寸々語

寸々語(すんすんご)とは、秋聲の随筆のタイトルで、「ちょっとした話」を意味します。
秋聲記念館でのできごとをお伝えしていきます。





夢の謎
 2019.6.23

 以前こちらで秋聲の正夢についてご紹介したことがありました(昨年12月4日記事参照)。記念館一味もイベントや展示替え前になるとたいへんリアルな夢をみることが多いです。直近では来週末の円長寺さんでの館長による記念講演。はじめて使わせていただく会場ゆえ設営に手間取り、参加者のみなさまからちらほらと上がる不満のお声に胸を痛めながらもなんとか開会。はじめのご挨拶をしながら横目に館長がなにか変な物体に座っているのを発見して慌ててちゃんとした椅子に差し替え、「改めましてただいまから~」と開会宣言しようとした矢先、着席されていたお客さまがみなドヤドヤと外へ・・・! えっなに!? 芸能人?? なんか撮影?? との騒動のなか、一応主催者に対する義理人情でもって残ってくださった前列のみなさまの気もそぞろなのを察し「あの・・・なんか芸能人の方来てるっぽいですね・・・どうぞいっそ見に行かれて・・・」と言うや否や全員目の前からいなくなる、という夢でした。は~~! こわ~~~!!!
 会場となる円長寺さんはひがし茶屋街の一部と言っていい立地。茶屋街といえば金沢を紹介する旅行番組などでは必ず映りますし、よく知らぬ間に芸能人の方々が撮影に来られていたのをあとで知ったりいたします。ありうる・・・じゅうぶんにありうる・・・!! そんな潜在的な恐れが夢に出てきてしまったのでしょうか。正夢にならないことを祈るばかりです。

 きのう円長寺さんとお電話していて、御法事で準備には立ち会えませんが講演台は出しておきますから、とお気遣いくださる副住職さまに涙しながら、どこから出してきたものやらあのなにか白いぐにゃぐにゃした変なものに文句も言わずちょこんと無理くり座っていらした館長の姿を思い出し、(そう館長の椅子はいのいちばんに・・・!)との決意を強くいたしました。
 会場のつくり方次第ではありますが、今のところ満席!! という感じでもありませんので、迷われている方ぜひお電話ください。明日24日(月)10時ごろ、いつものMROさんラジオで最後の宣伝をしてまいります。
 




青果畑
 2019.6.22

 なりを潜めてはおりますが夏至の本日、記念館は元気です。現在は次回犀星展に向け、鋭意パネルの校正中。前後期の資料のバランスを見ながら、前期だけ、後期だけご覧いただいても資料間の連続性が保てるよう右目をつぶり、左目をつぶりながらキャプションテキストをぽちぽち打ち込んでいる今日このごろです。いちおう忙しくはしておりますが、あまり変わり栄えのしない日々に「オゥ今日はもう20日であったか・・・」とか「オゥ世間では鰻をたべだす頃合いか・・・」とか新鮮な外の空気をもたらしてくださる「月刊金澤」さま7月号が届きました! 特集テーマは「うなぎの誘惑」。誘惑といえば真山青果。そんなわけで、巻末の秋聲コラムは秋聲と青果さんがテーマです(青果さんによる秋聲作品舞台化第一弾が『誘惑』。いま表紙をみながらこじつけました!) 当館の青果展はすでに終わっておりますが、終わりが始まり。仮に記念館で青果さんのことを初めてお知りになったとして、おうちに帰ってテレビをつけたらそのことが放送されている・・・みたいな現象よくあるのではないでしょうか? わりとふつうにあったものだけれど、知らなかったから気がつかない。知ったからこそ急に目につく、そんな再会の場をひとつこの世界に増やす試みです。
 そうしてこちらの畑を耕している最中に、青果さんご息女で同じく劇作家の真山美保氏原作「泥かぶら」上演のお知らせをいただきました! 美保氏が立ち上げた「劇団 新制作座」で昭和27年の初演以来、実に70年近く上演され続けてきた名作です。現在は美保氏ご令孫・真山蘭里氏が劇団代表をつとめ、「泥かぶら」ほか青果さんの舞台作品も上演しながら全国各地を巡回されています。「金沢は『坂本龍馬』(青果原作)で行ったなァ!」と仰っていた蘭里氏。本作初演時の昭和3年、これを見た歌人で劇作家の吉井勇が青果の脚本を絶賛したとか。新制作座さん、詳しくはこちらから!





「文学はメッセージ」
 2019.6.14

 当HPのイベントページの最下段、館外イベントに項目をひとつ追加いたしました。7月25日(木)、中央大学政策文化総合研究所シンポジウム主催「文学はメッセージ、文学はネットワーク、そして文学は・・・?」に当館学芸員が出講いたします。会場は金沢のど真ん中、しいのき迎賓館です。
 内容はたいそうバラエティに富んでおり、第1~第5セッションにわかれ、詩について、海外における日本語について、地域と文学について、児童文学について、そして地域と文学館の関係について、とそれぞれさまざまな分野からなる講師が2人組になって発表をおこないます。当館担当分は第5セッション、当館初代学芸員・大木志門先生(現山梨大学准教授)とともにお話ししてまいります。大木先生には当館主催の講演などにしばしば来ていただいておりますが、出会いが初代学芸員と二代目学芸員だったものですから基本的にはすれ違いの関係性。いつもお電話でのご相談ごとなどはつい長電話になってしまうのですが、ふたり一緒に人前でお話しする機会は今回が初めてです。1セッション30分くらいが持ち時間。何をどこまでどう詰め込むか、いまからモワモワとシミュレーションしているところです。
 先日当館にも届きましたチラシを見ていると、そのキャッチコピーがなかなかに攻めています。「文学がはたしている役割をさまざまな角度から考えます。詩、うた、国際化、文学サークル、子ども、地域の中の文学館、文アルなどなど」・・・。「地域の中の文学館」とのフレーズにわれわれのテリトリーを強く意識した次の瞬間、向こうから駆け足でやってくる「文アル」さん! なるほどなるほど、秋聲先生とともに秋声くんにも召集がかかっているわけですね。言及の割合のほどは不確定ですが、目玉のオ○ジよろしくそっと頭に住まわせて出陣いたします。入場無料でお申し込みも無用とのこと。ご都合よろしければぜひお越しくださいませ。





前半後半
 2019.6.13

 きのうの記事中、花袋記念文学館さんで展示されているおハガキのもう一通は件の近松秋江の上京歓迎会を開催するよ、との秋聲から花袋さんへのご案内だったのですが、その書きざまがすこし面白くてケースの前でひとりフフフと笑ってしまいました。「歓迎会の開催についてはむろん賛成だろうから君の名前も発起人に勝手にくわえておいたよ。いいよね。」(すごく意訳)ざっくりそんな内容です。有無を言わさぬこの感じ…花袋さんへの信頼の証なのでしょう。彼らの関係性、そして彼らと秋江との関係性も垣間見え、とっても良いおハガキなのです。ぜひぜひご覧いただきたく、また花袋記念文学館のみなさまにもたいへんお世話になりました。その節はありがとうございました。
 そうして館林をあとにして、向かったのは東京の徳田家です。今度の犀星展で展示したい資料を鞄いっぱいにお借りしてまいりました。初公開となる資料をはじめ逆に量が多すぎて展示ケースが足らぬ事態! 保存のことも鑑み、次回展では自筆のものを中心に前後期で半数近くの資料を入れ替えすることといたしました。7月21日(日)~11月4日(月・振休)の全会期中、ちょうど真ん中くらいの9月11日(水)に1日休館をいただきますので、ご旅行の日程を組まれている皆々様、こちらの都合で恐縮ですがどうかご留意くださいませ。
 それをHPにアップした日の午後、いつもお世話になっている東京の先生からお電話があり「9月11日に行こうと思っていたけど、その日お休みなんですね!?」。あぁ危ないところでした! その前日にHPをご覧になっていたなら、フムフム会期中無休のようだね、と予定を組まれてしまうところでした。すみませんすみません、9月11日はダメーーー!! と今からスケジュール帳にご記載ください。
 チラシも間もなく校了です。作りながらも中休みのことをわすれ「アッ9月11日はダメーーー!!」と印刷屋さんに慌ててご連絡する始末です。





徳田と徳田から花袋さんへ
  2019.6.12

 デスクの日めくりカレンダーさまによりますと、本日6月12日は「恋人の日」だそうです(ブラジルの風習だそうですよ)。恋人でこそありませんが、文壇のニコイチこと花袋と秋聲(そんなこと誰も言っていません。むしろ当館が率先して言っていくこととしております。紅露・白露みたいな感じです)、同い年ハッピーセットのこのおふたりの地元・館林と金沢にそれぞれ記念館があるわけですが、このたび田山花袋記念文学館さんで始まった収蔵資料展「『近代の小説』Ⅱ-花袋が見た大正の文壇-」にて秋聲の『あらくれ』ががっつり紹介されていると聞きつけ、群馬県までひとっとびしてまいりました。秋聲のしゅの字のためなら近い近い!
 チラシにもご掲載いただいている『あらくれ』(花袋さんに批判されている…)ほか『縮図』『出産』『めぐりあひ』などの著作にくわえ、見るべきはおハガキ! 秋聲から花袋さんに宛てた自筆ハガキが2通展示されており、ほっほーう、なんてなんて~?? とわっくわくしながら読みましたら最後に「徳田秋江」との署名があり、おっと秋江さんかーーーい! となったりいたしました。ちょうどお客さまの切れ目であったことをいいことに、ケース前にどっしりしゃがみこんで読みつつ最後にずっこけなどしていた人物、それが秋聲記念館一味です(終始ひとり)。
 おハガキはよく見ると前半が徳田秋聲、後半が徳田(近松)秋江と、ふたり連名で書かれたもの。より貴重なものには違いありませんが、秋江さん…近松に改名していただいて助かっています…正直にいってややこしいの極みです…。またそれを除いてもすこしばかり冷静さを欠いていたことを認めねばなりません。他館でみる秋聲ったら格別なものですから…。
 次回犀星展的にも有益な情報満載で、某K花さんのけの字…いえ、きの字もありました。花袋さんと記念文学館さんにメッセージを書けるブースもありましたので、これからもうちの秋聲先生をよろしくたのんます!! と書かせていただきました。10月6日までです。ぜひお運びください!



 

奇跡のコラボ
  2019.6.7

 おととい話題にいたしました弥生美術館さんの企画展、先日当館にもチラシをたくさんお送りいただき、2階の企画展示室前に設置をさせていただいております(寸々語を読んで受付さんにチラシの場所をお尋ねくださった方がいらしたとききました。ありがとうございます! 2階、四高展前です!!)。
 いつも秋聲のしゅの字に関係する企画展の場合、デスク後ろのキャビネットにチラシを貼って常に意識の内側にいれるようにしております。きのうその内容を確認せんとふと後ろを見やると、秋聲先生がとてもおもしろいことになっておりました↓
 厳密には秋聲の師・尾崎紅葉による秋聲の似顔絵(赤いの)。それが弥生さまの企画展チラシに掲載された高畠華宵画 女性像のボディとマッチング!(貼り方の雑さに日々の仕事ぶりが透かし見えるようでお恥ずかしいです) こちらの紅葉先生による似顔絵は某K記念館さんのご所蔵品(巌谷小波宛書簡中)で、モノといたしましては過去の当館主催・某K花展で制作した某K花さんと秋聲のあゆみ双六のコマ(マグネット)です。双六本体は解体してしまったのですが、マグネット機能がもったいないのでコマのみ事務室内で今もこっそり使わせていただいております。
 そうして少々顎のとがりすぎた秋聲先生のお顔と高畠画伯による「ニューファッション」のコラボレーション・・・わざとそうしたようですがまったくの偶然です。見つけた瞬間、アッとなってお話しできる隣近所の人を探しましたがみな真剣に目の前のお仕事に向き合っていたのでぐっと堪えました。堪えきれずに今日になってこちらに吐き出しました(各所にほんとにすみません)。





名誉館長裏切り事件
 2019.6.5

 「記念館を裏切っちゃったわ、ごめんなさい・・・」とたいへん沈痛なお声で東京の名誉館長(秋聲令孫)からお電話いただいたときには何事かと思いました。「秋聲のマントと鞄とステッキ・・・弥生美術館さんにお貸ししてしまったのよ・・・」「えっ・・・!?」そんなやりとりがあったのは今年の春ごろのことだったでしょうか。
 東京の弥生美術館さんでちょうど一ヶ月後にはじまる企画展「アンティーク着物万華鏡 大正~昭和の乙女に学ぶ着こなし」にて、ありがたいことに秋聲作品のご紹介をいただけることは昨秋からうかがっていたのですが、同館と同じ文京区にある徳田家から自筆資料を借用されるその過程で当初予定になかった秋聲遺品もお貸しすることになった、とのご連絡だったのです。それがなぜ記念館(当館)を裏切ることになるのか、すなわち徳田家から初の蔵出し、本邦初公開となる資料だから・・・!!
  
 いえ当館がぼやぼやしていたのがいけないのです。これは名誉館長が常日頃からいかにお優しく当館のことを気遣ってくださっているか、弥生美術館さんに逸品を決して見逃さぬ、いかに優れた学芸員さんがいらっしゃるか、というたいへん良いお話なのであって、アッ先をこされた!? とかまさかまさかそんな自己中心的なお話ではないのです。
 そんなわけで「いえいえそれはかえって朗報です・・・こんな片田舎のちいちゃな館で公開するより東京のど真ん中、そして気鋭の弥生美術館さんでご紹介いただけるならば秋聲先生にとって何より素晴らしきこと、当館といたしましてもそれは本望・・・」と奥歯をギシギシいわせながら薄ら暗い笑顔でお話しして(ホラー)受話器の向こうの名誉館長を震え上がらせてしまった記憶こそありながら、そうしてひとさまには決して見せられぬ記念館の暗部がひきずりだされてしまうほどに秋聲ファン垂涎の資料がこの夏初公開されますのでぜひぜひお運びください。あと毎度さすがの弥生美術館クオリティ、展示が純粋におもしろそうです(弥生美術館さんも当館に気を遣いに遣って「展示協力者」にクレジットしてくださいました。それはもう「お祓い」の域ですね!!)。



 


横山家推し
  2019.6.3

 1日は夜間開館でしたが、おかまいなしに11時と14時~四高展のギャラリートークをおこないました。さすがに4回目ともなるとご参加のお客さまはぐっと減り、狙ってかな? たまたまかな?? と開始時間すこし前に館内にいらっしゃるお客さまの後ろを無意味にウロチョロしてしまうのです。結局「ギャラリートーク? は?」と言われるのが怖くてお声がけをしなかったお客さまが、まさかこの解説のために広島から日帰りで来られたというとんでもない情熱のひとであったことが後々発覚し、心から驚き反省をいたしました。しかもこちらは卑屈が極まり「このあと犀星さんとかK花さんとか行かれるんですか??」と無邪気にお尋ねした瞬間、あっウチが最初って思い込んだりなんかしてイヤダ恥ずかしい!! となって「あっもう行ってこられたんですか??」と言い直しさえしてしまいました。とても涼しげなオーラでいらしてそんな情熱のひととは思いもしなかったものですから・・・。ご遠方からはるばるありがとうございました。
 また、せっかく金沢に来てくださったのにウチだけだなんて・・・! との謎のMOTTAINAI精神により、今日ね! 年にいちどの百万石まつりなんですよ! 徳田家旧主・横山家だって行列で流れてきますよ!! 当館的ハイライトなんですよ!!! とものすごく横山家を押し売りしてしまったこと、いま冷静になって申し訳なく思っております。いえ、横山家はわるくない。横山家はすばらしいお家柄。ただ、横山家をみるまでは帰れませんよ!! くらいのひどい圧を何故か徳田秋聲記念館がかけてくる、というねじれ具合・・・ 
 そういえば秋聲の四高の同級生に本多さん(市内本多町の由来)やら長(ちょう)さん(同じく長町〈ながまち〉の由来)がいらっしゃるのですが、きっと加賀八家のご出身なのでしょうね。1日をもちまして、四高の成績表を最後の一年のものに差し替えました(ただし秋聲以外はプライバシーを鑑み、お名前隠させていただいております。何卒ご許しください)。



