまいります。と、今は最先端のタブレットも、今後50年もすればくらしさまの展示ケースに収まっていたりするのでしょうね…。あぁ~なつかしい~このこれなんだっけ、タ…タブ…?? みたいなことになって、時代の流れすべてを丸呑みにしてゆく館、それがくらしの博物館。あ、あの館は生きている…!
 当館が丸呑みしているのは「徳田秋聲」という作家ですが、ヌルヌルしているかといえばトゲトゲしていますし、柔らかいかと思えば急に歯が折れるほど固かったりするので全然胃のほうに落ちてゆきませんで、喉のあたりにいたり、はたまたいなかったりいたします。「羮(あつもの)に懲りて膾(なます)を吹く」と言うように、熱いかもと思ってかかるとすごく冷たいのが秋聲(逆もあり)…そう、ラジオで「鶫の羹」のお話をしてまいりました。





謹賀新年
  2020.1.8

 あけましておめでとうございます。とかいって本日すでに1月8日。記念館は4日から開館しております。本年も何卒よろしくお願いいたします。
 年末に縁起でもないお別れのご挨拶などしてしまったからでしょうか、4日にお会いいたしょう! と言っておいての学芸員インフルエンザに罹患。4日にお会いできませんでした…面目ございません…
 新年早々たくさんの方がその日のギャラリートークに合わせてご来館くださったと聞きました。館全体でもって4日から仕事初めにつき、当日の催事中止の周知が行き届かず、みなさまには大いなる無駄道を歩ませましたこと心よりお詫び申し上げます。こんなことなら第一土曜にこだわらず、せめて中止のご連絡ができるゆとりをもった日程にすればよかった…いや、そういうことでなく、そもそも体調管理の不徹底が諸悪の根源、いやいや記念館のHPを一気に消耗させた文アルさんたちのビッグニュースがいけないのさ…と目を逸らしつつ責任を転嫁させつつ、今後、わがところのイベントを何より大事に、そこのみに焦点を定め、万障繰り合わせて生きてゆくことを心に決めた2020年の始まりです。いかにベタでも大事は大事。「健康第一」、これが今年の目標です。
 さて、弱った身体にまたも大きなニュースがぶつかってきて、こちとら満身創痍でございます。つい先日、「東京新聞」および系列紙の「北陸中日新聞」に秋聲の『縮図』を用いたグッズ制作についての発表が大きく載りました。『縮図』が「東京新聞」の前身紙である「都新聞」に連載されたというゆかりによるもの。こちらは記念館の制作物でなく、地元の会社「ロカワークショップ」さんによる企画でして、館が仕掛けずとも秋聲と名のつくプロジェクトが外側で進行する、といった事態に極めて不慣れなわれわれは動悸息切れが止まりません(しかも中身も攻めている)。思いのほかの大きな記事にさらにワッ…!! となって一回記事を閉じました。はやく「ふーーん、けっこう大きく載ったんだね~~?」みたいな感じで見られるようになりたいです。




 

 

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