 


福祉・秋聲・福祉
 2019.6.1

 あれよあれよと6月です。書斎のお軸を秋聲自筆の梅雨の俳句に掛け替えました。
 昨日までの3日間は、高砂大学校さん三文豪講座に出かけておりました。受講生が多いので、3日にわけて3度同じお話をさせていただくという寸法です。3回目ともなれば慣れたもの、と思いきや、事件は3日目に起こりました。司会の先生からマイクを渡され話し始めた3分後、急に別のお教室での講義がスピーカーから流れだしたのです。テーマは「今日の福祉」。いまものすごくためになるソレです。
 と、ふっと消え、あれなんだったんですかねーとお話を始めるとまた流れだすの繰り返し・・・。息を潜めて時を待ち、アッちょっと黙ったぞ・・・!? この隙に・・・!! 「秋聲は横山町生まれ!!」(超早口)みたいな椅子取りゲームを展開してみました。結局、主催者さまが大慌てで対応にあたってくださり10分くらいのロスで済みましたが、いやはやこんなハプニングってあるんですね! はじめてのことです~~とたいへん恐縮されていらした主催者さま・・・わかりますわかります。こちらも何かしら主催することが多いものですからその焦り、冷や汗、手に取るようにわかります。大丈夫です。こちとらつかの間の椅子取りゲームを楽しんでおりました。受講生のみなさまも(いま、いま行けるって!)と目くばせをくださったりなど一緒にこのハプニングを楽しまれていたようにお見受けします。焦りに焦る主催者さまを横目に(いけますかね!?)「本名はすえ『え~今日の福祉においては~・・・』「アァ~だめだったァ~~~!」「アッハッハッハ」なひと笑い。とかいいながら、自分の声が知らず他教室に流れていたらと思うとちょっと恥ずかしいですね。高砂さま、お招きありがとうございました。
 秋聲は横山町生まれですが、その地名の元となった徳田家旧主・横山家も練り歩く「百万石行列」(市祭「百万石まつり」メインイベント)が本日開催です。そしてひっそりと館も20時まで開館しております(入館は19時半まで)。
 
 



 「恋する、夢二~吉岡里帆がたどる竹久夢二、美人画の源流~」
 2019.5.25

 3日更新がないとちょっと心配になります、と言ってくださった方がありました。ありがとうございます。涙がでます。おかげさまで職員みんな元気です。
 きれいに3日間、更新をさぼってしまいました。休日やら出張やらももちろんありますが、今回の3分の2はさぼりです。そんな日だってあるじゃない、人間だもの…すえを。あんまり動きのない記念館で恐縮です。とにかく犀星展の準備三昧の日々のなから本日は展示に出しきれないこぼれ話をご紹介。昭和43年1月18日付「東京新聞」に画家の蕗谷虹児が「先輩 犀星、秋声そして夢二」と題するエッセイを寄せており、早くに亡くなった父の代わりに彼を導いてくれた標題の諸先輩方の思い出を語っています。
 犀星、秋聲とはそれぞれ装丁の件で出版社を介して知り合い、犀星さんはそのとき「新しいハンケチより、一度洗ったハンケチの方が使いよいものだよ」と言ったそう。ここだけ抜き出すとそりゃあそう、糊がね、と呑気に同意をしてしまうのですが、これは初めての相手との仕事を嫌がる犀星さん独自の表現! 出版社の主人はいやな顔をした一方、虹児は「そりゃあそう」と、かえってその後いろいろと話を聞きに犀星さん宅へ出かけるようになったと記しています。
 秋聲はいったん奥さんに居留守を使わせたくせに「装丁の打ち合わせで~す!!」と大きな声で言うと「えへん」と咳払いをして奥から出てきたというお話。はま夫人が見せたという苦笑いを想像してニヤニヤしてしまいます。 
 夢二さんは虹児に画壇の道を開いてくれた恩人。秋聲の弟子・山田順子さんとの関係が噂になったとき、心配のあまり「歯に衣着せぬ強意見」をした「生意気な若い後輩」である虹児に、夢二はやるせなげに微笑し世間の無理解についてさびしそうに語ったそう。そんな姿に「夢二さんにはめったな女を近づけてはならない!」と思った云々…かなり乱暴にはしょりました、すべては本日放送のこの番組まで持っていくため…! 石川テレビをご視聴いただけるみなさま、本日13時半からです!!(さぼるからこんなことに…!!)





いなさそうなところから
 2019.5.21

 きのう発売の「月刊金澤」さま6月号、今月も秋聲コラム載せていただいております。連載第23回のタイトルは「産みの苦しみ」。は~~もう書くネタがないや~~~との嘆き節ではなく、すでに秋聲記念館あるあるとしても知られる秋聲モチーフのグッズ化難しい問題に正面から取り組みました今回です。なにせ全集にして42巻、亡くなる直前まで作品を書き続けた秋聲のこと、ご紹介するネタはまだまだたくさんあるのです。あるのですけれども、ではその豊富な素材のなかからグッズにしようと目先を変えるとガクンと急に手薄になるのはなぜ…?? 必ず何かしらの困難が立ちはだかってくるんです、というちょっと次元の異なるお話です。
 改めまして連載を開始してからもう2年になるんですね…「金澤」編集部さまには感謝してもしきれません。こちらの寸々語は多かれ少なかれ秋聲とその周辺にご関心のある方が読んでくださっているものと思われますが、秋聲のしゅの字がでてくるなんて予想もしない素敵雑誌にひそませる秋聲のしゅの字が地域の方々にもたらす効果の大きさといったら…! ふふふ油断していらしたでしょう~~といった斜め上の角度に仕掛ける楽しみです。
 そういえば、昨日ラジオで当館のオリジナル文庫のご紹介をするのにサンプル本を館から持ち出すのをわすれて、急きょ局のお隣にある県立図書館さんで借りようと思いついたまではよかったものの(館から献本しているので)、配架されている場所がわからずけっこうな長時間閲覧室をウロウロしてしまいました。秋聲にまつわる図書、しかも自前で出している本をよそで借りるという経験がなかったのです。そのうえ郷土本は禁帯出のものが多く、借りられる棚のものを~とプリントアウトしたNDCを片手にウロウロ。最終的に思わぬ場所で発見し、アラこちらでしたか~! とふだん行きつけない道の角っこで秋聲さんと出会いました。まだお借りしたまま手元に持っていますが、記念館臭が強すぎデスクに馴染みすぎ、ついお返しするのを忘れそうです。





しゅうせいの部屋(個室) 
 2019.5.20

  ちょいと必要があって田山花袋記念文学館さんのHP中、現在開催中の「逸品―THE ONLY ONE―」展ビジュアルをまじまじ見ておりましたらいろいろと見覚えのあるものがあり、本能的にハッといたしました。秋聲が再来年生誕150年を迎えるということは同年生まれの花袋さんも同じく150年を迎えるということ(便宜的に満年齢でのカウントです)。百年前、生誕50年をともに祝われたこのおふたりは、その記念品として贈られた品々をアレコレおそろいで持っているのです。あっこの棚! この硯…! と、不思議なムズムズ感といいましょうか、何故そこに感を味わいました。この展示は5月26日(日)まで。気づけばいつも滑り込みで恐縮です。
 つい最近リニューアルされたという同館のHP、他のページもちょろちょろ見てみましたらば「かたいの部屋」なるお部屋にたどりつきました。以前にもおありだったでしょうか?? こちらではありがたいことに花袋さんら関連人物たちのテキストを読むことができます。ほうほう花袋さんによる独歩伝、花袋さんによる藤村との思い出、白鳥さんによる花袋評…自然主義の仲間たちがなにやらたのしそう…秋聲のしゅの字もそのうち登場することでしょう。アレだったら打ち込んで送りつけましょうかしら…とにこにこ拝見しながらふと上を見ると、お三方がさらに楽しげに語り合っているイラストが…! 右から花袋さん、真ん中の快活そうなのは独歩さん? 左は藤村でしょうか(ぜんぜんちがったらすみません)。アッアッ秋聲も! 秋聲もまぜてほしい…! となって、書いてみました(→)。単純な線で秋聲感をだすのはとても難しいですね。髪型がもうちょっとズルをした感じ…。
 決して暇ではないのです。犀星展の準備も満足にできておりませんし、今朝ほどはラジオに出演もさせていただきました。暇ではないのです。



 


高砂大学院講座 
 2019.5.19

 16日、高砂大学大学院の秋聲講座に出かけてまいりました。65歳以上の市民を対象に開設される高砂大学校さんを修了されて、さらに専門的に学びたい方のための学校です。歴史民俗科・花樹園芸科・文学美術科・悠々健康科のコースがあり、三文豪館をはじめ、当財団所属施設の学芸員が多く出講しています。ここ2年は大学校さんのほうにもお邪魔しているもので、開始前にご担当の先生から「生徒さんからこの講師のお話聞いたことある!」との声があがっていますよ~とお伝えいただいてドキーン! です。校のほうは三文豪がテーマですのでまるまるまったく同じお話にはなりませんが、とはいえやはりすこしでも新しいネタをと猛スピードで脳内検索をいたしました開始5分前です(べつになにも出てきやしませんでした)。
 講座の途中休憩中、前列の方から「秋聲ってなんでもかんでも書きすぎじゃない…?」とちょっと、いやけっこうネガティブなトーンによるご感想が漏れ聞こえたときにもドキーン! いえ必ずしも秋聲賛美に出かけているわけではないのですが、こちらの勝手なお話による誘導で、作品に触れる前に敬遠されてしまっては元も子もありません。そのお隣さんは秋聲に好意的なトーンで対話されていたのが救いでしたが、ちょっと方向性を誤ってしまったか…!? と10分休憩の間に今後の方向性についてああでもこうでも、とぐるぐる考え、不自然なまでの全面的秋聲フォロー態勢で後半の部を話しはじめてしまったことは申し訳なく思っております。最終的に文学は好き好きと言いながら、館職員がその入り口を狭めてはいけませんし、過剰な賛美もいけません(激しく自戒をこめて…)。
 ただ講座が終わってその日のうちに、読みたくなった、と文庫本を買いに寄ってくださった受講生がいらしたことは何よりの喜びでした。この反省は月末の大学校講座に生かすことといたします。





徳田さんと僕と吉田さんと四高
 
  2019.5.18

 先日の記事、秋聲もしばしば足を運んだ芥川龍之介の忌日「河童忌」に触れましたが、今年の「秋聲忌」は11月16日(土)となりました。いつもご命日11月18日の前倒しの土日のどちらか、とさせていただいており、もともとの主催者である石川近代文学館さんと徳田家菩提寺・静明寺さんとの調整のもとその日程を決めております。内容は未定ですが、ぜひ今からカレンダーに○をよろしくお願いいたします。
 そんな石近文さんに先日、次回企画展「徳田さんと僕」準備のためお邪魔してまいりました。いや準備もなにも、企画展のタイトルといたしました「徳田さんと僕」の自筆原稿はそもそも同館がお持ちなのです。ひとさまのご所蔵原稿をはりきって企画展タイトルにしてしまったわけです。しかも一瞬、犀星記念館の企画展かな? と思わせもするややこしさ満載。両館にはこの夏、ご迷惑をおかけいたします。これが掲載されたのは秋聲を中心とする「あらくれ会」機関誌「あらくれ」。その初出誌はかろうじて当館で所蔵しております(なお単行本収録時に『徳田秋聲氏と僕』に改題されます。かわいいのに! 変えなくていいのに!)。
 石近文さんは四高記念交流館さんと旧制四高の校舎に同居されているので、そのショップで四高の校章をあしらった手ぬぐいを見つけてまんまと購入してしまいました。帰って展示室のどこかに…と思ったのですが良い場所が見つからず、結局当館ミュージアムショップの岩波さんの『日本近代短編小説選』シリーズ下に敷いてみました。ぜんぜん四高がらみのコーナーではないのでとても手裏剣柄に見えてしまうな…とも思いながら、ご来館の際にはそんなところも見てやっていただけましたら幸いです。
 それから先日記事で吉田三郎さんのお話もしたところ、石近文さん敷地内にある四高記念碑は吉田氏による彫刻作品であることを遅ればせながら新発見! 繋がりますね~(金沢ふるさと偉人館の谷口吉郎ページ「ゆかりの地」の7番目参照)。



 

三郎から(四高経由)芥川へ
 2019.5.15

 改めまして昨日開幕、田端文士村記念館さんから室生犀星・吉田三郎生誕130年記念「竹馬の友 犀星と三郎~ふるさと金沢から田端へ~」チラシが届きました! いつもありがとうございます。いと涼やかなおふたりです。
 犀星さんと並ぶ彫刻家の吉田三郎さん。その略歴には金沢出身、石川県立工業学校入学とあり、この石川県立工業学校の創設者は納富介次郎といいまして、明治20年「金沢区工業学校」として開校した際の初代校長。そしてそのご子息・納富盤一(東芝重役)と秋聲とは四高の同級生。以上、ひどい力技でもって自分とこの四高展にお話をつなげてみました。田端さまには結局ダシに使わせていただいてしまったこと、申し訳なく思っております。
 ゴールデンウィークがあけ、通りにあんなに溢れていた人たちはみなどこに吸収されてしまったのやら、館がまるで異空間に飲み込まれてしまったかのような静けさのなかまだまだ四高展開催中です。先日、秋聲さんがとうとう数学で赤点を記録してしまった「さすがに不愉快」(本人談)な四高三年目の成績表を公開いたしました(金沢大学資料館蔵)。当時は50点未満で即落第。こんなことで留年させておんなじこと二年もやるなんて実に莫迦げたことじゃない!? それでみんなぐれちゃうんじゃない!? と、ひいては入学試験制度にまで言及して、後年この件について熱く語っていらっしゃいます(「落第の経験」)。
 まぁ、自分は学校に向いてなかったけどほかのみんなは優秀なんだよね、と紹介されるなかに前述の納富氏がおり、小倉正恒(住友総理事)がおり、八田三喜(教育者)、山崎延吉(農学者)がおり…。あんまり友達いない、とつねづね言うわりに結構いるな…と思われる面々です(友達ともちがうのかもしれません)。いっぽう、菊池寛とか久米正雄とか芥川龍之介って遠慮なく議論できる友達いっぱいいて羨ましい、とも語る秋聲。ハッ芥川…! 田端さまでは「河童忌」も開催されますよ!!





寺と音と語り
 2019.5.10

 きのうゴールデンウィーク期間の入館者数集計を見ていて、10連休中飛びぬけて多かった4日の日に、へ~すごい、この日なんかありましたっけ?? と無邪気に職員に訊きましたらば浅野川・鯉流しの日でした。アッうちの実力じゃなかった…!! と、とても恥ずかしいことになりました。なんかありましたっけ、じゃないよ…なんにもしてやしないよ…。思い返せばその日ギャラリートークもあったのですが、そちらは少数精鋭でしたものですからとても100や200に資するイベントでは…(かえすがえすもギャラリートークご参加のみなさまに心からお礼申し上げます)。
 そんなわけで次回企画展に向け外面的にはやや省エネ気味の当館ですが、当館に代わって秋聲関連のイベントを開催してくださる仏のような皆様方にこのたび出会いましたのでご紹介を申し上げます。
 6月9日(日)14時半~、ひがし茶屋街に隣接する円長寺さんにて、東山「響会」さんの主催により「寺と音と語り」なるイベントが開催されます。中で秋聲の短編小説「ファイヤ・ガン」が朗読されるとのこと! その他、マリンバの連弾もあり(あるいは朗読と一緒に演奏されるのかも…)。毎年どこかしらのお寺さんを舞台に開催しているイベントだとのことで、まだ公式ホームページには今年の概要が上がっていないようですが(10日11時現在)チラシは当館のほうに届けていただいております(クリックでPDF開きます→)。
 「寺と音と語り」とあるメインテーマのうえには「御輪堂・マリンバ・秋聲」。なんだかすごいコラボレーションに秋聲先生まぜてもらいましたね~! ととても愉快な気持ちになりました。また円長寺さんと秋聲とのゆかりについてまですり込んでいただいており、お心遣いに感謝感謝。こうして思わぬところで触れる秋聲、きっと新しい表情を見せてくださることでしょう。





館外イベントのお知らせ
 2019.5.8

 館主催のイベント、館外のイベント、だんだんとそのスケジュールが職員ですらゴチャゴチャになって把握できなくなってまいりましたので、どなたでもご参加いただけるものに限り、他館さんの講演スケジュール等もイベントページに追加してみました。
 西田幾多郎記念哲学館さんの当館館長出講による四高関連講演は以前にもお知らせいたしましたとおりです(同館の西田先生ゆかりのフルーツサンドが話題になっていますね!)。
 続く7月にはなんと田端文士村記念館さんで当館館長が講演いたします! テーマは完全に犀星さんですが、この講演後間もなく当館の犀星展が始まりますのでそれはもうほぼ当館との共催と言って過言でなし…(田端さまと犀星館さまには全力でお詫びする準備ができています)。チラシの上田館長と犀星さんのシンクロ率がすごいですね! さすがに秋聲のしゅの字は出てこないかもしれませんが(いや、そこをなんとかねじ込んでいただきましょう)せめて当日、当館の犀星展チラシをもぐりこませていただけるよう、今は粛々とその制作にかかるのみです。
 また、9月には毎年恒例となりましたご近所・尾張町老舗交流館さんで秋聲講座をさせていただきます。とくに書き添えませんでしたが、6月15日にはシリーズで某K記念館さんによるK花講座、11月16日には犀星記念館さんによる犀星講座もございます。最終回となる第10回、来年3月21日には金沢ふるさと偉人館さんによる高峰譲吉講座も。文学・歴史・音楽など多岐にわたる本講座の詳細は尾張町老舗交流館さんHPでご確認ください。なお、いずれも会場は当館ではございません。お申し込み・お問い合わせ等も、各主催者さままでお願いいたします。もしまかりまちがって当館にお電話くださったりなどすると、混乱した職員によりなんでもかんでも円長寺さんに誘導されてしまうことになりかねません(念のため、その講演もいったん当館集合です!)。





カップの出番
  2019.5.6

 さいきんパソコンを替えましたら、長時間作業をしていると定期的に右下にヌゥッとコーヒーカップマークと「もう長いこと作業しているからそろそろ休んだら?」(意訳)とのメッセージが出てくるようになりました。また「ミスタッチ増えてるよ。そろそろ休んだら?」といったバリエーションもあり。最初のころはなにコレすごい!! と感動していたものですが、だんだん慣れてくるとそれが顔を出してもスッと無視するようになり、さらに繰り返されると「まったく、この子は言っても聞かないんだから…」と悟ったパソコン側がメッセージなしでコーヒーカップマークをだけ右下にヌッと差し出してくるようになり、その駆け引きがおもしろくて今ではヌッとカップだけ出てくるのをちょっと楽しみにしています。無言の圧とはこういうことを言うのでしょう。と書いているそばから現れました。いやいやお前さんのことを書いているんだよ…という気持ちでそれを目の端で確認して無視しました(やがて消えます)。

 秋聲先生の執筆の息抜きはダンスでしょうか。お夜食は火鉢で焼いたトーストです(これは徳田家のティーカップ→)。それをミルクにつけて召し上がったりしているので、いつか黴フェス(仮称)を開催することがあれば、ぜひ秋聲メニューとしてフレンチトーストなど提供したいな…と常々そんな夢を見たりしています。さ来年は秋聲生誕150年ですからどこかこの企画を実現させてくださる素敵カフェさんおありじゃないでしょうか。秋星りんごジャムを添えたらもっと秋聲セットですね! 秋星りんごサイダーだってありますよ! 困るとすぐに石川県産りんごの「秋星」(秋聲にちなむ)でなんとかしようとしてしまうところはありながら、そういえば以前入ったパンケーキ屋さんに秋星パンケーキがあったので注文すると、ついてきた説明書きにローマ字で「Akihoshi」と併記されていました。そうなってくると秋聲不在。こんな存在の消され方もあるんですね…こりゃ新しいや…。
 「ま、ちょっとお茶でも」と、今こそカップマークに出てきてほしいところです(出てきた)。




室生さんと僕
 2019.5.4

 本日みどりの日、四高展のギャラリートークをおこないました。表では浅野川・鯉流しが開催され朝からどんどこ人が出ているなか、当館内に入って解説を聞いてくださった変わり者(褒め言葉)のみなさま方に心よりお礼申し上げます。しかも解説から帰ると事務室に餅ふたつ…。常連のお客さまとお世話になっているご近所の方とが、川原でついたつきたてのお餅を差し入れてくださったのでした。別々の方からうまい具合にあんこときなこ。つくづく人と甘味と環境に恵まれた館でございます。お心遣いありがとうございます。ごちそうさまです。
 口は四高展、しかし頭は犀星展。中では次回展「徳田さんと僕」準備を鋭意進めております。今回は徳田家で大切にされている犀星さんからのお手紙数十通を一挙公開! 先日東京の徳田名誉館長より「ご所望の書簡、すべて揃っています」とご連絡をいただき、ついでに献呈署名本もでてきた、と嬉しいお知らせまでついて、おかげさまで初公開を含むこれら貴重な品々を惜しげもなく展示させていただくことになるでしょう。そんなお二人の醸す当時の空気にどっぷり浸かった脳でもって、今ほど事務書類を作成しておりましたらこんなことに→
 
 「室生さんと僕」。印刷してから気がつきました。うわうわ、徳田さんと室生さんがイリュージョン。いったい何がどうなってこうなったのかちょっとわかりかねますが、気分的に秋聲先生が一気に幼くなってしまった感がありますね。先日の太宰よろしく(4月27日記事参照)犀星さんが今年生誕130年ならもうすぐ生誕150年を迎える秋聲との年齢差およそ20歳。アレアレ、こんな変なことになっちゃいましたァ~~とのちょっとした日々のネタ提供と見せかけて、何かにつけ「もうすぐ秋聲生誕150年」をすり込ませていく高等技術を(以下略)。

 



お詫びとご報告
  2019.5.2

 四高展のガイドペーパーが一時的にフルカラーになりました!! このたび事務室のプリンターをより燃費のよいものと取り替えることになり、それまでチビチビ節約していたカラーインクをぜんぶ使いきってお別れしましょう~とのことで急にカラープリントに! これまでも、いや青果さんのあの心身に絡みつくマゼンタはぜったいに表現せねばなりません! とかいう強いこだわりがあるときには一部カラーにしたこともありましたが、基本慎ましやかな館ですから今回の若草色は~…いえいいんですいいんですモノクロでじゅうぶん伝わります~…とべつだんダメとも言われていないのに先んじて節約を敢行してしまう貧乏体質…。そんなわけでドキドキしながら俄にフルカラー印刷をかけております。すでにご来館くださったみなさまにはモノクロのものを配布しており恐縮です。ただ内容は変わりません。ちょっとリッチな見栄えになって、ちょっと資料の風合いが伝わりやすくなった、それだけのこと(いや、それはけっこう…)。
 そうして毎回変わる展示のテーマカラー、今回の若草色にご反応くださったのがラジオかなざわパーソナリティーの加藤美杉さん。先日、四高展についてのラジオ収録に来ていただきました。こちらの暑苦しいばかりの情熱をいつも優しく受け止め、短時間で展示の肝を噛み分け、同じだけの情熱でもって返してくださるたいへんできまさるお方です(「できまさる」は金沢弁です。とてもデキル人、という意味です)。若草コンセプトにつきましてもきちんと説明の機会を与えてくださった番組「ちょっときいてたいま」は今月11日(土)と18日(土)の10時~10時半、二回に分けて放送予定です。そのころには春のまどろみも思わせるヌルッとした黄緑からもうすこしつややかな新緑の季節になっていますね! ちなみに秋聲先生のお好きな色は淡紅色。「ときいろ(鴇色・朱鷺色)」とルビが振られることもあります、要はピンクです。





浅野川・鯉流し
 2019.4.30

 今朝いつもお世話になっている方から「今度は土曜日でしたね? アレ」と言われて「アレ? なんかありましたっけ? 」夜間開館だったかな? とかなんとか思いながら手帳を確認しましたらきちんと書いてありました。4日(土・祝)、四高展三回目のギャラリートークです(なお次の夜間開館は2日です)。大型連休のふわふわした感じにかまけてすっかり忘れておりました。ちなみに館職員、完全シフト制で動いているためあらかじめ予定が決めにくく、しかしギャラリートークの日であれば学芸員絶対出勤! との法則のもとこの日に一部展示替えを入れることが多いところ、来月ばかりはなんとなく大型連休が終わるのを待って中の資料の差し替えあり。すなわち6日(月・振)ののち、金沢大学資料館さん蔵、秋聲四高二年目の成績表と、三年目の成績表を差し替え予定です。また今回は加えて犀星さんの書簡(石川近代文学館蔵)を別バーションの書簡(同左)に差し替え、桐生悠々の原稿(金沢ふるさと偉人館蔵)を秋聲最初期の日記「無著庵日記」(石近文蔵)に差し替え、そして日置謙筆 悠々宛書簡(金沢ふるさと偉人館蔵)を完全に引っ込める、というちょこちょこっとした入れ替えがございます。前半みたよ、という方も改めて間違い探しをしにきてみてください。
 もうひとつちなみに、4日みどりの日には浅野川で「浅野川・鯉流し」が開催されます(去年のようす→)。友禅流しで知られる浅野川にこの日は鯉のぼりが泳ぎます(残念なことに去年、浅野川で友禅流しをする最後のおひとりであった職人さんが、お着物の注文がなくなったことによりついに辞めてしまわれました…)。また当館前の梅ノ橋からもたくさんの鯉のぼりがつるされるはず…。
 イベント情報みにゆきましたら当日はもちつきとか屋台とかもあるようですよ! もし時間的に重なるようならギャラリートーク中断してもかまいません。年に一度のこの金沢ならではのレアなイベントをこそお楽しみいただきたく、晴れるといいですね!





太宰治生誕110年
  2019.4.27

 もしやきのうの記事中のお客さまからのご指摘、同じく北村薫先生の『太宰治の辞書』(新潮社)のほうをお読みになってのことかもしれません。新著『中野のお父さんは謎を解くか』(文藝春秋)にも当館名出していただいておりますが『太宰治の辞書』にも「女生徒」の章に当館名が登場してまいります(2015年1月24日・4月12日記事参照)。と、もし間違ってたら申し訳ないので念のため補足しておきますねぇぇ~~みたいな顔をしながら、再び自慢をすり込ませるという高等技術をいまみなさまにご披露しております。クッ…人間とはかくも浅ましい生き物…ッ!

 さいきん続々と太宰の自筆新発見の報が世間を騒がせていますね。発見された「お伽草子」完全原稿全387枚は現在、日本近代文学館さんで開催中の生誕110年記念展「太宰治 創作の舞台裏から」で公開されているとか。また文藝春秋新社の佐佐木茂索社長に宛てた献呈署名本『晩年』には署名のほか何やらたくさん書き添えられているというこれまた興味深い資料です。こちらは本日より山梨県立文学館さんで開催される開館30周年記念特設展「太宰治 生誕110年―作家をめぐる物語」で初公開とのこと(いずれも実際の展示状況は両館にご確認ください)。そうか太宰さんは今年生誕110年にあたるのでした。すなわちもうすぐ生誕150年を迎える秋聲とは40歳ほどちがうことになります(秋聲の年齢カウントややこしい問題、とりあえずこの記念イヤーにつきましては満年齢で数えることとしております)。
 秋聲と太宰、生前にあまり接点といってないのですが、昭和15年の秋聲日記に以下のような記述あり。「帰つてから太宰治の『女生徒』といふ単(ママ)篇集を読む。俳句か散文詩を読むやう。スタイリストである。スタイルは却々新しい。」あらあら秋聲先生、件の「女生徒」をお読みになっていたんですね! そしてお褒めになっていらっしゃる! 太宰さんへのお祝いの代わりにこの文章、こちらに置いてゆきます。





北村薫『中野のお父さんは謎を解くか』
 2019.4.26

 不意に舞い込む北村薫先生からのお届け物を当館ではお年玉と呼んでおります。この新年度にもうれしいお年玉が館に届きました。文藝春秋さまより北村薫著『中野のお父さんは謎を解くか』、単行本の発売です!! 
 思い起こせば二年前のきのう、「『オール讀物』5月号」と題してその初出についてテンションも高めにご紹介をしておりました。同誌に「中野のお父さん」シリーズの一作として発表されました「火鉢は飛び越えられたのか」、まさにまさに秋聲と某K花さんの通称「火鉢案件」についてガッツリ考察されたこちらが収録された単行本です。奇しくも当館かつての企画展「泉鏡花といふ男」チラシとおんなじ緑色の帯には「泉鏡花が秋声を殴った理由?」と書かれていてこれだけでも気になる気になる・・・! 北村先生、文藝春秋さま、当館のことまで気にかけていただきありがとうございました。ご紹介とお礼が遅くなり申し訳ございません。うれしいがすぎるとヒトとはいったん寝かせてしまう生き物・・・。
 ずっとデスクの左側に置いてことあるごとに視界に入れてはニヤニヤする、そんな十数日を送っておりましたところ、きのう受付さんから「いまお客さまから、北村薫先生の本に出てた館ですよね?って言われましたよ~」と報告を受け、アッこれですね!?? とサッと左手がすぐに届く、そんな距離感を保ちつづけていた十数日です。お客さまからリアクションをいただけるのならばこんなガッチリ手元に確保せずさっさと表に出せばよかった・・・とかなんとか、いま反省の風を装ってしれっと自慢を入れ込みましてございます。そう、秋聲記念館のしゅの字、この御本にクレジットをいただいているのです! いやらしい感じのお知らせの仕方をいたしましたお許しください。うれしいが過ぎるとヒトとは心のなかに仕舞っておけない生き物・・・!!
 同書最終章の「菊池寛はアメリカなのか」も気になる気になる・・・





開館30周年記念
 2019.4.21

 きのう犀星さん生誕130年のお話をいたしまして、現在の四高展でも石川近代文学館ご所蔵の犀星さんのお手紙、前後期通して計3通を展示させていただいております。その前に犀星さんの資料をお出ししたのはいつだろう? と振り返ればちょうど去年の今ごろ開催した「秋聲をめぐる人々」展でした。実は本来「四高と秋聲」展を開催するはずだったのが、ゲーム「文豪とアルケミスト」さんとのタイアップ企画が決まり、急遽その枠にねじ込んだ企画です。四高もいいけど、いいんだけど、せっかくならば文豪たちの関係性がわかるものを…! と企画を差し替えた結果、ずるっと一年ずれてしまった四高展(そんな乱暴ができるときとできないときがございます…)。とはいえ四高の後身となる金沢大学の資料を保管されている金沢大学資料館さんが今年開館30周年という記念イヤーにあたりますので、これでよかったのかもしれません。と、言いつつあんまりそれを表に出せていないな! 現状、心のなかだけの祭りだな!! ときのう資料館さんに後期の秋聲成績表をお借りする準備をしながら思いいたったので慌ててこの記事を書いております(心のなかではハッピを着ています)。いつもお世話になっております。ほんとうにおめでとうございます。また近々うかがいます。
 ちなみに資料館さんが併設されている金沢大学附属中央図書館に入って天井を見上げると、四高の星の校章がババーン! とあしらわれていてとってもかっこいいですよ! 四高の星の校章、パネル展示させていただいている当時の校帽にもある真ん中のソレ(←)(現物は四高記念文化交流館で常設展示されていますのでよくよくご覧になりたい方はそちらへ!)。
 明治20年代、創設当時の四高の資料がまとめて残っているというのは奇跡的なこと。現在、資料館さんの資料の一部が東京でも公開されているそうです。



 

徳田さんと僕たち
  2019.4.20

  昨日イベントページを更新したついでに同ページの下のほう、今後のイベントスケジュールをちまっと掲載してみました。先日お客さまとお話ししていて、とにかく日程だけでもいいから早く告知を…! と、切なるご要望をいただきましたもので、あぁそんなふうにじりじりしてくださっている方がいらっしゃるのだ…と今更ながらに胸うたれ、中身をはっきりお伝えできぬまま申し訳なくはありますが、日付と概要だけざっくり小出しにしてゆくことにいたしました。おそらく一度出したものを消すことはございませんが、すでに掲載しているイベントとイベントの間に急に新イベントをねじこんできたりなど、これで全部と思わせておいてあっフェイント…! となる場合は予想され…ご覧になる方にとってよいのかわるいのかどうなのか、模索中ながらいま出来ることからさぐりさぐり…。
 さて、そんなふわふわとした未来予想図のなかにひときわ輝く次回の企画展告知、室生犀星生誕130年記念展「徳田さんと僕」。手前みそながらかわいらしいタイトルですね! 犀星さんの随筆タイトルからそのままお借りいたしました。その冠のとおり今年8月に130歳を迎える犀星さん。生前秋聲にとても良くしてくださった犀星さんの記念の年ですから当館といたしましても盛大にお祝いしたく、徳田家所蔵の貴重な犀星関連資料をざかざか公開させていただく予定です。
 思えば当館で犀星展を開催したのはもう12年も前のこと。え、干支が一周!? そうそう犀星さんたら丑年なんですよ! 秋聲の未年と向かい干支なんですよ! どうりで相性がいいはずさ…!(某K花さんの酉年と、紅葉先生の卯年も向かい干支。どうりで…!)

 犀星記念館さんでみた過去50回の企画展一覧(許可を得て撮影させていただきました!)→ 
 壮観ですね! 当館の犀星展は第47回になります。 50回になったらきっと真似します。





記念講演第2弾のお知らせ
 2019.4.19

 イベントページにアップいたしました6月29日の講演会! 現在開催中の四高展にちなみ、秋聲以外の四高出身者を広くご紹介いただいた金沢ふるさと偉人館・増山学芸員さんのご講演が第一弾、第二弾といたしましてがっつり秋聲について解説する今度の企画です(もうちょっと忘れかけてきておりますが今年の館のテーマは「バランス」です)。当館上田正行館長が「四高と秋聲―『光を追うて』というテキスト」と題してお話しいたします。また面白いのが今回の会場、秋聲記念館を飛び出しご近所円長寺さんのご本堂をお借りすることになりました! それもこれも『光を追うて』に円長寺さんが登場するというご縁によるもの。先月の文学散歩でその境内にはお邪魔いたしましたが秋聲一味、ついにご本堂にまで進出です!
 そしてわすれないためにこちらに書いておきましょう。学生時代、末雄くん(秋聲の本名)と仲良しだった円長寺お向かいの後藤くん。後藤くんから借りた本には円長寺さん境内にある大銀杏の葉っぱがはさまっていたという珍しく素敵なエピソードを館にて再現すべく、今年の秋にはそのイチョウの葉っぱをいっぱい拾わせてもらうんだい…!

(←画像は「人力車 浪漫屋」さんご提供。葉っぱ掃除を手伝われている様子です)
 
 それを自伝的小説『光を追うて』(販売物)のその思い出が記されたページにそっとはさんでおいたらどうでしょうか? いやがらせと思われますか?? しっかり押し花状に汁気を抜いて育てておくか、パウチしないとアレかもしれませんね。とりあえず秋に拾う作業だけ忘れないようにしないことには、またも大後悔のはげぼうずです。


 


徳田牧場その後
 2019.4.18

 発行したばかりの「夢香山」11号をスウェーデンのアンカルクローナ氏にお送りするため慣れぬエアメールにドギマギしながら郵便局さんのお世話になっている間に、お客さまから牛柄のクッキーを差し入れしていただいたとのこと帰って受付さんから聞きました。なぜ牛柄か…朝の連続ドラマの影響でいま流行っているのかしら…などとのんきに思っておりましたら、添えられたお手紙に、秋聲の未年の向かい干支が丑だから、と記されていて驚きました。しかもそれに触れた昔の寸々語「徳田牧場」(←記事タイトルです)を読んでくだすってのこと…あらあらもう3年前ですよ…! お心遣いありがとうございます。今後は身ひとつ、身ひとつでどうか…!
 とかなんとか言いながら、先日もお客さまより北海道は「札幌農学校」なるお菓子を頂戴していたのでした。札幌農学校、現在の北海道大学。なんだか急に土と緑あふるる当館のお菓子棚です(ありがとうございます、しかし今度は身ひとつで…!)。
 さて農学校と聞いて思い出されるのが宮沢賢治。賢治さんのお勤め先は岩手の花巻農学校ですね。およそ繋がりそうもない賢治と秋聲ですが(同じ本郷住み仲間ではあります)、現在の四高展には賢治のけの字が登場いたします。四高の卒業生第一号、木村栄(ひさし)のコーナーで(金沢ふるさと偉人館にある胸像→)、金沢出身の天文学者にして岩手の水沢緯度観測所(現水沢VLBI観測所)初代所長をつとめた木村の姿が、賢治の代表作『風野又三郎』(初期形態)に登場するというもの。テニスに興じる木村博士というのが木村栄のことで、しばしばこの観測所の見学に訪れた賢治がそれを目撃していたようです。
 余談ながら、先月の偉人館・増山学芸員さんのご講演の中で、木村栄をなにか讃えたい一心で新たに作ってしまったのが文化勲章、というお話が心に残りました。讃えたい一心で賞をつくる…えっ菊池寛賞のお話でしたか?





「夢香山」第11号
 2019.4.16

 年刊の館報「夢香山」最新号を発行いたしました! 当館ロビーに設置するほか、現在イベント登録者のみなさま、各公共施設への発送準備を進めております。ちなみにきのうMROラジオに出演させていただき、犀星さんの犬・猫・魚、某K花さんの兎に比べて秋聲先生ったら全般的に動物がおきらいなもんだから~というお話をさせていただきました。犀星記念館さんの館報は「魚眠洞通信」(魚眠洞は犀星さんの俳号)、某K記念館さんは「雪うさぎ」ときて当館は「夢香山」。山、です。=卯辰山。どうしても具体的な動物を生息させることのできない秋聲界隈です。

 さて人を描き、人に支えられる秋聲界隈。今号の巻頭記事には、スウェーデンからハンス・ヨラン・アンカルクローナ氏に特別寄稿をいただきました。ご存じ、秋聲作品『縮図』『仮装人物』『黴』の3冊をスウェーデン語訳してくださった当館にとっては神様のようなお方! 当初は巻頭1ページを予定していたところ、アンカルクローナさんのこの翻訳事業に対する思いが溢れに溢れ、その倍の分量の原稿をちょうだいすることができました。「長くなっちゃった。適当に編集してください!」(英語)とご丁寧に書き添えてくださいましたが本文を読むにつけ、いやいやこの文章のどこを切ることができましょうか、こんな熱量の素晴らしいテキスト、久しぶりに読みました…! と打ち震えるほどの感動巨編!! 秋聲作品を翻訳するその旅路のいかに険しかったことか、そしてそれを乗り越えた者だけに与えられる新しい発見に満ちあふれた秋聲論、ノーカットで掲載させていただきました。PDFでも公開いたしましたので、ぜひご一読願います。また当館館長による新発見の「台湾愛国婦人」をめぐる論考、開館当時のスタッフによる愛いっぱいの回顧録、「秋聲の戦争」展でお借りして初公開した小林修先生ご所蔵資料「学芸自由同盟ニュース」のご紹介などなど、あっちからこっちから、8ページにギュギュッと詰め込みました。





図書館に感謝を
 2019.4.13

 そういえば先日、金沢市立玉川図書館さんを訪れた際に撮らせていただいた写真です。郷土の棚の三文豪コーナーに、三館学芸員による手書きポップを掲示していただいている件(撮影許可をいただきました→)。ご依頼いただいたのは昨秋でしたでしょうか、すっかりご報告が遅くなったうえ、この写真も実は一ヶ月前のもの。四高展の準備で秋聲が在学時代にケンカしてしまったという三宅少太郎先生の資料をお借りするため、隣接する近世史料館さんにお邪魔したときにふと思い出してその棚を見にうかがった3月初旬の様子です(お借りした三宅先生資料は現在展示中です)。
 当館担当分には館のオリジナル文庫から『爛』、『秋聲少年少女小説集』、『新世帯』の3冊を選び、ヨレヨレの手書きで不慣れなポップを書かせていただきました。その効果のほどはともかくとして、お邪魔した際にちょうど秋聲棚上段が空っぽだったことに記念館一味のテンションはうなぎのぼりです。その後すぐに、いや待てよ? 置くべき図書がなかったのかな…? といつものネガティブもまた発揮してしまいましたが、ご担当者さまより「秋聲さんとこちょうどみんな貸し出し中なんですよ~」とうかがい、いったん降りていったうなぎが引き返す引き返す! あぁありがたいこと! もはやあんまり書店さんで売っていない秋聲本を自由に読めるうれしさったら! いつもわりと図書館さんには感謝しながら生きているほうですが、その日の感謝は3割増しにて、ほくほくしながら近世史料館さんに向かった一ヶ月前の記憶です。
 犀星さん、某K花さんとこのポップもそれぞれ性格が出ていておもしろいので、図書館ご利用の際にはぜひ覗いてみてください(いつまで掲示されているものか…もうなかったらすみません…)。
 ちなみに山田美妙の文学論をめぐって秋聲がケンカした相手の三宅先生をモデルにしたといわれるのが後年の短編小説「青柳先生」。展示中の初出誌は徳田家本です。





「向山の春」
  2019.4.11

 4月6日、第9回「桜の季節のおもてなし」、茶道裏千家 井奈宗孝社中のみなさまと米沢茶店さん、吉はしさん、そして多くの参加者のみなさまのおかげさまで無事終了することができました。いつもありがとうございます。
 当日は見事な晴天! そして予想に反するほぼ満開! こんな年は滅多にないというほどに恵まれた1日でした。お菓子の御銘は「向山の春」。秋聲が愛した卯辰山の別称であり自伝小説『光を追うて』の主人公の名でもある向山が晴れて春を迎えました。どこをとってもサクラサクといった風情で、黒文字を入れるまえにお菓子の写真を撮るのをわすれた以外は百点満点! 来年はいよいよ第10回、またこんな春であるといいですね。
 そして翌7日、いつも通りの展示解説をおこないまして、そのご挨拶をしながら思い出しましたのがこの日が開館記念日であったこと! 14周年という中途半端さのためすっかりうっかりしておりましたが、めでたいには違いありません。わすれてましたけどきょう開館記念日でしたぁ~とフニャフニャお客さまにお伝えしましたらなんとみなさまお優しい…拍手で迎えてくださいました。みなさま本当にありがとうございます…! 不甲斐ない記念館ですみません…!!
 展示室で起きた拍手といえば、いつかの人力車「秋声号」誕生のニュースですが、開館記念日のその日にお客さまから「秋声号を見ました!!」と目撃情報をいただきました。実は当館も先月の文学散歩の際、詰め所となっている円長寺さん前で「あそこにいるの秋声号ですよ!!」と参加者の方に教えていただきその休憩風景を目撃したのですが、興奮のあまり写真がぶれっぶれ…(止まっているのに)。
 その後、名誉館長(秋聲令孫)と通りかかる人力車を見るたびアッとなって名前の刻まれたその背中にぐるんっと回り込んで「…鏡花号でしたね」「…ね」となること二度三度…なんだい幻の生物なのかい…? かわいいあの子はいったいどこを走っているんだい…?





山田順子×夢二館・秋聲館
 2019.4.6

 先日の真山青果資料返却の旅のお供に超多忙の金沢湯涌夢二館学芸員さんを強いて動員いたしましたのは夢二が青果作品の挿絵を手がけていたりとのご縁のためともうひとつ、無事返却が済んだ暁に、田端文士村記念館さんの企画展をぜひ夢二・秋聲のナカグロ再現でもって訪問させていただきたかったため…!(2月27日記事参照) おかげさまでつつがなく返却を終え、真山蘭里氏と星槎グループ、新制作座のみなさまにあたたかくお見送りいただきながら、このたび田端を訪問してまいりました。
 この企画展に夢二(館)と秋聲(館)が手を携えてやってくる…そんな面白いことがあるでしょうか。山田順子さんをめぐって腹を立てたり知らんぷりしてみたり気まずい思いをしたりしたこのふたり。男を踏み台にする悪女のように言われた順子ですが、女性が文学で生きていくことの難しかった時代、なりふり構わず突き進むその姿を秋聲はある意味で純粋なものと捉えていたに違いありません。彼らが結婚するのしないの、家出したのしないのと展示される当時の新聞記事は醜聞にはちがいありませんけれども、これを経て秋聲が新たな執筆の境地に至ったこともまた事実。
 彼ら三人展のあとに芥川と文ちゃんのコーナーを見るとそのピュアラブっぷりに心が震えますし、金沢ゆかりの陶芸家、板谷波山・まる夫妻の深い夫婦愛には知らず涙が…いろいろな愛の形に触れることができました(夢二館ともケンカしなかったです!)。
 また記念館さんのご厚意により、急きょ界隈の文学散歩にもつれていっていただき(ヒー! 贅沢!)、ここが秋聲も訪れた芥川旧居跡! ここが夢二(お葉)旧居跡! と自分たちだけでは絶対迷子になる入り組んだ路地を効率的に回らせていただきました(犀星さんちの庭石→)。中でも驚きだったのがご案内くださった田端学芸員さんと夢二・秋聲学芸員の三人ともがそれぞれ異なる学校ながら犀星さん作詞の校歌育ちであったこと…犀星さんすっご…とまさに旧居跡にてその偉業に思いを馳せました。記念館さんご親切にほんとうにありがとうございました! 展示は5月6日まで!





春と学校
   2019.4.5

 4月にもなって雪が降った金沢です。「秋聲のみち」沿いの桜も、今年はすこし遅め…3割ほど開花してはおりますが、明日のお茶会までに満開はむずかしいかもしれません。そんな年もあるさ…毎年変わらず咲いてくれるだけでありがたいのさ…とかなんとか思いながら、それより問題なのはアレッ!? 梅ノ橋の工事、終わらないんじゃない…!? 数週間前から何か橋脚を修理しているっぽい梅ノ橋。なんとなく勝手にお茶会前までには終わる気がしておりましたが、アレッ終わらないんじゃ…!? とようやく気がつきました前日です。補強でしょうか、こればかりは仕方のないこと。安全第一。そんな工事のひとの頑張りをも含めて、愛されている浅野川の光景をお楽しみいただけましたら幸いです。先日、お茶の井奈先生より今年のお茶菓子の見本が届きまして(幻の名店「吉はし」製)、四高展の黄緑と桜のピンクがあいまっていい感じ。その御銘も四高展にちなんでまたいい感じ(明日、お披露目です!)。
 さて、春・学校・秋聲ときたらご紹介をせねばならないのがこちらの企画! 岡山の閑谷学校資料館さんにて春季特別展「白鳥の春―備前・閑谷からの出発(たびだち)―」が開催されております! 白鳥すなわち正宗白鳥、秋聲といちばんの仲良し作家です。当館が四高と秋聲なら、資料館さんでは閑谷学校と白鳥、なんだか共鳴するものがあるような気がいたしますね、ウフフ(前者は旧制高校、後者は旧制中学ですね)。ご存じ白鳥さんの生誕140年という今年ですから、これは大いに祝福をしてさしあげねばなりません。ご協力クレジットに当館名を入れていただいておりますように、当館からは白鳥さんの手になる秋聲お葬儀における弔辞の画像を提供させていただきました(徳田家蔵)。実物でこそないですけれども、これはぜひ活字でなくご覧いただきたいもの。えっ何故って? 見ればわかる、見ればわかるさ…





新元号
  2019.4.3

 1日、あたらしい元号が発表されました。と、思い出されるのが国府犀東(→)秋聲の四高の同級生です。元号「大正」の起草者として知られる漢学者で、同じく四高の先輩にあたる井上友一の手引きにより内務省に入省。のち宮内省御用掛。
 秋聲は四高時代から漢文に親しんでいたという犀東の姿を語るほか、彼と自分とが飛び抜けて音楽の成績がよかったのだとも回想しています。そのくだりがとても面白かったもので、スペースの都合もあり今回の展示では犀東自身の業績についてほとんど触れず、そんな他愛のない思い出話のご紹介に終始してしまいました。とはいえ、アッ秋聲ってば歌お得意なの…! という驚きとともに四高初代校長・柏田盛文の方針により音楽の授業があった、というくだりなども当時の証言として貴重なように思われます。偉くなった後の紹介は今後どこかで触れる機会もございましょう。今回ばかりは学生らしいエピソードに特化するのもまた一興。ちなみに1日当館に届けられた新聞号外には、歴代の元号エピソードのうちに犀東の名前も載っていました。永久保存で! と紙面に付箋を貼りました(あとでとります。一時的なアレです)。
 また1日には今年度の博物館実習の受付も開始。今年度も当館が受付窓口となっており(実際の実習を担当するのは当財団所属十数施設による持ち回り。事務方を当館が担当しているだけですので、当館で実習をするとは限りません)、あたらしくファイルを作りながら、実習をする8月はもう平成じゃないか…令和か…と「令和元年」と打ちこもうとしてなんとなく気恥ずかしくなってモゾモゾ…。「R1」と打ち込みながらまたモゾモゾ…。ついお隣の職員に、ねえねえもう令和って使っちゃいました…と要らぬご報告までしてしまったのです。令和2年にはもう慣れっこになっているのでしょうか。



 


4つながり
  2019.4.1

 3月のうちにはねじこみきれませんでした30日(土)の記念講演です。四高展にあわせた講演会だものですから4つながりということで、4月のご報告となってしまってもなんとなく許されるような気がしております。金沢ふるさと偉人館の増山学芸員さんにお越しいただき、秋聲の先輩後輩にあたる四高出身の偉人たちについてご解説をいただきました。当館ではどうしても秋聲に偏った展示、交友関係のご紹介になってしまうところ、さすがの偉人館さんの人脈といいましょうか、手広い手広い…あの会場のなかでいちばん学ばせていただいてしまった記念館です。増山学芸員さんありがとうございました。
 また当日配布いたしました西田幾多郎記念哲学館さんのチラシ、開催中の企画展「西田幾多郎の就活」! どストレートなタイトルに思わず笑ってしまいましたが(すみません)、これはなかなか若人たちに響きそうな、誰しもがなんとなくひとごとと思われぬ、気になりすぎるテーマです。金沢ゆかりの偉人のひとりとして偉人館さんでも紹介されているあの大哲学者・西田の就職活動だなんて…! 四高、合わなかったんですものね…でも先生になって帰ってくるんですものね(四高依願退学許可書とか四高嘱託講師勤務辞令書の展示が…!)…ただ思うところはおありだったよう。チラシの解説を読むだけでもなかなか不運なその道行きがたいへん興味深いところです。
 5月18日(土)には、当館上田館長による関連講座「娘の死と『国文学史講話』 西田幾多郎と藤岡作太郎の交友」も同館にて開催される予定です。四高のご縁により当館でも全力をあげて後援させていただきたく、ぜひぜひお運びいただけましたら幸いです。館長には先日「講演で秋聲のしゅの字、無理矢理ねじこんできてください」とお願いしておきました。 





3月のうちに
 2019.3.31

 本日3月31日、平成30年度の最終日。怒濤の3月振り返りをいたしたく存じます。
 まずは19日の「秋聲とお座敷あそび」。うまいこと会場となった『光を追うて』コーナーの竹が演目の「竹林」と響き合い、急に素敵空間となりましたこと、ご出演くださった亜希さん、福太郎さん、唐子さん、あか利さん、小梅さんに深く感謝申し上げます。また「金比羅船々」に乗せたおあそびもお客さまを交えてたいへんな賑わいに! ご参加のみなさま、ありがとうございました。
 そして21日、東京から徳田章子名誉館長も駆けつけ、文学散歩「第2回踊り場参り」を開催いたしました。途中ざっと来た雨におびえつつ、終わり頃には暑いくらいのお天気になったこの日。四高展にでてくる円長寺さんから、四高の先輩である憲法学者・清水澄生家、水野ダンスホール跡から秋聲の通った戎座跡、七つ橋渡りの終着地点・聞善寺さんではご住職からお話をいただき、寺宝の押絵を拝観して秋聲次兄・順太郎旧宅、現「まちの踊り場」へ。この日は特別にお部屋の中まで見学をさせていただきました。
 「秋聲以外の話、しませんから」と謎の宣言を残して秋聲以外の話題になるとすぐにプイッとする学芸員に代わり、あらゆる引き出しを惜しみなくあけて随所でご解説くださったガイドの福岡さん、またしんがりをつとめ、参加者全員の無事を一瞬たりとも気を抜かず見守ってくださった安川さんにはありがとうでは足りないくらい…。ご協力くださった関係各位に足を向けて寝られない…とか言い出したらもう直立で寝るほかなく、たくさんの方に支えられている記念館であることを再認識した日でもありました。そうそう、最後にきちんとみなさんにご挨拶できず申し訳なかったわ…と名誉館長がとてもとても気にしていらしたことも申し添えねばなりません。アッこちらの進行がぐだぐだだったから…! ゴールに着いたら安心して踊り場さんに全部投げてしまったから…!





真山青果原作『元禄忠臣蔵』
  2019.3.28

 いつもいつもの滑り込みで恐縮です! 日本近代文学館さんで開催中の「新世紀の横光利一」展、なんと30日(土)までなんですよ…! 昨年3月に開催された横光利一文学会に秋聲のしゅの字が出たことからお邪魔させていただいたのをきっかけに、2日に始まったこの企画展のご案内を頂戴して(行きたい行かねば…)と思い暮らしていた今月、昨日ようやく観覧することができました。その構成もさることながら、新発見資料だという利一自筆谷川徹三宛書簡16通が圧巻です!(あと横光全集の広告がすごくオシャレ) また、解説が行き届いており、資料一点一点の意義がよくわかります。これはおすすめ…と言いながら驚きのあさってまでなのですけれども未見のみなさまにおかれましてはぜひぜひお運びくださいませ。ゲーム「文豪とアルケミスト」さんから横光・川端セット(ニコイチ)と彼らの恩人・菊池寛御大(パネル)がお出ましです。スピーカーのフタを開けたら聞こえるという文アル横光さんからのメッセージもフタを開けてしかと受け取ってまいりました。

 またこの上京の機会にもうひとつ観覧いたしましたのが真山青果原作歌舞伎『元禄忠臣蔵』。青果展のおりにご来館くださった青果ご曾孫・真山蘭里氏よりその上演がある旨を直接うかがい(行きたい行かねば…)と思い暮らしていた今月、いろいろなタイミングが重なってこのたび念願かないましてございます(さすがに出張でなく私費です)。上演前に「真山青果原作、真山美保演出…」とアナウンスが入っただけでドッキドキ! 秋聲が〈この種のものとして最高峰〉と賞賛した作品ですから、観るほうにも力が入ります。また、あわせて上演された「積恋雪関扉(つもるこいゆきのせきのと)」も秋聲が観た、と語る演目。なかなか上演されないそうで、これも青果さんのご縁によるもの…と噛みしめ噛みしめ、そうして舞台上の桜をばかり脳内で反芻して歩いた結果、この日満開であったという国立劇場の桜をひとつも見なかったことに気がついた帰り道です。





金沢三文豪古本市 最終日
  2019.3.24

 なにから伝えればいいのか、わからないまま時は流れて、浮かんでは消えてゆく、無事終わったイベントたち…さて平成の名曲に乗せてお送りいたしました。この一週間いろんなことがありすぎて、もうどこからどうご報告してよいのかわからなくなっている寸々語です。とりいそぎまして現在進行形のイベントをレポートすべきでしょうか、当館ではきのうからはじまりました「金沢三文豪古本市」! 21・22日と某K記念館さんで列をなす大盛況であったことを聞き及び、当館にもみなさん来てくださるだろうか…とすこし不安になっておりましたところ、23日の初日は当館でも列をなす盛況ぶりとなり一安心です。ご来場ありがとうございました。
 前日の準備中、加能屋書店さんがせっせと陳列をされている横から横から品定めをする記念館一味…アッこんな初版本もある! アッこれほっしい…! となりながら一応マナーといたしましてお客さま優先、本日16時半の催事終了後にまだ残っておりましたら購入させていただくことといたします。とくに秋聲作品の初版本は持っていてもほしい…まだほしい…あるだけほしい…となってしまっていけません。ご来場のみなさまにおかれましてもめったにないこの企画を楽しんでいただけましたら幸いです。

 なお犀星記念館さんでは古本、常時販売されています。先日、名誉館長とともにお邪魔いたしまして、現在開催中の企画展「旅する犀星~京都・鎌倉編~」のとくに鎌倉旅行のくだりをニヤニヤしながら拝見いたしました。だってこの旅、秋聲犀星ふたりたびなんですよ…ウフフ…! その思い出について記された秋聲の随筆集『灰皿』は現在両館で展示していますし、古本市にもあったのですがどうやら売れてしまったようです。
 




くめきくち
  2019.3.18

 川端康成記念会代表理事・水原園博氏よりご高著『川端康成と書―文人たちの墨跡』をご恵贈たまわりました! いつもありがとうございますお世話になっております! 昨年の「秋聲の戦争」展で鎌倉の川端邸からお借りして公開させていただきました康成旧蔵の秋聲自筆書幅や、秋聲没後、長男一穂が康成に贈った秋聲遺品のペン皿のお写真をはじめ、2年前に新たに発見された漱石・芥川ら文人たちの70点にも及ぶ筆跡コレクション(康成旧蔵品)の数々が惜しげもなく掲載されております。展示を見に来られなかったみなさまにおかれましてもこの一冊を手に入れればその概要が一目でわかる…! 求龍堂さんから先月発売となりました(3,240円也)。ぜひ書店さんでお求めください。
 いつでもどんな形の企画展でもだいたい当館展示室でお見かけする康成のやの字ですが、今回の四高展にはさすがに出ていらっしゃいません。いかんせん秋聲の28歳下。かつその秋聲の若かりし日をご紹介しているのですから、康成はまだ生まれてもいないのです(秋聲が四高を中退したのは21歳のとき)。その代わりと言ってはなんですが、何をどうしたってどんな角度からでもご登場くださるのが久米と菊池…。今回展では、四高の同級生・小倉正恒(住友総理事)が文士たちと交流をもちたいといって秋聲が幹事となって懇親会を開催するにあたり、久米正雄と室生犀星さんに宛てた秋聲自筆招待状を展示しています(会期中展示替えあり)。秋聲が声をかけたメンバーはほかに菊池寛・近松秋江・正宗白鳥・中村武羅夫、里見弴。いつぞや「菊池寛賞と秋聲」展を開催したときには同じ便箋を使って菊池寛に宛てた招待状も菊池寛記念館さんからお借りして展示させていただきました。
 秋聲を遠巻きに(尊崇の念を持って)見守っていたのが康成なら、すぐそばで支えてくれたのがくめきくち。秋聲にとってとにかく安心と信頼のメンバーであったようです。そう、いつもどんな角度でも。



 


四高展オープン 
  2019.3.16

 初日でございます! おかげさまで展示替え無事に終了いたしまして(いろいろなハプニングはあったものの)本日なんとか開幕の日を迎えることができました。今回展のテーマは芽吹き…入試に遅刻しかけたり、落第したり、友達ができなかったり(本人談。実はけっこういらっしゃる気がします)、先生と喧嘩したり、勉強が面白くなかったり、最終的に中退したり、そんなウロウロとした青春のさまは一見して無駄なようだけれどもきっとのちの作家・秋聲にとって大事な時期であったのだろうと…「文学修業」にも満たない、まだ花は咲かないけれども確実に何かしらの栄養となってやがて芽吹くための「予備行動」がぎゅっとここに詰まっていたのであろうと…そんな気持ちを込めた黄緑色です。ちょっと春っぽいでしょうか? なにせビジュアル素材を提供しなさすぎてデザイナーさんがぜんぶ描く! といった嫌なクライアント具合を発揮しております秋聲記念館の毎度です。
 また初日なので展示解説もおこないまして、午前の部には思いがけずたくさんの方にご参加いただきました。中でおととい記事にもいたしました人力車屋さんの写真提供のお話をして、そういえばこれまで「鏡花号」「百万石号」「松風号」「名無し号」の4台を確認していた人力車たちに晴れて「秋聲号」が仲間入りしたのだとみなさまにご報告した際に起こった拍手…! ありがとうございます。まさかお客さまから拍手をいただけるとは…。記念館から直接お尋ねしたこともありましたが「秋聲号はないんですか?」って言ってください、と小ずるくお客さまを唆してきた甲斐がございました。ご協力くださったみなさまと「人力車 浪漫屋」さんに深くお礼を申し上げます。
 すぐさま見にゆきたい気持ちもありながら、偶然走っているのを見かけたい気持ちもあり。まだ実物を確認してはいないのですが、あれというのはご指名ができるものだかどうだか…??





お座敷あそび
 
  2019.3.15

 展示替えの合間にも、19日(火)に開催を予定している「第6回 お座敷あそび」の準備を進めております。あっいっけない! 正式名称は「秋聲とお座敷あそび」でした。ただただひがし茶屋街の芸妓さんをお招きしてその芸を無邪気に堪能させていただく、そんなイベントではないのです。これもすべて秋聲ありき、少年期にその白粉の匂いにガツンと衝撃を受けたという末雄少年、ひいては郭を舞台にした作品を多く生み出した作家・徳田秋聲あってのイベントですよ…!! との思いを込めた「秋聲と」です。
 演目はいつもお茶屋さんにお任せで、演奏あり踊りあり、そして今回はお久しぶりのお座敷あそび「金比羅船々」が披露されることとなりました! ここで会ったが5年目ですか!? わりとお座敷太鼓がつづいた近年、平成26年にいちどご披露いただいたことがございます(→)。ふたりが向かい合って「こんぴらふねふね~こんぴらふねふね~♪」と歌いながら中央に置いた何かしらに手をチャッチャとやるあれですね!?(説明が雑ですみません。ぜひ当日その目でご確認ください…) これは楽しげ。今回は一階の「光を追うて」コーナーに会場をご用意する予定ですから、まさに末雄少年が父雲平につれられて茶屋街に出入りをしているジオラマのある真ん前ですね。そんなわけで当日イベント開催予定の16時~16時半、を含む15時20分~16時半まで1階シアターを一時的に上映中止のうえ封鎖させていただきますので何卒ご容赦ください。 
 平日のせいか(それ)告知が遅かったせいか(いやこれ)、はたまた毎年恒例すでに今年で第6回を数えるにもかかわらず、いまだ芸妓さんが記念館に来てくれることを信じてもらえていないのか、嘘のようですがお席にまだ余裕がございます。立ち見でもかなり間近で体験できることと存じます。ぜひお気軽にご参加ください!
 




2月の大銀杏
  2019.3.14

 今朝、今度の「踊り場参り」の下見にでかけてまいりました。案内人のおふたりとともに実際の行程を時間をはかりながらゆくのですが、いかんせん金沢の歴史文化にお詳しい金沢市観光ボランティアガイド「まいどさん」の資格をもつおふたりですから、ちょっとした建物や道、水路や樹木にいたるまで、さまざまな引き出しが開きっぱなしでなかなか前に進みません! つい「へ~~」「は~~そうなんですかァ~~」とふつうにまいどさんに案内を依頼した観光客のような風体になってしまうところ、ハッとして気を引き締め「すみませんけども今回その引き出しは閉めていただいて!」「そこ巻いていきましょう!」と時計を睨みつつたいへん失礼かつ残念なお願いをせねばならぬのでした。そうしないとゴールの「まちの踊り場」までに日が暮れちゃう…
 あとはお天気になることを祈りつつ、ちまちま資料を作成する今日このごろです。

 ちなみに今回ちらっとお寄りするひがし茶屋街に隣接する円長寺さんは四高展にご登場。こちらの大銀杏について秋聲が作品に書いているので、その写真をパネル展示しようと思いたった2月にはご覧のとおりのはげぼうず…! ひとえに思いたつのの遅さ、すなわち準備の遅さのためにこんなことに…とりいそぎ円長寺さんにご相談をいたしましたら、こちらの境内を詰め所にされている人力車屋さんがいい写真もってるかも! とアドバイスくださり(そう、自分のとこの写真というのは案外持っていないもの)、さっそく茶屋街周辺を走っていらっしゃる人力車 浪漫屋さんをとっつかまえてお尋ねしてみましたところ「アッ何枚かありますよ~すぐにお送りします~!」とたいへん気前よく真っ黄色の大銀杏、盛りのお写真をご提供くださいました! ありがとう円長寺さん、ありがとう浪漫屋さん…おかげさまでばっちりパネルに掲載することができました。



 


親指が死んだ日
  2019.3.13

 おかげさまで真山青果展、10日に無事閉幕いたしました。ご来場くださったみなさまに厚く厚くお礼を申し上げます。現在5日間ほど休館をいただき、しめきった館のなかでモリモリ展示替えをおこなっております。青果資料はすべて撤去され、ガラスケースもブリブリ拭いて、心機一転の企画展示室です。きのうは定期清掃も入ったため、窓ガラスも床もぴっかぴか! それに見合う新企画展となりますよう!
 そんな気合いでもって臨んでいた展示替え、さきほど資料をいちばん大きなケースに入れていて、そのちょっと高めの展示台から降りようとして左足の親指を床に思いっきりぐねんと嫌な感じにやりました。ッツぅ~~~~ッッ!!! と誰もいない展示室で身もだえることしばし…ア~~~これはもうだめだ、終わった、なぜなら完全に親指が死亡したもの…と脳内ですでに松葉杖姿となってまだ半分しか終わっていない展示替えの未来を本気で案じましたが親指は生きていました。ヒトの骨って案外丈夫なんですね…。ちょっと爪のところが死にましたけれども(これは方言でしょうか、打ち身による内出血のことを金沢では「死んだ」と言います)、歩くのには差し支えありません。明日は展示替えの合間に文学散歩の下見にも出かけねばなりませんので、親指さんにはもうちょっとがんばってもらわねばならぬのです。
 さて、親指でなく膝っこぞう。秋聲先生の膝っこぞうにある古傷について紹介するのが次回の企画展。その大事なお膝に生涯残る傷ができたのはなんとあの時なんですって…! そんな試験の役には立たない秋聲豆知識が展示室の決してメインでない一画に小さく小さく刻まれております。おたのしみに。



  


生存報告
  2019.3.6

  ちょいと表には出にくいですが、ここ最近そっと冬眠でもしているかのように見せかけて記念館一同(事務室内で)死にものぐるいとなって活動をしております。みんな疲れに疲れて、きのう「お電話です」と保留にされた電話を受け取ろうとして、しかし資料が山のように積まれて保留解除ボタンに手に届かない学芸員に気を遣って電話をとってくれたお隣の職員が保留解除までしてくれようとしたその手で、受話器をガチャンとするところをガチャンとされました。すなわち電話を切られました。あ~つかれてる~~! と思いました(ちなみにあのガチャンのところでは電話は切れないようです。保留のままだったのでたすかりましたが、なかなかの衝撃映像でした)。
 文学散歩、きのう受付を開始いたしまして、おかげさまで早々に満席をいただきました。お座敷あそびも同時に受付開始いたしまして、こちらはまだ余裕がございます。ゴリゴリの平日にて恐縮です。ひがし茶屋街の芸妓さんを間近に見られるチャンスです。
 
 きのう外灯の修理があり、その立ち会いをしていて見つけました。入口脇に誰がいつ置いたか分からない館の守り神・カエルご夫妻(ここはもう5年くらい勝手にお住まい。職員が置いたものではありません)。の前に誰がいつ置いたかわからない松ぼっくり。ほおっておくとすぐにお供え物が置かれてしまう東山界隈なんだから・・・。
 見つけた瞬間、展示替え前の殺伐とした心がほっこりあたたかくなったのは事実です。館として決して勝手なお供え物を容認するわけではないのですが、なに~~なんかかわいいディスプレイ~~~となってしまった心までは止められません。もうちょっとしたら土を這い出て、館の活動のさまが表に見えることでしょう。四高の春までもうすこし…(本日こそ啓蟄だそうですね)。



 

ナカグロの意味
 2019.2.27

 昨日開幕いたしました田端文士村記念館さんの新企画展「恋からはじまる物語~作家たちの恋愛事情」!(おめでとうございます!) さっそく夜のニュースで文ちゃん(のちの奥様)への熱い恋心を綴った芥川龍之介書簡初公開のご紹介がありました。みなさまご覧になりましたでしょうか。
 そのタイトルとチラシのとおり、芥川文×芥川龍之介、平塚らいてう×奥村博史、林芙美子×手塚緑敏、佐多稲子×窪川鶴次郎、山田順子×竹久夢二・徳田秋聲、林きむ子×林柳波、池田蕉園×池田輝方、板谷まる×板谷波山と、田端にかかわる8組のカップルにおける恋愛事情がテーマのこの展示、ほうほう芙美子と緑敏、新婚さんだったのにこのころ芙美子は「わたし秋聲先生の身辺のお世話したっていいんです! 毎日はさすがに無理だけれどもお給金なんかいらないんです!!」と申し入れてくれていたなァとか、窪川夫妻も秋聲となんやかや絡んでいたなァとか、池田夫妻はいま展示中の秋聲作品『誘惑』の新聞挿絵やら初版本口絵を描いてくれているなァとかいろいろと思うところはありながら、なんとなくそのいろいろに取り紛れてスルーしようとしてもだめだ! できない…! 誰しもが気になってしかたがない、秋聲のとこだけ三人組~~!! 

 記念館の人間ならずとも、みながひっかかってしまう夢二と秋聲の間のナカグロです(←デザイン上黒くはなかったですね…真ん中のあの白い丸…)。上にいる山田順子さんをめぐってふたりがどんな関係であったのやら、もうこちらで多くは語りますまい…同展にてお確かめください。
 ちなみに当館から肖像写真を提供させていただいた関係で記念館さんからご丁寧にもいろいろとご連絡をいただきまして、上記放送の件もうかがっており(ご案内せずにすみません!)、芥川しか映らない、と事前にきいていたのにドキドキしながら放送を待って、やっぱり芥川しか映らなかった昨夜です。きいていたのに。





明治4年の奇跡
  2019.2.24

 天皇陛下御在位三十年記念慶祝事業の一環として、本日は当館を含む文化施設が一斉に入館無料! せめてきのうお知らせすればよいものを、当日になって周知するダメすんすんごです(気持ち午前のうちに更新してみました…!)。

 さてきのうは金沢ふるさと偉人館さんでおこなわれた鈴木大拙館・石川県西田幾多郎記念哲学館 第1回合同学習会に参加してまいりました。こちら冠になっている両館の主催事業にて、その内容が講演「明治3年の奇跡―鈴木大拙と西田幾多郎そして仲間たち」ということから両人をあわせて語れる偉人館学芸員がご登壇。大拙と幾多郎ったら秋聲の四高の先輩ですからこれは学ばねば! と急きょお邪魔した次第です(すごく学びました→)。ふたりともが明治3年のお生まれで、この代には藤岡作太郎や木村栄などの偉い人がたくさんいますよ~(みんな四高の同級生)とのことから「明治3年の奇跡」と偉人館さんで名付けられたそう。とすれば便乗して言っておきましょう、明治4年の奇跡! この偉人たちの一歳下にいるのが秋聲、田山花袋、国木田独歩であるからして、四高の同級生でこそないですけれども、ともに文学史に名を刻んだこの3名を現在の青果展でまるっとご紹介しております。
 実は偉人館の増山学芸員さんには当館でも3月30日(土)14時~の講演会でご登壇いただく予定なのです。題して「四高と金沢―四高出身の偉人たち」。上記講演会と(うぉっかぶった…!)との衝撃を受け流しておいてのよりざっくりとしたタイトルにて恐縮ですが、とにかくエリート高であった四高が金沢に置かれた意義と、同高出身の優れた先輩後輩たちをどんどこご紹介いただこうとの企画です(秋聲は中退です)。こちらイベント欄にも概要間もなく。
 




『あらくれ』仲間入り
 2019.2.23

 『あらくれ』の話題をだしたところに昨日『あらくれ』ポストカードが納品されました! 先日の秋聲お誕生会の席でも『あらくれ』初版本デザインを復刻したオリジナル文庫がほしい…との有り難いお申し出をいただいたのですが『あらくれ』は講談社さまが刊行してくださっているというそのことを大事にしたいわれわれは敢えて競合するような真似はいたしません。ふつうに本屋さんで買える、というその事実は決して当たり前ではないのだと、日々有り難く噛みしめてゆく所存です。すなわち当館から『あらくれ』刊行の予定はなし…。

 また、開館当時に販売していた『あらくれ』メモ帳の再販希望のお声もたまにいただくのですがアレを刷り直すほどの余裕もなし…。しかしそんな有り難いお声に何かしら応えたい、とこのたび『あらくれ』初版本表紙をそのままあしらったポストカードを作成いたしました! イヤそういうことじゃない! というお声がどこからともなくザワザワ聞こえてくるような気もいたします。向かう先を大きく誤ったような気もしておりますが、こちら販売物でなく館内設置のクイズラリーにご参加くださった方へのプレゼントですのでどうかご笑納くださいませ。
 現在も2種類のポストカードから選べるシステムにしているところ、本日より『あらくれ』を加えて3種類からの選択システムに! 口絵・口絵・表紙とひとつだけずいぶん毛色がちがってしまい選択の際に戸惑われるかもしれませんが、飛び抜けて代表作です。過去にクイズラリーやったよ~もう2枚とも持ってるよ~という方にも初級中級上級などレベルを変えて再度ご挑戦いただきたく存じます。
 




春の夢かもしれない
   2019.2.20

 今月もまた載せていただきました「月刊金澤」さま、はやいもので3月号の発売日です! 春だから、というよくわからない理由で、今号はなんとなくそのへんに新しい風を吹かせてくれそうな『あらくれ』の話題をとりあげてみました。そして担当編集者さまによる「今度の誌面には秋聲の下にも秋聲がいますよ…」との意味深なメールにちょっとわくわくしながら(いや期待はするまい、と自らを諫めながら)ページを開きましたら、えっこれ何のごほうび…!? 

 なんてこったい…秋聲コラムの下の「今月の蔵出し」欄…テーマが秋聲の原作映画『爛』だって…? えっ大丈夫…? 秋聲ひとりでふたつも枠とって大丈夫?? えっ今回秋聲特集号…? 夢?? とひとりでパニックを起こしました。いつも素敵な映画を紹介してくださる古森一氏がなんと今回秋聲映画『爛』を蔵出ししてくださっているではありませんか…。えっ、夢……?? しかもコラムのほうの『あらくれ』の話題と絶妙にリンクしており、とにもかくにも有り難いことです。いつもは館にも閲覧用あります、とか気の弱いことを言っている当館ですが、しゅうせいのしゅの字が表題にふたっつも入っている今号ばかりはみなさま3冊ご購入ください。読む用、飾る用、保存用です。
 また名匠成瀬巳喜男監督映画『あらくれ』はDVDになっていない旨、どちらの記事にも触れられておりますが、なんでも最近U-NEXTさんというところから配信が開始されたとか…! 成瀬監督が今年7月に没後50年を迎えることからその作品『めし』(林芙美子原作)、『山の音』(川端康成原作)などの名作16編が観られるようになったそうです。ハイ、芙美子の遺作『めし』(昭和26年)の康成による後書きはこう→〈日本の作家のうちで、芙美子さんが最も影響を受けているのは、徳田秋聲です〉。徳田秋聲です! セットでどうぞ!! 
 

 


アフターケア
  2019.2.19

 昨日、MROラジオさん「あさダッシュ!」にお邪魔して、今度の「踊り場参りvol.2」のお話をさせていただきました。次回企画展にも現「まちの踊り場」旧主である正田順太郎さん(←旧宅にて)ご登場の予定です。本来、四高には関係のない順太郎さんながら、なにせ秋聲の性格がアレだものですから順太郎さんがやむを得ず出張ってきたり、順太郎さんの役職がアレのソレだものですから関係資料を展示してみたり、順太郎さんの奥さまがあの人とアレでコレでソレだものですからそんなゆかりでもってご紹介をさせていただく予定です。
 読んでくださっている大事なみなさまをひどくイライラさせてしまったでしょうか…しかし今はただ「ぜひ3月16日をおたのしみに」としか申し上げられない心苦しさ…(秋聲も順太郎さんをイライラさせがち…)。
 そんなもったいつけで人をイライラさせてしまう学芸員のいっぽう、当館職員の優しさがギュウと心にしみた出来事がございましたのでご報告を申し上げます。
 先日、もろもろの準備に追われて変な時間に昼食のカップ麺を啜っていたおり、急きょとても大事なお客さまがお見えになって呼ばれて飛びでてお見送りをして戻ってくると、受付にいた職員から「あの…せめてフタしてみたんですけど…」と申し訳なさげにカップ麺のケアについての報告を受けたときの驚き…! あっフタも開けたまま行きました!? と、30分ほど放置されたカップ麺の状態にようやく思いいたりましてございます。すると今度はまた別の職員より「あの…いちおうテープで留めてみたんですけど…」とこれまた申し訳なさげにご報告をいただき、な…なんという優しい職場か…!! といたく感動をいたしました。(アッフタあいてら!)からの(アッフタあきそう!) 敢えてお願いせずともそれぞれがそれぞれのタイミングでもって放置されたカップ麺のケアに尽くしてくれるとても優しい職場です。





ダブルオープン
   2019.2.17

 秋聲の顔写真が入ったやつがいいですね~と言ったそばから(前回記事参照)届きました新作バッグ! 11日、ふたたび北陸中日新聞さん一面に新生「まちの踊り場」に加え秋聲次姉・太田きん旧宅もまた宿泊施設としていよいよオープンする旨ダブルでご掲載いただき、先日の「しまんと新聞ばっぐ」の先生がさっそくバッグにしたてて届けてくださったのです。いや言ってみるものですね…!! ありがとうございます!!
 改めまして旧正田邸「まちの踊り場」および旧太田邸「Azuki旅音」、いずれも短編『町の踊り場』に登場する家屋がこのたびゲストハウスに生まれ変わりました! どちらも一時はあわや取り壊しか駐車場かと言われていたお宅…その両方が秋聲ゆかりの建物として残ることになり、かつみなさまにご活用いただける形に…こんなに嬉しいことはございません。地元民の記念館職員だってお泊まり合宿をしたらいいじゃない! と名誉館長とお電話で盛り上がってしまいました。
 また「まちの踊り場」に関しましては今後レンタルスペースとしての営業はされないため宿泊客以外の利用は難しいところ、3月21日(木・祝)当館主催の文学散歩「踊り場参りvol.2」で最後の見学が許されることになりました(ご厚情に感謝です…!)。前回のように中での朗読はありませんが、記念館発~秋聲ゆかり・あるいは金沢の史跡もろもろ経由~「まちの踊り場」着コースです。ほんとうに貴重な機会となりますのでご興味おありの方、ぜひぜひご参加くださいませ。
 とかなんとか言いながらその前にも後にもイベントギュウギュウにつめこみました!
 1月2月は企画展準備に集中したい、と自分勝手に避けつづけたしわ寄せ…もとい、なにせ気候が好いですからね! 啓蟄ということでどうかひとつ…!
 




おみやげ
    2019.2.9

 ついさきほどお客さまからふと手渡されました紙バッグ…とそこに見覚えのある顔写真…ん? じ、自分!? 紙バッグに自分の顔!! と言いますのも数日前、北陸中日新聞さんに当館学芸員のインタビュー記事を写真付きで掲載していただき、その記事を使った手作りバッグをプレゼントしていただいたのでした。こ、これは…自分では使いにくいですけれども他人だともっと使いにくいかもしれない、これに秋聲文庫本など入れて自己紹介代わりに持ち歩いたらこりゃ話が早いやバッグですね…! そのあとさらに頂戴した英字新聞仕様ミニバッグには素直に「アッこれはかわいい!」と言えました。
 なんでも「しまんと新聞ばっぐ」という高知生まれの製品で、読み終えた新聞と天然のでんぷんのりだけで作るんだそう。プレゼントしてくださったお客さまはその「しまんと新聞ばっぐ金沢支部」の先生だったのです。なんというお心遣い、ありがたやありがたや…。この思いがけないプレゼントに対するこちらの驚き具合といったら、記事で「秋聲さんたら展示しにくい」とかなんとかちょっと文句も言ってしまったので名誉館長(秋聲令孫)にはこの記事の存在を内緒にしておーこう…とひそかに画策していたところ「館の常連さんから新聞とどいたわよ!」(電話)となんとすでに東京の徳田家にお送りくださった方がいた、というときの衝撃と同じくらいです。ひそかに悪巧みをする学芸員以上に館のことを想ってくださるお客さまがいらっしゃる…今回のことに改めて励まされる今日このごろです。
 文庫本を入れて、としれっと書きましたように、持ち手もマチもついていてとっても丈夫! ワークショップなどもされているそうで、館でも秋聲文庫専用バッグをつくる催しができたら素敵だな、とちょっと夢見たりなどいたしました(秋聲先生のお顔入りでつくりたいですね。そんな貴重な記事つかえないですね)。





新生「まちの踊り場」
   2019.2.6

 3日、秋聲次兄・正田順太郎旧宅が新しく生まれ変わり、その内見会がおこなわれるというので勇んで覗きに行ってまいりました。いつか当館主催文学散歩でも使わせていただきましたとおり、ここ3年ほどはレンタルスペースとして活用されていた某家。それがこのたび、一日一組限定、なんと一軒貸し切りという贅沢な宿泊施設となりました! 以前にはなかった綺麗なお風呂が完備され、お手洗いも増設。ちょこっと覗きに行くだけのつもりがすっかり長居をしてしまったこの家の恐るべき落ち着かせ力…! 
 父の死をきっかけに四高を中退し上京した秋聲。残された母と妹は知り合いのお家に居候するなど、いわゆる実家というものを失った秋聲にとって、この正田邸こそ帰るべきお家でした(順太郎さんは正田家に養子にゆきました)。築100年を軽く超えるこのお屋敷の広さ、素晴らしさはいまさら詳しく語りませんが、仮にこの春、秋聲をめぐって金沢を旅行しよっかな~と計画されたとして、記念館を訪れ(ありがとうございます)、卯辰山に登って文学碑を見学し(谷口吉郎建築でございます)、徳田家菩提寺・静明寺をお参りして(井上靖揮毫による墓碑が)、ひがし茶屋街の風情に浸り(秋聲も幼少期から出入りを)、それでもって夜こちらにお泊まりにならなかったとすればそれはとても惜しいこと…! あっゴール手前で斜めに逸れましたね!! と思わず実況中継してしまうような勝手な気持ちを抱いております記念館です。もちろんお金のかかわることですし、他の宿泊施設を否定するものでなく、秋聲めぐりを、との前提でもってご案内申し上げる次第です。
 なにせ貸し切りですからこちらで秋聲ごっこを思う存分に楽しんでいただきたく…それっぽいお衣装を持って来られてもよいですね…この家が登場する『町の踊り場』や『旅日記』を脚本として、みんなで小芝居をされたら楽しいですね…。順太郎役、薫夫人役、順太郎子息(ご養子)・彰二郎役、そして秋聲役などなど。一度に8人まで泊まれるそうで、いよいよ今月中旬から営業開始です!!





青果日記公開
  2019.2.2

 潜ります、と宣言した矢先に飛びでてまいりました。なぜなら本日は青果展のギャラリートーク、すなわち青果日記を初披露する日!! といったわけで国木田独歩の自筆詩稿の展示箇所を変更し、秋聲の訪問を記した青果日記を新設置。はるばるTOKYOからお借りしてまいりました貴重な資料をこの青果展晩期に満を持して公開いたします。
 午前のギャラリートーク後、お客さまとお話しするなかでとても素敵なご感想をいただきました。いろいろあって文壇から干されてしまった青果さんのほとんど唯一の味方であったという秋聲のこと、「秋聲さんは青果さんだけが特別ってわけじゃなかったんでしょうね。誰に対してもそうなんだろうな、ただ青果さんのほうは絶対忘れないと思う。つらい時にこの人だけが自分を支えてくれたって」……心に響きましてございます。そう、それが秋聲の良いところ。恩に着せるわけでなく、おそらくごくフラットに目の前の人に相対するとそういうことになってしまうのでしょう。仰るとおり、誰だから、ということではきっとなかったのだろうと思います。その前日、館長と別件で同郷・島田清次郎のお話をしていたこともあり、より強くそう感じました(島清が婦女誘拐事件を起こしたときに弁護に立ち回った秋聲、というお話です)。

 そんな秋聲さんの魅力のおかげさまか、ご遠方より昨日の秋聲誕生日(新暦)にあわせてバースデープレゼントが届きました。あれあれもうお気持ちだけで充分ですから…! もったいないことですから今後はもうお身内でのパーティーにて、これら饗してくださいませ。秋聲先生たらお誕生日が2回もあってたくさんの方にお祝いしていただいて嬉しいですねえ! お心遣いありがとうございました。

 そして明日から本当にちょっと留守にいたしますので、今日見てくださった方に耳より情報。ご近所・宇多須神社さんの節分祭、明日の1時からですよ! 芸妓さんによる豆まきは2時45分頃からですよ!!





金沢三文豪古本市
  2019.2.1

 なんやかんやとワタワタしており「寸々語」おさぼりいたしました、申し訳ございません! 結局不調を訴えていた暖房機器は部品交換で済みました。いっぺんに言えばよいものを、次はここ、その次はあそこ、とウチの暖房機器がたいそうかまってちゃんであることを開館14年目にして知りました。いやギリギリまでひとり黙して堪えるタイプと評し、その10余年の労をねぎらうべきなのかもしれません。朝、暖房スイッチを触る職員が今日はどうかとヒヤヒヤしているここ最近です。

 さて、さぼった間に「金沢三文豪古本市」。今朝の北國新聞さんに大きく掲載していただきましたとおり、必要とあらば手を組むでお馴染み川向こうの某K記念館さんとの共同企画です。地元の古本屋・加能屋書店さんのご協力で、3月21~24日、某館と当館ロビーに出張古書市がやってくるよ!(画像クリックでPDF開きます→)
 いま一般の出版社さんからは『あらくれ』と『黴 爛』しか出ていない秋聲著作、しかも欠品増刷に追われ近年新刊を出せていない当館オリジナル文庫ですから(本日より品切れだった『秋聲少年少女小説集』再販開始いたします! 通販もまもなく!)ぜひこの4日間、両館をめぐって今や入手困難な秋聲著作ほかを漁ってくださいませ。加能屋さんによる「秋聲本もだいぶ集まってきましたよ~」とのご連絡に今からわくわくしております。
 「三文豪」を謳いながら今回川ちがいの犀星記念館さんは会場となっておりませんが、犀星さん本も取り揃えてくださることと存じます。と言いながら某K記念館さんにもしかしたら秋聲本は置いてくださらないかもしれない! ちょっと! お尋ねする勇気がありませんけれども! うちでは某K花本置いてかまいませんけれども! ちょっとそこはわかりませんけれども!! はやく春がやってくるといいですね…。
 新暦の秋聲お誕生日(本日)は無視できなかった記念館です。またすこし潜らせていただきます。四高の春が見えなくて…。





冬の時代
   2019.1.24

 きのう記念館OBの方から新聞にこんな広告載ってたよ~とご連絡をいただきました。見ればホンニャラホンニャラ金沢冬の催しとして3つイベントがあがる中、ひとつは某K花さん・ひとつは犀星さん・ひとつは三文豪非関連イベント、と、アレッ!? 秋聲は!!? とのことになりました。イベント枠2つまでなら黙ります。いやしかし3つあるならァ~! 3つイベントをやるならァァァアア……!!
 秋聲がいっちばん先輩だぞい!! とデビュー順でいうなら某K花さんのが先輩ながら、こんなところでよくわからない年上アピールをしてみました。「い」「と」「む」、五十音では真ん中だぞい!! 身長では~~どうなのでしょうか、これも秋聲がかろうじて真ん中っぽい気もいたしますが…。
 なんだかんだと省かれてしまう秋聲先生…すみません…われわれのがんばりが足りないばっかりに……。三文豪なのに秋聲だけ呼ばれないあるあるについてこの間とある方にグチグチ愚痴っておりましたら、「いや人のせいにしちゃダメじゃん。そこは記念館ががんばらないと」と言われあまりに真っ当すぎて心にひどく突き刺さったことを思い出します。それ以来、秋聲仲間はずれ事項に出会うたび、イヤァァアアアア!! なぜェェェエエエエ!!!! といったん悲しみの淵に浸ったあと、すっくと立ち上がるのです。そう、われわれががんばらないと。ドロドロの手足でジタジタしていても始まりません。手をきれいに洗って服を着替えて、しゃんとした姿勢でこの作家の価値を粛々とお伝えしてゆくのみ……ん? 今度は2階の暖房が壊れた! と事務室の向こうのほうが賑わっていますね。大丈夫、大丈夫。気合いで乗り切れ! 背を丸めるな!!(おかげさまで1階暖房は修理していただき、小懐かしいストーブはご返却申し上げました。向こうから「アレ返すの早かったかな…」との呟きも聞こえつつ…)
 
←拾う神・秋聲コラムを掲載してくださる「月刊 金澤」さま2月号、バレンタインスペシャルで~す!





檻フィルター 
   2019.1.23

 21日、MROラジオさんの「あさダッシュ!」にお邪魔して、青果展のPRをさせていただきました。一応毎月お招きいただいているのですが1月は都合があわず一回お休み。1回飛んだだけでまた初回のようにどぎまぎしてしまうあのブース…次回は18日(月)10時~の予定です。
 そして今朝は団体さんをお迎えして常設展の解説をさせていただきました。これもしゃべりながら(アッなんかいつもよりだいぶんへたくそ…!)と内心で衝撃を受け、そして悟るのです、かなりの長い間、常設展の解説依頼がなかったのだと…。久々すぎて、解説の勘所を完全にわすれてしまっているのでした。11月頭くらいからぱったりと人足の途絶えた記念館、冬の時代を痛感しております。お帰りに引率の方に「ほんとうに有り難いご企画でした。正直なかなか苦しいものですからまたぜひよろしくお願いします」とお礼を申し述べておりましたら、たまたまツアーに参加されていた館常連のお客さまから「ね! 使ってあげてね!」と後押しをいただき、嬉しいやら恥ずかしいやら…そうした皆さまに支えられております。
 また今回は時間の関係で青果展の解説を省いたところ、別のお客さまから「あのタペストリーの『檻』ってどういう意味??」と尋ねられ「あッあれはですね! 秋聲と真山青果さんという人が旅行に行ってですね!…」と一通りご説明したあと「……作品名ってこと?」とのリアクション。この瞬間、知らず脳みそをぐるぐる巻きにしていたニット素材の何か厚いモヤモヤをベリリとはがされたような気がしたのです。そうか…! そもそも…!! 
 これはわるい、わるい癖が出てしまいました。こうしてひとは初心を忘れてゆくのですね。『檻』が秋聲の作品名であることを自明のこととして語っていた事実に気がつき、恥ずかしいやら恥ずかしいやら…。
 あらゆるフィルターを取り除き、応答は極力シンプルに。またひとつ今年の目標ができました。





神様は一度まで
 
  2019.1.19

 石川近文さんには企画展ももちろんのこと、無料ゾーンの四高にまつわる常設展を拝見いたしたくうかがったのでした。一高が現東京大学、二高が東北大学(←青果さんはここ)、三高が京都大学、そして四高が金沢大学、いま大河ドラマでも話題の五高が熊本大学。いわゆるナンバースクールと呼ばれる官立の学校制度の成り立ちから、現在、館の建物としてそのまま使われているレンガづくりの校舎について、当時の学生生活のことなどが体系的に紹介されており、初心者にもわっかりやすい…そんなわけで、もう3月に迫った展示のことを1月も半ばを過ぎて、よちよちと学んでいる次第です。
 文学館のほうの有料ゾーンの展示室内にはバーン! と撮影禁止マークが示されているのですが、無料ゾーンの比較的無印の展示室はどうなのかしら、と、基本撮影禁止の館で育ったため当初疑いもしなかった点がふと気になり、帰り際に受付さんに確認しましたら展示室内はやはり撮影禁止とのこと(廊下などはOK)。たしかに複数の展示資料に借用品である旨のクレジットがございました。そして受付さんとコミュニケーションをとったその流れでもって「あちらの展示も今日からですものねぇ~ご覧になりました??」と訊かれ「えっナニソレ!」。
 聞けば1階の奥の奥のお部屋で18日~金沢大学資料館さんの出張展「バンカラ寮生類~金大寮史124年~」がはじまったそう!(←本体展は会期終了) 慌てて展示室に立ち戻り、20分後、厚くお礼を申し述べて受付さんに別れを告げました。あのとき四高の神様が受付さんに話しかけるよう背中を押してくれたようです。ご案内に感謝申し上げます。
 この出張展の閉幕日をわすれてしまったので確認のためいま同館HPを見に行きましたらちょっとその詳細はわからなかったのですが、代わりにこんな企画展をスルーしてしまっていたことを知りました。やだ神様ったらもう一押し…!
 
 こぢんまりした館で育ちましたもので…あの学校の広さを体感いたしました。またうかがいます。





四高のゆかり
 2019.1.18

 次回企画展の勉強のため、朝から金沢ふるさと偉人館さんと石川近代文学館さんへ行ってまいりました。偉人館さんには秋聲と四高で同級生であった人、あるいは先輩であった人などがたんと紹介されています。わざわざ出てきてくださった学芸員さんとお話ししながら「へぇ四高展か~いつから? 5月から?」と訊かれて、3月からです、とはとても言いにくい感じになってしまいました。5月だったらいいのにな…そうだったらいいのにな…。2月ってとっても短いんだ……!
 それはそれとして偉人館。すごいです、偉人館。観光でいらした方、市民の方も改めて展示を見に行かれてください。常設展にふつうにお宝がたんと出ているのですから…!(文学的には川端康成や武者小路実篤のお手紙なんかがありますよ!) は~アレ借りよ~コレ借りよ~と脳内で勝手にリストアップさせていただきました。げに有り難き財団仲間です。
 また建物のゆかりから一方では四高記念文化交流館でもある石川近代文学館さんは昨年めでたく50歳を迎えられ、記念展「五十歳だった 石川ゆかりの作家、五十歳の一年間」を開催中。50歳つながりということで、ゆかりの作家さんが50歳のときにどんな作品を書いたのかが紹介されています。これがまぁ初っぱなから秋聲コーナーで大興奮! 当館でご紹介している青果脚色による舞台「二つの道」の秋聲自筆原稿が出ておりますよ!! また展示室の壁面には大きなカレンダーが用意され、観覧者が記念日を自由に書き込めるという素敵企画がございました。ならば秋聲さんのお誕生日を! と駆け足で12月を見に行きましたらなんと11月までしかなかったもので、ならば命日を! と11月18日に「秋聲忌」とこっそり書き込んでまいりました。忌日はダメでしたでしょうか、おめでたい企画に湿っぽい書き込み恐縮です。





蠟燭のにほひが忘れられない
 2019.1.15

 とは秋聲の随筆のタイトルです。発表は明治44年「演芸画報」。演芸好きの両親の影響で幼少期から芝居に親しんでいたという秋聲は、母親からこっそりお小遣いをもらってひとりでもよく芝居小屋に出かけていたそう。その小屋に点されていた蠟燭の匂いが好きで、芝居自体というよりその劇場の空気が懐かしく思い出される…といったお話です。匂いに伴う記憶といえばマドレーヌ。この感覚はよくわかるような気がいたします。

←秋聲が通った芝居小屋跡の目印(現在)。

 さすがに記念館で蠟燭を焚くわけにはまいりませんが、急ごしらえの小懐かしいストーブをつける際、かなりお久しぶりにマッチを使用いたしました。近年つい便利なチャッカマンばかりを使用し(先日の秋聲お誕生日ケーキのロウソクに着火したのも自宅から持ち込んだ彼でした)、ついぞマッチを使うことがなかったものですからちょっとまごまご。そうして点火したあとの懐かしい匂い…なんだかありもしないあの日の思い出がズルズルと引き出されそうになりました。こわいこわい、別にそれほど印象深い思い出といってなかったです。思わず捏造さえさせるマッチマジック…!
 ただ匂いによって呼び覚まされる記憶というものは確かにございますので、記念館の入り口に何かしら匂いを焚きしめておこうかしら…? とたまに思ったりもいたします。いつか茶屋街の奇特なお店で販売してくださっていた秋聲の作品モチーフのお香を? いやいやこのような緊急の場合以外に火気は厳禁。秋声くんエアフレッシュナーを?(©「文豪とアルケミスト」) いやいや、あれはキャラクターとしての秋声くんがイメージされているのであって秋聲でなし…。ぐるぐる考えて結局何もしないのですが、マッチを擦りながらふと「蠟燭のにほひが忘れられない」と喉まで出かかるそんな仕掛けを、館単位で考えてゆきたいところです。





「檻」完結
 2019.1.13

 「不定期連載」に連載しておりました「檻」、本日完結いたしました。当初全4回風にお伝えしておりましたところ、なんだかんだと全6回になってしまいました。長くお付き合いをいただきましてありがとうございました。
 旅先にあって帰りたいオーラ全開の「林」と帰らせませんよオーラ全開の「岡辺」、これはなかなかの〝檻〟っぷりです。純粋なる真山青果展でなく、秋聲と青果をご紹介する本展においては、やはりこの「檻」こそがふたりを結ぶキーワードになるであろう…と思い切ってタイトルにしてみましたが、決して仲良しこよし、気持ちの良い小説ではありませんので、展示にご協力をいただいた真山家のみなさまにおかれましてはご気分を害されるかもしれない…とビクビクしながら、しかしこれが必要なのです!! と強い意志で申し開きをする準備と覚悟とをもってチラシをお送りしたところ、「いや面白いふたりだよね~~」といとほがらかに受け止めてくださったことに心の底からほっとしたことを思い出します。なんと懐の深い…改めまして、本展へのご協力に心より感謝申し上げます。
 そんな青果さんの悪魔的暑苦しさを思い起こさせるロビーに置かれた小懐かしいストーブの上にゆらめく陽炎…体内で燃えさかる火をつまみでチロチロと調節するそのさまにおいても、青果さんを宥めすかす秋聲を内心で演じたりしています。本体に貼られた「給食室」との手書きシールがなんとも急ごしらえで設置された感を醸していて良いお味。イモとかモチとかつい焼きたくなるこの感じ。
 昔はよく持ち込みで焼いていたものですが、今頃はイモとかモチとかその火で焼いてはいけないのでしょうか、ご近所・宇多須神社さんの左義長は明日8時~15時です。
 

 
 


暖房事情
  2019.1.12

 おととい実況をしておりました暖房機器の不具合の件、結局最悪の事態の一歩手前となりましたことをご報告申し上げます。結論からいえば、1階フロア全体の故障です。2階は大丈夫、というところで崖際一歩手前。2階へ避難していただければ暖かい環境をご提供申し上げることができるのです。
 業者さんから状況のご説明をいただきながら、その時はかろうじて稼働していた事務室の暖房に「これはまだ大丈夫なんですか…?」とお尋ねすると「言いにくいんですが…」とのリアクション。100%理解いたしました。消したほうがいいんですね…!! 業者さんが来るとさっきまで瀕死だったくせに「自分まだやれます、大丈夫です」と急に素知らぬ顔をするの法則で、最後のひとふんばりを見せてくれていた暖房のスイッチをそっとOFFにいたしました。これ以上悪化させぬよう…痩せ我慢は禁物です。
 そんなわけでお客さまにはたいへんお寒い思いをさせてしまい恐縮ながら、1階は極寒の記念館です。関係者がいろいろと手配に駆け回ってくれ、なにか小懐かしいストーブを導入していただきましたが、それもロビーまでのこと。繊細に出来ている展示室に環境に不慣れな暖房機器をやたらと入れるわけにはまいりませんので、一週間ほどはこの状態のまま開館いたしますことをお含みおき願います。どうかあたたかい格好で…!

 思えば昨年のちょうど今日、記録的な大雪が降ったことを寸々語に記しておりました。それに比べれば今年はまだまとまった雪も降らず、暖冬と言えるのでしょう。「冬の暖かい日影ほど底つやのある宗教的なものはない」(「冬の暖かさ」)と秋聲先生も書いていますので、すこしだけ感受性を尖らせて展示室にそっと差し込む冬の日差しのあたりにご集合ください。

←このへん





ウォームシェア
  2019.1.10

 今朝ほど館内の暖房機器が急にはたらくのをやめてしまい、展示室をはじめ事務室までも凍えるような寒さのなかで粛々と仕事しております秋聲記念館です。昨日の秋聲先生による冬でも朝寒いのなんかへっちゃらですけどアピールのせいなのでしょうか、お客さまと職員全員がこの冬に試されているようです。お客さまにはご迷惑をおかけして申し訳ございませんが、しばらくの間はコートを着込んだままご観覧ください。
 そんな極寒の館内ながら、2月28日まで県主催「いしかわウォームシェア」という取り組みに参加しております。おうちの暖房を消して暖かい施設に出かけて節電しましょう、というコンセプトなのですが(施設に行った証明を該当部署に送れば抽選でプレゼント)今日の館ではとてもとても…。職員の真心込めた対応とどこまでも絡みついてくる青果さんの悪魔的な暑苦しさしかウォーム要素といってございませんが、一応ウォームシェア運用中ですのでご遠慮なくお申し出ください。

 と、こんなことを書いているうちに業者さんが到着しました。「遅くなってすみません!」と駆け込んできてくださるお姿はまさに救世主…! ありがとうございますありがとうございます。いまほど応急処置をしていただき、ぼわっと機械が活動をはじめました。ただついても止まるを繰り返している節もあり、まだまだ油断がなりません。これをぽちぽち書いているデスクの周りを業者さんと職員とが忙しげに行ったり来たりしています。昨日の随筆のつづき、「新聞」との項目で「新聞は、食前に読む事もあるし、飯をたべながら読むこともあるし、或は食後読んだりする。」と書いている秋聲先生に、いやそれ全部ー! とツッコんだりしているこのデスクが申し訳ない感じです。





早起きですから
  2019.1.9

 先日、職員さんから「秋聲さんて朝型? 夜型?」と訊かれました。お客さまからお問い合わせがあったかと思いきや、3月末発行予定の館報「夢香山」版寸々語のネタ探しのようです。
 「そらかんっぜんに夜型ですわな!」と、例をあげんと適当に全集を紐解き真っ先に見つけたのが「朝起きるのは、最近夜ふかしをしないので、割合に早い。」(「現代十作家の生活振り」)との記述…エッ! エッ!? うっそ~! うっそだ~! イヤどっかで夜型だって言ってました~! とたいそう焦りながら続きを読むと「大抵、七時か八時には床を出る」。こ、これは…急にものすごく「自分、早起きですから」アピールをされてしまいました。てっきり夜型かと思い込んでおりました。「私は一たい子供時分から早起きが好きだつたのだが、作家生活をするやうになつてからだらしなくなつて、怠け癖がついて、仕事など切迫詰つてやりはじめるといふ風なので、自然夜ふかしをしたり朝寝をしたりするやうなことになつたが、青年時代までの私は早起きであつた」。はは~そんなご事情が~…「今でも、冬でも早い方が気持いい。」えらいですね~この寒いのにお布団から出られる意志の強さ!

 これが大正14年のことですから御年55才。さらにその後、こんな記述もございました。「書くのは夜中の一時か二時ごろ」「昼間は一日頭脳がぼやけてゐる」(「質は体力によらず」)。これを書いたのは昭和8年、秋聲63才。なるほどなるほど、基本は早起きだけれどもどうしても執筆となると夜、ということなのですね。そう、喜代子さん(秋聲次女)たちだって秋聲はお昼近くまで寝てるって言っていましたもの…!
 いろいろと照らし合わせて見てみなければなりません。にしても適当に開いたページで真っ先に否定されるこの罠。思い込みへの鉄槌です。





無意味な赤字
 2019.1.6

 ギャラリートーク中、昨日記事の後期展資料を重点的にご紹介しながらふとそのキャプションに〔~3月10日まで展示〕と書かれているのにわれながらなんとあたまのわるいお知らせか、とおののきました。前期展の〔~1月4日まで展示〕にひっぱられてしまったのでしょう。3月10日といえば青果展そのものの最終日。その他の資料はじゃあいつまで出してるんだろう…と思わせてしまうまったく無駄なお知らせをしかも気合いの入った赤字でしてしまっているのでした。なんという想像力の欠如っぷり…ここは〔1月5日から展示〕とすべきあった…であるならば(ああ、これは前期には出ていなかったのだな、いま来てよかったな、逆に前期には何が出ていたのかな)などとお客さまがおのおの想像の翼を広げてくださったのであろう…と、このあまりに意味のない赤字を痛々しく心に引きずりながら55分をお話ししました。青果展、開館以来のトータルで言えば第45回展となります。45回も重ねておいて…

 さて、そんな45回の企画展すべてへの資料提供および、どんな失敗をやらかしてもあたたかく見守り励ましてくださる秋聲ご令孫・徳田章子名誉館長のインタビュー記事が本日の北陸中日新聞朝刊に掲載されております。「金沢市と東京・文京区 ゆかりをつなぐ」というテーマの第2回、順番に4名の人物をとりあげる特設欄です。お写真付きのとても大きな記事ですのでぜひお読みいただけましたら幸いです。ちなみに文京区には秋聲のみならず、晩年の青果さんも暮らしておりました。昭和18年、秋聲の亡くなる年の春から夏頃、病床の秋聲に頼まれ長男一穂さん(章子名誉館長ご尊父)が主治医を紹介してもらいに青果宅を訪れたエピソードをご紹介してこの展示の締めくくりとしています。





一部展示替え
 2019.1.5

 お正月ボケで何から始めてよいかわからず、とりあえず2年近くほったらかした「不定期連載」に作品をアップすべく、ただ無心にテキストを打ちこんでおりました昨日です。仕事をしている風を装うには最適の作業です。
 今回アップいたしましたのは「檻」。の最初の4分の1。青果展を開催してから何度か「檻」はどの文庫で読めますか? とお客さまから訊かれ訊かれ「アッどこにも入ってないんです…!」と全集頼みである事実をお伝えする心苦しさを味わっておりましたもので、ようやく重い腰をあげチラシにあしらったテキストの続きを打ち込まんと改めて本文に向き合いましたらアラアラ意外に長かったのです。そんなわけで指のがんばり具合とよくよく相談しながらよろよろと連載してゆく所存です。青果展閉幕までには完結します(というほどには長くないです、作業が遅く申し訳ありません…)。

 今ほど青果展3回目(6回目?)となるギャラリートークを終了いたしました。新年早々ありがとうございました。いつぞや予告いたしましたとおり本日より青果旧蔵 国木田独歩自筆詩稿(星槎グループ蔵)を公開したほか、青果筆秋聲宛書簡(徳田家蔵)を差し替え、秋聲の「誘惑」自筆原稿をお披露目、秋聲の原稿「『二つの道』の劇化」(石川近代文学館蔵)の前半と後半を入れ替え、青果の妻いねさんによる受贈物の記録帳(星槎グループ蔵)も最後のコーナーに特別展示いたしました(これのみ2月1日までの限定公開)。この記録帳には病床にあった青果に秋聲から「果物カゴ」がお見舞い品として贈られたことが書き付けられており、青果さんの秋聲へのお見舞金記録と呼応する貴重な資料! 「誘惑」原稿以外は他所さまからお借りしたものですので〝この次〟は何年も先になるやもしれません。ぜひ重点的にご覧ください。





初春のご挨拶
  2019.1.4

 あけましておめでとうございます! 本日4日より通常どおり開館してまいります。本年も何卒よろしくお願いいたします。今年の目標は日めくりカレンダーさまのめくり方を下にぴっとやること…。いつもつい横にびりっとやってしまうのですが、下にぴっとひくのが正解だそう。左右均等にぴっとひっこ抜くことで頭のもさもさが残らず最後まできれいに使えるようです。
 そう、均等に。大事なのはバランス。金沢ゆかりの詩人・中原中也の詩に「器の中の水が揺れないやうに、/器を持ち運ぶことは大切なのだ。/さうでさへあるならば /モーションは大きい程いい。」(「修羅街輓歌」)との一節があり、館の活動もこうあらねば、と思うことが多々あります。秋聲の本質を揺らさぬよう、しかしその魅力を多くの人にとどけるために、企画の振り幅を大きく大きくしてゆくこと。とは言いながら早速ちまちまと今朝ほど書斎のお軸をかけかけました。
 なんとなく新年に展示しがちな島崎藤村揮毫「生命は力なり、声は言葉なり、新しき言葉はすなはち新しき生涯なり」(『藤村詩集』序)。言葉の力により進んでゆくのが文学館の生涯なのですからここでわれらが秋聲先生からも有り難いお言葉をひとつふたつ。「左に右(とにかく)君はやり過ぎる。少しは周囲も見なければ……」――小説『檻』より。そう大事なのはバランスバランス…「けど僕は君なぞに何か教へやうと思つてる様な大人ぢやないよ。然云ふ道伴にはもつと豪い人を選び玉へ。…」
 以上、厳密には作中人物「林」の言葉ですが(言われているのは青果をモデルとする「岡辺」)、そこは大雑把にとらえてわれわれの道伴は秋聲以外にないのです! どうかどこまでもご同行くださいませ! 大家のくせに豪い大人の顔をしないのが秋聲。すなわちその言葉もきっと有り難がるタイプのものでなく、それが必要な人にさりげなく染みいるタイプのものなのでしょう。



 

 

 

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